グラミー賞ノミネート経験もあるNeko Caseの9枚目のアルバム『Neon Grey Midnight Green』は、セルフ・プロデュースで制作され、従来における最大のサウンドと親密さを感じさせるアルバムである。

 

彼女の10年ぶりの新曲「Neon Grey Midnight Green」は、ガーディアン紙が 「女性の反抗の完璧な咆哮 」と評した2018年の「Hell-On」に続く作品だ。彼女の最新作もそれに劣らず切迫した作品だが、その白熱した炎には感傷の深い青筋が浮かぶ。このアルバムは、近年他界したミュージシャン、プロデューサー、活動家へのオマージュである。彼女は音楽的ヒーローたちの肩の上に立ち、彼らが貸してくれた道具を使い、最もインスピレーションに満ちた作品を作り上げた。

 

リグビーとのコラボレーション「Wreck」はアルバムのファースト・シングルであり、他の誤りやすい人間との愛を見つけるという、魂を打ち砕かれるような感覚を探求している。「わがままなのはわかってる/でも今は君が太陽なんだ!/ そしてそれは大きな仕事だ。/ でも、あなたも望んでいるのでは?/ 私は太陽に見える?」と彼女は問いかけ、音楽は空へと昇っていく。


過去のどのアルバムよりも、「Neon Grey Midnight Green」はフルバンドによるライヴ・レコーディングである。「人間がここにいた 」ことを思い出させるため、息遣いやシャツの袖のざわめきさえも最終ミックスに残された。

 

レコーディングは主にケース自身のバーモント州のスタジオ、カーナシアル・サウンドで行われ、コロラド州デンバーでプレインズ・ソング・チェンバー・オーケストラと、オレゴン州ポートランドでタッカー・マーティンと追加セッションを行った。

 

「女性、ノンバイナリー、トランスのプロデューサーはとても少ない。人々は私たちを選択肢の1つとして考えていません。このレコードをプロデュースしたことを誇りに思う。これは私のビジョン。私の拒否権だ。私のセンスです」


 

 「Wreck」

 

 

 

Neko Case 『Neon Grey Midnight Green』


Label: Anti-

Release: 2025年9月26日

 

Tracklist:  

 
1. Destination 
2. Tomboy Gold 
3. Wreck 
4. Winchester Mansion of Sound 
5. An Ice Age 
6. Neon Grey Midnight Green 
7. Oh, Neglect... 
8. Louise 
9. Rusty Mountain 
10. Little Gears 
11. Baby, I’m Not (A Werewolf) 
12. Match-Lit 

 

ニューヨークのロックバンド、Geeseは地下室のライブセッションから始まり、作品の発表ごとに大きく成長してきた。彼らはサイケデリックなロックサウンドから60、70年代のクラシックロックなどを起用にこなす。アルバムごとに作風を変え、フロントマンのキャメロン・ウインターもまたソロ活動を並行してこなしている。

 

前作『3D Country』に続く、ギースの待望のニューアルバムがアナウンスされた。本作は、Partisan Recordsから9月26日にリリースされる。 


幼なじみのDominic DiGesu、Max Bassin、Emily Greenと共に、Geeseはずっと作りたかったアルバムを作った。『Getting Killed』は、混沌とした神聖な喜劇のようなアルバムだ。3Dカントリー』の皮肉に満ちたコスチュームを脱ぎ捨て、睥睨するような、黄金色の、手の届かないところにあるものを目指した。

 

音楽祭でケネス・ブルームに声をかけられたギースは、彼のロサンゼルスのスタジオで10日間というハイペースでアルバムを制作した。オーヴァーダビングの時間はほとんどなく、完成したプロジェクトは、混沌とした喜劇のようなものとして現れ出ている。ウクライナの聖歌隊のサンプルの上にガレージのリフが重なり、金切り声のギターの後ろでヒスノイズのようなドラムマシンが静かに鼓動し、奇妙な子守唄のような曲の中に激しく反復する実験が散りばめられている。『Getting Killed』でGeeseは、魅惑的な新しい優しさと激しさを増した怒りのバランスをとり、クラシック・ロックへの愛情を音楽そのものへの軽蔑と引き換えにしたかのようだ。

 

アルバムの最初の先行シングル「Taxes」がミュージックビデオと合わせて公開された。 地下のライブスペースで映像するバンドのライブが収録され、デモ風のガレージ・ロックのイントロからアンセミックな力強いロックソングへと変身する。間違いなく、ギースの歴代の曲でもベストトラックに挙げられる。

 

 「Taxes」

 

 

 

Geese   『Getting Killed』 

Label: Partisan

Release: 2025年9月26日

 

Tracklist:

 

1 Trinidad 
2 Cobra 
3 Husbands
4 Getting Killed 
5 Islands of Men
6 100 Horses
7 Half Real 
8 Au Pays du Cocaine 
9 Bow Down 
10 Taxes 
11 Long Island City Here I Come

 

ロンドンのロックバンド、Shameは『Cutthroat』のセカンドシングル「Quiet Life」をリリースした。ペドロ・タカハシが監督し、FRIENDがプロデュースしたミュージックビデオが同時に公開された。

 

「"Quiet Life"は、くだらない関係にある人のことを歌っています」とボーカルのチャーリー・スティーンは言う。 "より良い人生を望んでいるのに...身動きがとれないという葛藤を理解しようとしている」とボーカルのチャーリー・スティーンは語っている。


ブルックリン・ヴィーガンが「楽しげなリフロックバンガー」と絶賛したタイトル曲に続く 「Quiet Life 」はザ・ガンクラブやザ・クランプスの流れを汲む唸るようなロカビリートラックだ。そしてクラッシュのロカビリーもなんとなく彷彿とさせるものがある

 

この曲について、ヴォーカルのチャーリー・スティーンはさらに次のように語っている。「この曲は、彼らが受ける批判と彼らが直面する葛藤について歌っている」 曲の冒頭で、チャーリー・スティーンはこう歌っている。”この辺りには何もない、でもまだ去るという選択はしきれない”

 

グラミー賞受賞プロデューサー、ジョン・コングルトンを迎えて制作されたこのニューアルバムは、シェイムらしさに満ちたワンダフルな作品だ。「このアルバムは、臆病者、まぬけ、偽善者について歌っているんだ」とスティーンは言う。「現実を直視してみよう」


若干20代で、2018年のデビュー作『Songs of Praise』以来、自分たちの実力を何度も証明してきた幼なじみの5人(シンガーのチャーリー・スティーン、ギタリストのショーン・コイル=スミスとエディ・グリーン、ベーシストのジョシュ・フィナティ、ドラマーのチャーリー・フォーブス)は、新たなグラウンド・ゼロを生み出す覚悟で『Cutthroat』に臨んだ。

 

サメのトレードマークであるユーモアのセンスが全編に刻印されたこのアルバムは、今日の大きな問題を取り上げ、嬉々としてそれをもてあそぶ。ブライトンのSalvation Studiosにこもった彼らは、紛争と腐敗、飢えと欲望、欲望と嫉妬、卑怯の遍在する影といったテーマに容赦ない目を投げかけている。


音楽的にも、レコードは新しいアイデアで勝負している。趣味でツアー中にエレクトロニック・ミュージックを作っていたコイル=スミスは、それまで自分が作っているループを、恥を忍んで書いているものとは別だと考えていた。そして彼は、そうである必要はないことに気づいた。

 

「今回は、サウンドがよくて、うまくできれば、何でもよかった」と彼は言う。この生意気な自己認識も重要だ。その結果、このアルバムは人生の特異性を楽しみ、眉をひそめ、機転を利かせてはぐらかされるような醜い疑問を投げかける。しかし、『カットスロート』が堂々と出した答えのひとつは、「今、シェイムはかつてないほどいい音をしている」ということである。

 

 

「Quiet Life」

 


Indigo De Souza(インディゴ・デ・スーザ)が、近日発売予定のアルバム『Precipice』の最新プレビューとして、ニューシングル「Be Like The Water」を発表した。

 

従来は、アルトロックの音楽性で知られるデ・スーザであるが、最新の先行曲と同様に、ポップスへの強い傾倒が感じられる。3作目のシングルは、エレクトリック・ピアノやシンセを配したメロウなアートポップ/ソフィスティポップ。 このアルバムで従来のロックからのイメージを完全に払拭している。

 

3作目のシングル「Be Like The Water」に関して、アーティストは次のように説明している。「”Be like the water”は、勇敢であることと、自分のエネルギーを守ることについて歌っている。 「自分の内面に耳を傾け、直感を大切にすること。 この曲の中で私が一番好きな歌詞は、『去りたければ去ってもいい、もちろん理由は言わなくていい』というもの。 部屋から出ようが、会話から離れようが、有害な関係から離れようが、あなたには変化を起こす力がある」


このアルバムは、最近のシングル "Heartthrob "と "Crying Over Nothing "を収録し、SZA、Yves Tumor、FINNEASなどのプロデュースやコラボレーションを手がけるミュージシャン、エリオット・コゼルと制作された。

 

 

「Be Like The Water」

Casii Stephan

 

ミネソタ州タルサを拠点に活動するシンガー・ソングライター、カシイ・ステファン(Casii Stephan)が、ダミオン・シェイドをフィーチャーしたロックバンガー「King in America」とミュージックビデオを同時にリリースした。

 

音楽的にはシンセロックだが、この曲には果てしなく壮大な夢が感じられる。バンドアンサンブルのスリリングなサウンド、ディーヴァ級のステファンのソウルフルな歌声に大いに注目したい。

 

先月、全米で『No Kings』のデモが開かれたばかりだが、この曲に込められた王政に関する皮肉を多分に込めたテーマほど、現代アメリカの社会問題を浮き彫りにするものは存在しない。この新曲は米国が絶対王政や君主制のような中世ヨーロッパの封建社会に戻ることに強烈な反抗を示すシングルだ。切実な問題に対峙したとき、彼女は黙認することが最善ではないと教唆する。


「チャド・コペリン(コロニー・ハウス、ストランベラス、ブロンコ)がプロデュースした "King in America "は、ファシズムの危険性と現在のアメリカ大統領に対する、ハードで爆発的なロック・プロテスト・ソングなんだ。 私はすごく怒っている。 私はアメリカのための神の計画を信じて育った。 王政は私たちのためにあるのではない、と。 しかし、今...彼らは君主制を望んでいるんだ」

 

「彼らは私のトランスジェンダーの友人たちの生活を脅かし、オクラホマで歓迎されないようにしようとしている。 私のファミリーにとって、身近で大切な人たちを強制送還しようとしている。 マイノリティをいじめる。 まあ、私をいじめればいい。 私は多数派だ。 我々は多数派なんだ。 この国が戦わずして滅びるとでも思っている? ダーリン。 我々はすでにこの戦争に勝った。 私たちが何者であるかを思い出す時なのだと思う。 勇者の故郷であり、自由の国であることをね」




ミネソタが彼女のルーツを、タルサが翼をくれた。 カシイ・ステファンはミネソタ生まれで、OK州タルサを拠点に活動するインディー・ポップ・ミーツ・ソウル・ロックのシンガー・ソングライターだ。
 

ーーフローレンス・ウェルチやフィオナ・アップルのようなアルトポップアーティストと比較され、キャロル・キングを彷彿とさせる作風ーー(NPR) 
 

カシイ・ステファンの歌声は獰猛で大胆不敵だが、実は、いつもそうだったわけではない。 16歳のときに家族のピアノで曲作りを始めるまで、彼女は内気で自分の声を恐れて育った。 カシイは2014年にタルサに移り住み、音楽キャリアの追求を諦めるつもりでいたが、友人のちょっとした励ましで曲作りを続け、2016年に楽曲を発表し始めた。
 
 

それ以来、Casiiは全米ソングライティング賞を受賞し、国内外でツアーを行い、SXSWやFolk Allianceのショーケースに出演し、ニューヨークのA2IMでパフォーマンスを行い、仮想サンダンス映画祭に出演し、Billboard、NPR、SPIN、American Songwriterなどのプラットフォームで紹介された。 
 
 
最近、アイルランドとイギリスでの初の海外ツアーから帰国した。 2025年1月には、国際音楽会議 "Your Roots are Showing "のショーケース・アーティストを務めた。 その後ロンドンに戻り、6月にはSXSWのショーケースにも出演した。
 

ステファンは、死と生、愛と喪失など幅広いテーマを持ち、しばしば性差別、年齢差別、女性としての「いい子ぶる」といった否定的な社会規範に背中を押す。 彼女は、物事は変えられるという希望を根底に、自身の信念を解体するために文章を書き、リスナーを自身の旅へと誘う。
 

ウディ・ガスリーやピート・シーガーのような才能あるフォークミュージシャンのほか、ザ・フーやブラック・サバスのような象徴的なロックバンドの代理店である、TROエセックス・ミュージック・パブリッシングは、カジイ・ステファンの多様なソングライティング・カタログを所有している。
 
 
ベン・タナー(アラバマ・シェイクス、セント・ポール・アンド・ザ・ブロークン・ボーンズ)がプロデュースしたカシイの待望の『リレーションシップ・ステータス』EPは、2024年9月にシャマス・レコードからリリースされ、絶賛された。 
 
 
 ーーどの曲も素晴らしい。 個々では、見事なヴォーカルと非常に強力な音楽的フックを聴かせてくれるが、一緒に演奏すると、『Relationship Status』はその部分の総和よりも大きくなり、曲は旅を表現しているーー(Real Gone Rocks) カシイ・ステファンは現在スタジオで新曲を書き、レコーディング中だ。
 


 
 
 
 
 
Minnesota gave her roots, and Tulsa gave her wings. Casii Stephan is an MN-born, indie-pop meets soul-rock singer-songwriter based in Tulsa, OK.

Casii’s “gorgeously emotive voice inspires comparisons to alt-pop artists like Florence Welch and Fiona Apple with a writing style reminiscent of Carole King” (NPR).
 

Stephan’s voice is fierce and fearless, but this was not always the case. She grew up shy and afraid of her voice until she started writing songs on the family piano when she was 16. Casii moved to Tulsa in 2014 with the intent to give up her pursuit of a music career, however with a little encouragement from a friend, she continued songwriting and started releasing music in 2016.
 

Since then, Casii has received national songwriting awards, toured regionally and internationally, performed official SXSW and Folk Alliance showcases, performed in NYC at A2IM, performed at the virtual Sundance Film Festival, and profiled on platforms such as Billboard, NPR, SPIN, and American Songwriter. 
 
 
She recently returned from her first international tour with stops in Ireland and the UK. In Jan 2025, she was an official showcase artist at the “Your Roots are Showing” international music conference. She then returned to London to perform an official SXSW showcase in June.

Casii writes her songs honestly, from the depths of her emotions, with wide ranging themes including death and life, love and loss, and often pushing back on negative societal norms like sexism, ageism and “playing nice” as a woman. She uses writing to deconstruct her own beliefs with an underlying hope that things can change, inviting listeners on their own journey.
 

Casii’s diverse songwriting catalog is with TRO Essex Music Publishing, who represents talented folk writers such as Woody Guthrie and Pete Seeger, and iconic rock bands like The Who and Black Sabbath. Casii’s highly anticipated Relationship Status EP, produced by Ben Tanner (Alabama Shakes, St. Paul and the Broken Bones), was released in September 2024 on Shamus Records to rave reviews. “Each of these songs are great. Individually, they present a brilliant vocal and some very strong musical hooks, but when played together, ‘Relationship Status’ becomes bigger than the sum of its parts, with the songs representing a journey.” (Real Gone Rocks). Casii is currently in the studio writing and recording new songs. Her new single, a high-energy protest song,“King in America” is out now. 
 
 
The track is a hard-hitting and explosive rock-drenched protest song against the perils of fascism and the current administration. Casii shares, "I'm mad. I was raised to believe in God's divine plan for America. That the monarchy was never meant for us. And now... they want a monarchy.  They want to threaten my trans friends' lives and make them unwelcome in Oklahoma. They want to deport people who are near and dear to my family. They want to pick on the minority. Well, pick on me. I'm the majority. We're the majority. And if they think this country will go down without a fight? Darlings. We already won this war. I guess it's time to remember who we are. The home of the brave and the land of the free."
 


 テネシー/ナッシュビルのシンガーソングライター、マリッサ・ナドラー(Marissa Nadler)はモノトーンのアルバムを発表しつつづけ、ゴシック的な世界観とフォークミュージックのセンスを融合させてきた。

 

ニューシングル「Hachet Man」は、Sacrd Bones/Bella Unionから発売予定の新作アルバム『New Radiations』の2ndシングルで、アコースティックギターに物憂げで切ない歌声を乗せている。このアルバムのテーマである幻想的な音楽性を垣間見ることが出来る。

 

このアルバムはリードシングルに見いだせるようなフォークを基調としたポップソングを中心に構成されているが、その荒唐無稽とも呼ぶべきイマジネーションがアルバムの核心には存在する。空飛ぶセスナ機、宇宙船、逃走用の車、そして異次元の世界.......。 甘くキャッチーなメロディーとダークで直感的な歌詞のコントラスト。 一人称の物語から歌おうが、他の人々とチャネリングしようが、このアルバムは愛と喪失の普遍性を重厚さと共感をもって表現している。


『New Radiations』はナドラー自身がプロデュースし、ランダル・ダン(Earth、Sunn O)))がミックスした。長年のコラボレーターであるミルキー・バージェスによる繊細なアレンジが特徴で、ウージーなスライド・ギター、催眠術のようなシンセサイザー、硬質なリフが印象的だ。 
 
ジャンルにとらわれない彼女らしいこのアルバムは、世界のノイズを一瞬の美しさと荘厳さで凍りつかせる。 マリッサ・ナドラーの唯一無二のビジョンと芸術性の証であり、キャリアのハイライトである。
 
 
 
「Hachet Man」

 


アイルランドのオルタナティヴロックバンド、New Dadはニューシングル「Roobosh」を発表した。最初期のドリーム・ポップやシューゲイズをベースとした音楽性は、この新曲において鋭いグランジへと変化し、ヘヴィーな印象に縁取られている。L7などの西海岸のグランジロックを彷彿とさせる。シンセやパンク風のシャウトがそれらのモダンな雰囲気を添えている。


バンドはこの新曲について次のように説明している。 「アルバムのために、叫んでフラストレーションを吐き出せるような曲を書きたかった。 呻いたり叫んだりできるような曲が欲しかったんだ。それは結構楽しかった」


昨年、ニューダッドは新作アルバム『Madra』をリリースし、今年に入り「Safe」EPを発表した。New Dadは7月にアジア/北米ツアーを開催し、その日程の中でフジロックフェスティバルにも出演予定だ。今年秋にかけてヨーロッパでライブを行ったのち、10月にはUKへと戻る。

 

 

「Roobosh」

Kae Tempest 『Self Titled』 



Label: Island/ Universal Music 

Release: 2025年7月4日

 

 

Review

 

ロンドンのヒップホップ・ミュージシャン、ケイ・テンペストによる5thアルバム『Self Titled』は象徴的なカタログとなりえる。テンペストは、これまでアート志向のヒップホップミュージックを追求してきたが、前作よりもはるかに洗練された作品を提示している。すでにブリット、マーキュリー賞にノミネート済みのシンガーは、この作品で双方の賞を完全にターゲットに入れている。このアルバムは、UKドリルを中心とするグリッチを用いたサウンドで、その中には、ディープハウス、テクノ、ユーロビートのEDMのリズムも織り交ぜられている。近年では、ヒップホップのクロスオーバー化に拍車がかかっているが、それを象徴付けるアルバムだ。

 

また、ドリルの音楽に加えて、シネマティックなSEの効果が追加され、それらが持ち前の巧みなスポークンワードと融合している。ミュージシャンとしての覚悟を示唆したような「I Stand In The Line」は強烈な印象を放つ。ジェンダーのテーマを織り交ぜながら強固な自己意識をもとにしたリリックをテンペストは同じように強烈に繰り出す。テンペストのラップは、アルバムの冒頭を聞くと分かる通り、余興やお遊びではない。自己の存在と周りの世界との激しい軋轢を歌うのだ。さらに、この曲では、ハリウッドのアクション映画等で用いられるSEの効果がダイナミックなパーカッションのような働きをなす。シネマティックでハードボイルドなイメージを持つヒップホップという側面では、『GNX』と地続きにあるようなサウンドと言えるかもしれない。ドリルの系譜にある「Statue In The Square」でも同じような作風が維持され、エレクトリック・ピアノでリズムを縁取り、独特な緊張感を持つサウンドを構築する。同じようにテンペストの繰り出すスポークンワードもそれに呼応するかのような緊迫感を持つニュアンスを持つ。

 

こういった中で、テクノの範疇にあるダンスミュージックとヒップホップの融合が示される。「Know Yourself」は反復に終始しがちなトラックメイクにエレクトロの導入部を設けることにより、スポークンワードの序奏のような構成を作り出し、トラック全体に抑揚と起伏を設け、メリハリをつける。

 

同様にボーカルという面から見たスポークンワードもまたR&Bのコーラス的な盛り上がりを見せるイントロとは対象的に、中盤以降はストイックで低く、そして緊張感に満ちたスポークンワードが繰り広げられる。これらは音響効果としてのボーカルという観点を踏まえて、背景のエレクトロやリズムの効果と上手く連動させるようにし、一つのグルーヴやうねるアシッド・ハウス的なウェイヴのような独特な音楽効果をもたらす。その後、イントロのR&Bとの融合に舞い戻り、色彩的なヒップホップサウンドを構築していく。これらの音楽的なひらめきがあって作曲構造としても優れたサウンドは、このアルバムを聞く上で聴き応えを付与することだろう。それはNew Order、Underworldのようなエレクトロのグルーヴとも共通性を持つようになる。

 

アルバムの序盤は、先にも述べたように、自己と世界の激しい軋轢やそのせめぎ合いのような感覚がときに激しく、また、ときに静かに歌われるが、それらが内的な側面で宥和に近づく瞬間もある。「Sunshine on Catford」はチルウェイブのサウンドを踏まえ、それらをヒップホップと結びつけるという点では西海岸のラップとも共通点が見出せる。そして、必ずしもラップを中心に構成されるからといって、ヒップホップは非音階的な音楽であるとは限らない。この曲ではダンスフロアのクールダウンで流れるサウンドを参考にして、メロディアスなEDMとヒップホップを巧みに融合させる。しかし、この曲でも前作では少し頼りない印象もあったケイ・テンペストの繊細なスポークンワードの影はどこにも見当たらない。自己の存在を無条件で認めるかのような自信、それは確かな自負心となり、この曲にパワフルかつクールな印象を及ぼす。


一転して、アーバンフラメンコ、レゲトンを通過したディープハウス・ミュージック「Bless The Bold Future」は、現代的なポップスのトレンドの影響を踏まえつつ、ビヨンセライクなサウンドを提供する。しかし、ケイ・テンペストの場合、中音域の渋いスポークワードがニュアンスと平行するようにして、そのボーカルの性質を変化させながら、色彩的な感覚を敷衍させる。背景となるコーラスは、同じようにダンスフロアの屋外のシーンに最適であり、トロピカルな印象すらもたらす。必ずしも今作は、同じようなサウンドに陥らず、バリエーションが豊富である。さらに続く「Everything All Together」は、風変わりな楽曲で、アンビエントとヒップホップとの融合が示される。いわばアブストラクトヒップホップに属するこのジャンルの未来形を示している。ヒップホップの過激な側面とそれとは対象的な静かな音楽性が中盤には共存している。

 

 

個人的には続く「Prayers To Whisper」がクールだと思った。今流行りのWu-Luのドラムテイクの影響を踏まえ、フィルターをかけたりしながら、リズムの革新性を示す。もちろん、この曲の魅力は、リズム的な側面にとどまらず、ヒップホップからポピュラー・ソングへと移行していく中盤以降の展開力にある。ピアノの断片的な演奏を用いながら、サビ的なフレーズに差し掛かる。そして、イントロのリズム的な側面から跳躍し、メロディアスな印象を持つ楽曲へと変化する。一分半以降のテンペストのボーカルには圧巻の覇気が宿る。 当初は、個人的な実存から始まったこのアルバムの主題は、より広い視点を得て、民衆的な視点へと代わり、広義の文学性を持つに至る。また、曲の中盤以降には、ゴージャスなストリングスも導入され、ドラマティックな印象を持つようになる。こういった曲を聞くと分かる通り、テンペストはアートや総合芸術、もしくは舞台のような要素とヒップホップを結びつけようとしている。ヒップホップを旧態化させるのではなく、前衛的なものだと捉えようとする視点が、アルバム全体に才気煥発な印象を及ぼす。もちろん、ケイ・テンペストの言葉のちからがそれを高水準へと引き上げている。

 

 

アルバムの終盤では、いわばシカゴドリルをドラムンベースやフーチャーベースのようなEDMと結びつけた''UKドリル''の音楽性がより一層強まる。それはこのアーティストの作品として、近年になく過激でエクストリームな印象をもたらす。「Diagnoses」、「Forever」などはその象徴となるだろう。しかし、同時に音楽家としてのキャリアを重ねてきたことによる円熟味も出始めている。「Hyperdistilattion」はラップの技術が高く驚嘆させられる。「Punch」のような一つの言葉を起点にし、鋭いグルーブやうねりを作り上げていく瞬間は、このジャンルを志す人にとっては指針や手本になるかもしれない。しかし、ラップだけではなく、ビートやリズムを構成が巧みであること、楽曲の背景となるシンセがごく稀に美麗なハーモニーを形成することも決して忘れはいけないだろう。2020年代のヒップホップは複合的な音楽であり、必ずしもひとつのジャンルだけで作り上げられるものとは限らない。そういった多彩な性質がこの楽曲の魅力なのだ。

 

ケイ・テンペストが白人だからとは言え、このミュージッシャンが書くのは必ずしも白人的な音楽とは限らない。タイラー・ザ・クリエイターが最新作で示したアフリカ音楽からの引用やリズムは、アルバムの終盤の注目曲「Breath」に強烈なスピリットとして乗り移り、同じように、現代的な文脈に位置づけられる音楽として濾過され、テンペストのリリックは、アシッド・ハウスのようなディープな質感を持つに至る。これは、2025年のヒップホップの最高峰の一曲と言えるだろう。特にこのアルバムは、ボーカル録音として近年にはないクオリティに達している。ある種のナレーションとも解釈出来るアルバムのクローズ「Till Morning」は、ホーンをフィーチャーしたジャジーなアウトロである。本作の解題となるわけでもなく、明確な結末を描きもしない。徹底したリアリズムのラップアルバムだ。そして、このアルバムには、明らかに余白や行間が残されている。ミステリアスな余韻を残し、聞き手に奇妙な印象を抱かせる。言葉が単なるワードに終始したり上滑りしたりせず、それ以上の力を持つことは稀有なのではないか。そういった卓越した言葉のセンスを感じさせ、それが音楽的にも高い水準に収められている。


 

 

 

90/100 

 

 

 

Best Track- 「Breath」

ブルックリンのシンガーソングライター、アンディ・トングレン(ヤング・ライジング・サンズのフロントマン)はデビューシングルに続いて「Franconia」をリリースした。


トングレンは、「フランコニアは、恋に落ちることについて歌っている。  突然、紛れもなく引き寄せられ、運命を感じる。  時が経つにつれて、フランコニアは単なる場所ではなく、心の状態、記憶、特定の人々や場所がどのようにあなたに痕跡を残すかのメタファーになる」と話す。


アンディ・トングレンはヤング・ライジング・サンズのフロントマンとして知られ、2億2500万回以上のストリーミング再生数を誇り、ザ・1975、ウィーザー、ブリーチャーズ、ホルシーなどのオープニングを務めている。


トングレンは自他ともに認める楽天家である。 ブルックリンを拠点とするこのシンガー・ソングライターは言う。 「私の根底にあるのは、私にできることは他に何もないという気持ちなんです」


その晴れやかな性格が、デビューシングル「So Good」の光り輝く核となっている。 この気楽でコンパクトな曲は、アコースティックをバックにしたヴァースから始まり、喜びと暖かさを放つ至福のコーラスへと続く。 


芸術の偉大な皮肉として、トングレンは「So Good」がそうでない状況から生まれたと言う。 「面白いもので、この曲は暗い場所から生まれたようなものなんだ。 ブッシュウィック郊外の寒くて暗い地下室に住んでいて、毎日を何とかやり過ごそうとしていた...冬が始まって、少し暖かさを感じたかった」


トングレンは、"So Good "を何よりも雰囲気を捉えたものにしたかったという。 「書くことへのアプローチに過度な尊さはなかった」と彼は説明する。 「芸術と商業の融合に伴う些細なこと...それにとらわれるのは簡単だ。しかし、''So Good''では、何も考えず、ただ書いただけだった。 少しずれていても、そのままでいい」と彼は続ける。 「この作品には本当の人間的要素があるのだから」


オハイオ出身の彼が、ニューヨークとニュージャージーの国境を越え、結束の固い友人たちと前身バンド、ヤング・ライジング・サンズを結成して以来、彼の作品がファンに愛されてきたのは理由があり、そこには本物の人間的要素があったからだった。 彼らのデビュー・シングル "High "は聴衆を魅了し、インタースコープ・レコードとの契約と、The 1975、Weezer、Bleachers、Halseyなどのオープニングを務めるめまぐるしいツアー・スケジュールにつながった。


''So Good''は瞬く間に批評家たちから賞賛された。 OnesToWatchは、アンディ・トングレンを「フォーク・ポップにおける極めて重要な声」と評した。We Found New Musicは、彼を「衝撃的なアーティスト」と呼んだ。 


彼のセカンド・リリースである "Franconia"は、アンセミックなインディー・フォーク・シングルで、シンガロングにふさわしい足踏みコーラスと詩的なリリックで満たされている。同楽曲は普遍的な題材に触れ、恋に落ちることについて歌っている。 突然、紛れもなく引き寄せられて、運命を感じるような電撃的な瞬間。  時が経つにつれ、フランコニアは単なる場所ではなく、心の状態、記憶、特定の人々や場所がどのように自分に痕跡を残すかのメタファーになる。


アンディ・トングレンは、自分の足跡をしっかりと残しつつ、キャリアの新たな章を書き続けている。

 

 

「Franconia」




By his own admission, Andy Tongren is an optimist. “I really do try and find the silver lining any way I can,” says the Brooklyn-based singer/songwriter. “At my core, I feel like there’s nothing else I can do.”


That sunny disposition is the glowing core of his debut single “So Good.” The easygoing, compact tune is driven by an acoustic-backed verse before launching a blissful firework of a chorus that radiates joy and warmth - perfect for a summer playlist or a crucial year-round dopamine hit. 


In one of art’s great ironies, Tongren says “So Good” was born of circumstances that were anything but. “It’s funny - it kind of came from a dark place,” he admits. “I’m living in a cold, dark basement on the outskirts of Bushwick, trying to get by day to day…Winter was starting and I think I just wanted to feel a little bit of warmth.”


Tongren wanted “So Good” to capture a vibe more than anything else. “I wasn’t overly precious with the approach to writing,” he explains. “All the minutiae that comes with blending art and commerce…it’s so easy to get caught up in that. On ‘So Good,’ I didn’t think - I just did. “If it’s a little bit off, leave it,” he continues. “There’s real human elements in this.”


And real human elements are what Tongren’s fans have loved about his work ever since the Ohio-born musician formed his previous band, Young Rising Sons with a tight-knit group of friends across the New York-New Jersey border. Their debut single “High” dazzled audiences, leading to a deal with Interscope Records and a dizzying tour schedule that found the group opening for The 1975, Weezer, Bleachers, Halsey and more.


"So Good" was quickly hailed by critics alike. OnesToWatch proclaimed Andy Tongren as a "pivotal voice in folk-pop", while We Found New Music called him an "impactful artist". 


His second release "Franconia" is an anthemic indie folk single filled with a sing-a-long worthy foot-stomping chorus and poetic lyricism. Tongren shares, “Franconia is about falling in love - with a person, a place, or both all at once.  It’s the sudden, undeniable pull that feels destined.  Over time, Franconia becomes more than just a place - it becomes a state of mind, a memory, a metaphor for how certain people and places leave their mark on you.”


Andy Tongren is continuing to write an exciting new chapter of his career, leaving his mark and looking to return to the road and connect with fans who, like him, continue searching for the good against all odds.


▪️世界中の音楽ファンを魅了する音楽家・青葉市子。約1年ぶりとなる国内ツアー<Luminescent Creatures World Tour>開催決定! 昨年10月開催の<“Luminescent Creatures” World Premiere>より、ライブ映像「SONAR」を本日プレミア公開! 先週末には世界最大級の音楽フェス Glastonbury Festival 2025に出演!



唯一無二の音楽世界で、国内外から高い評価を集める青葉市子。現在も継続中の<Luminescent Creatures World Tour>の一環として、約1年ぶりとなる国内ツアーの開催が決定しました。


今年2月24日の香港公演を皮切りにスタートしたこのワールドツアーは、アジア、ヨーロッパ、北米、オセアニアと世界各地を巡り、これまでに40公演以上を実施。今回の国内ツアーは、全国9都市を巡る、弾き語りによるソロ公演となります。


チケット先行受付は本日7月4日(金)18:00よりスタート。同時に海外在住者向けのチケット受付も開始します。

 

そして、昨年10月に開催された“世界初演”コンサート<“Luminescent Creatures” World Premiere>より、エレクトリックピアノによる弾き語り曲「SONAR」のライブ映像を、本日21:00よりYouTubeにてプレミア公開します。こちらは記事の下部にてご覧下さい。


今夏に開催予定の、総勢10名のバンド編成による特別公演<Reflections of Luminescent Creatures>の告知ビジュアルにも使用された、レーザー光の反射が幻想的な世界観を創り出しています。

 

現在、ミュージシャンは、北欧、イタリアでの単独公演を経て、今週末にはスペインやオランダの音楽フェスティバルに出演予定。先週末には、世界最大級の野外音楽フェスティバル<Glastonbury Festival>にも出演しました。


これまでグラストンベリーフェスティバルに出演した日本人アーティスト、ブンブン・サテライツ、渋さ知らズ、東京スカパラ、上原ひろみ、 Babymetal、鼓童、コーネリアス、タートルアイランド、ソイル&ピンプセッション、 Bo Ningen、幾何学模様(活動拠点はオランダ)に続く快挙でした。


正午過ぎの出演時間にもかかわらず、自然に囲まれた「THE PARK STAGE」には多くの観客が集まり、大きな喝采を浴びました。さらに年末には南米公演も予定されています。その活動はますます広がりを見せています。



■ライブ映像  青葉市子「SONAR」(from “Luminescent Creatures” World Premiere)


 


YouTubeでのご視聴:

 https://youtu.be/y6-9IhH1Owo 


※7月4日(金)21:00〜YouTube にてプレミア公開


日本公演の日程、及び、グラストンベリー・フェスティバル 2025の出演時のライブフォトは下記よりご覧下さい。



・Glastonbury Festival 2025 Photos

 All Photo: Bryan Lasky







▪️ <Luminescent Creatures World Tour>(日本国内)


日程:2025年9月17日(水)

会場:福岡・福岡市民ホール 中ホール

開場18:00 / 開演18:30

お問い合わせ:BEA 092-712-4221(平日12:00〜16:00)

http://www.bea-net.com

日程:2025年9月19日(金)

会場:広島・広島JMSアステールプラザ 中ホール

開場18:00 / 開演18:30

お問い合わせ:キャンディープロモーション広島082-249-8334(平日11:00~17:00)

https://www.candy-p.com

日程:2025年9月23日(火祝)

会場:愛知・アマノ芸術創造センター名古屋

開場17:00 / 開演17:30

お問い合わせ:監獄ハウス 052-936-6041

http://www.jailhouse.jp

日程:2025年9月26日(金)

会場:愛媛・松山市民会館 中ホール

開場18:00 / 開演18:30

お問い合わせ:duke松山 089-947-3535

https://www.duke.co.jp

日程:2025年10月10日(金)

会場:北海道・札幌コンサートホール Kitara 小ホール

開場18:00 / 開演18:30

お問い合わせ:WESS / info@wess.co.jp

http://wess.jp

日程:2025年10月18日(土)

会場:岩手・盛岡市民文化ホール 小ホール

開場17:30 / 開演18:00

お問い合わせ:GIP / https://www.gip-web.co.jp/t/info

https://www.gip-web.co.jp

日程:2025年10月19日(日)

会場:宮城・日立システムズホール仙台 シアターホール

開場17:00 / 開演17:30

お問い合わせ:GIP / https://www.gip-web.co.jp/t/info

https://www.gip-web.co.jp

日程:2025年11月1日(土)

会場:石川・北國新聞赤羽ホール

開場16:30 / 開演17:00

お問い合わせ:金沢FOB 076-232-2424

http://www.fobkikaku.co.jp

日程:2025年11月7日(金)

会場:新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場

開場18:00 / 開演18:30

お問い合わせ:新潟025-229-5000

http://www.fobkikaku.co.jp

□チケット

全席指定 ¥6,800

全席指定<学割> ¥4,800

※⼩学⽣以上有料/未就学児童⼊場不可

※学割:公演当日、入場口におきまして学生証を確認させていただきます(小、中、高校生、大学生、専門学校生対象)。

先行受付期間:7/4(金)18:00〜7/13(日)23:59

先行受付URL:

イープラス https://eplus.jp/ichikoaoba-2025/

イープラス(海外居住者向け)https://eplus.tickets/ichikoaoba-2025/

チケット一般発売日:8/9(土)10:00〜。




■リリース情報

青葉市子 8thアルバム『Luminescent Creatures』

2025/2/28(金)全世界同時発売(配信/CD/Vinyl)

配信リンク:

https://linktr.ee/luminescentcreatures

 

収録曲

01. COLORATURA

02. 24° 3' 27.0" N, 123° 47' 7.5” E

03. mazamun

04. tower

05. aurora

06. FLAG

07. Cochlea

08. Luciférine

09. pirsomnia

10. SONAR

11. 惑星の泪

 

■MV

青葉市子「SONAR」


https://m.youtube.com/watch?v=YrXlDDvft8Q


■ライブ映像

青葉市子「Luciférine」


https://youtu.be/fgKJ63rcbgE

 

 

■今後の国内公演

 

公演名:Reflections of Luminescent Creatures

 

日程:2025年8月13日(水)

会場:東京・サントリーホール 大ホール

開場17:30 / 開演18:30

 

日程:2025年8月18日(月)

会場:神奈川・横浜みなとみらいホール 大ホール

開場17:30 / 開演18:30

 

日程:2025年8月20日(水)

会場:東京・すみだトリフォニーホール 大ホール

開場17:30 / 開演18:30

 

日程:2025年8月22日(金)

会場:大阪・NHK大阪ホール

開場17:30 / 開演18:30

 

日程:2025年8月23日(土)

会場:大阪・NHK大阪ホール

開場16:00 / 開演17:00

 

出演:青葉市子

参加ミュージシャン:梅林太郎,

町田匡(Violin), 荒井優利奈(Violin), 三国レイチェル由依(Viola), 小畠幸法(Cello), 丸地郁海(Contrabass),

朝川朋之(Harp), 丁仁愛(Flute), 角銅真実(Percussion)

 

□チケット

全席指定 ¥8,800

全席指定<学割> ¥6,800

※⼩学⽣以上有料 / 未就学児童⼊場不可

※学割:公演当日、入場口におきまして学生証を確認させていただきます (小、中、高校生、大学生、専門学校生 対象)。

 

イープラス https://eplus.jp/ichikoaoba-2025/

ぴあ https://w.pia.jp/t/ichikoaoba-2025/

ローソン https://l-tike.com/ichikoaoba/

イープラス(Abroad / 海外居住者向け)https://eplus.tickets/ichikoaoba-2025/

 

チケット一般発売日:5/10(土)10:00〜

 

□お問い合わせ

東京・横浜公演:ホットスタッフ・プロモーション 050-5211-6077 http://www.red-hot.ne.jp

大阪公演:清水音泉 06-6357-3666 / info@shimizuonsen.com http://www.shimizuonsen.com

 

 

7/12(土) GEZAN 47+ TOUR『集炎』DAY9 @東京・O-EAST

7/25(土) FUJI ROCK FESTIVAL '25

10/4(土) small circle ’25 @大分・別府 北浜公園

 

 

■今後の海外公演

Europe

Tue. Jun 24 - Helsinki, FI @ Temppelinaukio Church ※終了

Thu. Jun 26 - Oslo, NO @ Cosmopolite ※終了

Sat. Jun 28 – UK, Glastonbury Festival ※終了

 

Tue. Jul 01 - Florence, IT @ Teatro Romano Fiesole

Wed. Jul 02 - Rome, IT @ Case Del Jazz

Fri. Jul 04 - ES, Vida Festival

Sun. Jul 06 - NL, Down the Rabbit Hole Festival

 

South America

Tue. Nov 25 - São Paulo BR @ Teatro Liberdade

Thu. Nov 27 - Buenos Aires, AR @ Teatro El Nacional

Sat. Nov 29 - Santiago, CL @ Teatro Teleton

Tue. Dec 02 - São Paulo BR @ Teatro Bradesco

 

2026

Tue, March 31, 2026 – London, UK @ Royal Albert Hall

Fri, April 24, 2026 - Los Angeles, CA @ Walt Disney Concert Hall


Weekly Music Feature:  Katie Gregson-Macleod



ケイティ・グレッグソン=マクラウドは、Tiktokで公開した「Complex」で予期せぬバイラルヒットを記録し、その後、コロンビア、ソニーとメジャーレーベルからリリースを重ねてきたが、今回はロンドンのシンガーソングライター、Matt Malteseが手掛ける新進レーベルからEPをリリースする。


スコットランド/インヴァネス出身のシンガー、マクラウドの音楽的なルーツはアコースティックポップフォークだったが、すでにエジンバラ大学の在籍時から、英国の主要なメディアの注目を集めてきた。マククラウドにとって、物心ついたときから音楽は人生の大きなウェイトを占めていた。「幼いころから歌い、ピアノやギターも演奏しはじめた。若い頃は音楽であれ、映画であれ、演劇であれ、クリエイティブな仕事に就きたいと思っていた。地元の音楽シーンにのめり込むようになったのは2019年のことだった」


グレグソン=マクラウドを音楽界に導いたのは、ストーリーテリングに対する理解と欲求だった。16歳のときにインヴァネスでスコットランドのシーンに足を踏み入れた彼女は、大都市にいる他のスコットランド人ミュージシャンから切り離されているというように感じていた。 やがて、彼女は、スコットランドの若手アーティストのためのメンター・シップ・プログラムにうまく参加して、そこからスコットランドの幅広い音楽業界のネットワークに触れると、パブやフェスティバル、サポート枠でギャラをもらってギグをするチャンスを得た。 「私は完全にインディペンデントで、レーベルもマネージャーも周りに誰もいなかった。 だから、できる限りのギグを得るために、とにかくいろんな人にメールを送るしかなかった」と彼女は回想する。 


グレグソン=マクラウドが弱冠18歳でリリースした最初のシングル「Still a Sad Song」は完全なセルフ・プロデュースで、後に全米ラジオで取り上げられた。 その後、彼女は2021年半ばにインディーポップソングを集めた『Games I Play』EPで初の作品群を発表した。 この最初のEPは、グレグソン=マクラウドの最新作とはサウンド面で違いがあるが、偉大な作家、ミュージシャンの始まりは、この初期の作品でも明らかだった。


やがて、グレグソン=マクラウドは故郷インバネスを離れ、大学で歴史を学ぶため、エジンバラへと引っ越した。 「どこか大きな都市に引っ越すことは、私にとって必要なことだったと思います。 エジンバラへの引っ越しは、とても大きな変化だった......。いろいろなギグをすることができたし、いろいろなことが起こっている場所にいることを生かすことができたのだから。 私のバンドになる人たちにも出会えたし、音楽仲間もたくさんできた」 寄与された学位は音楽ではなかったかもしれないが、それでも勉強は彼女のプロセスに役立った。彼女は、エッセイの締め切りがある週はいつも、最も生産的な執筆作業をしていたことを思い出しながら笑っている。


その後、彼女はロンドンにフルタイムで移住し、急成長する新世代のアーティストやソングライターに加わる準備をするようになった。 実際、彼女が私を呼んで滞在している友人達もミュージシャンが多く、彼女は数ヶ月でよく知るようになったというマット・マルタのギグに一緒に出かけることが多かった。 彼女の友人たちは、頭がくらくらするような経験の中で彼女を支えてくれたと彼女は言う。 「ずっと一緒に笑っていてくれた」


本日発売された5曲入りのラブソング・コレクション『Love Me Too Well, I'll Retire Early』は、ソニー・ミュージックエンタテインメントUKを離れ、ラスト・レコーディングス・オン・アースを通じての初リリースとなる。ケイティが2019年以降の個人的な混乱と激動の時期に恋に落ち、満たされた静かなモーメントを描写している。 メジャー・レーベルと契約し、学業とバリスタの仕事を捨て、ロンドンに引っ越すという、彼女の人生のめまぐるしい時期の中で、すべてをスローダウンさせ、混乱の中で彼女を地に足をつけさせたのはこの恋愛だった。 

 

以前のレーベルと決別した後、故郷のスコットランドに戻る絶好の機会と感じた。マッカランなどスコッチの生産で盛んなハイランド地方に舞い戻り、「自分の音楽のルーツに戻るべくプロジェクトを制作した」とケイティは振り返る。 夾雑物を削ぎ落としたこのEPは、ヘルムズデールにあるエドウィン・コリンズのスタジオで録音され、ケイティの友人ジョシュ・スカーブロウと共同プロデュースとなった。 「それは当時の私が愛と音楽を最も理解しえる方法だった」

 

 

『Love Me Too Well, I'll Ritire Early』EP - Last Recordings On Earth 


 

音楽におけるライターズ・ブロックという切実な壁に突き当たっている人々には、変奏曲という形式を推薦したい。一つの主題となる楽曲をベースに、それらにアレンジを加えて組曲にするという趣旨である。特に、1000以上の作品目録を持つ音楽家ですら、新しい曲を書き続けるということに、ある時期に何らかの限界を感じたことがあり、再構成や変奏形式によって、音楽家としての寿命を伸ばした。バリエーションは、クラシック音楽の伝統的な作曲形式であり、著名な作曲家は新しい曲を制作するという点に、ある程度の上限があると解釈し、編曲の形式を挟むことにより、各々の作品カタログに厚みと幅広さをもたらすことに成功したのだ。

 

さて、スコットランドのシンガー、ケイティ・グレッグソン・マクラウドは、DIY、Line Of Best Fit、Dorkを始めとする各誌をご覧の読者にはおなじみのソングライターである。シンプルに言えば、このEPは恋愛をもとにしたフォークポップの組曲、一つの主題を基にした変奏曲。そして、TikTokから人気を獲得したシンガーであるものの、この作品を通じて、独立ミュージシャンの道を切り拓く。引退とはメインストリームのミュージシャンからの撤退の表明だろう。

 

しかし、同時に、メジャーレーベルを離れたことにより、大きな利点もあった。それはシンプルに言えば、''ヒットソングを書かねばならないという重圧から逃れた''ということにあるだろう。このEPの優れたフォークミュージックに耳を傾ければ分かるように、マクラウドは集中して音楽制作に取り組み、功を急がず、良質なポップ・ミュージックを制作することが出来たのだ。さらに、ルーツであるスコットランドの音楽的な源泉に近づくことを可能とした。五曲収録のワンコーラスを自然に膨らませた簡素な作品であり、聴いていて心地よく、深みのある音楽が目立つ。EPの全般的な音楽には、これまであまり表立って強調してこなかったケルト民謡に対する直接的な影響が含まれている。それは、このEPの最後のトラック「Mosh Pit」で花開く。同時に、シンガーソングライターとしての才能も近年にはない形で花開いたというわけだ。

 

作曲には、ピアノが中心に用いられているようだが、基本的にはアコースティックギター中心のフォーク&ポップが展開され、現行の音楽のトレンドから適度に距離を置いた内容が目立つ。しかし、Tiktokで人気を獲得した「Complex」時代から培われたポップソングの巧みなソングライティングが完全に鳴りを潜めたわけではあるまい。そのことは、いくつかの曲のサビの部分を聴けば明らかである。スコットランドに制作拠点を移したことは、曲に落ち着きを与え、無用なノイズから逃れ、そしてソングライティングの側面での深みをもたらしたのだった。

 

ケイティ・グレッグソン・マクラウドは、ジョニ・ミッチェル、レナード・コーエンといった伝説的なフォークミュージシャンの他、サッドコアのルーツでインディーフォークの最重要アーティスト、今は亡きエリオット・スミスのようなインディーズミュージシャンに影響を受けてきた。その他、亡き祖父のレコードコレクションからもたらされたモータウンソウルからの音楽的な影響を挙げている。メジャー/インディーズを問わず、普遍的で良質なフォークミュージックに触れてきたことが、アコースティックギターの演奏の側面で奥深さをもたらし、そしてデトロイトの古典的なノーザン・ソウルからの影響は、歌唱の側面での幅広さに繋がった。マクラウドはアルトの音域からソプラノの音域を中心に適度な音域を持ち、そしてファルセットも織り交ぜる。これらは体系的な音楽教育ではなく、上記の歌手やジャンルから学んだ技だろう。

 

今回のフォーク・ポップソング集は、基本的にアコースティックギターを中心に構成されている。しかし、一般的なアコギの音色というよりも、バリトンギターのような低音部がチェロのような温かい音感を与え、全般的なマクラウドの歌をアンビエンスの側面で力強く縁取っている。そして、過去の恋愛とスコットランドへの帰郷を主題にしているが、必ずしも、リアリズムに根ざしたフォークソングというわけではなかろう。歌詞はある種の感情の吐露としての効果が詩の側面から繰り広げられ、それらは直感的な言葉の羅列で構成される。全般的な音楽としては、現実的なレンズから見通す幻想的なフォークソングであり、それらはケルト民謡やアイルランド民謡で頻繁に使用されるフィドルのような響きを持つヴァイオリンやチェロのレガートがアコースティックギターとボーカルの間に入り、それらの幻想的な副題を決定付け、主題と副題が連鎖するようにし、音楽の構造が連なっている。これはまるで、個人的な世界からスコットランドの広い世界への繋がりを象徴づけるかのようで、あるいは、見方を変えて、マクロな視点から見れば、アーティストのリアルな人生の軸を基底に、それとは対象的に、もう一つの人生を現在の地点から俯瞰し、過去のもうひとつの可能性に言及するかのように、ストーリーテリングの要素を付与するのだ。演劇を学んだこともあるシンガーは、過去にも音楽における物語の可能性について言及している。それらがEPというささやかな形式でありながら、目に見えるような形となったのである。そして、これらの年齢らしからぬ大人びた視点は、この作品全体に夢想的な感覚を付与する。シンセサイザーなどの大掛かりなアレンジは登場しない。しかし、鋭い聞き手は、奥行きのある音楽と幻想的な感覚をこのEPに見出すはずである。

 

 

フォークミュージックは、基本的には、三つか四つのコード進行やスケールしか登場せず、ベース音に対して、どのような主旋律を歌うのかに主眼がある。近年では、''フォークトロニカ''という電子音楽との融合を目指したジャンルも登場したが、このアルバムでは薄められたポストフォークではなく、この音楽の本質をしっかりと捉えている。「Love Me Too Well, I'll Retire Early」は、まるで草原に座り、ギターを奏でるような詩人らしい性質に加え、望郷の念を紡ぎ出すようなソフトな歌声が、滑らかなアコースティックギターのアルペジオと共鳴している。


ほとんど余計なマスタリングを施さず、まるでデモトラックをクリアなリバーヴエフェクトで縁取ったようなサウンドだが、驚くほどマクラウドの歌声は伸びやかに聞こえ、そして、それらと融和するアンティークの家具のように美しいアコースティックギターの音響が情感たっぷりの音楽世界を作り上げる。曲を書くというプレッシャーから逃れた音楽家は、おのずと''自分のための美しき世界''を作り上げた。しかし、それがゆえ、その音楽は万人を魅了してやまない。手作りのマニュファクチュアのような丁寧な曲作りと、同じように美しいものを歌うことをためらわない歌声が共鳴し、シンプルでありながら、琴線に触れるような音楽性を生み出した。

 

明快な印象を持つオープニングとは対象的に、憂鬱を感じさせる「James」が対置されている。 バスとスネアの演奏で始まるこの曲は、ロック的な響きがあるのと同時に、ベッドルームポップにおける非凡な才覚が現れる。乾いた質感を持つドラムをギターの演奏と結びつけ、それらを美しい旋律を持つボーカルと融合させる。こういった曲は、Clairoとの共通点もあり、現代的なポップソングとして楽しめる。 そして、この曲は、同じようにアコースティックの弾き語りで、その上に薄く重ねられるアルペジオのギターの音色が、エリオット・スミスのような影のある印象を与え、インディーフォークとサッドコアの中間にある音楽が発露している。基本的には、ワンコーラスを繰り返しながら、曲に抑揚をつけるという作曲の形式だと思われるが、サビの箇所ではボーカルが力強い印象を持つ。現代のポップソングのお手本と言うべき一曲である。ギターのコード進行が巧みであり、特に入念な多重録音がきらびやかな音響性を作り出す。


 

 

「James」

 

 

 

例外的な場合を除いて、ポップソングを書く上で、複雑なコード進行は必ずしも必要ではないということは「Chess」を聞くと分かる。この曲はアルペジオを中心にする、(ⅠーⅤーⅣ)という導入部のベース進行に対して、(ⅣーⅤーⅥ)を中心とするサビの箇所をアルペジオで対比するだけで、これ以上はないほどのシンプルさであるが、驚くほど楽曲そのものがダイナミックに聞こえるはずである。そして、サビの部分では、コーラスを被せて、ゴスペルのような荘厳な雰囲気をもたらす。二番目のシークエンスでは特に、よりダイナミックな印象を抱くはず。それはコーラスに男性のボーカルを用いて、上手く音域を対比させているからである。西洋美学が”コントラストからもたらされるダイナミズム”であるとすれば、これほど理にかなった音楽は存在しないだろう。そして無駄な音はほとんど付け加えず、すべてが最小限に留められている。

  

「I Just Think of It All Time」は、恋愛のモチーフにふさわしく、軽快さと切なさを併せ持つ秀逸なフォークポップソングだ。ここではよりボーカルは直情的になり、そして琴線に響くような涙っぽい歌声を駆使する。 アコースティックギターのサウンドホールの芳醇な音の響きを弦のオープンなストロークにより導き出し、ドライブ感のある音のうねりを作り出す。それらの導入部のイントロの後、8ビートのドラムが入り、この曲の軽快なドライブ感とリズミカルな音響効果を決定付ける。そうすると、マクラウドの歌声も連動して軽やかに聞こえる。これらは、楽器の音響の特性を上手く活かし、人生の主題と連動する詩を歌いながら、歌と曲を上手くリンクさせているからだろう。音域の使い分けも見事であり、中音域と低音域を中心とするドラム/ギター、高音域で一定して精妙な音の印象を保持するボーカルがバランス良く配置されている。


こういった曲は、男性シンガーであれば、より渋い印象を持つことになるが、女性シンガーならではの長所だろう。そして、過去の自分と現在の自分を併置し、それをセンチメンタルに歌い上げる。サビの箇所も秀逸で、弦楽器のレガートが入ると、ドラマティックな印象を帯びる。音楽に人間的な温かさや感情的な雰囲気が加わり、聞き手の心に響く叙情性をもたらす。これは、シンセサイザーなどの機械的な楽器がないからこそ、こういったオーガニックな雰囲気を生み出す。そして、これは作品としては不可欠なのだが、アートワークの印象とも合致する。草原を駆け抜ける爽やかな風のような感覚を、音楽によってストレートに体現させている。アウトロの箇所では、弦楽器がこの曲に幻想的な感覚を付与し、歌声をより美しく演出する。

 

EPのハイライトは「Mosh Pit」となる。この曲では、シンガーソングライターの非凡な才覚が発揮されている。ケルト民謡を主題にしたギターの演奏、それらがこの歌手の持つ物語の特性と組み合わされ、壮大なエンディングを演出する。さながらハイランド地方の自然のドキュメンタリー映像のように、起伏のある物語性が展開される。メインのボーカルに加えて、ジャズのスキャットというよりも、民謡的な歌唱のコーラスが併置され、多次元的な音楽構造を作り出し、牧歌的な世界観が描き出される。これらの世俗的な世界には一瞥もくれない姿勢は、このミュージシャンの音楽に神聖な感覚すらもたらす。そして、その澄明でクリアなボーカル、一点の曇もない透徹したギターの音色が組み合わされ、新世代のケルト民謡が生み出されている。


伝統的なものを受け継ぎ、次世代に語り継ぐ。それこそがこのシンガーのライフワークの一部であると解釈することも出来る。曲の中盤から入る弦楽器のトレモロの精細なピアニッシモ、それが音の谷を作り出し、以降の牧歌的な音楽の果てしない広がりを導き出す。弦楽器のユニゾンとマクラウドの伸びやかなレガートの歌声は、独立映画のエンディングのような瞬間性をもたらす。そして、メインボーカルとコーラスは、山間部のやまびこのように響き、音楽を通して、スコットランドの豊かな自然や生物の息吹など、無数の命が実際の音楽に乗り移るかのようで素晴らしい。マクラウドの音楽は、最後の楽曲において、神秘性や無限性を獲得している。

 

 

 

 Best Track- 「Mosh Pit」

  

 

 

▪ Katie Gregson-Macleodのニューアルバム『Love Me Too Well, I'll Retire Early』はLast Recordings on Earthから発売。ストリーミング等はこちら

 

 

 

Katie Gregson-Macleod:

 

ケイティ・グレグソン=マクラウドは、深くパーソナルなリリシズムとフォークに影響を受けたサウンドを独自に融合させ、世界中の熱心な聴衆を獲得している。 スコットランドのハイランド地方で育った23歳の彼女は、幼い頃から音楽に親しみ、ピアニストの母親と一緒に歌い、両親と一緒にミュージカルに没頭した。 

 

彼女が言語と創造的な文章に夢中になったのは、父親が仕事の前後に毎日小説を書いているのを見て、子供の頃から植え付けられたもので、10代後半に彼女が発見したフォーク・ミュージックにも、亡き祖父のレコード・コレクションを受け継いだモータウンやソウルの影響と同じ糸が通っている。  


ジョニ・ミッチェル、レナード・コーエン、エリオット・スミスといった古典的なシンガー・ソングライターに触発されたケイティの旅は、インヴァネスでのバスキングから始まり、地元のパブでギグを行い、18歳でローファイEP「Games I Play」を自主リリースした。 そして2022年、シングル「complex」でTikTokのバイラル・ブレイクを果たし、世界的な知名度、メジャー・レーベルとの契約、Ivor Novelloへのノミネート、フェスティバルでのパフォーマンスやヘッドライン・ツアーの旋風を巻き起こした。 

 

2024年初頭にメジャー・レーベルの本拠地と決別したケイティは、クリエイティブな独立という新たな章を迎え、ロンドンのシンガーソングライター、マット・マルテーゼの主宰するインディペンデント・レーベル”Last Recordings on Earth”と契約し、愛と芸術的不確実性のバランスを反映した生々しく親密なEPを制作した。 物語を語ることへの生涯の情熱にしっかりと根ざしたケイティの作品は、ノスタルジア、パワー・ダイナミクス、自己反省といったテーマを探求し続けており、そのすべてが彼女の特徴である詩的な表現と傷つきやすさによって強調されている。 

 


元The Verveのリチャード・アシュクロフトが、ソロアルバム『Lovin' You』を発表した。このアルバムには最近のシングル「Lover」が収録され、10月3日にVirgin Musicからリリースされる予定だ。彼は、今週金曜日から英国で行われるオアシスの大規模な再結成公演のオープニングを務める。


このアルバムからの新曲はまだ発表されておらず、トラックリストも未定。先行シングル「Lover」はアシュクロフトにとって7年ぶりのオリジナル曲である。


クリス・ポッターとエムレ・ラマザノグルは『Lovin' You』を共同プロデュースしており、"I'm a Rebel "ではマドンナとのコラボレーターであるミルウェイスがプロデュースを担当している。


アシュクロフトのオリジナル曲による最後のソロ・アルバム『Natural Rebel』は2018年にリリースされた。2021年には『Acoustic Hymns Vol.1』をリリースしているが、このアルバムは過去の曲の一部をストリップダウンしたものである。


アシュクロフトは「Lover」を書き、ラマザノグルと共同プロデュースした。この曲には、アシュクロフトが大好きなジョーン・アーマトレーディングの「Love and Affection」の要素が取り入れられている。

 

彼はこの曲をレコーディングする前に、アーマトレーディングの了解を得ている。アーマトレーディングはプレスリリースで「(リチャードが)私の曲を使ってくれたことも、彼の曲も大好きです」と語っている。


Acoustic Hymns Vol.1』には、彼の最も象徴的な曲である "Bittersweet Symphony "の7分間のアコースティック・ヴァージョンが収録されていた。2019年、アシュクロフトはザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガーとキース・リチャーズから "Bittersweet Symphony "の出版権を取り戻し、この曲の新バージョンはより勝利的なものとなった。


「Lover」



Richard Ashcroft 『Lovin’ You』