最新アルバム『Run, Run Pure Beauty』は彼らのそういった前評判に負けないようなロックソング集である。完成させる原動力となったリスナーとより深いレベルでつながろうとするアーティストである彼女にとって、新作アルバム『Run, Run Pure Beauty』の中心テーマに「希望」と「内なる強さ」を据えたことは、当然といえるかもしれない。ジャナは、タイトル曲について、「人間とテクノロジーによって破壊された後の世界を想像した曲だ。人間が残したものと激しく対峙する中で、最終的には自然の純粋な美しさが勝利を収める」と語っています。自身の旅路と、私たちが直面している激動の時代からインスピレーションを得て、このアルバムでは異なる視点を楽曲制作に取り入れたいと考えた彼女は、サウンド面でも進化を遂げている。
80年代風のロックやヘヴィーメタルからの影響もありそう。「Higher」はどちらかと言えばギターヒーローからの影響を感じさせる。この曲に満ちるEUROPEのようなバンドの情熱的なボーカルは、今や女性ボーカルのイメージで縁取られることになった。 また、この年代のシンセ・ポップやエレクトロ・ポップ、ニューロマンティックのようなバンドからの音楽的な影響が受け継がれている。そういったメロディアスなロックソングがFrancis of Deliriumの魅力であり、ヨーロッパのロックバンドらしさでもある。「Damned」は助走を付けながらジャンプアップするような軽快な印象に満ちたロックソングである。曲の終盤では、不思議な高揚感がある。
インディーロックバンドとしての矜持が現れた「Little Black Dress」は、アルバムの注目曲の1つ。サビでは爽快感があり、カタルシスもあり、ライブなどでは映えそうなナンバーとなっている。この曲では「希望」と「内なる強さ」というテーマが明瞭な形であらわれているのではないかと思う。「Sucker Punch」でも清涼感に満ちたサウンドが、少しセンチメンタルな感覚のあるボーカルと組み合わされている。一方で、USオルタナティヴロックからの影響も感じさせる。「Open Up To Your Mouth To Love」はフォークやアメリカーナとロックソングの融合という流行りのスタイルを継承している。楽曲としては終盤に驚くべき曲調の変化がある。このバンドあるいはソングライターの感覚的な流れを音楽として見事な形で縁取っている。
アルバムの終盤では、センチメンタルで湿っぽい曲が多くなってくる。「Requiem For A Dying Day」では、80年代のポップやフォーク・ソングからの影響をにじませ、オペラティックな音楽とロックを融合させている。これはEURO圏から登場した新しいロック・オペラである。
一方、ほっとさせるようなカントリーとロックの融合を示した「Modern Madonna」も良曲であり、聞き逃すことができない。この曲では、数々の名バンドやアーティストとの共演を重ねてきたバンドとしての地力が現れた形となった。しかし、本作の究極のハイライトは間違いなく最終曲「It's A Beatutiful Life」となる。ミュージックビデオは、少しシュールで、このバンドやジャナの美学のようなものが表れ出ている。負け続けるバスケ選手。しかし、最後は見事シュートを決めるという、トホホな内容である。(ゲームに勝っていない)笑ってよいのか、それとも........。いずれにせよ、このロックソングは、基本的に聞き逃すことができないでしょう。
2022年の『Stay Close to Music』、2023年のEP『Postcards from Italia』を経て、ブランコはレコーディングから距離を置き、スイスで美術学修士号の取得に専念。多分野にわたるビジュアルアートの実践を深めた後、新たな集中力を携えてソングライティングへと戻ってきた。
「Looking Out Your Window」は、ビートルズに加え、アレックス・チルトン(Big Star)やエリオット・スミスを彷彿とさせる。特別な音楽的な要素はないのだが、メンデスのボーカルは、70年代のニルソンのようなじっくりと聴かせる響きがあり、また、それらがアコースティックギターの演奏と上手くハマっている。これらは彼が熟成してきた音楽性がようやく完成された瞬間でもある。暗さ、明るさ、悲しみ、喜びを交差しながら、切なげな音楽が象られる。しかし、こういったささやかなフォークソングが中盤以降にオルガンが入るだけで、奇妙なほど壮大な感覚を帯びてくる。いわば、悲しみや暗さの領域から明るい領域へと踏み込んでいくのである。かれの音楽はまた、フィラデルフィアの郊外の風景の素朴さから始まり、ニューヨークのような、きらびやかな地域の風景へ、少しずつ移り変わっていくような感覚がある。この曲もまた、小さな世界から徐々に大きな世界へと変遷していくような瞬間が切り取られている。
この曲は、二つの曲をつなぎ合わせたような構成を持ち、一曲目はボブ・ディラン風のフォーク・ソングで、二曲目の方はビートルズのデモソングのような感じで続いている。時代をさかのぼるような感覚があり、これはまたホームレコーディングの没時代性からもたらされるものだろう。「Everybody Wants To Be Your Friend(Except Me)」はシニカルな意味合いをにじませ、飄々としたフォークミュージックを紡いでいる。序盤から中盤の流れを安定化するような曲で、田舎性を思わせるサウンドから孤立感をシンガーは歌うが、それは柳に風といった感じだ。
「It Breaks My Heart」のような曲は、『Beauty Land』の印象的な箇所となるだけではなく、グレッグ・メンデスというシンガーソングライターのシンボリックな音楽性を形成する。どことなく内省的な雰囲気を持つフォークミュージックから、メロトロンのようなシンセの音色が流れてくると、こころなしか、ノスタルジックな感覚を帯びてくる。それは都会から郊外に帰ってきたときにふと感じるような安堵感、また、ほっとするような感覚を体現しているのである。
「Geranium」以降の楽曲でも、音楽的な方向性に変化はなし。それは人間の苦難や困難、その泥の中から本当に美しい一滴をすくい上げようという行為である。繊細な趣を持ち、ときに脆さ以上の崇高さを提示するフォークソング「Geranium」、ビンテージなアコースティックピアノの響きを追求したささやかな間奏曲「Interlude in D Minor」に続いて、アルバムのクライマックスが到来する。「Serving Drink」では、依然として、ビートルズ、エリオット・スミス、アレックス・チルトンといったフォークソングの名手たちの音楽性を踏襲し、彼らに肩を並べる。
「Safe Place」は、自分自身が自分の安全基地になるという宣言の楽曲です。自分が自分の一番の味方になること、それは簡単ではないけれど、だからこそ挑戦したいと思いこの曲を書きました。苦しかった時期に、Jamila Woodsの「Holy」の一節「I'm not lonely, I'm alone and I'm holy by my own」に深く支えられました。