Le Makeupが久々の新曲「はじまり」をリリース、2026年をスタートした。今年はリリースやライブを精力的に行う予定だという。環ROY、鎮座DOPENESSなどと並んで注目すべきビートメイカーのひとり。


Le Makeupは大阪の街が輩出した個性的なプロデューサーだ。J-POPを思わせるモダンなポップソング、ヒップホップをベースにしたローファイなど、多角的な音楽を取り入れるシンガー/プロデューサー。その個性的なサウンドは、大阪の街の雑多性を反映している。楽曲に感じられるほのかなエモーション。それは大阪、いや、日本全国津々浦々によくある風景とリンクする。


最近はソロリリースにとどまらず、テレビ東京のドラマへの楽曲のリミックス/プロデュース、NHK-FMの番組への楽曲提供、また、リミックスなどを通じて柴田聡子、Elle Teresaとのコラボレーションを行ってきた。アジアにとどまらず、ヨーロッパでのステージをこなし、活躍の場を広げてきた。


本日、リリースされるニューシングルは文字通り、ル・メイクアップにとって2026年の出発の合図となる。ギター、シンセ、オートチューン/ボコーダーのボーカル、ヒップホップビートが重層的に折り重なり、それまで曖昧に過ぎなかった自己と世界を繋ぐ明瞭な橋がかたちづくられる。


詩情溢れる歌詞にも注目したい。車窓に映る自分の等身大の姿、そこから世界が膨らんでいき、他者への想いへと繋がり、パーソナルな視点からパブリックな視点へと移ろい変わっていく。ランタイムごとにラウンドスケープが変化していく不思議な感覚があり素晴らしい。ル・メイクアップは日々、自分の現在地をアップデートさせ、軽快なサウンドをファンのもとに届ける。



▪️Le Makeup「はじまり」



Digital | PURE011  | 2026.02.06 Release

Released by AWDR/LR2

[ https://ssm.lnk.to/hajimari ]


Le Makeup、久々の新曲。リリースやライブを精力的に行う予定の2026年、スタートを感じさせる「はじまり」。


印象的なミニマルなギター/シンセにブレイクビーツ、感情や自己を投影するリリックが融合したミニマル・アンビエント・ポップ。本楽曲は、NHK-FM「ミュージックライン」の2・3月度エンディングテーマにも起用されている。


▪️EN

Le Makeup, a new track after a long hiatus.“hajimari (The Beginning)” signals the start of 2026, a year planned for vigorous releases and live performances.


A minimal ambient pop track where striking minimal guitar/synth and breakbeats fuse with lyrics projecting emotion and self.This song has been selected as the ending theme for NHK-FM's “Music Line” for February and March.


作詞・作曲・編曲:Le Makeup

ギター、シンセサイザー、プログラミング、ミックス:Le Makeup

マスタリング:木村健太郎 (Kimken Studio)

アートワーク:Le Makeup

アーティスト写真:佐藤麻優子


Le Makeup:


シンガー/プロデューサー。関西学院大学在学中に作曲へと本格的に取り組みはじめ、以降国内外の様々なレーベルから作品を発表する。2020年にアルバム「微熱」をリリース。中国・韓国・オランダ・デンマーク・ドイツでもパフォーマンスを行う。


2023年2月にDove、gummyboy、JUMADIBA、Tohji、環Royが参加したアルバム「Odorata」をリリース。Pitchforkで取り上げられるなど話題となった。


2024年5月にオノ セイゲンがマスタリング・エンジニアとして参加したアルバム「予感」をリリース。東京・大阪で初のワンマン公演「予感」を行った。


▪️EN

Le Makeup is a japanese Singer/Producer/Beatmaker. He began seriously pursuing composition while attending  Kansei Gakuin University(Hyogo), subsequently releasing works on various domestic and international labels. In 2020, he released the album “Binetsu” After that he's performed in China, South Korea, the Netherlands, Denmark, and Germany.


In February 2023, he released the album ‘Odorata’ featuring contributions from Dove, gummyboy, JUMADIBA, Tohji, and Tamaki Roy. It garnered attention, including coverage by Pitchfork Magazine.


In May 2024, Le Makeup released the album ‘Premonition’ with Seigen Ono participating as mastering engineer. Held his first solo concerts, titled ‘Premonition’, in Tokyo and Osaka.

Weekly Music Feature:  John Cragie

 Photo: Bradly Cox

未知の才能と出会ったとき、大きな感動を覚える。今週紹介するジョン・クレイグのそのひとり。アメリカのシンガーソングライター、 John Craigie(ジョン・クレイギー)は人々を惹きつける音楽を作り続けてきた。彼の歌には理想的なアメリカの歌の魅力があり、そしてロマンやワイルドさもある。何よりクレイグの音楽はアメリカのローカルな魅力に満ち溢れていて本当にクールだ。


本日、フィジカルとデジタルで発売されるクレイギーのスタジオ・アルバム『I Swam Here』は、2025年1月にニューオーリンズで録音された。本作の大半は、ザ・デスロンズのサム・ドアーズが厳選したミュージシャンらがクレイギーを支えている。 ピアノ、オルガン、ボーカルを担当する彼と共に、ドラムにハウ・ピアソン、ベースにマックス・ビエン・カーン、ペダル・スティールにジョニー・カンポスを迎え、1曲ではデズィレ・キャノンがボーカルで参加している。


クレイギーがプロデューサーを務めたが、長年の友人で共同制作者であるアンナ・モスはほぼ全曲に参加している。ニューオーリンズで録音された10曲中7曲には、現地ミュージシャンの影響と才能が滲む。 次いで、 残りの曲は、数か月後にオレゴン州アストリアにあるロープ・ルームで、別のバンドとともに、ニューオーリンズでのセッションの美学を引き継いでレコーディングされた。それはツギハギではないアコースティックの生々しい録音の魅力という形にあらわれ出ている。また、ニューオーリンズに住んだ経験のある B. シャルが描いたカバーアートも粋だ。50年代および 60年代の多くのサンバやジャズのレコードのスタイルとデザインを反映している。


アルバムのファーストシングル「Fire Season」は、長年の協力者であるバート・バドウィグがエンジニアを務めた。この曲は、本プロジェクトのために最初に書かれた曲。アストリアで、クレイギーが『Mermaid Salt』で仕事をしたクーパー・トレイル(ドラム)とネバダ・ソウル(ベース)が再び参加して録音された。また、ルーク・イストシー(ベース、ブラインド・パイロット、マイケル・ハーレー)とジェイミー・グリーナン(ペダル・スチール)も参加しています。


さらに2ndシングル「Dry Land」は、別の道を進んでいる。録音の拠点のニューオーリンズで最初のバージョンを録音したものの、クレイギーはテンポが気に入らず、不必要な長いブリッジをどうにかする必要があった。数か月後、アストリアでピアノのラインと弓で弾くアップライトベースを変えて再録音した。


3rdシングル「エドナ・ストレンジ」はマーティ・ロビンスの楽曲や西部劇のガンマン・バラードに着想を得たという。クレイギーがスチール弦アコースティックを弾く唯一の楽曲で、マックス・ビエン・カーンがナイロン弦ギターのリードを担当。アンナ・モスのボーカルが入らない数少ない曲の一つであり、バックで聴こえる男性トリオのボーカルでマーティ・ロビンスへのオマージュが捧げられた。


2024年の『Pagan Church』——TK & The Holy Know-Nothingsとの絶賛され、アメリカーナ・アルバムチャートで6週連続1位を記録したコラボレーション作に続く本作は、クレイギーのミュージシャンとしての最盛期を捉えた作品といっても過言ではあるまい。ガルフコーストの音楽史と太平洋岸北西部の静かな自然音から着想を得て、広がりと親密さを併せ持つ作品となっている。


Forest Grove, OR


ジョン・クレイギーの音楽は、スタジオの枠を超えて共鳴し続けている。米国、欧州、オーストラリアでのソロ/バンドツアーは毎回満員となり、ニューポート・フォーク・フェスティバル、ピカソン、エドモントン・フォーク・フェスティバル、ハイ・シエラなどに出演している。ラングホーン・スリム、ブレット・デネン、シエラ・ハル、グレゴリー・アラン・アイザコフ、メイソン・ジェニングス、ベラ・ホワイト、ジャック・ジョンソンらと共演を重ねている。


また、ミュージシャンの慈善的な活動にも着目したい。毎年恒例のKeepItWarmツアーでは、チケット1枚の売上ごとに、1ドルが地域の食料不安対策に取り組む非営利団体に寄付される。また、カリフォルニア州トゥオルミ川やオレゴン州ローグ川で行われる「ジョン・クレイジー・オン・ザ・リバー」ツアーは、ファンや友人たちにとって唯一無二の集いの場となっている。こういった草の根の運動こそ、彼のファンを増やし続ける要因ともなっているのは事実だろう。


『I  Swam Here』はニューオリンズやオレゴンの土地に根ざし、共同制作によって形作られ、ソングライター兼プロデューサーとしてのしたたかな手腕に導かれている。ニューオーリンズの精神と太平洋岸北西部の静けさが溶け合い、自身の限界を探求するアーティストの密やかな自信が滲む。



 ▪️John Craigie『I Swam Here』- Zabriskie Point Records



ジョン・クレイギーの最新作は、一般的に言われるアメリカーナの醍醐味を余すところなく伝える作品となっている。近年では、アメリカーナがインディーズロックやポップスの中にごく普通に組み込まれることになったが、それは同時にアメリカの持つアクのような部分を薄めてしまう場合が多い。アメリカーナはファストファッションのように気軽に取り入れるものではなく、木が根を張り、幹を伸ばし、そして枝をつけ、可憐な花をつける長い年月を示している。

 

それらはもちろん、フォークやカントリーの系譜において、ディラン、ヤング、ミッチェル、イーグルスを中心に育てられてきた一本のたくましい大木でもあるのだが、枝葉末節だけではアメリカーナの本質を表すとは到底言えそうもない。その点において、グレイギーは、現代的なフォークシーンの中で最も強い幹を持ったミュージシャンだ。Lord Huron(ロード・ヒューロン)のような現代的なフォーク/カントリーのシンガーソングライターと並んで、強固なオリジナリティを持っている。彼のサウンドはときおり、ビング・クロスビーや西部劇のような古典的なサウンドの妙味を持つが、それらは時を越え、2020代に生きる私達の心にすっと浸透してゆく。

 

今回のアルバム『I Swam Here』は音質が非常に良く、その艷やかな音の質感は、レコードの品質に近い。アコースティックギター、ささやくような歌唱から、包み込むように優しげな歌唱、そしてジャズや歌謡的な音楽に見いだせる楽器で作られたムードのあるアンビエンスに至るまで、強固な音楽的な世界が構築されている。フルアルバムとは、一つの強固な世界を意味し、それは文学や映像に視聴者が物語にがっつりと没入するように、音楽の持つ深層の世界に聴き手を潜りこませなければいけない。それはシリアスなものであれ、バカバカしいものであれ、絶対に必要な糸口でもある。これらがフィクションの醍醐味で、言ってみれば、現実的な世界を忘れさせる力があり、また、もう一つの並行する世界が実在することを証し立てるのである。

 

本作の音楽の中で、アコースティックギターに並んで強いベクトルを働かせるのが、ウッドベースのスタッカートを多用するベースラインだ。ジャズスタンダードの伝統的な音楽性を持ち込み、それらをフォーク/カントリーと融合させる。それらの音楽の中には、ラグタイムジャズの範疇にあるピアノの旋律が華麗に駆け巡り、ノスタルジックな映画音楽のごとき世界観を形作る。

 

「Mermaid Weather」はミュージシャンが提示する音楽的な世界の序章でもあり、一連の物語の導入でもある。アルバム全体のイントロのように鳴り響き、それらが少し空とぼけるように歌われるボーカル、ブラシを使用したミュート効果を強調するドラム、また、ブギウギや歌謡の時代のロマンを反映させた、心地よいメロディーにより全体的な音楽が構築されていく。また、それらの音楽的な構成の中で、A-Bの楽節を対比させ、また調性を呼応させる。まるでやまびこのような曲のストラクチャーの中で、ムード歌謡のような雰囲気のある音楽を組み上げる。その中で、ハワイアンギターのように響くナイロン弦のギターが柔らかな雰囲気を生み出す。

 

「Fire Season」も同様に、ベースとドラムが連動し、「Stand By Me」のようなスタンダードなジャズソングのリズムの枠組みの中で、陶酔感のあるボーカルが温かい響きを作り出す。 リズムは時々、ボサノバのような南米音楽にも近いシンコペーションを作り、ノリの良いゆったりとしたリズムを作り出す。


また、この曲は、細野晴臣のボーカルを彷彿とさせ、『泰安洋行』の時代のサウンドを思い起こさせる。言うなれば、ワールドミュージックの音楽をセンスよく取り入れながら、ダイナミックなアメリカーナの曲に置き換えている。また、スティールギターは単体で鳴り響くだけではなく、オルガンとユニゾンを描くようにして、美しく穏やかな音楽的な空間性を作り出す。


また、全体的なリズムにも工夫があり、サンバの変拍子が全体的な拍に微分で組み込まれる。入り口は典型的なアメリカーナと思われたこのアルバム。しかし、意外なことに、少しずつその情景が移ろい変わっていくような感覚がある。また、サビの直前ではドラムフィルがざっくりと入っていき、心地よいリズムを生み出す。そして間奏の部分では再び、ウッドベースがスティールギターと美しく溶け合い、陶酔感のあるシークエンスを作り出している。この曲は、浜辺の風景を思い起こさせ、夕焼けと海のようなロマンティックな光景が音の向こうににじむ。

 

アンサンブルが際立つ序盤の収録曲の中で、「Follow Your Whisper」はアコースティクギターの弾き語り、つまりソロ演奏の性質が強まる。硬いスティールギターで作り上げたシークエンスを背景に敷き詰めて、その音楽的な枠組みの中で気分良く紡がれるアコースティックギター、そして渋さを持つボーカル、その間に入るバスドラムのキック、これらが渾然一体となり、陶酔感があり奥行きのある崇高なサウンドを構築していく。また、ジョン・クレイギーはビートルズのカバーアルバムも制作していることからも分かるように、音楽的には60−70年代のポピュラーの楽曲の構成の影響を取り入れながら、見事なコントラストを持つ一曲に仕上げている。

 

これらは従来、フォークやカントリーそのものが形式主義の音楽から成立していることを踏まえて、新しく上記のジャンルの新しい構成を作り上げようという意図を汲み取ることができる。また、細かな音響効果にも気が配られ、シンバルを長く鳴らし、それらにエフェクトをかけ、メロディーの側面が強いこの曲にパーカッシヴな影響を及ぼしている。要するに、音ひとつひとつに細心の注意が払われ、それらはガラス細工のように精巧な音の作りになっている。さらに、それらのアンビエンス効果の多くはアコースティック楽器から作られているのである。

 

 

「Follow Your Whisper」

 

 

「Edna Strange」はシュールで風変わりな一曲であり、西部劇のサウンドトラックを思い起こさせる。砂漠、馬、カウボーイ、モーテル、果てしない国道など、お決まりの西部劇やガンマンの雰囲気があるが、この曲に古風なダンディズムを添えているのが、ボブ・ディランを彷彿とさせるブルージーなクレイギーの歌声である。「風に吹かれて」のようなハードボイルドの世界。最終的には、ビング・クロスビーの音楽のような古典期なポピュラーソングに接近していく。


この曲で中心的な役割を担うスティールギターは、曲の雰囲気と良くマッチしていて、途中に使用されるエレクトリックギターのブルースの演奏の響きと上手く溶け合っている。また、他の曲よりも古典的なカントリーギターの影響が滲み出てくる瞬間もあり、ハンク・ウィリアムズやジョン・デンバーのような20世紀はじめのフォーク・ソングの源流を探し出すこともできる。この曲はジョン・クレイギーのボーカルが本当にかっこよくて、クールな雰囲気が漂う。


「Dry Land」は、ビートルズ直系のフォーク・ソングである。イントロのボーカルの節回しは明らかにビートルズを意識しているが、やはりその後の流れは少しずつ変化していく。アメリカーナのスティール・ギターとピアノの旋律が絡み合い、重厚な音楽世界を作り上げる。そしてその向こうから聞こえてくるクレイギーのボーカルは、まるで幻想的な砂上の楼閣の向こうに美しい情景が浮かんでくるような瞬間を捉えられる。また、ボーカルの重ね録りによって、アーティストが志向する平和で融和的な世界観が実現される。

 

「Call Me A Bullet」はフォークバラードの一曲で、やはり細野晴臣のボーカルを彷彿とさせる。ポップソングやヒット・ソングの旧来の形を踏まえて、それらをオリジナリティ溢れる楽曲に仕立てている。クレイギーの楽曲は、全般的にも言えることであるが、宇宙の調和を大切にしていて、それは日常的な感覚からくる出来事とより大きな神秘的な出来事の合致を意味する。


ここには自然愛好家の姿が垣間見え、大きな、もしくは小さな自然と接するときに感じられる崇高な感覚が、美しいバラードに乗せて歌われている。音楽的にも、楽器のパートや全音の音域のバランス、また、倍音のような本来は鳴っていない音の残響に至るまで配慮され、それらが一つに組み合わされ、調和的なハーモニーを作り出す。これらはどの音が心地よく響き、また、他のどの音が心地よくないのか、ミュージシャンとしての実地の体験の蓄積が滲み出たもので、単なる音楽理論や知識だけでは、まかないきれないものである。いわば、このアルバムの中心にあるのはミュージシャンとしてのみならず、一個人の体験や経験が表側にあらわれている。だから、このようなタイトルでさえも、ジョークに富んだ表現のように感じられるのである。全体的には、ニューオリンズのような米国南部の空気感が美しい響きを作り上げている。

 

しかし、同じようなタイプの楽曲を選ぼうとも、曲そのものはあまり似通うことがないのがすごい。「Claws」はボブ・ディランやCSN&Yとならんで、最初期のトム・ウェイツの音楽性に近い。ブルースはもとより、ジャズスタンダードの影響を踏まえ、それらをフォークソングに昇華させている。 まるで観光者がミシシッピ川の近郊にあるニューオリンズのクラブにぶらっと入り、現地のバンドやミュージシャンの演奏を目撃する。そんなモーメントを思わせる。必ずしも、トム・ウェイツのようなシンガーが酔いにまかせて歌を実際に歌うとは限らないのだが、それに近い、酔いどれ詩人のような雰囲気に満ち溢れていて素敵だ。曲ごとに、時間が変化し、ある曲は朝の爽やかな光景、夕暮れ時の慕情があったかと思えば、この曲では夜の歓楽街のような扇情的な空気感が滲み出ている。これらの空気感と呼ばれるものもまた、実際の生活から汲み出されるもので、実際には音楽的な理論や作法だけで作り上げることは不可能である。

 

フォーク/カントリーというのは、ソロシンガーを中心に、デュエットの形式を通じて発展してきた。また、それは男性的なボーカルと女性的なボーカルの組み合わせでもある。「Mama I Should Call」は二拍子の簡素なデュエット曲で、フォーク/カントリーの重要なテーマ(それらは戦時中には男女間の慕情へ変化し、戦後には反戦のような主題に変わることがあった)望郷を引き継ぎ、ニュースタンダードを形作ろうとしている。カントリーのような音楽の主題であるトニック、ドミナント、サブドミナントを中心とする基本的な和声法の進行を通じて、またときどきジャズの和音を交えながら、スタイリッシュな感覚を持つフォークバラードに仕上げている。

 

最も深い瞑想的な音楽性が出てくるのが「I Remember Nothing」で、前の曲と繋がっているような感じである。ハモンドオルガンの向こうからエレクトリックギターの演奏が入り、ドアーズのような楽曲性を作る中、同じように瞑想的なボーカルが美しい楽曲の展開を作る。ボーカルの面にも注力され、ゴスペルのように荘厳なコーラスワークがメインのボーカルと組み合わされるとき、息を飲むような美しい楽の音が現れる。アルバムの終盤のハイライトとなりそうだ。

 

列車の汽笛を模したイントロのギターの余韻、そして古典的なジャズボーカルの世界を体現する「Don't Let Me Run Away」は聴いたあと、腑に落ちるような感覚がある。長いアーティストの旅を遠巻きに眺める感覚、それらはアルトサックスの船の汽笛を思わせる響きや、クレイギーの味のあるボーカル、そしてレコードの音質やノイズを体現させたようなサウンドにより培われている。とくにタイトルが歌われるとき、印象的な映画のワンシーンを見ている気分になる。


このクローズ曲には、ハモンドオルガンの古めかしい響き、そして、アメリカーナの典型的なスティールギターが混在し、重厚感のある音楽世界を構築している。聴いていてうっとりするような素晴らしいエンディング曲。それらはミュージシャンの人生の集約でもあるのだろうか。

 

 

 「I Remember Nothing」

 

 

 

92/100 

 


▪Listen/Stream: https://found.ee/JC-I-Swam-Here

 

 Lande Hekt  『Lucky Now』


Label: Tapete

Release: 2026年1月30日

 

 

Review

 

イギリスのシンガーソングライター、Lande Hekt(ランデ・ヘクト)は2022年のアルバム『House Without A View』以来の最新作『Lucky Now』を先週末にリリース。2022年のシングル「Romantic」を聴くと分かるように、パワーポップやジャングルポップを中心とする良質なソングライターで、甘酸っぱく切ないメロディーをさらりと書き上げる能力を持ち合わせている。『Lucky Now』は前作の延長線上に位置するアルバムで、良曲揃いのアルバムとなっている。

 

アルバムのサウンドは、インディーフォークやネオアコースティックが主体となっている。本作の冒頭曲「Kitchen Ⅱ」は、思わず口ずさんでしまいそうなキャッチーなフレーズ、どことなく懐かしい感じのするメロディーで満載となっている。ほどよく力が抜けたボーカル、そしてドラム、ベースと聞きやすさを重視したサウンドで、爽やかで軽快なオープナーとなっている。

 

タイトル曲は、同じくネオアコースティックに属するが、ランデ・ヘクト持ち前の甘酸っぱいメロディーセンスを活かした良曲となっている。これらのサウンドは、アズテック・カメラ、オレンジ・ジュース、パステルズ、ヤング・マーブル・ジャイアンツなど、このジャンルの代名詞となるグループを彷彿とさせるものがある。決して現代的なサウンドとは言えないけれども、独特な雰囲気の曲展開、そして柔らかな曲の雰囲気についつい惹き込まれてしまうことがある。


また、「Rabbits」などを聴くと分かる通り、The Undertonesのような北アイルランドのパンクバンドの影響を感じさせることもある。 そういった中、ギターに薄いフェイザーをかけたようなサウンドを中心とする「Favourite Pair of Shoes」は前半の一つのハイライトとなりえる。ボーカルメロディーの親しみやすさもさることながら、ギターワークに光る部分があるのに注目だ。『Lucky Now』は、純粋なボーカルアルバムというよりも、その向こうから聞こえるギターリフに一瞬のきらめきが込められている。ドラム、ベースというシンプルなバンド構成がそれらの曲をほんのり引き立てている。また、曲全体から感じられる叙情的な音楽性からはどのような風景が思い浮かべられるだろうか。曲そのものが何らかの換気力に富んでいるのにも着目したい。

 

そういった中で、インディーフォークに舵をとった「Middle Of The Night」は新鮮な響きが込められている。クリアな雰囲気の中で、美麗なギターのアルペジオ、そしてバンジョーのような響きが聞こえてくる。さらに、夜の澄んだ空のような神秘的な雰囲気が立ち上ってくることがある。ここには、ランデ・ヘクトの吟遊詩人的なミュージシャンの姿を捉えられる(かもしれない)。


パワーポップやジャングルポップの雰囲気で繋がる「Circular」は、おなじみの陰影のある曲調に、ザ・リプレイスメンツのようなサウンドが加わる。そしてそれらは、全般的なロックの文脈の中で行われ、依然としてキャッチーな曲調を維持している。また、ここでもサビ(コーラス)の最後の方で、チューブアンプを中心としたギターワークがキラリと光る。それはランデ・ヘクトのソングライティングの中で、ギターソロが大きな割合を占めることの証でもある。

 

 アルバムの後半では、さらにインディーフォークやネオ・アコースティックの性質が強まり、「My Imaginary Friend」ではレモンヘッズ、ザ・ポウジーズ、ヴェルヴェット・クラッシュにも比する甘酸っぱいメロディーが満載である。それらがセミアコースティックギターの演奏を中心にボーカルと合わさり、爽やかな雰囲気を呼び込む。今回のアルバムで少しわかったことは、ランデ・ヘクトのソングライティングは、物申すような自己主張的なサウンドではなく、控えめで抽象的なサウンドである。それが80年代から90年代にかけてのインディーロックやパワーポップと結びついている。それはまた続く「The Sky」にも共通する点であると思われる。

 

最終盤ではこれまでの主要な楽曲とは異なる雰囲気の曲が出てくる。異色ではあるが、良曲ぞろいである。「Submarine」、「Coming Home」などは、ビートルズやビーチボーイズのサウンドをパワーポップやジャングルポップの側面から再構築している。 特に、アルバムをしっかりと聴いたファンはきっと、「Submarine」が隠れた名曲であることに気づくはずだ。楽曲の構成は以前よりもダイナミックになっていて、より大きな構想を練っているような気配も感じられる。この曲でもギターソロがクールな箇所がある。2分以降を聞き逃さないようにしてもらいたい。


まだ、このアルバムで最終的な答えが出たとは言えないかもしれない。しかし、ランデ・ヘクトの音楽性はいよいよ核心に近づきつつある兆候を捉えられる。クローズ曲「Coming Home」は叙情的なサウンドで聴かせる箇所があり、フォークとロックの中間にある淡い感覚を見出せる。

 

 

 

78/100 


 

 「Submarine」- Best Track





▪️過去のレビュー


LANDE HEKT 『HOUSE WITHOUT A VIEW』
©︎ Rachel Winslow


シカゴのピアニスト/作曲家、Gia Margaret(ジア・マーガレット)が2018年の『There's Always Glimmer』以来となる初ボーカルアルバム『Singing』を発表した。アコースティックピアノを中心に制作された前作『Romantic Piano』に続く待望の新作となる。アーティストは近年来日公演も行っている。


『Singing』の音楽は、沈黙の中で培った宝石細工師のような細部への繊細な感性を示している。「音を聴いて何かを感じる。だからこそ私たちは音楽に惹かれる。スタジオのあらゆる機材に深い感情的な愛着がある。各楽器には、私に特定の感情を抱かせる何かが宿っている」とマーガレットは語る。


『Singing』制作の過程は、そうした感覚一つひとつを信頼する方法を学ぶ旅だった。アルバムの一部はロンドンでFrou Frouのガイ・シグスワースと共に録音され、彼がマーガレットの奔放なアイデアを統合する手助けをした。  


次作には声楽の魅力が凝縮されている。ILĀによるグレゴリオ聖歌やターンテーブルのスクラッチなど、数多くの要素が込められいる。 またデイヴィッド・バザンとエイミー・ミラン、カート・ヴァイルとショーン・キャリーも参加。マーガレットの長年の共同制作者ダグ・サルツマンは本作の大半で演奏と共同プロデュースを担当。ザ・ウィーピーズ出身のデブ・タランは、アルバムの締めくくりであり決定的な声明とも言える「E-Motion」に歌声とピアノ、ギターを提供した。 


「こうしたコラボレーター(今は友人)との出会いの多くは、まったくの偶然の産物でした」とマーガレットは語る。 「まるで彼らが私の中に何かを感じ取ったかのよう。それは確かに、そもそも彼らに影響されたものだったと思う」しかし彼女が言うように、他のアーティストに音楽を開放しようとした試みは「結局、自分自身へと戻ってきた。なぜなら、私は本当にプロデュースが好きだと気づいたから。自分でそれらを探求しないことで、何かを見逃している気がした」


ジア・マーガレットは過去に声帯を痛め、シンガーとしては厳しい状態に立たされたものの、前作で自信を取り戻し、ボーカルアルバム『Singing』で復活を遂げる。先行シングル「Everyone Around Me Dancing」はピアノとエレクトロニックのビート、ボーカルを掛け合わせた優美な一曲。同楽曲はキャサリン・ロメディコ監督によるミュージックビデオが同時公開された。


「Everyone Around Me Dancing」


Gia Margaret 『Singing』


Label: jagujaguwar
Release: 2026年4月26日


Tracklist:

1.Everyone Around Me Dancing

2.Cellular Reverse

3.Alive Inside

4.Moon Not Mine

5.Rotten

6.Rotten Outro

7.Good Friend

8.Phenomenon

9.Ambient for Ichiko

10.Phone Screen

11.Guitar Duo

12.E-Motion


ニューヨークの作曲家/シンガー、Mitskiが2月27日、Dead Oceansよりニューアルバム『Nothing’s About to Happen to Me』をリリースする。本日、同作のセカンドシングル「I’ll Change For You」を公開した。ミツキの新アルバム『Nothing’s About to Happen to Me』が2月27日、Dead Oceansよりリリースされる。また、世界規模のツアー日程も発表された。


Nothing’s About to Happen to Me』では、ミツキが荒れ果てた家に閉じこもる女性を主人公とした豊かな物語に没入している。 家の外では彼女は異端児、家の中では自由。レキシー・アレイ監督、レナ・ジョンソン編集による「I’ll Change for You」のミュージックビデオは、この世界を拡張し、アレイが撮影したアルバム写真で提示されたタンジー・ハウスの混沌とした散らかった宇宙へと深く踏み込む。


ミツキは『Nothing’s About to Happen to Me』の全楽曲を作詞作曲し、全ボーカルを担当。パトリック・ハイランドがプロデュースとエンジニアリングを、ボブ・ウェストンがマスタリングを手掛けた本作は、『The Land Is Inhospitable and So Are We』(2023年)で確立された音楽的路線を継承し、『The Land』のツアーバンドによる生演奏とアンサンブルアレンジをフィーチャーしている。 オーケストラはサンセット・サウンドとTTGスタジオで録音され、ドリュー・エリクソンが編曲・指揮を担当、マイケル・ハリスがエンジニアリングを担当した。


ミツキは『Nothing’s About to Happen to Me』を世界各国の主要都市で披露し、主要会場でのレジデンシー公演を実施する予定。


ミツキの常連コラボレーターであるパトリック・ハイランドがプロデュースとエンジニアリングを担当した「Nothing's About to Happen to Me」は、ボブ・ウェストンによってマスタリングされた。ミツキはアルバムの全楽曲を作詞作曲し、全ボーカルを自ら担当。ツアーバンドがバックを務めた。また、ドリュー・エリクソンが編曲・指揮、マイケル・ハリスがエンジニアリングを担当したオーケストラとのレコーディングをサンセット・サウンドとTTGスタジオで行っている。


「I'll Change For You」

九段ハウス/東京・千代田区 ©︎Martin Margiela


登録有形文化財・九段ハウスにて、アーティストとして活動するMartin Margiela(マルタン・マルジェラ)の日本初となる大規模個展「MARTIN MARGIELA AT KUDAN HOUSE」を開催いたします。

 

1927年竣工の歴史的な邸宅という空間に、現代美術作品を展示するというコントラストに、Margielaは強い関心を寄せています。本展では、邸宅全体を舞台に、数多くの作品が儚くも一時的なインスタレーションとして展開されます。


 

・ABOUT THE EXHIBITION


Martin Margielaは、再利用、分解、変容といったテーマへの探究を継続しており、その創作において人間の身体は今なお重要なインスピレーションの源であり続けています。


Margielaの作品は、日常の中にありながら見過ごされがちな物や状況への鋭い観察から生まれ、平凡なものが非凡なものへと転化していきます。


本展では、コラージュ、絵画、ドローイング、彫刻、アッサンブラージュ、映像作品など、多様な技法による作品を紹介します。


生活の痕跡が残る古い邸宅に作品を設えるという選択は、Margielaにとって大切な「私的な空気感」を反映するものです。


来場者は、邸宅全体に広がるさまざまな部屋を巡りながら、極めて親密な距離感の中で作品と向き合う体験へと招かれます。


なお、展示構成およびキュレーションは、すべてアーティスト自身によって手がけられています。

 

・FROM THE ARTIST


「匿名性は、私の創造の自由にとって不可欠なプライバシーを守るために必要なものです。

ファッションの時代と同じ興味や強迫観念を、私は今も持ち続けていますが、人間の身体はもはや唯一の表現媒体ではありません。」


「私は常に観察者であり、日常的な物や状況から強いインスピレーションを受けています。

今日ではさまざまな技術的サポートを用いることが当たり前になっていますが、私は可能な限り、手仕事のプロセスを見せることにこだわっています。それが、不完全さやパティナ、未完成の美に対する私の深い愛情につながっています。」


「私は答えを示すよりも、問いを投げかけたいのです。」


・ABOUT THE EXHIBITION VENUE


本展の会場となる九段ハウスは、1927年に竣工したスペイン様式の洋館を改修した、会員制ビジネス・イノベーション拠点です。旧山口萬吉邸として知られ、現在は登録有形文化財に指定されています。


本年4月、Martin Margielaはこの場所において、かつての家族邸宅が持つ私的で親密な空気感を蘇らせることを選びました。


九段ハウスを訪れたMargiela自身もその佇まいや空気感に強い共鳴を覚えています。


2000年、彼は東京・恵比寿の歴史ある邸宅に、世界初となる「Maison Martin Margiela(メゾン マルタン マルジェラ)」の店舗をオープンし、浴室やキッチンを含む邸宅全体にコレクションを展示しました。


そして四半世紀を経た2026年、再び東京へと戻り、同じく歴史的な邸宅である九段ハウスで作品を発表することを選びました。


「再び東京に戻り、1927年に建てられたこの家で作品を見せられることを嬉しく思います。2000年のときと同じように、来場者が各部屋の親密な空間の中で作品と出会い、驚きを感じてもらえることを願っています。」 -Martin Margiela 

・SELECTED WORKS



・ABOUT THE ARTIST : Martin Margiela

1957年 ベルギー・ルーヴェン生まれ

1980年 アントワープ王立芸術学院卒業

1984–1987年 Jean-Paul Gaultier(ジャン=ポール・ゴルチエ)(パリ)のアトリエでデザインアシスタントをスタート

1988年 Jenny Meiren(ジェニー・メレンズ)とともにパリで「Maison Martin Margiela(メゾン マルタン マルジェラ)」を設立、初のショーを発表

1997–2003年 「Hermès(エルメス)」(パリ)ウィメンズ クリエイティブ・ディレクター

2008年 20周年ショーを機にファッション界を離れ、ビジュアルアートに専念

2019年 Bielefeld Kunsthalle(ビーレフェルト美術館)にて初のグループ展

2021年 パリのLafayette Anticipations(ラファイエット・アンティシパシオン)にて初の個展

2022年 同展が北京・MWoods(エムウッズ)に巡回

2023年 同展がソウル・Lotte Museum of Art(ロッテ美術館)に巡回

2023年 アムステルダム・Eenwerk Galleryにて個展

2024年 ブリュッセルおよびアテネのBernier / Eliades Galleryにて個展

・EXHIBITION DETAILS

会期:2026年4月11日(土)- 2026年4月29日(水)

開館時間:10:00〜19:00(最終入場18:00)

※2026年4月29日(水・祝)のみ最終入場16:00、閉館時間17:00

会場:九段ハウス

〒1020073 東京都千代田区九段北1-15-9

観覧料:一般 2,500円(税込)

チケット購入オンラインサイト:

https://artsticker.app/events/103820

【クレジット】

主催:原田 崇人(rin art association)

共催:kudan house

協力:Bernier / Eliades Gallery

 Gallery NAO MASAKI

Taka Ishii Gallery

協賛:株式会社ジンズホールディングス

制作:黒瀧 紀代士

Kornieieva Varvara

黒瀧 保士

   

制作協力:

株式会社 アートコア

株式会社 原人社

ハイロックデザインオフィス

糟谷 健三

 

ウェブデザイン・制作:

Thought. / SA . 

イングリッシュ・バロックの世界 シェイクスピアと演劇 ヘンリー・パーセルのセミオペラの登場

 

・フランスとの交流 イギリス国教会との音楽の歩み

シェイクスピア

 

イタリアやフランスで沸き起こったルネサンス運動は、イギリスでも16世紀から17世紀にかけて隆盛をきわめた。元々、イギリス文化に関しては、単一民族で成立したものではない。10世紀にノルマン人が北フランスのコタンタン半島にノルマンディー公国を打ち立てた。6世紀ごろからノルマンディはイングランドに侵攻し、専有地を設けた。その後、1066年になると、ノルマンディー公国のウィリアムがイングランドを征服、やがてノルマン朝を樹立した。


このあと、およそ300年にもわたってイギリスは、北フランスとの文化的な交流を続けた。おのずと、宮廷文化の形式、教会文化を両国は共有することになった。また、それ以降、イギリスにはフランスの音楽が伝来し、12世紀から13世紀にかけてイギリスの音楽のほとんどはパリの影響下にあった。イギリス音楽はノートルダム楽派の影響を受け、発展し、やがてそれはフランスのブルゴーニュ楽派の成立を後押しした。

 

こうした中、イギリス音楽は第二期とも呼ぶべき発展の時代を迎えた。それが宗教音楽の時代である。イギリス国教会ではカトリック的な典礼の中で、音楽文化を育んできたが、ヘンリ8世の時代から従来のカトリック式の典礼を改革した。従来のラテン語での歌唱を取りやめ、音楽的にもカルヴァン派の手法を取り入れることになった。その中で、アンセムが登場し、合唱隊が活躍。エリザベス一世の時代には、バード、タリスといった宗教音楽の優れた作曲家が登場した。

 

いかにイギリス音楽の発展が公国や王族、そして宗教音楽によって支えられてきた側面があるとはいえども、16世紀から17世紀以降に差し掛かると、イタリアのオペラが登場し、イギリスンの音楽も変容せざるを得なくなった。そして、このイタリアやフランスでのオペラやバレエの発展を期に、イギリスのバロック音楽も歴史上において重要な分岐点を迎えたのだった。

 

 

・シェイクスピアと演劇、そしてオペラ 


その音楽発展を支えたのが、戯曲や演劇で有名なウィリアム・シェイクスピアである。現在ではシェイクスピアのオペラは総数300以上にものぼり、もはや定番化している。通称ロミジュリこと「ロミオとジュリエット」、 「マクベス」、「夏の夜の夢」など、グノー、ヴェルディ、ブリテンなど国内外の優れた作曲家らが、シェイクスピアの劇伴音楽に取り組んできた。


シェイクスピアの戯曲は、文章だけで読んでも味気なく、舞台上の人物たちの動き、口頭劇、そして時には音楽的な内容が伴わないと、物足りなさを覚える。言ってみれば、シェイクスピアが目指したのは、オペラそのものだったのではないかとさえ思える。

 

ウィリアム・シェイクスピアはゲーテ、セルバンデスと並ぶ世界的な文豪という一般的な評価を与えられている。実際的に、彼の戯曲を読んで見ればわかるが、その圧倒されるような文章量は、他の追随を許さない。しかし、他方、シェイクスピアは必ずしも文学者だけにとどまる人物ではなかった。演劇の世界に革命を起こし、そしてその中で、音楽的な要素をもたらし、従来のイギリスの演劇の世界に音楽をもたらしたマルチクリエイターでもあったのである。

 

そもそもシェイクスピアは劇の中で音楽を巧みに使用し、その技術が非常に長けていたと言われている。彼は音楽によって、物語そのものを際立たせたり、あるいは、ストーリーの変化を効果音(SE)で表現することによって、ワーグナーの歌劇のような音楽的な音響効果を付け加えた。


残念ながら、シェイクスピアの時代の演劇に使用された音楽の資料は残されていない。しかし、それらのほとんどはポピュラー音楽に近く、短い効果音のような音響にとどめられていた。一方で、その劇伴音楽の使用法はきわめて多彩な内容であった。例えば、宴会、夜会、行進、決闘など、演劇の象徴的なシーンで、演劇のイメージを強調するような効果音が使用されていた。しかも、それは台本のト書きにも記され、「オーボエ、トランペットなど静かな音楽」と音楽監督のような指示が明確に記載されていたのである。これはシェイクスピアが完全なオペラには至らないにせよ、フランスのバレエやイタリアのオペラを演劇に導入しようとしていた形跡でもある。


また、意外と重要視されないが、シェイクスピアの演劇には音楽が不可欠だった。彼の演劇では出演者の俳優が単独で歌唱を披露したり、 リュートがその歌の伴奏として演奏されることもあった。ポピュラー音楽としての歌曲が導入されることもあり、また、詩学としての効果を強調し、短い韻を踏んだ歌曲まで披露されることもあった。イギリスのスポークンワードのような形式は元をただせば、すでに16−17世紀のシェイクスピアの時代に始まっていたのである。 

 

 

・イギリスのオペラの貢献者、ヘンリー・パーセル 


どうも音楽史を概観すると、他国の文化をライバル視することがあり、それらを巧みに輸入した上で、自国の文化として組み替える動向がある。しかし、翻って、音楽文化の源流をなすイタリアですら、ブルゴーニュやフランドル地方の音楽とは無縁ではなく、何らかの関連性を持っている。このことを勘案すると、文化という概念が一国の生産の集積だけによって形成されるとは考えがたい。これらの文明のやりとりから生じる混交性ーーそれこそが民族が移動し、流動的な文化の側面を持つ、''ヨーロッパの歴史の実態''を形作ってきたとも言えるのである。その一方で、上記の二国に続くようにして、島国であるイギリスにもいよいよ国教会の音楽やカルヴァン派の宗教音楽に続く、イングリッシュオペラが17世紀に登場することになった。

 

それまでにも、イギリスは「シアター(劇場)」の文化が国内に定着していたというが、1642年、ピューリタン革命によって劇場が封鎖された。しばらく劇場の文化は遠ざかっていたが、それが王政復古の時代に入り、復活を遂げる。これがおのずと、優れた作曲家を輩出する機会を形作った。ヘンリー・パーセルは、宮廷の侍従の父親を持ち、幼い時代を英国王室の礼拝堂合唱団で過ごした''王室お抱えの人物''である。そして、フランスがルイ国王を称賛するためのバレエを推進してみせように、イギリスもまた、王政の基盤を支えるための芸術や、その制作を推進したのである。専らパーセルが取り組んだのが、「セミオペラ」と呼ばれる形式で、音楽的には、ブルゴーニュやフランドル学派のマドリガーレや、イタリアンバロックに近い、どことなく優雅な雰囲気を持つ内容である。専門家によれば「演劇とオペラのハイブリッド」だという。

 

ヘンリー・パーセルは、ロイヤル礼拝堂、ウェストミンスター大聖堂や、その他宗教音楽の作曲家として知られている。その一方で、オペラの発展に寄与し、1688年には、ギリシア悲劇的な色合いを持つオペラ「ディドとエネアス」を作曲した。これは最も古いオペラの一つと言われている。また、その他にも、「ディオクレシアン」、「アーサー王」、「ディモン・オブ・アテネ」、そして有名な「妖精の女王」など、音楽的な側面で、歌劇に大きな発展性をもたらした。

 

「セミ・オペラ」はイングリッシュ・オペラの異名を取り、 歌、踊り、器楽を交え、演劇的なエピソードや口語劇を組み合わせた。特に、セミ・オペラは、エンターテインメントの性質が強調され、演劇の中でのストーリーの変化、機械装置、飛行など、ダイナミックな演出効果が用いられ、1673年から1719年にかけて発展していった。一般的に、セミオペラの音響効果は、シーンの切り替わりや超自然的な変化の際に使用されることが多かった。しかし、パーセルは、「マスク」としての側面で完結し、 いわば独立した音楽としての性質を強めたのである。そのため、プロットや演劇の動作と直接的にリンクすることはきわめて少なかった。

 

 

 ・シェイクスピア原作 ヘンリー・パーセル「妖精の女王」


こうした中、ヘンリー・パーセルはシェイクスピア原作を見事なセミオペラとして再編した。その音楽には、イタリアとフランスの古楽を受け継ぎ、演劇化するという意図が込められていた。


『Fairy Queen(妖精の女王』は当時一般的だったように、復古期の観客の好みに合わせるため、劇が改変された。ここでは、無名の改編者がシェイクスピア戯曲を編集し、独自の台詞や舞台指示を追加し、シェイクスピアの台詞の多くを削除し、一部を現代化、変更し、通常は各幕の終盤に向け音楽劇を挿入する機会を創出した。しかし、劇中に、多数の音楽を盛り込むため、物語の一部は簡略化され、複数の出来事の順序も変更された。1692年に初演された際、原作のシェイクスピア劇はまだ''認識''できたが、翌年の二度目の上演ではさらに音楽が追加され、劇のカットや再構成が進んだため、原作を知らない観客には物語を追うのが難しい部分も出ていた。  


1692年のこの作品の初演は費用がかさんだ。パーセルの同時代人が記すところによれば、『妖精の女王』は「シェイクスピア氏の喜劇を基にオペラとして制作された」という。 装飾の豪華さにおいては比類なく、特に歌手と舞踊家の衣装、舞台装置、機械仕掛け、装飾品は豪華に整えられ、舞台が演じられた。宮廷の人々も町の大衆もこれに大いに満足したというが、制作費が膨大だったため、劇団の利益はごくわずかであった。 初期費用の一部を帳消しため、翌年には「改訂・追加と数曲の新曲を追加して再演されたのは間違いない」と記されている。ここにもイタリアのオペラに匹敵する長大な作品を上映しようとする並々ならぬ熱意が感じられる。


タイトルは、1世紀前に書かれたスペンサーの『妖精の女王』から来ている。これはシェイクスピアの戯曲とほぼ同時期の作品。スペンサーの寓意叙事詩はエリザベス1世を称えるプロパガンダの重要な要素であり、彼女の血筋を伝説のアーサー王に結びつけ、処女王の美徳を神話化した。


『妖精の女王』の劇は五幕構成で、各幕の冒頭に器楽曲が置かれている。観客が着席する間、おのおの二曲ずつの第一楽章と第二楽章が演奏された。その後、トランペットのファンファーレで始まる序曲が劇の幕開けを告げる。幕間には場面転換中に演奏される器楽の幕間曲が配置されている。以下に紹介するのは現代的な演劇と歌劇を組み合わせたセミオペラらしいパフォーマンス。




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イギリスのインディーポップバンド、Telemanのドラマーとして活動していたHiro Amaは近年、エレクトロニック・プロデューサーとして活躍している。

 

ドラマーとしての蓄積をもとにミニマルテクノの新しい領域を開拓し、分けても、和楽と呼ばれるシンセサイザーを使用、日本の古楽の音楽のテイストと実験的なパーカッションを追求している。特に、前作『Music for Peace And Harmony』では、IDMとサティのような近代音楽の要素、ボーカル、そして日本的な旋律を散りばめて、独自のエレクトロニックの手法を確立した。

 

新作EPは、落ち着いたIDMの領域を追求していたミュージシャンが、レフトフィールドテクノに舵をとった作品だ。「平和と調和のための音楽を作り、スローでミディアムテンポのサウンドを探求した後は、まったく正反対のものを創りたかった。MFPAHの180度転換。この4曲は、私の音楽のよりエネルギッシュで身体的な側面を探求している」とHiro Amaが明かすように、これらはダンスミュージックのエネルギッシュな魅力を追い求めた作品と称せるかもしれない。

 

新作EPの発表と合わせてリリースとなったリードトラック「Lava」は、レイヴに着想を得たリズム感あふれる楽曲。脈打つベースとサイレンを思わせるシンセを基調に、グルーヴを前面に押し出しつつ緊張感、エネルギー、躍動感を生み出す。


「この曲ではビートとリズムに集中した」とヒロ・アマは説明する。「強烈でレイヴ的なものを創りたかったので、サイレン音を使ってサウンドを作り、脈打つベースを加えた。意図的に和声要素を最小限に抑え、リズムにトラックを運ばせた。メロディックな動きの代わりに、チューニングをずらしたベースで、グルーヴから外れることなく緊張感とエネルギーを生み出した」


新作EP「Booster Pack」はレフトフィールドテクノの領域での新しい挑戦となる。本作はPRAH Recordingsより4月10日にリリースされる。

 

「Lava」 

 

Hiro Ama 『Booster Pack』 EP

 

Label: PRAH Recordings

Release: 2026年4月10日

 

Tracklist: 

1.Booster
2.Cloud 9    
3.Lava
4.Projection 

 

▪Pre-order:  https://hiroama.bandcamp.com/album/booster-pack-ep

 Softcult   『When A Flower Doesn't Grow』

 

Label: Easy Life Records

Release: 2025年1月30日

 

 

Review

 

カナダのライオットゲイズ、 Softcultは、パンキッシュなイメージとシューゲイズを融合させるグループで、特にライブツアーなどで定評を獲得している。前作『Heaven』では、やや不発に終わった印象もあったのですが、最新作『When A Flower Doesn't Grow』では、さすがの実力を見せています。前作より曲がバラエティ豊富になり、音楽性の引き出しが驚くほど増えている。

 

前作では、二人の構成ということで、ギターの音圧に頼るケースが多かったものの、今回はよりバンド形式に近い録音を楽しむことができる。そしてパンクやハードロック的を以前までは強調していましたが、センス抜群のインディーポップのエッセンスを取り込むことで、聞きやすいアルバムに仕上がっています。実際的には、ソフトカルトはこれまでシングルやEPのリリースにこだわってきましたが、フルレングスを制作したことで、音楽的な広がりが出てきています。

 

アルバムは意表をつく静かなエレクトロニック/テクノ/アンビエント「intro」で始まり、それ以降、二曲目「Pill To Swallow」でソフトカルトらしいロックソングを聴くことができるはずです。この曲では持ち前のポップセンスを散りばめて、聞きやすいポップソングを下地にしつつ、おなじみの超大な音像を持つシューゲイズが加わる。特に今回のアルバムでは、ボーカルトラックに力を入れており、即効性があって感染力があるフレーズを惜しみなく歌い上げている。


また、ドラムやパーカッションの面でも、タンバリンのような音色を入れて、リズムの分厚さを出している。シューゲイズといえば、甘いメロディーに苛烈なファジーなギターが特徴ですが、基本的な形をストレートに打ち出している。しかし、このようなわりと激しい印象を持つ曲ですら、全体的な緩急を意識している。例えば、2分半前後のハードロックに依拠した間奏などはその代表例です。つまり全体的に聞き入らせるようなソングライティングや曲作りがなされていて、なおかつ聴いていて飽きさせない工夫が凝らされている。これは称賛すべき点でしょう。

 

しかし、そういったシューゲイズの基本的な曲よりも「Naive」のほうが際立っている印象がある。轟音のディストーションギター、そして超大な音像は維持しつつ、ボーカルについてはポップソングを意識している。リズム的な工夫も随所に凝らされていますが、その複雑さを経経てアンセミックなサビに来る部分で爽快感がある。いわば音楽的なフリークとそうではないファンの両方に響きそうなフレーズを大切にしています。 いつもジェンダーや政治的なメッセージを欠かさない双子のミュージシャンの音楽は、アヴリル・ラヴィーンの影響を感じさせることもあるため、実は結構ポップでミーハーと言えるでしょう。しかし、それこそが唯一無二の長所となり、ライブシーンで映えそうなアンセミックなフレーズを生み出している。また、双子らしいボーカルの息の取れたハーモニーの美しさは他のバンドでは容易には出しえない。二人は、ある意味では、Mewのような北欧的なロックバンドの清涼感のある空気感を導き出す。

 

ソフトカルトのもう一つのサウンドの特徴はメタル的なヘヴィネスを併せ持つこと。「16/25」はメタリックなドラムの連打に対して清涼感のあるヴォーカルのフレーズが特徴です。ボーカルの間に入るバッキングギターはハードロック的なニュアンスに富んでいてかっこよい。また、同じフレーズとリズムを続ける中で、1分15分以降に音楽が開けてきて、奥行きが出てくることがある。いわばボーカルとドラムがヒプノティックな効果を発揮し、トランスやレイヴのようなダンスミュージックの性質を帯びる。これは2000年以降のニューメタルのニュアンスを引き継いでいると言えるでしょう。そして、その挑戦はたぶん上手くいったのではないでしょうか。 


楽曲の構成は目まぐるしく変化し、アンセミックなボーカルを織り交ぜながら、ジェットコースターのように楽しい展開力を形作る。また、曲の後半では、90年代のグランジやストーナーへと傾倒していき、アリス・イン・チェインズやサウンドガーデンのようなグランジサウンドも登場したりしてものすごく楽しい。一曲の中で、ジャンルが移り変わっていくような柔軟性がある。それらが最終的には、80年代のハードロックやヘヴィメタル、強いて言えばメロディックメタル調の叙情性のあるボーカルのフレーズも登場する。ここまで強固なサウンドを見せつけられると、それにうなずくよりほかなくなる。つまり、新旧という概念を超えているのです。

 

また、このアルバムはソフトカルトのメンバーの音楽的な好みが凝縮されている。グランジロックとしてより濃厚になる「She Said,She Said」はオーバードライヴをかけたベースから始まるが、全体的な音楽性やボーカルにパンクのエッセンスを散りばめつつ、双子らしいヘヴィネスと毒々しさを追求している。しかし、重く、また、毒があるとは言え、音楽そのものはそれほど聞きづらくないはずです。これらの軽い姿勢とかノリの良さが楽曲全体に良い均衡をもたらしている。そして歌詞としても、なぜか口ずさんでしまうような魔力を持っているのに驚き。


「Hurt Me」は更に激しいヘヴィネスを追求していて、狂気の一歩手前まで行く。このサウンドは現代的なヘヴィメタルというより、90年代のミクスチャーロックの印象に近い。時々、横揺れのリズムを織り交ぜながら、ほどよいかっこよさを追求している。しかし、轟音を中心としたドロドロした曲はその後、急に静けさへと帰っていく。そして、その後、この曲は驚くべき変貌を遂げ、エモーショナルでアンセミックなロックへと飛躍していく。最後は、ソフトカルトの美学とも言えるアーティスティックなギターで締めくくられる。このあたりの両極端な二面性が面白い部分で、全体的にこのアルバムを楽しむ上で、抑えておきたいポイントとなるでしょう。

 

アルバムの音楽は激烈になったり、それとは対象的に精妙になったりというように、感情的な振れ幅は90年代のスロウコアに匹敵する。しかし、ソフトカルトをその存在たらしめているのは、抜群のポップセンスです。

 

「Queen of Nothing」はドリームポップの側面が色濃く出ており、聞きやすく、エモーショナルなロックソングに仕上がっている。「Queen of Nothing」はおそらく、アルバムのハイライトであり重要な楽曲でもある。怒りや轟音の向こう側にある感覚を二人は探し求めており、それが結果的に示唆されている。また、音楽的にも陰影のある切ないフレーズを呼び覚ましている。さらに、ハードコアパンクやストレートエッジに挑んだ「Tired」もかっこいい曲で、ハードロック風のエッセンスが付け加えられている。これらの反骨精神が聞きどころとなりそうです。


最新作『When A Flower Doesn't Grow』は音楽的にはなんでもありの、ごった煮のアルバムなのですが、ソフトカルトの好きな感覚がいたるところに垣間見えることがあり、なにか微笑ましい感覚に満ちています。また、終盤に収録されている「Not Sorry」はアルトロックソングとして申し分なし。Mommaの系譜にある聞きやすく、そして掴みやすいロックナンバーとなっています。

 

最後には意外な一曲が収録されています。インディーフォークに傾倒した、アコースティックギターの弾き語り曲です。前作『Heaven』では音楽性が画一的になりがちでしたが、最新作では驚くべき興味の広さを見せました。ソフトカルトはシューゲイズ、パンク、グランジ、メタルなどを織り交ぜ、クールな音楽を探求しています。 このアルバムは、カナダのデュオがまだ見ぬ領域を開拓した作品。と同時に、聴き応え十分の楽曲群によってその潜在的な能力を発揮しています。

 

 

82/100 

 

 

 


ボストンを拠点に活動するシンガー・ソングライター、Staci Gruber(ステイシー・グルーバー)のニューシングル「This Time Around」が公開された。ハーバードで医学の専門的な研究を行う傍ら、グルーバーは音楽活動を行っている。今回の新曲はトム・ペティを彷彿とさせるカントリー/アメリカーナを吸収した渋いロックソングである。

 

このカントリー・ミーツ・アメリカーナ・チューンはナッシュビルでレコーディングされ、タイ・ハーンドン、ジェイミー・オニールのエリック・ハルビッグがプロデュースした。 


ステイシーとマイケル・オーランド(アメリカン・アイドル)が書いたこの曲は、親しみやすく感染力のあるホンキートンク・アンセムだ。 ステイシーは、「『This Time Around』は、強引すぎる愛、遅すぎた真実、そして最も重要なときにようやく耳を傾けた心の物語なの」と語っている。 


ステイシー・グルーバーはボストンを拠点とする革新的なアーティストであり、卓越した音楽的才能、物語性豊かな作詞作曲、そして情感の深さが聴く者の心に深く響く。彼女の作品は個人的な体験と他者の感情的な物語をシームレスに織り交ぜ、孤立や孤独、そして希望といったテーマを探求する深い音楽的つながりを生み出している。

 

幼い頃から音楽はステイシーの人生に欠かせない存在だった。クローゼットの中でこっそり歌うという内向的で内省的な情熱として始まったものが、小学校で初めてソロ曲「12 Days of Christmas」を披露した際に、力強い歌声へと急速に開花した。その時、ステイシーは真の歌声を見出し、それ以来、決して振り返ることはなかった。 

 

幼少期から夏はフレンチ・ウッズ芸術祭で過ごし、音楽への深い愛をさらに確固たるものにした。タフツ大学とニューイングランド音楽院の先駆的な5年制ダブルディグリープログラムにおいて、クラシック声楽科からジャズ研究科へ移行した初の学生となったことで、彼女の歩みはユニークかつ野心的な転機を迎えた。 

 

この独特な教育背景が、彼女の多面的な芸術性を形作り、パフォーマーとしてもソングライターとしてもその多才さを磨いた。彼女の多様な音楽的影響は、アン・マレーからバーブラ・ストライサンド、カレン・カーペンター、KDラング、ビリー・アイリッシュ、ピンク・ナンシー・ウィルソン、ジョン・コルトレーンなど多岐にわたり、さまざまなジャンルが彼女独自の音楽的るつぼに浸透している。これにより、彼女は、折衷的な音楽スタイルと趣味を演奏する人気のあるGBバンドのリードボーカルとなった。 

 

ボーカリストとして音楽キャリアを積む一方で、ステイシーはまったく別の分野でも、ハーバード大学医学部の著名な教授、そしてマクリーン病院の先駆的な神経科学者として高い評価を得ています。大麻に関する彼女の画期的な研究では、さまざまな症状に対するカンナビノイドの長期的な影響の解明に焦点を当てています。 ステイシーの研究はゲームチェンジャーとなり、臨床試験に影響を与え、様々な疾患に対する大麻の潜在的な効能に関する重要な知見を提供する実世界のデータを生み出している。

 

ステイシー・グルーバーの新曲「This Time Around」は、ナッシュビルで録音され、エリック・ハルビッグ(タイ・ハーンドン、ジェイミー・オニール)がプロデュースを担当。ステイシーとマイケル・オーランド(アメリカン・アイドル)が共同で作詞作曲したこの曲は、共感できる中毒性のあるホンキートンク・アンセムだ。 ステイシーはこう語る。「『This Time Around』は、強すぎる愛、遅すぎた真実、そして最も重要な瞬間にようやく耳を傾けた心についての物語です」。 


ステイシーはダン・エイクロイド&ブルース・ブラザーズとの共演、ビリー・ジーン・キングのアンセム制作、共同制作者マイケル・オーランドとの数々の大型イベント出演で成功を収めてきた。 音楽と研究を通じて、ステイシー・グルーバーは「つながりの力」を体現している——音楽の変革力であれ、医療ソリューションの科学的探求であれ——そして「どこにいようと、人は決して一人きりではない」と私たちに気づかせてくれる。彼女はこう語る。「音楽は、人が感じるべき感情を本当に引き出せるのかもしれない…音楽が他者の視点を理解する手助けとなることを、私は常に願っている——それは最も純粋な意味での共感だ」 

 

 

「This Time Around」



▪️EN

Staci Gruber is a transformative Boston-based artist whose exceptional musical talents, storied songwriting, and emotional depth resonate deeply with her listeners. Her work seamlessly intertwines personal experiences with the emotional stories of others, creating a profound musical connection that explores themes of isolation, loneliness, and hope.

 

Music has been an intrinsic part of Staci’s life from an early age. What began as a shy, introspective passion—singing privately in her closet—quickly blossomed into a powerful voice when she performed her first solo, "12 Days of Christmas," in elementary school. It was then that Staci discovered her true voice and has never looked back. 

 

Throughout her childhood, Staci spent summers at the French Woods Festival of the Performing Arts, which further solidified her deep love for music. Staci’s journey took a unique and ambitious turn when she became the first person to transition from the classical voice program to the jazz studies department in a pioneering five-year dual-degree program at Tufts University and the New England Conservatory of Music. This distinctive educational background has shaped her multifaceted artistry and honed her versatility as both a performer and a songwriter. Her diverse musical influences range from Anne Murray to Barbra Streisand, Karen Carpenter, KD Lang, Billie Eilish, Pink Nancy Wilson, John Coltrane and more, seeping various genres into her own unique musical melting pot. This led to her becoming a lead vocalist in a popular GB band that performed an eclectic range of musical styles and tastes. 

 

While her musical career flourished as a vocalist, Staci also achieved distinction in a completely separate field as a renowned Harvard Medical School professor and pioneering neuroscientist at McLean Hospital. In her groundbreaking work on cannabis, she focuses on understanding the long term impact of cannabinoids across a wide range of conditions. Staci’s research has been a game-changer, generating real-world data that has influenced clinical trials and provided critical insights into the potential benefits of cannabis for various medical conditions.

 

Staci Gruber’s new country meets Americana rock single "This Time Around" was recorded in Nashville and produced by Erik Halbig (Ty Herndon, Jamie O'Neal). Written by Staci and Michael Orland (American Idol), the track is a relatable and infectious honky tonk anthem. Staci shares, "This Time Around is really a story of love that pulled too hard, truth that came too late, and a heart that finally listened when it mattered most". 


Staci has found success performing with Dan Aykroyd and the Blues Brothers, writing an anthem for Billie Jean King, and performing at several large events with collaborator Michael Orland. Through her music and her research, Staci Gruber exemplifies the power of connection – whether through the transformative power of music or the scientific exploration of medical solutions—and reminds us all that no matter where we are, we are never truly alone. She shares, “Maybe music really can help people feel things they need to feel… I always hope that music allows people to understand someone else’s perspective – empathy in its truest sense.”