スイス出身のシンガーソングライターMarlin(マーリン)が、ニューシングル「Type of Way」をリリース。本作は、激しさやドラマではなく、穏やかさや信頼によって育まれる愛をテーマにした、ソウルフルでジャズの香りをまとった一曲。


「この人だ」と感じる瞬間の静かな確信を凛とした言葉とメロディで描き出し、感情の高揚よりも心の安定にフォーカスしたその世界観は、リスナーに深い安心感と余韻を残す。


サウンド面では、ジャジーなコードワークとソウルフルな質感を軸に、ファンキーなギターリフとドラムグルーヴが心地よい推進力を生み出す。Sasha KeableやRoy Hargroveからの影響を感じさせるエレガンスとグルーヴのバランスが秀逸で、Marlinのスムースかつ表情豊かなヴォーカルが自然と際立っている。

 

スイスで生まれ育ち、ギニアとハンガリーのルーツを持つMarlinは、父から教わった’90〜2000年代のR&B、ヒップホップ、レゲエに大きな影響を受けてきた。


Alicia Keys、Lauryn Hill、Bob Marley、Usherといったアーティストが、彼女の音楽的土台を形成している。プロデューサーGabiga(Naomi Lareine、Danitsa、Benjamin Amaru)とのユニットOzyahとして2019年にEP『688』を発表後、ソロとしてのキャリアを本格始動した。


2022年のシングル「More」以降、SRF 3、SRF Virus、Couleur 3、RTS La 1ère、Global SoulRadioなどでのエアプレイを獲得し、Zermatt UnpluggedのMountain AcademyやMontreux Jazz Residency(2024年)にも選出されるなど、着実に評価を高めてきた。


本日リリースされたニューシングル「Type of Way」は、そんなMarlinがたどり着いた地に足のついた表現を、そのまま音楽に落とし込んだ作品といえる。


▪️Martin 「Type of Way」- New Single



[作品情報]

アーティスト:Marlin

タイトル:Type of Way

ジャンル:R&B/Soul

配信開始日: 2026年2月13日(金)

発売元・レーベル:SWEET SOUL RECORDS 

配信: https://lnk.to/Marlin_TOW

 Mandy Indian 『URGH』

 

Label: Sacred Bones

Release: 2026年2月6日

 

 

Review 

 

昨年、 好印象のアルバムを立て続けに輩出したSacred Bones。所属グループがゴールドディスクを獲得し、勢いに乗っている。2026年最初のリリースは、マンチェスターの話題のグループ、Mandy, Indianの最新アルバム『URGH』となる。本作は画期的なサウンドで、音楽ファンの度肝を抜くことは必須だろう。UKベースライン、ブレイクビーツ、ドラムンベースなどを吸い込んだ''EDMメタル''ともいうべき衝撃的なアルバム。現時点のところ、ストリーミング再生数はガツンとは伸びていない。まだまだ、このアルバムがどのような評価を受けるのかは未知数である。しかし、二番煎じを徹底して疎い、アバンギャルドなダンスミュージックを展開させた野心作であることは確かだ。

 

マンディ・インディアナは、ボーカリストのヴァレンタイン・コールフィールド、ギタリスト兼プロデューサーのスコット・フェア、シンセ奏者のサイモン・キャトリング、ドラマーのアレックス・マクドゥーガルからなる4人組だ。本作の大半はリーズ郊外の不気味なスタジオハウスでのレジデンシー期間中に執筆され、ベルリンとグレーター・マンチェスターの二箇所でレコーディングされた。 


制作過程でコールフィールドとマクドゥガルが健康問題に直面したこともあってか、環境は苛烈を極めた。『URGH』は広範な世界の暴力的で断片化された状態を反映している。コールフィールドの歌詞は暴力性、制度的な無関心、遍在する苦痛とたえまなく格闘し、美と連帯の瞬間を主張する。アンドレアス・ヴェサリウスの解剖学的図解をフィーチャーしたカーノフスキーのアートワークは、身体とその限界に対するこのレコードの内臓的な対峙を強調している。

 

『URGH』はアンダーグランドのクラブの熱気に縁取られている。狂乱的でときに催眠的なダンスミュージックがアシッドハウス風のグルーヴを導き出す。「Magazine」はその象徴となるトラックで、遠目に鳴り響くレイヴやユーロビートのような空間性のあるサウンドが再現される。ドラムンベースのドラムのリズム、内的な暴力性を赤裸々に吐露するサウンドはあまりに苛烈だ。

 

これらは制度に対する怒りの感覚がリアリティを持って体現される。また、ミュージックコンクレート/コラージュアート的なサウンドが、強烈なノイズやパルス状のビートと重なりあいながら激しく炸裂する。独特な緊張感を持つヒリヒリとしたアヴァンギャルドなダンスミュージックは、ときに魔術的なボーカルと組み合わされ、また、アフリカのような地域のリズムと融合する。


「Dodechahedron」はそういった中で、メタリックな印象を持ちながら、神秘的な電子音楽に傾倒していく。また、インダストリアルミュージックのイメージを持つ「A Brighter Tomorrow」は悪夢的な雰囲気に浸される。


これらは内的な恐怖と戦うドゥームサウンドと言え、外側の外的な状況とせめぎ合いを続ける。それらの恐怖感は「Life Wax」で最高潮に達し、エクストリームなノイズミュージックとして昇華される。NINを通過したようなインダストリアルの冷淡さ、そして狂気的なノイズミュージックが続いてから、突如、ニューメタルやポストハードコアのようなサウンドへと傾倒していく。

 

本作の収録曲で注目したいのが、「ist halt so」である。ダンスミュージックをベースにしたヘヴィロックで、 ブンブン唸るベースと苛烈でアグレッシヴなボーカルが特徴である。また、ヒップホップを参照し、プエルトリコのヒップホップと連動するようなサウンドを作り出す。90年代以降のミクスチャーの末裔とも言える音楽性なのだが、そこに商業的な香りはほとんどない。ノイズやインダストリアルミュージックの無機質なサウンドを明確に押しだし、奇異な領域に近づいている。また、ドラムの側面は、Sepuluturaのような南米のヘヴィメタルからの影響を感じさせる。イギリスのアンダーグランドのダンスミュージックとニューメタルが合体したようなサウンドである。後半には、ドリルンベースが出てくる瞬間もある。Aphex Twinをメタルから解釈したような一曲で、 その重力のあるサウンドはほとんど嵐のごとく過ぎ去っていく。

 

ただ、Billy Woods(ビリー・ウッズ)が参加した「Sicko! 」は、イントロはさておき、とっつき易い。アブストラクトヒップホップとヘヴィロックのエッセンスが融合し、パーカッションは過激な印象に満ちているが、ビリー・ウッズのラップが上手い具合に融和している。同楽曲では、アーマンド・ハマーとのコラボに見受けられるヒップホップの解体と再生の要素が垣間見える。面白いアルバムだと思うのだが、全体的な集中性にかける部分もある。しかし、その破壊性や衝動性すら彼らの計算の内とすれば、それこそが本作の無尽蔵のエナジーを生んだ理由なのだ。アルバムの後半では、多言語のボーカルやグリッチが出てきたりと、かなり難解な作品のように思えた。 

 


 

75/100 

 

 

 「ist halt so」-Best Track

 

Photo: Teri Anderson

オレゴン州ポートランド在住のシンガーソングライター兼ミュージシャン、Kathryn Grimm(キャスリン・グリム)による新曲「Goodbye To The Blues」。このポップロック調のシングルは、胸躍るような高揚感と中毒性にあふれています。 

 

キャスリンはこう語っています。「『グッドバイ・トゥ・ザ・ブルース』は、愛に包まれる喜びがどんな悲しみも簡単に消し去る様子を描いた、心温まる曲です。至福——私が最も愛する状態です。力強いベースのグルーヴ、軽やかなメロディ、そして『愛と悲しみは共存できない』というメッセージに心を動かされない人はいないでしょう」


キャスリン・グリムはジェフ・バックリー、マイケル・ボルトンらと共演歴を持つ。LA Timesは彼女を「観客を至福の塊へと叩き込む」と称賛した。


キャスリン・グリムは北西部を拠点とする受賞歴のあるシンガーソングライター兼マルチ楽器奏者で、業界のトップクラスと楽曲制作・レコーディング・共演を重ねてきた。友人でありギタリストのジェフ・バックリーは、彼女のオリジナルバンド、Group Therapyでサポートを務めた。 

 

1990年のコメディミュージカル『Rockula』の撮影中、彼女は伝説的なロックミュージシャン、ボー・ディドリーと休憩時間に即興演奏を交わした。また、彼女がカバーした「Spanish Castle Magic」を聴いたアル・ヘンドリックスから祝福の連絡を受けた。  

 

マイケル・ボルトンのミュージックビデオ「Dance With Me」ではフィーチャーされたギタリストを務めた。彼女の多くのアルバムには、最新作でデニス・ムーディ(ダイアナ・ロス、ミッシー・エリオット…)がプロデュースした「NO CASH BLUES」が含まれ、灼熱のギターワークと豪華なプレイヤー陣が光る。また「BLUES TOOLS」にはバックリー氏の傑出した演奏を収めた稀少なトラックが収録されている。

 

最新作はデニス・ムーディ(ダイアナ・ロス、ミッシー・エリオット…)プロデュースで、灼熱のギターワークと豪華なプレイヤー陣が光る。「ブルース・ツールズ」にはバックリー氏の卓越したスライドプレイを披露したレアトラックを収録。エレクトリック・ブルース作品「GRIMM AGAIN」(バーンサイド・ディストリビューション)は世界的に高評価を得た。 


キャスリンは「THE KATHRYN GRIMM BAND」(KGB)、「THE JAZZ ROCKETS」、「HIPPIE LOVE SLAVE」、「BABES IN PORTLAND」など多数のプロジェクトで精力的に活動し、四半期ごとのブルース/ジャズ・ジャムを主催している。 また、ギター、ベース、ピアノ、ボーカル(「メコン・リバー・バンド」)で選りすぐりのアーティストのバックプレイヤーとして、また、作家として(彼女の楽曲のいくつかは、劇作家アラン・アレクサンダー III の受賞作「HOMELESS, THE MUSICAL」で取り上げられている)その技能を提供している。 また、キャスリンはギター・インスティテュート(カリフォルニア州ハリウッド)およびカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(学士号/修士号 - ジャズ研究/商業音楽)で学位を取得している。

 

 

「Say Goodbye To The Blues」


 

KATHRYN GRIMM is an award winning singer / songwriter / multi instrumentalist based in the NW who has written, recorded and/or performed with some of the best in the biz.  Friend / fellow guitarist JEFF BUCKLEY backed her up in her original band “GROUP THERAPY”.  

 

She and BO DIDDLEY jammed between takes while filming “ROCKULA” (“One of her career highlights is playing his guitar”).  After hearing her version of “Spanish Castle Magic”, AL HENDRIX contacted her to give his blessing (“A true honor…”).  She’s the featured guitarist in MICHAEL BOLTON’s video “Dance With Me";.  Her many albums include - “NO CASH BLUES”, her

 

latest, produced by DENNIS MOODY (Diana Ross, Missy Elliot…) with some scorching guitar work and an impressive roster of players; “BLUES TOOLS” includes a rare track showcasing Mr. Buckley’s stellar slide playing; The Electric Blues “GRIMM AGAIN” (Burnside Distribution) received top reviews globally. 


Kathryn stays busy with her many projects including “THE KATHRYN GRIMM BAND” (KGB), “THE JAZZ ROCKETS”, “HIPPIE LOVE SLAVE”, “BABES IN PORTLAND”; and hosts a quarterly Blues/Jazz Jam. She also offers her skills as a player backing up select artists on guitar, bass, piano, vocals (“MEKONG RIVER BAND”) and as a writer (several of her songs are featured in playwright ALAN ALEXANDER III’s award winning “HOMELESS, THE MUSICAL”). Academically she holds degrees at The Guitar Institute (Hollywood CA) and Cal State, L.A. (BA / MA - Jazz Studies / Commercial Music).

 

 



 Ulrika Spacek  『EXPO』


 

Label: Full Time Hobby

Release: 2026年2月6日

 

 

Review


ロンドンの五人組アートロックバンド、Ulrica Spacekは先週末、ニューアルバム『EXPO』をFull Time Hobbyから発表した。『EXPO』は、タイトルに違わぬ印象で、斬新な音楽が見本市のようにずらりと並ぶ。

 

日に日に強まるソーシャルメディアの絶大な影響力、その中で個性的であるということは、とりも直さず孤独を選ばすには居れないことを、ウルリカ・スペイセックの五人組は示唆する。例えば、かつてレディオヘッドが2000年代以降の個人監視社会を主題に選んだロックソングで一世を風靡したことがあるが、ウルリカ・スペイックは『OK Computer』『KID A』が生み落とした次世代の申し子である。そのサウンドの中には、ポストロック風の響きも含まれる。しかし、同時に、最初期のレディオヘッドのような閉塞感のあるボーカルがテクノ、ロックの中間にあるサウンドに揺らめく。最新鋭のロックなのか、それとも2000年代のリバイバル運動なのか。確かにそこには既視感のあるジャズ的なリズムとトム・ヨーク的な幽玄なボーカルが併存し、なにかしら新鮮な響きに縁取られている。


「孤立と疎外感の歌。周囲の誰もが絶えず自己を晒し、公の場で生き、見られたり聞かれることを求める、過度にオンライン化された世界において、『個性』の時代はひどく孤独だ。それは凹面鏡の部屋のようなもの。このことを念頭に、バンドは集合的な努力を捧げることに決めた」

 

独特な孤独感、また、それはときに勇敢さを意味する。『EXPO』の音楽には、''和して同ぜず''という論語の故事成語がぴったりと当てはまる。時流に乗っているようで、また、流行りのポストパンクにも共鳴する何かがあるが、彼らのサウンドは同時代のバンドとは異なっている。2016年から二年ごとのサイクルでアルバムを発表してきた彼らはついに最新作で高みに到達した。


「Intro」から強烈で、AIのテーマを暗示させたインスト曲で始まり、マニュピレーターを用いたアヴァンギャルドなテクノがブレイクビーツやスポークンワードのサンプリングと連動する。そこには近未来的なイディオムもある。しかし、それは同時に現代社会の同化現象に鳴らされた警鐘でもある。


「Picto」では16ビートのドラムの中で、ポストロック/マスロックの混雑したギターが、緻密なストラクチャーを構築する。ボーカルは『OK Computer』や『KID A』のような閉塞感のあるサウンドを担う。最近のポストパンクやスロウコアも吸収していると思うが、独特な浮遊感のあるサウンドは他の何物にも例えがたい。90年代のUSオルタナティヴロックからの影響もわずかに感じられるが、マニュピレイトされたRolandのシンセで出力されるテクノサウンドがそれらの既視感を帳消しにする。複雑なサウンドは変化し、中近東のパーカッションなどをドラムに重ね、エキゾチズムを増す。いわば、Squidのような複雑なサウンドであるが、こちらの方が一体感がある。

 

中盤は、King Kruleを彷彿とさせるようなごった煮のサウンドの曲があったり、レディオヘッドの中期のようなサウンドがあったり、『EXPO』のコアらしきものがほのめかされる。それはまるでインターネット空間をぼんやりと彷徨うような感覚がある。意図せぬ情報やアルゴリズムの投稿が目の前に矢継ぎ早に示され、それをさながら命題のように考え、時々振り回されたり、翻弄される個人。『EXPO』には現代社会の縮図とも呼ぶべき広汎な音楽が居並ぶ。


しかし、これらの現代史の博物館(EXPO)の展示中に、バンドが言うところの本当の自己やアイデンティティが発見できる瞬間がある。それが「Showroom Poetry」である。ローファイやスラッカーロックを基本に展開されるが、それらの混沌としたサウンドの向こうに歌われる、もしくは呟かれる言葉に一体感が生じ、バラバラに散らばっていたはずの破片が集まり、奇妙な一体感のような感覚が生み出される。ボーカルや全体的なバンドサウンドには今作のテーマである孤独の空気感が揺らめくが、その中には得難い安心感やひりひりするような情熱がちらついている。誰もそんなとこにはいないだろうと思っていた場所に結構な人がいたというような瞬間。とまあ、なんやかんやで、この曲は聴いてみると分かる通り、アルトロックの秀曲となっている。Galaxie 500のような内省的なインディーロックサウンドがアンセミックに変貌していく。

 

本作の後半はさらに多彩さが増すが、同時に序盤の収録曲に比べると求心力に乏しいところもある。レディオヘッドの次世代のアートロックサウンドが展開されたり、Ulrica Spacekの持ち味の一つであるジャズの影響を取り入れた動きのあるアートロックが繰り広げられる。 また、ブレイクビーツとアートロックの融合を試みた「Weight & Measures」なる次世代のロックソングも収録されている。この曲では弦楽器を取りれたりしながら、イギリス的なポストロックのイディオムを定めた瞬間が訪れる。テクノや電子音楽を中心としたバラード「A Modern Low」もまたレディオヘッドの次世代のサウンドに位置づけられる。ただ、そんな中、単なるフォロワーに収まりきらず、独創的なロックサウンドが出てくるときがやはり最も面白い瞬間であろう。

 

アルバムのクローズを飾る「Incomplete Symphony」は、バロックポップやチェンバーポップを下地にした次世代のサウンドで、ビートルズ、ローリング・ストーンズからブリットポップまでを吸収し、現代版に置き換える。また、こういった最後の曲を聴くと分かる通り、彼らがMOGWAIの初期のようなサウンドを吸収していることはおそらく間違いないだろうと思われる。一方で『EXPO』はモグワイのような反復的で恍惚とした轟音ロックサウンドにはならない。アンセミックなボーカルやコーラスを通じて現代社会を鋭く風刺するかのようなギターの不協和音が背後を突き抜け、次いでアンセミックなボーカルとシンセが追走するように通り過ぎていく。そこには飾らない生々しいリアリティが内在する。それこそが『EXPO』の醍醐味なのだろう。

 

 

80/100 

 

 

 「Showroom Poetry」-Best Track

 

 

 

▪Ulrica Spacek『EXPO』- Listen/Stream: https://ulrikaspacek.ffm.to/expo 



Ulrica Spacek:



「リビングルームは自然な残響をあまり生み出さないし、人工的に作り出すのも我々の意図ではない」


ウルリカ・スペイセックはベルリンで一夜にして結成された。14年来の友人であるリース・エドワーズとリース・ウィリアムズが『ウルリカ・スペイセック』というコンセプトを思いつき、デビューアルバムのタイトルとして『The Album Paranoia』を考案した。 ロンドンに戻りレコーディングを開始すると、ジョセフ・ストーン(ギター、オルガン、シンセサイザー、ヴァイオリン)、ベン・ホワイト(ベース)、カラム・ブラウン(ドラム、パーカッション)が加わり、現在の5人編成が固まった。 


アルバムはほとんど予告なく、大々的な宣伝もなくリリースされ、バンドがキュレーションと出演を兼ねる「オイスターランド」と題したほぼ月1回のクラブナイトが1年間続いた。18ヶ月も経たぬうちに、不気味なほど完成された続編が登場。エドワーズによればこれは必然だったという。


「曲を一括で作り上げてから順番を決める手法には、我々はあまり興味がない」と語るように、3分間のシングル10曲を書き上げる誘惑を避け、より開放的で広がりのあるスタイルを志向している。書きながらアレンジを重ね、楽曲がセットリストの中で自然な位置を見つけることを意図しつつ、自己満足に陥らない方向性を常に保っている。現在はロンドンで活動している。


 


エディット・ピアフのようなジャズボーカルの巨匠はもはやスタンダードとも言うべき存在となっている。しかし、クインシー・ジョーンズがフランスへ行き、作曲家としての修練を積んだのと同じように、エディット・ピアフですらヨーロッパ音楽の影響を作風に巧みに取り入れ、新しい定番へと組み替えた。それがミュゼットだった。

 

バル・ミュゼット(Bal Musette)という音楽は、フランス/パリを発祥とするダンス音楽の一種であり、それ以前に流行したワルツを派生させた形式である。ワルツと明確に異なる点は、労働者に親しまれ、ダンスホールやカフェといった場所で人気を博したことだろう。いわば宮廷音楽がポピュラー化した瞬間である。 さらに言えば、ミュゼットは、一般市民が演奏するダンスミュージックなのだが、この音楽は例えば、パリの旅行番組などのBGMなどで頻繁に登場することが多い。また、20世紀前半の映画のサウンドトラックにもこういった音楽が流れていた。

 

 

▪ミュゼットーーバクパイプとしてのルーツ 




ミュゼットという言葉は、中世から使用されていたダブルリード楽器「ミュゼット・ド・クール」に由来する。バクパイプのように、動物の皮がついていて、トランペットの始まりのように生々しい楽器と言えるが、スコットランド、スペイン、そしてフランスの民族舞踊には欠かせない楽器でもある。

 

この楽器は17世紀から18世紀にかけてのフランスの宮廷で使用されていた。あまりバグパイプはクラシック音楽の楽器とは見なされないが、ミュゼットだけは例外である。オペラやバレエの一幕「パストラーレ」というシーンで演奏されることがあった。バレエ愛好家のルイ14世の時代、メヌエットやガヴォットのような組曲の形式にミュゼットは組み込まれることがあった。クラシックでのミュゼットは踊りのことではなく、器楽的なパグパイプの性格を模した小品のことを意味していた。


ところが、この宮廷音楽が2世紀を経て、ポピュラーやジャズの性格を付け加えて復活した。19世紀のパリでは、ミュゼットはフランス南西部にあるオーべルニュ地方にある「キャプレット」という楽器のことを言うようになる。その後、ミュゼット音楽は、バスティーユ、ベルヴィル(セーヌ)、メニルモンタン(パリ)などの地域で、オーベルニュ出身の人々によって始まり、第二次世界大戦頃まで流行した。


ミュゼットは、イタリアからの移民労働者やロマがもたらしたブルターニュ地方の舞曲、そして、ジプシーのリズム、イタリアのワルツが加わり、民衆の音楽として完成した。オーヴェルニュ地方の労働者は、19世紀後半にパリのような首都に流れ込み、炭やワインを販売するバーや店舗を開き、小さなダンスホールなどを開店し、首都の生産活動の一部を司るようになった。

 


リヨンに隣接するオーベルニュ地方の人々は19世紀後半からパリに移住し、水運び、カフェの経営、炭焼きなどの仕事に就いた。彼らはパリ11区に集まり、都会生活の中で、故郷の風土を再現させようと試みた。こういった中で、ミュゼットが誕生し、主に石炭商の経営するカフェで演奏された。楽器的な特徴としては、小型のバクパイプの音色に合わせて踊ることが多かった。スコットランドの民謡、マズルカ、農民の民謡などを組み合わせた音楽だった。当初開かれた舞踏会は荒っぽい雰囲気があった。

 

その後、他地域の人々にも紹介された。20世紀に入り、別の移民集団がミュゼットにアレンジを加えた。パリに住むイタリア人が、一般的とは言えないバクパイプをより演奏しやすくするため、アコーディオンに組み替えることになった。ダイアトニック・アコーディオン、そしてクロマティック・アコーディオンが登場し、最初のパクパイプに取って代わられるようになった。

 

この時期、並んで登場したのが、ジャバ(Java)と呼ばれる音楽で、ワルツ起源とする舞踏音楽であった。テンポはゆっくりとしていて、アウトサイダーの雰囲気に満ちていた。これもまた音楽そのものが20世紀に入り、大衆化した事例でもある。この音楽の舞踏会は、 男女が混在して、労働者、職人、使用人、若者たちが参加し、心楽しい雰囲気に満たされた。特に郊外を中心に、新しいワルツは人気を博し、サン・アントワーヌ、ワッペ通りなどを中心に、社会的な交流の場所と化したのだった。

 

Emile Vacher

第一次世界大戦以降になると、ミュゼットは最盛期を迎えた。特に後世の音楽を捉える上で大切なのは、このジャンルをもとに、フォックストロット、パソ・ドブレなどが派生音楽として登場したことだ。ダンスの面では、タンゴのような情熱的な動きが加わり、バスティーユ広場近辺やパリのダンスホールなどでは、荒々しい動きが加わるようになる。1930年代に入ると、この音楽はジャズのスイング、そしてジプシー音楽が加わり、1950年代ごろまで民間に浸透していく。


ジャズは当初、クラブのオーナーに歓迎されなかったが、実際の演奏者が取り入れ、ミュゼットとジャズを入れ替えて演奏するのが1940年代の主流となり、パリのダンスホールを中心とするナイトミュージックとして栄えていった。

 

1950年代に入っても、ミュゼットはフランス国内で人気のサウンドで、多くのスター、ガス・ヴィスール、トニー・ムレナ、ジョー・ブリヴァットといったスターがアメリカに渡った。これらのメンバーはグレン・ミラーのような著名なミュージシャンと共演し、ジャズに新鮮な気風を呼び込んだ。

 

それ以降、ロックやポピュラーのフランス国内の普及によって、商業音楽としてのミュゼットは衰退していったが、地方の結婚式やお祝いのようなイベントなどでは普通に演奏され続けた。この音楽で有名なエミール・ヴァッシュ(Emile Vacher)は、パリ南部5区に父親とダンスホールを開いた。


ヴァッシュは楽譜を読めなかった。しかし音感の良さを頼りにし、独自の音楽スタイルーーアコーディオン音楽ーーを確立。彼の音楽もまた、古い民族舞踊、イタリアの歌謡(カンツォーネ)のような音楽を下地に、一般大衆の音楽として成立した。ミュゼットの音楽的な特徴は6/8のような性急なテンポで構成され、20世紀のフランス市民の熱狂を体現するものであった。この音楽は、当初は舞踏音楽として出発したが、後に下町の音楽として親しまれるようになった。

 


Emile Vacher 「Mado」




▪️ Reference


 

景山奏/Lena


景山奏(NABOWA)によるソロプロジェクト【THE BED ROOM TAPE】がLena(AVOCADO BOYS)フィーチャリングした新曲をリリース。


予てより親交の有ったAVOCADO BOYSのLenaを客演に迎えた本作は互いに共振する心情をテーマに制作。Lenaによるポジティブで等身大の詞、メロディを軽やかな鍵盤+強めのビートでプッシュするサウンドに仕上げた一曲。


ボーカルレコーディングはAVOCADO BOYSの吉田裕、ミックス/マスタリングはjizueの井上典政が担当。


▪️THE BED ROOM TAPE「Nanana feat. Lena (AVOCADO BOYS)」



Released by bud music | 2026.02.11 Release

配信: [ https://ssm.lnk.to/Nanana ]


Lyrics : Lena (AVOCADO BOYS) リナ アボカドボーイズ Lena (AVOCADO BOYS)

Music : 景山奏 カゲヤマカナデ Kanade Kageyama

Vo : Lena (AVOCADO BOYS) リナ アボカドボーイズ Lena (AVOCADO BOYS)

Pf, Synth, Ba, Beats, Other All Instruments : 景山奏 カゲヤマカナデ Kanade Kageyama

Vocal Recording : 吉田裕 ヨシダユウ Yu Yoshida

MIX / Mastering : 井上典政 イノウエノリユキ Noriyuki Inoue



▪️THE BED ROOM TAPE「WALTZ OF THE RAIN」

Released by bud music | 2025.10.15 Release

[ https://ssm.lnk.to/waltzoftherain ]

[ https://youtu.be/l7flizJNa-U?si=80lOaB7pD24VleeQ ]


▪️THE BED ROOM TAPE「奏でるSOUL feat. 奇妙礼太郎」

Released by bud music | 2025.08.20 Release

[ https://ssm.lnk.to/kanaderusoul ]

[ https://youtu.be/JSv7wrrhyaM?si=2kh1zaehNFPASxvK ]



THE BED ROOM TAPE:


景山奏によるソロ・プロジェクト。2013年、児玉奈央、NAGAN SERVER、奇妙礼太郎が参加した「THE BED ROOM TAPE」、2015年、川谷絵音、リミキサーとしてBudaMunkが参加した「YARN」、2016年、Gotch、BASI、リミキサーとしてUyama Hirotoが参加した「UNDERTOW」を発表。2022年アルバム「family line」をリリース。2025年8月、奇妙礼太郎がフィーチャリングで参加した「奏でるSOUL」をリリース。



Lena:

日本のバンドAVOCADO BOYSのボーカルを担当している。北欧/ドイツ系カナダ人の父を持つ名古屋出身の女性シンガー。35歳で初めてバンド活動(AVOCADOBOYS)をスタートし、子育てと音楽を両立しながら、その飾らない人柄と抜群の歌声で人気を獲得している。TikTokフォロワーは5万人超え、歌唱動画の総再生回数は1,000万回を超えており、SNSでも注目を集めている。



パンデミック期の病の時期を経て劇的な復活を果たし、その後新作のリリース、ツアーなどを精力的にこなす冥丁。プロジェクト名が示唆する通り、日本的な感性を探るアーティストは未知なる音楽的な世界を押し広げ、Wire、Pitchなど海外の音楽メディアにも登場するようになった。失日本と呼ばれる感性を追求する彼だが、次なる興味は花魁文化に向けられることになる。


冥丁のニューアルバム『瑪瑙』(めのう)より先行シングル「新花魁」(しんおいらん)が2月6日にデジタル配信でリリースされる。ニューアルバムは4月17日発売予定。


三部作『古風』に通底する哀愁と、その先に切り開かれた影。本作「新花魁」は、冥丁がこれまで継続して取り組んできた主題“失日本”が、時を経て一つの像を結ぶ楽曲である。


古風編初作に収録された「花魁Ⅰ」(2020年作)を原型とし、公演を重ねる中で舞台上で何度も披露され、磨き上げられてきた本楽曲は、五年を経て「新花魁」という名を持つに至った。この楽曲を通じて、歴史上で語られる花魁という存在の先に表現されたのは、「私」と「非私」との、そして冥丁自身が現代で見た日本の自然美の連なりと、麗しくも咲き誇る鮮烈な哀愁である。


朽ちゆく質感の層を漂う遠い声、古楽器の音を用いながらも伝統的手法とは異なる独自のパーカッシブなリズム、そして現れては消えていく旋律の連なり。それらは明確な物語を語ることなく、リスナーの感覚に直感的に触れてくる。


アルバム『瑪瑙』の序章として位置づけられる「新花魁」は、実直で創造的な営みを止めることなく仕上げられた一曲である。ここにあるのは、再構築された歴史ではなく、自明でありながら幽美な印象として漂う日本の姿“失日本”であり、日本的な感性と現代的な表現が織り成す新たな輪郭である。


ミュージックビデオ「新花魁」(映像:戸谷光一)も同日公開される。本作のミュージックビデオやアーティスト写真に映し出された、冬の日本海や、孤高の断崖に舞い散る霰、波飛沫などの情景は、冥丁自身が10年間にわたり広島で過ごした日々の葛藤と、自身の創造する音と孤独に向き合った有様を象徴している。


「新花魁」


冥丁「新花魁」-New Single



リリース日: 2026年2月6日(金)

カタログ番号 : KI-050S1

アーティスト : 冥丁

タイトル : 新花魁

フォーマット:シングル / デジタル配信

レーベル : KITCHEN. LABE

配信: https://kitchenlabel.lnk.to/52P3moDM



【冥丁(めいてい)プロフィール 】


冥丁は、「自明でありながらも幽微な存在として漂う日本」(誰もが感じる言葉では言い表せない繊細な日本)の印象を「失日本」と名付け、日本を主題とした独自の音楽表現を展開する、広島・尾道出身・京都在住のアーティストである。現代的なサウンドテクニックと日本古来の印象を融合させた、私的でコンセプチュアルな音楽表現を特徴とする。『怪談』『小町』『古風(Part I, II, III)』からなる三部作シリーズを発表し、その独自性は国際的に高く評価されている。


TheWireやPitchforkなどの海外主要音楽メディアからも注目を集め、冥丁は近年のエレクトロニック・ミュージックにおける特異な存在として確立された。音楽作品の発表に留まらず、国際的ブランドや文化的プロジェクトのための楽曲制作に加え、国内外における公演活動や音楽フェスティバルへの出演、ヨーロッパやアジアでのツアーを通じて活動の幅を広げてきた。さらに近年は、寺院や文化財、歴史的建造物といった空間での単独公演へと表現の場を拡げ、日本的感性と現代的表現の新時代を見いだし続けている。

Angus MacRae  『Warren Suit』 


Label: Venus Pool

Release: 2026年2月6日

 

Review 


ロンドンの作曲家、アンガス・マックレイによる最新作『Warren Suit(ウォレン組曲)』は、バーナード・ショーによる舞台劇『ウォレン夫人の職業』のために書かれた10の組曲である。この舞台作品は、日本の劇場でも今年上映される話題作。


『ウォレン夫人の職業』は売春婦をテーマに母と娘の衝突、そして自立、家父長制が社会的規範であった時代の道徳とは何かを問う。1902年の発表まもなくバーナード・ショーの新作は上演禁止となった。文字通りの問題作である。

 

作曲家、アンガス・マックレイは、今回の音楽作品『Warren Suit』のために多角的な器楽のアプローチを図り、ピアノ、ハープ、弦楽器、電子音による女性声楽四重奏が導く、夢幻的な小品群として展開する。ミニマリズムとマキシマリズムを織り交ぜた音楽は、20世紀初頭のフォークとクラシックの伝統を汲み取りつつ、包み込むような現代的な音響世界へと再構築している。



「これは即興と実験のアルバムです。舞台作品とは並行世界として捉えてほしい——繋がりつつも独立した存在として」マックレイは語る。「原作のスコアの糸をひたすら引き続け、どこへ導かれるか見たかった。それは予想外の深淵へと私を誘った。このレコードの核心にあるのは言葉なき声たちだ。ショーの物語の中心に立つ女性たちの幽霊のような幻影として機能している。彼女たちの存在感を増幅させ続け、文章とは独立した形で物語を拡大させたかった」

 

制作者が語るように、どことなく舞台に登場する亡霊の声なき声が盛り込まれている。アルバムは「May Child」で始まり、電子音と女性のクワイアを中心にミステリアスな音楽性が組み上げられている。二声(以上)を中心とする女性のクワイアはこの物語の扉を開き、無限なる物語の道筋へと誘う。しかし、この舞台音楽が面白いのは、典型的なイギリスの響きが出てくることだろう。


「Warren Folklore」では、女性のメゾソプラノ/ソプラノを中心にさらにミステリアスな音楽が登場し、Secret Gardenのような音楽性を彷彿とさせるセルティック民謡(ケルト音楽)の要素が出てくる。この副次的なモチーフが独り歩きをして、物語の奥行きを広げるための導きを成す。曲の途中では、音楽そのものは本格的なオペラへと近づき、複数の声部の歌唱、ストリングスのハーモニーを通じて、ウォレン一家の悲哀のような感覚が露わとなってくる。賞賛すべきなのは、この音楽作品がそのまま、シナリオの暗示、もしくは道標となっていることだろう。

 

また、この舞台音楽のたのしみは、クワイアや弦楽と合わせてささやかなピアノの小品が収録されていること。そして「In Your Nature」のように印象音楽としての自然を描いたと思われる曲から「Nine Roses」のような物語の中枢に登場するような印象的なシーンを描いたものまで、それらが一貫してペシミスティックなピアノの音色で縁取られていることである。ここにはドラマ音楽の基本的な作曲法と合わせて、マズルカのような物悲しい音楽的なテーマが垣間見える。ここにも一貫して、古典的な家父長制度における女性の生き方という主題が、一つの物悲しさに結びついている。そしてその中には、女性たちの幽霊というショーの物語の中枢が見えてくる。その音楽的なテーマの中には、やはりイギリスの古典的な雰囲気を見いだせるだろう。

 

現代音楽としても興味をひかれる曲がある。四曲目に収録されている「Chalk Petal」は、Arvo Part、Alxander Knaifelのような東欧の作曲家の管弦楽法を受け継いだ曲として聞き入らせる。また、音響効果として舞台を演出する内容も、弦楽器の長いレガートにより培われるドローン音楽は、ワーグナーのオペラの通奏低音のような特殊効果を発揮する。 複数の主旋律が重なり合い、美しく可憐な音の構造を生み出すが、同時に、それはアンビエントのような音楽的効果を併せ持つ。しかし、ここまで一貫して、物悲しい音楽がいまだかつて存在しただろうか。音の旋律は美しさがあるが、それはまるで濃霧の中を永遠とさまよい続けるような無明の雰囲気がある。しかし、もっともこの曲が美しいのは、弦楽器の演奏のあとに登場するクワイアである。

 

そんな中で、ややコミカルな曲もある。「Forebears」のような曲は、悲哀溢れるウォレン夫人の物語のミステリアスな側面を強調付けるものであるが、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」のような音楽性を感じ取る事ができる。音楽全体は、室内楽のような感じで続いて、ピアノ、弦楽器の演奏を通して、ウォレン夫人を暗示するメインのボーカルが華麗な雰囲気を作り出す。この舞台音楽が最もアンビエント的な要素を強める瞬間が「Picking Fruit」である。シンセサイザーを通じて、作曲家のマックレイは電子音楽に近い音楽の手法を選んでいる。そして、クワイアやミステリアスなシンセサイザーの伏線を通じて、華麗な弦楽器のソロが登場する。ここではチェロと思われる芳醇な旋律が、力強く鳴り響く瞬間がこの曲のハイライトとなる。

 

声楽を中心とする曲の中で、最も目玉となる曲が「Bloodline」である。制作者が語る「亡霊的な響き」が最も色濃く表れ出た瞬間である。この曲は特に、夫人の売春婦としての艶やかな雰囲気がオペラティックな歌唱によく表れ出ている。一方でそれは艶やかで魅力的であるが、危険なバラのような棘を持った夫人の人物像を音楽の向こうに浮かび上がらせる。こういった劇伴音楽の手腕は本当に見事であり、たとえ舞台そのものの演出がなくとも、独立した音楽作品として十分自立していることを証し立てるものである。この曲に感じられるミステリアスな雰囲気はまさしく、バーナード・ショーの作品をくまなく読み込んだからこそなしえた凄技だろう。

 

本作『Warren Suit』はオペラティックな側面もありながら、バレエの組曲に近い音楽構成も発見出来る。そしてまた、アルバムの最後に収録されている「Ghosts In White Dress」は、ウォレン家の豪奢な暮らし、その裏に隠された物悲しいエピソード、当時の社会的な道徳という副次的な主題を鮮明に浮かびあがらせ、まるで音楽という舞台を中心に登場人物たちが甦るような不可思議な感覚に浸されている。音楽的には、Morton Feldmanの作品『Rothko Chapel』に近い感覚を見出せることもあった。近年聴いた劇伴音楽の中では随一の作品で、大いに称賛すべき組曲。

 

 

85/100 

 

 

 

 

 

日本版 ウォレン夫人の職業 2026年1月23日より劇場公開


Angus MacRae:

 

アンガス・マックレイは作曲家、マルチインストゥルメンタリスト、レコーディングアーティストであり、その作品はレコード、実験的なライブパフォーマンス、演劇・ダンス・映画のためのスコアの間をシームレスに行き来する。彼の音楽は容易に分類されることを拒むが、広くはクラシック音楽と電子音楽の交差点に位置し、即興がしばしばその核心をなす。


独特の音楽的世界構築で知られるマックレイの作品は、記憶と想像力をテーマに深く概念的な探求を続ける。数々の高評価を得たアルバムやEPを通じて、その音楽は世界的な聴衆に届いている。


彼の数多くの楽曲は、ナショナル・シアター、アルメイダ・シアター、BAM、ロンドンのウエスト・エンド、ブロードウェイなど、国際的に著名な会場で演奏、上映されています。ドミニク・クック、レベッカ・フレックナル、リンドジー・ターナーなどの監督、マイケル・ウィノグラッド、ナタリア・ツプリク、バレネスク・カルテットなどのミュージシャンとコラボレーションを行っています


昨年、新作アルバム『Getting Killed』をリリースしたニューヨークのロックバンド、Geeseがタイニー・デスクコンサートに出演した。今回珍しくバンドはアコースティックのステージを披露した。


コンサートは、Geeseが明日(2月11日)オーストラリア・シドニーで開幕する2026年「Getting Killed」ツアーの直前に開催された。ツアーはオーストラリア国内で公演を重ねた後、日本、ヨーロッパ、イギリスを経て北米に戻る予定。また、ツリーフォート、コーチェラ、プリマベーラ・サウンド、レディング、リーズなど、複数のフェスティバルへの出演も予定されている。


バンドはツアーで贈られた品々、おもちゃのガチョウ、スヌーピーのぬいぐるみ、イエスを抱くソニックのフィギュア、マインクラフトの付箋、メッツの帽子といった私物に囲まれて、3rdスタジオアルバムから選りすぐりの楽曲を披露する機会を得た。 パフォーマンスはNPRへの寄付金43,801ドルを集め、非営利放送組織が地域局への資金提供を継続する支援となった。


今回のタイニーデスクコンサートでは「Husbands」「Cobra」「Half  Real」の三曲がセレクトされた。ギーズのセットは、チャーミングなほど真摯で少し物憂げな雰囲気が漂い、『Getting Killed』の静かな瞬間を捉えている。まさにバンドの最も純粋な姿だ。 フロントマンのキャメロン・ウィンターは座ったままギターを弾き、前方を見つめながら歌う。


エミリー・グリーンは鋭いエッジの効いたギタープレイでバンドの鼓動を刻み、ここでも輝きを放つ。他のメンバーはほとんど目を閉じて演奏し、昨年春からツアーで磨き上げた楽曲に没入している。「Half Real」のように音楽が盛り上がるにつれ高みへと舞い上がる。ここでは聴かせるギースのサウンドを楽しむことが可能だ。


aus


ausが群馬/伊香保温泉で24年秋に展示したインスタレーション音源を、マンチェスターのアンビエント名手、The Humble Beeが丸ごと再構築したコラボアルバム。バスタブから温泉へ、全身で浴びる音泉音浴。空間に身体がほどけていく。昨年末に発表された『eau』以来の作品。2月13日にフィジカル(CD/LP)、そしてデジタルで発売。


aus が2024年秋に伊香保温泉に1ヶ月滞在・制作し、現地で公開され大きな話題を呼んだ八湯回遊型インスタレーション「いかほサラウンディング - アンビエント音泉」。「Chalybeate」は、その展示をThe Humble Beeが丸ごと再構築し、音そのものを伊香保の空気と湿気に1年間浸し、再発酵させた作品です。


The Humble Bee


温泉街全体を音の泉に見立て、源泉の湧動音、木造建築の反響、石段の賑わいや、あちこちに散らばる風鈴の音が重ねられ、町そのものの呼吸を写しとったというインスタレーション音源は、にごりのない澄んだモチーフから1年をかけて、テープヒスのざらつきやひそやかなうねり、黄金と白銀で知られる伊香保の湯の質感を染み込ませています。


終わることのない石段で疲れ切った ausからミックスのバトンを受け取ったのは、長年にわたって付き合いを続けてきた英マンチェスターのアンビエント名手 Craig Tattersall。微かに湯の中でこだまする倍音を丁寧に掬い取った繊細なサウンドデザインによって、儚くアトモスフェリックな音響に仕上げられました。


ビジュアルは、伊香保と同じ水源ともいわれる榛名の現地アーティスト フランシス・カナイによる湯らぐグラフィック。LPは温泉を模したハーフ・トランスパレントの特殊ヴァイナル、CDボーナストラックにはサウナ大国フィンランドより、Olli Aarniのリミックスが追加収録。



アルバムは2/13にCD/LPでリリース、現在先行シングルとして「i follow a barren path across the old mountain」「below the surface we shimmer and shine」の2曲が公開中です。

 

 

 「below the surface we shimmer and shine」


 

■ aus + the humble bee「Chalybeate」



タイトル:Chalybeate

アーティスト:aus + the humble bee

発売日:2026年2月13日

フォーマット:CD/LP/DIGITAL

レーベル:FLAU


Tracklist:

1 below the surface we shimmer and shine

2 i follow a barren path across the old mountain 

3 blushing copper light

4 specular ochre

5 in dark hours, your colours glow their brightest 

6 the mulberry and the stone

7 juniper

8 we flow ever downwards, until we blossom

9 the mulberry and the stone (olli aarni remix)* 


* = bonus track for CD ONLY


▪リリース詳細

https://flau.jp/releases/chalybeate/


▪MV「below the surface we shimmer and shine」

https://youtu.be/O0UnFUfmKPE


▪最新作のレビュー

WEEKLY MUSIC FEATURE: AUS 『EAU』 和楽器/箏とシンセサイザー、ピアノが織りなすモダンなテクノ/アンビエント


aus:

東京出身。10代の頃から実験映像作品の音楽を手がける。長らく自身の音楽活動は休止していたが、2023年に15年ぶりのニューアルバム「Everis」とシングル「Until Then」を発表。より室内楽へのアプローチを深めた「Fluctor」を2024年にリリース。Ulla、Hinako Omori、Li Yilei らとのインスタレーションや群馬・伊香保温泉でのインスタレーション「いかほサラウンディング」、Matthew Herbert、Craig Armstrong、Seahawksへのリミックス提供など、復帰後は精力的に活動している。最新作は箏を中心に据えた新しいプロジェクト/アルバム「Eau」。


the humble bee:

英マンチェスター在住Craig Tattersallによるプロジェクト。テープループと断片的でメランコリックな旋律を用いた作品で知られ、2000年代後半からMotion Ward、Astral Industries、Dauwなどからリリース。90年代からHood、The Boats、The Remote Viewerなど複数のプロジェクトを展開、人肌のあるノスタルジックなフォークトロニカ〜アンビエントで多数のコラボレーションも重ねてきた。繊細な反復と音の質感に焦点を当てた音楽は、親密で静かな強度を備えている。