ロサンゼルスを拠点とするピアニストであり、エミー賞およびBMI賞を複数回受賞した作曲家、ピーター・マニング・ロビンソンによる新曲「Bent Out of Shape」がリリース。「Bent Out of Shape」は、遊び心あふれる音色に満ちた、生き生きとして楽しい楽曲です。ピーターは次のように語っています。


「『Bent Out of Shape』の楽曲は、私生活での苦悩に加え、世界情勢への反応として、数ヶ月にわたる葛藤の末に作り上げました。私は心を高揚させる体験、つまりポジティブな何かを必要としていたのです。これこそが音楽の美しさです…私たちは芸術を通じて感情を表現し、抱える問題を解決していくのです」 


ピーター・マニング・ロビンソンは、ロサンゼルスを拠点とするピアニストであり、エミー賞およびBMI賞を複数回受賞した作曲家、Refractor Piano™の発明者、そして熟練のヴィーガン・シェフでもある。彼の音楽は、革新性と映画的なスケール感を、深く心に響く情感と結びつけている。


シカゴで生まれ、バンクーバーとロサンゼルスで育ったロビンソンは、3歳でピアノを始め、12歳にはすでにプロとして演奏活動を始めていた。クラシックの構造とジャズの即興演奏に根ざした彼の音楽的基盤は、南カリフォルニア大学(USC)やバークリー音楽大学での正式な学習、そしてアーニー・ワッツ、フィル・ウッズ、フレディ・ハバードといったジャズ界の巨匠たちとの共演を通じて磨かれた。


ロビンソンのキャリアは、映画、テレビ、オーケストラ、ライブパフォーマンスに及ぶ。彼の楽曲はエミー賞(KABC『Above and Below』)とBMIミュージック・アワード5冠(『Without a Trace』)を受賞しており、オーケストラ作品はロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ロサンゼルス室内管弦楽団、ムジカ・ノヴァのメンバーによって録音されている。20代前半、重度の腱炎を患い「二度とライブ演奏はできない」と宣告された後、彼はコンコルディア大学レオナルド・プロジェクトのフィル・コーエンのもとで、身体的・芸術的な抜本的な再訓練プロセスを経た。そこで従来のピアノ奏法を「脱学習」し、全く新しい身体的・音楽的言語を確立した。


その旅路は最終的に、革新的に再構築されたアコースティックピアノ「Refractor Piano™」の発明へとつながりました。このピアノにより、ロビンソンは自身が「Refracted Music(屈折した音楽)」と呼ぶ、プリレコーディングされたトラック、MIDI楽器、外部音源を一切使用しない、完全なアコースティックによるライブパフォーマンスを創り出すことが可能になりました。


2016年にサンタモニカのベルガモット・ステーションで「リフラクター・ピアノ™」を初披露して以来、ロビンソンはヴォルテックス・ドームやロサンゼルス現代美術館(MoMA DTLA)などの会場で、高い評価を受ける演奏を披露してきた。2021年には、長年の芸術的パートナーでありビデオディレクターのクラウス・ホッホと共に、アーティストに優しい革新的な音楽レーベル「オウル・ウォーク・レコード」を設立した。


ロビンソンの近年の活動の多くは「Refractor Piano™」を中心に展開されてきたが、近々リリースされるネオ・クラシック・アルバム『Excursions』は、ソロ・アコースティック・ピアノへの力強い回帰を告げる作品となっている。3年をかけて制作された『Excursions』は、悲嘆、失恋、回復力、そして輝かしい希望を巡る、極めて個人的な楽曲集である。このアルバムは儚い光の瞬間に満ちており、聴く者に愛と創造性をもたらす。


世界的な激動と個人的な喪失に彩られた時期に書かれた本作は、絶望と崩壊から、苦闘、再生、そして喜びへと至る感情の軌跡を描き出している。


「これらの楽曲は、私にとっての感情の出口となりました」とロビンソンは語る。「悲しみや哀しみを処理する手段として、私は常にアコースティック・ピアノに帰着していました。時が経つにつれ、私――そして多くの人が経験していることを反映した音楽のファミリーを作り上げていることに気づいたのです」。数百に及ぶ録音されたスケッチをもとに、ピーター・マニング・ロビンソンとクラウス・ホッホは、最終的な作品を慎重に選定し磨き上げ、一貫性のある視覚的・音楽的な旅、没入感のある感情のタペストリーへと仕上げていきました」


アルバムのタイトルはその本質を反映しています。「エクスカージョン(小旅行)」とは短い旅であり、予想された道からの逸脱であり、それぞれの楽曲がそれ自体で一つの感情の航海なのです。リードシングル「Pure Heartbreak」は、別れ後の喪失という普遍的な痛みを、生々しく、胸を締め付けるような瞑想として描いた楽曲だ。音楽的には、華麗でありながら憂いを帯びた鍵盤の音色を通じて、別れの浮き沈みを表現している。それは、揺るぎない誠実さをもって解き明かされるメロディーを伴う、生々しい音楽的瞑想である。

 

同時公開されたミュージックビデオは壮大な自然を前に、ピーター・ロビンソンがピアノ演奏を行っている。クラシックのみならず、ジャジーな印象をもたらす演奏に注目したい。 



▪EN


Los Angeles-based pianist and multiple Emmy and BMI Award-winning composer Peter Manning Robinson has released his new song, “Bent Out of Shape.” “Bent Out of Shape” is a lively and joyful track filled with playful sounds. Peter comments:


“I created ‘Bent Out of Shape’ after months of internal struggle, driven by personal struggles as well as my reaction to global events. I needed an uplifting experience—something positive. This is the beauty of music… we express our emotions and resolve our issues through art.” 


Peter Manning Robinson is a Los Angeles- based pianist, Emmy Award–winning and multi–BMI Award–winning composer, inventor of the Refractor Piano™, and accomplished vegan chef whose music bridges innovation and cinematic scope with a deeply touching emotional depth. 

Born in Chicago and raised between Vancouver and Los Angeles, Robinson began playing piano at age three and was performing professionally by twelve. His musical foundations, rooted in classical structure and jazz improvisation, were refined through formal studies at USC and Berklee College of Music, and through performances with jazz luminaries including Ernie Watts, Phil Woods, and Freddie Hubbard.


Robinson’s career spans film, television, orchestral, and live performance. His scores have earned an Emmy Award (KABC’s Above and Below) and five BMI Music Awards (Without a Trace), with orchestral works recorded by members of the London Philharmonic, the Los Angeles Chamber Orchestra, and Musica Nova. In his early twenties, after developing severe tendonitis and being told he would never perform live again, he underwent a radical physical and artistic retraining process under Phil Cohen of Concordia University’s Leonardo Project, “unlearning” traditional piano technique and emerging with an entirely new physical and musical language.


That journey ultimately led to the invention of the Refractor Piano™, a radically reimagined acoustic piano that allows Robinson to create what he calls “Refracted Music”, live, fully acoustic performances with no pre-recorded tracks, MIDI instruments, or external sounds. Since debuting the Refractor Piano™ in 2016 at Bergamot Station in Santa Monica, Robinson has presented acclaimed performances at venues including the Vortex Dome and the Museum of Modern Art DTLA. In 2021, he and longtime artistic collaborator and video director Klaus Hoch founded Owl Walk Records, an innovative artist-friendly musical label. 


While much of Robinson’s recent work has centered on the Refractor Piano™, his upcoming neo-classical album Excursions marks a powerful return to solo acoustic piano. Compiled over a three-year period, Excursions is a deeply personal collection of compositions that navigate grief, heartbreak, resilience, and luminous hope. The album is filled with moments of fragile light, leaving listeners filled with love and creativity. 


Written during a time shaped by global upheaval and personal loss, the album traces an emotional arc, from despair and fracture through struggle, renewal, and joy. “These pieces became my outlet,” Robinson explains. “I kept defaulting to the acoustic piano as a way to process grief and sadness. Over time, I realized I was creating a family of music that reflected what I—and many others—were going through.” Drawing from hundreds of recorded sketches, Peter Manning Robinson and Klaus Hoch carefully curated and refined the final works into a cohesive visual and musical journey, an immersive emotional tapestry. 


The album’s title reflects its essence: excursions are brief journeys, departures from the expected path, and each piece is its own emotional voyage. Leading single “Pure Heartbreak” is a raw, heart-wrenching meditation on the universal pain of loss after a breakup. Musically, “Pure Heartbreak” reflects the ups and downs of a separation through gorgeous and melancholic-laced keys.  It is a raw musical meditation with a melody unraveling with unflinching honesty. The accompanying music video is a cinematic mini film with Klaus Hoch telling the story of two lovers who part ways in a striking narrative against the backdrop of the California desert. 


The second single "Bent Out of Shape" is a lively and joyful listen filled with whimsical notes. Peter shares, "I created the music for “Bent Out Of Shape” after many months of struggle, both in my personal life, but as a reaction to world events. I needed an uplifting experience…some positivity. This is the beauty of music…we express our emotions and work out our issues through our art." The stunning music video by Klaus Hoch tells the story of reconciling a relationship through a surreal tour of a shared history. The video takes place in a picturesque mansion above the sea. 


Cinematic, adventurous, emotive, and deeply human, Excursions is music meant to be felt. With striking twists and turns, romantic melancholy, and reflective hope, the album affirms Peter Manning Robinson’s belief that instrumental music can evoke images and emotions beyond language. As he puts it, “This is the work I am most proud of.”




Felicia Douglas/ Erik Phillip Gundel
 Gemma (Felicia Douglass/ Erik Phillip Gundel) Photo: Osvaldo Pontón

ブルックリンのGemmaはフェリシア・ダグラスとプロデューサーのエリック・ガンデルからなるユニット。ダグラスの遊び心あふれるフックが、ガンデルの豊かでグルーヴ感あふれるビートの上を軽やかに舞うコラボレーション。ガンデルは、一見相反する感情を重ね合わせることに長けており、深い内省と恍惚とした喜びを同時に表現する手腕は、ダグラスの歌詞にしばしば見られる心情と見事に調和している。二人は、感情が爆発するようなアップビートな楽曲の達人であり、癒やしと切なさが交錯する「ハッピー・サッド」なソウルファンクを生み出している。


ジェマはこれまでに、『As Ever』(2015)、『Feeling Not A Tempo』(2019)を発表している。3作目のアルバム『Be About It』は、長い静かな制作期間を経て誕生した。デモを交換し、未完成のアイデアを再検討し、焦ることなく楽曲を熟成させてきた年月が、アルバムのトーンを形作っている。それは、広がりを感じさせつつも焦点が定まり、感情をさらけ出しつつも入念に構築された作品だ。


歌詞の面において、『Be About It』は「視点」に焦点を当てている。変化や喪失、感情の激動を経て、人々が自分の置かれた状況をどう理解していくかというテーマ。ダグラスは直線的な物語を語るのではなく、移り変わる視点から書き、ノスタルジア、欲望、悲嘆、そしてつながりを巡りながら、それらを解決することなく描き出している。「Thinking Ahead」や「Simple Outlook」といった曲は、時間との向き合い方における対照的な姿勢を提示している。一方は勢いと回避に駆り立てられ、もう一方は内省と受容に導かれている。全体を通して、ペースを落とし、再評価し、気晴らしよりも「今ここ」に意識を向けるという願望が繰り返し現れている。


『Be About It』は、感情的にも、人間関係においても、そして創造的にも「そこに在ること」を主題とした作品だ。この作品は、確実性や完結を主張するのではなく、展望の明瞭さを求めている。物事が変わり続ける中で、自分が今どこにいるのか、どうやってそこにたどり着いたのか、そして誰とのつながりを保とうとしているのかに注意を向けることについての主題がある。


フェリシア・ダグラスはソロアーティストとしても活動しているが、ミュージシャンとしてのバックグラウンドを次のように明かす。


「声が小さくてピアノの腕前も未熟だった頃、4トラックレコーダーを手にしたのをきっかけに、音楽のレコーディングやプロデュースを始めました。トラックを重ねるという手法を試しはじめた頃、父がPro Toolsでのレコーディングの方法を教えてくれ、そこからすべてが始まりました」


「長年にわたり、わたしは数多くのプロジェクトでボーカルとしてコラボする光栄にも恵まれてきました。バックボーカル、フィーチャリングボーカル、サンプリングボーカル、トップライン、ライムの作成~ありとあらゆることをこなしてきた。BAILE、Toro y Moi、Chromeo、Sondre Lerche、Helado Negro、Mr Twin Sister、Infinitikiss、Lushlifeといったアーティストと仕事をしてきました。ソングライティングの魅力に惹かれたのは、それがあらゆる心の状態や感情、経験を探求する手段になり得ると気づいた時だった。内向的な性格の私にとって、紙の上で広がる無限の可能性に心を奪われた。カシオのキーボードは、部屋を彩る素敵な雑貨でもあります」


共同製作者のエリック・ガンデルは異色の経歴を持つ音楽家である。ガンデルはバーモント州バーリントンで育ち、6歳でピアノ、10歳でギターのレッスンを始めた。スキッドモア大学で音楽の学士号を取得した後、ニューヨーク市の活気ある音楽シーンに触れ、NYメソジスト病院でのボランティア活動を通じて、音楽療法の変革的な可能性を発見してきた。ニューヨーク大学での研修や、その後大人、子ども、高齢者との仕事を通じて幅広い基礎を築きましたが、私の情熱は、創造的な表現と感情的な成長を結びつけたいと願う大人の方々と共に働くことにある。


エリック・ガンデルはどちらかと言えば、音楽療法士の専門家でもある。音楽を通じて、創造的な活動を行う大人たちが、うつや不安、自己批判、創作のブロックを乗り越えられるようサポートする。共感、音楽、深い人間関係を融合させ、クライアントが感情と向き合い、創造的な感性を取り戻し、自信を築けるような、支えとなる空間を作り出すことを目指している。このアルバムではガンデルの音楽的なアプローチは、全体に癒しと安らぎのような効果を及ぼす。

 



 Gemma 『Be About It』- Gemma



ブルックリンのシンガー、フェリシア・ダグラスは、2025年に『Song of The Earth』をリリースし、ニューヨーカー誌などから称賛を得た。今年はじめには、「Shifting Shalestone」のアンビエント・リミックスを発表している。 ソロアーティストとして評価の高いダグラスであるが、ユニット形式で制作され、自主制作としてリリースされた『Be About It』も素晴らしい作品である。このアルバムは、基本的には、エレクトロニックソウルを中心に構成され、ダグラスのボーカル、シンセ、エリック・ガンデルのギターが混在している。あまりよく知らなかったのだが、一般的にエレクトロニック・ソウルというのは、70年代から80年代のエレクトロニクスを交えたホームレコーディングのソウルミュージックのことを指すという。しかし、およそ十年前ごろには、再びこのタイプの音楽が登場し、近年増加傾向にあるという指摘もある。おそらくベッドルーム・ポップなどが台頭したのと連動して、これらのセルフ・プロデュース的なソウル・ミュージックは、依然として、根強い支持を得ているといえるのである。

 

これは、きれいめでゆったりしたソウルミュージックと言われているが、このアルバムの魅力はそれだけにとどまらない。 スティーヴ・ライヒのミニマル・ミュージック的なアプローチ、さらにはメタルギター、ビートルズのバロックポップ、そしてブレイクビーツを織り交ぜた手強い作品だ。 表向きは甘口のソウルと言えるが、内実はかなり込み入っていて、先鋭的である。ボーカルのメロディーの甘さや陶酔感こそあるが、強固なリズムやビートがそれらを貫く。これらは自己プロデュース作品はプロのプロデューサーを据えた作品には敵わないという従来の掟を打ち破る。特にPro-toolsを用いた変幻自在なサウンドモーフィングは一聴の価値がある。

 

全般的な作曲に最も必要なのは、数学的な才能に加えて、建築学的な設計のセンスでもある。このアルバムは、ビートとソウルの融合に焦点が置かれ、特にオープニングを飾る「Thinking Ahead」から狙いがはっきりとしている。 ボンゴ/コンガの連打から始まり、シンセサイザーのトロピカルなシークエンスが入ると、完璧なイントロが出来上がる。まるでそれらの音の層の中に踏み入るかのような、見事なフェリシア・ダグラスのボーカル、雅楽の笙のように精妙なシンセサイザーのパッド、ヴィブラフォンなどが重層的な音の流れを生み出し、落ち着いていてメロウなソウルサウンドが構築されていく。まるで音楽そのものが一人でに歩き出すかのように音楽が続き、サイモン・ヘインズのストリング、そしてファンクべースがニューソウルのような贅沢な雰囲気を作り出す。さらに、それらの多次元的なサウンドは、ミニマリズムのシンセのアルペジエーターで完結する。フェリシア・ダグラスのボーカルもそれに負けてはいない。それらの背景のバックトラックに上手く溶け合うような感じで包み込むように温かなボーカルが加わる。高次関数的な音の組み合わせは、ほぼ最高の部類に入る。構成的にも緻密に計算されていて、ブリッジの箇所にブレイクビーツのドラムを配して、サビの部分につなげるための見事な待ちのセクションを設けている。構成的という面では、J-POPの手法にも近い。

 

ドラムはどちらかといえば、ヒップホップ/ブレイクビーツに傾倒しているが、一方でサビなどを見ると、単一のソウルのアプローチを飛び越えて、見事なほどにポップに近づいていく。メロディや歌詞のわかりやすさを追求したサウンドは、アルバムのアートワークと同じように、軽やかで、さわやかな雰囲気を形作っている。さらにはカッティングギターなども小気味よいグルーブをもたらしている。全般的な音楽の構成の設計図に対し、フェリシア・ダグラスはどこにどんな音を配置するのかを熟知している。音の抜き差しも絶妙で、ベースとボーカルだけで巧みに曲を牽引していく。まさにこれはダグラスの天性のリズム感がなす神業である。また、ボーカルのメロディーの良さや親しみやすさを維持しながら、ビートやリズムを強化したり、また減少させたりしながら、音楽そのものがスリリングな展開を作る。アウトロも出色の出来栄えである。フェードインしながら、ミニマル・ミュージックのシンセとストリングスをユニゾンさせながら、サビと対比するもう一つのハイライトを生み出す。これほどまでに細かいサウンドプロダクションを近年聴いた覚えがない。本当に見事なオープニング曲となっている。

 

 「Thinking Ahead」

 

 

 

ソウルミュージックは基本的に、リズムトラックから制作するものだと聞いたことがある。「Simple Outlook」のイントロを聴けばそのことは一目瞭然だろう。アコースティックドラムのソロから入り、その後、シンセサイザーがメロディアスな曲線を描き、”どうなる?”という期待感をもたせる。イントロというのは一般的に、名刺代わりではなく、次にどうなるのかという序を示す必要がある。ヴィブラフォンとシンセを同期させ、長いループセクションを作り出し、あえて間を設けている。イントロだけ聴くとテクノ風なのだが、フェリシア・ダグラスのボーカルは場の空気を変える力がある。彼女のボーカルはニューソウル的な曲の雰囲気を呼び込み、次に繋げていく。ピアノの演奏を用いたバラードの音楽性は、ニューソウルからモータウンソウルのようなデトロイトの音楽に近づいていく。この曲に感じられる懐古的なソウルの雰囲気は他の何にも例えがたい。まるでビンテージのアメリカン・カジュアルなファッションアイテムを店で偶然見かけるようなもの。ドラムのハイハットの演奏が小気味よいリズムを作り出し、ファンクの裏拍を強調するいわば対旋律的なリズム効果を与えるベース、そしてアメリカーナのスティールギターも入りながら、この曲のメロウな雰囲気は最高潮に達する。全体的な8ビートに対して、シンコペーションを挟みながら、強固なグルーブを展開させ、そして見事な曲のセクションを経ながら、うっとりするようなエレクトロニック・ソウルを作り上げる。ボーカルからは一貫して慈愛的な雰囲気が漂う。その温かさこそソウルの醍醐味である。 曲のアレンジも見事で、琴やハープのようなアルペジオが華麗に駆け巡ることもある。この曲は全般的な音楽性において、国境を超えるような魅力がある。強いて言えばそれが美点である。

 

 

 「Anomaly」は、ソウルミュージックを超越し、ワールドミュージックに接近する。アンビエンスの効果を強調した静かなピアノから始まる。広い空間処理をピアノの演奏に施し、独特な音の質感を得る。しかし、イントロのあと、対照的な音楽が続いている。カーニバルのような陽気で、トロピカルなサウンドだ。このあたりに、ダグラスの独自の曲制作に関する思いが見て取れる。イントロをきっかけや取っ掛かりにし、それらを広げたり対比させる制作方法である。リズムはファンクやブレイクビーツ、そして、旋律はトロピカルなハワイ音楽、しかし、曲の構成はジャズで、コールアンドレスポンスやモード奏法の手法を交えている。 実に多彩な音楽性が織り交ぜられ、聴いて楽しい、また、ノッて楽しい、完璧なダンスミュージックである。ただ、こういった複雑な音楽的な要素があろうとも、表向きに出てくるのは、夏の青空、ビーチパラソル、海を感じさせる完璧なリゾート音楽である。バレアリックやイタロディスコのようにあまり激しくならない、チルアウト/チルウェイブ風の音楽に仕上げられている。また、これらのサウンド全体を陽気にしているのが、サンバのカーニバルのリズムなのである。それらのサンバの嵐が通り過ぎると、アンティークなピアノがループされアウトロを形成する。

 

 

「Be About It」は70年代のニューソウル時代やそれ以降の80年代のブラック・コンテンポラリーの時代の雰囲気を感じさせる。イントロではヴィブラフォンの演奏をもとに、しっとりとしたボーカルが歌われる。しかし、こういった基本的なR&Bのスタイルを踏襲しながらも、Pファンクをベースにしたサウンドの中で、ドラマティックな音楽の構成が生み出される。特に、ストリングのトレモロやアフロソウルの範疇にある管楽器的な効果を用いながら、ダグラスのボーカルは、ドラマティックな雰囲気を作り出す。さらに、この曲でもソウルミュージックを越えて、シンフォニックな音楽性が作り上げられる。むしろそれは80年代のクインシー・ジョーンズ以降のジャズやビートルズのロックソングを経過した本格派のソウルミュージックに近づいていく。作曲的にもケイデンス(同じフレーズを繰り返しながら転調をするクラシック音楽の手法)の進行を交えて、転調を繰り返しながら、色彩的なサウンドを作り上げる。 この曲は特に実際に聴いてみないと、その凄さがわからない。卓越したコンポジションである。

 

女性的な夢見るような気持ち。それらはジュディ・ガーランドからディズニー音楽に共通するものである。「Hang On」ではこれらをサイケ/ローファイ風のイントロを通じて体現される。三曲目の「Anomaly」と同じように、イントロとは対比的な落ち着いたファンク/ソウルがヴァースで続く。ドラム、ベース、ボーカルを中心としたゆったりしたテンポを用いながら内向的な感覚を伝える。アルバムの序盤から中盤にかけて、一貫して外向きのエネルギーを持つ曲が続いていたが、ここで少し速度を落とし、ゆったりと落ち着いたバラード風の曲を据えている。この曲では、あえてヴァースの箇所からコーラスのサビの箇所へ移行するシンプルな構成を用いている。サビの箇所はダグラスの素晴らしい歌唱力が味わえるはずである。特に、予兆的に登場した、イントロとサビの箇所が上手く呼応するような内容となっている。ここでもまた、楽曲そのものの簡素さを重視しつつ、理知的な構成を通じて、さらに叙情的な雰囲気を添える。また、この曲ではニュー・ゴスペルのような部分が中盤に出てくるのに注目しておきたい。ベルの音を模したシンセ、そして心が洗われるようなクリーンなボーカルが紡がれる。

 

 

フェリシア・ダグラスはシンプルに言えば、女性版クインシー・ジョーンズになるかもしれない。その音楽的な範囲は現代音楽まで及び、「Exactly I See」ではイントロにジョン・ケイジや一柳慧のようなプリペイドピアノを導入する。しかし、やはり、その後は意外な音楽性が続き、モダンな雰囲気のR&Bが続く。特に凄いと思う箇所は、ゴスペルの歌唱を基本にして、それらを現代音楽の要素と結びつける。これはモダンクラシックとソウルが融合した稀有な瞬間である。さらに、全般的には現代音楽を通過したテクノサウンドが、これらのゴスペルと結びつく。革新的であるのは、ヒップホップなどで使用されるグリッチをプリペイドピアノで置き換えている。どちらかと言えば、イギリスのコンウォール派のようなアプローチが選ばれている。しかし、依然として現代的なテクノロジーを踏襲しながら、ゴスペルの荘厳な雰囲気が失われない。この曲もやはり、ニューゴスペルとも呼ぶべき新しいサウンドの予兆を捉えられる。フェリシア・ダグラスの音楽観はジャンルというものが売り手側の目安に過ぎないことを示唆する。インディーロックのサウンドに傾倒することもある。「See Me」ではエリック・フィリップのギターが炸裂し、Yo La Tengo/MBVのような強烈な音像を持つギターロックが展開される。しかし、これらは飽くまで、ブレイクビーツのドラムの中で繰り広げられていく。最も、ダグラスのシンガーとしての存在感が出てくるのが、「Keepsake」である。ヒップホップやブレイクビーツ、そしてポップの中間にある音楽性はSZAに比する内容と言えるか。

 

アルバムの終盤でも良曲が目白押しとなっている。「Glad 2 Have U」ではやはりブラック・コンテンポラリーの80年代のサウンドをベースに、ファンクの要素を込めたダンス・ポップを選んでいる。これはまさしく、長らく忘れ去られていたように思えるプリンスの音楽のリバイバルである。それらを見事にバラード風に洗練し、現代的なエレクトロニクスの影響を加えている。例えば、ロジャー・プリンスのサウンドは、ファンクバンドの音楽がベースになっていて、それらにAORやシンセ・ポップ/テクノポップのような要素を付け加えた。フェリシア・ダグラスはそれらにヒップホップ的なノリを付け加え、モダンなソウルミュージックを作り上げた。このアルバムでは全般的に、軽快で爽やかなR&Bという側面では、一貫している。しかし、シティガールのライフスタイル、そしてBLMマターのような主張性を織り交ぜながら、新時代のブラック・ミュージックを作り上げている。「No Sense」のような曲は、まさしく都会派のソウルミュージックで、現代的なアメリカの雰囲気を音楽により伝えることに成功している。

 

 

『Be About It』の最後を飾る「Evaporate」は、フェリシア・ダグラスのバラードソングの真骨頂である。マライアやダイアナ・ロスのような歌手に匹敵するバラードソング。すでに、「Hang On」の段階で示されたような夢見るかのような雰囲気を、歌手は見事なバラードに乗せて歌う。オーケストラ・ストリングのようなシンフォニックな要素を効果的に用いながら、ワールドミュージックのドラムを含め、クロスオーバーの未来的な形を示している。このアルバムの終わりでは、壮大な映画のストーリーを見終えた時のような深い感慨が得られるに違いない。

 

 

92/100 



「Evaporate」

 

 

・Gemma 「Be About It」は、本日自主制作盤としてリリース。ストリーミングはこちらから。

 


2026年1月に発売されたデビューアルバム『Quicksand Heart』が批評家から絶賛を浴びたことを受け、オルタナティブ・ポップの先駆者ジェニー・オン・ホリデーが新作アコースティックEPをリリースした。本作は、The Time、The Line Of Best FIt、DIY、MOJOから定評を得た。

 

ディスコポップやインディーポップを中心に、楽しい音楽を届けてくれたジェニー・ホリングワースであるが、アコースティックを中心に、カバー曲を追加収録した「Excess Baggage」バージョンでは楽曲のメロディアスな側面が引き出されている。個人的にはこちらの方をおすすめしたい。

 

「Excess Baggage」には、The Replacementsの「Androgynous」やWheatの「Don't I Hold You」といったユニークなカバー曲も収録されている。ザ・リプレイスメンツは、ポール・ウェスターバーグをフロントマンに擁するミネアポリスのバンドで、初期のパンク/ハードコアの音楽的なアプローチから、フォーク、ジャズ、メロディアスなロックに転じたグループである。さらに、ウィートはマサチューセッツのインディーロックバンドで、1995年から活動している。 

 

『Quicksand Heart - Excess Baggage』は、アルバム収録曲をより親密でシンプルなアレンジで再構築したシリーズであり、彼女の驚異的なボーカル能力と、アルバム全体に貫かれるソングライティングの真髄を際立たせている。EPから二曲のミュージックビデオが公開されている。



・『GOOD INTENTIONS』 // 『EVERY OUNCE OF ME』

 



 

 

新たな明快さによって牽引される、ホリングワースの芸術における力強い新章を切り拓く『Quicksand Heart』は、フェスティバルのピットで友人と歌ったり、夜行バスで一人口ずさんだりしたくなる、力強く直感的な作品だ。「流砂の心」という印象的なイメージは、感情の渦巻く渦であり、鼓動する感情の深淵である。ジェニー・オン・ホリデーが、愛を与え、受け取る様子を表現する言葉だ。  


ノリッジの静かな夏に書き下ろされ、ロンドンでプロデューサーのステフ・マルツィアーノ(ヘイリー・ウィリアムズ、ネル・メスカル)と共に完成させた『Quicksand Heart』は、ジェニーの映画的なソロサウンドを提示する。それは率直なストーリーテリングに根ざしつつ、ポップな想像力において広大な世界観を広げている。


プレファブ・スプラウトからビーチ・ボーイズ、ケイト・ブッシュ、シンディ・ローパーに至るまで、様々なアーティストからインスピレーションを得たホリングワースとマルツィアーノは、「ジェニー・オン・ホリデー」という、L.E.G.の語彙にふさわしい遊び心あふれる名前を考案した。


「私は基本的に、バンドから休暇中なんだ」と、ホリングワースは茶目っ気たっぷりに語る。これは喜びと力強さ、豊かさに満ちた一枚であり、ザ・リプレイスメンツを思わせる生々しくパンクなベースライン、きらめくシンセ、そしてエリザベス・フレイザーを彷彿とさせる別世界的な表現力豊かなボーカルが、エネルギーに満ち溢れている。プロダクションは前面に出て大胆で、最もメランコリックなリズムでさえもポップな感性に彩られている。


ジェニー・ホリングワースとローザ・ウォルトンは16歳でトランスグレッシブ・レコードと契約し、2016年に圧倒的なデビュー作『I, Gemini』をリリースした。これは、メロディック・エレクトロニックとフリーキーなフォーク・ポップが奇妙に融合した作品だった。


2018年に批評家から絶賛された『I’m All Ears』は、甘美でありながら辛辣なボーカル、不気味な歌詞、そして故ソフィーによる変異的なプロダクションを軸に、幻想的な新たな音の世界へと広がっていった。「Hot Pink」はそのアンセムとなり、年間ベストアルバムリストを席巻した。


2022年、彼女たちは力強い『Two Ribbons』でバンド活動に復帰した。この作品は、大人へと成長する中で経験した悲しみや、変化し続ける友情の姿を鮮烈に捉えていた。もはや双子ではなく、2枚の布が広げられていくようなイメージは的を射ており、それ以来、二人はソロアーティストとして自分自身を探求するという共通の願望を追求しつつ、友情を育むことに注力してきた。


Jenny On Holidayは、完全に彼女自身のサウンドを確立して登場した。流砂のような心は抑えきれない。これは、生命を讃える作品である。 

 

 『Quicksand Heart - Excess Baggage』- EP


Tracklist

1. Androgynous

2. Don’t I Hold You

3. Push - acoustic version

4. These Streets I Know - acoustic version

5. Good Intentions - acoustic version

6. Every Ounce Of Me - acoustic version

7. Appetite - acoustic version


・Listen: 【https://transgressive.lnk.to/excessbaggage

2019年に編集者・大城壮平によって創刊されたファッション/カルチャーメディア『VOSTOK』。コロナ禍の影響により長らく休刊しておりましたが、このたび復刊する運びとなりました。日本発のメンズファッション誌「VOSTOK」は、「雑誌」というメディアの持つ特性を存分に生かしたインディペンデントで刺激的な雑誌をつくるというコンセプトのもと始まった。大城氏は講談社のファッション誌「HUGE」で実務経験を積んだあと、独立した編集者である。


VOSTOKとは「極東」という意味であるとともに、ユーリイ・ガガーリンを乗せて人類初の有人宇宙飛行を実現した宇宙船の名前のことを示す。カタログ的な実売誌ではない、想像力を掻き立てる美しい一冊。数年後に開いても新たな発見があるアーカイブ性のある一冊。国内外のクリエイターやファッション関係者をも刺激する一冊をコンセプトに、過去4号発行いたしました。


それらのコンセプトは変わりませんが、今回の復刊に伴い、いくつかアップデイト予定です。まずメンズだけでなく、ウィメンズのファッションストーリーも展開します。また、グローバル展開を考慮し、バイリンガル仕様になるのに加え、ファッションページ、ジャーナルページ共に国内外のさまざまなクリエイターが参加予定です。


チーム構成に関しても、編集者が集う従来の編集部型ではなく、アートディレクターとして加瀬透が、ファッションディレクターとして吉田達哉が、PRとして尾崎悠一郎が、その他海外セールス、クリエイティブプロデューサー、マーケターなど、各ジャンルのエキスパートが参加するコレクティブ型とすることで、クオリティの向上や多様な展開を実現できる体制にいたしました。


単なるオールドメディアとしての紙の雑誌ではなく、印刷物、SNS、WEBの3つを軸にそれぞれの特性を活かし、そこからさまざまなプロジェクトを展開していく、新しい時代のメディア型プラットフォームを目指します。


発売日は2026年5月中旬を予定しております。東京・日本から世界に通用する一冊を刊行いたします。ぜひご高覧ください。

 Friko 『Something Worth Waiting For』


 

Label: ATO

Release: 2026年4月24日

 

 

Review

 

フジロックに出演予定のシカゴのインディーロックバンド、Friko(フリコ)は先週末にセカンドアルバム『Something Worth Waiting For』をリリースした。じんわりとした温かさを感じさせるエバーグリーンな良作である。 


音像の大きなディストーションのギターワーク、ニコ・カペタンの抒情的なボーカルは多彩さがある。テレビジョンやレディオヘッド的な繊細さと知性を併せ持ち、ときに激情的になることも。2ndアルバムの冒頭を飾る「Guess」は、基本的なアルトロックの形式を踏襲しつつも、意外なノイズロック的な展開を見せることもある。しかし、少なからず、アヴァンギャルドな性質があるとはいえ、基本的にはエバールグリーンなロックソングが通じている。そこには最近、主流のバンドにありがちな感情の抑制ではなく、原始的なパンクのような荒削りなボーカルや叫びがジョン・コングルトンが得意とする奥行きのあるサウンドワークに反映されている。

 

手探りで聴き進めていくと、意外にもガレージロック風のサウンドが印象に残る。「Still Around」はニューヨークのプロトパンクを意識しつつも、ボーカルにはメロディアスな性質がある。これが彼らのロックソングを聴きやすくしている理由かもしれない。そしてこのロックソングはたしかに、80−90年代前半期のレディオヘッドのような哀愁をどこかに漂わせている。カペタンのボーカルは、『Bends』時代のトム・ヨークのつややかなボーカルを彷彿とさせる。バンドアンサンブルも強固である。フロントマンのボーカルを際立たせるために、ドラマーのベイリー・ミンゼンバーガー、ギタリストのコーガン・ロブ、ベーシストのデヴィッド・フラーは縦横無尽に躍動する。明らかにスタジアムレベルでのライブを意識したナンバーである。さらに、アンセミックなコーラスワークも魅力で、この曲のハイライトとなるに違いない。

 

ただ、個人的なイチオシは続く「Choo Choo」のような陰影を感じさせるアルトロックソングである。テレビジョンに比する詩情とロック精神を兼ね備えたフリコのソングライティングは、アンサンブルとたくみに合致し、バンドとして不可欠な一体感を呼び起こすことに成功している。静と動のセクションを交互に配置したり、メインボーカルとコーラスを対比させるなど、随所に工夫が凝らされている。この曲はインディーロックとして新風を呼び込むことに成功している。ライブなどでも注目してほしいが、ドラムワークが秀逸であり、この曲に強いハネを与えている。メロディとリズム、そして熱量などがバランスよく溶け合った一曲となっている。また、もう一つ注目すべきは、この曲に漂う若さや青さに象徴されるエモの雰囲気である。


「Alice」も良い曲で、ここでもレディオヘッドの『OK Computer』時代のロックバラードからの影響を読み取ることが出来る。しかし、90年代のデジタルなサウンドとは異なり、自然味溢れるアナログ風のサウンドが押し出されている。それゆえ、ラフさや粗さのような要素も一つの魅力となる。続く「Certainly」は70年代のシンフォニックバラードの影響が反映された形である。ピアノを中心として、ボーカルと掛け合うように、ストリングスが爽やかな旋律線を描く。

 

こういった冒険心のある音楽的なアプローチに加えて、スタンダードな「Hot Air Baloon」のような楽曲が強い印象を残す。ここでもニューヨークのプロトパンクや、2000年前後のガレージ・ロックリバイバルを踏襲し、テレビジョンやストロークスのようなギターワーク、そしてボーカルを通じて、クールなロックサウンドを紡ぎ出している。これらは、ニューヨークのロックシーンからの影響が特に色濃いことを伺わせる。しかし、彼らをシカゴのバンドらしくしている理由は、全般的なフォークミュージックからの影響が込められているからだろう。曲をぼんやり聴いていると、サウンドから自然味溢れる爽快感を感じ取ることが出来る。多分これはデビューアルバムから引き継がれた要素ではないだろうか。また、いくつかのセクションを経て、曲の後半でハイライトがやってくる。静かで落ち着いたロックソングのイントロからシンガロングを誘発するパッションとエナジーが奔流する終盤の展開は聴き逃がせない。前の曲で指摘したようなフォークミュージックからの影響は、続く「Seven Degree」に表れる。ここではアコースティックギターによるフォークロックで、スプリングスティーン的な雰囲気を放つ。


フリコはアメリカの音楽だけではなく、UKロックを吸収し、それらを上手く混合させる。タイトル曲「Something Worth Waiting For」のような曲は、シガー・ロスからの影響が滲み出ている。ビョークとのライブでのコラボ曲のような感じで、この曲はアルバムの中で、唯一、北欧(アイスランド)のフォークミュージックからの影響を捉えることが出来る。そしてどことなくさわやかである。恬淡としたアルトロックソングやバラード、あるいはフォークが中心となっているセカンド・アルバムであるが、前作よりもはるかに音楽的な間口が広くなっている。

 

さらに、2ndアルバムのクローズ「Dear Bycycle」では大掛かりな仕掛けを持つ一曲に仕上げている。ここでは、Wilcoのようなバンドの次世代の実験的なフォークロックのアプローチをもとに、エレクトロニクスやポストロック/マスロックのような文脈を加え、新鮮味のあるサウンドを確立している。最後の曲は相当力が入っている。インディーロックバンドという表向きの呼称とは裏腹に、広角に聴き込めるようなアルバムである。ライブに行く人はぜひ聴いてみよう。

 

 

 

82/100 

 

 

 

「Still Around」 

 

 ▪Listen Here:  Friko 『Something Worth Waiting For』


 

The Menzingersは、8thアルバム『Everything I Ever Saw』のリリースを発表した。本作は7月17日にエピタフ・レコードより発売される。プロデュースとレコーディングはウィル・イップが担当した。メンジンガーズはロック寄りのパンクロックソングを特徴とするが、最新シングル「Chance Encounter」ではカラリとした爽快感のあるギターロックソングを聴くことが出来る。


「このアルバム制作中に、僕たちの生活も世界も大きく変わった。でも、どういうわけか、そのすべてが僕たちをバンドへの絆と友情のより深いところへと引き込んでくれた」ボーカル兼ギタリストのトム・メイは語る。


「結成から20年、今ほど自分たちの活動と深く繋がっていると感じたことはない。『大人になれば、問題も大きくなる』とはよく聞くが、そこには真実がある一方で、より大きな答えや深い意味も存在する。本当の変化の向こう側でしか見つけることのできない、苦労して手に入れた希望のようなものがあるんだ。人生や世界の不確実性の中で、皮肉屋になってしまうのは簡単だ。『全部クソ食らえ』と言いたくなるのも容易い。『Everything I Ever Saw』では、僕らはそのすべてに真正面から向き合いたかった。このクソみたいな世界全体とね。」


ブリテン・ウェイアントとザ・メンジンガーズが監督を務めたミュージックビデオをご覧下さい。



「Chance Encounters」


The Menzingers 『Everything I Saw』


Label: Epitaph

Release:  2026年7月17日

 

Tracklist: 

1. Chance Encounters

2. Better Angels

3. Romanticism

4. Other People’s Money

5. Gasoline & Matches

6. The Fool

7. Nobody’s Heroes

8. Breathe With Me

9. When She Enters My Dreams

10. Parade Day

11. Everything I Ever Saw

Vince Staples

ヴィンス・ステイプルズは、4月25日(土)にロック調のリードシングル「Blackberry Marmalade」をリリースしたのに続き、Loma Vista Recordingsとの提携により、6月5日にニューアルバム『Cry Baby』をリリースすることを発表した。これまでヒップホップの次世代アーティストとして期待されてきたミュージシャンだが、今回はロックソングを交えた新曲となっている。


全10曲からなる本作は、現代アメリカの課題を浮き彫りにする。ステイプルズの過去2作に見られた内省的な作風とは対照的に、外向きの視点に立ち、「終わりのないアメリカの混乱のサイクルを処理し、研ぎ澄まされた明快さと意図をもってそれを反映」しているという。


『Cry Baby』の各楽曲は、生楽器演奏を軸に構成されており、「アメリカの緊張感、不条理、そして感情的な重みを捉えた、ダイナミックで対立的な作品群」を形成している。このアルバムは、単に時代とその前例を記録するだけでなく、それらと格闘する作品となっている。


「Blackberry Marmalade」は、黒人アーティストとしての鬱憤と怒りが混在している。「反体制、白人連中はあの怪しげなやり方に便乗している/白人連中は俺が働くのを見て、俺を酷使したり、マジで狂ってるぜ/白人連中は税金で俺の懐を搾り取り、お前を金持ちにしてやったなんて言うんだ」といった歌詞を歌い上げる。ステープルズとブラッドリー・J・カルダーが監督した楽曲のミュージックビデオは、一人称視点シューティングゲームの視点で撮影されている。





Cry Baby Tracklist:

1. Blackberry Marmalade

2. Go! Go! Gorilla

3. White Flag

4. The Running Man

5. TV Guide

6. The Big Bad Wolf

7. Only in America

8. Do You Know the Devil?

9. Cotton

10. 7 in the Morning



この度Acne Studios(アクネ ストゥディオズ)は、厳選されたワードローブとして構成された2026年春夏ミッドサマーカプセルコレクションを発表いたします。流れるようなシルエットやトロンプルイユの表現、柔らかなテーラリングが、季節感のあるモチーフと繊細なカラーパレットによって表現されています。

 

薔薇は繰り返し登場するモチーフとして、シルクスカーフやジャージーに繊細に描かれ、ひねりの効いたエレガンスをコレクション全体に与えています。また継続的に用いられるチェック柄は、軽やかなブラウスやスイムウェア、パッチワークアイテムへと再構築されています。

 

スプレーロゴやアシッドウォッシュ加工、トロンプルイユのデニム表現といったディテールが、さりげない変化と奥行きをもたらします。軽やかな夏らしさを保ちながら、見慣れたシルエットに新たな表情を加えています。

 

アクセサリーには、シーズンカラーで展開されるシグネチャーシューズやローズプリントのシルクスカーフ、そして本コレクションのチェック柄を用いた新作のCamero Kitバッグが揃います。

 

 2026年春夏ミッドサマーカプセルコレクションは、4月30日(木)より世界各国の店舗およびオンラインサイトにて発売されます。コレクションのサンプルは以下の通りとなっています。

 

 


ロゴポロTシャツ¥73,700(税込)

トロンプルイユジーンズ - 1981 ¥138,600(税込)



キトゥンヒールサンダル¥106,700(税込)


レースアップスエードシューズ¥96,800(税込)


レイヤードロゴタンクトップ ¥49,500(税込)


プリントデニムミディドレス ¥157,300(税込)


Camero Kitチェッククロスボディバッグ¥269,500(税込)

【クレジット】

Acne Studios | アクネ ストゥディオズ

 

【お問い合わせ先】

Acne Studios 【クレジット】

Acne Studios | アクネ ストゥディオズ

 

【お問い合わせ先】

Acne Studios Aoyama | アクネ ストゥディオズ アオヤマ

Tel: 03-6418-9923

 

Momoko Ohori /大堀桃子

Head of Communication & Marketing APAC

m.ohori@acnestudios.com | アクネ ストゥディオズ アオヤマ

Tel: 03-6418-9923

 

Momoko Ohori /大堀桃子

Head of Communication & Marketing APAC

m.ohori@acnestudios.com

▪ブラックミュージックの権利獲得のための長い時代
 Mamie Smith(Queen of The Blues)


音楽とは、たしかに、理論、構成や旋律の要素、ハーモニー、楽器の演奏や歌の技術が不可欠である。しかし、同時に、その表向きの内容だけで成立している訳ではない。結局のところ、民族音楽であれば、その土地の習性や風土、儀式的な要素、伝統性など、様々な要素が混在している。リアルな音楽に触れる必要がある理由は、こういった要素が含まれているからである。

  

今回、コラムで取り上げるのは、ブラック・ミュージックがポピュラー化されるための始まりとなった「レイス・ミュージック(Race Music)」という内容である。この音楽に関しては、どうしても差別意識(レイシズム)という観念や概念を避けて通ることができないだろう。そもそも、ポピュラー音楽が産業として確立されようとしていた1920年代には、黒人音楽と白人音楽が明確に分割されていた。これは社会的に言及すれば、この両者の人種の生活空間も分かたれていたのである。白人音楽は、カントリーソングの前身であるヒルビリー、それに対して黒人音楽は、ブルース、ゴスペル、最初期のロックンロールを示唆した。これらはWW2の後にはすっかり個別のジャンルとして確立されていき、”Race Music”という呼称は衰退し、ビルボードが使用した”R&B”という呼称が一般的に浸透していったため、ほとんど使用されなくなった。

 

それと同時に、キング牧師の公民権運動の時代をきっかけにして、人権的な意識がアメリカに根付くと、ブラックミュージックは表向きには一般化されていった。その背景には、1980年代を通じて、ダンスミュージックやソウルが盛んになり、ブラックミュージックが一般的な市民権を獲得したことが挙げられる。しかし、その権利の獲得のための道筋は一筋縄ではいかなかった。ラジオから排斥されたり、また、市民権が得られない不毛の時代が長く続いた。サム・クックのような伝説的な存在が「Change Gonna Come(変革はやってくる!)」と歌ったのには理由があったのである。俺たちもそのうちキャデラックに乗れるぜと彼は密かな夢を描いていた。

 

当初、ブラックミュージックとホワイトミュージックは、音楽市場のジャンルとして分割されていたが、実際には、カントリー・ブルースや、ロックンロールを見ると、これらの人種的な隔壁を越えてクロスオーバーするようなケースは少なくなかった。正確に言えば、音楽でしか示せない概念やフレンドシップが存在したとも言える。ただし、少なくとも、音楽市場としては、そのかぎりではなかったことが分かる。1920年から1930年代にかけて、 レコード会社はアフリカ系アメリカ人の音楽をレイス・ミュージックとして売り出し、産業的に確立しようとした。

 

この独自音楽の出発は、どちらかと言えば、ブラックミュージックを個別で売り出したほうが音楽ファンにも伝わりやすいという、親切心やサービス精神ではないかと推測される。ブラックミュージックとホワイトミュージックの明確な違いというのは、その成り立ちに求められる。

 

ブラックミュージックは基本的に、アフリカの儀式的な音楽に最初のルーツがあり、これらは、複合的なリズム(対旋律法を用いた複数のリズム(二つ以上のリズムをかけ合わせる)、それから、教会音楽に象徴されるような黒人霊歌としてのメロディーの側面、あるいは、それ以降のジャズのコール・アンド・レスポンスに代表されるようなメインの歌手に手拍子で答えながら、合いの手を入れる「グリオ」という形式。(カリプソ) アフリカ系の人々がリズム感に長けているのは、これらの伝統性に根ざしている。リズム感が弱い自分としては羨ましい限りである。

 

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・レイス・ミュージックの進化  

Race Musicを年代別にチャート化

レイス・ミュージックは大まかに二つの段階に分けて進化していく。最初の段階は、ブルース、ジャズ、そしてゴスペルである。

 

レイス・ミュージックは、アフリカの伝統や民謡を伝えるために始まった。ブルースは、特にレイス・ミュージックとして最初に出発したジャンルであり、R&Bと並び、白人の伝統的なロックミュージシャンが最も敬愛する音楽といっても過言ではない。ブルース音楽は、アコースティックギター、歌、ブルース・ハープ、稀にピアノしか出てこない。音楽制作における最低限の費用効果で、ボーカルの声色やギタープレイの変化だけで驚くべき多彩な音楽性もたらす。

 

なおかつ、ブルースミュージックは民謡的な要素が強い。アメリカに移民したアフリカ系ミュージシャンたちは、自らの過去の遺産から何かを汲み出し、それらに敬意を以て歌を紡いだのである。当初、ブルースのミュージシャンは、アフリカ系アメリカ人が直面する困難を音楽に映し出していた。これらのミュージシャンの複数が宣教師のような職業にあったことを見るかぎり、ブルースというのは本物のストリート音楽で、伝道的な性質が強かったことを伺わせる。一方、基本的には室内楽として出発したゴスペル。日曜の礼拝で儀式的に歌われるが、これもまた単なる宗教音楽の役目を果たすにとどまらず、人種差別に対する抗議や表現形態の意味が込められていた。それはまたキリスト原理主義における信仰者の疑念を映し出していた。

 

以後、ゴスペルとブルースに端を発するレイス・ミュージックは一般的なリズム・アンド・ブルースに移行していった。2000年代にヒップホップが主流になるまで、R&Bの黄金期が続いたといえる。これらは伝道的な性質を持つ形式主義の音楽がさらにポピュラー化/民衆化した段階である。しかし、依然としてリズムという性質は失わずに、それらを急進的に打ち出していき、全般的なポップソングの基礎にもなった。しかし、これらは同時に権利獲得のための時代でもあった。1960年から70年代にかけてのスティーヴィー・ワンダーを中心とするニューソウル運動。これは黒人音楽が権利を獲得するための時代でもあった。

 

R&B以降に登場したロックンロールは、今やどのような人種も楽しむ一般的な音楽になっているが、最初は一つのブラックミュージックから出発している。特に、リズム・アンド・ブルースとカントリー・ミュージックの複合として誕生し、その後、世界的に人種を越えて親しまれるようになった。チャック・ベリーやリトル・リチャードといった大家がその先駆者である。これらはエルヴィス・プレスリーが登場する前夜の1950年代に盛んだった。また、当初は座って鑑賞するタイプの音楽が多かったが、50年代以降はダンスするための音楽の性質を強めていく。

 

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・レイスミュージックの業界的なアプローチ 南部の市場の開拓   レイスに対する「ヒルビリー」が登場



音楽業界がレイス・ミュージックを売り出したのは理由があった。アメリカでは、1914年に蓄音機の売上が大幅に増加、1919年になると、200万台の売上を記録した。しかし、翌年以降は、レコードの売上が少しずつ減少していった。なぜかといえば、ラジオが一般的な家庭に普及しはじめたからである。


1922年以降になると、ラジオの普及がレコードの売上を奪ったため、レコード会社は大慌てだった。20世紀の初頭、アメリカのレコード会社は、ニューヨーク、シカゴ、アトランタ、ロサンゼルスに点在していたが、レコード会社は南部地域の音楽市場を開拓し、ソウル専門のレーベルも設立されるようになった。ここから、テネシーのStax Recordsのようなレーベルが出てきた。

 

このレイス・ミュージックを爆発的に普及させたのが二人のスミスだった。そのうちの一人は、ハーレムの歌手、Mammie Smith(メイミー・スミス)であって、一般的に有名なBassie Smithより三年早く登場し、コロンビアレコードからレコードを発売した。最初の「ブルースの女王」と称される。 もうひとりのレイス・ミュージックの立役者べッシー・スミスは、「ブルースの女帝」と呼ばれている。どちらのほうがすごいのかは読者諸賢のご想像にお任せしたい。

 

メイミー・スミスは、コロンビアの子会社であるOkeh Recordsに所属し、「Crazy Blues」「It's All Right Here For You」など、シンボリックな楽曲を相次いでリリースした。音楽的には、ブギウギやジャグ、ジャズにも比する雰囲気が込められている。会社のレコード・プロデューサー、ラルフ・ピアが、ハーレムの人気歌手であったメイミー・スミスと白人の伴奏バンドに共同でレコーディングに起用した。コロンビアは、これをレイス・シリーズの第一弾として銘打った。ピアは、黒人新聞が黒人のことを''Race''と呼んでいたことから、この名を思いついたという。

 

ラルフ・ピアは、メイミー・スミスのレコードの売れ行きが南部を中心に好調であることから、レコード市場として南部の地域を開拓しようと思いついた。その後、テネシーを筆頭に、この地域は北部のデトロイトと並んで、重要なソウルミュージックの中心地になっていく。しかし、これらのレイス・シリーズの問題点は、黒人音楽が白人の管理下に留まっていたということである。これらは、キース・リチャーズがシカゴのある伝説的なブルースマンに最初に出会った時、レコード会社で下働きをしていてびっくりしたというエピソードを見ても明らかだろう。


また、こういった人種的な問題は、1980年代以降もくすぶり続け、その独立性を阻害していた。しかし、少なからず、ブルース、ジャグバンド、ジャズピアノ、ゴスペルの普及に役立った一面もあるだろう。

 

その後、南部ではレイス・ミュージックに対抗して白人音楽が登場した。ラルフ・ピアがアトランタの家具、レイスの音楽を中心に棚卸ししていたポーク・ブロックマンのところに出張した時、ブロックマンは白人フィドル奏者ジョン・カースンを紹介した。ジョンは1923年に、地元アトランタで黒人シンガーと一緒に録音したレコードをリリースし、500枚を売り上げた。これが俗に言われる''ヒルビリー・ミュージック''として売り出されるようになったきっかけだ。ヒルビリーは、山間部の男性的な音楽として知られているが、これらがカントリー/ウェスタンと連結していく。黒人音楽と白人音楽はどの時代もクロスオーバーする一面があったことがわかる。

 

冒頭で述べたように、音楽というのは、構成、旋律、拍動、ハーモニーだけを伝えるためだけのものではない。さりとて個人の感情や内面の吐露に終始するわけでもない。その人々が持つ伝統や文化、思想、ないしは、その人しかもちえない何か、独自の表現を伝えるためのものでもある。

 

その音楽は、今では”スタンダード”となったかもしれないが、それらは先人達が苦闘し、権利獲得のため闘争し、苦心して獲得してきたのである。ヒップホップも、J-POPも、K-POPも然りだろう。音楽及び芸術は、いかなるジャンルにおいても市民権を得るための”潜伏的な時期”が必要になってくる。今ごく普通に巷で聴かれている音楽も、マイノリティの時代があったと言えるはずだ。その音楽は誰がどんな思いを込めて作ってきたのか。そんな考えを巡らせながら、音楽を聴いたり、演奏してみると、きっとその音楽に対する見方が変わってくるに違いない。

 

 

Le  Makeup

本日(4月29日)、Le  Makeupのニューアルバムがついにリリースされる。人とのつながりをテーマにした新作で彼は現代的な若者の心情を巧みに表現する。また、人間としての成長の過程が込められた新作といえるかしれない。多くのリスナーはそこに自分に似た誰かを発見することだろう。


ニューアルバム「The Crying Xpress」は、SNSで呟くみたいに、誰に話すまでもないけど聞いてほしい自分の話である。ルメイクアップは今作で若者らしい繊細さや脆さを巧みに表現している。従来培われたヒップホップやビートの表現は今ようやくJ-POPらしい音楽として体現されることになった。


ルメイクアップの楽曲は一曲の中で時間が変遷して行き、ミクロとマクロの視点を変幻自在の行き来する。各楽曲に取り巻くエモーション、日本語によるボーカルの表現、そしてメロディセンスの探求。前作に比べると、ソングライターとして磨きがかけられた楽曲が増えてきている。


曲名にも記号論のようなメーセージが込められていそうだ。しかし、そこから何を汲み取ることができるだろう? 今作にはゲストボーカルとして柴田聡子さんが参加している。両者はテレビ東京のプレミアムドラマのオープニング曲のリミックスでも関わりがあった。どのようなケミストリーを起こしたのか? アルバムより「hold on」のミュージックビデオが初公開された。さらにレコ発のライブイベントも7月22日に開催。こちらも合わせてご確認ください。



・Le Makeup - hold on (Official Music Video)



Director : jvnpey

Starring : Le Makeup, yilin

Director of Photography : sliceofbluelife


Youtubeでのご視聴 :[ https://youtu.be/aN4eYUFbqHU ]


【楽曲紹介(レーベルによる)】


ミニマルなシンセ、エモーショナルなヴォーカル、クリーントーンのギター、オルタナティヴ・アンビエント・ポップ、独自の世界を構築するシンガーソングライター 【Le Makeup】のニューアルバム。Telematic Visions、柴田聡子、Doveが参加。アーティスト写真、カヴァーアートは、佐藤麻優子。マスタリングは、木村健太郎が手がけた。


アルバムから最初のシングルとしてリリースされたミニマル・アンビエント・ポップ「はじまり」。Telematic Visionsの楽曲「each dreams」をそのままサンプリングした「each dreams riddim」。


「The Crying Xpress」リード曲でもある「hold on」は、親密さと隣り合わせの孤独を表現。シンガロング出来そうなサビが印象的な「block party」。トラウマと現実。何を受け入れて、何を拒絶して自分になっていくかという過程をテーマにした「傷」には、柴田聡子が参加。柴田聡子の楽曲のメロディを引用もしている。


ドリーミーな「c 4eva」は、みんなあたりまえに1人だということ。だけど繋がりをもとめてることがテーマ。徐々に夜が深まっていくイメージだというアルバムのブレイク的な曲「venus」。


Doveが参加した「ivory recording」は、印象的なシンセのフレーズとDoveのヴォーカルを配した壮大な印象の楽曲。「一人で迎えられない夜を一人で迎える夜に」エレクトリック・ギターのアルペジオ、ヴォーカル/シンセサイザーがシンクロする夜を想わせる涼しげな楽曲「この夜が終わるまで」。淡々と日々を過ごすなかで、起きる突風を感じさせるようなポジティブさを感じる「声」。


深い夜と進んでいく先の光を表現した「息」。孤独な社会生活、人間社会で他人とどう生きていくか、小説からインスピレーションを受けたという「glo」。言葉にすることの躊躇とかを超えた、音楽へのラブレター「crying ex」の全13曲。




【【新譜情報】Le Makeup「The Crying Xpress」

Le  Makeup 『The Crying Xpress』アルバムジャケット


Digital (UPC : 4580789762970) | PURE015 | 2026.04.29 Release | Released by AWDR/LR2

[ https://ssm.lnk.to/TheCryingXpress ]


1. はじまり  ハジマリ hajimari  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Synthesizer, Programming : Le Makeup

2. each dreams riddim feat. Telematic Visions  イーチ ドリームス リディム フィーチャリング テレマティック ビジョンズ  Lyrics, Arrangement : Le Makeup / Music : Telematic Visions, Le Makeup / Vocal, Guitar, Synthesizer : Le Makeup / Programming : Le Makeup, Telematic Visions

3. hold on  ホールドオン  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

4. block party  ブロックパーティー  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Synthesizer, Programming : Le Makeup

5. 傷 feat. 柴田聡子  キズ フィーチャリング シバタサトコ kizu featuring Satoko Shibata  Lyrics, Music : Le Makeup, 柴田聡子 / Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Synthesizer, Programming : Le Makeup / Vocal : 柴田聡子

6. c 4eva  シー フォーエバー  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

7. venus  ヴィーナス  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Synthesizer, Programming : Le Makeup

8. ivory recording feat. Dove  アイボリーレコーディング フィーチャリング ダブ  Lyrics : Le Makeup, Dove / Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Synthesizer, Programming : Le Makeup / Vocal : Dove

9. この夜が終わるまで  コノヨルガオワルマデ untill this night ends  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

10. 声  コエ koe  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

11. 息  イキ iki  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

12. glo  グロー glo  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup

13. crying ex  クライングエックス crying ex  Lyrics, Music, Arrangement : Le Makeup / Vocal, Guitar, Bass, Synthesizer, Programming : Le Makeup


Mixing : Le Makeup

Mastering : Kentaro Kimura

Photography, Cover Art : Mayuko Sato



7月22日(水)には、渋谷WWWにてOne Man Live 「The Crying Xpress」を開催。

アルバムに参加した柴田聡子、Doveのゲスト出演も発表されている。

チケット発売中。


【イベント情報】Le Makeup - One Man Live 「The Crying Xpress」at WWW, Shibuya



2026.07.22 [Wed] Open 18:30 / Start 19:30

Guest : 柴田聡子、Dove and more

[ https://www-shibuya.jp/schedule/019763.php ]

Adv. 3,500 Yen [+1D]

Ticket : e+ [ https://eplus.jp/LeMakeup ]

Ticket : LivePocket [ https://livepocket.jp/e/le-makeup ]





Le Makeup:


シンガー/プロデューサー。関西学院大学在学中に作曲へと本格的に取り組みはじめ、以降国内外の様々なレーベルから作品を発表する。2020年にアルバム「微熱」をリリース。

中国・韓国・オランダ・デンマーク・ドイツでもパフォーマンスを行う。2023年2月にDove、gummyboy、JUMADIBA、Tohji、環Royが参加したアルバム「Odorata」をリリース。Pitchforkで取り上げられるなど話題となった。

2024年5月にオノ セイゲンがマスタリング・エンジニアとして参加したアルバム「予感」をリリース。東京・大阪で初のワンマン公演「予感」を行った。2026年にニューアルバム「The Crying Xpress」を4月29日にリリース。


▪️EN


Singer/Producer. Began seriously pursuing composition while attending Kwansei Gakuin University, subsequently releasing works on various domestic and international labels. Released the album “Binetsu” in 2020.Has performed in China, South Korea, the Netherlands, Denmark, and Germany.

In February 2023, released the album ‘Odorata’ featuring contributions from Dove, gummyboy, JUMADIBA, Tohji, and Tamaki Roy. It garnered attention, including coverage by Pitchfork.

In May 2024, released the album ‘Premonition’ with Seigen Ono participating as mastering engineer. Held his first solo concerts, titled ‘Premonition’, in Tokyo and Osaka.New album “The Crying Xpress” will be released on April 29, 2026.