日本の作曲家/編曲家による清水靖晃によるNHK土曜ドラマ「お別れホスピタル 2」のサウンドトラックのアルバムがスペースシャワーから発売決定。デジタルで5月13日に配信開始され、次いで6月10日にはCDのフィジカルが発売されます。サウンドトラックにはサティの名曲「Je te veux」のアレンジも収録。


沖田×華による原作コミックをもとに、2024年放送の第1シリーズが大きな反響を呼び、続編として制作されたドラマ『お別れホスピタル2』。音楽を手掛けた清水靖晃によるオリジナル・サウンドトラックは、5月13日より各主要配信サービスにて先行配信中。さらに、6月10日にCDパッケージとして発売されることが決定しました。



清水靖晃「土曜ドラマ「お別れホスピタル2」オリジナル・サウンドトラック」



シミズ ヤスアキ「ドヨウドラマ オワカレホスピタル ツー オリジナル サウンドトラック」Yasuaki Shimizu「Doyou Drama Owakare Hospital 2 Original Soundtrack」

Digital (UPC : 4580789766862) 2026.05.13 Release | DDCB-12804 | Released by SPACE SHOWER MUSIC

CD (JAN : 4543034054305) 2026.06.10 Release | DDCB-12804 | Released by SPACE SHOWER MUSIC

[ https://ssm.lnk.to/OwakareHospital2 ]


01. まぼろし  マボロシ Maboroshi

02. ヘンミのテーマ II  ヘンミノテーマ II Henmi’s theme II

03. よいこと  ヨイコト  Yoikoto

04. 残された時間  ノコサレタジカン Nokosareta jikan

05. Sakura Waltz  サクラ・ワルツ Sakura waltz

06. 延命  エンメイ Enmei

07. Je te veux  ジュ・トゥ・ヴ Je te veux

08. Tortoise March I  トータス・マーチ I Tortoise march I

09. Tortoise March II  トータス・マーチ II Tortoise march II

10. Marmalade  マーマレード Marmalade

11. 遊歩 II – ピアノ  ユウホ II – ピアノ Yuho II – piano

12. 遊歩 II – サクソフォン  ユウホ II – サクソフォン Yuho II – saxophone


人生の最期を迎える療養病棟を舞台に、人と人の関係や「生きる」ことの意味を静かに問いかけるドラマ『お別れホスピタル』。沖田×華による原作コミックをもとに、2024年に放送された第1シリーズが大きな反響を呼び、『お別れホスピタル2』の続編制作へとつながった。


音楽制作にあたり、清水は前作の質感やモチーフを踏襲しながら、新たに登場する人物一人ひとりに寄り添うようなかたちで楽曲を構想。


真面目一筋に生きてきた100歳の元県議会議員・安斎正助の歩みを刻む〈トータス・マーチ〉。安斎と過去に訳ありな?縁を持つ、スナックの美枝ママの佇まいを映す「マーマレード」。ベストセラー作家・桜田美々の内に潜む記憶に触れる「サクラ・ワルツ」など、それぞれの人物像や記憶、過去に呼応する楽曲が並ぶ。


また、〈遊歩〉は、清水の即興演奏から立ち上がった音の一部を収録。本作の音楽は、観る者それぞれの記憶に触れ、余韻を残していく。


作曲・演奏:清水靖晃

「延命」 編曲:清水靖晃(原曲「ジュ・トゥ・ヴ」作曲:エリック・サティ)

「ジュ・トゥ・ヴ」 作曲:エリック・サティ、編曲:清水靖晃


清水靖晃:テナーサクソフォン、ピアノ、キーボード、プログラミング


レコーディング:清水靖晃(サブマリンスタジオ)

アディショナル・レコーディング:NHK CR-505スタジオ、ミキシング:NHK CP-604スタジオ

コンピューター・オペレーター:斎藤茂彦

録音:2025年12月~2026年2月

マスタリング:木村健太郎(キムケン・スタジオ)



土曜ドラマ「お別れホスピタル2」


【放送情報】

総合:2026年4月04日(土)夜10:00~10:45〈前編〉、4月11日(土)夜10:00~10:45〈後編〉

BSP4K:2026年3月22日(日)午後6:45~7:30〈前編〉、3月29日(日)午後6:45~7:30〈後編〉

[ https://www.web.nhk/tv/an/owakarehospital2/pl/series-tep-Z9WR7GN67X ]


【原作】  沖田×華「お別れホスピタル」(小学館「ビッグコミックスピリッツ」連載中)

【脚本】  安達奈緒子

【音楽】  清水靖晃

【出演】  岸井ゆきの、松山ケンイチ 他  

【演出】  柴田岳志

【制作統括】小松昌代(NHKエンタープライズ)、谷口卓敬(NHK)



・関連作品・前作リリース情報


NHK土曜ドラマ「お別れホスピタル」(2024年2月放送)

[ https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-1ZN13MQ53W ]

清水靖晃「お別れホスピタル」オリジナル・サウンドトラック

CD / Digital 2024.04.10 Release | RBCP-3534 | Released by Rambling Records

[ https://www.rambling.ne.jp/catalog/owakare-hospital ]

[ https://orcd.co/y5280qe ]



清水靖晃(Yasuaki Shimizu):

作曲家、サキソフォン奏者、音楽プロデューサー。ソロ活動のほか、実験的バンド「マライア」や「サキソフォネッツ」プロジェクト、コラボレーションなどを通じ、これまでに50作以上のアルバムを発表。


J.S.バッハ《無伴奏チェロ組曲》を独自の解釈でテナーサキソフォンのために編曲・演奏した『チェロ・スウィーツ』(1996/1999)や、サクソフォン5本とコントラバス4本という特異な編成で取り組んだ《ゴルトベルク変奏曲》など、既存の音楽に新たな視点をもたらす試みでも知られる。2006年『ペンタトニカ』では、西洋音楽と対位するオリジナルの五音音階による作品を提示。


さらに、空間そのものを楽器と捉える独自のコンセプトのもと、地下採石場や美術館など、従来のコンサートホールとは異なる場での録音やパフォーマンスを行う。


近年は、80年代作品のアルバム『案山子』や『うたかたの日々』の再評価を背景に欧米での関心が高まり、2018年にヨーロッパツアー、2025年の北米ツアーでは全公演ソールドアウトを記録するなど、大きな反響を呼ぶ。


ジャンルにとらわれず、多様なアーティストへの楽曲提供やプロデュースを行う一方、第86回アカデミー賞にノミネートされた米国映画『キューティー&ボクサー』(2013)では、第7回シネマ・アイ・オナーズにてオリジナル作曲賞を受賞。映像音楽の分野でも高い評価を確立している。NHKテレビドラマでは『透明なゆりかご』(2018)、『神の子はつぶやく』(2023)、『八月の声を運ぶ男』(2025)など、柴田岳志氏が演出を手がけた作品で音楽を担当し、その数は10作を超える。

  Masie Peters  『Florescence』

Label: Warner Music

Release: 2026年5月22日

 

Review

 

2023年から三年を経て、ブライトンのシンガーソングライター、メイジー・ピーターズのニューアルバム『Florescence』がリリースされた。ソングライターとして大きな成長を感じさせる新作である。前作では、年齢的な若さを発揮し、ダンサンブルなインディーポップソングを主体とした音楽を制作していたメイジー・ピーターズであったが、今作では、フォーク・ミュージックの音楽性を全面的に押し出し、円熟味あふれるソングライティングを行っている。

 

今回のアルバムで、メイジーは内省的なフォークソングを従来のポップソングと融合させている。「Mary Janes」を聴けば、その違いは一目瞭然だろう。ノイジーなポップソングの面影はほとんどなく、ソングライターは、エレクトリックギターによる弾き語りのスタイルを選び、落ち着いて瞑想的な趣のあるバラードソングを冒頭に据え置いている。ソロシンガーソングライターとしての飛翔を意味するのが前作であるとするなら、今作は大いなる変貌を表しているのだ。語りかけるようなボーカル、そしてときに古典的なフォーク/カントリーへの親愛をにじませながら、温かく、そして癒やされるような歌声で、このアルバムのオープナーをリードしている。さらにバックボーカルを交えて、ユニゾン/コーラスのボーカルが導入されると、琴線に触れるような切ない情感が楽曲から立ち上ってくる。やはり、この曲でもオートチューンは、機械的な印象を押し出すわけではなく、人間的な情感を印象付けるために導入されている。また、ダイナミックなホーンといった、おそらく今まで使用しなかったオーケストレーションの試みを取り入れることで、スケールの大きなポップソングが形作られているのである。

 

今回のアルバムでは、古典的なフォーク/カントリーの音楽性を冒険的に取り入れている。「Audrey Hepburn」は、ローマの休日のような優雅な雰囲気を、古典的なカントリー/フォークのソングスタイルで包み込んでいる。アルペジオを用いたアコースティックギター、そしてトロットのような駆け足のリズムと旋律を奏でるスタンダードなカントリーソングを踏襲しながら、それらを現代的なポップソングの形に落とし込んでいる。この曲では、ジョン・デンバーや、ロレッタ・リンのような21世紀初頭のルーツ・ミュージックのスタイルをシンガー持ち前の甘いヴォーカルと融合させている。すると、どっしりとしたワイルドなカントリーソングがややキュートな趣を持ち、本来の形とは違ったポピュラーソングのテイストが滲み出てくる。

 

ただ、前作のダンサンブルなポップソングが完全に放棄されたわけではない。「Say My Name In Your Sleep」では、シンセ・ポップを土台としたインディーポップソングに取り組んでいる。アルペジエーターを中心にミニマル・ミュージックとポップを組み合わせ、新鮮味のある楽曲を制作している。しかし、外交的なエネルギーを奔流させていた前作アルバムとは裏腹に、どことなく内省的でしっとりとした音楽性を追求している。いわば、内面的な脆さに焦点を当て、それらをまだ見ぬ聴衆と共有する、あるいは、したいという願望を示すような楽曲である。これらはダンサンブルなビート、そしてフォーク・ミュージックをベースにしたミニマル・ミュージックという反復的な構成を取りながら、静かなエネルギーを増幅させていくような感じで、曲そのものが盛り上がっている。今回のアルバムの序盤の楽曲で、メイジー・ピーターズは構成主義を選ばず、ループを中心に反復的な構成から核心となる箇所を汲み出そうと試みる。そしてその効果も相まってか、耳に残るリズムとメロディが出てくることがある。

 

そういった中で、注目曲が出てくる。「Old Fashioned」 はポップソングとして素晴らしい一曲で、メイジー持ち前の中音域の語りかけるようなボーカルから、リズミカルな箇所を経て、徐々に曲が盛り上がっていき、多幸感のあるコーラスを交えたお約束のサビが登場する。この瞬間、このシンガー特有の爽快感に満ちた感じや、カタルシスを感じさせる箇所が出てくる。 また、1番と2番ではよりコーラスの分厚さが増し、重厚感のあるポップサウンドを形成する。このアルバムで最も歌いやすく、そしてキャッチーなポップソングとしておさえておきたい。アルバムの中盤では、フォーク・ミュージックに依拠した曲が多いという印象である。「Houses」ではオーガニックな質感を持ったアコースティックギターによるフォーク・ソング、ジュリア・マイケルズをフィーチャーした「Kingmaker」では、ミニマル・ミュージックとフォーク・ミュージックを融合させている。このあたりの変化球の音楽的なアプローチの中に、メイジーピーターズはインテリジェンスをさりげない形で示そうとしたのは事実であろう。一転して「Vampire Time」ではカントリーを基礎にした古典的なスタイルへと回帰している。 

 

アルバムの後半で注目したいのは「Flat Earther」、「Questions」の二曲である。前者はバンジョーの音色を導入し、ピーターズは独自のバラードソングのスタイルを追求している。実際的に少しほろ苦く、切ないような雰囲気を感じさせる楽曲である。一方、対象的に爽快感のある明るさを押し出した「Questions」こそ、メイジー・ピーターズのポップソングの真骨頂であろう。この曲でも一貫してミニマル・ミュージックをベースにしたポップソングを提示するが、アルバムでは珍しくドラムを導入し、ダイナミックな音響性を獲得している。 そしてこのアルバムの最も特徴的なスタイル、ボーカルの対比により、このジャンルに新しい風を呼び込もうとしている。こういった清新な感覚を持つポップソングが、歌手の長所の一つなのである。その形が最もわかりやすく昇華されたのが、「Girl's Just Flying」である。この曲では、シンディ・ローパーのカラフルな印象を持つポップソングをモダンな形で受け継ごうとしている。 アコースティックギターを中心とするフォーク・ソング、そしてアンセミックなサビを対比させ、新しい時代のUKポップのスタイルを示そうとしている。実際的にカタルシスもある。

 

『Florescence』の良い点は、音楽的な構成的な箇所に注力しつつも、情感を失わないことである。それらはフォーク/カントリー、ミニマル・ミュージック、バラード、現代的なエレクトロニックを通過したポップという多彩な形で展開される。という意味では、最もカラフルな印象を持つポップアルバムが登場したといえるかもしれない。アルバムの全15曲を聴いてくれた音楽ファンへの最も美しい捧げ物が終曲を飾る「Nothing Like Being In Love」である。王道のバラードに挑戦したメイジーは、この曲で愛の尊さについて歌おうとしている。個人的な愛情にとどまらず、他者との関係で育まれる感情への言及、これこそシンガーの人間性の成長を表している。それはポップソングとして最も美麗な結晶となったのは言うまでもないことだろう。

 

 

85/100

 


 「Nothing Like Being In Love」

 

 

▪Maisie Peters 『Florescence』 

Listen/Stream:   https://maisiepeters.lnk.to/florescenceDE 

北里彰久

日本のソウルミュージシャン/シンガーソングライター、北里彰久はR&BやファンクをJ-POPの形に見事に落とし込む。ニューシングル「April Child」を、Le Makeupがリミックスを手がけた。ストリーミングURLより楽曲をご視聴下さい。


"巡る季節=Life"を歌い、アコースティックギターのポリリズムやカリンバのサウンドがアフリカを想起させながらも、都会的なグルーヴも感じさる北里彰久による宅録R&Bの大名曲「April Child」。


ビート・プログラミング/ミックスは、北里がメロディや作詞で参加した「99 Steps (feat. Kohjiya, Hana Hope)」がヒットした盟友のSTUTSが手掛けており、北里自身のライブに加え、STUTSのステージでも度々披露されている。


じわじわと話題を集めている「April Child」を新作「The Crying Xpress」をリリースしたばかりのLe Makeupがミニマルで多幸感溢れるリミックスを作成。名曲に新たな息吹を吹き込んでいる。マスタリングは、木村健太郎(Kimken Studio)。アートワークは、Kazuhiko Fujita (Marfa by Kazuhiko Fujita)が担当している。


北里彰久「April Child (Le Makeup Remix)」



Digital | 2026.05.27 Release | ISRC : JPJ902600510 | UPC : 4580789767104

Released by ABS BROADCASTING / AWDR/LR2

[ https://ssm.lnk.to/AprilChild_LeMakeup ]


Lyrics, Music, Arrangement : 北里彰久

Remix, Arrangement : Le Makeup

Vo, Agt, EGt, Ba, Key, Synth, Kalimba : 北里彰久

Drum Programming : STUTS

Additional Vocal & Programming : Le Makeup

Recording : 北里彰久

Vocal Recording : STUTS

Mixing : STUTS, Le Makeup

Mastering : Kentaro Kimura (Kimken Studio)

Artwork : Kazuhiko Fujita (Marfa by Kazuhiko Fujita)


・Le Makeupさんいつか何かでご一緒できたらと思っていました。自分の曲にまた違った角度から光を当ててもらえて嬉しいです ーー北里彰久


・April Child、リミックスしながら何回も聴いて毎回、あぁ本当に良い曲だなと思うばかりでデータを触れただけで嬉しいです。その喜びを、聴いてください! ーーLe Makeup



北里彰久「April Child」Original Version


キタザトアキヒサ「エイプリル チャイルド」Akihisa Kitazato「April Child」

Digital | 2026.03.11 Release

Released by ABS BROADCASTING / AWDR/LR2

[ https://ssm.lnk.to/AprilChild ]

[ https://youtu.be/AjGLlNL5f0g?si=4aieUEzYnaB7mSe_ ]




Lyrics, Music, Arrangement : 北里彰久

Vo, Agt, EGt, Ba, Key, Synth, Kalimba : 北里彰久

Drum Programming : STUTS

Recording : 北里彰久

Vocal Recording : STUTS

Mixing : STUTS

Mastering : David Kutch (The Mastering Palace)

Music Video Director : 井手健介



北里彰久 / Akihisa Kitazato:



2009年よりフリーフォームなソロユニットAlfred Beach Sandalとして活動開始。2019年のアルバム「Tones」より現在の名義。最新作は2023年の「砂の時間 水の街」。ブラジル音楽やブルース、ソウルなどから影響を受けた独自の日本語ポップスを演奏する。幻想と素面の間。



Le Makeup:



シンガー/プロデューサー。関西学院大学在学中に作曲へと本格的に取り組みはじめ、以降国内外の様々なレーベルから作品を発表する。2020年にアルバム「微熱」をリリース。

中国・韓国・オランダ・デンマーク・ドイツでもパフォーマンスを行う。

2023年2月にDove、gummyboy、JUMADIBA、Tohji、環Royが参加したアルバム「Odorata」をリリース。Pitchforkで取り上げられるなど話題となった。

2024年5月にオノ セイゲンがマスタリング・エンジニアとして参加したアルバム「予感」をリリース。東京・大阪で初のワンマン公演「予感」を行った。2026年にニューアルバム「The Crying Xpress」を4月29日にリリース。

世界のソウルシーンで活躍する表現者たちが集結


フィラデルフィアのネオソウル・レジェンドBilal、グラミー受賞プロデューサーPeter CottonTale、世界的トランペッターKeyon Harrold、シカゴが誇るポエット/シンガーJamila Woods、エミー受賞・グラミーノミネートKhari Mateen、インディーR&Bシーンの最前線を走るDevin Morrison、豪州の鬼才MXXWLL、UKの美声ヴォーカリストSam Wils、ガーナにルーツを持つオランダのBnnyhunna、ベトナムの新星Mỹ Anh、北欧R&Bシーンの新鋭Misha、ドイツのLoFiレジェンドShuko、台湾のヴィブラフォン奏者Chien Chien Lu。


アメリカ、ヨーロッパ、アジアの表現者たちが一つの作品に集結。これはSWEET SOULRECORDSが長年体現してきた「WORLD SOUL COLLECTIVE」の思想の結実でもある。ジャンルや国、人種の境界を越え、ソウルミュージックの現在地を世界規模で鳴らす。ネオソウル、インディーR&B、アフロビーツ、ハウス、スピリチュアルジャズまでを横断しながら、Nao Yoshiokaの声がその全てを一本の糸で繋ぐ。前作『Flow』で11カ国を巡ったツアーで築いた人脈と信頼が、このアルバムを可能にした。


新作『self』とは

『self』は、Nao Yoshiokaがこれまで見せてこなかった“内面”に深く踏み込んだ作品。前作『Flow』のワールドツアーで11カ国を巡ったNao Yoshiokaは、大きな達成の先で、ある感情に辿り着いた。それは、「まだ始まったばかりだ」という感覚だった。これまで前に進み続けることで乗り越えてきた孤独や葛藤。しかし今作では、それらを“克服するもの”ではなく、“自分の一部として受け入れるもの”として見つめ直している。タイトル『self』には、強さだけではなく、弱さや迷いも含めて「本当の自分」を抱きしめるという意味が込められている。Nao Yoshiokaはこの作品で、自らの“シャドウ”と向き合い、その先にある新しい自由を音楽としてアルバムに込めた。


[作品情報]



アーティスト:Nao Yoshioka

タイトル:self

ジャンル:R&B, Soul, Neo-Soul

発売元・レーベル:SWEET SOUL RECORDS

配信リンク:https://naoyoshioka.lnk.to/self



Nao Yoshioka “self” World Tour

最新アルバム『self』を携え、日本・海外を巡るワールドツアーの開催が決定。国内ツアーに加え、ヨーロッパ、アメリカ、アジア各地での公演を予定している。日本ツアーの詳細は以下の通り。

・福岡公演

日時:2026年10月18日(日)

場所:ROOMS

詳細:https://naoyoshioka.lnk.to/20261018-rooms

・東京公演

日時:2026年10月21日(水)

場所:LIQUIDROOM

詳細:https://naoyoshioka.lnk.to/20261021-liquid

・大阪公演

日時:2026年10月22日(木)

場所:Yogibo META VALLEY

詳細:https://naoyoshioka.lnk.to/20261022-meta-valey

・北海道公演

日時:2026年10月23日(金)

場所:札幌近松

詳細:https://naoyoshioka.lnk.to/20261023-sapporo-chikamatsu

[Releases]

2026.02.27: “In the Rain feat. MXXWLL” (Single)

2026.03.20: “You Got to Feel It feat. Bnnyhunna & Braxton Cook” (Single)

2026.04.17: “Shadow feat. Bilal” (Single)

2026.05.15: “Pieces of Me feat. My Anh” (Single)

2026.06.05: “Safe Place feat. Jamila Woods” (Single)

2026.07.17: “self” (Album)

[Events]

2026.05.28: US: Rams Head On Stage (US)

2026.05.29: US: Nublu (US)

2026.05.30: US: BlackRock Center for the Arts (US)

2026.09.18: UK: Ronnie Scott's (UK)

2026.10.18: Japan: ROOMS (Fukuoka)

2026.10.21: Japan: LIQUIDROOM (Tokyo)

2026.10.22: Japan: Yogibo META VALLEY (Osaka)

2026.10.23: Japan: Sapporo Chikamatsu (Hokkaido)


Nao Yoshioka


世界で活躍するソウルシンガーNao Yoshioka。魂を込めた歌声は、言葉も文化も越えて、聴く者の奥深くへ真っ直ぐ届く。単身でニューヨークへ渡った彼女は、本場のソウルミュージックに触れ、サム・クックの名曲と自身の心が重なった瞬間、"人の奥深い部分に届く歌" を生涯の道として選んだ。深く響く歌声と揺るぎない表現力は、Aretha FranklinやWhitney Houstonを思わせる芯の強さを宿しながら、現代の感性に溶け込むモダンなソウルフィールを備えている。アジア人として世界のソウルシーンで活躍する姿とともに、稀有な存在として国際的な評価を集めている。


彼女の真価はライブで発揮される。YouTubeで520万回以上再生されたライブ映像は世界中で話題を呼び、Blue Note New YorkやLondon Jazz Cafeでの単独公演、Java Jazz FestivalやCapital Jazz Festなど各地の大型フェスティバルへの出演を重ねてきた。日本人アーティストとして初めてBillboard UACチャート32位に入ったことも、彼女の音楽が国境を越えて届いていることの証のひとつだ。


2024年には5thアルバム『Flow』をリリースし、アジア・ヨーロッパ・アメリカ11カ国を巡るワールドツアーを成功させた。さらに2026年には、グラミー賞受賞アーティストBilalをはじめ、世代・国境・ジャンルを越えた多彩なアーティストとのコラボレーションを重ね、世界のソウルシーンで独自の地位を築いている。


現在はニューアルバム『self』とともに、新たなワールドツアーへ向けて始動。深く、美しく、人の心を揺さぶる声。Nao Yoshiokaは、世界のソウルシーンに確かな存在感を刻み続けている。


UKブライトンのピアニスト/アーティストThe Vernon Springが、最新アルバムの収録曲「Requiem For Reem」の映像と音源を本日リリースしました。この楽曲はアイスランドの首都レイキャヴィックのÓlafur Arnalds(オーラヴル・アーノルズ)のスタジオでライヴ録音されました。


同時公開されたミュージックビデオでは、ヴァーノン・スプリングが哀感に満ちた演奏を披露しています。オーラヴル・アーノルズのスタジオでは、おなじみの蓋をオープンにしたアコースティックピアノが録音に使用されている。ジャジーなムードたっぷりの演奏をお楽しみください。





▪️The Vernon Spring (ザ・ヴァーノン・スプリング)「Requiem For Reem (Live from Reykjavík)(レクイエム・フォー・リーム(ライヴ・フロム・レイキャヴィック))」- NEW SINGLE




発売日:2026年5月26日(火)

フォーマット:デジタルダウンロード/ストリーミング

ジャンル: ポスト・クラシカル / ジャズ / アンビエント

レーベル:p*dis


UKブライトンのアーティストThe Vernon Springの2025年作『Under a Familiar Sun』の中でも随一の名曲「Requiem for Reem」。アイスランド・レイキャヴィックのÓlafur Arnaldsのスタジオでのライヴ・レコーディングの音源と映像がリリース。シンプルでありながら深みがあり、静かなカタルシスを感じさせてくれます。


・ストリーミングURL: https://opia.lnk.to/RequiemforReemLive


[Credit]

Filmed & Edited by Maximilian König

Recorded & Mixed by Hafsteinn Þráinsson

Mastered by Zino Mikorey (zinomikoreymastering)

Artwork: YANA

Photo by Maximilian König


The Vernon Spring:


ザ・ヴァーノン・スプリングは、ロンドン北部出身のミュージシャン、サム・ベステによるレコーディング・プロジェクトであり、その音楽的軌跡はジャズ、ソウル、アンビエント、そしてソングライティングといった多様なジャンルを横断している。


ベステが最初に音楽に触れたのは、セロニアス・モンクからボブ・ディラン、ディアンジェロからルイジ・ノーノに至るまで、幅広いジャンルを網羅した父親のレコードコレクションを通じてであった。11歳の時、偶然受けたピアノのレッスンがベステの人生を決定的な方向へと導き、即興演奏への情熱を掻き立て、それが彼の人生の軌跡を形作ることとなった。


ベステの献身と才能は、エイミー・ワインハウスの周囲へと彼を導き、彼女のキャリアが上昇気流に乗っていた期間の大部分において、ライブ・ピアニストとして彼女に同行した。彼女との共演は、ガブリエルズ、ケンドリック・ラマーのプロデューサーであるサウンウェーブ、ベス・オートン、カノ、ジョイ・クルックス、マシュー・ハーバート、MF DOOMなど、重要かつ多様なコラボレーションへの道を開いた。


20代半ばにオルタナティブ・ソウル・ユニット「ヘジラ」で楽曲制作とリリースを数年間続けた後、ベステは「リマ・リモ」というコレクティブ兼レーベルの設立に尽力し、そこには互いを支え合うコミュニティと、インスピレーションに満ちた創造的な基盤が築かれた。


2019年までに、彼はザ・ヴァーノン・スプリングとしてソロ活動を開始し、自身のジャズのバックグラウンドと現代的なエレクトロニック・プロダクションを融合させた独自のサウンドを確立した。デビューEPや、高く評価された『A Plane Over Woods』や『Earth, On A Good Day』を含むその後のリリースにより、ザ・ヴァーノン・スプリングの代名詞となるサウンド——情感豊かなボーカルと繊細なエレクトロニクスが重なり合う、幽玄なピアノ演奏——が確立された。


ザ・ヴァーノン・スプリングのニューアルバム『アンダー・ア・ファミリアー・サン』は、ベステの芸術的進化の幅広さを示している。長期間にわたる作曲と制作プロセスに基づく実験を経て生まれた本作は、彼の馴染み深く直感的なプロダクションから深く入り込んだ複雑なアプローチへの転換を表している。


プロデューサーのイコ・ニッシュとの制作を通じて、ベステはサウンドの幅を広げ、ヒップホップの影響やサンプリングを駆使した手法を取り入れつつ、作品全体を通して彼特有のピアノ作曲スタイルを維持している。 


バージニア州南西部の中心地から登場したMatt Jones & The Bobs(マット・ジョーンズ&ザ・ボブス)は、アメリカーナやルーツ・ミュージックをロック的な文脈から探求するバンドである。バンドは、2011年のラドフォード大学在学中に結成。それ以来、生々しい感情と時代を超えた物語を織り交ぜた音楽を紡いできた。

 

マット・ジョーンズ(ボーカル、ギター)と、親しみを込めて「ザ・ボブス」と呼ばれるバンドメンバーたちは、アメリカーナ、ルーツ・ミュージック、そしてクラシック・ロックへの共通の情熱を、リスナーの心の奥底に響くサウンドへと昇華させた。

 

彼らがまだ大学生だった2014年にリリースされたデビュー作『Brother's Hymn』は、音楽の世界への旅の始まりを告げた。小さな町の生活、愛、喪失、そして成長に伴う日々の葛藤の本質を捉えた楽曲群により、このアルバムは、その誠実な作詞作曲と力強いパフォーマンスで、瞬く間に熱心なファン層を獲得した。

 

しかし、若き日に活動を始めた多くのバンドと同様、彼らの前途も決して平坦なものではなかった。長年にわたり音楽に没頭してきた後、2015年、マット・ジョーンズ・アンド・ザ・ボブスのメンバーは一歩引いて、各々が個人のキャリアやビジネス、起業活動に専念することになる。

 

The Bobsは活動休止期間に入ったものの、長年共に音楽を作り上げてきた中で築かれた絆は、断ち切られなかった。10年間、メンバーはそれぞれの世界で活躍したが、音楽への想いやルーツとのつながり、物語を紡ぐこと、共有した経験への想いは、心の奥底でくすぶり続けていた。

  

2024年、マット・ジョーンズ&ザ・ボブスは再結成し、新たなエネルギーと目的意識を持ち、代名詞とも言えるサウンドを蘇らせた。10年ぶりに音楽の世界に戻ってきたとはいえ、アメリカーナ、フォーク、サザン・ロックに根ざした彼らのルーツはかつてと変わらず強固であり続けた。しかし、この新たな章には新鮮な変化がもたらされている。90年代の影響がさりげなく取り入れられ、グランジの荒々しさが加わり、確立されたサウンドを補完する、さらに広がりのある楽器編成が加わった。編成が変わろうとも、彼らの音楽の核心は不変である。それは、人生、愛、失恋、そして私たちを人間たらしめる勝利や試練の感情的本質を捉えようとする姿勢なのだ。

  

バンドの楽曲制作は象徴的であり、物語性と深い脆弱性が合わさっている。どの曲も一つの物語であり、マット・ジョーンズの極めて個人的な歌詞というレンズを通して、人間の経験の一端を垣間見せてくれる。

 

愛、失恋の物語から、死、苦闘、そして前進するために必要な忍耐力への考察に至るまで、その音楽は聴く者の心に響き続ける。そのサウンドは、親しみやすくも新鮮な感覚を与え、人生の浮き沈みを巡るノスタルジックな旅路は、まるで古い友人が耳元で囁いているかのようである。

  

マット・ジョーンズ・アンド・ザ・ボブスの音楽は、単なる曲の集積とはいいがたい。それは存在の浮き沈みを再び体験するための招待状でもある。彼らのサウンドは、あなたを個人的な意味を持つ瞬間に連れ戻す。そこでは、人生の苦闘や喜びのような感情が単に共感できるのみならず、成長に不可欠であることを感じさせる。一音一音、彼らは、聴衆に自らの物語を受け入れるべく誘い、この旅路で、自分だけが孤独ではないという事実の底に安らぎを見出させる。

 


「The Weight of The World」

 

 

▪EN

Emerging from the heart of Southwest Virginia, Matt Jones and The Bobs have woven a tapestry of raw emotion and  timeless storytelling since their formation in 2011. The band first came together during their time at Radford University,  where Matt Jones (vocals, guitar) and his bandmates—affectionately known as “the Bobs” —took their shared passion  for Americana, roots, and classic rock, and transformed it into a sound that resonated with listeners on a deeply  personal level. 

 

Their debut album, “Brother's Hymn”, released in 2014 while they were still in college, marked the  beginning of their journey into the world of music. With tracks that captured the essence of small-town life, love, loss,  and the everyday struggles that come with growing up, the album quickly gained a loyal following for its honest  songwriting and gritty performances. 


But like many bands that start in their youth, the road ahead was not without its twists and turns. After years of intense  dedication to their music, the members of Matt Jones and The Bobs took a step back in 2015, each pursuing individual  careers, business ventures, and entrepreneurial pursuits. 

 

The band entered a hiatus, but the bonds forged through  years of creating music together remained unbreakable. For ten years, the members thrived in their own respective  worlds, but the pull of music—the connection to their roots, their storytelling, and their shared experiences—was  always there, simmering under the surface.

  

Fast forward to 2024, and Matt Jones and The Bobs have reunited, bringing their signature sound back to life with  renewed energy and purpose. Though they’ve stepped back into the world of music after a decade, their roots in  Americana, folk, and southern rock remain as strong as ever. 

 

However, this new chapter carries fresh twists—a subtle  infusion of 90s influences, a bit of grunge grit, and more expansive instrumentation that complements their established  sound. The heart of their music remains, however, unwavering: a commitment to capturing the emotional essence of  life, love, heartbreak, and the triumphs and trials that make us human.

  

The band’s songwriting is nothing short of iconic, blending storytelling with profound vulnerability. Each song is a  narrative—a glimpse into the human experience through the lens of Matt Jones' deeply personal lyrics. 

 

From tales of  love and heartbreak to reflections on death, struggle, and the perseverance needed to keep going, the music  continues to strike a chord with listeners. It’s a sound that feels both familiar and fresh, a nostalgic journey through the  ups and downs of life that feels like an old friend whispering in your ear.

  

The music of Matt Jones and The Bobs isn't just a collection of songs; it’s an invitation to relive the highs and lows of  existence. It’s a sound that will transport you back to moments of personal significance, where the struggles and joys  of life feel not only relatable, but necessary for growth. With each note, they invite their audience to embrace their own  stories, finding solace in the knowledge that they are not alone in the journey.

  

As they step into this exciting new phase of their career, Matt Jones and The Bobs continue to honor their roots while  exploring new sonic territory. They’ve grown, they’ve evolved, but the heart of the band—the soul of what made them  so beloved in the first place—is as powerful as ever. 

 

Matt Jones and The Bobs aren’t just back—they’re  stepping forward, louder, stronger, and more determined than ever to share their stories with the world. And with  music that is as timeless as it is fresh, they are ready to continue leaving an indelible mark on the hearts of their listeners beginning with their second full studio self titled album "Matt Jones and the Bobs".


Their latest single "The Weight Of The World" is, as Matt Jones confides, "a reflection on life’s burdens and the quiet strength it takes to face them, while honoring the friends who help shoulder what we can’t. The song looks at struggle not as defeat, but as a universal weight we all carry—and the beauty of having someone there to help lighten the load.

 


本日、2026年5月22日、英国/オックスフォードのギタリスト、Ed O'Brien(エド・オブライエン)が2枚目のソロアルバムで、自身の名前でリリースする初の作品『Blue Morpho』をTransgressiveよりリリースした。レビューに際して、Uncutから一方的な勝利宣言が出ているほど。

 

本作は、七曲というEPに近い構成で、かなり密度の濃いアルバムとなっている。彼自身の所属するRadioheadのサウンドに傾倒しており、トム・ヨーク風の音楽を堪能出来るに違いない。しかし、そのサウンドは、単なるレディオヘッドのフォロワーにとどまらない。Radioheadのサウンドを、UKのトラッドフォークから解釈した楽曲や、アンビエント風の楽曲など実験的な試みが取り入れられ、なおかつまたモダンなダンスミュージックとロックソングの融合も含まれている。

 

Uncut,Mojo、NMEを筆頭に高評価を受けた本作には、渦巻くような内省的なエネルギーの拡散や、独特な内面を優しく愛でるような癒しが感じられる。ハイライトとなるのが、本作の序盤に収録されている「Intications」、タイトル曲「Blue Morpho」ということになるだろうか。例えば、トム・ヨークがThe Smileでレディオヘッドの典型的な音楽性から距離を取ったのに対して、オブライエンのサウンドはむしろ、レディオヘッドの核心へと接近する内容である。


ケンタッキー州の詩人で農夫でもあるウェンデル・ベリーの「闇を知るには、闇に身を委ねよ」という言葉をオブライエンはよく引用する。その哲学は、『Blue Morpho』の制作における指針ともなった。ポール・エプワースとライリー・マッキンタイア(エズラ・コレクティブ)がプロデュースを手掛けたこの深く個人的な作品は、彼の人生で最も困難な時期の一つから生まれた。オブリエンはロックシーンで最も称賛されるギタリストであり続ける一方、『Blue Morpho』では新たな創造の領域へと踏み込み、催眠的なサイケデリック・フォーク、輝きに満ちたギター、魅惑的なトリップホップ、そして光り輝く静寂の瞬間を取り入れている。


長年にわたる内省と実験の過程で書かれた本作は、感情の激動と再生を処理する手段として音に没頭した、長い即興セッションから生まれた。結果生まれたのは、内省とコラボレーションの両方によって形作られ、変容、癒やし、そして、精神的なつながりを探求する一枚であった。


偶然の出会いが、『Blue Morpho』の誕生を後押しした。ポール・エプワースが中心的なクリエイティブ・パートナーとなり、サックス奏者兼作曲家のシャバカ・ハッチングスは、グラストンベリーでの共鳴と周波数に関する対話をきっかけに、フルート演奏で参加。デイヴ・オクムがアルバム全体に輝かしく精巧なギターワークを織り込み、ESKAがボーカルで参加。さらに、エストニアの著名な作曲家トヌ・コルヴィッツがアルバムの弦楽パートを編曲し、タリン室内管弦楽団が演奏を担当することで、この作品の豊かで広大な感情の風景をさらに深めている。


本作は、ウェールズにあるオブライエンのスタジオとロンドンのザ・チャーチ・スタジオで制作され、フロッドがシーケンス制作を、ベン・バプティがミキシングを担当。オープニングを飾る「Incantations」は、8分間にわたる催眠的なサイケデリックフォークとして君臨する。ギターと軽快なドラムテイクの上で、オブライエンの優しい歌声は、ウェールズの田園地帯の葉がさざめくように響く。シングルとしてリリースされた高揚感あふれるタイトル曲「Blue Morpho」では、エドが闇に足を踏み入れ、自然の癒しの力に触発され、新しく生まれ変わる。


先日紹介したように、映画情報もある。本作に併せて制作された短編映画『Blue Morpho: The Three Act Play』は、テキサス州オースティンのSXSWで初公開された後、ロンドン、オックスフォード、パリ、シドニー、メキシコシティ、東京、デンバーで上映され、『Blue Morpho』のリリースに先駆けて公開される。キット・モンテイスがウェールズで監督を務めた本作は、オブライエンの率直で親密な姿を描き出している。詳細は近日中に発表される予定だ。

 

 

ニューヨークを拠点とするシンガーソングライター兼ミュージシャンのROREYは、ありのままの告白を、癒やしをもたらすと同時に聴く者の心を揺さぶる芸術へと昇華させる。彼女は自信のバックグランドを糧に、感情の変遷や人間関係の機微についての楽曲制作を行う。ドリーム・ポップ、ベッドルームポップ、インディーロックの中間に位置するミクスチャーなサウンドである。


2025年8月15日にリリースされた2作目のEP『Dysphoria』は、精神疾患が抱える矛盾へと果敢に飛び込んだ作品であり、心に響くメロディーと幽玄なボーカルが、催眠的な渦巻くようなインストゥルメンタルと融合している。長年のコラボレーターであるスコット・エフマンと共に2021年に共同制作・プロデュースされた本作は、躁状態の最中に意味を見出そうともがく若きアーティストの混沌、美しさ、そして方向感覚の喪失を捉えている。


ROREYの2026年リリースシングル「Temporary Tragedy」は、力強く、生々しく、そして心に響く作品だ。ロレイはベッドルームポップとインディーロックのエッセンスを見事に融合させる。

 

「この曲は、親密さを求めすぎた結果、自分を犠牲にしてしまう代償と、自分自身を選ぶことの意味について歌っています」とROREYは打ち明ける。関係の終わりに伴う内省と精神の渦巻く様を描いた、映画のようなミュージックビデオがきわめて印象に残る。「このビデオは私の初めてのクィアな関係に基づいている。そのメッセージは普遍的なものです。相手がそこにいてくれない時、愛だけでは希望と現実の間の溝を埋めるには不十分なことがあるの」と彼女は語る。


彼女のシングル「Dying Fire」は、ほろ苦いメロディーと豊かなアレンジが特徴の、カタルシスをもたらすドリームポップソング。ROREYは次のように説明する。「『Dying Fire』は、愛と不可能性の狭間に位置しています。この曲は非難も弁解もせず、かつてあったものは二度と戻らないという事実を、徹底的な受容をもってただ述べているだけです。『Temporary Tragedy』と同様に、片方が一人でその重荷を背負わされる時、愛には限界があるのです」


さらに、最新作「Sudden Death」について、ロレイはこう打ち明ける。「『Sudden Death』は、ゲームが始まる前から敗北を認める曲です。なぜなら、私はすでにこの人への想いに負けていたと分かっていたから。また、この曲は、単なる憧れをはるかに超え、過去から現在へと投影され、私を人質にしていた、強迫観念に近いほどの記憶へと至る、激しい欲望へのほのめかしでもあります」


待望のニューアルバム『Temporary Tragedy』について、アーティストはこう語る。「このアルバムは、本質的に、互いにどれほど愛し合っていたとしても、望むものと必要とするものが相反していたために、関係を続けられなかった二人の物語です」

 

「結局、二人は、決して完全には実現しなかった愛を前にして、傷ついてしまいました。このアルバムは、まるで共有された痛みのように、二人の経験のすべてを受け止める空間となっています」

 

ROREYの音楽は単に心に響くだけでなく、口に出すのを恐れている真実を言葉にし、その感情を抱いているのは自分だけではないと気づかせてくれる。


「Sudden Death」

 

▪EN

New York–based singer-songwriter and musician ROREY transforms raw confession into art that unsettles as much as it heals.


Her sophomore EP, Dysphoria, released August 15th, 2025 is a fearless plunge into the contradictions of mental illness, where haunting melodies and ethereal vocals merge with hypnotic, swirling instrumentals. Co-written and produced in 2021 with longtime collaborator Scott Effman, the project captures the chaos, beauty, and disorientation of a young artist clawing her way toward meaning in the midst of a manic episode. 


ROREY's 2026 single release "Temporary Tragedy" is powerful, raw and poignant.  She confides, "The song is about the cost of self abandonment when you grip intimacy and what it means to choose yourself."  The track was accompanied by a cinematic music video chronicling the rumination and spiraling that can follow the end of a relationship. "The video is rooted in my first queer relationship, its message is universal: sometimes love isn’t enough to bridge the gap between hope and reality, when the other person can't meet you there," she shares. 


Her single "Dying Fire" is cathartic dream pop with bittersweet melodies and lush arrangements. ROREY explains, " 'Dying Fire' sits in this space between love and impossibility. The song doesn't blame or excuse it simply states with radical acceptance that what once was can never be again. Similar to 'Temporary Tragedy' love can only go so far when one person is left carrying it alone" 


Her latest release "Sudden Death" is an enveloping musical embrace complete with grit-laced guitars, emotive vocals and enthralling sonics. Rorey confides," 'Sudden Death' admits defeat before the game ever begins because I already knew I lost to my feelings for this person. It's also an innuendo for intense desire that goes far beyond yearning into borderline obsessive memories that held me hostage in the past I projected onto the present."


The three singles are off of her highly anticipated forthcoming album Temporary Tragedy.  The artist confides, "The album is essentially about two people who couldn't make it work no matter how much they loved each other because what they wanted and they needed were at odds. In the end they both got hurt in the face of love never fully realized. It holds space for both peoples' experience, almost as a shared ache."

ROREY’s music doesn’t just resonate, it names the truths you’re afraid to speak and reminds you that you’re not alone in feeling them.




大西洋をまたぐ活動で高い評価を得ているシンガーソングライター、イラナ・ジグモンドによるソロ・プロジェクト、St. Catherine’s Child(セイント・キャサリンズ・チャイルド)によるダブルシングル『Cosmic Dancer』と『Fly Me To The Moon』が今週末にリリースされた。

 

「Cosmic Dancer」は、グリッターロックの伝説的なバンド、マーク・ボラン擁するT-REXの楽曲である。中性的のイメージで華やかなロックシンガーとして活躍したバンドの音楽が女性シンガーによるピアノバラードの編曲でどのように変わるのかに注目したい。一方、「Fly Me To The Moon」は、アメリカの伝説的なジャズ・スタンダードで、バート・ハワードによる原曲。その後、フランク・シナトラなどにカバーされた。カバー曲としても定番のナンバーである。

 

TRO Essex Music(ウディ・ガスリー、デヴィッド・ボウイ、T・レックス、ピンク・フロイド、ブラック・サバス)および、そのレーベル部門であるShamus Records(クリス・マシューズ、フラミー・グラント)よりリリースされる本作で、St. Catherine’s Childはこれらの名曲に独自の魅力あふれるモダンなアレンジを加えている。

 

 

「Cosmic Dancer」- T-Rex Cover

 

 

「Fly Me To The Moon」 - Bart Howard Cover

 

 


・St. Catherine’s Child


St. Catherine’s Childは、インディー・フォーク/アメリカーナ・シーンで頭角を現している、大西洋をまたぐシンガーソングライター、イラナ・ジグモンドによるプロジェクトです。

 

イングランドで生まれ、コネチカット州ニューヘイブンで育ったイラナの音楽は、両大陸の影響を受けており、アメリカーナの詩的なストーリーテリングと、彼女の英国的な感性によるドライなウィットが見事に融合しています。


彼女は最近、TRO Essex Musicとそのレーベル部門であるShamus Recordsと契約を結び、ウディ・ガスリー、デヴィッド・ボウイ、T・レックス、ピンク・フロイド、ブラック・サバスといったアイコン的なアーティストに加え、ジェイデン・エヴァンスやフラミー・グラントといった新進気鋭のアーティストたちによるカタログをさらに充実させました。

 

雄弁な女性の守護聖人にちなんで名付けられたこのプロジェクトにおいて、彼女の力強い歌声と魅惑的なソングライティングこそが、St. Catherine’s Childの核心を成しています。2025年にリリース予定のアルバム『This Might Affect You』は、イラナの楽曲制作において、これまでで最も正直かつ生々しい姿を捉えた作品となっている。


最新リリースとなるダブル・シングル・カバー・プロジェクトでは、T.レックスの「Cosmic Dancer」とバート・ハワードの「Fly Me To The Moon」というクラシック・トラックを、彼女ならではの魅力的でモダンなアレンジでカバーしている。

 

 

▪EN

St. Catherine’s Child is the project of Ilana Zsigmond, a transatlantic singer-songwriter rising in the Indie Folk/Americana scene. Born in England and raised in New Haven, Connecticut, Ilana’s music is shaped by both continents, blending the poetic storytelling of Americana with the dry wit of her British Sensibilities. 


She recently signed to TRO Essex Music and its label arm Shamus Records, further enriching an iconic catalogue including Woody Guthrie, David Bowie, T. Rex, Pink Floyd, Black Sabbath, along with breakthrough artists such as Jaden Evans and Flamy Grant. Named after the patron saint of eloquent women, her vocal strength and enchanting songwriting lie at the heart of St. Catherine’s Child. Her 2025 album, This Might Affect You captures Ilana writing at its most honest and raw yet.


Her latest release, a double single covers project features her own irresistible and modern renditions of the classic tracks, "Cosmic Dancer" by T. Rex and "Fly Me To The Moon" by Bart Howard.



HYDは、実験的なサウンドと印象的なビジュアル世界を融合させた、ダイナミックで魅惑的なポップミュージックを生み出している。アーティストのヘイデン・ダナムが率いるこのグループは、アート、音楽、パフォーマンスを大胆に融合させたデビューアルバム『Clearing』で瞬く間に注目を集めました。


ダナムは当初、QTや、ネット上で話題となったエナジードリンク「Hey QT」とのコラボレーションといった、既成概念を打ち破るアートプロジェクトや、ニューヨーク市各地に設置された大規模なパブリックアート作品で知られていました。批評家からも称賛を浴びており、『W Magazine』はダナムを「アート界の新たなイノセント」と評し、『ニューヨーク・タイムズ』は彼らの作品を「吸い込み、飲み干せるアート」と表現した。


HYDとして、ダナムはサウンド、ビジュアル、パフォーマンスを一体となった没入型体験として扱い、その多分野にわたるビジョンをポップシーンにもたらしている。HYDのセカンドアルバム『Hold Onto Me Infinity』は、きらめくポップな楽曲と自己革新の感覚を融合させ、この世界をさらに広げている。HYDのパフォーマンスは、高層ビルの屋上や洞窟、美術館、フェスティバルといった世界中の型破りな空間から、伝統的な会場に至るまで、多岐にわたる場所で披露されてきた。


その活動の中で、彼らはチャーリーXCX、ソフィー、A.G.クック、キャロライン・ポラチェック、セガ・ボデガらとステージを共にしてきた。HYDのビジュアルアートはCompany Galleryが担当しており、クールージュ、バレンシアガ、ディオール、ドーバー・ストリート・マーケット、ロゼッタ・ゲッティ、エックハウス・ラッタ、パペットス・アンド・パペットスといったブランドとのコラボレーションも実現している。


親密さと無限の間を行き来するアルバム『Hold Onto Me Infinity』は、この物理的な世界と、その先にある世界の狭間で踊りながら、時空や物理的な境界、人生の枠を超えていく音楽の力を力強く証明する。アルバムの主要なコラボレーターであるハドソン・モホークがプロデュースを手がけたオープニングトラック「Angel」は、ダナムとベニー・ロングによって書かれた楽曲で、亡き愛する人を守護天使として位置づけ、アルバム全体に響き渡る問いを提示している。



それは、「死者はどこへ行くのか、私たちは彼らを新たな形でどのように体験するのか」という問いである。『Hold Onto Me Infinity』には、ドラムを前面に押し出したサウンド・パレットに反映された身体性があり、その振動は聴こえるだけでなく、リスナーの身体で感じられるように設計されている。マイケル・ベイリー・ゲイツが撮影したアルバム・カバーは、実存的なものと根源的なものとの境界にある曖昧さを映し出している。人工的なエフェクトを一切使わず、ダナムによる制作のガラス彫刻、花火、鏡の反射、そして穴の開いた窓から差し込む夕日を駆使して、この物理的な現実と別世界の両方を内包する「入り口」を画像の中に創り出している。



このアナログなアプローチは、過去7年間にわたるダンハムの断続的な視力喪失から必然的に生まれたものであり、その経験により彼らは人工光に対して極めて敏感になっていた。この状態は今もなお彼らの感覚に深い影響を与え続けている。視力が低下した時には他の(超)感覚的な能力が芽生え、視力が戻った時には、自身の身体や「存在すること」の豊かさを、これまで以上に身体的に実感するようになった。


『Hold Onto Me Infinity』は、ヘイデンによる絶賛されたデビュー作『CLEARING』に続くアルバムである。ハイドの音楽は、その幅広い芸術的実践に裏打ちされ、内面への探求、コミュニティとの対話、そして素材への探求が織りなす広大な生態系を生み出している。ダナムは美術家としての活動においてカンパニー・ギャラリーに所属しており、その作品はMoMA PS1やニュー・ミュージアムなどの美術館で展示されている。



HYD 『Hold Onto Me Infinity』- Cascine


 

ニューヨークのポップミュージシャン、HYDのニューアルバムはハイパーポップの次世代を駆け巡る作品である。ダンスポップ、ニューディスコ、そしてテクノやグリッチの手法を織り交ぜ、新鮮なサウンドを追求している。すでに2022年のアルバム『CLEANING』で頭角を現しつつあったHYDは、ナイトクラブのサウンドの影響を織り交ぜ、まったく新しいサウンドを確立しました。マドンナに始まったディスコポップの2026年のスタイルがここに誕生したと言える。

 

軽快なディスコポップ/シンセポップ「Angel」で始まる。ニューヨークということで、どうしても、LCD Sound Systemを思い浮かべてしまうが、HYDのサウンドは飽くまでダンスポップ寄りである。清涼感と程よい軽さを兼ね備えたダンサンブルなポップビート、そしてスポークワードやシュプレヒサングの影響を取り入れたモダンなボーカルが組み合わされる。ディープ・ハウスをもとにした4つ打ちの打ち込みのドラムがベースシンセと融合し、ドライブ感に満ちたサウンドを作り出す。全体的には、80年代のディスコポップが楽曲のベースに通底しているが、アトモスフェリックなテクノ風のシークエンスなどを設け、音楽性に幅を持たせている。これが最終的にデペッシュ・モードを彷彿とさせるエレクトロ・ポップを醸成する。それらをHYDらしいスタイリッシュなサウンドの風味を付け加えている。完璧なオープナーである。

 

「Freak」は、軽やかな一曲目とは対象的なサウンドとなっている。重厚感のあるベースシンセで始まり、ピッチシフター、ボコーダーを用いながら、HYDは前衛的なボーカルの表現を探求する。エクスペリメンタルポップの範疇にあるHYDの楽曲であるが、同時に普遍的なポップソングの構成を重視している。ヴァースとサビ/コーラス、ブリッジという洋楽の基本的な構成を踏襲している。曲はどこまでもキャッチーでポップであり、サビやコーラスの部分でアンセミックな箇所を用意している。ミックス/マスターの側面でも創意工夫が凝らされ、フィルターで全体的な音の印象を暈したりしながら、サビやコーラスの部分への繋ぎの部分を作っている。そしてサビやコーラスでは、清涼感に満ちたボーカルで、クリアな印象を押し出していく。また、ボーカルをどのように聴かせるかに重点が置かれ、ユニゾンするスポークンワードなど、ヒップホップ的な要素を織り交ぜている。まるでデザインのようなカラフルなサウンドだ。

 

「Grounded」を聴けば、ダンス・ポップがまだ進化の余地が残されていることが分かるはず。おそらくベースラインの系譜にあるフューチャーステップのようなダンス・ミュージックを下地に、ハイパーポップの要素を付け加え、特異なダンスポップソングを制作している。背景となるリズムトラックにせよ、また、シンセやサンプラーの個別トラックにせよ、ゲインやスレッショルドを活用した音圧の高いサウンドを積極的に駆使しているが、不思議なほど耳に負担がかからない。音の要素が極限まで絞られ、また、聴かせたい内容を制作者が熟知しているので、リズム、ベース、メインのメロディーという三要素が独立し、互いに補完しあっているのである。もちろん、メインとなるボーカルのメロディーもさりげなく素晴らしく、HYDらしいスタイリッシュな雰囲気、そして全体的な楽曲に共通するエモーションを兼ね備えている。スポークンワードとポップボーカルの対比という、現代的なポップソングのテーマも見受けられる。それは言い換えれば、テクノロジーと人間的な感情のせめぎあいとも捉えられる。現代的なテクノロジーと人間的な感性における絶妙な音の均衡こそ、このアルバムのテーマである。

 

脆さとまでは行かないかもしれないが、センチメンタルな感覚が、このアルバムには漂っている。心なしかエモーショナル....。それは例えば、Pink Pantharessのようなポップシンガーとも共通するポイントとなるかもしれない。HYDのポップソングは、どこまでも感覚的であり、まるで感情的なゆらめきを、その音楽を通じて体感するようなものである。「Physical Stuff」は、先に挙げた、テクノロジーと人間性というテーマを拡張する。シンセとボーカルがユニゾンを描き、フィルターをかけた打ち込みのドラムがフェードインしてきて、音楽性にリズム性を付与する。そしてベースラインやフューチャーステップを思わせるダンス・ミュージックにボーカルが入る。そしてやはりメロディアスなボーカルとスポークワードやシュプレヒサングのような語りの箇所を対比させ、ハイパーポップとも共鳴するようなサウンドを作り出すのである。この曲は聴いていると、なにかさすがと唸りたくなるような素晴らしい出来となっている。

 

アルバムの最初の四曲は、ソングライティング、ミックス/マスター、音質いずれもパーフェクトで非の打ち所がない。しかし、『Hold Onto Me Infinity』の本領は、アルバムの曲ごとに徐々に音楽性に凄さが増していき、まるでタイトルを象徴付けるように、ゼロから無限(インフィニティ)へ向かってくかのような点にある。「Watch You Cry」は、テクノ/グリッチを用いたポップソングで、凄すぎる曲である。テクノサウンドのミニマルな要素の中に潜むメロディアスな要素、そしてヒップホップのボーカル(ボーカルと言っておきたい)が絶妙な雰囲気を作り出す。ボーカルのサンプルを組み合わせたイントロから、Tycho,Caribouを彷彿とさせるテクノサウンド、そして、ヒップホップのライムから、メロディアスなボーカルへ移行していき、最終的にはオートチューンなどを用いたハイパーポップソングに移行していく。曲の中で、音楽ジャンルがクルクル移り変わり、まるで定点を持たないかのような無限性が含まれる。また、サビの部分では、あえてリズムを削ぎ落とし、ボーカルの旋律性を際立たせている。素晴らしい音楽はデザインと一緒で、いつもどこを削るか、削ぎ落とすかで決定するのである。しかも、従来テクノポップなどでは、オートチューンは意図的に機械的なボーカルの印象を強調するために使用されることが多かったが、この曲では人間的な感情を強調するために使用されている。従来のオートチューンの使用法を反転させていることがとても画期的なのである。

 

 「Makeover」はセイント・ヴィンセントの最初期の音楽性を彷彿とさせ、マドンナやビョークの次世代の音楽をロック的な解釈を付け加えた趣旨である。この曲の場合は、ディスコポップやニューディスコのサウンドを踏襲したうえで、聴きやすく乗りやすい素晴らしいダンス・ポップに仕上げている。反復するビート、そして同じ言葉やセンテンスを効果的に用いながら、リズミカルで歌いやすい、アンセミックなポップサウンドを確立している。そして、ここでも、80年代以降のポピュラーソングとしては、それほど珍しい内容ではないと思うが、スポークンワードのボーカルを交えて、クールな印象を持つダンスポップソングを作り出している。最近聴いた中ではポップソングとして最高峰に位置する。何よりかっこいいのが美点でしょう。

 

「Makeover」

 

 

 

「Looking Up I See a Cloud」は内省的な雰囲気を持つポップソングで、アトモスフェリックな印象からアンビエントポップとも称すべき一曲である。また、ソウルやジャズの音楽性を暈したようなサウンドが特徴である。一貫して中音域から高音域までのボーカルを披露してきたHYDであったが、この曲では、ネオソウル風の低音域から中音域の渋いボーカルを披露している。ボーカリストとしての音域の広さは、ソロシンガーとしての才質をはっきりと感じさせる。アルバムの中では、最終盤のベストトラックと並び、最もセンチメンタルな楽曲である。『Hold Onto Me Infinity』は、明確なコンセプト・アルバムではないものの、ある種の音楽的なストーリーが紡がれ、音のながれとともに、徐々に物語性のようななにかが作り上げられていく。

 

その後、音楽的な物語性が強まり、「Take Care of Me」では、アルバムの冒頭曲「Angel」のような清涼感のあるダンスポップに回帰する。これはまた、2022年のアルバムからHYDが一貫して追求してきた音楽性であると推測される。しかし、その実際の音楽の持つ洗練度や完成度は段違いに高くなっている。より音楽的なコンセプトが強調付けられ、どこのメロディーやボーカルを聴かせたいのか、あるいはどの器楽的なシークエンスを印象づけたいのかに細心の注意が向けられ、隙のないパーフェクトなサウンドが構築される。

 

 トランスやアシッド・ハウスを範疇にあるEDMのサウンドを彼女持ち前のディスコポップやシンセポップのセンスと結びつけ、それらをやはりキャッチーなサウンドに仕上げている。また、激しい箇所と静かな箇所を対比させるという、おなじみのポップやロックの基本的なスタイルを踏襲し、多くのリスナーの心に共鳴するようなサウンドを見事に作り上げている。

 

続いて、「Light Span」は、さらに実験的なハイパーポップに傾倒し、アートポップに接近する。この曲に見いだせるメタリックな重厚感とシンセのうねるようなドローンが組み合わされ、未曾有のアートポップが生み出された瞬間を捉えられる。また、ボーカルの側面でも、短いセンテンスを組み合わせ、テクノロジーやAIのような現代的な主題を巧みに織り交ぜている。

 

「Make Believe」は、このアルバムの副次的な主題である、ディスコポップの2020年代バージョンを象徴付ける。マイケル・ジャクソン? マドンナ? そんなことはどうでもよく、現代的なハイパーポップの要素を通過した、問答無用に素晴らしいダンス・ポップを聞くことが出来るはずです。この曲には、人種や国境を超える要素があり、すべてがどこかで一つに繋がっていることを思いこさせてくる。音楽の持つ楽しさ、そしてファンネスを凝縮した素晴らしい楽曲である。この曲にほとばしる弾けるような楽しい感覚は、アルバムのハイライトになるに違いない。対象的に、弦楽器のサンプリングで始まる「Never It Over」は、アルバムの感情的な起伏を象徴付ける。ネオクラシカルを通過した悲哀に満ちたピアノバラードで、最上のポップソング。『Hold Onto Me Infinity』の全体の中でも最も切ない繊細な歌声をHYDは披露している。

 

自らを、もしくは、世界を輝かせるかのような程よく明るい印象を持つクローズ「Shine It」。やはり重厚感のあるベースシンセを中心とするポップソングだ。 やはり、清涼感のあるボーカルとシンセポップの要素、ディープハウスのようなダンスミュージックの要素が組み合わされ、良質な楽曲に仕上がっている。アルバム全体に、完成度のむらがなく、どの楽曲もクオリティが極めて高い。これが、2020年代後半のポップスの新しい水準となるのでしょうか。それはおそらく、オーディオやストリーミングの音楽ファンにより決定されることになるでしょう。果たして、ダンスミュージックの時代は終わったのか? いや、まだ全然始まってもいないようです。

 

 

「Make Me Believe」

 

 

95/100

 

 

HYDによるニューアルバム『Hold Onto Me Infinity』は本日発売されました。 ストリーミングはこちらから。