Luby Sparksが2026年2月11日に世界発売されるゲーム「ROMEO IS A DEAD MAN」(対応ハード: PS5/Xbox Series X|S/Steam)のために書き下ろした新曲をリリース。4曲入りのEP「ROMEO IS A DEAD MAN」が本日リリース。先行公開されたライブ動画等と配信リンクからEPを視聴可能です。


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Luby Sparks has released a new song written specifically for the game ‘ROMEO IS A DEAD MAN’, which will be released worldwide on 11 February 2026. The four-track EP “ROMEO IS A DEAD MAN” is released today.


Luby Sparks「ROMEO IS A DEAD MAN」-EP




Digital | LSEP-13 | 2026.04.17 Release | Released by AWDR/LR2


配信URL:

[ https://lubysparks.lnk.to/RIDM ]


Luby Sparksが2026年2月11日に世界発売されるゲーム「ROMEO IS A DEAD MAN」(対応ハード: PS5/Xbox Series X|S/Steam)のために書き下ろした新曲をリリース。


「ROMEO IS A DEAD MAN」は、世界に熱心なファンを持つ、ゲームディレクターの須田 剛一が代表を務めるGRASSHOPPER MANUFACTURE INC.による新作でLuby Sparksは、オープニング、ゲーム内、エンディング用に4曲を提供した。


ゲームのオープニングに起用されている「Liar」は、ゾンビゲームにあわせたインダストリアル・オルタナティヴ・サウンド。2月13日にデジタルリリース。続いて、3月06日にリリースされる「nothing left, we don’t know why」は、ゲーム内の各章の最後で流れる。オープニング「Liar」とは対極にあるドリーミーなインディポップ。「Romeo」は、ゲームのエンディングに起用されている楽曲で、メロディ、ヴォーカルラインがしっかりありながらもヘビーなサウンドと融合したヘビーシューゲイズ、オルタナティヴ・サウンドとなっており、3月27日にリリースされる。


そして、3曲に加え、「nothing left, we don’t know why」のシューゲイザー・ヴァージョンと言えそうな「nothing left, we don’t know why (Distorted Version)」を加えた全4曲のEP「ROMEO IS A DEAD MAN」が4月17日にリリース。


▪︎EN

Luby Sparks has released a new song written specifically for the game ‘ROMEO IS A DEAD MAN’, which will be released worldwide on 11 February 2026.

‘ROMEO IS A DEAD MAN’ is a new title from GRASSHOPPER MANUFACTURE INC., led by game director Goichi Suda, who boasts a fervent global fanbase. Luby Sparks provided four tracks for the opening, in-game, and ending sequences.


The game's opening track ‘Liar’, features an industrial alternative sound tailored to the zombie game. It will be released digitally on 13th February. Subsequently, ‘nothing left, we don’t know why’, released on 6th March, is the track that plays at the end of each chapter within the game. It is a dreamy indie pop piece, seemingly the polar opposite of the opening track ‘Liar’. ‘Romeo’ is the track featured in the game's ending. It blends a distinct melody and vocal line with a heavy sound, creating a heavy shoegaze, alternative sound. It will be released on 27th March.

And on 17th April, the four-track EP ‘ROMEO IS A DEAD MAN’ will be released, comprising the three original songs plus ‘nothing left, we don’t know why (Distorted Version)’, which could be described as a shoegaze version of the track.




Credit:

1. Romeo

Music : Natsuki Kato

Lyrics : Natsuki Kato


Vocal : Erika Murphy

Backing Vocal, Bass, Synthesizers & Programming : Natsuki Kato

Electric Guitar : Tamio Sakuma

Electric Guitar & Shaker : Sunao Hiwatari

Drums : Shin Hasegawa


Luby Sparks - Romeo (ROMEO IS A DEAD MAN) Official Lyric Video [ https://youtu.be/T7BjetHU-ps ]

Luby Sparks - Romeo (ROMEO IS A DEAD MAN Opening Theme) Live at SUPER DOMMUNE [ https://youtu.be/XLOkJuOmF6w ]


2. Liar

Music : Tamio Sakuma, Erika Murphy, Natsuki Kato

Lyrics : Erika Murphy


Vocal : Erika Murphy

Backing Vocal, Bass, Synthesizers & Programming : Natsuki Kato

Electric Guitar & Programming : Tamio Sakuma

Electric Guitar : Sunao Hiwatari

Drums & Programming : Shin Hasegawa


Luby Sparks - Liar (ROMEO IS A DEAD MAN Opening Theme) [ https://youtu.be/X5fduxfnz9E ]

Luby Sparks - Liar (ROMEO IS A DEAD MAN Opening Theme) Official Lyric Video [ https://youtu.be/sroFQ5rcmgk ]

Luby Sparks - Liar (ROMEO IS A DEAD MAN Opening Theme) Live at SUPER DOMMUNE [ https://youtu.be/LLXuiqO5iT4 ]


3. nothing left, we don’t know why

Music : Natsuki Kato

Lyrics : Natsuki Kato


Vocal : Erika Murphy

Backing Vocal, Synthesizers & Programming : Natsuki Kato

Electric Guitar & Acoustic Guitar : Tamio Sakuma

Electric Guitar : Sunao Hiwatari

Programming : Shin Hasegawa


Luby Sparks - nothing left, we don’t know why (ROMEO IS A DEAD MAN) Official Lyric Video [ https://youtu.be/kK35WXdNlhQ ]

Luby Sparks - nothing left, we don’t know why (ROMEO IS A DEAD MAN) Live at SUPER DOMMUNE [ https://youtu.be/mRuInrA-2qI ]


4. nothing left, we don’t know why (Distorted Version)

Music : Natsuki Kato

Lyrics : Natsuki Kato


Vocal : Erika Murphy

Vocal, Bass & Organ : Natsuki Kato

Electric Guitar & Acoustic Guitar : Tamio Sakuma

Electric Guitar : Sunao Hiwatari

Drums : Shin Hasegawa


All songs arranged by Luby Sparks (Erika Murphy, Natsuki Kato, Tamio Sakuma, Sunao Hiwatari & Shin Hasegawa)


Recorded by Kentaro Kikuchi, Shun Otaki at TSUBASA Studio

Assistant Engineer : Misaki Masuda

Mixed by Zin Yoshida at Garden Wall

Mastered by Kentaro Kimura (Kimken Studio)


Produced by Luby Sparks & Zin Yoshida


Artwork by Max Bloom



▪︎Luby Sparks

Natsuki (ba/vo)  Erika (vo)  Sunao (gt)  Tamio (gt)  Shin (dr)。2016年3月結成。2018年1月、Max Bloom (Yuck) と全編ロンドンで制作したデビューアルバム「Luby Sparks」を発売。2019年9月に発表したシングル「Somewhere」では、Cocteau TwinsのRobin Guthrieによるリミックスもリリースされた。2022年5月11日にMy Bloody Valentine、Rina Sawayamaなどのプロデュース/エンジニアを手掛けるAndy Savoursを共同プロデューサーに迎え、セカンド・アルバム「Search + Destroy」をリリース。


同年6月には、初のワンマンライブ「Search + Destroy Live」(WWW X) も行い、ソールドアウトとなった。10月にはタイでの海外公演、2023年3月全米7都市にて「US Tour 2023」、9月「Strawberry Music Festival 2023」を含む中国全7都市「China Tour 2023」、10月韓国、11月インドネシア「Joyland Festival」へ出演を行うなど海外での展開も積極的に行なっている。2024年5月にリリースした「Songs for The Daydreamers」EPに続き、2025年1月24日にも「Songs of The Hazy Memories」EPをリリース。


▪︎EN

Luby Sparks is a Japanese alternative rock band formed in 2016. The band’s current lineup is Natsuki (bass, vocals), Erika (vocals), Tamio (guitar), Sunao (guitar), and Shin (drums). The band’s self-titled debut album, Luby Sparks (2018), was recorded in London with Max Bloom (Yuck/Cajun Dance Party) as a co-producer. In 2019, they released a single titled “Somewhere,” which was remixed by Robin Guthrie (Cocteau Twins). In May 2022, Luby Sparks released their second album, Search + Destroy, which is produced by Andy Savours, a Mercury Prize-shortlisted producer and engineer in London, who is known for working with My Bloody Valentine, Black Country, New Road, and Rina Sawayama. 


The album launch show at WWW X in Shibuya held in June was successfully sold out. In October, they performed in Bangkok, Thailand. In March 2023, Luby Sparks were actively expanding overseas with their first headline US tour around seven cities (New York, Boston, Philadelphia, San Francisco, Seattle, San Diego, and Los Angeles). In September of the same year, they were touring in seven cities in China, including a show at Strawberry Music Festival 2023, followed by a performance in Korea, and the worldwide festival Joyland Festival 2023 in Indonesia. Following the release of the last EP Song for The Daydreamers released in May 2024, new EP Song of The Hazy Memories will be released on January 24th, 2025.


[ https://lubysparks.lnk.to/bio_top ]



▪︎ROMEO IS A DEAD MAN(ロミオ・イズ・ア・デッドマン)


2026年2月11日(水)発売 画面を覆わんばかりの血飛沫が飛び交う「ブラッディアクション」のカタルシス!

宇宙を舞台にプレイヤーの混乱を誘なうストーリー!

GRASSHOPPER MANUFACTURE INC.(グラスホッパー・マニファクチュア)が突きつける完全新作アクション・アドベンチャー、名付けて“ウルトラ・バイオレント・サイエンス・フィクション”!


本作は、主人公ロミオ・スターゲイザーの後方から見た三人称視点のアクションバトルを軸に、章仕立てで進む1人プレイ専用のアクション・アドベンチャーゲーム。

予測のつかないストーリーと激しいアクションバトル、さまざまなサイドミッションがプレイヤーを待ち受ける。


・時空を超えた冒険活劇ストーリー


物語の舞台は、とある事件によって分断され、消失してしまった宇宙。巻き込まれ、半死半生となった主人公ロミオは、強烈なテクノロジーによって復活。FBIの通称「時空警察」捜査官となり、時空を跨いで跋扈する凶悪犯たちと対峙する。同時に前触れもなく姿を消した恋人ジュリエットの足跡を追ううちに、ふたつの事象は重なりはじめ……。「デッドギア」と呼ばれる多機能マスクを被り、時空を駆け巡るロミオがたどり着く先は?


【ゲーム作品詳細】https://romeo-is-a-dead-man.grasshopper.co.jp/



このアルバムを聴くたびに、私が作り上げた世界へと続く切符を手にすることになる。その感覚をあなたにも感じてほしい。あの雨の降る冬に私がそうだったように、あなたもそこに逃げ込めることを願っている。


私が10代の少女から大人へと変わった、その瞬間をはっきり覚えている。女性へと。あるいは、少なくとも、初めて「女性になりたい」と願った瞬間。あの秋の間ずっと、私はただ「スランプ」に陥り、「音楽が好きじゃなくなった」と感じていた。みんなが心配してくれた。あんなに落ち込んだことは今までなかった。それは化学的な理由からじゃなかったから――人生で初めて、本当に「すべてうまくいく」と信じられなくなった。自分の未来が全く見えなくなった。書く気になれなかった。書く時間が「足りない」ように、毎日を気晴らしで埋め尽くした。


夜遅くまで起きて、自分を受け入れてくれる地元の修道院をググっていた。聞かれる前に言っておきたいけど、そう、私は昔からこんなにドラマチックな人間だった。12月4日、エリザベス・フレイザーの曲を聴いた後、ようやくまた良い曲が書けた。その夜遅く、テレビを見ながら姉と母と話した直後に、きちんと書き上げたんだ。たぶん、私はこう言ったと思う。「でも、もう怒りの曲は書けない、ヒットソングも書けない。ただ、美しい曲にしたいだけなんだ」


私は全然怒ってなんかいなかった。狂おしいほど恋に落ちていて、「女の子」じゃなくて「女性」になった気がしていた。怒りや子供っぽさではなく、美しく、知的な音楽を作りたかった。ステージに上がっても、何をすべきか、どう振る舞えばいいのか分からなくてうんざりしていた。フィオナ・アップルやPJハーヴェイ、ケイト・ブッシュ、ジェーンズ・アディクション――そんな名手たちの音楽を聴いていた。それがずっと私の使命だったことを忘れていたんだ。私もそうなるということが。


すると彼らは言った。「でも、それでいい! そういう曲を書いてもいい! 何を書こうと自由なんだ!」それは本当に私が忘れていたことだった。何を書こうと自由だ、と。私は小屋へ駆け込み、『Ropeburn』のリフを書いた。そしてこの曲がすべてを変えた。何かが解き放たれ、私は再び正しい道に戻った。あの未完成の曲こそが、文字通り私のすべてだった。そして私はその曲に絶大な自信を持っていたため、すぐにレーベルのチームミーティングを招集した。


私たちはパブにいたが、私は水しか飲まなかった。自分がどれほど真剣かを示したかったのだ。私は言った。「次のEPをキャンセルして。(すべてをキャンセル。)」「今、私は世界を創りたいんだ」


彼らは驚いていた。あんなに真剣な自分の姿を見たことがないと言い、すごくすごく興奮していた。私には、何か良いことを成し遂げそうなオーラが漂っていたらしい。私は準備万端だった。小屋も整えていた。中のソファを捨て、友達とのセッションは禁止にした。そこは音楽のためだけの場所であり、私は音楽と再び恋に落ちなければならなかった。再び音楽を尊重し直さなければならなかった。自分へのルールを定めた。- これは良いか?- 気に入っているか?- 真実か?


あれから、二度と、ミドルエイトやリフのない曲は書かないと決めた。うねるベースラインやドローン、巨大なギター、ハーモニー、繰り返されるコーラス、そして容赦なく加速していくような展開を盛り込むことに決めた。同時に、陽光や霧、きらめき、陶酔感のような要素も取り入れることにした。


その後の3ヶ月は、英国史上最も雨の多い記録となった。私は引きこもり、引きこもり、実験に実験を重ね、お茶を何杯も飲み続け、ついにこのアルバムを完成させた。私がこれまで見てきた、デビューアルバム制作を題材にしたロック・ドキュメンタリーはどれも、女の子たちやコカイン、それからバンド内の喧嘩ばかりだったが、このアルバムは違った。ホルモン全開の女の子一人、かなりの量のマリファナ、そして自分の意志通りに操ろうとするLogic Proのエレクトロニック・ドラマーとの戦い――カイルは、結構な小悪党になることもあるんだ。


このアルバム全体を通して、ある特定の世界が見えてきた。それは、『大草原の小さな家』を読みふけった私の子供時代、あの広大さによって強く形作られていた。私の名前の由来でもあるローラ・インガルス・ワイルダーが、広大な大草原を歩いた時、自分がその一部だと感じたと言っていた。その広大さが、彼女自身も大きく感じさせてくれた。私は彼女のように感じた。自分はちっぽけだと感じ、大きくありたかった。


海や山、平原や雲のようでありたかった。それらにはすべて明確な目的があったが、私にはもうなかった。私は神経衰弱に陥っていたわけではなく、旋風を巻き起こすハリケーンだったのだ。私は頑固なわけじゃない、山なのだ。泣くことが情けないことではない。雲がそうではないのだから。


だから、自分が誰なのかもわからずに小屋に入った私は、一年後、アルバムを手に持ち、自分が誰なのかをはっきりと知って出てきた。大人になる方法を、自分の中に世界を築き、それを外へと押し出す方法を学んだ。人からではなく、空や雨や山や音楽から、どうすれば大きくあり続けられるかを。もしあなたがホルモンバランスの乱れや神経の多様性を持っているなら、正直なところ、これらはあなたにとってはるかに優れ、より正確なロールモデルになるはずだ。--(Eaves Wilder)
 


Eaves Wilder 『Little Miss Sunshine』- Secretly Canadian

 

最初はチープなアルバムのような気がしていた。けれども、他方、このデビューアルバムには、イーヴズ・ワイルダーのただならぬ意気込みと熱量が感じられる。気負いもあるかもしれない。しかし、小賢しさはデビューアルバムには必須ではない。そんなものは、二作目か三作目、それ以降でも十分出来ることではないか。上手いか下手かは二の次だ。それをやりたいという心からの熱望がちょっとした状況を揺り動しもする。聞き手は、その衝動や熱量に釣り込まれるようにし、独特な雰囲気を持つインディーロック、あるいはインディーポップのワンダーランドにいざなわれる。何度か聴き続けると、印象がだいぶ変わって来る。意外にも聴き応え十分のアルバムだ。結局のところ、アルバムというのは、どれくらい熱量を詰め込めるのかに尽きる。そういった独特なエネルギーに欠けるものは、聞き手の心を揺り動かすことが難しい。結局、上手いか下手かは二の次。何らかの熱量がこもっているアルバムは聴き応えがある。

 

『Little Miss Sunshine』は、当初はEPになる予定だったというが、フルアルバムに変更された。レーベルのチームミーティングの際のスタッフの驚きの様子が浮かんでくる。ミニアルバムで、音楽市場の様子を伺ったほうが良いのではないでしょうか......。フルレングスはもう少し経験を積んでからでも良いのでは....。しかし、才能は出し惜しみしていると、何も出てこなくなる。ワイルダーは結局フルレングスを完成させた。誰しもそれが出来るという確信があったから出来るのではなく、一つずつ挑戦していっただけである。失敗したって大した問題にはならない。


たしかにこのアルバムはボリュームがある。スランプを経てから、それでも曲を書きたいという熱望は、明確にイギリスのシンガーのデビュー作に宿り、独特な輝きを放つ。今作の冒頭から、女性シンガーらしからぬ強度を持ったアルトロックソングが始まる。デビューアルバムとはミュージシャンやバンドにとって最初の物語である。しかし、すでにその序章は、ワイルダーにしてみれば、何年も前から始まっていた。その思いがドッと溢れ出た形だ。良い曲かどうかはわからない。しかし本当に気持ちのこもった音楽は、たしかに誰かの心を動かす力がある。

 

世間の評判を意識すれば、軽率なインディーポップアルバムになっていたかもしれない。怪しげなインタリュードを取り入れた、いかにもつまらない冗長なアルバムになっていただろう。しかしながら、何が好きかという自問自答は、多少ありきたりだが、アンセミックなロックアルバムを完成させる要因になった。ロックはすでにダサくなったのか、自分の好きという感情を無視してまでトレンドを取り入れるべきなのか。しかし、このアルバムを聴くかぎり、答えは否であろう。戦略などははっきり言えば、ほとんどなんの役にも立たない。音楽は資格試験ではないのだから。結局のところ、他者からどう見られるかという意識をかなぐり捨て、奏でられたり、歌われるロックソングの威力は偉大である。一般的な常識人が持つ固定観念を乗り越えることに成功したのだから。固定観念を打ち破る、これこそが、ロックソングの命題でもある。ロックだけにかぎらず、すべてのジャンルのミュージシャンはそうであったほしいものだ。

 

そういった意味では、ロンドンのシンガーソングライター、イーヴス・ワイルダーは見事に固定観念をぶち破り、ハリケーンガールになった。ミュージシャンになるというのは、新しい自分を見つけたり、生まれ変わるということなのだ。「Hurricane Girl」はアコースティックギターで始まり、 その後、90年代のブリットポップの流れを汲みながら、どことなく夢想的な感じがするロックソングに移行していく。旧来は、男性ボーカルが主流だったスタイルだったが、今では女性シンガーにこの形が受け継がれた。ロックンロールのギターが静けさを打ち破る。典型的なロックソングのギターリフ。イーヴス・ワイルダーのボーカルは、アルトポップの雰囲気を残しつつ、エリザベス・フレイザーのような夢想的な感覚を呼び起こす。ロックとポップの中間にある巧みな歌唱法により、見事にこのオープニング曲を先導していく。早くもこの曲では、ミドルエイトの効果が発揮され、三分以降でアンセミックなサウンドを呼び覚ます。


「Just Say No!」では、ガレージロックにちなんだ荒削りなギターリフで始まり、 ダンスロックやダンスパンクを意識したサウンドが続いている。この曲は、Primal Scream、Gorillaz、KASABIAN、The Killersといったダンスロックを女性的な雰囲気を持つ音楽性に組み替えており、新鮮味が感じられる。スタジアムロック調のロックソングはドリームポップに近い夢想的なボーカルと合致し、ダンスミュージックの流れを踏まえながら、エネルギッシュでアンセミックなロックソングへと移ろい変わっていく。

 

こうした中で、早くもアルバムの象徴的な楽曲が出てくる。三曲目の「Everybody Talks」は、ダンスミュージック(ハウス)風のキックの4つ打ちから徐々に音楽が華やかになり、サビで最高潮に達する。いわば基本的なポップ/ロックソングである。

 

イントロでは、夢想的なボーカルが優しげな印象を放つが、効果的なセクションを交えつつ、ダイナミクスを増し、爽快感に満ちたサビに繋がっていく。特に、ボーカルの側面では、繰り返しのフレーズを効果的に使用して、掴みや取っ掛かりを作っている。歌詞は、結局、リズムと連動するので、語感の側面で何らかの取っ掛かりのような箇所を用意しておくに越したことはない。そして言葉の語感によって、一定のグルーヴを生み出すことが大切である。この曲の場合、「everybody talks」と対句をなす「I can never win」というフレーズが呼応するような形となっている。結局のところ、この対句のボーカルが出て来たときに、奇妙なカタルシスが得られる。

 

この曲が、魅力的に聞こえるのは、サビでタイトルを何度も繰り返しながら、ディストーションギターの迫力あるサウンドを背景に、文字通りアンセミックな嵐を呼び起こすからである。アンセミックとはシンプルに言えば、メロディーを口ずさめること、ついつい歌ってしまうことに尽き、その見本や模範例が示されている。この曲では、メタルやハードロックに近いエネルギッシュなサウンドがサビで形作られ、力強い音楽的な印象を生み出している。サビの後に訪れるギターソロも良いバイブレーションがあり、爽やかな印象を生み出す。旧来の日本のポップソングの構成に近く、二つ目の間奏では、転調するシークエンスがある。全体的には、構成的な力量と良質なメロディーが合致し、素晴らしいハイライトが生み出される要因となった。

 

 「Everybody Talks」

 

 

 

曲の収録曲の順序も練られていて、激しい曲の後には、比較的穏やかな印象を持つ曲が並置される。「Mountain Sized」は、ブリット・ポップをベースにした一曲で、UKロックの自家薬籠中とも呼ぶべき典型的なボーカルの節回しや旋律進行が登場する。オアシスはもとより、ザ・スミスの系譜にあるといえ、それらをアルトポップに置き換えている。この曲では、スポークンワードほどではないが、オアシスのようにボーカルの旋律を暈したりしながら、クールな雰囲気のサウンドを作り出す。轟音と静寂の対比を用いながら、流れに富んだ一曲を作り上げる。特に、ボーカルからシンセサイザーへと主旋律が受け渡される瞬間、カタルシスが得られる。ボーカリストとしても、制作者が語るように、少女から大人への転身を感じさせる瞬間もある。

 

異色の一曲「The Great Plains」のイントロは、ミステリードラマや映画を思わせる。映画的なポップソングで、エレクトリック・ピアノの演奏から始まり、スコットランドのアノラックやネオ・アコースティックを彷彿とさせる軽やかなインディーフォークサウンドへと移行していく。この曲でも、The Smithsのようなサウンドが登場し、それはギターとベースの兼ね合いが強い印象を放つからなのかもしれない。憂いと哀愁にみちあふれたサウンドから、最終的にはボーカルの性質も相まって、シンディ・ローパーのような軽やかでカラフルな風味を持つポップサウンドが出てくる。特に、イーヴス・ワイルダーは特異な声質を持つが、その辺りの個性的な性質がセクションごとに反映されている。また、歌詞の世界はシリアスになりすぎず、「I Wanna Be Cowboy Mama」のようなユニークな節回しを用いながら、特異なポップセンスを発揮する。音楽そのものは多彩であり、ポップに傾倒したかと思えば、ロックに傾倒することもある。こういった中間層にあるバランスの取れたサウンドと、ボーカリストとしての個性が絡み合う。

 

日常的な一コマを描写した「English Tea」は、ジャズやブルースに近いポップソングである。息の漏れるようなワイルダーのボーカルはゆったりしたリズムや、ジプシー風の音楽性の中で、夢想的な音の構成を作り出す。 この曲はThe Style Councileのようなジャズポップの流れを汲む。ポール・ウェラーのようなクールさは、アンニュイでファンシーな音楽性に変化している。最終的にはダブのベース、ドリーミーなボーカルが連動しながら、幻想的なアウトロへと向かっていく。 

 

アルバムの制作の最初の原動力となった「Ropeburn」は80年代のカルチャー・クラブのようなサウンドを彷彿とさせつつも、力強さを持つ楽曲に生まれ変わっている。憂いや物悲しさといった雰囲気を込めて、その中でロックソング的な力強さを発揮している。サイドストーリーとしてはシンガーがスランプの悲しみの底から立ち上がる瞬間を描き出した痛切な一曲でもある。この曲に漂う歌謡的な雰囲気は、アルバムの副次的な主題に位置づけられる。悲しみをモチベーションとし、そこからシンガーが生まれ変わるプロセスを描き出している。曲にほんのりと漂うゴシック的なボーカルのセンスにも注目したい。アルバム全般は、ブリットポップの次世代の音楽に位置づけられ、基本的にはUKミュージックの典型的なスタイルが示されている。

 

しかし、それだけではない。「LA」では、ラナ・デル・レイのようなサウンドが立ち上ってくることもある。これらはポップスターへの憧れともいうべきもの。しかし、中盤の収録曲におけるマイナー調の曲の中から、オーケストラ・ポップのようなサウンドが立ち上ってくるとき、心が洗われるような清冽なポップサウンドを捉えることが出来る。中盤以降の曲の中で、ワイルダーは効果的なコーラスの歌唱を披露しているが、それらがより神聖な雰囲気を持つ瞬間が出てくる。女性シンガーの魅力とは、世の中の環境に翻弄される中で、こういった清らかな雰囲気を持つ空気感が出てきて、その人が自らの神聖な一面に触れる瞬間である。結局、それらは生きていく中で、身にまとわりついた埃塵を払うような、言ってみれば、浄化のような瞬間でもある。この曲ではそういった女性シンガーならではの神聖な空気感を感じることが出来る。また、それはやはり少女ではなく、大人になった段階で生み出されるものなのかもしれない。しかし、反面、そういった大人の中から少女性のようなものが汲み取れる瞬間でもある。


ありふれた日常から特異な感覚を見つけ出そうとする。それが『Little Miss Sunshine』の本質でもあり、ミステリアスなベールを身に纏うイーヴス・ワイルダーの文学者的な実像でもある。それは言い換えれば、どこかにいそうでいない、ミステリアスなタイプのシンガーとも言える。アルバムの終盤の2曲は、80年代のダンスポップに傾倒しているが、それぞれに雰囲気が異なる。「Daisy Chain Reaction」ではシンガーが影響に挙げるJanes Addictionからのヘヴィネスや、グランジのようなサウンドのフィードバックを活かし、両極的なサウンドを生み出している。

 

最終曲では、女性的な激しさの感情性をインディーポップソングの中に上手く落とし込んでいる。あるいは、「Summer Rolls」では、何かしら名残り惜しいような空気感を残し、ララバイに属するインディーポップソングを発露させ、アルバムを締めくくっている。全般的に感じるのは、全10曲は、単なる音源ではなく、感情の発露をどのように音楽形態と結びつけるかという試作の経過だったのだろう。それらは、フィオナ・アップル、PJ Harvey、ベス・ギボンズのような象徴的な歌手が探ってきた。だから、部分的には不格好で、洗練されていない箇所もある。このデビューアルバムには、典型的なポップソング集とは対象的に、意図的に欠点のような箇所が残されている。しかし、もし、未だ洗練されていない荒削りな部分がその人の才能だとしたら.......。イーヴス・ワイルダーのソングライターとしての潜在能力はまだまだ底知れない。

 

 


84/100

 

 

「LA」

 

 

▪  Eaves Wilder 『Little Miss Sunshine』は本日、Secretly Canadianから発売。ストリーミングはこちら

▪Shane Sato × Coastal × Glen Turner IIが描く夕暮れの海岸線を駆け抜けるダンスチューン スムースジャズの質感とハウスのエネルギーが交差する新曲「Pulse」



「Pulse」は、Shane Satoが2026年5月にリリース予定のニューアルバム『Wavelength』へ向けた第5弾にして最終シングル。プロデューサー/DJ/アーティストのCoastal、そしてLAを拠点とするテナーサックス奏者Glen Turner IIとのコラボレーションによって生まれた本作は、スムースジャズの質感とハウスのエネルギーが溶け合う一曲となっている。


四つ打ちの安定したグルーヴを軸に、パンチの効いたエレクトロニックドラムと生のアコースティックドラムが重なり合い、Glen Turner IIの伸びやかなテナーサックスが楽曲の抑揚を導いていく。楽曲がクライマックスへと向かうにつれ、Turnerによる力強いサックスソロが感情の頂点を描き出す。ダンスフロアの高揚感と海辺の白昼夢が交差する「Pulse」は、夕暮れの波に乗るような開放感と躍動感をまといながら、『Wavelength』の核にあるジャンル横断のスピリットを象徴する作品となっている。また、この曲は、シティ・ポップや西海岸のチルウェイブの系譜にあるインストのジャズ曲。爽やかな印象に縁取られている。ドライブのBGMとしても最適かもしれない。

 


 

Shane Sato:



LAを拠点に活動する日系アメリカ人のマルチインストゥルメンタリスト、プロデューサー、ソングライター。南カリフォルニアで育ち、5歳でドラムを始めた後、ギターやピアノへと演奏の幅を広げ、ロックバンドやジャズグループなど多様な現場で音楽的基盤を築いてきた。2017年にLAへ移住後はセッションミュージシャンとしてキャリアを重ねながら、自身のオリジナル作品にも注力。

 

Coastal:



10年以上にわたりエレクトロニックビートとメロディックなグルーヴを磨き続けてきたアーティスト/プロデューサー。サンディエゴ出身で、カリフォルニアの海岸沿いの空気感を映し出すような、スムースでリズミックなサウンドを特徴とする。


Glen Turner II:



ロサンゼルス南部サウスベイを拠点に活動するサックス奏者、マルチインストゥルメンタリスト、コンポーザー。自身のプロジェクトやスタジオワークと並行して、Marcus Miller、Billy Idol、Poncho Sanchez、Kamasi Washington、Bill Cunliffe、Arthur Verocaiなど多彩なアーティストと共演し、現代ジャズシーンにおいて存在感を放っている。


三者の個性派のミュージシャンが織りなす海風のように軽やかで、ダンスフロアの鼓動のように力強い「Pulse」は、『Wavelength』へと続く物語を鮮やかに予感させる。

 


Shane Sato 「Pulse feat. Coastal, Glen Turner II」- NEW SINGLE


アーティスト:Shane Sato

タイトル:Pulse feat. Coastal, Glen Turner II

ジャンル:Jazz House, Nu Jazz, Acid Jazz

発売元・レーベル:SWEET SOUL RECORDS 

配信URL: https://lnk.to/shane-sato-pulse

Squarepusher 『Kammerkonzert』 


Label: Warp

Release: 2026年4月10日

 

Review

 

Squarepusherによる新作アルバム『Kommekonzert』 は、四の五の言わずに聴いておいたほうが良い作品。1990年代からイギリスのエレクトロニックシーンを牽引してきたスクエアプッシャーは今回、ソロ演奏を中心とするオーケストラアルバムに挑戦した。カマーコンツェルトは室内楽の意味で、エレクトロニック、ジャズ、モダンクラシカルをクロスオーバーする作品である。

 

中心的な役割を担うのが、ドラムやシンセサイザーのWurlizerのような鍵盤楽器である。 トム・ジェンキンソンは、2000年以降はジャズベーシストとしてのソロアルバムも残しているが、ご存知の通り、スクエアプッシャーを名乗る前、アートスクールの在籍時から手作りのドラムを制作し演奏していたことを考えると、ドラム奏者でもあるわけである。このアルバムは、オリヴィエ・メシアンやブーレーズのようなミュージック・セリエル(シェーンベルクほどには厳格でない十二音技法)、半音階法、モダンジャズをかけあわせた作品である。また、Wurlizerのような鍵盤楽器は電子音楽のチェンバロのような効果を生み出し、独創的な音楽世界が構築される。近年のWarpのカタログの中では随一の作品で、スクエアプッシャーの代表作がここに誕生した。これまでのスクエアプッシャーの作品中でも最高傑作の一つでははないかと思う。

 

このアルバムはシンプルに言えば、電子音楽とオーケストラの仮想的な共演がポイントとなる。また、メシアンやシュトックハウゼン以降の現代音楽の協奏曲、あるいは交響曲である。明確にコンセプト・アルバムの一貫としての狙いがあり、作品は簡潔なタイトルに数字が加えられたのみ。まるでこのアルバムは、スクエアプッシャーが作り上げた壮大な建築の中に入り込み、その中で、いくつかのエポックメイキングな出し物やアトラクションを楽しむような趣がある。しかし、それは単なる演出のようなものではない。一つ一つが緻密であり、精密機械のように精巧な音の作り。音の職人として90年代以降名を馳せてきたミュージシャンは、およそ30年間の音楽的な蓄積と経験を駆使して、一つの高みへと上り詰めた。 

 

アルバム全体の曲に共通しているのは、無調のスケールや旋法であり、それらの音形の連なりがまるで建築やプログラミングの設計図のように縦横無尽に駆け巡り、音の建造物を作り上げていく。


スクエアプッシャーは、調性音楽が出来ないというわけではないので、これらは明らかの緻密に計算されたミュージック・セリエルの手法である。シロフォン、マリンバなどの打楽器系統の音階がセリエル音楽を作り上げたかと思うと、やはりシンセサイザーのスケールや旋法が無調音階のスケールを作り上げる。その中で、ジャズドラムが一定/変則のリズムを刻むが、ティンパニーのようなオーケストラ楽器とは異なり、細かなダイナミクスの変化やレゾナンスの変化を用いながら、奇妙な音楽空間を構築していく。まるでそれらはバルセロナのサグラダ・ファミリアの建築を眺めるようなものである。中央に巨大な尖塔がそびえるかと思えば、微細な箇所には驚くべき精密な音のデザインや装飾が施されている。しかも、それらはフーガやカノンのような音階の追走形式を取ることもある。そして一見散らばっているように思える音階の連なりが、ユニゾンで結合する時、迫力に満ちた音の大スペクタクルが生み出される。このアルバムを聴いて思うのは、かつてこのような音楽がどこかに存在したかということである。スクエアプッシャーは間違いなく、ゼロから一を生み出す現代の正真正銘の天才音楽家である。

 

 

 「K1 Advance 」では、冒頭からシロフォンの演奏が導入され、シンセとドラムを中心にミュージックセリエルの形が示される。シンセサイザーの使用法が面白く、サックスや吹奏楽器のような使い方で無調音階のユニゾンが流れていく。何か奇妙な現代絵画に接するような形でシュールレアリスティックな音楽が示される。音楽だけではなく、絵画や芸術的な趣が感じられる。


一方、「K2 Central」は先行シングルとして公開された曲である。従来のスクエアプッシャーの音楽性の延長線上にあり、エレクトリックベース、生と打ち込みのドラム、シンセを用いたジャズ風のパッセージが主な特徴である。しかし、2000年代以降のスクエアプッシャーの主要な楽曲とは異なり、 激しさやノイズではなく、静けさに焦点が置かれている。特に、ピンと張り詰めたような緊張感を持つ静寂がシークエンスの中で、どのポイントに出現するのかに注目したい。


「K2 Central」

 



現代音楽とジャズの中間にある音楽がアルバムの序盤では続いていくが、その中には熟練のエレクトロニックプロデューサーらしい曲が出てくる。「K4 Fairyland」は、おそらくドラムンベースを基本とする曲で、ドラム、シンセサイザー、ストリングスを交えて展開される。エイフェックス・ツイン風のドラムンベースのドライブ感に満ちた曲であるが、唐突な休符を織り交ぜ、意外な音の印象を作り上げる。これもまた音の要素の飽和という局面をよく知る音楽家としての蓄積が、どこで音を消すのか、という新しい境地に向かわせたといえる。 この曲では、音形の調を移行させるカデンツァ進行によって、終止形の解決を後に引き伸ばし、それを延々と続けていくという特異な作曲技法が取り入れられている。クラシック音楽では、オスティナートと呼ばれる箇所で、それらの技法を用いながら、摩訶不思議な音の印象を作り上げていく。ゲーム音楽のサントラのような印象を持つ曲で、BGMの制作者の手腕が発揮された瞬間。

 

続く「K5 Fremanle」は、スクエアプッシャーとしては珍しく、アコースティックピアノをイントロに配置している。ダブのような奇妙な音響効果を施し、音がドローンのように変調していくミステリアスな印象を持つ導入部。それからこの曲は急激な展開を織り交ぜ、弦楽器のドローン奏法などを織り交ぜながら、メシアンやブーレーズのような現代音楽へと傾倒していく。ブーレーズと制作を行ったことがあるフランク・ザッパもおそらく驚愕するであろう一曲だ。メシアンや武満徹の作風を彷彿とさせるピアノと弦楽器による協奏曲として成立している。

 

特に、曲の後半での弦楽器の無調の音階を基にしたハーモニーには独特な美しさが宿っている。ピアノの演奏は短音階とアルペジオを中心に展開されるが、ドローン奏法の弦楽の重奏とどのような音響効果を及ぼすのかに着目したい。ここには間違いなく新しい音の響きが発見できる。アルバムの冒頭から張り詰めたような独特な緊張感が続くが、「K6 Headquarters」はどことなく平穏な境地を感じさせる。 フルートのような管楽器(もしかするとシンセかもしれない)とシンセをユニゾンさせ、その背後でジャズドラムの前衛的な演奏が繰り広げられる。時折、弦楽器の演奏を織り交ぜながら、全体的な音のダイナミクスが最高潮に達する。相変わらず、シュールな一曲で電子音楽とオーケストラ曲の中間にある個性的なサウンドが構築されている。

 

「K7 Museum」はモスキート音のイントロで始まり、Wurlizerのような音色の楽器が登場し、華麗なパッセージが繰り広げられる。スクエアプッシャーの代名詞とも言えるクールな主題が中心となり、ジャズとクラシックの中間点にある新鮮味のあるクロスオーバー音楽が展開される。背景となるエレクトリックベースの演奏はファンクを基礎にし、曲の主旋律となるWurlizerのような楽器のパッセージを背後で支えている。この曲に宿るフリージャズのような即興性や計算され尽くした音の配置や曲展開は、本作の聞き所やハイライトになるに違いない。間違いなくスリリングな音の楽しみがある。また、それらは計算されたものと即興性の間に作り出される。特に計算されたものの中では、バロック音楽や古典音楽からの影響であり、演奏の中にはカノンやフーガのような追走形式の箇所も登場する。これらは、結局、ジャズやエレクトリック、そしてプログレッシヴロックを通過し、最終的に現代の音楽という形でアウトプットされる。特に、複数の楽器がユニゾンで強調される瞬間、新しい音響性を発見することが出来る。

 

 

このアルバムはミュージシャンとしての総決算とも言える内容で、それはまたミュージシャンとしての半生を描いたようなものである。ドラマティックな表現をそれほど好まない印象もあるが、つまり、これらの楽曲はミュージシャンとしてのポートレイト代わりでもある。「K8 Park」ではベーシストとしての豊富な経験を活かし、清涼感のあるジャズソングを制作している。


「K9 Reliance」ではグラウンドベースの音楽的手法を駆使し、ミニマルミュージックをジャズと結びつける。シロフォンの演奏はやはり、ミュージックセリエルの一貫である無調音階を作り上げる。これらの広汎な作曲の知識は後発のミュージシャンにとって大いに学ぶべき点があるに違いない。また、無調音楽でもこれほどに自由闊達な音楽、あるいは精細感のある音楽が作れるというのは驚きである。これらはどちらかと言えば、おそらく楽譜のような下地を用意した上での即興的な録音がこういった精細感のあるレコーディングを質感をもたらしているのではないか。

 

かなりのボリュームで聴き通すのも一苦労だったが、それ相応の価値があるアルバムである。次々に移り変わるフレーズ、それらが強調されたり、縮小されたり、引き伸ばされたりする。これらの流れの中で、プログレッシヴロックをクラシックやエレクトロニック側から見た「K10 Terminius」、「K11 Tideaway」、「K13 Vigilant」は本作の最もエキサイティングな箇所でもある。

 

「K11 Tideaway」では、管楽器やシンセサイザーの音色を中心にスクエアプッシャーの音楽的な美学のようなものが反映されている。それは音楽が必ずしも和声法から作り出されるのではなく、もう一つの旋法やスケールの連続が重層的な音の空間を作り上げ、予め想定できなかったような偶発的なサウンドが生み出される瞬間である。その偶然性の中に、スリリングな音の響きが生まれ、これまでになかった新しい表現が出てくる。「K11 Tideway」「K13 Vigilant」は、やはりセリエリズムを中心に構成され、 お世辞にも聞きやすい曲とは言えないが、音楽そのものが持つスリリングな響きが宿っている。曲を平面的に捉えず、立体的に考えるという点において、スクエアプッシャーの音楽はどことなくストラヴィンスキーに近い印象がある。この曲では、音形が組み合わされ、全方向からそれらの旋律が別の楽器によって登場したりする。

 

しかし、先述したように、音楽的な激しさや刺激性も示されつつも、全体的にはそういった轟音性の中から汲み出される静寂が大きなポイントとなっている。アルバムの最後を飾る「K14 Welbeck」は、ミシェル・ウェルベックに因んでいるのだろうか。パイプ・オルガンによるバロック音楽で、このアルバムは締めくくられる。このアルバムの中で、唯一、調性音楽を用いて演奏されるが、部分的には、無調の音階が混在する。Kit Dowesの系譜にある一曲とも言えるだろう。この曲は、宗教音楽を意識していて、癒しや安らぎすら感じさせる。これはミュージシャンとしての新たな冒険が始まったことを示唆する。2000年代の最高傑作『Ultravisitor』から大きく音楽性は変化したが、やはり、スクエアプッシャーの天才性は今なお健在である。そう、ミュージシャンとして年を重ねるということは、幸福なひとときが増える場合もあるのだろう。 

 

 

96/100

 

 

 

「K7 Museum」


 

Oneohtrix Point Neverが、2026年初のダブルシングル「Dim Stars / For Residue (Extended)」をWarpからリリースした。これらの曲は、アシッド・ハウスのようなトリッピーな響きもあるが、やはりイギリスらしいダンス/エレクトロニックの工業的な音響性に満ちあふれている。

 

「Dim Stars / For Residue (Extended)」は、昨年リリースされたOneohtrix Point Neverの11枚目のアルバム『Tranquilizer』および映画『Marty Supreme』のサウンドトラックに続く作品となる。「Dim Stars / For Residue (Extended)」は、『Tranquilizer』が表現した「感情の漂流」を、より親密で瞑想的な形で引き継ぐ作品となっており、「For Residue (Extended)」は同アルバムの日本盤にボーナストラックとして初収録された。


『Tranquilizer』のサポートツアーとしてアジアでの全公演を完売させたばかりのOneohtrix Point Neverは、引き続きイギリスおよびヨーロッパでのツアーを予定しており、4月17日にはバービカンでの完売公演も予定されている。


 

 

 

スコットランド出身のシンガーソングライター、アレックス・アモール(Alex Amor)がVERO Musicとの契約を発表、新曲「Meet On The Moon」をリリースした。「Meet On The Moon」は、これまでのシングル「Seeing Angels」や「Desire」、アモールの2023年のデビューアルバム『Super Sonic』に続く作品となる。

 

このオルタナティブ・ポップ・トラックは、アモールとカーマ・キッド(ジェシー・ウェア、ジャレン・ンゴンダ)が共同プロデュースを手掛け、アモールが悲しみと女性的な神秘性を探求した作品となっている。本曲は、今年後半にVERO Musicよりリリース予定の、まだ発表されていないフルアルバム・プロジェクトの最初のプレビューとして公開された。


この曲について、アモールは次のように語っている。「『Meet On The Moon』は数年前に書いた曲です。当時、何か違うものを創り出し、全く新しい音の世界へと踏み込みたいと切望していました。私は1ヶ月間グラスゴーに戻り、運命を自分の手に委ね、自分でプロデュースを始めました。それは何かを取り戻すような感覚でした。『Meet On The Moon』は、そこで書いた2曲目の曲です。


「この曲は、歌詞の中で私が歌っている神秘的で魔法のような女性の原型を、まさに体現していた友人のことを歌ったものです。曲を書く数ヶ月前に、彼女は亡くなりました。私は彼女の持つ魅力――その魂の大きさ、本質的な力――について考えずにはいられませんでした。そして、奇妙なことに、地球は彼女を包み込むには小さすぎるように感じられたのです。


「様々な理由から、このアルバムの中でこの曲を最初に収録しなければなりませんでした。これは、輝く乳白色の満月が常に象徴してきた『神聖なる女性性』へのオマージュです。女性は月のリズムと周期的に結びついており、その美しくも捉えどころのない月の引力が、この曲の儚いサウンドの鼓動となったのです」


「Meet On The Moon」

ドナ・ルイス(Donna Lewis)が「I Love You Always Forever」の30周年を記念して新たなライブパフォーマンス映像を公開。さらにリメイク版アルバム『In a Minute Now』を発表。


2026年4月16日 — 時代を超えて愛され、世界中でプラチナディスクを獲得したヒット曲「I Love You Always Forever」の30周年を記念し、 ドナ・ルイスは、ニューヨーク州ウッドストックの歴史ある会場ベアーズヴィル・シアターで新たに撮影されたライブパフォーマンス映像を公開するとともに、近々リリース予定のライブアルバム『In a Minute Now』を発表した。

 

「I Love You Always Forever」は世界的な大ヒットとなり、時を経ても色褪せることなく、リリース以来、多世代にわたって大きな共感を呼び続けている。Japanese Breakfast、Betty Whoといったアーティストがこの曲をカバーし、Romy、Fred Againは同曲の新たな音楽的解釈を披露している。


デビューアルバム『Now in a Minute』からプラチナディスクを獲得したこのシングルを再解釈したドナ・ルイスは、甘美な重なり合うハーモニー、息遣いの感じられるボーカル、徐々に盛り上がるシンセのテクスチャーによって、この愛される楽曲を親密で映画的な体験へと昇華させている。紫、青、緑の光に包まれたパフォーマンスは、ノスタルジーを雰囲気へと昇華させ、この曲の不朽の情感を引き立てる、生き生きとした現代的な再解釈を提示している。


流れるようなカメラワーク、幽玄なオーバーレイ、没入感のあるクローズアップで捉えられた映像は、サウンドの進化を映し出し、90年代のラジオ定番曲を新たな高みへと引き上げている。


ドナ・ルイスには、オリジナル・コラボレーターであるジェリー・レナード(ギター)とハーヴェイ・ジョーンズ(キーボード)に加え、ゲイル・アン・ドーシー(ベース、バックボーカル)とダグ・ヨウェル(ドラムス)からなるバンドが参加している。彼らは一体となって、この楽曲の象徴的なサウンドに新たな深みをもたらし、脈打つようなエレクトロニクスと表現力豊かな楽器演奏を、雰囲気のある輝きと共に重ね合わせている。


今回のリリースは、ベアーズヴィル・シアターで撮影されたライブ録音シリーズの第一弾であり、『Now in a Minute』の全編パフォーマンスを収録している。これらのセッションは、ドナ・ルイスの近刊アルバム『In a Minute Now』へとつながるもので、彼女のブレイク期を現代的な視点で再訪した、再構築された作品集となっている。


1996年にリリースされた「I Love You Always Forever」は世界的な大ヒットとなり、その世代を象徴するラブソングの一つとして、30年近く経った今もなお、多くのリスナーの心に響き続けている。


「I Love You Always Forever」


オーストラリアのポップ界で注目を集める新星、ジョーダン・アンソニー(Jordan Anthony)の新曲「Wrong Impression」がリリース。

 

「Wrong Impression」では、ジョーダンは内省し、人生で初めての真剣な別れがもたらした感情の余波を赤裸々に綴っています。心の独白として書かれたこの曲は、誰かが自分の世界のすべてだと信じていた状態から、実はその人を全く理解していなかったかもしれないと気づくまでの、混乱を極める変化を描いています。 

 

「この曲は、初めての別れを経験した後に自分の中で繰り広げた内なる独白のようなものです」とジョーダンは語ります。「『どうしてこんなに間違えてしまったんだろう?』という気づきと、すべてがあっという間に変わってしまうという現実を描いた曲です」

 

 サウンド面では、「Wrong Impression」は胸が張り裂けるような脆さと爆発的なポップ・プロダクションを融合させ、ベンソン・ブーンやルイス・キャパルディといったアーティストの影響を感じさせる。その結果、静かな内省から始まり、やがて感情が爆発的に解き放たれるような楽曲が完成した。涙を誘う名曲であり、アンセムでもある。


このシングルは、2026年後半にリリース予定のデビューEPの展開に完全に移行する前の、最後の単独リリースの一つとなる。このシンガーは、『アメリカン・アイドル』のトップ14入りを果たして注目を集め、その後100万回以上の再生回数を記録し、Spotifyの「Peaceful Pop」「Fresh Finds Pop」「Next Gen Singer Songwriters」といったプレイリストにも選出されるなど、成功を収めている。


ジョーダン・アンソニーはオーストラリア生まれ、ロサンゼルスを拠点とするポップアーティストで、その音楽は成長、恋に落ちる、そして再出発といった感情の激動を捉えています。『アメリカン・アイドル』を通じて世界的な注目を集めたジョーダンは、テレビでのブレイクから急速に成長し、独自の声と深く個人的な視点を持つアーティストへと進化を遂げた。

 

「Hurt Me Sooner」「Reckless」「Lost in LA」といった楽曲を通じて、ジョーダンは感情をありのままに綴るストーリーテリング、高らかに響くボーカル、そして失恋をアンセムへと昇華させる才能によって、独自の道を切り拓いてきた。「Lost in LA」、「Existing」(Chloé Carolineとの共演)、そして今回の「Wrong Impression」を含む2026年のリリース作品は、新たな章の始まりを告げている。それは、さらなる脆弱性をさらけ出しつつ、サウンドをより壮大で映画的な、そして紛れもなく普遍的なものへと昇華させた章である。


ベンソン・ブーンやルイス・キャパルディといったアーティストからインスピレーションを得たジョーダンの音楽は、内面的な告白とアリーナ級の解放感の交差点に位置しており、ヘッドホンで聴くのも、大声で歌い上げるのも同じように心地よい楽曲となっている。


現在はロサンゼルスを拠点とするジョーダンは、過去1年半をかけて自身のサウンドとアイデンティティを磨き上げ、ブレット・クーリックやテイラー・スパークスといったコラボレーターと緊密に連携し、2026年後半にリリース予定のデビューEPに向けて準備を進めてきた。このプロジェクトは、彼にとってこれまでで最も完成度の高い作品であり、個人的な経験、クリエイティブな成長、そして人々とつながろうとするたゆまぬ情熱の集大成となっている。


深夜のドライブのBGMとして、あるいはロサンゼルス、シアトル、シカゴ(ヌール・コドルのサポートアクトとして)など各地でのライブパフォーマンスを通じて、ジョーダン・アンソニーは単なる楽曲のコレクション以上のものを築き上げている。それは、リスナーが自分を見てもらえていると感じ、理解され、孤独を少しでも和らげられるような世界を創り上げている。

 

 

 

 


2026年7月5日日曜日、PSP Socialが西調布Studio REIMEIにて自主企画『膨らみの中の分裂たち』を開催する。新メンバーに古山を加えた四人体制での初めてのライブで、現在制作中の新作アルバムの曲を全曲披露する予定。ゲストアクトはモールス水とnagako(pile of hex)の二組。予約定員は30人の予定。お早めに。



・PSP Social主催「膨らみの中の分裂たち」


出演

PSP Social

nagako(pile of hex)

モールス水


令和8年7月5日(日)

西調布 Studio REIMEI

入場料3000円(パンフレット+ドリンク込み)

開場17時30分

開演18時


フライヤーデザイン:アッティラ太郎



PSP Social:

東京の三人組のエクスペリメンタルロックバンド。エスパーキック主催。シンプルなスリーピースの編成ながら重厚なヘヴィーロックを提供する。主要な作品には「サラバ未来救世主」がある。また、近年は実験音楽のコンピレーションをキュレートしている。自主企画を定期的に開催し、野流が主催する即興イベント「IMPROVISATION SUMMIT TOKYO」にも出演経験がある。


モールス水:

2024年活動開始。当初は2人体制だったが、即脱退可能という文言を受けてベーシストが加入、以後3人体制で活動している。Sound Cloud上にて超低音質の作品を多数リリース。2025年春には1st single「瓦解」を発表。


nagako:

京都在住。2017年より、オルタナティブ・ロックバンドpile of hexのギター&ヴォーカルとして活動。2025年からセルフリミックス・プロジェクトとしてソロでの活動を始め、サンプラーやシンセサイザーを駆使したライブ演奏を展開。バンド活動と電子音楽制作を並行させながら、独自の音楽性を追求する。


予約・詳細:https://esperkick.com/20260705-2/

Photo: Pierre Anton

登録有形文化財・九段ハウスにて、アーティストとして活動するMartin Margiela(マルタン・マルジェラ)の日本初となる大規模個展「MARTIN MARGIELA AT KUDAN HOUSE」を開催いたします。

 

1927年竣工の歴史的な邸宅という空間に、現代美術作品を展示するというコントラストに、Margielaは強い関心を寄せています。本展では、九段ハウスの邸宅全体を舞台に、数多くの作品が儚くも一時的なインスタレーションとして展開されます。なお、本日会期の延長が発表されました。本展は4月11日より5月5日まで開催されます。アート好きの方は足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

ABOUT THE EXHIBITION

Kudan House Exterior


Martin Margielaは、再利用、分解、変容といったテーマへの探究を継続しており、その創作において人間の身体は今なお重要なインスピレーションの源であり続けています。

Margielaの作品は、日常の中にありながら見過ごされがちな物や状況への鋭い観察から生まれ、平凡なものが非凡なものへと転化していきます。

本展では、コラージュ、絵画、ドローイング、彫刻、アッサンブラージュ、映像作品など、多様な技法による作品を紹介します。

生活の痕跡が残る古い邸宅に作品を設えるという選択は、Margielaにとって大切な「私的な空気感」を反映するものです。

来場者は、邸宅全体に広がるさまざまな部屋を巡りながら、極めて親密な距離感の中で作品と向き合う体験へと招かれます。

なお、展示構成およびキュレーションは、すべてアーティスト自身によって手がけられています。

 

FROM THE ARTIST


「匿名性は、私の創造の自由にとって不可欠なプライバシーを守るために必要なものです。

ファッションの時代と同じ興味や強迫観念を、私は今も持ち続けていますが、人間の身体はもはや唯一の表現媒体ではありません。」

「私は常に観察者であり、日常的な物や状況から強いインスピレーションを受けています。今日ではさまざまな技術的サポートを用いることが当たり前になっていますが、私は可能な限り、手仕事のプロセスを見せることにこだわっています。それが、不完全さやパティナ、未完成の美に対する私の深い愛情につながっています。」「私は答えを示すよりも、問いを投げかけたいのです。」




ABOUT THE EXHIBITION VENUE



本展の会場となる九段ハウスは、1927年に竣工したスペイン様式の洋館を改修した、会員制ビジネス・イノベーション拠点です。旧山口萬吉邸として知られ、現在は登録有形文化財に指定されています。

本年4月、Martin Margielaはこの場所において、かつての家族邸宅が持つ私的で親密な空気感を蘇らせることを選びました。


九段ハウスを訪れたMargiela自身もその佇まいや空気感に強い共鳴を覚えています。


2000年、彼は東京・恵比寿の歴史ある邸宅に、世界初となる「Maison Martin Margiela(メゾン マルタン マルジェラ)」の店舗をオープンし、浴室やキッチンを含む邸宅全体にコレクションを展示しました。


そして四半世紀を経た2026年、再び東京へと戻り、同じく歴史的な邸宅である九段ハウスで作品を発表することを選びました。


「再び東京に戻り、1927年に建てられたこの家で作品を見せられることを嬉しく思います。2000年のときと同じように、来場者が各部屋の親密な空間の中で作品と出会い、驚きを感じてもらえることを願っています。」 -Martin Margiela 


EXHIBITION DETAILS

会期:2026年4月11日(土)- 2026年5月5日(火・祝)

開館時間:10:00〜19:00(最終入場18:00)

※2026年4月29日(水・祝)および5月5日(火・祝):最終入場16:00、閉館時間17:00

2026年4月30日(木):開館時間12:00〜19:00(最終入場18:00)

会場:九段ハウス

〒1020073 東京都千代田区九段北1-15-9

観覧料:一般 2,500円(税込)

チケット購入オンラインサイト:

https://artsticker.app/events/103820

 

*本展は日時指定制となっております。上記チケット購入オンラインサイトより4月15日(水)15:00よりお求めいただけます。


SELECTED WORKS





ABOUT THE ARTIST 

1957年 ベルギー・ルーヴェン生まれ

1980年 アントワープ王立芸術学院卒業

1984–1987年 Jean-Paul Gaultier(ジャン=ポール・ゴルチエ)(パリ)のアトリエでデザインアシスタントをスタート

1988年 Jenny Meiren(ジェニー・メレンズ)とともにパリで「Maison Martin Margiela(メゾン マルタン マルジェラ)」を設立、初のショーを発表

1997–2003年 「Hermès(エルメス)」(パリ)ウィメンズ クリエイティブ・ディレクター

2008年 20周年ショーを機にファッション界を離れ、ビジュアルアートに専念

2019年 Bielefeld Kunsthalle(ビーレフェルト美術館)にて初のグループ展

2021年 パリのLafayette Anticipations(ラファイエット・アンティシパシオン)にて初の個展

2022年 同展が北京・MWoods(エムウッズ)に巡回

2023年 同展がソウル・Lotte Museum of Art(ロッテ美術館)に巡回

2023年 アムステルダム・Eenwerk Galleryにて個展

2024年 ブリュッセルおよびアテネのBernier / Eliades Galleryにて個展



【クレジット】

主催:原田 崇人(rin art association)

共催:kudan house

協力:Bernier / Eliades Gallery

 Gallery NAO MASAKI

Taka Ishii Gallery

協賛:株式会社ジンズホールディングス

制作:黒瀧 紀代士

Kornieieva Varvara

黒瀧 保士

   

制作協力:

株式会社 エム・ジー・エス

株式会社 原人社

ハイロックデザインオフィス

粕谷 健三

Artifact株式会社

 

ウェブデザイン・制作:

Thought. / SA . NA


【WEBSITE】

http://martinmargielaatkudanhouse.jp/

【INSTAGRAM】

https://www.instagram.com/martin_margiela_at_kudan_house/


Le Makeup、2年ぶりのアルバム「The Crying Xpress」が4月29日にリリース。アルバムより、柴田聡子が参加した「傷 feat. 柴田聡子」が先行配信+MVが公開されました。


トラウマと現実。何を受け入れて、何を拒絶して自分になっていくかという過程をテーマにした「傷」には、柴田聡子が参加している。また、柴田聡子の楽曲のメロディを引用もしている。


本楽曲は、3月28日にLIQUIDROOMで行われた柴田聡子 presents「ありがとう」で初披露された。また、映像作家の斎藤玲児が監督を務めたMVも公開となっている。ぜひ下記よりご覧ください。


Le Makeup - 傷 feat. 柴田聡子 kizu featuring Satoko Shibata (Official Music Video)

https://youtu.be/ni929VWL7SA ]



Le Makeup「傷 feat. 柴田聡子」



Digital | PURE014 | 2026.04.15 Release

Released by AWDR/LR2

[ https://ssm.lnk.to/kizu_ft_shibata ]


作詞・作曲・編曲:Le Makeup, 柴田聡子

編曲:Le Makeup

ヴォーカル、ギター、シンセサイザー、プログラミング、ミックス:Le Makeup

ヴォーカル:柴田聡子

マスタリング:木村健太郎 (Kimken Studio)

アートワーク:Le Makeup

アーティスト写真:佐藤麻優子


Director : Reiji Saito

Cast : Le Makeup, Satoko Shibata

Hair & Makeup : Shikie Murakami

Assistant Hair & Makeup : Nanako Yamamoto

Special Thanks : Yohei Watanabe



「The Crying Xpress」感情の特急。弱さの表現。SNSで呟くみたいに、誰に話すまでもないけど聞いてほしい自分の話。ミニマルなシンセ、エモーショナルなヴォーカル、クリーントーンのギター、オルタナティヴ・アンビエント・ポップ、独自の世界を構築するシンガーソングライター 【Le Makeup】のニューアルバム。


Le Makeup「The Crying Xpress」


ルメイクアップ「ザ クライング エクスプレス」Le Makeup「The Crying Xpress」

Digital (UPC : 4580789762970) | PURE015 | 2026.04.29 Release | Released by AWDR/LR2

[ https://ssm.lnk.to/TheCryingXpress ]


Single Releases


Le Makeup「この夜が終わるまで」Digital | 2026.03.25  Release [ https://ssm.lnk.to/until_this_night_ends ] [ https://youtu.be/Xc5VqsASMFs ]

Le Makeup「block party」Digital | 2026.02.25 Release [ https://ssm.lnk.to/blockparty ] [ https://youtu.be/2SFrxmphbGQ ]

Le Makeup「はじまり」Digital | 2026.02.06 Release [ https://ssm.lnk.to/hajimari ]



Le Makeup


シンガー/プロデューサー。

関西学院大学在学中に作曲へと本格的に取り組みはじめ、以降国内外の様々なレーベルから作品を発表する。2020年にアルバム「微熱」をリリース。

中国・韓国・オランダ・デンマーク・ドイツでもパフォーマンスを行う。

2023年2月にDove、gummyboy、JUMADIBA、Tohji、環Royが参加したアルバム「Odorata」をリリース。Pitchforkで取り上げられるなど話題となった。

2024年5月にオノ セイゲンがマスタリング・エンジニアとして参加したアルバム「予感」をリリース。東京・大阪で初のワンマン公演「予感」を行った。

2026年にニューアルバム「The Crying Xpress」を4月29日にリリース。


Singer/Producer.

Began seriously pursuing composition while attending Kwansei Gakuin University, subsequently releasing works on various domestic and international labels. Released the album “Binetsu” in 2020.

Has performed in China, South Korea, the Netherlands, Denmark, and Germany.

In February 2023, released the album ‘Odorata’ featuring contributions from Dove, gummyboy, JUMADIBA, Tohji, and Tamaki Roy. It garnered attention, including coverage by Pitchfork.

In May 2024, released the album ‘Premonition’ with Seigen Ono participating as mastering engineer. Held his first solo concerts, titled ‘Premonition’, in Tokyo and Osaka.

New album “The Crying Xpress” will be released on April 29, 2026.



柴田聡子 SATOKO SHIBATA


シンガー・ソングライター/詩人。

北海道札幌市出身。武蔵野美術大学卒業、東京藝術大学大学院修了。2010年、大学時代の恩師の一言をきっかけに音楽活動を始める。


2012年、1stアルバム『しばたさとこ島』でデビュー。以来、演劇の祭典「フェスティバル/トーキョー13」では1時間に及ぶ独白のような作品『たのもしいむすめ』を発表するなど、歌うことを中心に活動の幅を広げ、現在までに7枚のオリジナル・アルバムを発表。2024年リリースのアルバム『Your Favorite Things』がCDショップ大賞2025<赤>大賞を受賞。


2016年、第一詩集『さばーく』を上梓。同年、第5回エルスール財団新人賞<現代詩部門>を受賞。2023年、エッセイ集『きれぎれのダイアリー』を上梓。2024年に上梓した第二詩集『ダイブ・イン・シアター』が第31回中原中也賞最終選考作品に選出。寄稿も多数で、「しずおか連詩の会」への参加など、詩人・文筆家としても注目を集めている。


2025年、シングル『Passing』、『ときめき探偵』をリリース。文を手がけた初の絵本『きょうはやまに』(絵・ハダタカヒト)の単行本を上梓。客演や曲提供なども多数で、その創作・表現はとどまるところを知らない。


弾き語りとバンド編成により縦横無尽のライブ活動を展開。RISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in EZO や ASAGIRI JAM’25、FUJI ROCK FESTIVAL’26 など、大型フェスへの出演も果たしている。

   My New Band Believe 『My New Band Believe』

Label: Rough Trade 

Release: 2026年4月10日

 

Review

 

My New Band Believeは、Black Midiの元ベーシスト、キャメロン・ピクトンにより結成されたバンド。ある時、中国のホテルで急に錯乱状態に陥り、突発的に様々なイメージが思い浮かんできた。その中から奇妙なフレーズ、My New Band Believeが浮かんだ。それをプロジェクト名にした。前身のバンドの後、曲を書いていたものの、じっくりとアイディアを温めてきた。ようやく昨年からシングルを発表し、ライブで実際に試していた曲がアルバムの形になった。

 

才能というのは、過剰さともいうべきもので、キャメロン・ピクトンに相応しい言葉である。それはむしろ、反動とも呼ぶべきもので、何かを抑えつけようとしたときに、才覚が奔出する。このデビューアルバムには、少なくとも、抑えがたい創造性のようなものが満載となっている。難しいアルバムと取るか、また、聞きやすいアルバムと取るかは、聞き手次第となりそうだ。

 

ラウドなサウンドは抑え気味で、ミュージックコンクレートを通過した後のアヴァンフォークやロックオペラを目指したような作品である。そして意外にもフォークポップサウンドを思わせることもある。「Target Practice」は、Queenのロックオペラの影響を色濃く感じさせる。それらがフォークミュージックを中心に繰り広げられる。既視感はあるが、強弱を強調するアクセント、そして、曲の表情付けにストリングスも用いられ、思いの外、ゴージャスなサウンドに移行していく。

 

このオープニング曲では、クイーンのようなポピュラーソングに軸足を置き、縦横無尽に駆け巡る音楽的なイメージをプロデュース的な楽曲としてまとめ上げる。「Bohemian Rapsody」時代のクイーンのサウンドが満載であり、それらが変拍子を交えたセクションを織り交ぜながら、音楽の印象そのものが次々に移り変わっていく。一見すると、まとまりがつかないような曲に思えるかもしれない。しかし後半では、ビートルズの中期以降のサウンドに依拠したチェンバロを用いたバロックポップの美しいメロディーがボーカルと登場し、曲がぱっと華やかになる。曲の後半では、UKロックの系譜を踏まえ、チェンバロを生かしたレトロなポップソングに変わる。コーラスも見事で、フレイディ・マーキュリー風の迫力のあるバックコーラスが聴ける。

 

特に、キャメロン・ピクトン率いるバンドは、 70年代のUKフォークサウンドを踏襲して、それらをミニマル・ミュージック、ミュージック・コンクレートを織り交ぜて、独創的なサウンドに仕上げる。

 

二曲目では、 Queenのサウンドをポストロック/マスロック風にアレンジしたり、ビートルズのチェンバーポップの楽曲で使用されるドローンのストリングスなどを用いて、エポックメイキングな箇所を作り上げる。しかし、その後、静かな印象を持つフォークサウンドに切り替わったり、ビートルズの「Yellow Submarine」を彷彿とさせるホーンのトレモロが入ったりと、カオスになっていく。また、その後にフィドルが出てきて、カントリーやウェスタンの古風なフォークミュージックに切り替わる。このバンドの中心人物の音楽的な知識量と再現力には圧倒されるばかりだ。そのほとんどがすでに前に出てきた内容だとしても、これらはヒップホップのサンプリングの次を行く前衛的なサウンドが登場したと言える。これは、画面の映像が一瞬で切り替わるような、トランジションの音楽バージョンともいうべきサウンドである。

 

今回のアルバムは、ロック的な要素を抑えて、イギリスの70年代のフォークサウンドを中心とするアヴァンギャルドなサウンドに仕上げている。三曲目「Heart of Darkness」では、やはりジェットコースターのように曲のフレーズが切り替わり、Led Zeppelinのフォーク的な要素を受け継ぎ、それらをミュージックコンクレートの手法で縁取っている。この曲が面白いのは、一方から音が出てきたかと思えば、全く別の方向から音が出てくる、それらが重層的な音の連なりを作り出し、曲の全般的なセクションを作り上げる。まるで音楽そのものがアトラクションのようだ。そして、ギターそのものもジプシー風のフォークサウンドが出てくる。これらは、例えば、Led Zeppelinのカシミール地方のエキゾチックなフォークサウンドを受け継いだ数少ない事例とも言える。かと思えば、キャメロン・ピクトンのボーカルは依然としてQueenのフレイディ・マーキュリーを彷彿とさせる。単なる寄せ集めなのか、それともそれ以上の何かがあるのか、そういったことはほとんどどうでも良くなるような楽しさに溢れている。

 

これらが単なる無謀な試みではないことは次の曲を聴くとわかる。「Love Story」では、古典的なバラードソングを選び、このバンドのメロディ的な才覚が明らかになる。この曲のイントロでは、ピアノとホーンを用いたロンドンジャズの影響を込め、しっとりとしたバラードが聴ける。その後、Jaga Jazzistの系譜にあるエレクトロジャズソングへと移行していく。 ノルウェージャズを筆頭に、北欧のジャズグループからの影響も含まれているかもしれない。しかし、依然として、ボーカルは、UKポップ/ロックの伝統的な歌い方に根ざしている。ちょっとした言葉の節回しや、メロディーの繋ぎ方など、焼き刃ではなしえない様式美のようなものが存在する。そして最後には、爽やかなフォークサウンドをもとに、舞い上がるような印象を持つ曲に変わる。音楽的にはブロックのように要素を重ねていき、最後にサビの箇所が来るという異例の手法である。これはまた、DTMのようなプログラミングによるサウンドの象徴的な制作法でもある。ここでは、このバンドの英国的な矜持のような心意気が宿っているような気がした。

 

 「Pearls」は、ロックオペラの次世代の音楽が出てきた瞬間である。この曲は、やはりミニマムのレベルでは、フォークミュージックが基礎になっているが、クラシック音楽からの影響が色濃く感じられる。アヴァンフォークに属する不協和音を用いたドローン音も登場したり、遊び心もあるが、全体的な曲の構成は崩れていない。曲そのものがラウドに傾いた時、その後、ストンとサイレンスに移行する。前身バンドの経験に根ざし、聴覚的な限界を踏まえ、絶妙な均衡を保っている。この曲では、アヴァンフォークの間に木管楽器の演奏が登場し、風景的な描写、つまり音によるイメージやサウンドスケープを作り上げている。不協和音も多いが、聴いていてそれほど嫌な感じはない。音の持つ可能性を音響的に拡張しているのがさすがである。さらに「Opossite Teacher」では、最も聞きやすいインディーフォーク・ソングで、驚くほど静かな印象、そして牧歌的な印象を持つ平らかな音楽を制作している。これは間違いなく、少しラウドなロックや前衛的なポストロックなどに飽きた音楽家が作る玄人好みの一曲である。

 

また、Queenだけではなく、Pink Floydのフォークミュージックの要素を受け継いだ曲もある。一番近いと思うのが、「Actess」である。 ここでは曲の後半でやはりサビとなる箇所が出てくる。ここではビールやパブ文化を象徴するようなにぎやかで陽気な印象を持つサウンドが楽しめる。曲の後半では、アイルランドのフォークミュージック、そしてエレクトロニックが結びつき、独創的な音楽へと切り替わる。曲のイントロではスタンダードなUKロックの内容に根ざしていながら、その後は現代的なサウンドへ移行するというユニークな発想がてんこ盛り。

 

一度だけ聴いて終わりというアルバムではなく、聴く度に新鮮な発見がありそうだ。個人的に推薦したいのは、最後に収録されている「One Night」である。コラージュ的なサウンドで、強烈なノイズというブラック・ミディにも通じるような内容となっているが、飽くまで全般的に、明るく陽気な音楽を提供しようという意図が通じている。キャメロン・ピクトンのささやくようなボーカルはユニークさがあり、救われるような瞬間もある。音楽全体をあまりシリアスにしすぎず、遊びの箇所を設けておくという制作者の狙いも感じられる。この曲では、エレクトロニックの文脈におけるドローンも登場することも。それはまた、彼らが2020年代に生きている証でもある。このアルバムが単なる懐古主義だけではなく、未来志向のサウンドに縁取られていることが有意義ではないか。次世代の新しい音楽への突破口となるかもしれない。

 

 

84/100

 

 

 

「One Night」- Best Track