2月6日にTransgressive Recordsからリリースされたニューアルバム『Laughter In Summer』が世界中で絶賛される中、ビバリー・グレン=コープランドは本日、6月18日(木)にロイヤル・フェスティバル・ホールで開催されるハリー・スタイルズ主催の「Meltdown」(オフィシャルサイト)の一環として、自身にとって過去最大規模となるロンドンでのヘッドライン公演を行うことを発表した。


私たちは生まれたその瞬間から、長い「家路」を歩み始めます。エリザベスとビバリー・グレン=コープランド夫妻は、半世紀近く前に二人でその道を歩み始め、それ以来、手を取り合い、一曲また一曲と歌いながら、その道を歩み続けてきました。二人は共に、この世の枠には収まりきらないほど大きな、利他的な心を芸術やコミュニティを通じて分かち合い、私たち一人ひとりが、根源的な愛と優しさを持って、それぞれの道を踊りながら進んでいくよう励ましてきました。


今、グレンがLATEと呼ばれる認知症の一種と向き合う中、二人の歩みは新たな重みを帯びてきました。そんな時期を経て生まれたのが、二人が共に制作したアルバム『Laughter In Summer』です。やがて二人は、このアルバムが互いへのラブレターであることに気づきました。それは、共有された献身、悲しみ、そして喜びを綴った、優しい記憶の記録なのです。


エリザベスは今や、グレンの作品のプロデューサーとして確固たる地位を築き、音楽監督のアレックス・サマラスと共に『Laughter In Summer』を形作っている。


アルバムのタイトルは、ほぼ偶然に生まれた一曲に由来する。認知機能の低下が進むにつれ、グレンは「Songs With No Words(言葉のない歌)」と名付けた一連のインストゥルメンタル曲の作曲を始めた。これは、聴く人が自分なりの歌詞を書き加えることを意図したものであった。


ある日、彼はその一曲をエリザベスに聴かせた。湖のほとりに座り、カイツブリの鳴き声を聞きながら空を眺めていると、彼女の心に言葉が湧き上がった。「夏の笑い、ああ、懐かしい」彼女はこう振り返る。「あの時は本当に辛い時期でした。愛する人の姿がどんどん失われていくのを、痛感していたからです」 私の人生、私の喜び、この地上、ここ、あなたと共に、と彼女は歌った。その言葉は、まるでカイツブリたちから贈られたかのような、天からの贈り物だった。


Photo: Wade Muir


2024年、モントリオールでの公演を控えた頃、彼らはプロデューサー兼エンジニアのハワード・ビラーマン(Godspeed You! Black Emperor、Vic Chesnutt、Wolf Paradeを手がける)と共に、伝説的なHotel2Tangoで数日間レコーディングを行うよう招待された。アルバムを作る計画はなかった。彼らは単に、ツアーで歌ってきた曲を、アレックスが集めたモントリオールの合唱団と共に収録したいと思っていただけだった。


しかも、歌手の誰もグレンやエリザベスとリハーサルをしたことはなかった。エンジニアたちがマイクのレベル調整をしている間、グレン、エリザベス、そして合唱団は最初の曲をざっくりとリハーサルした。このリハーサルこそが、『Let Us Dance, Movement 2』で聴ける音そのものだ。アルバムの他の曲はすべて、グレンが好むスタイル——ワンテイクのみ——で録音された。 


グレンの実行機能が低下するにつれ、彼の音楽的な存在——「そして私は、彼の心の在り方だと言うでしょう」とエリザベスは付け加える——はますます強くなるばかりだ。少なくとも週に一度、二人は並んで座り、失われつつあるものを言葉にする。


「感情を否定してしまうと」とエリザベスは言う。「それはあなたの内側で凍りついてしまうから」『Laughter In Summer』の制作は、互いに寄り添うための新たな手段となった——曲は単なる作曲作品ではなく、証言としての意味を持つものとなった。


「私たちは生まれた瞬間から、死に向かって歩んでいるの」とエリザベスは言う。「でも、それでいいの。誕生があるためには、死がなければならないから」 グレンは彼女に、自分が逝った後は、今よりもずっと彼女と一緒にいられるだろうと語る。エリザベスにとって、その考えは慰めであると同時に痛みでもある。しかしながら、二人を支えているのは、グレンが与えることをやめようとしない姿勢だった。「時々、彼は私の手を握ってこう言うの。『まだ与えきれていないことがたくさんある。この若者たちに、まだ与えたいことが山ほどあるんだ』と」


『Laughter In Summer』は、ビバリー・グレン=コープランドの2023年の高評価を受けたアルバム『The Ones Ahead』に続き、2024年にはサム・スミスとのコラボレーションとして、彼の名曲「Ever New」を『Red Hot Org Transa』コンピレーション・アルバムのために新たにレコーディングした作品でもある。



All upcoming UK & EU live dates:


April 11 - The Hague, NL - Rewire Festival

April 13 - Berlin, DE - Volksbühne Berlin

May 1 - Brighton, UK – Dome Concert Hall / Brighton Festival

June 6 - Barcelona, ES - Primavera Sound

June 9 - Lisbon, PT - Nova

June 12 - London, UK - LIDO Festival

June 18 - London, UK – Royal Festival Hall / Harry Styles' Meltdown Festival

July 1 - Sète, FR - Worldwide Festival

September 5 - Larmer Tree, UK - End of the Road Festival

September 7 - Copenhagen, DK - Bellevue Theatre

September 11 - Aarhus, DK - Alter Festival


Beverly Glenn- Copeland 『Laugher In Summer』


Label: Transgressive

Release: 2026年2月6日


Tracklist:

1. Let Us Dance (Movement One)

2. Ever New

3. Laughter In Summer feat. Elizabeth Glenn-Copeland

4. Children’s Anthem feat. Elizabeth Glenn-Copeland

5. Harbour feat. Elizabeth Glenn-Copeland

6. Middle Island Lament feat. Elizabeth Glenn-Copeland

7. Shenandoah

8. Prince Caspian’s Dream

9. Let Us Dance (Movement Two)


▪︎Stream/Buy  

https://beverlyglenncopeland.ffm.to/laughterinsummer


Beverly Glenn-Copeland:  


伝説的な歌手、作曲家、そしてトランスジェンダー活動家であるビバリー・グレン=コープランドの多彩な活動は、デビュー作であるセルフタイトルのアルバム(1970年)に収録された類まれなフォーク・ジャズの探求が再発されたことや、高く評価されている傑作『Keyboard Fantasies』(1986年)が広く知られるようになったことを受け、近年ますます注目を集めている。


この作品は、ニューエイジ・ミニマリズム、初期デトロイト・テクノ、そして伝統的なソングライティングの温かみを巧みに融合させた、時代を先取りしたシンセサイザーの探求であり、50年にわたるレコーディング・キャリアを通じて、ビバリー・グレン=コープランドの音楽は分類やジャンルに縛られることなく、ビジョン、テクノロジー、スピリチュアリティ、そして場所の非凡な融合こそが唯一の共通点となっている。


ビバリー・グレン=コープランド(友人や知人からはグレンと呼ばれる)は現在70代後半である。グレン=コープランドは音楽一家に生まれ、「幼少期」からクラシックピアノのレパートリーを学び、父が1日4~5時間ピアノを弾くのを聴いて育った。1961年、彼は故郷のフィラデルフィアを離れ、モントリオールのマギル大学でクラシック音楽(特にヨーロッパの歌曲レパートリー)を学ぶため渡ったが、やがて、自身が愛するようになった無数の音楽文化からの影響を織り交ぜた音楽を創作したいという強い衝動に駆られた。


長年にわたりコンサート舞台から遠ざかっていたグレン=コープランドは、現在カナダやヨーロッパで演奏活動を再開している。自身の音楽を今や熱狂的に受け入れてくれている若い世代との深い絆に対し、グレン=コープランドは大きな喜びと感謝の念を抱いている。



本日、代々木公園でフリーライブを行った【眞名子 新】。6月17日にセカンド・アルバム「良くなった動物」のリリースを発表。


この発表に合わせて、TOWER RECORDSにて予約特典施策決定。また、明日(4月08日)アルバムより「弾き語りの男」の先行配信も行われる。更に6月06日に初めてライブをした神戸VARIT.にて凱旋ワンマンショー「眞名子 新 フライングワンマンショー vol.3」の開催も発表された。


2025年5月にリリースしたファースト・アルバム「野原では海の話を」がロングセラー。リリース後には、全国12箇所のツアーを行い、9月もツアーファイナル(渋谷・CLUB QUATTRO)もソールド・アウトするなど快進撃を続ける【眞名子 新】のセカンド・アルバム「良くなった動物」6月17日にリリースが決定。 事前予約(PRE-ADD/PRE-SAVE)も開始している。詳細は下記より確認してみよう。


眞名子 新「良くなった動物」

アーティスト写真:川島小鳥


マナコ アラタ「ヨクナッタドウブツ」Arata Manako「Improved Animal」

CD (3,182 Yen + Tax) / Digital | PECF-3306 | 2026.06.17 Release

Released by SPACE SHOWER MUSIC

PRE-ADD/PRE-SAVE:

[https://manakoarata.lnk.to/ImprovedAnimal


*眞名子 新、セカンド・アルバム「良くなった動物 [CD]」TOWER RECORDSにて予約特典施策決定。


2026年6月17日(水)に発売が決定した眞名子 新 セカンドアルバム「良くなった動物」を2026年5月10日(日)23:59までにTOWER RECORDSでご予約のお客様にアルバム・リリースを記念したインタビューや手書きのタブ譜などが盛り込まれるたDIY感万歳のZINE「良くなった動物図鑑」を差し上げます。


早期予約購入者特典|  ZINE「良くなった動物図鑑」

対象期間|       2026年4月07日(火)~2026年5月10日(日)23:59各店舗閉店時まで

対象店舗|       TOWER RECORDS

注意事項|       ・2026年5月10日(日)の予約終了時間は各店の閉店時間となり、ECショップについては同日23:59までとなります。・特典物は商品お受け取り時にお渡しいたします。・早期予約特典の付いていない商品を購入された方は対象外となりますのでお気をつけください。・詳しくは各店・ECショップにお問い合わせください。


*アルバム「良くなった動物」より「弾き語りの男」が明日、4月08日に先行配信開始。


眞名子 新「弾き語りの男」

Digital | 2026.04.08 Release

Released by SPACE SHOWER MUSIC

[https://manakoarata.lnk.to/AManPlayingGuitar ]


作詞:motoki manako

作曲:arata manako


ボーカル、アコースティックギター:眞名子 新

エンジニア:池田 洋(hmc)

アートワーク:タケシタトモヒロ

アーティスト写真:川島小鳥


3月11日にリリースとなった「薔薇を飾るなら」。


眞名子 新「薔薇を飾るなら」

Digital | 2026.03.11 Release

Released by SPACE SHOWER MUSIC

[ https://ssm.lnk.to/DecoratewithRoses ]


作詞:motoki manako

作曲:arata manako


ボーカル、アコースティックギター、ピアノ:眞名子 新

ベース:稲葉 航大

ドラム、タンバリン:谷 朋彦

エンジニア:池田 洋(hmc)

アートワーク:Kaede Igarashi

アーティスト写真:川島小鳥



眞名子 新が初めてライブをした場所にて凱旋ワンマンショー「眞名子 新 フライングワンマンショー vol.3」が決定!


「眞名子 新 フライングワンマンショー vol.3」at 神戸VARIT.



2026.06.06 [Sat] Open 17:30 / Start 18:00 | Adv. 4400 Yen

先行チケット [https://eplus.jp/aratamanako2026 ] 2026.04.07 [Tue] 20:00〜2026.04.20 [Mon] 23:59



眞名子 新 マナコ アラタ Arata Manako:


1997年神戸生まれ、神戸育ち。

ルーツであるフォークやカントリーをベースに、ギターと声というシンプルなスタイルでのフォーキーな楽曲が魅力。

癒されるような清廉さのある一方で、感情に訴えかけるような情感溢れる歌声と心に寄り添った歌が特徴的である。

2022年に開催されたJ-WAVE TOKYO GUITER JAMBOREE 2022「SONAR MUSIC Road to RYOGOKU suported by REALLIVE360」にてグランプリを受賞。

2023年4月26日に初の全国流通盤となるEP「もしかして世間」をリリースし、収録楽曲はSpotify「Best of Japanese SSW 2023」「Best of Edge! 2023」にも選出された。

2024年5月にEP「カントリーサイドじゃ普通のこと」をリリース。7月には「FUJI ROCK FESTIVAL 2024」、8月に「SWEET LOVE SHOWER 2024」にも出演。

2025年に5月に1st Albumとなる「野原では海の話を」をリリース。同作品は「APPLE VINEAGR -Music Award- 2026」にノミネートされている。

1st Albumリリース後に全12箇所に及ぶ、全国ツアーを行いファイナルの渋谷・CLUB QUATTROをソールドアウトさせた。2026年6月17日に2nd Album「良くなった動物」をリリース予定。更なる飛躍が期待されている。


▪︎EN

Born in Kobe in 1997, raised in Kobe.

Rooted in folk and country, the appeal lies in the simple style of guitar and vocals delivering folksy songs.

While possessing a soothing purity, her singing is characterized by an emotionally resonant voice overflowing with feeling and songs that speak directly to the heart.

Won the Grand Prix at the J-WAVE TOKYO GUITER JAMBOREE 2022 “SONAR MUSIC Road to RYOGOKU supported by REALLIVE360” held in 2022.

On April 26, 2023, they released their first nationwide distribution EP, “Maybe the World,” with its tracks selected for Spotify's “Best of Japanese SSW 2023” and “Best of Edge! 2023.”

Released the EP “Countryside's Just Normal” in May 2024. Performed at FUJI ROCK FESTIVAL 2024 in July and SWEET LOVE SHOWER 2024 in August.

In May 2025, they released their first album, “Talking About the Sea in the Fields.” The album was nominated for the “APPLE VINEGAR -Music Award- 2026.”

Following the release of their 1st Album, they embarked on a nationwide tour spanning 12 locations, culminating in a sold-out final show at Shibuya CLUB QUATTRO.

His second album “Improved Animal” is scheduled for release on June 17, 2026. He is expected to make even greater strides.

(Artist photo: Kotori Kawashima)


これまでに世界各地の実験音楽家のライブやパフォーミングアーツを紹介してきたMODE。本日、2026年の開催の詳細が発表されました。


実験的な芸術を通じた「交換・交流」のためのアートプラットフォーム「MODE」は、2026年第一弾プログラムを6月6日(土)、東京・恵比寿に位置するライブハウスLIQUIDROOMにて開催します。一昨年に続いて、日本から実験音楽グループgoatが出演します。

 

本プログラムでは、Holy Tongue、Tomaga、Vanishing Twinなどの様々なプロジェクトで知られるロンドンを拠点に活動するドラマー/作曲家/マルチ奏者 Valentina Magaletti(ヴァレンティーナ・マガレッティ)と、エレクトロニック・デュオ Raime(ライム)で知られる Tom Halstead(トム・ハルステッド)、Joe Andrews(ジョー・アンドリュース)によるポストパンク/ポストハードコア・プロジェクト「Moin(モイン)」の日本初公演が実現します。


加えて、大阪拠点の音楽家・YPYこと日野浩志郎を中心に結成されたリズム・アンサンブル「goat」を迎え、ダブルビル公演として開催されます。

・Moin(モイン)

Photography by Amy Gwatkin


Moinは、Joe Andrews、Tom Halstead、Valentina Magalettiのロンドンを拠点とするトリオからなるプロジェクトです。グランジ、シューゲイズ、ポストロックといったギター音楽の系譜を再解釈しながら、これまでに3枚のアルバムを発表し、国際的な音楽フェスティバルやアートスペースなど、様々なベニューでライブ活動を展開しています。


AndrewsとHalsteadは、エレクトロニック・デュオRaimeとしても活動し、インダストリアル、ゴス、ダブの要素を取り込んだ重層的なエレクトロニクスによって、UKアンダーグラウンドの重要な位置を占めてきました。2016年以降はポストパンク、ミニマルな方向へと展開し、その延長としてMoinを始動。そこにMagalettiが加わることで、より身体性を伴ったバンド・フォーマットへと展開しています。


Magalettiは、MODE 2024での日本初ソロ公演も記憶に新しいアーティストです。Holy Tongue(ホーリー・トーン)、Tomaga(トマガ)、Vanishing Twin(ヴァニッシング・ツイン)、V/Z(ヴィー/ズィー)などのプロジェクトで知られ、多様なアーティストとの協働を重ねてきました。昨年には、YPY(ワイピーワイ)こと、goatを率いる日野浩志郎との共作『Kansai Bruises』も発表しています。


Moinを構成する3名のアーティストによる横断的な実践、様々なアーティストとのコラボレーションは、同バンドの最新作『You Never End』にも強く反映されています。同作では、Olan Monk(オーラン・モンク)、James K(ジェームス・ケー)、Coby Sey(コビー・セイ)、Sophia Al-Maria(ソフィア・アル・マリア)といったアーティストを迎え、コラボレーションを通じてサウンドの拡張が試みられています。


※Holy Tongueのメンバーであり、個人名義でも注目を集めるAl Wootton(アル・ウートン)がライブメンバーとして参加しています。

 

Bandcamp



・goat(ゴート)

Photography by Yoshikazu Inoue


goatは、作曲家・音楽家の日野浩志郎(Koshiro Hino)を中心とする大阪拠点の5人編成のリズムアンサンブルです。

ギター、サックス、ベースといった楽器を打楽器のように扱い、ノイズやミュート音を含む発音そのものを素材として、ミクロ単位の精度を持つポリリズムを構築します。各メンバーは人力のドラムマシンやシーケンサーのように機能し、執拗な反復から生まれるトランスと疲労、12音階を外したハーモニクス音が聴き手の肉体や精神に影響を与えます。


ヨーロッパ各地でも高い評価を受けるgoatは、オランダ・ハーグで開催されたRewire 2024や、フランス・ナントで開催されたFestival Variationsに出演し、SUNN O)))と共演。2025年には池田亮司(Ryoji Ikeda)の日本ツアー大阪公演にもゲスト出演し、国内外で高い評価を得ています。


2025年にリリースされた作品『Without References / Cindy Van Acker』は、スイスのダンサー/振付家であるCindy

Van Acker(シンディ・ヴァン・アッカー)からの委嘱により制作。Cindy Van Ackerの長年の協働者であった Mika Vainio(ミカ・ヴァイニオ)の死を契機に生まれた同振付家によるダンス作品に応答するかたちで構成されており、goatの演奏に備わる身体性を、さらに際立たせています。

 

・Bandcamp 


【プログラム概要】

開催日時:2026年6月6日(土) OPEN 17:30 / START 18:30

会場:LIQUIDROOM(東京都渋谷区東3-16-6)

チケット料金 :スタンディング ¥8,000(税込・ドリンクチャージ別)[ZAIKOにて販売中]

出演者:Moin / goat

※公演の詳細は MODE公式Instagram をご確認ください。

 

チケット販売:https://mode.zaiko.io/e/6thjune-performance-moin-goat

【About MODE】

MODEは、ロンドンと東京を拠点に、実験的な芸術を通じた「交換・交流」のためのアートプラットフォーム。坂本龍一がキュレーターを務めた2018年の初開催以降、「音」を軸とした国際的な文化交流の場として展開している。都市の余白や歴史的な音楽芸術ベニューを舞台に、空間の建築的特性や場所がもつストーリーに呼応する多様なプログラムを実施。アーティストとオーディエンスが音楽や芸術文化、その歴史的背景を分かち合い、インスピレーションを交わすことで、新たな体験や実験的表現が生まれる場を創出している。

 

▪︎過去の主な出演者(抜粋)

2018 LONDON (The Barbican Centre / The Silver Building / Camden Art Centre)

坂本龍一 + Alva Noto / 坂本龍一 + David Toop / Beatrice Dillon / 空間現代 / 細野晴臣 + Acetone / Curl / 毛利悠子 + 鈴木昭男

 

2019 LONDON (Round Chapel / 55-57 Great Marlborough Street / South London Gallery)

Rashad Becker / Eliane Radigue / Julia Eckhart / Bertrand Gauguet / Yannick Guédon / Wolfgang Voigt / Laurel Halo / Ellen Arkbro / Tomoko Sauvage / John Also Bennett + Amospheré / Loraine James


2023 TOKYO (淀橋教会 / Vacant Space in Aoyama / WWW)

Eli Keszler / Kafka’s Ibiki (Jim O'Rourke, 山本達久, 石橋英子) / Park Jiha / 伶楽舎 / Posuposu Otani / Merzbow / Kali Malone featuring Stephen O'Malley & Lucy Railton / Laurel Halo / Tashi Wada with Julia Holter / 日高理樹


2024 TOKYO (草月ホール / 伊藤邸(旧園田高弘邸) / LIQUIDROOM)

INCAPACITANTS / Puce Mary / Yuko Araki / FUJI|||||||||||TA / Okkyung Lee / 坂田明 / Bendik Giske / Valentina Magaletti / Still House Plants / goat

 

2025 TOKYO (新国立劇場 オペラパレス / 東京都現代美術館 / 公園通りクラシックス / GASBON METABOLISM / ゲーテ・インスティトゥート東京)

Soundwalk Collective & Patti Smith / Marginal Consort / Carl Stone / 立石雷 / 恩田晃 / Park Jiha / Aura Satz / 斎藤玲児 / Ka Baird / Arnold Dreyblatt & The Orchestra of Excited Strings (Konrad Sprenger / Joachim Schütz / Jim O’Rourke / 石橋英子)

 


 

3月にリリースされた邦楽の新作をレーベルからの提供をもとにピックアップしました。ハンバートハンバートの「笑ったり転んだり」のファーストテイクがリリースされたほか、日本テクノシーンの才能溢れるプロデューサー、シンイチ・アトベ、日本のフォークシーンの注目のシンガー、真名子新の新作がリリースされました。あらためて3月のリリース情報を確認してみよう。

 

 

 ハンバートハンバート 「笑ったり転んだり- From The First Take」



佐野遊穂と佐藤良成によるフォークポップデュオ、ハンバート ハンバートはNHK連続テレビ小説「ばけばけ」の主題歌として使用された「笑ったり転んだり」のファーストテイクを配信リリース。ドラマの放映は惜しくも終了したが、バケバケ効果はまだ終わっていない。

 

この未公開テイクでは、ハンバート ハンバートの良質なライブパフォーマンスが味わえる。ピアノによる弾き語りで、春らしくしっとりとした音楽性を楽しめる。デュオは、来月に福岡のライブ・フェス、Circleに出演する。ドラマの放映は終了したものの、今年もハンバート ハンバートの活躍から目が離させなさそう。Youtubeにてレコーディングの動画が公開されている。間のとり方また、一発録音の独特な緊張感が伝わってくる。個人的には、こちらのテイクがイチオシ。

 

 

笑ったり転んだり / THE FIRST TAKE

 

 ストリーミングURL: https://humberthumbert.lnk.to/SandS_TFT

 

 


Shinichi Atobe 「Silent Way」



埼玉のテクノプロデューサー、シンイチ・アトベがセルフレーベルPlastic&Soundsからニューアルバム『Silent Way』を3月27日にリリース。前作『Discipline』が米国のメディア、Pitchforkの年末特集(The 30 Best Electronic Album)で紹介された。シンイチ・アトベは時代の評価軸を静かにすり抜けながら、現在進行系で更新を続けているとレーベルは紹介する。

 

アルバムの収録曲「TRNS」は9分以上の長尺のテクノ/テックハウスのトラックで、ハイライト曲の一である。ミニマリズムを基調とするサウンドだが、ランタイムごとに異なるサウンドスケープを味わうことが出来る。この曲はSupercarの後期、Lama、Koji Nakamuraのテクノサウンドをわずかに彷彿とさせる。アルバムの収録曲はダウンビート/ディープハウスのビートを主体とし、チップチューン(ゲーム音楽のサウンドトラック)のようなチープなサウンドもある。

 

 

「TRNS」

 

 

 ストリーミングURL:https://ssm.lnk.to/SilentWay


真名子新 「薔薇を飾るなら」


 

2025年にファースト・アルバム『野原では海の話を」をリリースすると、ロングセラーとなり、全国12箇所のツアーを行い、Club Quattroで開催されたツアーファイナルをソールドアウトさせた。

 

神戸を拠点とする真名子新は、ジャパニーズフォークシーンの新星である。新曲「薔薇を飾るなら」は良い曲で、真名子らしいフォーク・ミュージックと温かな歌詞が混在する。「大事な人が悩んでいたらどのような言葉をかけるのか」というテーマを込めた実兄であるモトキ・マナコの歌詞とアコースティックギターを主体としたバンドサウンド、優しく力強い歌が見事にマッチしている。J-POPらしいサウンドを基調としつつ、世界水準の楽曲に仕上がったといっても過言ではない。この曲は、日本の新時代のフォークミュージックリバイバルの幕開けを予見する。

 

「薔薇を飾るなら」

 

 

ストリーミングURL: https://ssm.lnk.to/DecoratewithRoses

 

北里彰久 「April Child」


ワイルドな風貌から軽快で爽やかなヴォーカルを提供する北里彰久の楽曲は、J-POPとR&Bとファンクを融合を主体としている。「アーバンなR&B」という宣伝文句がどんな意味なのか長年不思議だったが、ようは首都高のドライブでかかっても違和感がないシティサウンドを意味する。

 

北里による待望のニューシングル「April Child」はまさにアーバンなR&B/ポップの代名詞に相応しい。しかし、表面的には都会的なサウンドを主体としている。その中に漂う素朴なエモーションがこの曲のハイライト。聞きやすい曲で、多くの人の共感を誘いそうなナンバー。ムードたっぷりのメロウなギター、そしてビブラートを聴かせたソウルフルな歌唱にも注目しよう。

 

 「April Child」

 

 

ストリーミングURL: https://ssm.lnk.to/AprilChild

 

tenbin O 「How To Make It』

 

2022年に結成された、tenbin Oは日本のクルアンビンともいうべき三人組である。tenbin oは4月22日に三作目のアルバム『Fushigi Na Binsen』のリリースが決定し、本シングル「How To Make It』は、ニューアルバムに収録予定である。

 

「How To Make It」は、エキゾチックなギターが、しなやかなドラム、そしてアフロソウルのボーカル、ファンクベースと融合したtembin Oらしい楽曲である。音楽的には、最近活動しているか定かではないが、奄美大島のフィーチャーソウルグループ、AMAMMJAUBに近い雰囲気だ。

 

tenbin oは、結成当初から野心的な音楽ビジョンを掲げて活動を重ねてきた。ポストパンクからモダンソウルまで様々なジャンルを織り込んだ1stアルバム「Lack Of Heroism」、それから、パーカッションの積極的な導入でビートを複層化し、ダウンビートでエキゾ味を増したグルーヴを獲得した2ndアルバム「illegal positive」を経て、tenbin oは最新アルバム『Fushigi Na Binsen』の収録曲を通じて、研ぎ澄まされたリズムとメランコリックなループサウンドが自然体の体を揺らし、メロディが幽玄に揺蕩う“平熱のサイケ・グルーヴ”を解き放つ。 


新曲のリリースにあわせて、スタジオセッションの動画が公開されています。下記よりライブパフォーマンスをチェックしてみよう。

 

「How To Make It」

 

 

ストリーミングURL: https://ssm.lnk.to/HowToMakeIt 

 

Merchant 「Piano」 



謎の地方都市(実際は埼玉/本庄市)を背景にアーティスト写真を撮影するMerchantこと、栗田将治。かつてはGlinderというバンドで活動していたが、現在はソロアーティストに転向している。今週水曜日にニューアルバム『Strawberry Days』のリリースを控えている。


ダイナソーJr.(J Mascis)、Teenage Fanclub、Flaming Grooviesを崇拝し、また、それに違わぬオルタナティヴロックソングを制作している。また、Merchantのサウンドにはパワーポップからの影響があり、轟音のディストーションギターに甘酸っぱいボーカルのメロディーが混在している。長らく空白だった日本のパワーポップシーンを埋めるべく存在として登場した。また、歌謡曲からの影響も感じさせる。

 

先月リリースされた新曲「Piano」は4月8日の発売予定の新作『Strawberry Days』に収録されている。歪んだノイジーなギターとグッド・メロディ、ハーモニーが共存したヴィンテージ・パワーポップ作。アルバムから泣きのギター、並走するピアノが印象的である。90年代のオルタナティヴ・ロックに回帰したようなサウンドで、次世代のインディーズシーンを牽引する。小山田圭吾、曽我部恵一の系譜に属するような特異なインディーロックシンガーである。

 

 

 「Piano」

 

 

 

Jumanji 『Sup』 - New Album 




東京と川越をつなぎ、ストリートカルチャーを紹介するJumanjiは結構面白い四人組ヒップホップグループ。

 

ニューアルバム『Tesoro』を先月リリースした。収録曲「Views」では今は亡き伝説的なヒップホップアーティストJJJとの共同制作された楽曲である。他にもギターをサンプリングし、クライム映画のようなストーリーテリングを披露するタイトル曲「Tesoro」にも注目したい。トラップ/ギャングスタ・ラップのようなグルーブを感じさせ、同時に叙情的な雰囲気も漂っている。彼らのストリートの空気感を吸い込んだラップは、ヒップホップを渇望するファンに最適となる。

 

 

「Views」 

 

 

 

ストリーミングURL: https://ssm.lnk.to/_SUP 


ソフィア・ヤウ・ウィークスの音楽は、音楽的な成功というのが必ずしもミリオンセラーや世界的なコンサートのように華やかなものとは限らず、個人的でささやかなものでもあっても良いことを思い出させてくれる。


ソフィア・ウィークスの音楽的な道のりは紆余曲折があり、一筋縄ではいかなかった。4歳でクラシックのヴァイオリニストとして英才教育を受けてきたが、長年をわたって彼女は音楽に対する複雑な思いと苦手意識を抱えてきた。よくあることだが、厳格なレッスンと高いパフォーマンスが求められるプレッシャーが音楽との関係を難しくした。年を重ねるにつれ、家族からのプレッシャーにより、その不安はさらに強まった。彼女にとって音楽は名門大学への合格、そして、その後の医師や弁護士といった専門職への道を開くための手段の一部に過ぎなかった。


不安と抑うつは大学生活にもつきまとい、彼女は燃え尽き症候群になり、キャリア重視の未来像から距離を置くようになり、一般的な幸福が当てはまらないと悟った。2020年、大学3年生の時、パンデミックが到来した。それは多くの人々の当たり前や常識を根底から揺さぶり、覆すような苛烈な時期でもあった。世界中の人々と同様、ヤウ・ウィークスも自宅に籠もる生活を送った。ロックダウンが長期化するにつれ、高まる孤独感と悲しみを吐き出す場が必要となった。


彼女は、それまでカバー曲を練習するためにしか使用していなかったアコースティックギターを取り出し、自分自身のオリジナル曲を書いてみることにした。一日ずつ進める日記のように曲を書き進めると、ゆっくりと、確実に、音楽との関係は変化し、不安を掻き立てるものから、感情を整理する詩的な手段へと移ろっていく。最終的に、音楽制作は創造的な表現の道のりに変わり、周囲の世界や自身の個人的な経験を理解したり、解釈するための手立てとなった。


その後しばらく、ギターを携えて、ヤウ・ウィークスはカルフォルニアからロンドンへ移り住んだ。そこで過ごした2年間、インスピレーションは絶え間なく湧き出し、形になっていった。彼女はそれらを慎重に、忍耐強く、寝室からボイスメモとして録音していった。現在27歳となり、故郷のカリフォルニア州オークランドに戻ったヤウ・ウィークスは、デビューアルバム『Misty Mountain』をリリースする。この繊細な作品は、ゆったりとしたテンポと内省に根ざしている。


楽曲のほとんどは、ベビーシッターの仕事と、ジョージ・タバーンやウィンドミル・ブリクストンといったロンドンのインディーズ・ライブハウスでの夜のライブの合間を縫って5年で書かれた。ライブハウスで、彼女はロンドンのバンド仲間を含む素晴らしいミュージシャンや友人と出会い、音楽に対する新たな手応えを得た。しかし、地元の音楽シーンで足場を固めようとしていたその矢先、ヤウ・ウィークスはコロナウイルスに感染し、免疫不全状態に陥った。しかし、このことが内省の機会を与え、孤独と人間の繋がりとは何かを考えさせる機会になった。


『Misty Mountain』は、およそ5年をかけて丁寧に制作されたアルバムである。共同プロデューサーのマリアム・クドゥス(アラニス・モリセット、SASAMI、SPELLLING、グレイシー・エイブラムス)と共に、Tiny Telephoneでテープに録音された。芸術表現とコラボレーションを重視し、愛や人間関係、悲嘆やトラウマ、そして精神的な回復力や共同体意識といったテーマを探求しつつ、ニック・ドレイクやビッグ・シーフらからサウンドのインスピレーションを得ている。


ウ・ウィークスがアナログ録音を選んだ理由は、その温もりのある音質だけでなく、幼い頃から刷り込まれてきた生産性や完璧主義を遠ざけると共に、緩慢と不完全を受け入れる試みでもあった。結果的にはミュージシャンとして幸運にも成果主義から逃れることが出来たのだった。具体的にはテープ録音を中心にレコーディングが進められた。「アナログ録音は、私の音楽性を信頼させ、各テイクの単一性を受け入れさせました。スタジオで時間制限があるアナログ録音を行う際には、直感に従うしかなかった。これらの制限により、私の最高のパフォーマンスを発揮でき、細部にまでこだらなくなった」ソフィア・ウィークスは録音過程を振り返る。


デビューアルバムとして異例ともいえるソフトなサウンドが印象的なアルバムで、制作のコンセプトについては、他者が共感出来るような音作りを優先しているという。また、曲を書く時、具体性と普遍性のバランスを取るよう努めているという。「私自身の経験に関する具体性は、人生の出来事や感情、好奇心を処理する際、私にとって意味がある。同時に、私は、他者が音楽に共感できるように、そして自分がその曲を振り返って新たな形で共感できるように、集合的な何かを示すよりも広いメッセージを取り入れることを好んでいる」


また、孤独や繋がりについての主題がふんだんに盛り込まれ、それはテクノロジー時代の交流とは何かを解き明かすための手立てでもある。「私にとって、孤独とつながりの間には緊張があり、社会的にも精神的にも、その二つの領域の間を行き交っているように思います。それらは私が自然に惹かれるところです。私の音楽は、孤独とつながりの関係を明らかにしたいと思い、さらにそれらが私の内面的な世界にどのように影響を与え続けているかを探っていると思う」


どことなく物憂げでありながら探求心に満ちた『Misty Mountain』。ヤウ・ウィークスが過去を消化し、現在を省察し、未来を予見するプロセスにおける、彼女の内面世界への親密な覗き込みである。これは彼女の経験が思慮深く織り交ぜられた作品で、他者と交わりつつも、この世界で孤独であることの意味について語っている。率直な歌詞と時代を超越したインディーフォークサウンドを備えた『Misty Mountain』は、間違いなく聴く価値のあるデビュー作となる。


Sophia Yau-Weeks 『Misty Mountain』-  Sophia Yau-Weeks



デビュー作というのは、それまで蓄積してきた音楽経験を惜しみなく詰め込める。よって、そのミュージシャンやバンドの思いがぎっしり凝縮されている。そこに一人の音楽ファンとしては、大きなロマンスを感じる。カルフォルニアのシンガーソングライターによるデビュー作『Misty Mountain』は、イギリスの有力メディア、CLASH、The Line of Best Fitを中心に取り上げられ、好評を博している。アナログ録音をもとにしたオーガニックな雰囲気を持つインディーフォークアルバムで、それほど派手な印象はないけれども、長い時間をかけてゆっくりと聴きたい良質な作品である。

 

ヤウ・ウィークスのミュージシャンとしての全貌のすべてが明らかにされたわけではない。しかし、幼少期からヴァイオリニストとしての訓練を受けたこともあり、音感という側面では、同年代のミュージシャンよりも先んじている。しかし、このアルバムはシンガーソングライターとしての背景を象徴するかのように、過剰さや卓越性を避けた一般的な共感を呼び覚ます作品である。音楽全体は過剰な和声進行を避け、ときには三つのコードや和音を中心に進行していく。しかし、アコースティックギターとボーカルという簡素な構成を持つ楽曲は、波にゆらゆらとゆれられているかのような感覚があり、いつまでも聴きつづけられるような心地よさがあるのが不思議だ。


そもそも人間の脳は過剰な情報量を捉えられないように設計されている。氾濫する情報、それをすべて把握しているようでいて、ほんの一部しか理解していないのである。過剰な音楽は、ほとんど瞬間的な認識しか得ることは難しい。情報量の多いものは、それがどのような形態であれ、人間の脳や精神を疲弊させる。現今のソーシャルメディアの問題は、過剰な情報量を頭脳が処理しきれないことにある。すると、心にはモヤモヤが残り、消化しきれなくなってしまう。

 

若いミュージシャンやバンドの間でアナログ録音やテープリールなどを使用した録音が流行っているのは、情報過多に対する反動とも言える。デジタル録音は間違いなく音を精細にし、マクロからミクロに至るまで音の解像度を上げた。しかし、同時に、解像度が明瞭になりすぎることで、情報量が異常なほど増加した。すると、今まで聞けなかったり見えなかったものまでくっきりと見えたり、聞けたりする。そもそも、音楽作品は主体となる要素が増えれば増えるほど、音楽の持つ印象は、対象的にぼやけたり、霞んでいくという反比例の相関関係にある。単純明快でシンプルなロックソングがかっこよく思えるのは、こういった理由があるわけなのだ。

 

デビューアルバムであるにもかかわらず、ソフィア・ウィークスのインディーフォークサウンドは、それほど過剰な音楽の情報量がなく、自然な形の録音に仕上がっている。これは情報の飽和や過剰さが人間の感情や感覚にどのような影響を及ぼすのかという弊害をよく知っているからである。それは、結局、クラシック音楽のようなジャンルがトーンクラスター(群衆和音)などの過剰な情報量を経て、現代の音楽として衰退していき、一般性から離れ、ポピュラーやロック、ソウル、フォークにとって代えられたことを見れば、一目瞭然なのではないか。また、私達のような世代は、未来的とか先進的という言葉に惹かれたが、一回り下の若い世代は、むしろ時代に逆行するかのように、近代から現代の人々が見落とした本質的な概念を探そうとしている。2020年代後半はおそらく、旧来の価値観が塗り替えられるような時代となるだろう。

 

『Misty Mountain』は、内的な静寂から出てきたかのような深遠な趣を持つフォークサウンドで縁取られている。驚きなのは、例えば、2000年代以前よりもヤウ・ウィークスのような年代の人々は、比較的多くの情報量に接してきたはずなのに、 それとは対象的に音の情報量やボリュームを絞っている。そして大胆ともいえる形で、自然を感じさせるインディーフォークソングを奏で、小さなミクロな音楽に、大きな自然や宇宙、マクロコスモスを映し出す。つまり、ウィークスの音楽は、田舎で満点の星空を眺めるようなロマンティックな感覚がある。

 

タイトル曲で始まる本作は、結局、2020年代前半のパンデミック時代がもたらしたもう一つの意外な効果を反映している。ささやかなアコースティックギターのストロークの演奏と穏やかなハミングで始まる「Misty Mountain」は、現代人が接する過剰なノイズからの解放を意味する。彼女は詩人のように奏で、平らかなハミングを歌い、 自然味や開放感を感じさせるフォークの世界を作り上げる。しかし、ウィークスのサウンドに独自性をもたらしているのが、アナログのディレイや逆再生を交えたアトモスフェリックな印象を持つアンビエントのサウンドである。

 

リードボーカルやバックボーカルの美麗な旋律は、子供の時代からのヴァイオリンの経験に根ざしている。しかし、次世代のミュージシャンらしいサウンドが温和な空気感を作り出す。アイスランドの室内楽グループ、amiinaのようなささやかで上品な器楽的なサウンドが、ゆったりしたテンポを通じて繰り広げられていく。ループペダルを用いたギターや夏の入道雲のように舞い上がるアンビエンス、これらの現代的なサウンドは、おそらくロンドン仕込みと言えるだろうか。その一方で、カルフォルニアらしくアメリカーナのペダルスティールが登場し、幻想的な雰囲気を作り上げる。結果として、長く聞き続けたいと感じさせるフォークミュージックが構築される。歌詞の一面でも、出来るだけ説明的な表現を避けて、本質的な言葉を率先して歌っている。


「me,you,us」というような心に残るフレーズを聴いて気持ちが開けたり、また、明るくなるのは、そこに本質的な概念が宿っているからなのだろう。このあたりのオーガニックなフォークサウンドは、イギリスのフォークシンガー、Anna B Savage(アンナ・サヴェージ)の系譜にあるといえる。実験的なサウンドを織り交ぜながらも、曲の構成はシンプルで、一番から二番に移行し、演奏には弦楽器が加わる。そして音楽的に最も重視されるのは、全体的なハーモニーや調和である。気負いがなく、親密で開放的な演奏がボーカルと巧みに融合している。総合的に見れば、自然体な感じがするフォークミュージックを介して、リスナーの心を優しく解きほぐしてくれる。

 

「Nobody’s Laughing」ではドラムの演奏が入るが、本質的な音楽性は変わらない。 同じように細やかなフォークソングを中心にしているが、この曲は、ポップソングに近く、琴線に触れるボーカルが含まれている。どこのフレーズが共鳴するのかは、人それぞれだと思うが、結局、制作者がここだという見本を示してくれないと、共鳴のような瞬間も出てこない。つまり、曲を聴いていら人に、ここが良いかもしれないなという気持ちを抱かせてこそ、音楽としての良さが入り込む余地が出来る。また、同時に、旋律的にも、過剰にドラマティックな表現を避けている。淡白な印象をもたらすかもしれないが、そこには言い難いような淡さと心地よさが共存している。

 

ヤウ・ウィークスは、”AIの時代にこそ、人間的な感情を重視すべき”と説明するが、素晴らしい考えだと思う。人間にしか成し得ないことをする。まさに、そのことを体現する繊細で切ないフォークソングである。サビ/コーラスにおける旋律進行の素晴らしさは、やはり生来の音感の良さに根ざしたものだろう。しかも、それをじっくり丁寧に歌い上げるスタンスに、共感のような瞬間が存在する。そしてサビを効果的に繰り返し、温かな感情性を増幅させていく。


「繰り返しやベタなフレーズを恐れないで」といったのは、ボウイのベルリン三部作のプロデュース時のブライアン・イーノ氏(その考えを示したカード)だったと思う。これは聞き手が感情移入する余地を作るためなのだと思う。経験のあるミュージシャンは特に、軽率な繰り返しを避けたがることが多いが、リフレインやオスティナートは意図的にやると、非常に効果的である。また、ふと口ずさんでしまうような瞬間にこそ、音楽の持つ崇高さが宿ったりする。


「Nobody’s Laughing」

 



『Misty Mountain』では、テープ録音に根ざした、かすかなアナログ感とエレクトリックとアコースティックの演奏の混合に美しさが存在する。そして、古いものと新しいものを混在させたサウンドの中で、時代性を持たない、あるいは時代性を忘れさせる普遍的なボーカルが甘美な響きを作り出す。そして、思想としての明瞭性を避けた、中和的なボーカルが音の濃さを薄めて、和らいだ音の印象を生み出す。色のトーンで言えば、原色を避けて、パステルカラーのような淡い色を持つフォークサウンド、中和するようなサウンドが主な特徴である。


また、「Lone Wolf」にも象徴されるように、テンポ感を心持ち落として、ゆったりとしたリズムを重視している。これもまた加速する情報化社会に対する反動とも言える内容だろう。また、そこには人間の本質的な意味が宿り、あくせくせず、ゆったりする時も必要だということである。また、音楽的にはそれは、休符や間という概念に反映され、静けさが強調される。アルバムの序盤を聴いて、安らぎを感じる理由は、そこに内省的な静けさが存在するからである。

 

こうした中、アーティストによる個人的な趣味が色濃く出る「Monster」が序盤のハイライトとなる。おとぎ話や古いアンティーク家具のような印象を持つフォークソングで、2/4の緩慢なリズムを描き、そこにワンダーワールドを作り上げる。しかし、ここでいうモンスターとは怖い怪物ではない。おとぎ話に登場するようなピクシーのような可愛らしい怪物だ。まるでミステリアスな森の中を歩くかのようなサウンド、それらは映像的な示唆に富み、安らぎを越えた神秘的な音楽空間へとリスナーを誘う。楽曲の途中で、四拍子から三拍子に変化する瞬間に、アーティストの幻想主義が映し出される。音楽としては、ロサンゼルスのSSW、Nikiの音楽性を彷彿とさせる。


個人主義の音楽と言えるだろうが、同時に壮大な音楽世界を描くことに成功している。続いて、フォークバラードをもとに、しっとりした楽曲に挑戦した「Sylvia's House」もまた前の曲の延長線上にあるフォークソングで、アルペジオを中心としたアコースティックギターとソフトなボーカルによって紡がれるが、ここでもまたボーカルのメロディの良さが際立ち、ベースラインの働きを成すギターとティンパニのような効果を狙ったドラムが心地良い音の空間を作り出す。全体的に言えば、ヤウ・ウィークスの音楽世界は、まるで音楽という空間の中にお気に入りの家具を並べて、そして自分らしい色に縁取っていくようなもの。それはまた、手編みの縫製のような質感を持って、微笑ましいような音のタペストリーを作り上げる。旋律的に追うと、ノラ・ジョーンズの代表曲「Don't Know Why」の系譜にあるすごく素敵な曲である。

 

 

『Misty Mountain』は「内省的なサウンド」と説明されているが、その繊細な感覚が出てくるのがアコースティックギターのシンプルな弾き語りで構成される「The Rain」となる。家の外から見る、雨の情景の憂鬱さ、そこに宿る美しさや癒しといった感覚を縁取っている。器楽的にいえば、減7和音を駆使し、ジャジーでおしゃれな響きを活かし、現代的な詩人のあるべき姿を思いこさせる。それは、誰にでもあるようなありふれな日常を丁寧に歌い、感覚的なものから、ありきたりな常識を遠ざけるということである。この曲には、アルバムの主題的なテーマの孤独を深く感じさせる。


しかし、そこには、憐憫も悲哀もない。その基底にあるのは、ほのかな安らぎと癒しである。この曲にも、ありきたりな幸福の価値観から解放してくれる健全なパワーが宿っている。幸福というのは単一に還元されることはなく、形のないもので、それぞれ異なるものだ。こういった曲も、社会学的には理想とは言えまいが、ロックダウンのような瞬間から編み出されたのだ。基本的にはフォークミュージックに根ざしており、ジャズの音楽性も含まれている。しかし、個人的な内容を歌いながらも、アメリカーナを通じて壮大な宇宙的な音楽が出てくる。このあたりに、ミクロからマクロの領域へと推移するこのアルバムの偉大さが反映されている。

 

「Love Is A Garden」はフォークとポップ、ジャズの中間にある曲で、聴いていて安心感がある。それは、理想主義という空想的な側面から離れて、地に足がついた音楽だから好感が持てる。ゆったりと流れていく雲や空のように、あるいはゆっくりと土から枝を伸ばし、ささやかな花を咲かせるかわいい植物のように、そこに存在するだけで完璧であるという、簡単ではあるが、自然の摂理を示す曲でもある。すでに完璧である事柄に不完全さを与えたがるのが人間の奇妙な性である。それはまた、人間そのものの不完全性を暗示しているのかもしれない。


いずれにせよ、こういった平和主義を体現する楽曲は、現代的なポップシンガーの感性を通じて、多くの人々に共鳴しても全然不思議ではない。最近、残念ながら、肯定感を揺さぶる音楽は多いが、肯定感を与える音楽は少なくなってきている印象だ。これはスーザン・ソンザグが指摘したように、''他者に対する関心の無さ''というのが一因になっている。良い曲の根底には、巡り巡って帰ってくる宇宙のエネルギーの循環のような性質が存在する。そして素晴らしいミュージシャンは、エネルギーを惜しみなく循環させようとする。その点、このシンガーには良い気分を共有したいという思いがあるらしく、それが音楽的な良さに繋がっている。また、このシンガーソングライターは、明るさは暗さから生まれ、暗さは明るさから生まれることをよく知っている。そういった陰陽や正負というような、両極端の性質が絶えず混在しているのだ。

 

最初の一音に集中が込められている。 最初の一音にすべてを込め、入念の演奏や真摯なボーカルを披露している。素晴らしいと思うのは、音楽や言葉をぞんざいに扱わず、丁寧に捉えていること。しかし、先にも述べたように、変な重圧や気負いを感じさせない。それは結局、全般的な制作過程を通じて、幸運にも成果主義から逃れることが出来た瞬間があったのからだろう。「Spellbound」のような曲を聴いて良いなと思うのは、奇妙な名誉心がほとんどないからである。(もちろん、たまには名誉心も必要かもしれないが......)

 

さらに、『Misty Mountain』は、ヤウ・ウィークスが長年抱えてきた音楽との複雑な関係を融和する。それは言ってみれば、過去の自己や周囲の人々との「和解」を意味する。その証拠にダイナミックなストリングスがアルバムの最終盤でフィーチャーされている。それはしかし、単なる脚色のためではない。ある意味では、その人の人生観を彩り、過去の自分を乗り越え、新しい自己へ生まれ変わったモーメントを示唆する。本作は後半の収録曲になるほど、神妙な感覚が立ち上ってくる。しかし、それは、旧態依然とした権威的な奥深さではない。

 

その時、誰にでも訪れるような心が洗われるような美しい楽の音が優位になる。それはまるで顕在意識が薄れ、神聖な自己が立ち上ってくる瞬間に喩えられる。「Flay Away」や「Kristine」といった曲は依然としてささやかで広やかな音楽である。しかしながら、小さなところから大きな感覚が出てくる箇所が素晴らしい。ある意味では、アルバムの後半でのヴァイオリンの演奏や、''クリスティーン''という、ありふれたフレーズを繰り返す瞬間、このアーティストの潜在的な凄さを感じとられる。それは先にも述べたように、エポックメイキングでもなければ、人を驚かすような手法でもない。『Misty Mountain』は、およそ5年をかけて、ヤウ・ウィークスがじっくりと蓄積してきた何かが溢れ、それがようやく目に見える形になっただけなのである。 

 

 

90/100

 

 

 

「Kristine」

 

 

▪Sophia Yau-Weeksによるデビューアルバム『Misty Mountain』は本日自主制作盤としてリリース。 Bandcampでのストリーミングはこちらから。

 


 

レトロフューチャリスティックなダンスエクスペリエンス、CŒUR ACIDEのニューシングル「TOUCH ME (ALL NIGHT LONG)」が、toucan soundsよりリリース。イタロ・ディスコ風のダンスミュージックで、デュオは、P-Funk/ディスコソウル風のサウンドを特徴とし、痛快でノリの良いグルーブ感をファンのもとに届ける。サウンドはパーラメントやEW&Fが下地にありそうだ。


CŒUR ACIDEはフランスを拠点に活動するエレクトロ・デュオで、専らライブ活動に力を入れている。音楽、ファッション、アートファクト・カルチャーを融合させ、レトロ・フューチャリスティックな視点を通して、80年代後半から90年代初頭のクラブ・グラマーを表現しています。単にリスニングにとどまらず、体験すべき神話に満ちた世界を紡ぎ出す、さらにCŒUR ACIDEは、各々の楽曲を記憶の断片として、また、映画的な宇宙の一部として創り上げる。 


この新しい音楽プロジェクトは、カナダ人アーティスト兼プロデューサーのパット・ロック(ストリーミング再生回数1億回以上)と、ハイチ系メキシコ人のボーカリスト兼マルチディシプリナリー・アーティスト、F-MACKによって結成された。


「TOUCH ME (ALL NIGHT LONG)」は、イタロディスコの中で生まれ変わる情熱的な叫びです。このシングルは、近日リリース予定のセルフタイトルEPからの先行トラックとなる。

 


CŒUR ACIDE:


CŒUR ACIDEは、失われた未来からのシグナルとして、魅惑的でハイファッションなアシッド・ハウスを紡ぎ出す、レトロ・フューチャリスティックなダンス・エクスペリエンスです... 


CŒUR ACIDEは、カナダ人プロデューサーのPat Lokとハイチ人ボーカリストのF-Mackによって構想された神話的な音楽の世界。A-TrakがA&Rを担当し、ChromeoのJuliet Recordsからリリースされたコラボ曲「Dirty Luv」の成功を受け、このデュオは今、Empire of the Sun、Hercules and Love Affairを彷彿とさせる、神秘的で未来的なライブ体験を届ける。セルフタイトルのEPには、爆発的な90年代のレイヴ(『LETS SWEAT』)から、クラシックなボールルーム・アンセム(『WHISPER FROM ABOVE』、『BITE ME』)、そして高揚感あふれる80年代のR&B(『ACID HEART』、『BOUGIE』)まで、幅広い楽曲が収録されている。


芸術と親密さが禁じられたディストピア的な未来から、タイムトラベルで逃れてきた難民として現れたCŒUR ACIDEは、単なるバンドではなく、反乱への呼びかけそのものである。それぞれの楽曲は記憶の断片であり、映画のようなストーリーラインの一部を成す。メキシコシティでの限定ソールドアウト公演で没入型ライブを初披露し、物語の核心となる彼らのトレードマークである「お茶」も初お披露目したこのダイナミックなデュオは、音楽、ファッション、未来主義が交差するエキサイティングな世界の幕開けに過ぎない。



「TOUCH ME (ALL NIGHT LONG)」


▪EN

CŒUR ACIDE is a retro-futurist dance experience crafting seductive, high-fashion acid house as signals from a lost future... 


CŒUR ACIDE is a mythical musical universe conceived by Canadian producer Pat Lok alongside Haitian vocalist F-Mack. Fresh off their collab, “Dirty Luv” (A&R’d by A-Trak and released on Chromeo’s Juliet Records) the duo now deliver a mysterious, futuristic live experience reminiscent of Empire of the Sun meets Hercules and Love Affair. Their self-titled EP ranges from explosive 90s rave (LETS SWEAT) to classic ballroom anthems (WHISPER FROM ABOVE, BITE ME) and soaring 80s R&B (ACID HEART, BOUGIE).


Emerging as time-travelling refugees from a dystopian future where art and intimacy are outlawed, CŒUR ACIDE is not simply a band, but a call to rebellion... each song a memory fragment, part of a cinematic storyline. Having debuted their immersive live show to an exclusive, sold-out crowd in Mexico City, which also unveiled their signature tea - a central element of the storyline - this dynamic duo is only beginning to unveil an exciting world at the crossroads of music, fashion and futurism.


Their new single "TOUCH ME (ALL NIGHT LONG)" is a passionate cry reborn in italo disco. It is an anthem for the end times! The single is the first taste off of the forthcoming EP. 

 

▪︎ロンドン〈Jazz Café〉で収録されたソウルフルなライブ作品 Mom Tudieによる熱気あふれるライブアルバム『Live in London』


Amy Winehouse、Jamiroquai、Bobby Womackといったレジェンドから、Olivia Deanのような現代のスターまで数多くのアーティストが立ってきたこの象徴的なステージで録音された本作は、ライブの熱気をそのまま閉じ込めた作品。


ソールドアウトとなった観客の前で披露されたパフォーマンスには、アルバム『Liam’s Eavestaff』(2024)と『As the Crows』(2025)からの人気曲が新たなアレンジで収録され、ライブならではの親密さと生々しいエネルギーが際立つ。


Len Blake、MaZz、August Charlesといったゲストを迎えた実力派バンドとともに、Mom Tudieのディスコグラフィーを横断する楽曲を披露。豊かなアレンジ、ダイナミックな演奏、そして随所に現れる即興の瞬間が楽曲に新たな奥行きを与え、ソウルとジャズの影響を受けた彼の温かくオーセンティックなサウンドを鮮やかに浮かび上がらせる。


『Live in London』は、ステージの瞬間に完全に没入し、観客と呼吸を合わせながら音楽を立ち上げていくMom Tudieの姿を捉えたライブドキュメント。アーティストと観客の距離が近い〈Jazz Café〉ならではの空気感の中で、ライブという空間だからこそ生まれる躍動と親密さがリアルに刻まれている。ロンドンのシーンの活気を込めた一作の登場。

 

 


▪︎Mom Tudie 『Live In London』


アーティスト:Mom Tudie

タイトル:Live in London

ジャンル:R&B/Soul, Alt-R&B, Jazz

配信開始日:2026年4月3日(金)

発売元・レーベル:SWEET SOUL RECORDS 


トラックリスト:

01. Losing You (Live in London)

02. Daylight Dreaming (Live in London)

03. Devil on My Shoulder (Live in London)

04. Under Attack (Live in London)

05. Don’t Hate Me (Live in London)

06. Coasting (Live in London)

07. Lights Go Down (Live in London)

08. Ribbons (Live in London)


配信URL: https://lnk.to/mom-tudie-live-in-london


Mom Tudie:



サウスロンドンを拠点に活動するプロデューサー/アーティスト。ソウル、R&B、ジャズ、ヒップホップを横断しながら、自身が「DIY Jazz R&B」と呼ぶ独自のサウンドを築いている。

幼い頃から音楽に囲まれて育ち、ジャズ、ポップ、ヒップホップ、ソウルを吸収しながら独学でプロダクションを習得。直感と実験精神を原動力に、自身ならではの音楽性を発展させてきた。

これまでにBBC Radio 1、1Xtra、6 Music、NTSといったテイストメイカーからサポートを受け、NTSとPaco Rabanneによるファンドにも選出。さらにComplexやClashなどのメディアからも注目を集めている。

また、Tom Misch、Nectar Woode、Tiana Major9、Jaz Karisらとのコラボレーションを重ねながら、UK各地でのツアーを通して自身のサウンドを広げ続けている。今後の活躍に注目したい。

Snail Mail  『Richochet』



Label: Matador

Release: 2026年3月27日

 

Review

 

人間は年齢を重ねるごとに、 今まで見えなかった視点を獲得し、また、その年代ごとに興味を変化させていく。他者と自己の分離、あるいは境界という出発点に始まり、そもそも自己とは何なのか、自分を構成するものは何なのか、また、自分はどこに属するのか、そしてどこから来てどこに行くのかを思案することになる。学生生活や仕事、日常生活に忙殺されていると、なかなか考える暇すらない。外に興味を向け、それを断罪するのは容易い。しかし、自己を回顧するのは難しい。しかし、ある時ふと、流れが止まったとき、自己を見ざるをえなくなり、あるテーマが目の前に浮かぶ。この段階で、個人が客観的なメタ視点を持つことになり、ある意味では、自分の姿を他者の視点から眺める時期に差し掛かる。それでは自分とはなんなのかという。

 

ニューヨークから故郷に戻った後、レコーディングされたリンジー・ジョーダンによる最新作『Richochet』には成長過程における死や死後の世界という、いくらか深妙なテーマが取り入れられ、哲学的な視点を取り入れた作品である。

 

しかし、そういった切実なテーマがありながらも、音楽は重苦しくはない。いや、それとは対象的に、驚くほど軽やかで、爽快な局面もある。それは過去の自分を見つめた時、多少、恥ずかしいような思い出も今ではなんだか美しい思いに彩られたからである。このアルバムは、前作『Valentine』のニューヨークの都会的な雰囲気とは対象的に、アメリカ郊外の平穏な風景をぼんやりと思いおこさせる。その中にシンガーソングライターは、しがないように思える青春時代の自己を慈しみの眼差しで見つめる。

 

一曲目「Tractor Beam」を聴くと、故郷の情景を描いたものであることはそれとなく伝わってくる。今では少し使い古されたようなポップソングを踏襲して、スネイル・メイルはらしいロックソングを紡ぐ。その手助けを果たしたのが、Mommaのベーシストを務め、近年、めきめきとプロデューサーとしての腕を上げ、活動の裾野を伸ばしているアーロン・コバヤシ・リッチである。 

 

コバヤシ・リッチのプロデュースは、90年代以降のオルタナティヴロックをベースにしているが、現代的なサウンドの妙味を埋もれさせることなく、今あるべき最適解を導き出す。スネイル・メイルの代名詞となる叙情的なインディーロックサウンドは、時々、脆さや儚さすら持ち合わせているが、それと同時にコバヤシの全体的なプロデュースが楽曲に強さをもたらしている。


思い返せば、2024年、スネイル・メイルは、Smashing Pumpkinsの「Tonight Tonight」のカバーに挑戦していたが、その影響が現れたのが二曲目を飾る「My Maker」である。アコースティックギターを多重録音し、ベッドルームポップに属するエバーグリーンなボーカルが加わり良い空気感を生み出している。この曲では、以前よりフォークミュージックに焦点を置き、心地よいボーカルのメロディー、ミニマリズムに依拠したギターサウンドが、全体的にアトモスフェリックな音楽性を作り上げる。まるで爽やかな春の風が目の前を通り過ぎていく瞬間のようである。

 

 『Richochet』では、ボーカルは全体的なトラックに対して、むしろ控えめな立ち位置を選ぶことが多い。それは他の箇所では後ろに立っているが、ここぞというときに満を持して前面にせり出てくる感じである。

 

「Light On Our Feet」ではゆっくりとしたテンポを活かして旋律的な要素を上手く引き出している。、マーチングのような細かい三拍子のドラムビートを全体に配して、ギターの繊細なアルペジオを介して、楽曲がゆっくりと展開していく。全体的な曲の空気感は、レトロなシンセストリングスが司り、全体的にはチェンバーポップを基本にしたロックサウンドが構築される。


しかし、ここで少し思い出してもらいたい。例えば、Fountains D.C.が2024年の最新作『Romance』で用いたオーケストラポップ(チェンバーポップ)の手法とは明らかに異なるということである。ロック/パンクがベースとなるFountains D.C.に対して、Snail Mailのサウンドは、全体的にはポピュラーソングが強いフィードバックを及ぼしている。そこに、甘い感じのジョーダンのボーカルが録音され、ドリーミーな雰囲気を持つロックサウンドが作り上げられる。


曲の途中では、本格的なオーケストラストリングスが導入され、ドラマティックなサウンドが強調されている。ここには、プロデューサーと連携してストーリーを持つ楽曲を作り上げようという試作の痕跡が残されている。『Valentine』での音楽的な収穫を踏まえ、それらをより壮大なスケールを持つ楽曲に仕上げている。また、前作ではプロデュースに寄りかかるようなサウンドもあったが、自発的なソングライティングを曲に落とし込もうとしているような気配も伺える。

 

中盤では、明るさのある序盤の収録曲とは対象的に、憂いに満ちたアンニュイなサウンドや、中間域にある感情性を追求したロックソングが目立つ。特に、ドラムの演奏を矢面に押し出し、ロックに近いサウンドを探求している。「Cruise」ではブリット・ポップやオアシスに近い、UKロックの影響を感じさせる。これはこれまでのSnail Mailの作風から見ると、意外性が込められている。


その一方、「Agony Freak」では当初のベッドルームポップに近い音楽性を駆使しながら、個性的なポップ/ロックサウンドで寄り道をする。グランジのクールなギターを織り交ぜながら、独特なポップセンスを発揮している。この曲では単なるオルタナティヴに収まらず、オーバーグラウンドのポップソングに共鳴する瞬間を刻んでいる。また、それは過去のアーティストの写し身でもある。続いて「Dead End」もまた、現代的な米国のポップとロックの中間に位置づけられる一曲である。これはスネイル・メイルがサブリナ・カーペンターのようなポップアーティストへの共感が示された瞬間だ。上記二曲は、オルタナから脱却しようという意図を捉えられる。

 

「Butterfly」は表向きには標準的なロックソングに聞こえるかもしれないが、RIDEやSlowdiveのようなシューゲイズの影響を感じさせる。80年代のニューウェイブサウンドやシンセ・ポップ風のサウンドをギターロックから解釈した楽曲でもある。ここでもスネイルメイルのボーカルのメロディセンスがきらりと光り、物憂げで切ない感じの琴線に触れるメロディが聴ける。スマパンの「1979」のようなミニマリズムをベースにしたロックソングだが、楽曲の構成における工夫も凝らされている。全体的に轟音と静寂を上手く使い分け、アウトロでは悲しい感じのフレーズが出てくる。ここには暗い感情を包み隠さず表現しようという意図も込められていそうだ。しかし、中盤での創意工夫とは対象的に、終盤で、カントリーやフォークからの影響をうかがわせる瞬間が出てくる。すると、まるで音の印象は霧が晴れたかのようにクリアになる。

 

恐れながらも暗い領域から明るい領域へと突き進む瞬間がこのアルバムのハイライトとなる。それは一曲単位で訪れるというよりも、全体的な曲の流れにしか見いだせない。「Nowhere」ではカントリーやロックをベースに、アーティストが明るい領域へと勇ましく踏み出す瞬間が描かれている。「Hell」はタイトルとは裏腹に爽快さを感じさせ、吹っ切れたような明るさを感じさせる。山登りで言うなら、まるで山の五合目までは曇りであったが、その先に晴れ渡った青空がふいに出てきたかのようである。

 

これらの感覚的なポップ/ロックソングが頂点を迎えるのがタイトル曲である。前作では声帯を痛めたため、声が少し低くなるなど、ボーカリストとしての難局を乗り越え、ぎごちないながらも自分に合う歌唱法をスネイルメイルは選ぼうとしている。「Richochet」はセンチメンタルな空気感を残しつつ、キャッチーなポップネスが重視されている。それは過去を振り返った上での決別と前進を意味する。その時、過去の自分は問題ではなくなり、新たな一歩を歩み始める。


最新アルバム『Richochet』にはアーティストとしての苦悩の痕跡が留められている。音楽的な理想に対して、どのように近づくのかという試行錯誤が随所に反映されている。しかし、そのことを考えると、むしろ全体に通じる軽やかで明るい印象が癒やしをもたらしてくれる。「Revire」は良いメロディーが満載で、慈しみのような感覚が表されている。それが何に向けられているのかは定かではない。しかし、この曲には温かい感情が滲んでいて本当に素晴らしかった。

 

 

 

86/100

 

 

 

「Reverie」- Best Track



ブライトン出身のパンクデュオ、Lambrini Girlsが新曲「Cult of Celebrity」を公開した。パンクバンドが2025年にリリースしたデビューアルバム『Who Let The Dogs Out』に続くシングルとなる。ランブリーニガールズらしい大胆不敵で痛快なパンクロックサウンド。しかし、そこにはガレージロックやロックンロールのサウンドが混在している。

 

リリースと合わせて、ロンドンを拠点とする映像作家兼監督のハーヴ・フロスト(『The Last Dinner Party』、『Laufey』)が手がけたミュージックビデオも公開された。MVでは、近年、世界をソーシャルメディアを日々賑わせているセレブリティの悪魔主義のおぞましさをコミカルに描いている。

 

”セレブの崇拝”は、現在の社会情勢の裏側にある暗部(エプスタイン・ファイルの公開、それにまつわる児童売買や悪魔主義の疑惑)を見事なほどに浮き彫りにしてみせている。


現在、最もその将来を有望視されるパンクデュオ、ランブリーニ・ガールズは2025年のグラストンベリーに出演して、痛快なパンクサウンドで会場を賑わせた。女性の社会における視点を大胆に縁取ったデビューアルバムに続いて、デュオの牙の矛先は社会正義と世直しに向けられる。


最新シングル「Cult of Celebrity」について、ランブリーニ・ガールズは次のように語っている。


「悪魔に魂を売り渡すという古くからの物語は、長年にわたり上流社会の伝説として語り継がれてきた。しかし、最近明るみに出た出来事によって、エリート層こそがまさに悪魔の化身であり、赤ん坊を食らう小児性愛者であることが判明した。なんてクソみたいな驚き!そもそも彼らには売るべき魂などなかった!!」 

 

彼女たちは、知性を用いて、イタリアの哲学者アントニオ・グラムシの次の言葉を引用している。「古い世界は死に、新しい世界は生まれようともがいている。今こそ、怪物の時代なのだ」

 

「Cult of Celebrity」

 

 

ロンドンのポストパンクバンド、Dry Cleaningは2026年1月上旬に4ADから発売されたアルバム『Secret Love』に続いて、単独シングル「Sliced By a Fingernail」をリリースした。意表を突く新曲で、これまであまり明らかにされてこなかったドライ・クリーニングのヘヴィネスが体現されている。それは実際的なヘヴィさというよりも、むしろ精神的な重圧を反映している。


『Secret Love』は、フローレンス・ショー、トム・ダウズ、ニック・バクストン、ルイス・メイナードによる復帰作である。『ザ・サンデー・タイムズ』、 『ガーディアン』や『MOJO』といった主要メディアから「今週/今月のアルバム」として紹介され、満点評価と共に「彼らの傑作」と讃えられた。本作はディスコ調のポストパンクサウンド「Hit My Head All Day」から、インディーフォーク調の「Let Me Grow and You'll See The Fruit」、 ジャグリーなギターとダブ風のベース、スポークンワードが融合した「Blood」など聴かせ所は多い。


ボーカルのフローレンス・ショーはこの曲の由来について次のように語っている。「 「じっと見つめられると息が詰まるような感覚。時には、自分が細かく切り刻まれているような気分になることもある。だから、花の中に隠れたり、ただの一人の見知らぬ人になって消え去りたいと想像してみた。実際、花びらに爪の跡が刻まれるイメージが、この曲の重要なインスピレーションになった。歌詞はキム・ジュヨンの絵本『Welcome to My Life』からも影響を受けている」


彼らは今月初旬からツアーを開始し、The Tubs、Search Results、Tony Bontana、Jerkclubといったバンドがヨーロッパとイギリス全土のツアーに同行する。北米での公演では、YHWH Nailgun、Snooper、Hotline TNTが一部の公演でオープニングアクトを務める。さらに、Dry Cleaningは、オーストラリアとニュージーランドでのツアー日程も追加発表した。

 

「Sliced By a Fingernail」