2024年に11カ国を巡るツアーを成功させた、日本を代表するソウルシンガーNao Yoshioka。世界各地での公演を通して進化を遂げながら、音楽の本質と向き合ってきました。


その歩みの先に生まれた最新アルバム『self』。そして今、「“self” World Tour」が始動します。


日本公演ではUSバンドとともにその世界観を体現します。舞台は、東京・LIQUIDROOM、そして地元・大阪のYogibo META VALLEY、その他の都市も今後アナウンス予定です。


繊細さと内側から溢れる強さを併せ持つヴォーカル、バンドが生み出す有機的なサウンド、そして“今のNao Yoshioka”だからこそ辿り着いた表現。彼女の表現とフィラデルフィアサウンドが融合し、ひとつの完成系として立ち上がります。


アルバム『self』からはすでに先行シングルが2曲リリースされ、今月にはネオソウル・レジェンドBilalとのコラボレーション曲のリリースが予定されています。進化を続けるNao Yoshiokaと最新アルバム『self』の現在地を、ぜひ体感してください。



You Got to Feel It feat. Bnnyhunna & Braxton Cook (Short Visualizer)



Love is What We Find (Philly Soul Sessions Ver.) 

 

▪︎Nao Yoshioka “self” World Tour

[出演]

Nao Yoshioka (Vo)

+ USバンド(メンバー後日発表予定)


東京公演

□日程:2026年10月21日(水)

□時間:OPEN 18:00 / START 19:00

□会場:LIQUIDROOM(東京都渋谷区東3-16-6)

□料金(全自由/オールスタンディング ):

・[前売券] 6,900円 + 1 drink

・[当日券] 7,400円 + 1 drink

□チケット販売:

・UTOPIA(Nao Yoshioka Membership)会員先行

 受付期間:4/1(水)18:00 ~ 4/30(木)正午12:00

・一般発売

 5/9(土)10:00〜 受付開始

 SWEET SOUL RECORDSオフィシャル販売サイト

※プレイガイド受付詳細は、近日公開いたします


▪︎東京公演チケットURL


大阪公演

□日程:2026年10月22日(木)

□時間:OPEN 18:00 / START 19:00

□会場:Yogibo META VALLEY(⼤阪府⼤阪市浪速区難波中2-11-1)

□料金(全自由/オールスタンディング ):

・[前売券] 6,500円 + 1 drink

・[当日券] 7,000円 + 1 drink

□チケット販売:

・UTOPIA(Nao Yoshioka Membership)会員先行

 受付期間:4/10(金)18:00 ~ 4/30(木)正午12:00

・一般発売

 5/9(土)10:00〜 受付開始

 SWEET SOUL RECORDSオフィシャル販売サイト

※プレイガイド受付詳細は、近日公開いたします。


▪︎大阪公演チケットURL


両公演共通

※入場順については、下記の順番で行われます。各券種ともに整理番号順でのご入場となります。

 UTOPIA(Nao Yoshioka Membership)会員先行

2. SWEET SOUL RECORDSオフィシャルサイト先行

3. eplus先行

4. SWEET SOUL RECORDSオフィシャルサイト一般販売

5. 各種プレイガイド


▪︎UTOPIA会員ページ


□主催

・SMASH

・問い合わせ : 03-3444-6751

□企画・制作

・SWEET SOUL RECORDS / LIFESOUND, INC. 

・問い合わせ:03-6416-8691(平日11:00~18:00)


海外公演情報

5月28日(木)Rams Head On Stage (US)

5月29日(金)Nublu (US)

5月30日(土)BlackRock Center for the Arts (US)


Nao Yoshioka:


単一文化が根づく日本で育ちながらその枠を越え、ニューヨークでソウルの核心に出会った。

深く響く歌声はYouTubeで500万回再生を記録し、Blue Note New York や London Jazz Cafe、Java Jazz Festival など国際的な舞台で観客を魅了してきた。

日本人として初めてBillboard UACチャート32位を獲得し、2024年には5枚目のアルバム『Flow』を携えた11カ国ツアーを成功。現在は次作の制作を進め、ソウルミュージックの新たな章へ向かっている。


キット・グリル(Kit Grill)はロンドンを拠点とするミュージシャン兼作曲家であり、彼の音楽はアンビエント、現代クラシック、実験音楽、ドローン、テクノなど多岐にわたり、映画や映像作品のための作曲・録音も手掛けている。サウンドの領域を超えて、グリルは自身のリリース作品のビジュアル・アイデンティティを自ら手掛け、アートディレクション、デザイン、写真撮影を統括している。彼はもともとチェルシー・カレッジ・オブ・アートでグラフィックデザインを学んでいたが、その後音楽の道へ転向し、現在も音楽活動と並行して写真や絵画の制作を続けている。


10年以上にわたるリリースの歴史の中で、グリルは構造、雰囲気、そして即興性のバランスを取りながら、感情を抑えつつも表現力豊かなエレクトロニック・ミュージックを創り出すことで定評を築いてきた。『Expressions』(2013年)や『Mirror Image』といった初期のリリースが彼の独特なアプローチを確立し、その後、自身のレーベル「Primary Colours」からリリースされた『Opal』、『Heat』、『Red Dances』などの作品では、アンビエントやポストパンクからテクノに至るまでの影響を受けつつ、テクスチャー、空間、リズムを探求している。


キット・グリルは、ジャック・グリーンやジェブ・ロイ・ニコルズなどのアーティストのリミックスを手がけており、彼の楽曲『Velodrome』は、ドラマー兼作曲家のトム・スキナー(The Smile、Hello Skinny)やシャバカ・ハッチングスによってカバーされている。また、プラスチック・ピープル、ヴィレッジ・アンダーグラウンド、テート・モダン - ザ・タンクス、ナショナル・ギャラリー、バービカン・センター、フリーズ・ギャラリー、ドーバー・ストリート・マーケット・ロンドンなどの会場や施設でDJやライブパフォーマンスを行っている。


レコーディングやパフォーマンスに加え、グリルは2013年よりNTSラジオで月1回の番組をホストし、先見性のある番組をキュレーションしている。ゲストには、ハニア・ラニ、カール・ストーン、ヒナコ・オオモリ、エレイン・ハウリー、カール・D・シルヴァ、オーウェン・プラットなどが名を連ねている。2009年から2011年にかけては、クリス・カーター(スロービング・グリスタル)、ヴェロニカ・ヴァシッカ、ハンス・ヨアヒム・レーデリウス、モグワイ、フューチャー・アイランズといったアーティストとのミックスやインタビューを扱うインディペンデント・プラットフォーム「ヴェッセル・ミュージック」を運営していた。


ソロ活動と並行して、グリルはカルバン・クライン、イソップ、アークテリクス、ヴァレンティノなどをクライアントに、映画・映像作品の音楽制作も手掛けている。ロンドンを拠点とするミュージシャン、作曲家であり、NTSのレジデントでもあるキット・グリルが、同名のノルウェーの島でのソロ・レジデンシーからインスピレーションを得た、傑作の新アルバム『Andøya』を発表する。アンドヤ島は、北極圏内にあるヴェステローレン諸島に位置する、極めてドラマチックな土地である。


グリルは、情感豊かで響きのあるアンビエント、ドローン、ミニマリズム、実験音楽、そして現代クラシックを織り交ぜ、この特異な地域の環境的本質を捉えている。それは、小さな海岸沿いの村々、荒々しい泥炭地、そして崇高な山脈が広がる、孤立した北欧の風景だ。島を巡る孤独な旅――ハイキング、探検、そして地元の人々との出会い――から生まれた『Andøya』は、音響現象、自然の中での孤独、独特な景観が持つ表現力を、美しくも、厳しく、そして心を揺さぶるように探求した作品である。


グリルにとって、この旅は超現実的な昼夜のサイクルを伴うものであり、その経験は彼の創作活動と世界観の両方に、広範かつ実存的な影響を与えた。


「2025年1月8日、私は北極圏にあるノルウェーのアンドヤ島へ、3週間のソロ・レジデンシーのために旅立った。海、雪、そして静寂に囲まれ、私は独りで暮らし、島中を旅して訪れた場所を記録した。太陽が地平線から顔を出したのは3週目になってからだった。午前10時になると、地平線の下から差し込む太陽の光が、その日を照らし出した。午後2時に暗闇が訪れるまでの4時間の光の間に、私は車に乗りこんで、山へハイキングに出かけ、荒野を探索し、地元の人々と出会い、その日を最大限に活用しました。それは困難でありながらも、深遠な体験であり、音や孤独、そして自然の中で一人であることの意味について、私の考え方を変えるものでした」


アンドヤ島での経験が大きなパラダイムシフトをもたらしたグリルは、その後、これらの印象を作品に注ぎ込み、独特の気候や地形を映し出すと同時に、その体験の現実に対する自身の感情的な反応を作品に込めることを目指した。


「帰国後、私は8ヶ月をかけて、あの時期にインスピレーションを得た一連の音楽作品を制作した。それは、北極圏の風景の広大さと予測不可能性を捉えた、アンビエント、現代クラシック、実験音楽の作品だった。この作品は、氷が割れる音、嵐の発生と消滅、地殻プレートの轟音、波の砕ける音、激しい風、雪の中を踏みしめる足音、凍てつく空気の鋭さといった、その環境がもたらす感覚的な極限を巡る内容です。また、風景そのものと、孤立した生活や北極の環境の中で生じた移ろいゆく感情の双方を反映することを目指しています。作品にまつわる音楽と写真は、現地での日々を記録した日記のようなものであり、その体験を一日一日と綴っています」

 


Kit Grill 『Andøya』- Primary Colours

 



キット・グリルのアルバムを紹介するのはこれが初めてとなる。ロンドンの作曲家/プロデューサー。グリルは2025年に行われたレジデンシーの一貫として、ノルウェーのアンドヤ島に滞在することになった。アンドヤ島は、ツンドラの地形が特徴で、わずかに自生する植物はあるが、農作物がほとんど育たない、まさしく北極のような地勢を思わせる場所である。キット・グリルが撮影した写真を見ると、そこは美しさもあるが、まるで地球の最果てのような地域である。雪、そして海、山岳に覆われたアンドヤ島の周りにはほとんど小型船やタンカーのような船舶しか航行していない。このような地域に滞在し、音楽を制作するというのは、かなり骨の折れる作業であったと思うのだが、また、このような冒険心に満ち溢れた体験はなかなか出来るものではない。そのため、ミュージシャン/アーティストとしては有意義な活動であったに違いない。

 

一昨年にはイタリアのエレクトロニックプロデューサー/シンセ開発者で、Passepartout Duoとして活動するニコレッタ・パヴァーリ、昨年、ポルトガルの弦楽器奏者ヘレナ・シウバの二人に聞いたところでは、アーティストレジデンシーというプログラムが存在し、レジデンシーの主催者側がアーティストをある地域に一定期間滞在させて、音楽制作を行わせることがあるという。実際の経験者の2人が語ったところでは、レジデンシーで最も重要視されるのは、それまで得られなかった体験をして、音楽的なクリエイティビティを掻き立て、実際に制作に向かうという趣旨である。

 

キット・グリルのニューアルバム『Andøya』は、自主的なレジデンシー期間に制作され、未知なる体験がテクノ/アンビエント/ドローン/モダンクラシカルとして盛り込まれている。特に、キットは、これまでのキャリアの中で映画や映像音楽の制作を手掛けていることもあってか、SE/効果音の生成に関しては、超一流である。昨今では、お手軽な効果音のバンドルがソフトウェア会社から販売されていたり、時には無料で使用することも可能なので、ゼロから効果音を制作する人も少なくなってきているが、キット・グリルはあろうことか、それらの原初的な作業をみずから行おうとしている。効果音の生成における卓越性は実際の作品に触れれば理解出来る。つまり、彼は優れた作曲家/エレクトロニックプロデューサーであるのみならず、傑出した音の開発者/技術者でもあるのだ。

 

全般的なアーティストはいざ知らず、音楽家というのは、結局、何らかの目的意識が芽生えないかぎり、潜在才能を引き出すことが難しい。目的というゴールを定めることによって、その過程や道筋を決定することが出来るようになるからである。結局、それらは委嘱作品とか、何らかの映像作品のために制作されたサウンドトラックのような端緒が見つかったとたん、アーティストに内在する潜在的な才能が輝きはじめ、そして本来の創造性が発揮されるようになる。

 

このことを明確に反映しているのが、「コンセプトアルバム」という形態である。一般的なコンセプトアルバムとしては、『A Night At The Opera』(Queen)、『Who’s Next』/『Tommy』(The Who)、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(The Beatles)、『Their Satanic Majesties Request』(The Rolling Stones)、『Pet Sounds』(Beach Boys)などが挙げられる。これらは明確なテーマのもとに制作されたアルバムである。いずれもため息の出そうな歴史的な傑作ばかりだ。

 

特定の場所や地域を題材に選んだ音楽作品は、近年ではハニヤ・ラニによるジャコメッティの映画に関するサウンドトラック『On Giacometti』(2023)、トーマス・マンの『魔の山』の舞台であるポーランド/ソコウォフスコに滞在して書かれた、Sofie Birch/Antonina Nowckaによる『Hiraeth』(2025)がある。二つの作品はともに、モダンクラシカル/実験音楽の名作である。まだ聴いたことがないという方はぜひ聴いてみてほしい。

 

実際の土地に滞在して書かれた音楽作品は、独特な空気感が存在し、ミステリアスな魅力を擁している。どうやら、その土地にしかない空気感のようなものが存在し、制作者はそれらを自らの体験を通じて掴み、作品に昇華させる。その営為自体がドキュメンタリー映画の登場人物さながらである。キット・グリルは、『Andøya』を介して、彼自身の人生を相応しい音楽により縁取っている。このアルバムは、Aphex Twin、Squarepusherに次ぐ象徴的な電子音楽のミュージシャンがようやく、ロンドンから出てきたことを示唆している。活動拠点はコーンウォールではないものの、キット・グリルの電子音楽は間違いなく、コーンウォール一派に属している。

 

『Andøya』は、何度も口酸っぱく言ってきたアンビエント/ドローンの王道の作品だ。しかし、本作は他の並み居る作品とは決定的に何かが異なる。Tho Whoのアルバムジャケットに描かれているモノリスのような音楽的支柱があり、それを中心に展開していく。一般的には、ノルウェーの滞在記をもとにしたテクノ作品として捉えられるかもしれないが、その内実はもっと奥深く、工業的なインダストリアルミュージック、ノイズ、ドローンを組み合わせた内容である。

 

Merzbowのような苛烈なノイズは出てこないけれども、空調音のような微細なノイズが通じている。一般的には不快であるはずのノイズが奇妙な心地よさに変化するポイントがある。また、風景的なサウンドスケープを的確に描いた印象派のピクチャレスクな音楽作品でもある。しかし、ハニア・ラニの『On Giacometti』のように、北欧地域の滞在を日記やドキュメンタリー風に縁取った作品であるとしても、実際の作風は驚くほど対照的である。ここでは、女性が見るもの、男性が見るものの視点が異なり、その差異が驚くほど明確に表れ出ているわけなのだ。

 

ロンドンの音楽には、ある時期、工業的なサウンドが明確に反映されていたが、キット・グリルの音楽は、その系譜を受け継いでいる。「Cottongrass」ではミニマリズムを用い、ダウンテンポのような電子音楽の手法を選び、工業的なテクノサウンドを抽出している。しかし、音による風景描写の方法が的確であり、断続的に繰り返されるパルスビートは物資を輸送するタンカーや船舶のような音のイメージを作り出す。グリルはまるで空白のプロジェクターに、象徴的なシーンを映し出して、そのシーンを少しずつ動かしていくかのようだ。

 

パルス状のビートは、一定のシークエンスを経て、音の波形のグラディエーションが変化し、異なる音域のウェイブを描く波長を次々に作り上げていく。カナダのロスシルやティム・ヘッカーのような主要なアンビエントプロデューサーが用いる手法を駆使しながら、文字通り特異な波長の揺れを生み出す。今回、アルバムの各所では、ドローンがある種のモチーフのように鳴り響き、ドビュッシーの海のテーマのように、音階的なモチーフのような働きをなしている。

 

キット・グリルは、楽曲内のSE/効果音として、工業的なアンビエンスを積極的に使用している。例えば、工場内で響く空調音のような独特なシークエンスを発生させる。「Tundra」では比較的高い音域にある工業音のシークエンスとともに、何らかの実際的なシーンが呼び覚まされ、神秘的なドローンが作り出される。しかし、ツンドラの光景を描いたと思われるシークエンスは、日頃、都市部に生活する人間にとっては、驚異的とも呼ぶべきものであったことを物語る。そのドローンミュージックは、どことなく不気味な質感を帯びる。遠くの方で、海鳴りが聞こえたり、氷塊が崩れる音がしたり、それらがミステリアスな感じで、SE/効果音で描写される。

 

なんだか恐ろしくもあり、神秘的でもある。ここには、実際に制作者が体験した自然の凄まじい驚異が見事なほど克明に記録されている。そして現実とはかけ離れたミステリアスな瞬間を制作者が直覚したことを思い起こさせる。続いて、「Cold Blow」では、Autechre、Burialのような象徴的なイギリスのプロデューサーが体現していた工業的なアンビエンスを再現し、前の曲と同じように、パンフルートのような金属的なシークエンスを使用し、広がりのある音像を作り出し、そしてノルウェーの島に訪れた吹雪の情景をテクノ音楽によって描写しようとする。描写音楽の世界は奥行きがあり、クリークが割れ、氷塊が引き裂かれたり、上空で激しい嵐が吹き荒ぶような過酷な自然環境の瞬間を、目の向こうに浮かばせるかのように鮮明に描き出す。

 

「Desolation」は、80~90年代のロンドンやマンチェスターを中心とする文化活動、Joy Divisionのようなポストパンクの文脈から始まり、その後のNew Orderのようなグループの音楽が21世紀を経てから、どのような音楽に推移していったかという結末でもある。結局、Joy Divisionにしろ、その後のNew Orderにしろ、ロックやパンクの文脈に工業的な音楽を組み込もうとしていた。


公共施設の工事現場で聞こえるようなハンマーで金属を打ち付けるようなパーカッションや無機質なマシンビートを用いたテクノとロックの融合は、結局、都市部の若者の生活を、破壊と再生という隠れたテーマを織り交ぜながら現実的な形で反映していたのだ。さらに、2000年代以降には、少しずつ形が変化していき、ゴアトランスのような苛烈なビートを用いる一派、ノイズとグリッチを用いた理数系のプログラムのサウンドを組み上げる一派、それとは対象的に、Autechreのようなデュオが「ノンビート」という概念をもたらすようになった。ジャンルが無数に枝分かれしていく中で、生み出されたアンビエント、その先にあるドローンという形式。


ここで、キット・グリルはこれらを総括するように、およそ半世紀にも及ぶ電子音楽のクロニクルのような集大成を作り上げた。「Desolation(荒廃)」という曲のタイトルに相応しい、近代以降の文明の崩壊や瓦解のような瞬間を感じさせる。ドローンミュージックとしても最高峰に位置するが、独特な不気味な音楽性には、社会情勢に対する暗示も込められているように感じる。


恐ろしい電子音楽もあるが、安らかな癒しの瞬間も存在する。「Ascending」は、ピアノを用いた雪の結晶のような曲である。ハロルド・バッドや最初期のジョン・ケージの調性音楽を彷彿とさせるサウンドがアンビエントやドローン音楽と相性が良いのはすでに証明済みである。自然味を感じさせる優しげな表情に満ちた曲であるが、ここには工業デザインのような音楽性が内在し、アンビエントを聴くときにも似た安らぎが込められている。こういった曲では、北極圏の風景の夜明けの安らぎ、人々との繋がりのような情景が音楽を通じて物語られることになる。

 

それに続く「Voices」、「Metamorphosis」は、強固なドローン音楽の形式で紡がれている。一曲目は金属的なパーカッションを用いたインダストリアルなアンビエント、二曲目は、ホラー映画やゲームサウンドを思い起こさせる効果音を中心とする存在感の薄いアンビエント。二つの曲ともにオウテカが示したノンビートの最終形態でもある。しかし、二曲を聴く上で重要なのは、音楽に備わるべき「ロゴス」とも呼ぶべき概念が備わっていることである。単に感情に訴えかえるような要素だけにとどまらず、その向こうにある領域に及んでいる。それはまた、音楽における一般的な共鳴を飛び越えて、人間の理性に響く一面を兼ね備えている。すなわち、音楽の表向きの印象だけではなく、その向こうにある何かしら奥深い領域が存在する。ここで、本来は組み立てられない概念や感覚のようなものを、制作者は秩序立てて構築していく。


言葉には出来ない概念を一定の方式によって秩序立てることが、音楽の定義であるとすれば、この2曲には、その原初的な意義が込められていると言える。混沌としていて、定義しえない現象に、何らかの秩序を付与し、それらを独自の手法で均し、意義をもたらそうとする。これは何も、実験音楽だけにとどまらず、ポピュラーやロックの歴史的な名作にも共通する内容なのである。

 

 

制作者が言う通り、北極圏の滞在の自然環境において、人間にとって過酷な瞬間もあったことが想起される。しかし、アルバムには、感情と理性というクラフトワークやノイ!が探求した音楽の主眼がバランス良く配置されている。二つの領域を繋ぐ橋となるのがピアノ曲「Ascending」「First Light」である。これらは、前衛的で難解になりがちな作風に近寄りやすさをもたらしている。それは結局、Aphex Twinがハードな感覚を持つテクノを追求した傍ら、「April 14th」で現代音楽のようなアプローチから安らぎのあるピアノ曲を制作したようなものだろう。そして、アルバムの所々に訪れる癒しの瞬間は、全般的な人の一生の要約のようでもある。山登りの後に見える壮大な風景のような凛とした安らぎが上記の二つのピアノ曲に宿っている。このアルバムには、結局のところ、自然の厳しさと優しさという両側面が垣間見られる。

 

『Andøya』は、現実的な性質を保ちつつも、霊妙な空気感に満ちている。 それが先に言った、分子/原子レベルのエーテルのようなものである。「Kaleidoscope」には北極圏のオーロラに見出されるような神秘性が込められている。効果音のスペシャリストとしてのグリルの手腕が遺憾なく発揮され、現世と異世界を繋ぐ入口や扉がドローン音楽によって作り上げられる。そこには、地上的な音楽表現を離れ、神秘的な空間への接近が見事なサウンドスケープによって描かれる。じつは、こういった効果音は、日本のゲームのBGMではありふれた手法(光田康典の『クロノ・トリガー』/鳥山明が原画)なのだが、それらを電子音楽のイディオムとして確立させたことは意義深い。

 

後半の収録曲では、イギリスのプロデューサーらしく、工業的なアンビエンスを用いた音楽が圧倒的な存在感を放ってやまない。そして、それらは終盤で、英国のコーンウォール一派のスタイルを受け継ぐ形で現れ、『Ambient Works Ⅰ/Ⅱ』をドローン音楽の形式で未来へと推し進めようとしている。

 

一曲目は工業的なアンビエント、二曲目では、エイフェックス・ツイン/スクエアプッシャーを彷彿とさせるメロディアスなダウンテンポが続く。「Adrift」の工業的なノイズのかっこよさというのは例えようがなく、他の作曲家には見出しがたい。男性的な電子音楽の領域に属するといえる。対象的に、ツンドラの荒涼とした光景に見出される自然のピクチャレスクな美しさを反映した「White Fields」もまた、昨今の電子音楽では傑出した内容だ。さらに後者に見出される、音楽における安やぎや癒しが、アルバムの副次的なハイライトになりえる。

 

近年、Loraine James、Andy Stottのようなプロデューサーを除いては、イギリスの電子音楽の工業的な響きが失われつつある。 それは結局のところ、第二次産業革命の中心地であったイギリスの産業が近代以降の役割を終え、次のテーマであるITテクノロジーの音楽に移ろいつつあることを伺わせる。しかしながら、今回、キット・グリルの音楽には、Killing Joke、Throbbing Gristle、Crassのようなポストパンクの前衛的なグループに内在した、''インダストリアルなアンビエンス''が見事なまでに蘇っている。ポストパンクというのは、アートの未知の領域や可能性を探るものである。ここには、詩や言葉による前衛性やリズムの創意工夫こそ目に見える形で存在しないが、「工業の音楽」としての響きが多分に含まれる。このことに大きな感動を覚えた。


結局、北極圏の島に滞在したことにより、大型のタンカーや船舶の航行やクレーンが積荷を下ろすような光景がキット・グリルの音楽の根底に工業性を呼び起こしたのだろうか。これは今回の自主的なソロレジデンシー自体が、予想以上の効能をもたらした証だ。しかし、少なくとも、精神的にタフな人でなければ、過酷な環境に耐えきれず、早々に現地から引き揚げたかもしれない。清濁併せ呑むというべきなのか、ノイズとサイレンスが共存する稀有な作品である。こういったアルバムを聴くと、P.I.L(ジョン・ライドン)の『Metal Box』(1979)には、時代を先駆ける予言性があったことがわかる。本作は電子音楽が中心だが、メタルやパンクとも陸続きにある作品だ。

 

 

95/100

 

 

 

 

・キュー!!!!! 今年も BABY Q 金沢場所の開催が決定!

 

2019年に神戸・ワールド記念ホールと東京・両国国技館で初開催したインドア・フェス「Q(キュー)」から派生した、弾き語り形式の回遊イベント「BABY Q」。一昨年、昨年に続き、今年も金沢での開催が決定しました。会場は金沢400年記念事業として1982年に開館し『公共建築100選』にも選ばれている金沢市文化ホール。金沢市民が誇る最高のホールで、最高の弾き語りコンサートをお楽しみください。

 

※令和6年能登半島地震・豪雨により被害を受けられた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。本公演の売上金の一部は被災地への義援金として寄付させていただきます。

 



矢野顕子

 

青葉市子

長岡亮介

■公演概要

公演名:BABY Q 金沢場所 <ベイビー・キュー・カナザワバショ>

 

日程:2026年8月9日(日)

会場:石川・金沢市文化ホール

開場16:30 / 開演17:30

 

出演:

青葉市子

長岡亮介

矢野顕子

 

入場券:全席指定¥8,000(税込)

※未就学児童入場不可。

 

■チケット先行受付

受付期間:4/9(木)19:00〜4/19(日)23:59

受付URL:https://eplus.jp/babyq-kanazawa/

※抽選受付。

 

チケット一般発売日:未定

 

■お問い合わせ:

FOB金沢【http://www.fobkikaku.co.jp】 076-232-2424

 

■主催:Q実行委員会

企画制作:TONE / FOB企画

 

■オフィシャルサイト

https://day-off.today(今日はお休み!)

 

■これまでの「Q」

□BABY Q 金沢場所(2025)※完売御礼!

8/2(土)@石川・金沢市文化ホール

出演:折坂悠太 / 岸田繁(くるり)/ 向井秀徳アコースティック&エレクトリック

https://day-off.today/kanazawa2025/

 

□BABY Q 金沢場所(2024)※完売御礼!

8/3(土)@石川・金沢市文化ホール

出演:EGO-WRAPPIN’ (Acoustic Set) / TENDRE / ハナレグミ

https://day-off.today/kanazawa2024/

 

□BABY Q 沖縄場所(2024)

6/1(土),2(日)@沖縄・ミュージックタウン音市場

第一夜 出演:折坂悠太 / 向井秀徳アコースティック&エレクトリック

第二夜 出演:青葉市子 / 岸田繁 (くるり)

https://day-off.today/okinawa2024/

 

□BABY Q 名古屋場所(2024)

3/29(金)@東京・名古屋市公会堂 大ホール

出演:青葉市子 / 岸田繁 (くるり) / 君島大空 / 曽我部恵一

https://day-off.today/nagoya2024/

 

□忘年Q(2023)

12/27(水)@東京・恵比寿ザ・ガーデンホール

出演:ASOUND / cero / Ovall / SPECIAL OTHERS

https://day-off.today/yearendq2023/

 

□BABY Q 東京場所(2023)※両公演とも完売御礼!

7/12(水),13(木)@東京・浅草公会堂 大ホール

第一夜 出演:岸田繁 (くるり) / 曽我部恵一

第二夜 出演:EGO-WRAPPIN’ (Acoustic Set) / 向井秀徳アコースティック&エレクトリック

https://day-off.today/tokyo2023/

 

□BABY Q 九州場所(2022)

12/23(金)@福岡・福岡市民会館

出演:岸田繁 (くるり) / ハナレグミ / 向井秀徳アコースティック&エレクトリック

https://day-off.today/kyushu2022/

 

□BABY Q(2022)※両公演とも完売御礼!

<横浜場所> 8/12(金)@神奈川・神奈川県民ホール 大ホール

出演:大橋トリオ / ハナレグミ / 矢野顕子

<大阪場所> 9/3(土)@大阪・大阪市中央公会堂 大集会室

出演:大橋トリオ / KIRINJI / 矢野顕子

https://day-off.today/babyq2022/

 

□BETA Q(2022)

5/20(金),21(土)@中野サンプラザホール

FRIDAY NIGHT 出演:D.A.N. / Tempalay

SATURDAY NIGHT 出演:TESTSET(砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一) / ZAZEN BOYS

https://day-off.today/betaq2022/

 

□BABY Q in EZO(2022)※完売御礼!

1/9(日)@札幌ペニーレーン24

出演:加藤修平 / 長岡亮介 / 向井秀徳アコースティック&エレクトリック

https://day-off.today/sapporo2022/

 

□BABY Q 広島場所(2021)

12/15(水),16(木)@広島クラブクアトロ

第一夜 出演:Kan Sano / 塩塚モエカ / 田島貴男(Original Love) / TENDRE

第二夜 出演:安部勇磨 / 中納良恵 / 原田郁子 / 向井秀徳アコースティック&エレクトリック

https://day-off.today/hiroshima2021/

 

□BABY Q 納涼祭(2021)

<東京場所> 8/12(木),13(金)@東京・恵比寿ザ・ガーデンホール

第一夜 出演:塩塚モエカ / TENDRE / 長岡亮介 / 向井秀徳アコースティック&エレクトリック

第二夜 出演:安部勇磨 / Kan Sano / 中納良恵 / 原田郁子

<大阪場所> 8/26(木),27(金)@大阪・なんばHatch

第一夜 出演:安部勇磨 / 塩塚モエカ / 長岡亮介 / 向井秀徳アコースティック&エレクトリック

第二夜 出演:Kan Sano / TENDRE / ハナレグミ / 堀込泰行

https://day-off.today/babyq2021/

 

□COUNTDOWN Q(2019)

12/31(火)@東京・恵比寿ザ・ガーデンホール

出演:EYE(DJ) / OOIOO / OL Killer(DJ) / グッドラックヘイワ / 砂原良徳(DJ) / cero / toe / LITTLE CREATURES

https://day-off.today/cdq1920/

 

□Q(2019)

<神戸場所> 3/31(日)@神戸・ワールド記念ホール

<東京場所> 4/14(日)@東京・両国国技館

出演:クラムボン / GODIEGO / Cornelius / never young beach / ハナレグミ / ペトロールズ

https://day-off.today/2019/

【冥丁『瑪瑙』発売記念巡演 2026】


国際的評価を得るエレクトロニック・ミュージック・アーティスト冥丁が、4月17日発売の新作アルバム『瑪瑙』を携え、和歌山・和歌山城と前橋・三夜沢赤城神社にて発売記念巡演を開催いたします。


多様な場所での演奏を重ねる中で変化してきた『古風』三部作の楽曲構造や時間感覚を再編・追伸し辿り着いた『瑪瑙』。紀州徳川家の居城として知られる和歌山城、そして赤城山の山腹に鎮座する三夜沢赤城神社という由緒ある空間を舞台に、その響きへと没入する感覚をかたちにした、特別な音像体験が披露されます。ぜひこの貴重な機会にご体感ください。

  

【前橋公演】「赤城 夜神楽」

■開催日:2026年5月16日(土)

■会場:三夜沢赤城神社 境内(野外)

■住所 : 群馬県前橋市三夜沢町114

■時間 : 開場 18:00 ・御祈祷 18:30 ・開演 18:44(日の入り)(終演 20:00-20:30頃)

■初穂料:¥10,000(お守り・お茶・お茶請けの振る舞い付)※当日券の販売は未定。

■出演:冥丁

■振る舞い:RAVE ESTATE(お茶)・ヤマノタミ / yamano food labo(お茶請け)

■チケット販売:Peatix <4月11日 10:00より販売開始>

■主催・お問い合わせ:SOWA DELIGHT  (TEL 027-266-6711 担当:今井・中里)

■協力:三夜沢赤城神社


【和歌山公演】

■開催日:2026年5月24日(日)

■会場:和歌山城 天守閣 中庭(野外)※天候により天守閣室内での開催。

■住所:和歌山県和歌山市一番丁3

■時間:開場 18:00・開演 19:00(終演 20:00-20:30頃)

■料金:6000円(天守閣入場料込)※当日券の販売は未定。

■出演:冥丁

■チケット販売:Pass Market <4月11日10:00より販売開始>

※和歌山城へのお問合せはご遠慮下さい

■お問合せ:お還りなさい E-MAIL : okaeri.info@gmail.com

■主催:お還りなさい、中谷一陽


Tour Poster Design : Ricks Ang(KITCHEN. LABEL)


ツアー情報まとめウェブサイト:

https://www.inpartmaint.com/site/42601/




【冥丁『瑪瑙』アルバム情報】

Artwork © MEITEI, Traffic


発売日 : 2026年4月17日(金)

アーテ ィスト:冥丁(めいてい)

タイトル : 瑪瑙(めのう)

レーベル:KITCHEN. LABEL

流通 : Inpartmaint Inc.

 

フォーマット①国内流通盤CD

本体価格 :¥3,200(税抜)/ ¥3,520 (税込)

フォーマット②国内流通盤LP(*180g重量盤アナログ)

本体価格 : ¥5,400円(税抜)/ ¥5,940(税込)

フォーマット③ : デジタル配信

 

◼収録曲

1.覇王 (未発表新曲)

2.新花魁 (古風 2020年「花魁Ⅰ」再編成)

3.新貞奴 (古風 2020年「貞奴」再編成)

4.新和蝋燭 (古風Ⅲ 2023年「和蝋燭」再編成)

5.旧劇 (古風Ⅱ 2021年「忍」 「黒澤明」再編成)

6.新花魁Ⅱ (古風 2020年「花魁Ⅱ」再編成)

7.新江戸川乱歩 (古風Ⅲ 2023年「江戸川乱歩」再編成)

 


▪︎先行シングル第1弾「新花魁」ストリーミング配信中

https://kitchenlabel.lnk.to/52P3moDM

▪︎先行シングル第1弾「新花魁」ミュージックビデオ公開中

https://youtu.be/HE3cKoq8Q0o?si=w5tUH_T9RyHx7v_d

▪︎先行シングル第2弾「新和蝋燭」ストリーミング配信中

https://kitchenlabel.lnk.to/MUl4LF9C


国際的評価を集めるエレクトロニック・ミュージック・アーテ ィスト、冥丁 が最新アルバム『瑪瑙』を発表する。

 

2020年から2023年にかけて発表された三部作『古風』において、彼は“自明でありながらも幽微な存在として漂う日本”の印象を「失日本」と名付け、日本文化から失われつつある感覚や記憶を現代的な感性で再構築してきた。 『瑪瑙』は、 『古風』を追伸し、進化させた作品であ

る。

 

長い時間をかけて層を成し、圧力と沈殿を経て形成される鉱物・瑪瑙の生成過程を音楽的思考の比喩とし、粒子が積み重なり、層をなし、やがてひとつの質感となるように、冥丁は過去の作品と向き合い続けてきた。

 

本作には『古風』三部作の楽曲を再構築・拡張した作品群に加え、新曲も収録。日本・欧州・アジアを巡るツアーの中で、ライブハウスや文化財、歴史的建造物など多様な空間で演奏を重ねる中で変化し続けた楽曲の構造や時間感覚が、再編成され、現在の冥丁の視座から再提示さ

れている。環境によって息遣いを変え、佇まいを変え、時間の流れと共に革新してきた音。それらの堆積が本作には刻まれている。

 

20代の頃より京都に身を置き、夜の路地や寺社仏閣、池に浮かぶ月影、暮らしの奥に潜む気配を見つめてきた冥定にとって、日本とは単なる固定された様式ではなく、辺りを漂い続ける印象であった。そこで得た着想を「失日本」と名付け、誰もが感じる言葉にならない繊細な感覚を音として提示してきた。

 

『古風』三部作は、民俗、怪談、演劇、忘却された都市の記憶といった断片を素材としながら、単なる歴史の再現ではなく、現在から過去を見つめ直す行為でもあった。 『瑪瑙』では、その視線がさらに内側へと向かう。過去を参照するのではなく、過去を抱えながら今を前進する姿勢が明確になる。朽ちゆく音の層を漂う声、非伝統的に用いられる古楽器、明確な終止を持たない旋律。そこには、日本的感性を問い続けてきた冥丁の現在地がある。

 

本作のジャケット原画は、京都・西陣の唐紙工房「かみ添」による京唐紙作品を基に制作。タイトルの書は台湾人アーテ ィストBio Xieによるもの。ライナー写真は、前作『泉涌』でも撮影を手がけた岡本裕志が担当。冬の海や断崖の風景が、広島で過ごした十年間の内面的な葛藤

を象徴している。マスタリングはKelly Hibbertが担当。

 

『瑪瑙』は、「失日本」という視点を掲げ続けてきた冥丁が、さまざまな経験を重ねた先に見出す現在の姿。それは、時間の堆積の中から立ち上がる、新たな音楽の結晶である。

 

 

【冥丁(めいてい)プロフィール】

 


冥丁は、“自明でありながらも幽微な存在として漂う日本”(誰もが感じる言葉では言い表せない繊細な日本)の印象を「失日本」と名付け、日本を主題とした独自の音楽表現を展開する、広島 尾道出身・京都在住のアーティストである。現代的なサウンドテクニックと日本古来の印象を融合させた、私的でコンセプチュアルな音楽表現を特徴とする。


『怪談』『小町』『古風(Part I, II, III)』からなる三部作シリーズを発表し、その独自性は国際的に高く評価されている。The WireやPitchforkなどの海外主要音楽メディアからも注目を集め、冥丁は近年のエレクトロニック・ミュージックにおける特異な存在として確立された。音楽作品の発表だけにとどまらず、国際的ブランドや文化的プロジェクトのための楽曲制作に加え、国内外における公演活動や音楽フェスティバルへの出演、ヨーロッパやアジアでのツアーを通じて活動の幅を広げてきた。


さらに近年は、寺院や文化財、歴史的建造物といった空間での単独公演へと表現の場を拡げ、日本的感性と現代的表現の新時代を見いだし続けている。


この度、イギリスの出版社「MACK(マック)」は、東京・西亀有「SKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)」にてニューヨークを拠点に活動するアーティスト、Daniel Shea(ダニエル・シェア)のトークを開催いたします。本企画は2025年にイギリスの出版社「MACK」から刊行された氏の新刊『DISTRIBUTION』の刊行に付随するものとなります。


「森」を起点に1人のアメリカ人の女性像を経て人々の集団、都市へと展開していく様を作品集のシークエンスという形で表現している本作を、写真家でありスペース「IACK」を運営する河野幸人との対話で辿っていきます。トーク開催後には、『DISTRIBUTION』のサイン会も実施いたします。


DISTRIBUTION by Daniel Shea




¥18,700 (tax incl.)

hardcover / 392 pages / 215 x 270 mm / color, black and white

2025, MACK 

Daniel Shea & Yukihito Kono | DISTRIBUTION - Talk & Book Signing

日程:2026年4月18日(土)

時間:トーク | 14:00-16:00 / サイン会 | 16:00-17:00

会場:SKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)

住所:東京都葛飾区西亀有3-26-4

参加費:無料

トークショーチケット:予約はこちらから

*英→日 通訳あり


登壇:ダニエル・シェア(アーティスト)、河野幸人(IACK主宰、写真家)

サイン会対象書籍:『DISTRIBUTION』(2025年 MACK刊)

主催:twelvebooks

協力:MACK、SKWAT

 

・登壇者プロフィール

ダニエル・シェア | Daniel Shea


アーティスト。ニューヨークを拠点に活動。2025年に「MACK」より写真集『Distribution』を刊行。これまでに『43-35 10THE STREET』(2018, KODOJI PRESS)、『EX NIHILO』(2019, IN OTHER WORDS)などの作品集、「ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展(Venice Biennale of Architecture)」内アメリカ館や「FOAM写真美術館(FOAM Amsterdam)」、シカゴの「現代写真美術館(The Museum of Contemporary Photography, Chicago)」など、展覧会を開催、国際的に活動を行ってきた。

また、作品は『The New Yorker』、『Frieze』、『Fantastic Man』などの雑誌にも掲載されている。

ニューヨーク・シラキュースの「ライト・ワーク(Light Work)」にてアーティスト・イン・レジデンスを経験している。


河野幸人 | Yukihito Kono


1989年生まれ、石川県金沢市在住。2011年に渡英し、ロンドン芸術大学ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーションのファインアート・フォトグラフィー修士課程を修了。

文学と芸術を異なる地で学んだ彼の作品は、繊細な選択と大胆な偶然性の受容の果てに形成されており、写真の伝統に根差しながらも、ジャンルや時代の垣根を超えた思索に開かれている。社会におけるイメージの機能を問い続けながら、多数のアーティストブックとインスタレーション作品を発表してきた。

2017年には「開かれた書斎」というコンセプトのもと、アトリエ兼ギャラリー&ブックショップのIACKを金沢市にオープンした。


坂本龍一が生前にその才能を見込んでいた音楽プロデューサー、avexに所属する小山絵里奈のサウンドトラックがドラマ放送開始から数日遅れで配信開始となった。


サウンドトラックに収録されている全21曲はNHK BS 4Kで4月5日から放映中のプレミアムドラマ「対決」内で使用されている。


「対決」は社会派のテーマを盛り込んだエンタメドラマ。詳細と制作者のコメント、及びドラマのシナリオは以下の通り。楽曲は配信リンクよりご視聴下さい。また、ドラマの放映も合わせて確認していただきたい。



▪︎小山絵里奈「プレミアムドラマ「対決」オリジナル・サウンドトラック」



コヤマエリナ「プレミアムドラマ タイケツ オリジナル サウンドトラック」Erina Koyama「Premium Drama Taiketsu (Original Soundtrack)」

Digital (UPC : 4580789759611) | DDCB-12802 | 2026.04.08 Release | Released by SPACE SHOWER MUSIC


配信URL:

[ https://ssm.lnk.to/Taiketsu ]


2026年4月5日(日) 放送スタート!プレミアムドラマ「対決」のサウンドトラック。音楽、小山絵里奈 。ピアノを主体に多重コーラスやユニークな組立てのチェロデュオなどリアルに鮮やかに彩った21曲を収録。


01 対決 タイケツ Confrontation

02 交差 コウサ Crossing Lines

03 冥緒 メイショ Dark Prelude

04 景濁 ケイダク Tainted Horizon (Vc : 西方正輝)

05 綴環 テイカン  Woven Circle (Vocal : Melody Chubak)

06 絲口 イトグチ First Thread (Harp : 宮本あゆみ)

07 不磨 フマ Unpolished Truth (Vn, Vla, Vc : aaaaaaaaaalmond)

08 探求 タンキュウ Seeking (Guitar : 和泉聡志)

09 波及 ハキュウ Ripple Effect

10 玄端 ゲンタン  Obscure Origin

11 灯声 トウセイ  Luminous Echo (Vocal : Melody Chubak)

12 楕円 ダエン Ellipse

13 解測 カイソク Measured Unraveling

14 鏡像 キョウゾウ Reflection

15 光風 コウフウ  Wind of Light (Guitar : 和泉聡志)

16 素顔 スガオ Bare Face

17 沈紗 チンシャ  Veil of Stillness

18 逡巡 シュンジュン Hesitation

19 迷縺 メイレン  Entangled Drift

20 心和 シンワ Inner Harmony

21 再航 サイコウ  Set Sail Again (Vn, Vla, Vc : aaaaaaaaaalmond)


Recording Engineer : 小山絵里奈

T.04 Recording Engineer : 椎葉爽

Mix Engineer : 岡部潔

T.04, 19 Mix Engineer : 小山絵里奈

Mastering Engineer : 木村健太郎


Producer(音楽監修): yamanoneko

Total Production & Programming : 小山絵里奈


・制作者のコメント

このドラマは、静かな怒りと深い祈りが交差する物語でした。

ままならない現実の中で、差別や葛藤と向き合いながら、それでも誰かの未来を守ろうとする、そんな二人の主人公の“対決”の姿に、私は、音楽で寄り添いたいと思いました。

母と娘、記者と理事、そして過去と今。それぞれの選択が交差する瞬間に、言葉にならない彼女たちの思いを、そっと音楽で伝えたい。

私自身も母であり、女性として社会と向き合ってきました。

だからこそ、この作品に込められた痛みと希望を、音楽でそっと包み込みたかった。

視聴者の皆さんが、登場人物たちの声なき声に耳を澄ませてくださることを願っています。 ーー小山絵里奈




小山絵里奈:


「小山絵里奈の音楽を初めて耳にした時、そのユニークな才能にぶっ飛んだ」──坂本龍一。

初めて制作した楽曲が坂本龍一氏の耳に留まり、 同氏のエグゼクティブ・プロデュースによりavexからデビュー。これまでに3枚のアルバムと、世界配信されたオリジナル・コンパイル作品を発表。独立後は劇伴作曲家としても多くの作品を手がけ、現在も映像作品への楽曲提供を続けている。



プレミアムドラマ「対決」



【放送予定】[BSプレミアム4K][BS] 2026年4月5日(日)スタート

毎週日曜 夜10時~10時45分(全5話)


【あらすじ】

ある医大が入試の採点過程で女子の点数を意図的に下げている。衝撃的な「噂(うわさ)」を耳にした新聞記者の檜葉菊乃(松本若菜)は、独自の調査を始め、医大の理事である神林晴海(鈴木保奈美)に目をつける。巧みに追及をかわす神林だが、突破口はそこしかないと考え、檜葉は粘り強く核心へと迫っていく。男性優位の社会で、無数の理不尽に直面してきた二人。それぞれの信念がぶつかり合い、敵対せざるをえない彼女たちの闘いの行方は、予想もしない展開を迎えるー


幸せを願い、理不尽に立ち向かう女性たちを描く社会派エンターテインメントをお届けします!


【原作】月村了衛

【脚本】渡邉真子

【音楽】小山絵里奈

【主題歌】『ひと匙』 ヒグチアイ

【演出】池田千尋 小菅規照

【出演】松本若菜 豊嶋花 大倉孝二 大原櫻子 山中崇 前野朋哉 濱尾ノリタカ

    /石坂浩二・渡辺いっけい 高畑淳子 鈴木保奈美 ほか

【制作統括】黒沢淳(テレパック) 熊野律時(NHK)

 Arlo Parks 『Ambiguous Desire』

 

Label: Transgressive

Release: 2026年4月3日

 

Review


 

およそ3年ぶりとなるアーロ・パークスのアルバム『Ambigious Desire(あいまいな欲望)』 は、先週のベストアルバムの一つ。ロンドンからロサンゼルスに活動拠点を移動し、従来のインディーポップの音楽性に、プラスの要素をもたらしたのが『Ambigious Desire』 である。依然として、甘酸っぱいアルトポップソングを主体にしているが、今回の最新作では、LAのトレンドであるビートシーンの影響を受けてか、ダンサンブルなポップソングを志向しているように感じられた。


メロディアスな一面もあるが、ビート全体に体を委ねて聴く、あるいは楽しむようなアルバムとなっている。また、そこには、Dirty Hitに所属するパークスの友人であるKelly Lee Owensの影響を受けてか、ロンドンのガラージのようなダンスミュージックスタイルを織り込んでいる。

 

 『My Soft Machine』で基本的なアルトポップのスタイルはひとまずやり終えたと思ったのだろう。また、アーロ・パークスは日常的にクラブシーンに接することが多いためか、やはり現地の音楽を作風に取り入れようとするのは自然なことのように思える。パークスは現在の音楽に興味があるようで、過去の音楽にはそれほど興味は薄い。しかし、ロンドンの音楽に対する愛着もまだ残されている。それは特にアルバムの後半の曲で、ブレイクビーツという形で登場する。Wu-Luを彷彿とさせるヒップホップ仕込みの強烈なブレイクビーツがメロディアスなアルトポップソングと融合している。これは意外と誰かがやっていそうでやらなかった内容だ。また、作曲面でも技術が向上しており、Abletonを使用した打ち込みのサウンドはその象徴となる。

 

しかし、アーロ・パークスらしさが薄れたかと言えばそうではない。アルバムの冒頭を飾る「Blue Disco」はその象徴で、現代的なテクノとアルトポップの形が合致した、心地よい一曲だ。特に前作よりもキックの音を強調しながら、グルーヴ感を追求し、その中で、甘い感じのボーカルのメロディが歌われる。この曲を聴いて思うのは、どうやらアーロ・パークスには音楽的な美学があるらしく、もちろん自分なりの理想を体現しつつ、ポピュラーなサウンドを制作している。 実際的にこのオープニング曲は素晴らしく、80年代のシンセ・ポップが2020年代のサウンドに変化すると、どのようになるのかを示した好例である。オシレーターを使用したシンセがアトモスフェリックな音像を作り出し、やはりツボを捉えた良いボーカルが響く。また、ニュートラルなサウンドが目立った前作であったが、ベースラインを強調した立体的なサウンドを聴くことが出来る。このあたりにもアーロ・パークスの作曲の成長が伺える。その中で強調されるのは、ロサンゼルスのクラブシーンに触発された多幸感のある旋律である。しかし、それは真夜中のクラブのように、ぼんやりとしていて、淡い感覚に満ちている。それは結局、パークスにとってクラブというものが、暮らしの中の癒しであることを示唆する。


「Blue Disco」

 



また、アーロ・パークスは最新作において、民族音楽のようなワイルドなビートを織り交ぜる。これが果たしてタイラー・ザ・クリエイターの最新作に触発されたものなのかは定かではない。しかし、アグレッシヴなアフロビートを用いた「Jetta」はワイルドな感じもありつつ、スタイリッシュな感覚も維持されている。この曲にはLAのビートシーンからの影響と、ジェフリー・パラダイスに象徴されるようなチルウェイブやチルアウトからの影響を織り交ぜ、最適解を汲み出している。


そのサウンドは、ロサンゼルスの海岸筋の光景を思わせ、Ninja Tuneに代表されるような、しなやかでフレッシュな質感を持つダンスビートと融合している。結局は、ロサンゼルスのダンスミュージックとロンドンのガラージのような二つの地域のEDMが融合したサウンドが組み上がる。続く「Get Go」も同様のサウンドで、アップテンポなビートと張りのあるネオソウルのサウンドが見事に混ざり合い、爽快感があり、アグレッシブなダンスポップソングが展開される。

 

アーロ・パークスはやはり実際のミュージックシーンの体験者ということもあって、ロンドンとLAのサウンドを見事にクロスオーバーし、一瞬にしてロスに、そして一瞬にしてロンドンへとひとっ飛びする。ネオソウルの色合いが一番強まるのが、ロイル・カーナー、ROMYなどのコラボレーターとして知られるSamphaが参加した「Senses」である。


従来よりもキックの音を押し出した重厚なダンスビートをもとに、ロンドンのリアルなネオソウルのサウンドが展開される。こういった曲を聴くとつくづく思うのは、楽曲から醸し出されるシンガーとしての雰囲気とか、歌そのものに宿るツヤのようなものが存在し、それは現地に行って聴かないと分からないのかもしれない。


アーロ・パークスは音楽のリアリティをよく知っていて、実際に現地で鳴っているサウンドをこの曲で再現させる。サンファのボーカルは最後の方で登場するが、すでにご承知の方も多いように、彼のボーカルは曲そのものに癒しを与え、曲全体を均すようなパワーがある。全体的に多少アンバランスな曲だとしても、サンファがソウルフルに歌うと、なぜかまとまりがつき、仕上がってしまう。これはとても不思議な現象であり、サンファ現象ともいうべきものだろう。

 

「Heaven」ではブレイクビーツとアルトポップの中間にあるサウンドを捉えられる。しかし、依然としてアーロ・パークスのボーカルは背景となる強固なダンスビートに上手く融和している。そしてその独特なムードの中に、 甘酸っぱい感じのするボーカルを付け加える。特に、この曲では、サブウーファーの低音域を強調されるサブベースが上部のボーカルメロディと鮮やかな対比をなしている。実際のクラブフロアで聴いて映えるような曲作りを志しているようだ。

 

結果的に、UKベースラインのようなアクの強い玄人好みのダンスミュージックが生み出された。これはまた、単なる録音作品というよりも、ライブシーンを意識した楽曲になっている。また、アシッド・ハウスのようなサウンドを反復する中で、エレキピアノを用いて繊細なサウンドを織り交ぜたりもする。実に依然よりも多角的なダンスミュージック/ポップが展開される。こうした中で、ヒップホップとアルトポップの中間にある「Beams」では、曲の後半部で良いボーカルメロディーが見いだせる。しかし、それらは単独の歌手としてではなく、背景のダンスビート/ヒップホップのトラックと上手く連動するような形でハイライトとなる瞬間が出てくる。

 

また、前作よりも音楽的な引き出しが多くなり、このアルバムの全体的な水準の底上げにも繋がっている。「South Seconds」ではベッドルームポップを下地に、アーティストとしては珍しく、インディーフォークソングに傾倒している。従来はアーロ・パークスはネオソウルとアルトポップの中間にいると思っていたのだが、これは予想外だった。また、実際的にこの曲は短いレングスでありながら、かなり良い線を行っていると思った。ローファイなサウンドから、内省的なパークスのボーカルが心地よい空気感を生み出している。それは、このアルバムの副題とも言える”雰囲気のあるポップソング”という制作の意図を読み解くことも出来る。実際的にこの曲は、アルバムの中盤の癒しとなるセクションで、パークスらしい心地よい旋律が美麗な空気感を作り出している。この曲にもまた、制作者の美学が淡く映し出されていると言える。

 

再びダンスミュージックに返り咲く「Nightswimming」では私生活の楽しみのような瞬間を切り取り、それらをリアルなサウンドに落とし込んでいる。イビサ風の精細感のあるハウス・ミュージックはケリー・リー・オーウェンズにも通じるものがあるが、やはりパークスはボーカルの旋律的な甘酸っぱさをなおざりにすることはない。リズムとメロディの両側面がかっちりとハマり、体を揺らしても、聞き入っても楽しい、一挙両得のサウンドが作り上げられる。特にアルバム全般に言えることだと思うが、リズムに乗れる瞬間を上手く引き出す。それは海の波乗りのようなもので、新しいパークスのソングライターとしての手腕が示された瞬間でもある。

 

ロサンゼルスのモダンなダンスポップミュージックを反映させた「2SIDEDED」も良曲で、聴き逃がせない。健康的な雰囲気のある一曲で、パーティ志向の充実した人生への渇望のようなものが描かれる。こういった曲が出てきたのも、現地のポップソングの妙味を知り得たからなのだろう。実際的に、このアルバムの最も心楽しい瞬間を作り出すことに成功している。特にこの曲では、ビートの良さもさることながら、シンセサイザーが見事なボーカルとの対比を描く。 

 

アルバムの終盤の収録曲はトラック制作の面で相当な力の入れよう。「What If I Say It?」はガラージのようなダンスミュージックを主体にしたイントロがヒップホップのビートと融合している。TRICKYを彷彿とさせるトリップホップのようなイントロから、やはりパークスはアルトポップソングの作曲経験を活かしながら、良いボーカルメロディーを引き出そうとする。サビ/コーラスの箇所では、単なる多幸感を越えた天上的な空気感が出てくることもある。こういった地上的なサウンドにとどまらず、高らかなポップソングを書こうとしている気配も感じられる。

 

3年前、アーロ・パークスの曲を良いと感じたのは、融和のような精神が根底にあるからである。それは最新作でも共通していて、現代ポップシーンの癒しとなることは必須である。しかし、野心的な趣を持つ最終曲「Floette」は何を物語らんとするのか。これはおそらく、アーロ・パークスという飽くなき音の探求者が次のステップへと向かいつつある兆候でもあるのだろう。

 

 

85/100

 

 

 

 

「South Seconds」- Best Track

 

 

 

▪Arlo Parks 『Ambiguous Desire』Stream :  https://arloparks.ffm.to/ambiguousdesire


 

パキスタン系アメリカ人の作曲家、カシム・ナクヴィ(Qasim Naqvi)は、昨年のアルバム『Endling』に続き、その続編となる18分間のオーケストラ作品『God Docks at Death Harbor』をErased Tapesからリリースした。2025年のアルバム『Endling』はMUSIC TRIBUNEのベストアルバムに選出。

 

前作ではSFの世界観をもとに壮大な交響曲のような趣のあるテクノ作品をリリースした。最新シングルでもこの音楽性は引き継がれている。

 

「Death Harbor」は前作のアルバムの重要なヒントとなった概念で、それは彼の妻が授けたインスピレーションでもある。すでに前年のアルバムで、ナクヴィは中東の動乱を音楽により予見していたと言える。しかしながら、対象的にナクヴィの音楽は世界に平和の概念を示すものである。

 

本楽曲は、BBCコンサートオーケストラによって演奏され、同作曲家にとって初のオーケストラ作品となる。音楽としてはアンビエントとオーケストラが融合したようなシネマティックな作風である。楽曲の背景となるアンビエンスに対して、ホーン、ベル、ストリングス、ティンパニが錯綜し、ジャンルを超越した啓示的な音楽が展開される。BBC交響楽団らしい硬質で迫力満点の演奏を楽しむことが出来る。音質的なクリアさに関してはErased Tapesの録音技術の功績だろう。

 

カシム・ナクヴィはこの新曲に関して、次のように語る。

 

「当初、この作品は人類の終焉と新たな始まりをテーマとしていましたが、時が経つにつれ、その想いが逆転したように感じています。今や、この音楽は、私たちが生き残り、思いやりを持ち、乗り越えられないと感じるような専制的な力と戦うことについて描いているのです。この作品の意味が変化し、時代に合わせて適応していく様子を見るのはかなり興味深いことでした」

 

「God Docks at Death Harbor」


Hedigan's、Gliderのギタリストとして活躍してきた栗田将治のソロ・プロジェクト【Merchant(マーチャント)】。一人でバンド・フィーリング溢れるサウンドを作る「一人多重録音」をコンセプトに全て生演奏による、敬愛する数々のギターヒーローたちに影響を受けて作った、エレキギター炸裂のアルバム「STARBERRY DAYS」が本日リリース。


歪んだノイジーなギターとグッド・メロディ、ハーモニーが共存したヴィンテージ・パワーポップ作。


▪︎EN

Merchant, the solo project of Masaharu Kurita, guitarist of Hedigan's and Glider. 

An electric guitar-driven album, ‘STARBERRY DAYS’ is released today. created through the concept of ‘one-man multi-tracking’ – crafting a band-like sound solo – entirely performed live, influenced by numerous revered guitar heroes.

A vintage power pop work where distorted, noisy guitars coexist with good melodies and harmonies.


Merchant「STARBERRY DAYS」



Digital | KYK0005 | 2026.04.08 Releases

Released by KEYAKI RECORDS / IDL

[ https://ssm.lnk.to/STARBERRY_DAYS ]


Hedigan's、Gliderのギタリスト栗田将治のソロ・プロジェクト【Merchant(マーチャント)】。

一人でバンド・フィーリング溢れるサウンドを作る「一人多重録音」をコンセプトに全て生演奏による、「Teenage Fanclub」「Dinosaur Jr.」や、パワーポップ、パンク、ロックンロール、「Alex Chilton」、「Neil Young」、「Flamin' Groovies」など敬愛する数々のギターヒーローたちに影響を受けて作った、エレキギター炸裂のアルバム「STARBERRY DAYS」。

歪んだノイジーなギターとグッド・メロディ、ハーモニーが共存したヴィンテージ・パワーポップ作。


▪︎EN


Merchant, the solo project of Masaharu Kurita, guitarist of Hedigan's and Glider.

An album bursting with electric guitar, “STARBERRY DAYS”, created through the concept of “one-man multi-tracking” – crafting a band-like sound solo – entirely performed live. Influenced by beloved guitar heroes including Teenage Fanclub, Dinosaur Jr., power pop, punk, rock “n” roll, Alex Chilton, Neil Young, and the Flamin' Groovies.

A vintage power pop work where distorted, noisy guitars coexist with good melodies and harmonies.


Tracklist:


1. MG9

2. ANTIHERO

3. TUESDAY

4. PIANO

5. HAIR SALON

6. ZIGZAG LOVE

7. SHORT SLIP

8. CEREMONIA

9. STARBERRY DAYS


Credit:

Guitars, vocal, bass, drums, percussions, piano, synthesizer, blues harp : 栗田将治

M1. Synthesizer : 栗田祐輔


All songs written and composed by 栗田祐輔 and 栗田将治

Produced by KEYAKIZOKU

Recorded by 伊藤広起

Mixed by 伊藤広起 and 栗田将治

Mastered by 伊藤広起

Recorded at Studio Dig

Publicist 島田一郎


・Playlist「STARBERRY DAYS」


APPLE MUSIC:

 [ https://music.apple.com/jp/playlist/merchant-2nd-album-favorites/pl.u-9N9LLK3F2GEWj7 ]


Spotify :

[ https://open.spotify.com/playlist/4kQVAm0oGCeZt9H4j1YDEM?si=70Ap92MLTF23dGVvlcTMcQ&pi=xJqBLoIxTlu1N ]



▪︎Merchant「STARBERRY DAYS」リリース記念「March and Destory」



2026.05.22 [Fri] Shimokitazawa THREE(東京)

会場 : 下北沢THREE / 出演 : Merchant (BAND SET) 栗田将治 (Gt, Vo), 井上真也 (Ba), 大塚薫平 (Dr)

Open : 19:00 / Start : 19:30

Adv. : 3,000 Yen / Door : 3,500 Yen ※学生料金 : 2,000 Yen(学生証を提示) ※ドリンク別途

Ticket [ https://livepocket.jp/e/y9phk

Information [ keyakirecords@gmail.com ]


2026.05.29 [Fri] Kumagaya MORTAR RECORD(埼玉)

会場 : 埼玉熊谷モルタルレコード / 出演 : Merchant (BAND SET) 栗田将治 (Gt, Vo), 井上真也 (Ba), 大塚薫平 (Dr)

Open : 19:00 / Start : 19:30

Adv. 3,000 Yen ※学生料金 : 2,000 Yen(学生証を提示) ※ドリンク別途

Ticket [ keyakirecords@gmail.com ] [ https://mortar-record.com ] ※お名前・公演日・希望枚数・連絡先を明記の上お申し込み下さい。



Merchant:

埼玉県本庄市けや木2丁目にあるStudio Digを拠点に「Todd Rundgren」や「Paul McCartney」などの制作スタイルに感銘を受け、ギター以外の楽器も打ち込み等ではなく生楽器の演奏で、スタジオ・宅録など環境問わず一人でバンド・フィーリング溢れるサウンドを作る「一人多重録音」をコンセプトに、2023年頃からMerchantとしての活動をスタート。2024年にファースト・アルバム「Dolphin Sane」をリリース。ライブではソロ・弾き語りの他、井上真也、大塚薫平(生活の設計)らを加えたトリオ・バンド編成で活動している。

また、Hedigan's、Gliderのギタリストとして活動しているほか、自身のインディ・レーベルKEYAKI RECORDSを運営している。好きなギタリストは、Les Paul。


▪︎EN

Based at Studio Dig in Keyaki 2-chome, Honjō City, Saitama Prefecture, and inspired by the production styles of artists such as Todd Rundgren and Paul McCartney, Merchant commenced activities around 2023. The concept centres on “one-man multi-track recording”, creating band-feel sounds solo regardless of environment—be it studio or home recording—using live instrumentation rather than programming for all instruments except guitar. Released his first album, ‘Dolphin Sane’, in 2024. For live performances, he performs as a solo singer-songwriter and also in a trio band formation featuring Shinya Inoue and Kahei Otsuka (Seikatsu no Sekkei).

Additionally, he is active as a guitarist for Hedigan's and Glider, and runs his own independent label, KEYAKI RECORDS. His favourite guitarist is Les Paul.


2月6日にTransgressive Recordsからリリースされたニューアルバム『Laughter In Summer』が世界中で絶賛される中、ビバリー・グレン=コープランドは本日、6月18日(木)にロイヤル・フェスティバル・ホールで開催されるハリー・スタイルズ主催の「Meltdown」(オフィシャルサイト)の一環として、自身にとって過去最大規模となるロンドンでのヘッドライン公演を行うことを発表した。


私たちは生まれたその瞬間から、長い「家路」を歩み始めます。エリザベスとビバリー・グレン=コープランド夫妻は、半世紀近く前に二人でその道を歩み始め、それ以来、手を取り合い、一曲また一曲と歌いながら、その道を歩み続けてきました。二人は共に、この世の枠には収まりきらないほど大きな、利他的な心を芸術やコミュニティを通じて分かち合い、私たち一人ひとりが、根源的な愛と優しさを持って、それぞれの道を踊りながら進んでいくよう励ましてきました。


今、グレンがLATEと呼ばれる認知症の一種と向き合う中、二人の歩みは新たな重みを帯びてきました。そんな時期を経て生まれたのが、二人が共に制作したアルバム『Laughter In Summer』です。やがて二人は、このアルバムが互いへのラブレターであることに気づきました。それは、共有された献身、悲しみ、そして喜びを綴った、優しい記憶の記録なのです。


エリザベスは今や、グレンの作品のプロデューサーとして確固たる地位を築き、音楽監督のアレックス・サマラスと共に『Laughter In Summer』を形作っている。


アルバムのタイトルは、ほぼ偶然に生まれた一曲に由来する。認知機能の低下が進むにつれ、グレンは「Songs With No Words(言葉のない歌)」と名付けた一連のインストゥルメンタル曲の作曲を始めた。これは、聴く人が自分なりの歌詞を書き加えることを意図したものであった。


ある日、彼はその一曲をエリザベスに聴かせた。湖のほとりに座り、カイツブリの鳴き声を聞きながら空を眺めていると、彼女の心に言葉が湧き上がった。「夏の笑い、ああ、懐かしい」彼女はこう振り返る。「あの時は本当に辛い時期でした。愛する人の姿がどんどん失われていくのを、痛感していたからです」 私の人生、私の喜び、この地上、ここ、あなたと共に、と彼女は歌った。その言葉は、まるでカイツブリたちから贈られたかのような、天からの贈り物だった。


Photo: Wade Muir


2024年、モントリオールでの公演を控えた頃、彼らはプロデューサー兼エンジニアのハワード・ビラーマン(Godspeed You! Black Emperor、Vic Chesnutt、Wolf Paradeを手がける)と共に、伝説的なHotel2Tangoで数日間レコーディングを行うよう招待された。アルバムを作る計画はなかった。彼らは単に、ツアーで歌ってきた曲を、アレックスが集めたモントリオールの合唱団と共に収録したいと思っていただけだった。


しかも、歌手の誰もグレンやエリザベスとリハーサルをしたことはなかった。エンジニアたちがマイクのレベル調整をしている間、グレン、エリザベス、そして合唱団は最初の曲をざっくりとリハーサルした。このリハーサルこそが、『Let Us Dance, Movement 2』で聴ける音そのものだ。アルバムの他の曲はすべて、グレンが好むスタイル——ワンテイクのみ——で録音された。 


グレンの実行機能が低下するにつれ、彼の音楽的な存在——「そして私は、彼の心の在り方だと言うでしょう」とエリザベスは付け加える——はますます強くなるばかりだ。少なくとも週に一度、二人は並んで座り、失われつつあるものを言葉にする。


「感情を否定してしまうと」とエリザベスは言う。「それはあなたの内側で凍りついてしまうから」『Laughter In Summer』の制作は、互いに寄り添うための新たな手段となった——曲は単なる作曲作品ではなく、証言としての意味を持つものとなった。


「私たちは生まれた瞬間から、死に向かって歩んでいるの」とエリザベスは言う。「でも、それでいいの。誕生があるためには、死がなければならないから」 グレンは彼女に、自分が逝った後は、今よりもずっと彼女と一緒にいられるだろうと語る。エリザベスにとって、その考えは慰めであると同時に痛みでもある。しかしながら、二人を支えているのは、グレンが与えることをやめようとしない姿勢だった。「時々、彼は私の手を握ってこう言うの。『まだ与えきれていないことがたくさんある。この若者たちに、まだ与えたいことが山ほどあるんだ』と」


『Laughter In Summer』は、ビバリー・グレン=コープランドの2023年の高評価を受けたアルバム『The Ones Ahead』に続き、2024年にはサム・スミスとのコラボレーションとして、彼の名曲「Ever New」を『Red Hot Org Transa』コンピレーション・アルバムのために新たにレコーディングした作品でもある。



All upcoming UK & EU live dates:


April 11 - The Hague, NL - Rewire Festival

April 13 - Berlin, DE - Volksbühne Berlin

May 1 - Brighton, UK – Dome Concert Hall / Brighton Festival

June 6 - Barcelona, ES - Primavera Sound

June 9 - Lisbon, PT - Nova

June 12 - London, UK - LIDO Festival

June 18 - London, UK – Royal Festival Hall / Harry Styles' Meltdown Festival

July 1 - Sète, FR - Worldwide Festival

September 5 - Larmer Tree, UK - End of the Road Festival

September 7 - Copenhagen, DK - Bellevue Theatre

September 11 - Aarhus, DK - Alter Festival


Beverly Glenn- Copeland 『Laugher In Summer』


Label: Transgressive

Release: 2026年2月6日


Tracklist:

1. Let Us Dance (Movement One)

2. Ever New

3. Laughter In Summer feat. Elizabeth Glenn-Copeland

4. Children’s Anthem feat. Elizabeth Glenn-Copeland

5. Harbour feat. Elizabeth Glenn-Copeland

6. Middle Island Lament feat. Elizabeth Glenn-Copeland

7. Shenandoah

8. Prince Caspian’s Dream

9. Let Us Dance (Movement Two)


▪︎Stream/Buy  

https://beverlyglenncopeland.ffm.to/laughterinsummer


Beverly Glenn-Copeland:  


伝説的な歌手、作曲家、そしてトランスジェンダー活動家であるビバリー・グレン=コープランドの多彩な活動は、デビュー作であるセルフタイトルのアルバム(1970年)に収録された類まれなフォーク・ジャズの探求が再発されたことや、高く評価されている傑作『Keyboard Fantasies』(1986年)が広く知られるようになったことを受け、近年ますます注目を集めている。


この作品は、ニューエイジ・ミニマリズム、初期デトロイト・テクノ、そして伝統的なソングライティングの温かみを巧みに融合させた、時代を先取りしたシンセサイザーの探求であり、50年にわたるレコーディング・キャリアを通じて、ビバリー・グレン=コープランドの音楽は分類やジャンルに縛られることなく、ビジョン、テクノロジー、スピリチュアリティ、そして場所の非凡な融合こそが唯一の共通点となっている。


ビバリー・グレン=コープランド(友人や知人からはグレンと呼ばれる)は現在70代後半である。グレン=コープランドは音楽一家に生まれ、「幼少期」からクラシックピアノのレパートリーを学び、父が1日4~5時間ピアノを弾くのを聴いて育った。1961年、彼は故郷のフィラデルフィアを離れ、モントリオールのマギル大学でクラシック音楽(特にヨーロッパの歌曲レパートリー)を学ぶため渡ったが、やがて、自身が愛するようになった無数の音楽文化からの影響を織り交ぜた音楽を創作したいという強い衝動に駆られた。


長年にわたりコンサート舞台から遠ざかっていたグレン=コープランドは、現在カナダやヨーロッパで演奏活動を再開している。自身の音楽を今や熱狂的に受け入れてくれている若い世代との深い絆に対し、グレン=コープランドは大きな喜びと感謝の念を抱いている。