Sea oleena
Sea Oleenaは、カナダ・モントリオールの兄妹、シャルロット・オリーナとルーク・ロゼスのエレクトロニカ・ユニット。
このアーティストの特に面白い特徴は、レコーディングが兄妹の自宅で行われていて、ギター、ピアノをはじめとする楽器が自前のラップトップで録音され、レコーディングからリリースまでのおおよそが二人の手でなされているところです。
家の中にエフェクターなどの機材だとか配線が沢山積み上げられて、その前で、二人揃って真剣に演奏している写真を見るかぎりでは、若い頃から兄妹揃って音楽に慣れ親しんで来たようなのが伺えます。その辺りの、音楽を介して伝わってくるこの兄妹の仲の良さが、二人の音楽性の独特な魅力にも現れているという気がします。彼等は、はなから目立った活動をする気はないらしく、素敵な音楽をささやかながら世界中の愛好家のもとに届けてくれています。
Youtubeの公式のPV以外は、音源リリースというのも、実際の活動の多さに比べると少なく、もとはカセットテープ、もしくはミュージシャン向けの配信サイト「Sound Cloud」上でのリリースという内寄りな形で活動していましたが、昨今、意外にもファンからフィードバックがじわじわ増えはじめているのか、彼等の音楽を待ち望む多くの期待に答えるような形で、リリース音源がCDというかたちで市場に残るようになり、なおかつ彼等の音が前よりも入手しやすくなったのは、個人的に嬉しいかぎり。
シャルロット・オリーナは、非常に類まれな天使のように美しい歌声、そして、独特のギターテクニック、メロディセンスを持っています。彼女の歌声には、付け焼き刃ではない、長年培ってきたからこそ滲みでてくる気配があり、つまり、本格派アーティストの雰囲気が漂っていて、有名所でいうなら、セイント・ヴィンセントにも比する、美しい!!としか形容しようのない浮遊感のある声質を有しています。ヴィンセントに比べると、アンニュイな雰囲気が感じられる歌声です。
なかなか侮りがたいのは、彼女の端麗な容姿からは想像できないほど職人的な音作りをしていて、モントリオールという音楽の盛んな土地柄のためか、さまざまな音楽性の影響を見せ、そのバックグラウンドの広さが伺えます。サウンド面でも、さまざまなアナログディレイ、リバーブ等のエフェクターを使いこなし、かなり長い活動をしてきたがゆえの音楽に対する深い知見も持ち合わせているようです。
彼女の持つエッセンス、演奏とボーカルをさらに魅力あふれるものにしているのが、兄のルーク・ロゼズという存在。彼はピアノをかろやかに弾きこなし、DAWを介してサンプリングを駆使しています。Sea Oleenaの楽曲を雰囲気たっぷりに仕上げているのは、ロゼスの手腕によるところが少なくないかもしれません。
彼等の曲というのは、どことなくアンビエント的なムードが漂いながらも、そこで展開されるのは、いうならば、フォークとエレクトロニカの合体させたフォークトロニカ、つまり、アイスランドのMUMのニュアンスに近い印象があります。もちろんMUM好きな方なら必聴でしょう。ただ少しだけ異なるのは、アナログディレイを駆使し、音の奥行きが感じられるようなミキシングをしていて、アンビエント的風味を持った抽象世界が楽曲の中において展開されています。おそらくドラマティック性という面では、Sea Oleenaの方が秀でいているかもしれません。
聴くと、なぜ、もっと脚光を浴びないのか解せないほどのスター性と、そして他に比べて抜きん出た実力を持ちながらも、一般的に知名度があまり浸透していないようなのが残念でなりません。おそらく、この兄妹がそれほど大手を振って宣伝活動をしないため、その点が知名度という面で少し弱いという気もしています。本人たちもひっそりと家の中で良い音楽を奏で、それを分かる人だけ分かって貰えれば良しというスタンスで活動しているのかもしれません。反面では、やはりというか、一部の耳の確かな愛好家の間においては、Sea Oleenaの名が知れ渡りはじめていて、すでにシャーロット・オリーナの歌声は本物と認められつつあるというように思えます。
Sea Oleenaの楽曲を聴いていると、世間の喧騒から離れ、本当の意味での自分を見つめざるを得なくなり、また、その中に隠されていた美しい感情を呼び覚まされるような気がします。それこそがこの兄妹の音楽の不思議な魅力のひとつでしょう。何かしら、自分の中にある悪い感情がキレイさっぱり洗い流されて、それとは正反対の清らかな感情に満たされるような気がします。
「sea oleena」
このアルバムの中においては、どことなく妖しげでミステリアスな印象のある「Sister」。シャルロット・オリーナの美しい歌声の響きをサンプリングを使い、ターンテーブル的な巧みな手法でループさせた「Swimming Story」が出色の出来。その他には「Litte Aemy」の穏やかなフォーク的で、雰囲気も非常に良い味を出しています。
また特筆すべきなのは、Sea Oleenaの楽曲には癒やしの効果があって、聴いていると気持ちが安らかになってくるようにも思えます。いわば、ヒーリング的効果もあり、気持ちがザワザワついて落ち着かないという方に、是非ともおすすめしたい音楽です。
参考 http://www.inpartmaint.com/site/3492/
https://diskunion.net/rock/ct/detail/AWY140917-SO1