2020年、クリスマスプレゼントとして、グー・グー・ドールズからカバーを中心にしたアルバム「It's Cristmas All Over」がファンに向けて捧げられた。
それに続き、約半年振りのレア・トラック集「Rarities」 がワーナー・ブラザーズからリリースされた。シングルカットが先行しているので、新作のアルバムリリースも遠くない日に実現すると思われる。それまでの辛抱として、この「Rarities」を聴きながら、ファンとしては首を長くして待ちたいところだ。
現在、日本盤はリリースされておらず、輸入盤、Importのみのリリースとなっている。多分、この辺りのロックバンドは隠れファンが一定数いそうな気配があり、購入特典とかブックレットとかを充実させようものなら、喜んで飛びつきそうなのに、つくづくもったいないように思える。
しかし、それでも、この新譜がグー・グー・ドールズのキャリアを懐古的に総ざらいするものではなくて、むしろ、ここで一区切りを付け、次のステップへ進んでいく節目に差し掛かっているように思える。あらためて、二曲目の「Nothing Can Changes」が未発表曲とはいえ、歴代ベスト一、二を争う白眉の出来映えである。彼等を、良質なアメリカン・ロックバンドというふうに再認識できる楽曲だ。
グー・グー・ドールズのワーナーからの新作「Rarities」。 これは、往年のファンとしては実に堪らないものがある名曲がずらりと並ぶ。収録曲のほとんどが未発表のライブ録音で湿られている。
このアルバムを見過ごすことができないのは、新しいものを聴きたいというファンの渇望に答える形での未発表の楽曲も、忘れずに収録されているあたりも、WanerBrosの敏腕というべきだろう。
このアルバムは、グー・グー・ドールズのベスト盤のサイド・リリースのような意味合いがある。ここには、今までアルバムという形で見えづらかった良質なメロディーセンスを掴むのには最も適した作品と言えるだろう。
グー・グー・ドールズは、元は、どちらかというと、パンク・ロック、あるいはハードロック寄りのバンドとして、ミュージックシーンに登場し、そして、その後、95年を節目に大胆な路線変更を計り、大成功を手中に収めた。
「A Boys Named Goo」のレコーディング中に、何らかのワーナーからの忠告があったのかは定かではないものの、それから大変身を果たして、米国チャートでメガ・ヒットを記録、バラード・ソングを主な特徴とした九十年代を代表する世界的なロックバンドとしての歩みを着実に進めていったのだ。
「A Boys Named Goo」にも収録されている「Iris」が、なぜ、世界的に大ヒットを記録したのか、それはこの新作アルバム「Rarities」を聴くことにより、ヒットの理由に迫る事ができるかもしれない。
やはり、「Iris」は、端的に言うと、時代に古びることがない永遠のフォークバラードなのだ。ここには、エアロスミスやボン・ジョヴィといったアメリカン・ロックのビックスターにも全然引けを取らないバラードソングの普遍的な魅力が、レズニックの生み出す世界観には込められている。
そして、また、彼等グー・グー・ドールズの初期の名作「Super Car Wash」1993に収録されていた「Girl Right Next To You」のアコースティック・バージョンに象徴されるように、秀逸なラブソングを都会人らしくクールに歌い上げるロックバンドとしての真価が、「Rarities」には刻印されている。
そして、この新作アルバムには、アメリカの善き時代の音の反映が顕著に表れているように思えてならない。そして、その”空気感”とのぶべき得難いものが、聞き手の琴線にそっと触れ、なぜか不思議なくらい穏やかな感情を呼び覚ましてくれるはずだ。