Chris James
クリス・ジェイムス、クリストファー・ジェイムスブレナーは23歳、ドイツを拠点に活動する男性シンガーソングライター。
ドイツのインディーポップ界において、最も、今、勢いの感じられる若手アーティストであり、ベッドルーム・ポップという、若い世代のジャンルに属しています。このシーンでは、クレイロ、レックス・オレンジ・カウンティ、ガールズ・イン・レッドといったアーティストの活躍が近年目立ちますが、クリス・ジェイムスはその一角に入り込んで来てもおかしくないこれからが楽しみなアーティストです。
クリス・ジェイムスは、アメリカで生まれましたが、幼少期に両親と共に、ドイツのドゥッセルドルフにほど近いハイデンという街に移住してから、アメリカ系ドイツ人として暮らす。
その後、コロナ禍を機に、ベルリンに活動拠点を移す。クリス・ジェイムスは、2011年、つまり、驚くべきことに13歳という若さで作曲活動を開始し、初めはYoutubeの動画を介し、マムフォード・アンド・サンズ,コールドプレイ、エド・シーランの楽曲を実際にカバーすることにより、これらのアーティストのすぐれたポップ性を自身の感性の中に浸透させていったという。
事実、このエピソードから見られるとおり、ジェームスブレナーの音楽性には、親しみやすい軽快なポピュラー性が感じられます。それは、上記したビッグアーティストの音楽の良い部分を受け継いでいるからこそでしょう。
クリス・ジェイムスは、スタジオ・アルバム「The Art of Overthinking」で2020年にドイツでデビューを飾る。これまで、二回のドイツ国内ツアーを成功させていて、なおかつ、サブスク配信時代のアーティストといえ、2500万回サブスクリプションでストリームされている。
インディーズアーティストでありながら大変人気のあるアーティストで、デビューから約一年にも関わらず国内外で多くのファンを獲得しつつある。また、著名な仕事としては、K-POPのBTS,Tommorow X Togetherに楽曲提供をしているあたりも見逃せず、軽快で親しみやすいポップソングを書くことにかけては他のアーティストと比べ、頭ひとつ抜きん出ているように思えます。
只、ひとつ面白いのは、ジェームスブレナーには、他の表面的な音楽のキャッチーさとはまた別箇に、音楽の核心となる思想が少なからず含まれていることでしょう。若いベッドルームポップ世代らしい未来の社会に対する明るい提案が感じられることです。
これは、若い世代が、これからの世界を作り上げていくという意思表示のように思え、個人的な意見としても、若い世代が新しい提案をしていくことは、これからの社会にとって必要不可欠といえるでしょう。
これまでは、知見のある様々な専門家が意見することが正しいとされてきましたが、これからの時代は必ずしも以前と同じようなやり方が選ばれるべきでなく、ジェームスブレナーのような若い世代が未来の社会に対して、どんどん自由闊達に提言をおこなっていくべきだと思えます。
そして、クリス・ジェイムスの曲中に歌われることも、恋愛など、若い年代らしい主題もある一方、若い世代としての社会に対する提言、一個人と社会の関わり方がどうのようにあるべきなのか、また、イギリスの次にロックダウンの厳しいドイツの一市民としての考えを恐れることなく提示し、コロナパンデミックにおける社会的な圧力、そのポイントにおける個人と個人、個人と集団がどういった関係をこれから築いていくべきなのか、そういった新しい提案をしている。
まさに若いミュージシャンとして頼もしさを覚えるほど、社会における個人という存在について忌憚ない意見を歌にこめているのが、ジェームスブレナーの感性の素晴らしさであり、魅力といえそうです。
The Fear of Missing Out 2021
TrackListing
1.Will You See Again
2.Hey It's Me
3.The Way Look At Me
4.4AM Magic
5.Alone on a Friday
6.The Fallout
7.Happy Ending
8.The Fallout(acoustic)
9.Happy Ending(acoustic)
ドイツポップ界をこれからクリス・ジェイムスが牽引していくような大きな可能性を示してみせたのが二作目となるアルバム「The Fear of Missing Out」です。
前作のデビューアルバム「The Art of Overthinking」での形、アルバム全体は軽快なポップスによって占められているものの、収録曲の最後の二曲はアコースティックのしっとりした楽曲によって締めくくられるスタイルは今作にも、いわばルーチンワークのように引き継がれています。
また、クリス・ジェイムスの音楽性の中には、ドイツ在住のアメリカ人というバックグラウンドも、少なからず影響していると見え、ドイツのクラブミュージック、そして、アメリカのインディー・ポップの双方の長所を上手く受け継いだというジェイムスらしいスタイルが伺えるように思えます。
一作目「 The Art of Overthinking」で際立ったポップセンスを提示するこに成功したジェームスブレナーはこの二作目において、さらにその才覚に磨きをかけた。
全体的には、オートチューンをかけたボーカルが魅力の楽曲が多く、そのあたりはトレンドを行くといえるでしょう。しかし、ボーカルの作り込みは軽妙な雰囲気に彩られていて、とても聞きやすく、万人受けするような親和性がある。
そのことはこのアルバムのハイライトといえる#1「Wiil I See You Again」によく現れていて、この軽快なポップスとしての輝きは、この年代のベッドルームポップらしさがあるように思えます。
また、その雰囲気とは対極に位置するしっとりした雰囲気のある「Happy Ending」もドイツのEDMとしてのポップ性を追求したすぐれたクールな楽曲。また、前作のスタイルを引き継いでのアコースティックの最後の二曲、特に「The Fallout」は、アメリカのジャック・ジャクソンを彷彿させる寛げるような涼やかな雰囲気のある佳曲として聞き逃がせません。
クリス・ジェイムス、ことジェイムスブレナーのキャリアは始まったばかりです。これからどのような活躍をしてくれるのか、最新の動向をガンガン追っていきたい、非常に楽しみな雰囲気のあるアーティストです。
まだ、夏の暑さはしばらく続きそうなので、こういった爽やかで軽快なポップスもたまには良いかなあと思い、今回、クリス・ジェイムスというドイツの気鋭ベッドルーム・ポップアーティストを紹介してみました。
Happy Listening!!
参考サイト
stadtgarten.de
https://www.stadtgarten.de/en/program/chris-james-2043
minutenmusik.de
https://minutenmusik.de/rezension/chris-james-the-fear-of-missing-out