News F.S.Blumm&NIls Frahmが新作「2×1=4」をリリース!!

Nils FrahmとF.S.Blummは四度目の共同制作作品として、2021年9月3日、"LEITER"から新作「2×1=4」を発表する。

既にニルス・フラームの方は、ポストクラシカル、電子音楽の音楽家として、一方のF.S.ブラームの方は、音楽家、作曲家、ラジオ作家として有名なアーティストである。この2人の才能が今回、上手く融合したことにより、この作品は、ドイツの音楽シーンの潮流を一挙に変えてしまいそうな力を持ったコアなダブ作品に仕上がっている。

 

左からF.S.Blumm Nils Frahm 出典*https://www.nilsfrahm.com/desert-mule/


これまでフラームとブラムはコラボ作品としては、2010年の「Music For Lovers,Music Versus Time」そして、2013年の「Music For Wobbing,Music Versus Gravity」、2016年の「Tag Eins Tag Zwei」をリリースを経ているが、今回、フラームが新設したインディーレーベル「Leiter」から発表された「2×1=4」は、共同制作としては通算四作目のスタジオ・アルバムとなる。

 

2×1=4 LEITER 2021

 

TrackListing

 

1.Desert Mule

2.Presidental Tub

3.Puddle Drop

4.Buddy Hop

5.Sarah & Eve

6.Raw Chef

7.Neckrub

 

ニルス・フラームとF.S.ブラムは共に二十年以上に渡り、ドイツのインディーシーンを牽引してきた存在である。ニルス・フラームの方は多くを語る必要はないはずだ。既に、BBCPROMSでライブパフォーマンスを行ったり、世界ツアーを敢行したりと、ポスト・クラシカル、電子音楽の音楽家としては世界的な知名度を持つ。

F.S.ブラームの方は、ラジオ作家としてドイツ国内で名を馳せており、ブラームのラジオ劇は、ドイツ国内の公共放送、SWR,WDR、Deuschlandradioを始めとする放送局で放送されている。また、F.S.ブラームのラジオ劇作品は、Prix Euro Award 2000年度においてウイナーに輝いている。

彼ら2人の音楽家としての交流は、既に2000年初頭から始まっている。電子音楽、ポスト・クラシカルシーンでの活躍が目覚ましいフラウムと、若い頃に、クラシックギターの教育を受け、また、ソニック・ユース、ガスター・デル・ソル等のノイズミュージックに影響を受けたブラームは、一見、それほど共通項が見いだせないように思える。しかし、元々、フラームは、ベルリン在住のアーティストの仲間について「ベルリンの壁の重要なレンガ」と呼びならわし、その中にはもちろん、このF.S.ブラームも含まれている。フラームは、この2000年代初頭から既にブラムのファンであり、反面、ブラムの方もフラームのファンであり、特にフラームのコンサートでの豪華絢爛なセッティングを「宇宙船のようだ」と形容し感嘆していた。つまり、2人は、この頃から共に双方の音楽家に敬意を抱いており、程なくして、共同制作を始めるようになる。その過程で、ドイツの劇場作品やアニメーション作品のプロジェクトに共に参加し、音楽の面での双方の特性を掴んでいくようになり、言うまでもなく、最初の共同作品「Music For Lovers,Music Versus Time」をリリースするまでには多くの時を要さなかった。

これまでの2人は、これまでの三作品において、フラームの音楽性、クラシカルな性格を反映した楽曲、ピアノ曲、もしくはF.S.ブラムのクラシックギターの特性を活かし、それを電子音楽寄りにアレンジメントした作風に取り組んできた。語弊があるかもしれないが、アコースティックとしての彼らの音楽性がこれらの三作品には反映されていた。以前からの双方のファンは、明らかにこの作品について、一定の良い評価を与えるはずではあるものの、これらの作品について、作曲者である本人たちが必ずしも納得していたかといえば、そうではないらしく、ニルス・フラームは「少々、ドイツ的であった」とこれらの作品について話しており、つまり、彼が何を言わんとしているのかといえば、ドイツロマン派の系譜の色濃い性格がこれらの作品を古風な趣向性を与えているということなのかもしれない。このほぼ完璧にも思える三作品については、聞き手としては驚くべきことであるが、作者としては完全には満足していなかったような気配も伺える。

そして、共同制作として、四作目に当たる今作「2×1=4」は、以前の三作品とはまるきりその様相を異にしている。

このレコーディングは既に、三作目「Tag Eins Tag Zwei」の録音を終えた瞬間に始まったといい、つまり、 このレコーディングを終えたときに、この2人のミュージシャンの創作意欲の中に、「DUB」という共通点があることに気がついたという。

レコーディングスタジオで、80年代のリズムマシーンを鳴らした瞬間、最新作「2×1=4」のラストトラックとして収録されている「Neckrub」のアイディアが生み出された。そして、この最初のインスピレーションを原型として、アルバム作品「2×1=4」が丹念に作りこまれていく。トラックメイクの始まりとしては、フラームの所有する2トラックカセットに収録した即興のセッションを中心に、2人の共同作業として音がオーバーダビングにより組み立てられていった。

印象論として語るなら、ダブというジャンルは、この2人の音楽家の作品をざっと概観してみた際に、かなり意外な作風にも思えるが、よく考えてみれば、F.S.ブラームは、ロンドンのダブの生みの親のひとりともいえる”リー・スクラッチ・ペリー”との共作もリリースしているため、ダブとは少なからずの関係を持ってきた音楽家である。また、ニルス・フラームについても、スタジオ・アルバム「All Encores」収録の一曲「All Armed」で、かなりダブ寄りのアプローチを見せていることに気がつく。

つまり、2人はこれまでのソロ名義での作品において、ダブ的なアプローチを図っていながら、完全なオリジナル作品としての「DUB」には取り組んで来なかったという印象を受ける。それが今回、念願叶ったというべきなのか、音楽における友人を介し、ダブ作品へ取り組む契機になったわけである。この2016年からフラームとともに取り組んできた「2×1=4」の作曲工程について、F.S.ブラームは、「まるでコンバインを運転しているようだった」と、おかしみをまじえて回想している。つまり、このF.S.Blummの発言から見えるのは、これまでのキャリアにはなかったスリリングな楽しみをもって制作された音源であることは疑いないようである。

 

 

その後、ニルス・フラームの所有するドイツ、ベルリンの伝説的なファンクハウスのスタジオで音の編集、オーバーダビング作業が始まった。

スクラッチペリーのような宅録寄りのアーティストとは異なり、共同作業としてのオーバーダビングはかなり骨の折れる作業であったことには変わりなく、「私達はセッションを元に新しい曲を作り続け、何度も何度もやり直しなおした」と、フラームの発言からもアルバム完成にこぎつけるまでの過程はなかなかの険しい道のり出会った様子が伺える。しかし、2人は、そのフラームのスタジオでの制作過程を相当楽しんでいたようで、「時間はかかりましたが、楽しいプロセスでした」とフラームがレコーディング作業を振り返っていることからも容易に理解出来る。そして、彼はこの作品について、それほど高い自己評価を与えず、きわめて謙虚な姿勢でこの新作の出来栄えについてこのように締めくくっている。「この作品はダブが単なるダブ作品であるのと変わりません、それはジャズがジャズ作品でしかないように」

 

しかし、これはあまりにも秀逸な音楽家としての厳しい眼差しが自作に注がれていることの証左なのかもしれない。

実際、この作品「2×1=4]」は、”DUB”というジャンルを見渡してみた時、異質なほどのクオリティを持った傑作である。

それは、この2人のストイックな気質を持つ優れたドイツの音楽家が協力し、楽しみながらも苦心して生み出したからこその澄明な輝きを放つ結晶と言い得るはずだ。いずれにしても、今作品は、ドイツの電子音楽のシーンを一変させそうな雰囲気を持っているため聴き逃がせない。また、ニルス・フラーム、F.S.ブラームというドイツのインディーズシーンにおいて最重要アーティストの歴代の音楽性に感じられなかった一面が垣間見える意外性あふれるダブ作品といえる。

「2×1=4」は、ディジタル形式のVinyl,CD盤の2versionが本日9月3日に発売される。電子音楽好きとしては要チェック!!の作品である。

 

 

Nils Frahm 公式サイト

 

https://www.nilsfrahm.com/


 

 

References

 

 

Nilsfrahm.com

 

https://www.nilsfrahm.com/desert-mule/

 

 leiter-verlag.com

 

https://leiter-verlag.com/catalogue/2x1/