Mogwai
モグワイは、スチュアート・ブライスウェイト(Gu,Vo)、ドミニク・エイチソン(Gu)、マーティン・ブロック(Dr)によって、1995年に結成されたスコットランド、グラスゴーのポストロックバンド。
1997年LP「Young Team」でデビューを飾り、同年、「バンドワゴネスク」でおなじみの同郷のティーンエイジ・ファンクラブのブレンダン・オヘアが加入したものの、翌98年にバンドを去っています。
これまでモグワイは、アイスランドのシガー・ロスと共にヨーロッパのポスト・ロックシーンの確立した最重要のロックバンド。今やヨーロッパでは重鎮といっても過言ではないかもしれません。
重厚な轟音ギターロックサウンドを表向きの特徴にし、SEを取り入れた静と動の織りなすモグワイの劇的な曲展開は宇宙的な壮大さを生み出し、その中に、美麗で恍惚としたメロディーの反復、そのミニマルな単位の楽節を徐々に轟音性によって増幅させていくのがモグワイの音楽性の主な特徴です。
反復されるフレーズがアシッド的な効果を生み出すという点においては、ロックバンドではありながら、EDM(レイヴやゴアトランス)の雰囲気も併せ持ち、クラブ音楽の影響も少なからず感じさせる。ライブパフォーマンスでも音楽と同期した視覚的な演出を試み、プログレッシヴ・ロックのような物語性を持つという点で、ディスクレビューにおいてカナダ・トロントのGod Speed You Black Emperror(GY!BE)と頻繁に引き合いに出されるロックバンドであります。
モグワイは、これまでの24年という長いキャリアにおいて、「Come On Die Young」1999 、「The Halk Is Howling」2008、とポスト・ロックにとどまらず、ロックの数々の名盤を生み出しています。
初期からは轟音性の強いロックサウンドを特徴にしていましたが、徐々に静謐性に重点を置いた楽曲にも取り組むようになり、近年、特に、2021年2月にリリースされたモグワイの最新作「As The Love Continue」では、轟音性溢れるエネルギッシュな作風に原点回帰を果たし、そこに、スコットランドのネオアコ/ギター・ポップ、日本では、一般的に「アノラック」と称されるポップエッセンスを付け加え、また、そこに、英国の80ー90年代周辺のエレクトロの空気感を絶妙に溶かし込んだ独特な作風を生み出して、ミュージックシーンで話題を呼んでいます。
2022年の1月27日から、イタリア公演をかわきりにして、翌月からは、オランダ、ベルギー、フランス、ドイツ、英国、アメリカ、カナダ、スペイン、と大規模な世界ツアーを控えているモグワイ。どのような名演を世界の人々の記憶に残してくれるのか非常に楽しみにしたいところです。
「Take Sides」EP 2021
Quote bandcamp.com |
TrackListing
1.Ritchie Sacrament-Other Remix
2.Midnight Flit IDLES Midday Still At It Remix
3.Fuck Off Money Alessandro Cortini Rework
BandCamp
https://mogwai.bandcamp.com/album/take-sides-2
2021年2月のスタジオ・アルバム「As The Love Continue」に続いて、Bandcamp上で10月1日に発表されたEP「Take Sides」は「As The Love Continue」に収録されている3つの楽曲のリミックス作品。特に、共同制作者が豪華なメンツが参加しています。
一曲目の「Ritchie Sacrament」には、英クラブ・ミュージックシーンの重要な立役者、New Orderのメンバーの二人、Stephan Morris,Gillan Gilbertが参加。
80、90年代のロンドンエレクトロの雰囲気を漂わせたノスタルジックな味わいのあるエレクトロニック・ミュージックに仕上がり、オリジナルよりもダンス音楽の要素が加えられ、独特なディスコ風サウンドが提示されています。
もちろん、スタジオ・アルバムに収録されているオリジナル曲「Ritchie Sacrament」もインスト曲を中心とするモグワイとしては珍しいヴォーカル曲ですが、ここでは、New Orderの名トラックメイカーの二人の手により、さらに爽快な空気感を持つリミックス作品に仕上がっています。
二曲目の「Midnight Flit」は、英ポスト・パンクバンドIDLESがリミックスに参加、テクノイズとも称するべきアレンジメント。
これまでのモグワイには余りなかった印象を受けるクリック・ノイズ要素の全面的に打ち出した実験性溢れるリミックス。ゴアトランスの領域に入り込んでいるようにも思え、ノイズの印象が強いですが、その中にもモグワイらしい美しく淡麗なギターフレーズがリミックスの中に取り入れられている。モグワイのラウド性を電子音楽側から改めて再確認しなおした作風となっています。
さらに、特に、三曲目の「Fuck Off Money」は、NINの重要なツアーメンバー、トレント・レズナーと深いかかわりを持つアレクサンドロ・コルティーニがリミックスに参加しているのが見どころ。
ここでは、モグワイの「The Halk Is Howling」時代の懐かしいマーチングのリズム性に立ち返り、そこにさらに、アレクサンドロ・コルティーニらしいインダストリアルな雰囲気が漂う素晴らしいリミックス。
特に、中盤部から最終盤部にかけての独特な中低音域を押し出すようなリズム性、アンビエントドローン寄りのアレンジを交え、往年のモグワイ節というべきリズム性が随所に引き出されたリミックスとなっています。
ここには、モグワイのオリジナルアルバムより、EDMの要素に重点が置かれており、これまでのモグワイとは一味違う音楽性を体感出来る作品として注目です。ポスト・ロックファンのみならず、クラブミュージックファンもチェックしておきたい、名リミックス作品となっております。