スカートは、昭和音楽大学在学中から同名義でソロ活動を行っていた澤部渡によるソロ・プロジェクト。
大滝詠一、シュガー・ベイブスをはじめとする往年の1970’sシティ・ポップの系譜にあるノスタルジックなJ-Popを2010年代からインディーズシーンで体現してきたアーティスト。
日本の数少ない本格派のギターロックを体現するシンガーソングライターの一人。2010年代の始め頃には、ライブハウス内での休憩スペースで弾き語りのスタジオ・ライブなども積極的に行っていました。
音楽大学で作曲を専攻していたミュージシャンらしく、独特な和音進行、そして、聞きやすいキャッチーな音楽性が、澤部渡こと、スカートの音楽の大きな魅力といえるでしょう。
青春ソングを書かせたら、この人の右に出る人はなし、というくらいセンチメンタルな楽曲をうみだす才覚にかけては、現在のJpopシーンでも際立っている。ゆるく、切なく、淡いエモーショナルな楽曲、澤部渡の描き出す女性的で独特な詩的な歌詞の数々、ファンク寄りのカッティングをはじめとするギタリストとしての演奏力は独特な魅力を放っている。
ソロ・プロジェクトですが、ライブではサポートメンバーを交えてバンド編成となります。
東京渋谷区のインディーレーベル、"カクバリズム"から1stAlbum「Call」を発表してデビュー。
最初期からインディーズアーティストとして活躍していたが、2017年にはフジサンケイグループの主催するポニーキャニオンと契約を結び、二枚目のスタジオ・アルバム「20/20」をリリース。それから2019、翌20年には同レーベルから「トワイライト」「アナザー・ストーリー」を発表する。
2021年まで、川本真琴をはじめメジャー系ミュージシャンに楽曲提供し、ミュージックステーションにスピッツのバックミュージシャンとしてタンバリン演奏を担当したアーティストとしても有名。
ギターだけではなく、サックスをはじめとする多くの楽器を演奏するマルチタレントのアーティスト。これから、J-popシーンでより多くの人気を獲得するであろう才能として注目しておきたい。
シティポップ、渋谷系の系譜にあるポスト・大滝詠一、又は、ポスト・スピッツともいえる秀逸なアーティストです。
スカートの作品
2016 「Call」
1.ワルツがきこえる
2.CALL
3.いい夜
4.暗礁
5.どうしてこんなに晴れているのに
6.アンダーカレント
7.ストーリーテラーになりたい
8.想い(はどうだろうか)
9.ひびよひばりよ
10.回想
11.はじまるならば
12.シリウス
スカートは、既に2016年のデビュー前から「Call」等の楽曲をyoutube上で配信しており、インディーズアーティストではありながら、当時から一部の愛好家の間で密かな人気を獲得していました。
特に、このアルバムリリースの前に先駆けて発表されていた「Call」のミュージックビデオはアニメーション作品としても秀逸。
澤部渡本人は一切登場せず、センチメンタルな世界観がアニメ作品として描き出されてます。しかし、そのアニメーションで描き出される情景は、スカートの音楽の本質をよく捉えているがゆえに、何か見入ってしまうような説得力が込められているのです。
スカートの音楽性は、十代の学生時代の青春の一コマをギター・ロックとして、淡い感情を詩的に表現しています。これは、後になっても引き継がれているスカートの音楽の根幹ともいうべきもの。
2010年代のはじめ、この澤部渡というアーティストが登場した時に感じたのは、同時に台頭してきた、Predawn、森は生きている、等のインディー系アーティストとは異なる雰囲気を持ったアーティストだったと回想。特に、往年の大滝詠一の声質になぞらえられる、甘くゆったりとした、親しみやすいヴォーカルが他のアーティストに比べて際立っていました。
デビュー作となる「Call」は、インディーアーティストとして活躍してきた澤部渡が満を持して発表した処女作であり濃密な作品。
センチメンタルな青春を見事にギター・ロックとして表現してみせた快作。音楽性はシティポップ、渋谷系のゆるくおだやかな日常を詩情たっぷりに歌い上げた楽曲がずらりと並んでいる。
音の感覚は、肩肘をはらず、自然体であり、あるがままの等身大の思いを音楽として綴っているからこそ近寄りやすさを感じる。
ソングライティング能力、演奏能力、ひいては、ポップスアーティストとしての不思議な魅力を持つ、今作「Call」はデビュー作でありながら既にインディーズアーティストの枠内にはおさまりきらない、スカート=澤部渡の才覚が遺憾なく発揮された快作です。
2019「トワイライト」
1.あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)
2.ずっとつづく
3.君がいるなら
4.沈黙
5.遠い春
6.高田馬場で乗り換えて
7.ハローと言いたい
8.それぞれの悪路
9.花束にかえて
10.トワイライト
11.四月のバラの歌のこと
スカートの二作目となる「トワイライト」はポニーキャニオンからリリースされたメジャー・デビュー作。
Istアルバム「Call」よりもアコースティックギターを使用した楽曲が多く、ポップス、フォーク寄りの音楽性に澤部渡が挑んで見せた意欲作。
しかし表向きのアプローチは変われど、核心にあるシティ・ポップの質感が見事に引き継がれています。カントリー風のスライド・ギターを曲中に取り入れられたりと、よりヴァリエーションに富んだ音楽性を追求したというような印象を受けます。和音構成の巧緻は流石ともいうべきで、ソングライティング技術は一作目に比べより磨きがかけられ、これがこの作品を何度聴いても飽きの来ない本格派のPopsたらしめている。
今はなき大滝詠一の音楽性からの影響も感じさせる一方、表題曲「トワイライト」に代表されるようなスピッツあたりの音楽性にも近い平成ポップスからの影響も伺える作風となっていて、メジャー移籍後のミュージシャンとしての充実感が味わえる。ノスタルジックでありながらコンテンポラリーでもある、不思議な魅力を持った楽曲の数々。
良質な聴き応えのある楽曲が多く、J-popの良心ともいうべき澤部渡の秀逸なポップセンス満載のアルバム。漫画の一コマをあしらったジャケットも、何とな〜く学生時代を思い返されるセンチメンタルさが醸し出されてて良い。
2020「アナザー・ストーリー」
1.ストーリー
2.セブンスター
3.返信
4.ともす灯 やどす灯
5.月の器
6.おばけのピアノ
7.千のない
8.サイダーの庭
9.スイッチ
10.わるふざけ
11.ゴウスツ
12.さかさまとガラクタ
13.すみか
14.花をもって
15.月光密造の夜
16.ガール
デビュー以前、youtubeのみで配信されていた「すみか」、「サイダーの庭」を収録した以前からのファンは感涙もののスタジオアルバム「アナザー・ストーリー」は、スカートのメジャー移籍後の三作目となり、ポニーキャニオン傘下のレーベルからのリリース作品となっています。
特に、この三作目のスタジオ・アルバムはスカートの最高傑作と言いたい。というのは、これまでの四作のアルバムの中で最も青春の質感が強く、センチメンタルな淡い質感に彩られているから。「すみか」「サイダーの庭」に代表される「切ないメロディ」がちりばめられた珠玉のポップアルバム。
最も、澤部渡というミュージシャンの音楽性を知るのに最適なアルバムで、このアルバムに音として描き出される独特な青春映画のようなおもむきには何となく胸がジーンとせずにはいられない。
最初期からのスカートの作品を網羅した当面のベスト盤の役割を持った一枚。ギターロックとしてワールドワイドな存在感を持つ名盤で、スカートの入門編としてもオススメしておきます。次世代のJPopシーンを担うであろう若手アーティストの傑作として聞き逃すことが出来ません。このアルバムをじっくりと聴き終えた後の余韻、コレはなんともいえないものがあります。