Olafur Arnolds
オーラヴル・アルナルズは、アイスランド、レイキャビク出身のアーティスト。盟友ニルス・フラームと共にヨーロッパのポスト・クラシカルシーンの代表的なアーティストです。
昨年にはコロナパンデミック禍において、傑作「Some Kind Of Pierce」をリリースし、名実共にアイスランドを代表するミュージシャン。これまで、オーラブル・アルナルズは、ピアノの小曲を中心とした古典音楽の雰囲気のある楽曲に真摯に取りくんできたという印象を受けます。
2007年、10月に「Eulogy for Evolution」をErased Tapesから発表し、デビューを飾っています。
翌年、同レーベルからEP「Valiation of Static」を発表した後、ポストロックの大御所シガー・ロスのツアーに同行。
最初期は、エレクトロニカの寄りのサウンドでしたが、繊細で美麗なピアノ曲へとシフトチェンジを図るようになっている印象。
コラボ作品も多くリリースしており、ドイツのポスト・クラシカルアーティスト、ニルス・フラームとの共作「Trance Friendz」を始め、舞踏家ウェイン・マクレガーに楽曲を提供し、それらの楽曲は「Dyad 1909」として発売されています。
オーラヴル・アルナルズは、ヨーロッパのポスト・クラシカルシーンでの活躍の傍ら、サイドプロジェクトとしてアイスランドの電子音楽ユニット、Kiasmosとしての活動も有名で、「Blurred」「Kiasmos」といったクールなスタジオ・アルバムをリリースし、幅広い音楽のジャンルで活躍しているアーティスト。今後のヨーロッパの音楽シーンのおいて、ニルス・フラームと共に再注目するべきセンス抜群のミュージシャンです。
「Partisans」 2021
TrackListing
Bonoboをゲストとして迎え入れたことでも大きな話題を呼んだ前作のスタジオアルバム「Some Kind of Piece」2020の「We Contain Remains」は、個人的にもとても好きな楽曲で、オーラブル・アルナルズの最良の作品と言っても差し支えない作品でしょう。この作品を聴いてとても感動したのは、この薄暗いコロナ禍の時代において、このような美麗な明るさを持った楽曲を生み出してくれる素晴らしいアーティストが世界にひとりでもいたという事実に対する感謝、この感情に尽きるように思えます。
そして、この素晴らしい流れを引き継いでのシングル「Partisans」は、十年前に録音しておいた未発表の作品を収録した来月発売のEP「The Invisible」からのシングルカットで、先行リリースという形となります。
前作「We Contain Remains」と同じく、英、ロンドンの電子音楽を専門に扱うインディーレーベル”Mercury KX"から10月1日にリリースされたばかりのシングル盤です。
なぜ、今までこれらの楽曲がリリースされなかったのかと思うほどクオリティの高いポスト・クラシカルの王道を行く二曲が収録。二曲ともに映画音楽のようなピクチャレスクな叙情性に彩られ、音楽に耳を傾けているだけで、美しい風景を瞼の裏に呼び起こすかのような雰囲気をもった楽曲です。
特に、弦楽のハーモニクスが上質な響きを演出する一曲目の「Patisans」は沈思的なトラックで、内省的な色彩感のあるハーモニクスにより華麗に彩られています。また、二曲目の「Epilogue」は、「Some Kind of Piece」の流れを汲んだ美麗なピアノの小曲。終盤部の弦楽器のハーモニクスの盛り上がりは聞き逃せません。
これまで発表されなかったという事実が本当に信じられないほどの完成度の高い傑作です。
清冽な水のような澄明な輝きをもった素晴らしい楽曲で、オーラブル・アルナルズの十四年というキャリアの中で最良のトラックに数えられ、ポスト・クラシカルの代表的作品として、十二曲入りのアルバムのようなボリューム感のある傑作。
今作を聴いていると、来月リリース予定のEP「The Invisible」(Mercury kx)の発売が待ち遠しくなり、その出来栄えに大きな期待を抱かずにはいられません。
楽曲のご視聴は以下MERCURY KX 公式HPにて