Sam Fender
サム・フェンダーは、英国ノース・シールズ出身のシンガーソングライター。
幼少期から音楽一家に育ち、父や兄と共にドラムやピアノの演奏に親しむ。特筆すべきなのは、2011年、英国のドラマシリーズ「Vera Season 1」に出演するなどテレビ業界で活躍しています。
2010年にパブでの演奏中にベン・ハワードのマネージャーにスカウトされ、フェンダーのプロミュージシャンとしての歩みは始まりました。
2017年には、ユニヴァーサル・ミュージックからリリースされた「Play God」で華々しいデビュー。本格派のシンガーソングライターとしてイギリスのポップス/ロック界で注目を浴びる。2018年にはBBC Sound Of 2018年に選出。
さらに、その翌年の2019年には見事ブリット・アワードの批評家賞を受賞。また、サム・フェンダーのデビューシングル「Play God」は、サッカーゲームFIFA19において使用されています。
2019年にはイギリスの最大級の音楽フェスティバル、グランストンベリーへの出演が決定していましたが、声帯の不調のため大事をとり出演を断念する。
しかし、その後のハイドパークの公演でボブ・ディラン、ニール・ヤングのサポート・アクトを務めています。同年には、東京、大阪のサマーソニックに出演していることも付記すべきでしょう。
サム・フェンダーは、非常に伸びやかで清涼感あふれる声質のシンガーで、U2のボノの声質を彷彿とさせます。
これまで四年という短いキャリアにおいて、玄人好みの作曲を行い、どことなくAOR周辺のアーティスト、特にポリスの全盛期の音楽性を現代に引き継いだかのような素晴らしい楽曲をこれまでに残しています。作曲においても深みと渋みを持ち合わせ、若々しさと老獪さを同時に持ち合わせたアーティスト。フェンダーの生み出す音楽性は、聞く人を選ばない王道のポップス/ロックと言えるでしょう。
サム・フェンダーの音楽の題材としての興味は、他のイギリスのスターのように、個人的な問題でなく、世界に向けて注がれています
U2やトム・ヨークの次世代を担う「新たな2020年代のイギリスのスターの誕生の瞬間」と銘打っておきたい現在のイギリスのミュージックシーンで注目すべきアーティストです。
「Seventeen Going Under」2021
Tracklist
1.Seventeen Going Under
2.Getting Started
3.Aye
4.Get You Down
5.Long Way Off
6.Spit Of You
7.Last To Make It Home
8.The Leveller
9.Mantra
10.Paradigms
11.The Dying Light
12.Better Of Me
13.Pretending That You're Dead
14.Angel In Lothian
15.Good Company
16.Poltergeists
Seventeen Going Under Sam Fender Offical
Listen on YouTube:
https://m.youtube.com/watch?v=WAifgn2Cvo8
今週の一枚として御紹介させていただくのは、サム・フェンダーの10月8日にリリースされたばかりの通算二作目となるスタジオ・アルバム。
サム・フェンダーは、イギリス国外ではまだそれほど知名度を獲得していないアーティストですが、彼の新作は勢いと瑞々しさの感じられる傑作、この作品リリースによって多くのリスナー、及び音楽シーンからの大きな注目が注がれることが予想されます。
このスタジオ・アルバムは、16曲収録、ランタイムが一時間二分というように近年類をみないほどのボリューム感で構成されています。さらに、アップテンポのロックナンバーとバラードソングがバランスよく配置されており、一時間という長さではありながら、全体の構成が引き締まっているため、聴いていてそれほどストレスを感じることは少ないでしょう。
サム・フェンダーは、基本的にインディー・ロックのアーティストとしてカテゴライズされています。まだ二十代と若いアーティストですが、このシンガーの才覚が並外れているため、インディーと称するのは礼に失するかもしれません。それほどまでに、伸びやかで、はつらつとした力強さ、メジャーアーティスト特有の大きな目のくらむほどのオーラの感じられるヴォーカリストです。
リードトラック「Seventeen Going Under」から清涼感のあるナンバーであり、再生するまもなくサム・フェンダーの生み出す独特な世界観の中にリスナーは惹き込まれていく。デビュー時の「Play God」に比べると、フェンダースのヴォーカルの存在感がましているようにも思え、抑えがたいほどのパワフルさが録音から如実に伝わってきます。
フェンダースの声は、バックトラックに埋もれるどころか、歌ひとつの迫力で曲全体をぐいぐい引っ張っていく。これほどの力強さは近年のアーティストにはなかったもので、大きな「何か」を感じます。
続いての二曲目「Getting Started」も同じように、サム・フェンダーのヴォーカルの清涼感と力強さが際立った快作。アルバムの初めから展開されるのは非の打ち所のない痛快なポップス/ロックの王道中の王道。
ドン・ヘンリーの時代のAORを彷彿とさせるサックスのアレンジメントを施した清々しく爽やかなポップス/ロックですが、特に、このシンガーのボーカルのビブラート伸びというのは凄まじく、全身の骨格全体を使って歌っているのを感じる。
歌手として並々ならぬ才覚が作品全体に迸っており、初めてこのフェンダースの最新作を聴いて思わずにはいられなかったのは、U2、ポリスのUK黄金時代の艶やかさ、華やかさ、ガツンとやられるようなインパクトが今作には宿っているということ。
他にも、 古き良き時代のブリット・ポップの黎明期、U2、The Wedding Presentsの楽曲性を彷彿とさせる四曲目「Get You Down」は、インディー・ロックとしてコアな雰囲気を持ち併せつつ、2020年代の”Modern Brit Pop”の隆盛を告げ知らせる華やいだ名曲として聞き逃がせません。
コードは、一曲を通して大きく変化しないにも関わらず、変化に富んで聴こえるのは、このシンガーの歌が奥行きがあるからでしょう。聴いてると、俄然パワーがみなぎってくる不思議な魅力を持った楽曲。これはソングライティング、フェンダーの歌が異質なエネルギーを発しているからでしょう。
これらのアップテンポなロック曲の他に、絶妙な配置でまったりとしたバラードが収録されており、「Mantra」「Last To Make It Home」は、作品全体としての均衡を絶妙に保っており、アルバムの序盤で高ぶった精神を落ち着かせてくれる秀逸なバラード、アルバム後半部への流れを形作っていきます。
アルバムの後半部は、前半のアップテンポなロックソングを中心とした構成とは打ってかわって、落ち着いた雰囲気が漂っています。特に、作品としての最高潮を迎えるのが、十一曲目の「The Dying Light」、ここでは古典的バラードソングの醍醐味が伸びやかなサム・フェンダースの美麗で力強いヴォーカルと共に堪能することが出来ます。特に、この楽曲の後半部は感動ものです。
アルバムの最後を飾るピアノの弾き語りの「Poltergeist」は、このSSWの真骨頂ともいえる楽曲。ポップスとして何らひねりのない素直な感慨がシンプルなピアノ演奏と共にソウルフルに歌いこまれています。名シンガー、ビリー・ジョエルの作風を彷彿とさせる雰囲気がある渋い一曲で、なんらのごまかしのないフェンダー自身の歌を直情的に表現した名バラードといえそうです。
Sam Fender Offical
References
Wikipedia-Sam Fender
Last .fm
https://www.last.fm/music/Sam+Fender