今年1月31日に開催予定だったアメリカ最大の音楽祭、グラミー賞は、今年始め無期限の延期がアナウンスされたが、新しい日程と会場が公式に発表された。2022年のグラミー賞は、ラスベガスのMGMグランドガーデンアリーナに会場を変更し、開催日程についても4月3日日曜日に繰り越された。
グラミー賞を主催するレコーディングアカデミーとアメリカの放送局CBSは、このアメリカ最大の音楽式典の延期について当初、以下のような共同声明を、公式ウェブサイト上で提出している。
「市や州の役人、健康と安全の専門家、アーティストコミュニティ、そして、多くのパートナーと慎重に検討し分析を行った結果、レコーディングアカデミーとCBSは、第64回グラミー賞を延期することを決定しました。
私達の音楽コミュニティの人々、ライブの聴衆、そして私達のショーを制作するためにたゆまぬ努力をし、何百もの人々の健康と安全は私達の最優先事項でもあります。オミクロンの変種を取り巻く不確実性を考えると、1月31日に開催することは単にあまりにも多くのリスクを含んでいます」
この声明に続いて、今回、賞を主催するレコーディングアカデミーとCBSはグラミー賞の日程及び会場の変更を正式に決定した。上述したように、授賞式はラスベガスのMGMグランドガーデンアリーナで4月3日に開催される。
しかし、この日程変更に全く波及効果がないとは言いがたい。 これは、同日開催されるCMTミュージックアワードに日程が重なることになる。グラミー賞は、アメリカの音楽賞として最大の権威を持つ賞として古くから知られてきたが、近年、その影響力が低下しつつあり、国内での注目度も低下している。nprによると、昨年のセレモニーでは、視聴者数は、880万人に減少している。これは、前年の2020年の数値から、53%の減少率を示しているという。
また、2021年の式典では、ザ・ウィークエンドがノミネート後、完全なボイコットを宣言している。ザ・ウィークエンドの抗議の矛先は、グラミー賞の最初の投票組織である匿名委員会へと向けられていた。
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ザ・ウィークエンドの行動は大きな波紋を呼んでおり、今後、アーティスト側もこの式典に対してボイコットを行うアーティストも少なからず出てくる可能性もある。(因みに、グラミー賞は、その昔、1970年代後半近辺には、ブラック・ミュージックに理解のないレコーディングアカデミーの評者が、ブラックミュージック部門受賞作を恣意的に選出していたと、後年、米ビルボードの記者を務めていた人物が告発している)上記した、視聴率の低下、あるいは、国民の関心の低下を示す数値は、グラミー賞の権威性、賞に対する信頼性自体が揺らいでいる証だろう。
ザ・ウィークエンドのセンセーショナルなボイコットの事実を受けて、グラミー側も選考過程の透明性や信頼性を高めるべく苦心を重ねており、賞のファイナリストの名簿の公平性をより高めるため、選考過程における是正を図っている。その詳細としては、今回、新たに投票の匿名委員会の廃止をし、次いで、ジャンルカテゴリーの受賞者の総数を拡大する追加決定を行った。
このアメリカ最大の夜の音楽祭、グラミー賞の司会進行役には、お馴染み有名コメディアン、デイリーショーにも出演するトレバーノアが務める。新たに日程と会場が組み直された第64回グラミー賞の式典の模様は、Paramaount+生中継されるほか、ストリーミング配信もされる予定だ。