【Review】  Posture & The Grizzly 「Posture & The Grizzly」

 

 Posture & The Grizzly


 

Posture & The Drizzlyは、アメリカ、コネチカット州にて、2008年にJ Nasty(Jodan chmielowsli)を中心に結成されたメロディックパンク/エモーショナル・ハードコアバンド。

 

現在、コアなファンの間でひっそり親しまれているバンドではあるものの、おそらく、今後、何らかのきっかけさえあれば、2020年代のアメリカのパンクシーンを牽引していくようなbigな存在になっても全然おかしくない話である。このバンド、PTGは、現在スリーピースとして活動中で、最初はJ Nastyのソロ・プロジェクトの一貫としてバンドが立ち上げられている。


2002年頃、フロントマン”J Nasty”は、Blink 182の楽曲に触発を受け、彼は最初のギターを手に入れ、ソングライティングを同時に始めている。コネチカット生まれのJ Nastyは「Take Off Your Pants And Jackets」2001の原盤を友だちから借り、Blink182のアルバム、そして、テム・デロングをを一つの目標として若い時代から自らのパンクロックスタイルを追究してきた。

 

1990年代から2000年代にかけて隆盛をきわめたポップパンク/エモコアのムーブメントは、以前の勢いこそなくなり、一部のしぶといポップパンク勢だけが息の長い活動を続けていく中、J Nastyは、このポップパンク/エモコアの新たな可能性を探り続けた。その後、J Nastyは、2008年、Posture &The Grzzlyをコネチカットのハートフォードで結成し、2014年にデビュー・アルバム「Nusch Hymns」をBroken World Mediaからリリースする。

 

そして、J Nastyの上記のジャンルを流行に関係なく突き詰めていった成果が、二作目のアルバム「I Am Satan」で顕著に見られた。Fall Out Boyを彷彿とさせる痛快なポップパンクチューンがずらりと並んでいるこの珠玉のアルバム作品は、熱心なパンクファンの間で好意的に受け入れられ、ホットな話題を呼び、2010年代のポップ・パンクの代表的名盤とも言われている。ぜひ、このあたりのジャンルのクールな音楽をお探しの人にチェックしてもらいたい作品だ。

 

また、2021年末、全米7箇所を回るツアーを予定していたポスチャー&ザ・グリズリーは、一般的な人々の健康のため、ツアーを自主キャンセルして、パンク・ロックバンドらしい勇気のいる決断を行っている。2022年、又、機会を改めて行われる次のツアーに期待したいところである。

 

また、日本のツアーもそのうち実現してくれたらな、とファンは心待ちにしているに違いない。

 

 

 

Posture & The Grizzly 「Posture & The Grizzly」

Near Mint

 

 


Posture & The Grizzly 「Posture & The Grizzly」




 

ポップパンク/エモコアの名盤の呼び声高い前作「I Am Satan」に続き、この2021年12月にNear Mintからリリースされた「Posture & The Grizzly」も同じように名盤のひとつに挙げてもよい作品で、ポスチャー&ザ・グリズリーがFall Out Boyに比する実力を持っていると証明してみせている。

 

前作の「I Am Satan」に続いて、今作「Posture & The Grizzly」はポップパンクとエモコアの中間を行く王道サウンドに挑む。

 

アルバムの前半部は、「Creepshow」「Black Eyed Susan」を始め、秀逸なポップパンクがずらりと並び、迫力のあるサウンドを全面展開している。疾走感があり、勢いの感じられる往年のBlink182やNew Found Gloryを彷彿とさせる快活サウンドでメロコアキッズの心を鷲掴みにするはずだ。

 

そして、アルバムの後半部では、前半部とは雰囲気が一転し、「Melt」「Secrets」といった、Further Seems Foever,The Appleseed cast、又は、Cap 'n Jazzを彷彿とさせるコアなエモサウンドに転換を果たしている。

 

特に、エモーショナル・ハードコアとしての歴代の名曲にも入っても不思議ではないのが#13「Secrets」。

 

この極端に様変わりする外向性と内向性の両側面を併せ持つ、タフでありながらエモーショナルなサウンドが、J Nastyのソングライティングの強みであり、ポスチャー&ザ・グリズリーの最大な魅力といえる。

 

ポスチャー&ザ・グリズリーはこの表題作において、今や、過去の音楽というような見方もされる向きもあるポップパンクやエモコアといったサウンドが未だに現代において魅力的なジャンルであることを証明してみせている。

 

これは、フロントマンのJ Nastyが、ポップパンク/エモコアというジャンルを、流行とは関係なく追究してきたからこそ顕れた大きな成果である。

 

 一般的な知名度という面で恵まれていないポスチャー&ザ・グリズリーであるものの、この作品において力強いサウンドを提示している。それは、きっと、多くのパンクファンの心をグッと捉えるであろうに違いない。