Padro The Lion
ペドロ・ザ・ライオンは、1995年に米国、ワシントン州シアトルにて、デヴィッド・バザンを中心に結成されました。インディーロック/エモシーンの中心的な存在として息の長い活動を行っています。
2002年にはEpitaphから快作「Control」をリリース、特にこのアルバムに収録されている「Rapture」は、USインディーロック/エモの隠れた名曲にあげられます。その後も、バラード楽曲を主体とするエモ界の伝説的な存在"Jets To Brazil"との共通性も少なからず見いだされるフロントマン、デイヴィット・バザンの良質なメロディーセンスを活かした「Arizona」をリリース。
結成当初から、Pedro The Lionは、デヴィット・バザンのソロ・プロジェクトの延長線上にあるスリーピースバンドとしての活動を行っていましたが、2006年、ハザンが外活動を始めたため、バンドは一度解散する。
その後、2017年後半に、デヴィッド・バザンは、バンドを再構築し、再び活動を開始する。
ペドロ・ザ・ライオンは、これまでのキャリアにおいて、六作のフルレングスアルバムのリリースを行っています。
バンドは政治的および宗教的なテーマを掲げ、一人称の物語形式で歌詞が紡がれるのが特徴。エモ、パンク、スロウコアをかけ合わせた独特な雰囲気を持つバンド、いかにもアメリカらしい魅力を持つサウンドが魅力です。
「Havasu」 Polyvinyl
Tracklisting
1.Don't Wanna Move
2.Too Much
3.First Drum Set
4.Teenage Sequencer
5.Own Valentine
6.Making the Most of It
7.Old Wisdom
8.Stranger
9.Good Feeling
10.Lost Myself
さて、今週のおすすめとして紹介させていただくのは、1月20日にサプライズリリースされたPedro The Lionの「Havasu」となります。現在、デジタルヴァージョンのみが配信されている作品です。
また、NPR Musicでは、このリリースに際して特集を組み、マッカーサーフェローシップ賞を受賞した詩人、作家、文化評論家のハニフアブドゥラキブとデヴィット・バザンの対談企画が組まれています。
https://www.youtube.com/watch?v=G5sOTIEyjUo
Pedro The Lionの中心人物、デヴィット・バザンは、今回のサプライズリリースにおいて、今作「Havasu」が2019年にリリースされた「Phoenix」の続編であると明らかにしまいます。この一連のコンセプトアルバムの構想は、5つの連作となる予定で、今回のリリースは二番目の作品と当たります。
次の作品がどのような意図で生み出されるのかについてはまだ詳細が明らかにされていませんけれども、少なくとも、今回の構想については、デヴィット・バザン自身の若い少年時代の淡い回想、音楽を介しての長い長い記憶の旅を企図する目的で制作されました。
「Havasu」は、アリゾナ州に実在するコミュニティで、バザンはこの土地で中学生時代を一年過ごしています。
本作は、彼の淡い少年時代の記憶に基づかれ制作された作品で、アルバムのコンセプトについて、デヴィット・バザンは以下のように説明しています。
「今回のアルバムの主要なテーマとなったハバス湖は、曲がりくねった丘の中腹にある道路のコミュニティで、1960年代に元のロンドン橋の煉瓦ごと再建されたのと同時に生み出された土地なんだ。
このなんともソウルフルで、荒涼としている風景の中にある合理的であり、また奇をてらったような場所でもある。当時、僕は中学生で、一年間だけアリゾナシティに引っ越してきたんだ」
デヴィット・バザンは今回の新作を生み出すにあたり、アリゾナのハヴァスを四回再訪し、自分の記憶が確かなるものなのか下調べをしてから、ソングライティングにあたった。
彼は、アリゾナのハヴァスを訪れ、少年時代の様々な回想を蘇らせた。 訪れたのは、自分が少年期に過ごした思い入れの深い場所、中学校の校舎、魔法のようなスケートリンク場、その他懐かしい場所をハザンは訪れたことにより、長いあいだ、抑圧されていた感情を呼び覚ますことに成功した。
「これらの思い入れのある場所を訪れることはものすごい効果があった。私が三十年間覚えていなかった場所にあらためて接してみたことで、隠されていた記憶が洪水のようにあふれてきたんだ」
「Havasu」は、前作「Phoenix」で共同制作にあたったプロデューサー兼エンジニアAndy・D・Parkを招き、全ての楽曲で、PTLのギタリスト、Sean T.Laneの助けを借りて制作がなされています。デヴィット・バザンは、殆どのソングライティングを手掛け、アレンジ、演奏を自ら行っています。
長年にわたり、コラボレーションを務めているAndy Fittsのシンセサイザーの演奏の魅力はもちろんのこと、前作「Phonix」の最終曲として収録されている「Leaving The Valley」のレコーディングに参加したSean T.Laneの意図的にタイムラグを設けたかのような独特なギターリフが展開される「Don't Wanna Move」は、アルバム全体を聴き終えた後、表向きの素朴な印象とは異なり、驚くほどあざやかな印象をもたらすはずです。
他にも、このコンセプトアルバムにはインディーロックの最高峰と称するべき楽曲が数多く収録されていますので聞き逃せません。
特に、今作のハイライト「Teenage Sequencer」「Own Valentine」といった素朴な雰囲気と深い味わいのある楽曲を聴くにつけ、デヴィット・ハザンは活動二十年、アーティストとしてついに山の頂へと登り詰めたと言えるでしょう。
「Havasu」のリリース情報につきましては、以下リンク、polyvinyl recordsの公式HPをご覧下さい。
https://www.polyvinylrecords.com/