Metoronomy
メトロノミーは、イギリスのロンドンで1999年にジョセフ・マウントによって結成されたエレクトロニックバンド。
元々は、ジョセフ・マウントがドラムを演奏していたバンドのサイドプロジェクトとして始まった。メンバーのライナップは、ジョセフ・マウント、オスカー・キャッシュ、アンナ・プリオール、ベンガ・アデレカン、マイケル・ラベットで構成されている。
ジョセフ・マウントは父親から渡された古いコンピューターを使い、ホームレコーディングとしてエレクトロニックをはじめた。彼は、古めかしいレトロな音色を面白く思い、たとえば、ジャーマンテクノのようなシンセサイザーの古いプリセットを用いた音楽性は、現在もバンドの重要な魅力となっている。
ジョセフ・マウントは、オウテカや、ファンクストロングといったアーティーストの音楽性に強い影響を受けている。その後、フロントマンのマウントは、ロンドンからブライトンに拠点を移し、ガブリエルとオスカーの両者をバックバンドのメンバーとして採用。
メトロノミーのデビュー作は2006年にリリースされた「Pip Paine」となる。ジョセフ・マウントはバンドの活動と並行して、リミックスを行ない、プロデューサーとしての知名度を獲得していく。
ジョセフ・マウントは、バンドの活動よりも、しばしば、ゴールドフラップのリミックス作品に参加するなどクラブ・ミュージックよりの活動スタイルを行っていた。 しかし、彼のリミックス作品は、長い間、その実力に比べると不当に低い評価を受けて来たように思える。U2の「City Of Bliding Lights」は、リミックス作業が行われていたにも関わらず、レコード・レーベル側にリリースを拒絶された経緯があった。
二作目となるアルバム「Nights Out」は2008年リリースされ、Kris Menaceによりリミックスがなされ、「Radio Ladio」、「A Thing For Me」といった良曲が収録されている。また三作目「English Riviera」では、軽快でテクノポップ感を打ち出した秀作で、時代性と距離をおいた独自のレトロな音楽性を追求している。メトロノミーはコンスタントに作品のリリースを行ない、2020年には、バンドの代表作のひとつ「Metronomy Forever」を発表している。
結成以来、メトロノミーは、ジャスティス、ブロック・パーティ、CSS、 ケイト・ナッシュといったビックアーティストのツアーステージにおいて、数々のサポート・アクトを務めている。
メトロノミーは音楽性だけではなく、バンドキャラクターの視覚性にも力を注いでいる。ライブギグにシンプルなダンスルーティンとライトショーを取り入れ、メンバーは胸にプッシュボタンライトを装着、ライブパフォーマンス中にそれを切り替えるといったユニークなライブアクトを行っている。
「Small World」 Because Music
Tracklisting
1.Life and Death
2.Things will be Fine
3.It's goos be back
4.Loneliness on the run
5.Love Factory
6.I lost my mind
7.Right on me
8.Hold me tonight
9.I have seen enough
UKのエレクトロニックバンドの六作目「Small World」は、メトロノミーのバンドとしての円熟期が到来したことを象徴するような作品です。
これまでのテクノ・ポップ、エレクトロポップの要素に加え、何か心の奥深くからにじみ出るような叙情性が滲んだようなアルバムです。
それは、表向きの華やかさのあるこのバンドの主な性格に加え、何か噛みしめるようにメロディーやリズムを刻むバンドのレコーディング風景が実際の音楽からは想像されるかのようです。
この作品には、バンドサウンドの骨格を支えるジョセフマウントの音楽フリークとしての姿が伺え、ときに、うるわしく、はなやかで、澄んだような雰囲気をもってふんわりとバンドサウンドが展開されていきます。それはアルバム・ジャケットに描かれている安らいだ印象のある絵画のような雰囲気を思い起こさせます。また二十年以上のキャリアを持つバンドとしての音楽に対する矜持のようなもの、それがノリの良いリズム、グルーヴといった形に現れているのです。
このアルバムは、テクノ、ポップ、さらにオルタナティヴ・ロック、コンテンポラリー・フォークと様々な要素が込められ、ジョセフ・マウントが若い時代から親しんできたであろう音楽性が絶妙な形で展開されていきます。
それは、時に、ベル・アンド・セバスチャンのような優しげな穏やかな雰囲気を持っていたかと思えば、デビッド・ボウイやT-Rexの全盛期のような華やかさもあったりと、メトロノミーの五人にしか紡ぎ得ない独特な雰囲気を持った「小さな世界」が生み出されていく。それほど音楽性には派手さはないものの、実に、多彩な音楽が淡い叙情性を交えてゆったりと展開されていきます。
「Life And Death」、「Things will be fine」、「Love factory」といった今回の六作目のアルバムのハイライトをなす楽曲で、メトロノミーは、これまでのキャリアにおいて培ってきた音楽性の土台の延長線上にある、癒やしや穏やかさといった近年メインストリームの音楽が忘れがちな要素を、巧みにエレクトロポップ、インディーロックといった要素を交え、良曲として昇華しています。それは意図して狙っているというよりかは、二十年の月日を経て、さながら植物がゆっくりとゆっくりと育まれていく過程のように、自然とそうなったようにも思えるのです。これが、このアルバム全体の印象を、渋さがある一方、親しみ溢れるものにしています。余計な力が抜けており、それが多くの音楽ファンにとって近寄りやすい印象を与えることでしょう。
「Small World」は、旧来のテクノ、エレクトロ・ポップ、特に1970年代あたりの電子音楽やダンスミュージックを踏まえた上、親しみやすいポップスとしてアウトプットされています。聴けば聴くほど旨味が出てくるような渋さがあり、アルバムジャケットのような華やいだ色彩を感じさせる。
現代の流行の音楽とは、一定の距離を置き、時代に流されず、バンドとして徹底的に好きな音楽を追求した結果、生み出された良盤。もちろん、最新鋭の音楽が常に最もすぐれているわけではないこと、現代の音楽、過去の音楽には、それぞれ異なる良さが見いだされることを、メトロノミーのフロントマン、ジョセフ・マウントは、おそらくだれよりも深く深く熟知しているのです。
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*しばらくの間、アルバムレビューでのスコア、評点制度は休止致します。何卒ご了承下さい。