【Review】 LITE 「Fraction」




 LITE

 


2003年に結成された日本のポストロック/インストゥルメンタルロック・バンド。 

 

natumen、3nd、Toeと共に2000年代から最初期のポストロックシーンを牽引し、日本のポストロックの独自のスタイルを形作った最重要のロックバンドである。アメリカのドン・キャバレロにも比する、アクロバティックなめくるめく曲展開がバンドサウンドとしての特徴。移調や変拍子を交えたバンドアンサンブルは超絶技巧の領域に達する。現在まで六枚のスタジオ・アルバムをリリースしている。

 

2006年のデビュー当時から、独自のプログレッシブで鋭角的なリフやリズムから成るエモーショナルでスリリングな特徴をもつ楽曲は、たちまち国内外で話題を呼び、最初期の「LITE」「Fimlet」はヨーロッパでも発売され、その後、アイルランドツアーを敢行している。

 

2010年に、LITEは、シカゴのミュージックシーンの最重要人物、Tortoiseのジョン・マッケンタイアをエンジニアに迎えて、シカゴのSoma Electric Music Sudioでレコーディングを行ない、「llluminate」をリリースした。その後、アメリカのインディーレーベル「Topshelf」と契約を交わし、USツアー、アジアツアーを精力的にこなしながら、国内の音楽祭、フジ・ロック・フェスティヴァル、サマー・ソニック、ライジング・サン、といった著名なイベントへの出演を重ねていき、ポストロックバンドとしての不動の地位を確立していった。

 

2019年には、Toeの美濃隆章、JawboxやBurning Airlinesの活動で知られるJ.Robbinsをレコーディング・エンジニアに迎え、六作目の「Multiple」を発表している。また、LITEは劇伴音楽も手掛けており、大泉洋主演「騙し絵の牙」「Bright:Samurai Soul」といった映像作品のサントラを担当している。

 

LITEは、これまでの作品の多くを”I Want The Moon"をはじめとするインディーレーベルからリリースしている。日本国内ではメジャーレーベルのアーティストに近い人気を誇るバンドであるものの、2006年のデビュー当時からLITEのストイックかつDIYな活動形態は依然として変わることがない。

 

 

 

 

「Fraction」 I want the moon

 

 

 

 

 

 

Tracklisting

 

1.Infinite Mirror The Vinny Club 8-bit

2.Pirates And Parakees Dark Dark Horse Remix

3.Image Games De De Mouse 4+1Remix

4.100 Million Rainbows Kozo Kusumoto Remix

5.Pirates And Parakees The Department Remix

6.Shinkai feat.Robin Aoki

7.Infinite  Mirror feat. TomotakaTuji

8.D feat.Tomotaka Tuji

9.Film

10.Clock Work Junlzawa Remix





今年2月23日にリリースされた「Fraction」は、LITEの既存発表曲やアウトテイクを、リミックス、コラボレーション作品として配信を通し発表していくという独特なスタイルが取られ完成へと導かれた作品である。 


最近のインディーロックバンドの一つの流行として、例えば、スコットランドのモグワイのリリースを見ても分かる通り、自作品のリミックス作品をリリースするというスタイルがトレンドになっているのが見受けられる。


しかし、正直なところ、リミックス作品自体を成功させるのはかなり至難の業のように思える。それはなぜかといえば多くのゲストやコラボレーターを招聘しすぎたせいで、船頭多くして船山に登るという結果にもなりかねない。つまり、ダンスミュージック専門のアーティストならいざしらず、ロックバンドのリミックス作品というのは、音楽性自体のニュアンスが変わってしまうため、もし、そのリミックス作の出来栄えが良くなかった場合、バンドのオリジナルの楽曲の印象を悪くしてしまう場合がある。

 

もちろん、その点で、LITEは、モグワイと同様、経験豊富なバンドだからその心配は一切感じられない。国内外のフェスティバルで豊富な演奏経験があり、演奏技術にもどっしりとした安定感があり、バンド、アーティストとして蓄積された経験があるため、リミックス作品を手掛けたからといって音楽性がぶれたりすることはない。それまでのLITEのイメージが変わったり、後の音楽性が変わることは有り得ないのだ。

 

今作「Fraction」は、前半部では、ロックバンドとしての遊び心が随所に感じられる作風となっている。それは、DE DE MOUSEをゲストとして招いたことにはっきり顕れている。これまでの技巧的なインストゥルメンタル・ロックバンドとしてのキャラクターに加え、時代を明るくさせるような遊び心を音や演奏として表現した聴き応え十分のリミックス作となっている。「Fraction」は複数のリミックステイクが豊富で奥行きのあるバリエーションを持って展開され、ゲーム音楽の影響を感じさせるチップチューン、モダンなUKエレクトロの質感を持ったクールな楽曲が新たに生み出されている。これは、LITEのこれまでとは違ったアプローチを図った実験作品といえる。

 

また、今作は、もちろん、リミックス作としてだけにとどまらず、後半部においてインスト・ロックバンド、ポスト・ロックバンドとしてのLITEの醍醐味もたっぷり堪能できる内容となっている。


Tomotaka Tujiをゲストとして迎えて制作された「Shinkai」もバンドアンサンブルとしての迫力は健在で、息のとれたスリリングな演奏が堪能出来るはず。加えて、エイフェックス・ツインの名曲「Film」のカバーも聴き所といえる。原曲に忠実な解釈を交え、LITE節とも譬えるべき抒情性あふれる魅力的なインストロックに仕上げられているのが見事だ。


さらに、チップチューンとポストロックを絶妙に融合した「Cloclwork」は、LITEがバンドアンサンブルとして新境地を切り開いた瞬間といえる。ここに、ポストロックバンドとしての新しい可能性が示されている点がこのリミックス作自体の魅力をただならぬものにしている。このリミックス作品を聴くかぎりでは、モグワイのような堂々たる風格が漂う。きっとこれから後も、LITEは、日本のポスト・ロックシーンの最前線を力強く駆け抜けくれるに違いない!!

 

 

 

・Featured Track

 

「Infinite Mirror」feat.Tuji Tomotaka

 

 

 

 

 

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