マックス・リヒターは、西ドイツ生まれの作曲家であり、エディンバラ大学とロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックで作曲を学んでいます。その後、映画音楽を中心にポスト・クラシカルのコンポーザーとして活躍して来ました。ソロ作としては「Bluenotebook」を始めとする傑作を持ち、昨年には、Apple TVの「Invasion」のオリジナルスコアを手掛けていることでも知られています。
マックス・リヒターは、2014年、ヴィヴァルディの「四季」を再作曲した「New Four Seasons」を発表しています。今回、この作曲家の記念碑的なアルバムの発表から約10年を経て、マックス・リヒターは、再びヴィヴァルディの四季のサウンドの世界に立ち返ろうとしています。
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今年6月に発売予定である「New Four Seasons」のマックス・リヒターの手による二度目のリコンポーズ・アルバムは、ヴァイオリニストのエレナ・ウリオステの二人のミュージシャンと録音が行われています。さらに、オーケストラ楽曲集「New Four Seasons」は、リヒターがヴィヴァルディの実在した中世イタリアの時代に実際に使用された楽器のためのスコアを再作成し、そこに、新たな現代的なニュアンスを交え、新しいバージョンの楽曲が収録されます。
今回の新作アルバムのレコーディング作業の中で、マックス・リヒターは、ガット弦、ビンテージ・シンセサイザーを使用し、「よりグリッターで、パンクロックのような雰囲気を持つアルバム」を志向しているという。アルバムは、2022年6月10日に、ドイツ・グラモフォンからリリースされる。3月25日、リヒターは、新作アルバムの先行シングルとなる「Spring 1」を公開しています。また、6月16日の木曜日、「Recomposed」の収録曲を、英国の夏の限定ショー「Live At Chelsea」において、Chineke! Orchestraと連れ立ってお披露目をする予定です。
2012年夏にリリースされたリヒターのイタリア・バロック音楽の傑作を再定義した「New Four Seasons」は、22カ国でクラシック・チャートの上位を独占しました。リヒターは、かつて愛していたものの、商業的な音楽とみなされることによって本来の影響力を失ってしまったアルバムとして、この作品を取り上げ、「個人的な救済措置」と呼ばれるものに今回着手することに決めました。彼は、イタリアン・バロックの名手・ヴィヴァルディの音楽の再解釈に着手し、前回よりも新鮮でエキサイティングなものに生まれ変わらせようと試みています。全世界でベストセラーとなった「New Four Seasons」は、「Spring 1」の1億1,000万再生を含む、全体で4億5,000万以上のデジタルストリーミングでの再生記録を打ち立てています。また、この影響を受けて、リヒターの総体的なストリーミング記録は、30億以上という凄まじい数字に上っています。
過去10年間、再作曲を幾度も試みてきたマックス・リヒターは「ヴィヴァルディ自身の色彩を使用したテキストの新しい旅」を行うため、中世イタリアの時代の楽器に関する作品の特別演出に触発されました。「New Four Seasons」は、バロックパレットをスコアに適用、元の4つのヴァイオリン協奏曲の断片を音楽におけるプリズムで屈折させ、また、多種多様な形や色に回転させ、完全に異なるオーケストラ構成で包み込み、それらの断片を変形、破壊させるのです。
リヒターは、今回のリコンポーズ・アルバムにおいて、 電子楽器の使用を再検討し、今回のレコーディングで、1970年代のムーグシンセサイザーを選択しました。これは、リヒター本人曰く、「ストラディバリウスに相当する」といいます。現代のヴァイオリンの音、過去のバイオリンの相違について、マックス・リヒターは、いくらかを交え以下のように語っています。
「現代のシンセサイザーで出力するヴァイオリンの音色、過去のストラディヴァリウスの音の相違については、なめらかなピーナッツバターか、それとも、かりかりのピーナッツバターか、という違いに喩えられると他の誰かが言ってましたけれども、なかなか言い得て妙だと思いましたね・・・」
Chineke! Orchestraは、リコンポーズ・アルバムの制作において、マックス・リヒターと協力し、2018年に「ワルツとバシール」のパフォーマンスでコラボレーションを行っています。Chineke! Orchestraは、2015年、chi−chi Nwanoku OBEにより設立された楽団で、ヨーロッパで最初の黒人で構成された多様な人種を擁するオーケストラです。Chineke!は、クラシック音楽の多様性を祝福し、リヒター自身の言葉を拠れば、「アンサンブルが私達の住む世界の現実をいかに反映できるのか、今後のクラシック音楽の道を照らす規範となりえる」といいます。
今回行われたレコーディングについては、マックス・リヒターと彼のパートナー・ユリア・マールによって設立されたオックスフォードシャーの「Studio Complex」で行われました。今回のレコーディングに参加した作曲家と演奏家は、指揮者なしで緊密に協力しあい、イタリアバロック楽器の技法から、アントニオ・ヴィヴァルディの「四季」のスコアに含まれる彼独自の語法やストーリーテリングに至るまで、音楽のあらゆる側面について真摯な議論を交わしました。
マックス・リヒターの新作アルバムについて、「Chi−chi Nwanoku OBE」は以下のように説明しています。
「それは、以前と同じような物語のような音楽です。この作品は21世紀の世界にひねりについて描かれています」
リヒターは、彼の新たなスタジオでの最初のレコーディングに満足しており、共同作業を行った音楽家への賞賛の言葉を送っています。
「Chineke!は、まだ若い楽団ですから、私達は今回、未来の音楽に取り組んだように感じました。ウリオステについては・・・」と、リヒターは続けて、以下のように語っています。
「正直言いますと、彼女が音楽を語らせる独自の方法を見つけるのを傍から見守るのはとても素晴らしい経験でした!! そう、彼女は今回の制作において、素晴らしい働きをしてくれましたよ!!」
また、今回、英国のオックスフォードシャーのスタジオで行われた録音について、エレナ・ウリオステは以下のように話しています。
「今回の音楽制作は、私にとって有機的であり、素敵で温かいものでした。そして、私がこういったプロジェクトに望む全てが込められているように感じられました」
・Max Richiter「Spring 1」 Deusch Grammophon