The Range 六年ぶりとなる新作アルバム「Mercury」のリリースを発表



 アメリカのDJ、the rangeは新作アルバム「Mercury」を6月10日にリリースすると発表した。新プロジェクトは、「Potential」以来、六年ぶりのスタジオ・アルバムとなる。IDMのアプローチが図られた作品で、ブルックリンからバーモントのグリーンマウンテンに舞台を移して楽曲制作が行われた。


ザ・レンジの新作は6月10日、ドミノ・レコーディング経由で発売される。「これまでで最も幅広い音楽性を感じさせるアルバム」という前評判だ。「Mercury」について、彼は次のようにコメントを添えている。

 

「Rave Music,Grime,MPC Musicにおける私の思い出は、このアルバムの収録楽曲の中に全て表れ出ています」

 

昨日、アルバムリリースの発表と同時に、ザ・レンジは「Bicameral」のエディット版を含む3曲入りのシングル「Ridecar」を公開している。 新作アルバムのメインコンセプトを表現する楽曲「Ridecar」について、彼は以下のような説明を行っている。

 

「Ridecarにおける音楽上の文脈を挙げるとするなら、バッハの前奏曲のフーガの彫刻の破片のようなものです。私は、バッハのバイオグラフィーにある「リチェルカーレ」という概念について初めて聞いたのですが、バッハは自分の名前を作品のピースの中に込めていたようです・・・。また、このRidecarという曲を書いている時、私は、DJプレミアビートを頻繁に聴いていました」

 

今回、ザ・レンジは、器楽曲のフーガ形式をクラブ・ミュージックの中に取り入れ、画期的な作風を新曲「Sidecar」において導入している。例えば、フローティング・ポイントも、現代音楽とクラブミュージックを融合させたアプローチを「Promises」において図ったことは記憶に新しい。そして、ザ・レンジもその流れに追従する。

 

彼も同じように、クラブミュージックの中に純性音楽における形式を発見し、その要素を新たに実験的に導入している。

 

近年、特にアメリカのアーティストにこのような傾向が見られるので、新しい形式が見いだされるかに注目したい。さらに、このシングル曲には、クラブを主戦場とするアーティストらしい深い矜持も見え隠れする。これまでのクラブミュージックのクロニクルともいえるヨーロッパのレイヴ、UKグライムといった、コアなダンスミュージックの雰囲気を滲ませたシングル曲である。