Weekly Recommendation Yumi Zouma 「Present Tense」



 Yumi Zouma


ユミ・ゾウマは、ニュージーランド・カンタベリー・クライストチャーチ出身のオルタナティヴポップバンド。

 

バンドは、クリスティー・シンプソン、ジョシュ・バージェス、チャーリーライダーオリビア・カンピオンで構成されている。バンド名の由来は、メンバーの二人が共に活動をはじめることを薦めた共通の友人の名前にある。


グループとしての始まりは、クライストチャーチで一緒にコンサートを行った歴史にまで遡る。しかし、クライストチャーチの地震が発生した後、複数のメンバーが海外に移動し、その後、電子メールのやりとりによって共同作業を始めるまで、バンドは一緒に音楽を演奏することはなかった。

 

この初期のデモテープが音楽ブロゴスフィア内で注目を集めたことにより、アメリカのレーベルCascineがこのバンドにアプローチをし、契約を結んだ。


2014年から2015年の間、グループは、「EP Ⅰ,Ⅱ」をリリースする。その後、ユミ・ゾウマとして初めてのスタジオアルバム「Yoncalla」をリリースしてデビューを飾る。

 

2017年、通算二枚目のアルバム「Willow Bank」、シングル「December」「Depth(Part 1)」、「Half Hour」をリリースした。三作目のEP「EP Ⅲ」は、2018年にリリースされた。その後、 バンドは、新たにアメリカのポリヴァイナル・レコード/インティア・レコードと契約を結び、通算三枚目となるスタジオアルバム「Truthor Consequences」をリリースした。



「Present Tense」 Polyvinyl Record  2022



 

 

 

Tracklisting

 

1.Give It Hell

2.Mona Lisa

3.If I Had The Heart For Chasing

4.Where The Light Used To Lay

5.Razorblade

6.In The Eyes Of Our Love

7.Of Me and You

8.Honesty,It's Fine 

9.Haunt

10.Astral Projection


 

2020年、ニュージーランドのオルタナティヴ・ポップバンド、ユミ・ゾウマは、グループとしての岐路に立たざるをえなくなりました。

 

このバンドの三作目のアルバム「Truth of Consequence」がPolyvinylからリリースされた日、WHOがCovid-19をパンデミックとして宣言したからです。その後、バンドは初の北米ツアーを開始した直後、全世界は混沌とした状況に陥りました。もちろん、他のアーティストと同様、ユミゾウマもバンドとしての活動の先行きが不透明にならざるをえなかったのです。

 

その後、ユミ・ゾウマの四人のメンバーは世界各地に散らばっていた。あるメンバーは、ウェリントンへ、故郷のクライストチャーチへ、ロンドンへ、ニューヨークへ、一時的にユミ・ゾウマはバンドとして機能不全に陥ったかに思えました。このときのことについて、ユミ・ゾウマの発起人であり、マルチインストゥルメンタリストのチャーリー・ライダーは以下のように語っています。


「混乱してしまった。僕らはこれまで年一枚のペースで仕事をしていたけど、先行きが見渡せない状況下、勢いを失ってしまった」

 

それから、ユミ・ゾウマのメンバーは、2021年9月1日、新作「PresenteTense」を完成させるという制約を設け、時代に即したアルバムの制作に取り掛かります。遠隔リモートと直接的なライブセッションを組合わせることにより、バンドは、停滞の多い時代を切り抜けようと試みる。これまでのシンセサイザー、ギター、ベース、ドラムという基本的なバンドアンサンブルの編成に加え、ペダルスティール、ピアノ、サックス、木管楽器のウッドウイングス、これらのゴージャスなアレンジメントを取り入れ、さらに、アッシュ・ワークマン、ケニー・ギルモア、ジェイク・アーロンといったトップクラスのエンジニアたちが四人のミキシングを手掛けたことにより、アルバムは、以前の三作よりゴージャスな出来になったと言っても差し支えないかもしれません。

 

「4枚目のアルバムなので、少し冒険した曲を作りたかったんだ。他のアーティストたちと仕事をすることは、僕らのコンフォートゾーンの外側に出ることなので、その助けとなった」

 

チャーリー・ライダーが語る言葉に今作の魅力はすべて滲み出ています。これまでの日本のシティ・ポップのような爽やかで口当たりの良いシンセ・ポップの質感に加え、これまでよりもバンドサウンドとしてスリリングな展開が数多くの楽曲に見受けられます。これまでのユミ・ゾウマらしいおしゃれな雰囲気が滲み出た一曲目の「Give It Hell」、さらに、バンドとしての進化が伺える「Where The Light Used To Lay」といった2022年のポップ・アンセムとなる楽曲に加えて、このバンドの本領を示してみせたのがラストトラックの「Astral Projection」です。


ここで、この四人組は、これまでにない深みのあるポップスの傑作を生み出してみせた。というか、ユミ・ゾウマの最高の楽曲の一つをこの苦難多き時代に生み出しました。

 

また、四人は、この作品のテーマに未来という概念を掲げていますが、このラストトラックにおいて、ユミ・ゾウマは、現在状況に足がかりを置いた上で、暗闇の向かう先にある明るい希望に満ち溢れた未来への道筋をこの作品において示してみせています。