スペース・ロケットの打ち上げ、さらには、ロサンゼルスの地下にトンネルを掘ったり、私達をアッと驚かせてくれるのが、テスラのCEOのイーロン・マスク氏なのです。イーロン・マスクは昨日、Twitterの取締役に指名されたというニュースを聞きましたが、少なくとも、以前と同じように、今後も私達の住む世界に大きな驚愕と革新を与えてくれることは間違いないでしょう。
By Steve Jurvetson CC BY 2.0, Link
実は、イーロン・マスク氏は無類の読書好きとしてしられています。彼は宇宙にいない時、絶えず読書の習慣を設けていることでも知られています。彼は、古典的なSF作品から、人工知能に関する複雑な研究に至るまで、これまでの業績を挙げるための支えとなったというように認めています。ほとんどの人々は、毎日本を読む習慣がないといいます。これは、日本でも以前から話題として取りざたされてきました。学生の頃からすでに、勉強やスポーツ、ほかのことに忙殺されており、本と向き合う時間を失っています。また、読書というのは、自分と向き合う時間でもありますし、その大切な時間を完全に失うことは人生においても少なからずの損失といえるかもしれません。
また、読書率の減少は、日本にかぎった話ではないらしく、アメリカの労働統計局が調査した結果では、一般的に、アメリカ人はわずか17分しか本を読まないんだそうです。しかし、この調査の統計結果ですら、近年の活字離れの背景を見るかぎりでは、かなり高い数字のような印象もあります。
そういった点で、マスク氏は、常に本を読むことの重要性を指摘します。彼の多くの業績は、読書によって、事業のイメージを作り、それを達成へ近づけるためのトライアンドエラーを繰り返しているのです。さらに、その事業の成功を後押ししているのは読書により培われた精神性に相違ありません。
イーロン・マスク氏は9つの読書を、私達に薦めます。彼は、私達が生きる上で役に立つ幾つかのノンフィクションの愛読書を推薦しています。それを以下に御紹介致します。
1.
「Steve Jobs」 Walter Isaacson
イーロン・マスク氏と同じように、スティーヴ・ジョブスはテクノロジー業界に彼自身の道を切り拓きました。
革新的な起業家、アップルの創立者の大胆で冒険にみちあふれた人生を記録した書籍です。彼の人生の根幹をなすスピリチュアルな体験、そしてLSDに関するジョブスの最初の体験にいたるまで、ジョブズのサクセスストーリーと彼がその人生の道すがらで格闘した出来事について説明がなされています。
・日本語版 スティーヴ・ジョブズ ウォルター・アイザックソン 井口耕二 Ⅰ、Ⅱ (全二巻)
2.
「Human Compatible」 Stuart Russel
「ヒューマン・コンパチブル」は、人工知能の作製自体が人類の終焉を迎えさせる理由について説明がなされた書です。
これは常に近年、マスク氏が声を挙げて指摘してきた話題でもあります。この本は、社会が向かっている未来に起きるかもしれない潜在的な惨事に対し注意を促し、それを回避する為、何が必要なのかについて論じています。
・日本語版 「AI新生ーー人間互換の知能をつくる」スチュアート・ラッセル、松井信彦 みすず書房
3.
「Zero To One」 Peter Thiel
この本を絶賛したマスク氏は、「ピーター・ティールは複数の画期的な会社を設立した。そしてこの本はそのための方策を示している」とTwitterでつぶやいています。「Zero To One」は、企業がその将来をより正確に見通し、スタートアップが成功するための行動を起こすための方法を探求しています。著者は、彼自身の実体験を元に、いくつかの論説を強化していることも注目です。
・日本語版 ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか ビーター・ティール、ブレイク・マスターズ、瀧本哲史、関美和 NHK出版
4.
「Merchants Of Doubt」 Naomi Orsekes &Erik M Conway
今日の社会では、気候変動や軍事侵攻など様々な目に見える脅威が差し迫った課題として取り上げられるでしょうが、本書では、そういった、環境、喫煙、核兵器といったタイムリーなテーマを扱い、それを科学的論考を交え、二人の著者が共同で研究を行っています。本書では、またフェイクニュースについて取り上げ、上記の問題が、一握りの声高な意見を述べる科学者、また主要メディアを通じてこの問題がどのように取り上げられてきたのかについて説明が行われています。
・日本語版 世界を騙し続ける科学者たち ナオミ・オレスケス、エリック・M・コンウェイ 福岡洋一 楽工社(上下2巻)
5.
「Life 3.0 」 Max Tegmark
イーロン・マスク氏は絶えず人工知能の未来の可能性を探求していますが、人工知能に対する理解の端緒となるであろうのが本書「Life 3.0」です。本書では、MITのマックス・テグマーク教授が人工知能を人間の生活に有益たらしめ、さらに、その技術の進歩が人類の将来の目標と一致することを保証するという説明が行われています。ここでは、AIを悪として見なすのではなく、善なる力として活用できる可能性についての言及が行われています。マスク氏が推奨する数少ない本の一つ。
・日本語版 「LIFE 3.0ーー人工知能時代に人間であるということ」 マックス・テグマーク、水谷淳 紀伊國屋書店
6.
「The Big Picture」 Sean Carroll
人類の未来と起源、そして、人生を魅力的にするための秘訣が書かれているのが、この本「The Big Picture」です。
「全体像」は、私達が知っている世界と、その深奥を十全に理解するため、科学的思考をどのように活用できるかについて斬新な見解が行われています。生命、意識、そして宇宙全体の起源についての洞察に満ちた科学的な調査。この本は、哲学、物理学、生物学が提言しなければならない疑問について、演繹的な方法でその答えとなるヒントが、読者に対してしめされています。
7.
「Lying」 Sam Harris
嘘をつくことはなぜ危険なのかについてこの本では説明しています。そしてそれは、人々が日常的に語る小さな嘘から、世界の舞台で語られる大きな嘘まで、この世に氾濫している虚偽を意味します。本書は、全体的にどうすれば世界がより良く成るのかについての究明が行われているようです。
8.
「Superintelligence」 Nick Bostrom
これまでマスク氏は事あるごとに、完全に調査されていない人工知能についての危険性について度々意見を述べてきました。「AIには最新の注意を払う必要がある」と彼は2014年にツイートを行ない、「核兵器よりも危険な可能性がある」という指摘も行っています。なぜ人工知能が危険なのかについてよく知るために、マスク氏は「スーパーインテリジェンス」を一読する価値があるとおっしゃっています。この本は、機械知能が人間の知性を上回った場合、何が起こるのかについて大胆な調査を行っています。
・日本語版 「スーパーインテリジェンス 超絶AIと人類の命運 ニック・ノストロム 倉骨彰 日本経済新聞出版
9.
「The Wealth Of Nations」 Adam Smith
アダム・スミスの「国富論」は、現代の経済学研究において非常に影響力のある仕事であり、本書は、国家がどのような過程を経て裕福になっていくのかについて緻密な調査を行われています。
(マスク氏が大ファンであるという)アダム・スミスは、この著作において、政府の規制なしに個人が自由市場で自由に利己心を追求することにより国家が繁栄していくという経済理論を提唱しています。
・日本語訳 「国富論」 アダム・スミス 高哲男 講談社学術文庫