NY・ブルックリンを拠点に活動するミュージシャン、グレース・アイヴスは、およそ三年ぶりとなるシングル「Loose」に続いて、6月10日に新作アルバム「Janky Star」のリリースを発表した。この発表に伴い、アルバムからの先行シングルとなる「Lullavy」をリリースしています。また同時にミュージックビデオも公開されています。ローガン・ホワイト監督がこのMVの監督を務めている。
これまでグレース・アイヴスは、過去の昨日において、高所恐怖症、閉所恐怖症といった個人的な感覚の恐怖について主題を取り上げてきました。今回、アイヴスはこれらのテーマから一旦離れ、ジャスティン・ライゼン(チャーリーXCXの作品を手掛けている)をレコードの共同プロデューサーに抜擢し、新たな楽曲のヴィジョンを組み立てようと試みています。今回のレコーディングにおいて、両者は、ロサンゼルスでレコーディングを行ない、アイヴスの成人期に入った経験に根ざし、何らかのアーティストとしての目的意識をより明確にするためのチャレンジを試みています。これらの新たな試みにおいて、現代の流行や主流のスタイルについて、このアーティストなりの疑いが示されており、それらのアメリカのメインカルチャーに対する戸惑いのようなものが楽曲の中に見え隠れしています。「誰もがくだらない星のタトゥーを彫ったり、スティックアンドポークを持っている。誰もが決して完璧ではないし、ラフさを持ってるように思える」と、アイヴスはプレスリリースを通じて述べている。「わたしには、それよりももっと考えるべきふさわしいことがあるように思える。たとえば、もっと、もっと、美しいことを・・・、地球上の星は、たとえばひとつならりの惑星の塊のようにも見えるけれど、宇宙では実際に定義された構造を持っている。そのようなことを考えても良いというようにも思える」
今回のレコードのラストトラックとして収録されている「Lullaby」は、この天文学的な思考を楽曲として具体化したものです。グレース・アイヴス自身による考え、「人間はみな同じ日を何度も繰り返して生きている」という哲学的な考察を宇宙的な視点に敷衍し、その説を強化しようと試みている。さらにより身近な個人的な感覚にもこの楽曲で言及されており、「そのことに伴う相反する感覚、変わらないことへの快適さ、その一方で、内面に浸される不安をについて描かれています。これはとても個人的な歌でもあります」と、アイヴスはこの楽曲解析を上記のように行っています。
アーティストに欠かさざる鋭敏な感覚による日常における受け入れがたい様々な粗さについて、アイヴズは繊細な視点を交え、その現実をしかと直視する。感覚的なもの、哲学的なもの、理知的なもの、さらには超越的なもの、多角的な視点を交えてソングライティングが行われ、シンセサイザー、ドラムビート、ロッピング・キーボード、アイヴズは、器楽的にも様々な手法を導入し、ポピュラー・ソングに新しい気風を取り入れようとこころみます。 歌詞についてもこのアーティスト独特な視点が導入されており、隣人が壁をとおしてSZAにあわせて歌をうたうのを聴くアイヴズ。それらの孤独についてなまなましく克明に描いてみせている。「悲しいことはなにもない/それは、わたしが、あらかじめ考えていたことなのだから・・・」という歌詞は、きわめてこのアーティストらしいセンシティヴな感覚、瞬間的な繊細性を端的に表しています。