【Review】 Kate Bollinger 「Look at it In The Light」

 Kate Bollinger 「Look at It in the Light」

 

 


 
 
Label:Ghostly International
 
Release:4/22 2022

 

 

アメリカのクレイロ、カナダのメン・アイ・トラスト、ノルウェーのガールズ・イン・レッド、近年のベッドルームポップシーンは世界的に魅力的な女性アーティストが数多く活躍しており、その様子は群雄割拠と呼ぶべきか。いささか飽和状態にさしかかっているような雰囲気も見えなくもない。その中で、上記のクレイロのように華々しいセールスこそないものの、頭一つ抜きん出たセンス、ソングライティング能力、口当たりの良いポップスを提示しているのが、アメリカ・バージニア州を拠点に活動するシンガーソングライターであるケイト・ボリンジャーです。

 

これまでに二作のEP「I Don't Wanna Lose」「A World becomes A sound」をリリースし、昨年には新たにGhostly Internationalとの契約にサイン。さらに、アメリカのインディーアーティストと親交が深く、Sunny Day Real Estate、Faye Websterとツアーも行っている。ビックアーティストからの注目度も高く、2019年にリリースしたシングル「Candy」がかのカニエ・ウェストの「Donda」のサンプリングの中に取り入れられていることでも知られています。

 

ケイト・ボリンジャーは、最新作「Look at it In The Light」において、1970年代のフォーク、ポップスをホームレコーディングで再現しようと試みている。もちろん、アルバム収録の楽曲のほとんどが、ホームレコーディングを主体に組み立てられている。そこには、クレイロとの親和性もあり、ギルバート・オサリバンのようなUKポップスに近い、爽やかなアプローチ、もしくは、シルヴィ・バルタンのようなフレンチ・ポップスの甘い感じに加え、ビックシーフのようなアメリカの現代の鋭いオルタナティヴ・フォークの色がほんのり滲んでいる。音楽の歴史的なクロニクルからどういった音、また、歌、フレーズを選択するべきかという直感的なセンスの良さについては、他のアーティストと比べて群を抜いている。その淡い質感をリスナーがどのように捉えるのか・・・、軽いと思うのか、心地よいと捉えるのかが、この作品を気に入るかの分かれ目となるでしょうか。ただ、ビックシーフのようなフォークにおける実験性はほぼ皆無で、オルタナティブ性はない。素直で正直なポップス/フォークといえる。

 

いってみれば、このアルバムは、王道の1970年代のレコード時代の、ロック、ポップ、フォークを、ベッドルームのおしゃれさで彩ってみせたという感じです。口当たりの良い涼やかさのあるポップスとしてはこれ以上はない極上の作品で、そこに、ニューヨークのインディー・コレクティヴ、ミッシェルのような、R&Bやサイケの極彩色がさりげなく付け加えられているのもセンス良し。「Look at it In The Light」は、現代ポピュラー音楽としてのおしゃれさ、かわいらしさを追求したベッドルームポップの真髄といえ、アルバム全体としては、淡々としたオルタナフォーク/インディーポップが展開。この淡白な感じがローファイ好きとしてはたまらなく癖になる。また、スタイリッシュさを感じさせるリミックスが施されているため、さほど肩肘をはらず、気軽にゆる〜く楽しんでいただけるポップ音楽であるように思える。


今回のリリースは、六曲収録のLP盤のみであり、日本盤だけなぜか、CDバージョンがリリースされ、さらにボーナストラックも二曲追加、お得感が半端ではない。EPのようなリリースではあるものの、ベッドルーム・ポップとしては、かなり渋いリリースと言えるのではないでしょうか??

 

(Score:82/100)

 


 

 

 

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