Watashi Wa 「People Like People」
Label: Tooth&Nail
Release Date: 5/20,2022
ワタシワは、カルフォルニアのサン・ルイス・オビスポで2000年に結成されたロックバンドで、何度か活動休止を挟みながら今日まで活動を継続しています。Tooth&Nailと契約するバンドということもあって、初期はポップパンク、エモ寄りの音楽を奏でていますが、コテコテのパンクバンドではなく、どちらかといえば、スタンダードなアメリカンロックをバンドの主な音楽性としています。
先週末、これまでと同じく、USパンクのレーベル「Tooth&Nail」からリリースされた「People Like People」は、ポップ・パンクの質感に加え、アメリカンロック、ソフトロック、エモ、それからほんのりとR&Bの影響を滲ませたミドルテンポのカラフルなロックが展開されています。
さながら、90年代のカルフォルニアのオレンジカウンティのポップパンク/スケーターパンクの全盛期に舞い戻ったかのような音楽であり、グリーンデイやオフスプリング、その後のセイヴズ・ザ・デイあたりのポップパンクムーブメントで完全に消費されてしまったスタイルではあるものの、むしろそれが逆に、2020年代にやると、不思議な新鮮味が感じられるのが興味深い点です。
最初期の00年代のワタシワとは異なり、「How Will We Live?」で聴けるようなトロピカルソウルの雰囲気を擁するリラックスナンバーに新しくチャレンジしているのも面白さが感じられます。その他、パンクバンドらしく、COVID-19を皮肉ったものと思われる「x COVID-19x」もブラックジョークの雰囲気に塗れた興味深いトラックで、メロディックハードコアに奇妙なエレクトロの雰囲気を付け加えた「Land Of The Free」を始めとする、真面目なのかフザケてるのかよくわからないような曲もある。一作品として散漫な雰囲気もありながら、ところどころ瞬間的な煌めきがあり、捉えどころがない反面、バラエティーに富んだ面白いアルバムであることは確かです。
もちろん、このアルバムの楽曲には、表向きには人目をひきつけるような華美さこそ乏しいものの、ソフトロックとして気楽に楽しめる良質な曲も複数収録されており、さらに、バンドとして円熟味が加えられた地味な渋さを滲ませている。ワタシワのアプローチには、少しだけ古臭さを感じる一方、長年、活動するバンドとしての信頼感もある。スピードチューンにそろそろ飽きてきたパンクファンは、このアルバムに何らかの面白みを見出せるかもしれません。
ジョージ・ルーカスが監督を務めた往年の名画「アメリカン・グラフィティ」のようなアートワーク、そして、バンド名の下に記された「愛が答えです」という日本語のメッセージも、なんとなくユニークで可愛く、微笑ましい。アメリカの古き良き時代を体現したようなエモーショナルなアルバムで、現代のミュージック・シーンに大きな影響力こそ与えないと思われるものの、音楽における淡いアメリカン・ノスタルジアへの憧憬が遺憾なく引き出された作品です。
70/100
「Trust Me」
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