Say Sue Me 「The Last Thing Left」
Label: Damnably
Release: 2022年5月13日
韓国、釜山のロックバンド、セイ・スー・ミーは、インディーロックバンドでありながら国内ではBTSに匹敵する知名度を持つ。
セイ・スー・ミーは、2013年にデビューを飾ってから、翌年、ロンドンのレーベルDamnablyと契約を結び、楽曲がBBCラジオでオンエアされたほか、シングル「Old Town」が、NPR,KEXP、Pitchforkで取り上げられる。さらに、4月にセカンド・アルバムをリリースし、同年8月には日本で公演を行う。翌年、「韓国大衆音楽賞」では、BTSと並ぶ最多5部門でノミネート。その後、バンドは活動の幅を広げ、ヨーロッパ、アジア、アメリカでツアーを行っています。
2019年にドラマーを亡くした後、彼らは悲哀に沈むことなく、それを愛情という形でこのアルバムで表現しようと試みています。他の多くのアーティストと同じように、パンデミックに直面した後、セイ・スー・ミーはレコーディングを故郷の釜山のスタジオ、そして、メンバーの自宅の双方で行っている。また、そう言ったベッドルーム的なアプローチの特徴に加え、アルバムジャケットに表されているとおり、なんとなく可愛らしさが込められているのが魅力。
英国のレーベル”Damnably”からリリースされた最新アルバム「The Last Thing Left」は、一曲を除くすべての曲が英語で歌われていて、ボーカリストのSumi Choiの声質は、涼やかで爽やかな雰囲気をバンドサウンドにもたらしている。アンダーグラウンドシーンのアーティスト、パラノウルやアジアン・グロウと同じように、平成時代初期のJ-Popの影響を感じさせるものがある。
セイ・スー・ミーは、淡い青春を交えたノスタルジアーーそれを世界的なトレンドの音楽、ドリーム・ポップ/シューゲイズ、初期のBeach Fossilsのように、古い時代のサーフロックを交えてモダンなロックサウンドとして体現しています。しかし、例えば、上記のバンドやサブ・ポップのBeach House、イギリスのWet Legとは異なるアジアンテイストが滲んでおり、この辺りのセンチメンタルな空気感が琴線にふれるものがある。全体的には、良質なインディーロックらしい音楽性が貫かれ、キャッチーさがありつつも、ロックサウンドの中に強い芯のようなものが通っている。そこには、バンドメンバーの純粋な音楽フリークとしての姿が何となく垣間見えるようです。
「The Last Thing Left」は、セイ・スー・ミーにとって、重要な意味を持つ作品です。かれらは、音楽を奏でること、歌を歌うことにより、内なる悲しみを噛み締めたままで、ゆっくり、ゆっくり、バンドとして走り出す。かれらは、自分たちの姿を、殊のほか大きく見せようともせず、また、小さく縮こまろうともせず、等身大そのままで、未来へと足どりを進める。バンドとしての大きな真価は、5曲目の「No Real Place」に顕著な形で表れており、やるせなさ、せつなさ、かなしみ、といった複雑な感情を秀逸なインディー・ロックサウンドで見事に彩ってみせている。2019年、これまで、ずっと一緒に活動してきた盟友を亡くしたセイ・スー・ミー。かれらはそれでも立ち止まることはない。悲しみを胸に抱えたまま、たとえ、傷ついたとしても、これからも、前に、前に、走り出していく。
(Score:75/100)
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