Soccer Mommy 「Sometimes,Forever」
Review
Soccer Mommyとして活動するソフィー・アリソンの最新作「Sometimes,Forever」は、アメリカ国内のメディアにも好意的に受け入れられている。きっとそれは、実際、USインディーロックの醍醐味がこの一作に詰め込まれているからなのだ。最初期のベッドルームポップのアプローチに始まり、その後も、インディーロック、エレクトロ、様々な音楽性に挑戦してきたソフィー・アルソンは、この最新作で以前のセンスの良さを引き継いだ上で、更に異なる方向性にアプローチしている。
アメリカ国内の著名なメディア、ローリング・ストーン、ステレオガムなどのインタビューを中心に、本作においてソフィー・アリソンは、意外にも、暗鬱なニュアンスを取り入れようとしていると話す。表向きには暗くはないものの、その深奥にはドロドロとした何かが漂う。特に、このアルバムを制作するに当たって、アリソンはブラック・サバスからの強い影響を公言し、さらに。Pj Harvey,The Smithの名も挙げている。コンセプトの中に掲げる、自分自身の持つ暗鬱さ、それと向き合い、それを昇華しようとしているという。それは別の意味で、明らかにこのアルバムにゴシックの色合いを加味していると言えるのかもしれない。
アルバムの先行シングルとして発表されたオープニングトラック「Bones」、そして「With U」は、これまでのサッカー・マミーのベッドルームポップ、そして、USインディー・ロックの延長線上を行く作風であるが、明らかに三曲目の「Unholy Affection」から雰囲気が一変する。ここには、ブラック・サバスから受け継いだメタル、そして、ゴシックの色合いが引き継がれている。
同じく、先行トラックとしてリリース「Shotgun」も同じような路線にある一曲で、このアーティストらしからぬヘヴィーさが込められている。まるで、1990年代のオルタナティヴ・ロックやグランジの時代に立ち返ったかのようである。しかし、そこには、やはりというか、ソフィーアルソンにしか生み出し得ないメロディーセンスの高さ、ポピュラー性がほんのりと表れている。つまり、これらの曲には強い芯がある一方で、それが親しみやすい形で提示されているのだ。きっと、これまで一度も聴いたことのない聞き手も十分に楽しませる何かがあるとおもう。
他にも、最初期のデモ・トラック集の時代を彷彿とさせる「Fire In The Driveway」をはじめ、「Following Eyes」は、グランジに近い堂々たるロックソング、ソフィー・アリソンのソングライティングの能力が最大限に発揮されたベッドルームポップの傑作のひとつであり、爽やか雰囲気をただよわせるソングトラックだ。それは去年のシングル「Rom Com」で証明していたことだが、やはり、このアーティストのサビを書く才能は、ずば抜けて高いように感じられる。
内面にわだかまる容易に振り払いがたい暗鬱さと悪魔性に真摯に向き合おうしたと話しているように、ソフィー・アリソンは、本作で次なる領域へと歩みを進める。ブラックサバスのゴシック、そしてPJ Harvey のようなトリップポップからの影響がこれまでの主要な方向性であった理解しやすいポップソングにセンスよく加味されたことにより、力強いコントラストを生み出している。さらに、「Sometime,Forever」に込められた明るさと暗さの鮮明な対比は、この作品の印象の強さを異質なほど高め、さらに作品自体に強い聴き応えをもたらしている。「Sometimes,Forever」は、一度聴いただけではなかなか容易には理解しがたい強固な概念ーGeistに彩られている。アルバムを聴くごとに、きっとこの音楽の持つ魅惑的な世界観が広がりを増していくと思われる。
85/100
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