Bodega 『Extra Equipment』
Label: What’s Your Rapture?/Blue Raincoat
Release: 2022年7月15日
Bodegaは、Ben Hozie(ベン・ホージー)を中心とするニューヨーク・ブルックリンのポストパンクバンドで、近年、フランツ・フェルディナンドのツアーに参加し、知名度を上げつつある注目のグループ。
UKポスト・パンクのオリジナル世代への強い愛着のためか、DIYを中心に英国の音楽メディアに注目を浴びています。2014年頃結成されたボデガは、2018年のデビューから順調に作品のリリースを重ね、先週の発売された『Extra Equipment』は、3月11日に発表されたオリジナルアルバム『Broken Equipment』の12曲に加えて、Stretch Arm,Fugaiなどのカバーを追加収録した二枚組の豪華エクストラバージョンとなる。オリジナルアルバムのレビューが出来なかったため、ここで、改めてボデガのアルバムをレビューとして取り上げておきたいと思います。
今回の最新作は二枚組で、二十曲収録の凄まじいボリュームとなっている。蓋を開ければ、そこはめくるめくUKポスト・パンクの理想郷が広がっている。彼らは、ポスト・パンクを心から愛していることがわかる。重厚なベースラインが曲の中でご機嫌に跳ねまわるのは、Gang Of Fourの性質を受け継いだと言え、アップテンポなビートにひねくれた性質のボーカルがそのベースラインに負けじと強烈な印象を放つ点では、Wireの性質を受け継いだとも言える。さらに、誰にでも理解できるキャッチーなアンセムソングを擁するという点では、The Clashの後継者とも言える。
それらのオリジナルのロンドンパンク/ポスト・パンク世代のユニークな要素に加え、現代的なエレクトロニックへの要素を包含するのがBodegaというバンドの強烈な個性のひとつ。1970年代のテクノを交えたパンクがポスト・パンクであったとするなら、ボデガは最新鋭のエレクトロニックを交えたポスト・パンクを特徴とする。そして、ポスト・パンクに欠かせない要素であるリスナーに強いビート感を与えるという約束事をボデガは把握しているのかもしれません。
ここでは全体的な流れを追うのは遠慮しておきますが、このバンドの良さを掴むためには、特に先行シングルとして発表された「NYC(disambiguation)」、「Pillar on The Bridge Of You」が最適と思われる。UKのオリジナルパンクへの強いリスペクトを込めたこの曲で、彼らは新しい魅力的なニューヨークパンクをここに組み直している。メロディアスなギターのフレーズは爽快感があり、一方、ビートは落ち着いている。サビでは、ザ・クラッシュの最初期のようなキャッチーなシンガロング性を持たせている。ボデガがこのオリジナル・アルバムで志向したのは、実際のライブで演奏される曲を一枚のアルバムとして再解釈することであったように思える。
Bodegaの大きな特徴であるツインボーカルというのも単調になりがちな印象にバラエティをもたせ、聞きやすさをもたらしている。そして、この要素が作品の中になだらかな起伏を生み出し、バラエティを与える。さらにそれらは、常にドライブ感、グルーブ感といった要素に重点が置かれ、そこにUKポストパンクの最も重要な要素である清々しさ、爽やかな雰囲気が漂います。
「Extra Equipment」に収録されている20曲は、確かに大ボリュームではありますが、長くもなければ大味でもありません。それらは、アルバム全体の印象を薄めることなく、強烈なインパクトを与える。特に、追加収録された8曲は、このバンドの未発表トラック集のような形で楽めるだけでなく、どのようにして、彼らの曲が完成へと導かれるのか、その過程や背景、制作の舞台裏を垣間見ることが出来る。このアルバムは、ライブアルバムのような躍動感のある迫力に彩られている。彼らの初期からのファンにとどまらず、Bodegaの音楽に初めて触れるリスナーにとっても、『バンドのライブを観に行きたい!』と思わせるものがあるように思えます。ブルックリンに登場したポスト・パンクバンド、Bodegaの今後の活躍から目が離せないところです。
Featured Track 「Pillar on The Bridge Of You」