Downt 「Sakana e.p.」EP
Label: Downt
Release Date: 2022年6月22日
フジ・ロックフェスティバル’22(Rokie A Go-Go)に出演が決定したDownt。東京にて、2021年春に、富樫・河合(くだらない一日)・ロバートの3人で結成されたインディーロックバンド。現在は、都内のライブハウスを中心に精力的な活動をこなしている。
6月下旬にリリースされたEP「Sakana」は、このバンドの音楽の方向性をよりリスナーに明確に示した作品となる。さらにバンドの今後を占うような作品ともいえるかもしれない。ミッドウェストエモを下地に、ルイヴィルのポスト・ロックをコアなバンドサウンドを加味し、そこにJ-POPに近い女性ボーカルを特徴としている。昨年、リリースされたセルフタイトルのフルアルバムでは、マスロック色が強すぎたため、マニア贔屓のサウンドアプローチだったが、この最新EPでは方向性が様変わりし、より多くのリスナーの耳に馴染む、親しみやすさが引き出されている。
オープニングトラック「-1.-」から、二曲目「シー・ユー・アゲイン」の流れを見ても分かる通り、アメリカンフットボールを思わせるクリーントーンのアルペジオを活かしたミッドウェスト・エモの音楽性は健在である。
さらに、それに加え、今作では、アンニュイな女性ボーカルのフレージングがより叙情的な雰囲気を生み出している。同じく関東を拠点に活動するマスロックバンド、Picture of Herの繊細かつしなやかなギターフレーズが女性ボーカルのフレージングと絶妙な融合を果たしているのが見事である。
その他にも、近年のアメリカのメロディック・パンクシーンに呼応する形で疾走感に溢れ、パンチの効いた楽曲も収録されている。「minamisenju」では、トゥインクル・エモの麗しさが演出され、ここには激情性と繊細性が掛け合い、独特な表現性として紡ぎ出される。東京のパンクシーンで培われたタフさがここに示されたかと思えば、さらに、「fis tel」では、Nature Living、Start Of The Dayを彷彿とさせる東京のインディーロックの真髄が目眩く様に展開される。
その他、2010年代の東京オルタナティヴシーンの影響を受けたピクチャレスクな興趣を持つ「I Couldn't Have」で淡い叙情性を滲ませつつ、「Sakana」の持つ海のように青い世界は、ゆるやかに閉じていく。このEPを聞き終えた後には、何らかのせつない余韻にじんわり浸ることができる。
76/100