Weekly Recommendation  YMB 「Tender」

Weekly Recommends 


YMB「Tender」



 

 

 Label: Friendship.

 Relaese Date: 2022年6月29日

 


YMBは、2015年に大阪で結成された。Yoshinao Mitamoto、いとっち、ヤマグチ・ヒロキ、今井涼平による四人組のインディー・ポップグループです。

 

これまでにYMBは、「City」(2019年)、「ラララ」(2020年)、「トンネルの向こう」(2021年)、三作のフルアルバムを残しており、昨日、6月29日にFrendship.からリリースされた「Tender」は通算四作目のアルバムとなる。現在、YMBは東京のライブツアーを間近に控えていて、吉祥寺のインディーフォークバンド、Gusokums(グソクムズ、P-VINEに所属)と共演する予定です。


YMBのサウンドは、シティポップ、渋谷系をベースにしたポピュラーミュージックに彩られており、東京のCero,近年、中国に活躍の幅を広げつつある"She Her Hers"、澤部渡の"スカート"に近い、おしゃれな楽曲が魅力で、人を選ばず、気軽に楽しめるサウンドと言えるかもしれません。

 

YMBの4thアルバム「Tender」では、これまでの作品と同様、ほんわかとした雰囲気の良いサウンドが繰り広げられる。さらに、そこに、男女のツインボーカルの兼ね合いが心地よい空間を演出する。バンドサウンドとしては、ジャズ、R&B、ファンクといった幅広いジャンルの影響を滲ませたブレイク(休符)の多い難易度の高いサウンドアプローチであるにもかかわらず、演奏に力強いグルーブが感じられるのは、YMBのメンバーの演奏力の高さ、そして、曲に対する理解の深さ、バンドメイトとして上手く連携が取れているからこそ。このぴったり息の取れた演奏力、完成度の高さに裏打ちされた巧みなバンドアンサンブルは、リスナーを十分惹きつけるものがある。音楽自体も自己主張が強くないので、まったりした雰囲気が漂い、多くの人に共感を与えるような魅惑的なポピュラーサウンドが本作「Tender」で生み出されているのです。


また、日本語の口当たりの良い歌詞のニュアンスについても、これまでにありそうでなかった表現が見いだされ、作曲者のYoshinao Miyamotoの文学的な感性が上手く詩の中に引き出されています。

 

 「Tender」には、「思春期的な捻くれの効いた言葉選び、パートナーの寝顔を見て、結婚生活の自戒を打ち立てる純情な不器用さなど、既出のソングライターとは一線を画す」秀逸な日本語詞の表現性が見いだされる。これは、多くの人に共感と頷きを与える重要なポイントに挙げられる。実際の音楽が歌詞と絶妙にマッチしたミドルテンポの心地良いポピュラー・ソングが繰り広げられており、さらに、Cero,She Her Hersのように、エレクトロポップ、ファンク、ローファイを咀嚼した日本のモダンサウンドが提示される。歌詞の表現法にちょっとした親近感をおぼえるのは、YMBのYoshinao Miyamotoが肩肘をはらず、等身大の自分の姿をありのままに表現しようとしているから。さらに、Miyamotoは、実体験における成功でなく、日常の失敗の経験をさらりとかろやかに歌いこんでいる。この点も大きな魅力であり、それを卑屈になるわけではなく、また、自己憐憫に浸るわけでもなく、爽快な空気感で歌いこんでいる点も素晴らしい。

 

シティ・ポップサウンドを基軸とした、男女のツインボーカルの涼し気で洗練された響きがこのアルバムの最大の魅力ではありますが、もうひとつ目を惹くのは、懐かしの平成時代のJ-POPのキラキラとした輝きがいたるところに見いだされること。小沢健二をはじめとする「渋谷系」だけでなく、小室ファミリーに代表される「エイベックス・サウンド」、渋谷をはじめとする東京の街角で流れていた王道のポピュラー・ソングがここに再現される。平成時代の音楽に慣れ親しんできた多くの一般のリスナーはこのアルバムに懐かしみを見出してくれると思います。

 

面倒な話はさておき、YMBの「Tender」は、多くの人に共感を与える音楽、日本語詞によって流麗に彩られている。これは、2020年代のシティ・ポップ、「Post City Pop」時代の幕開けを告げる傑作と呼べそうです。現在、日本は、40度に気温が達する地域もあり、あまりに暑すぎるので、今週は、おしゃれで涼し気なシティ・ポップ・サウンドを選びました。これからの季節、家の中で、また、ドライブ中に、YMBの最新作「Tender」を聴いてみてはいかがでしょう??



84/100