Been Stellar Photo Credit :Naz Kawakami |
5人組のインディー・ロックバンド、Been Stellarはニューヨークのヴェルヴェット・アンダーグランド時代のパンク・ロックスピリットを体現するような存在である。既に、今年始めに、イギリスのSo Young Magazineが展開している”So Young Record”から最初のシングルをリリースした際、特に、イギリス国内のメディアからかなり好意的に迎えられた印象もあった。
この5人の若者が発表したデビューシングル「Kids 1995」は、このバンドの潜在能力、道なる可能性を顕著に表していた。ノスタルジックであり叙情的でもあるインディーロックを彼らはメインストリームの意表をつくかのように登場させた。Been Stellarの最初のシングル「Kid 1975」は。鮮烈なイメージを与えることに成功した。Been Stellarは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ザ・ストロークスといったロックバンドの系譜にある音楽を巧みに融合させ、そこに1990年代のUKロックの雰囲気を漂わせたこのファーストシングルによって成功の足がかりを掴んだ。その後、ビーン・ステラーの快進撃は一向にとどまることを知らない。「Manhattan Youth」、「My Honesty」と、魅力的なシングルを続けて発表していき、耳の超えたインディーロック・ファンの心を捉えてみせたのだ。Been Stellarはまさにニューヨークらしいインディーロックの音楽性を携えてミュージック・シーンに登場したバンドである。
現在、この5人の若者たちは、ニューヨークという圧倒的な魅力を持つ都市で培ったスピリットを体現するべく、周囲の音楽的な環境にまったく翻弄されることなく、周囲の環境をどのように評価するのか、みずからの考えを駆使し、ニューヨークの系統を語るアートや音楽を創り出すかを慎重に検討して来た。ロンドンの”So Young Records”と契約を結んだ後、最近になって、初めてロンドンを訪れた彼らは、ロンドンを自分たちの故郷ニューヨークと比較し、イギリスの首都がよりリラックスした雰囲気であることに気がついた。「ニューヨークでは洗濯をするのも一苦労なんだ」と、ベーシストのNico Brunsteinは語る。「誰も洗濯機を持ってないし、夏でも大きな荷物を運んで歩かなければならない。こっちの方がアクセスしやすいんだ」
ビッグ・アップルには様々な刺激があるが、この5人組は、その喧騒と活気のある日常を知らず知らずのうちに楽しんでいる。高校、大学、そして、街でのライブで出会った5人のうち3人は、現在、ごく近い場所に住んでいる。ギタリストのSkyler St.Marxは、「Britanysが場所を提供してくれて、本当に貴重な場所なんだ。僕たちは、それぞれの部屋に住んでいて、階下にリハーサルスペースがあるんだ。本当にクールなスペースで、別のスタジオを借りるよりもずっとリーズナブルなんだ"」と。彼らが "スーパー "と微妙な関係を維持できているのは、幸運なことなのだ。
バンドメンバーは、自分たちの創作意欲を表明することに関して、それぞれ異なる思いを抱えている。スカイラーとフロントマンのサム・スローカムは、バッドを結成するつもりで熱くなって来たが、グループ全体としてはそれほど計画的ではなかったようだ。ドラマーのライラ・ウェイアンズは、その背景をこのように語る。「高校時代は、ドラムを叩いていましたが、バンドには所属せず、家で一人でやってた。高校ではドラムを叩いていましたが、バンドを組んだことはなく、家で一人でやっていた。偶然、この4人に出会ったとき、ああ、これをやるべきだ、ピンときたんです」。
そうして、5人でBeen Stellarとして歩みを進めていくうち、繊細な魅力を放ちながら、世界中で想定されるグラマラスなイメージを覆すような街の音楽を体現するようになった。「人々はこの街をそのように見ているが、実際、そのイメージはかなり間違っているかもしれない」とセント・マルクスは言う。「その前に、ニューヨークには、多種多様の民族が共存していく非常に繊細な生活文化が維持されているのです。ラモーンズ、ルー・リードの出身地としてだけ見ていると損をしますよ。アートや音楽と切り離して考えても、本当に活気があって魅力的な場所なんです」
その自然な生粋のニューヨーカーとしてのスピリットの維持は、Been Stellarがレコーディングで体現しているものでもある。それはデビュー前、彼らは階下の地下室-スラッシュスタジオでレコーディングしている間に学びとったものだという。ギタリストのNando Daleは、「僕たちはいつも、ステージ上のサウンドにおいて、その地下室の壁に反響される音を基準にしています」と語る。「とても硬質な音なんだけど、僕たちはまさにそこに惚れ込んだんだ。そのサウンドとレコードの良さのバランスを考えている」。彼らのライブ・パフォーマンスは、偶発的で純粋な状況によって生み出されたこれらのライブ体験に基づいており、フロントマン兼シンガーのSam Slocumは、アーティストが何十年にもわたって培ってきたものと考えているようだ。
「ジョナサン・リッチマン(ニューヨーク・パンクの最初期の伝説的なロックアーティスト)のインタビューに、ライブでの音量が大きくなるにつれ、音楽がどのように変化したかを語っているものがあるんだ」とSam Slocumは熱く語る。「リッチマンは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの初期の演奏について、部屋を歩き回るだけで、ライブショーの経験が完全に変化してしまうことを話している。反面、私たちの練習スタジオはとても有機的な感じがし、それを再現しようと思っているんです」
しかし、バンドは、プロデューサーのAron Kobayashi Ritch(アーロン・コバヤシ・リッチ、Mommaの最新作『Household Name』にも参加している)が、彼らのサウンド・ミッションの核となる価値観を共有していることに気づいた。「彼は、まるでカメレオンのように、私たちが追求したいものに溶け込むことが出来るんです。それだけでレコーディングの難易度は下がりました」とスカイラーは振り返る。その一方で、Samはバンドの音楽の未来をしかり見据えている。「アルバムも多分、コバヤシ・リッチと一緒に作るから、どんな風になるのかとても楽しみだよ。EPは、私たちが求める音にかなり近づきつつあるけれど、まだそこまで到達していない。これから、アルバム制作で自分たちの頭の中にあるものにどこまで近づけるかとても楽しみです」
その素晴らしい道のりをゆっくりと踏みしめながら、ニューヨークの5人組、Been Stellarは自分たちのサウンドを探求し続ける。
それまで自分たちより高い場所におかねばならなかったThe Strokesの影響から脱却し、自分たちしか持ちえないこの世で唯一無二のアイデンティティを見出す。当初は難しいと感じていたことだが、もはや彼らはそれに悩まされることはない。「個人的には、私たちは彼らのようなサウンドではないと思う」とSkylerは話している。
「現在のところ、それほど意識してザ・ストロークスを真似しているわけではない」と彼は話す。その代わりに、彼は、ニッチではあるが、しかし、他にも良いバンドの影響力があることを指摘する。「Sonic Youth、My Bloody Valentine、Ride...。僕たちは、ノイジーでメロディックな音楽が好きなんだ。ノイジーで非常にハードな音楽を得意とする人もいれば、ポップミュージックを得意とする人もいる。つまり、この2つを融合させるには微妙なバランスが必要なんだ」
イギリスの気鋭のレーベルのひとつ”So Young”と契約を交わしていることを考えると、Been Stellarがイギリス国内の多くの現役アーティストを高く評価していることも頷ける。「Lime Garden、VLURE、Humour、Gently Tender...。彼らは本当に素晴らしいアーティストなんだ」と、Lailaは話す。これらのアーティストたちは、Been Stellarが目指すものを体現している。つまり、現在ある環境を駆使して自分たちの進むべき道を決断するアーティストたちである。
「私たちは、ある1つの場所にしか存在しえないような個性的な音楽が好きなんです。もし、自分の環境が曲作りに影響を与えないのなら、それはやっぱり安いものに妥協してしまうことになる。そういった妥協的な行動には、常に、多くの作為と不誠実さが伴ってしまう。Lailaはこう続けた。「あるバンドを見て、”彼らはXやYのよう”と思うのはよくあることだし、自由なことだと思います。しかし、それでも、彼らが現代にふさわしいことを言っていると気づくのは別のことです、それこそが音楽を前に進ませると思っている。つまり、それが音楽というカルチャーを未来に進めることにもつながる。 彼らの地元で、この進歩を可能にすることは、彼の頭の中を占めていた大きな考えでもあったようだ。「ニューヨークのアイデンティティを持つことは、それ自体とても興味深いことですが、今後もまたそのアイデンティティに貢献し続けなければなりません。そのため、私たちは、音楽の制作に誰よりも真剣に取り組んでいるんです」
Been Stellarの音楽は、今後、より多くのリスナーの心に届くものになると思われる。先週、金曜日にリリースされたばかりの五曲収録された実質的なデビュー作『Been Stellar EP』は、パンデミック後のバンドとしての目標を定めるための彼らの最初のステップを明らかなものとしている。
St.Marxは、Been StellarのファーストEPについて、最後に以下のように締めくくっている。「今回リリースされたファーストEPは、僕らが今後どうなっていくかを、対外的に示すとても良い機会になったと思う。これは、ヴァリエーションに富んだEPだ。ここには多様なサウンドや方向性が込められている。それと同時に、各々の曲には、多様なものをひとつに融合させたいという思いもある。「Manhattan Youth」のダイレクトさ、クロージング・トラックの「Ohm」のダイナミックさを組み合わされたものが、次の段階に到達する僕らをイメージしているんだ」
Been Stellar First EP 『Been Stellar』 :
https://beenstellar.lnk.to/beenstellarep