Kiwi jr. 『Chopper』

 


Label: Sub Pop

Release: 2022年 8月12日


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Review


サブ・ポップから先週末にリリースされたKiwi jr.の最新作『Chopper』は、二週間で制作され、ウルフ・パレード、ハンサム・ファーズ、オペレーターと様々なバンドのフロントマンを努めるダン・ベックナーの音楽趣味を反映した内容となっている。インディーロックの王道を行くローファイ感のあるロックソングに加え、アレンジにはシンセサイザーのリードやリズムが取り入れられている。このアルバムは、シンセサイザーのベースラインが組まれたあとに、ドラムが録音されたという理由からか、レトロ・ポップ/ローファイのようなチープな味わいが込められている。このチープさが妙に癖になるという場合、このアルバムを購入してもそれほど損にはならないかもしれない。

 

このレコードは、コンセプト・アルバムとして生み出されたというわけではないようだが、Kiwi jr.の音楽的な方向性はしっかり定まっており、少なくもなく多くもない、王道の収録曲はインディーロックファンにとって心地よいランタイムである。ところが、問題となるのは、レコード全体として、「Night Vision」をはじめとするキラリと光るロックソングも収録されている反面、どうしても全体的にB級感が拭いきれないという点だ。なぜ、こんなことを言うのかといえば、B級のローファイなロックを求めるリスナーとしては、例えば、Part Timeのように、そのマニア向けの感覚をはっきり提示した音楽の方が楽しめるはずで、そのあたり、ストロークスのようなメインストリームのロックをやるのか、それとも、Part Timeのようなマニア好みのローファイをやるのかが不分明で、聞き手としてもどっちすかずな印象をおぼえざるを得ないということになってしまう。


その他にも、「Kennedys Curse」といったコアなインディーロックファンにとっては何かあると思わせる曲も収録されてはいるが、少なくとも、こういった曲の雰囲気を好むのならば、DIIVの「Oshin」を始めとするキャプチャード・トラックス関連のレコードで事足りるという印象もなくはない。

 

KiwiJrの『Chopper』は、NY、LAを始めとするローファイのシーンに影響されたマニア向けのインディーロックアルバムというのが適切で、音楽として遊び心も感じられ、こういった音楽を愛する人にとっては心楽しさのある作品といえるかもしれないが、決して万人受けするものでもあるまい。それにアルバムからは、もっさりした雰囲気が出ており、無類のレコードフリークが醸し出すクールさをこのアルバムから読み解くのはなかなか難しい。もうひとつ、思わしくない点を挙げるとするなら、音楽そのものに、目新しさが感じられないことだろう。二週間という短期間で制作されたという点から、バンドの勢いのようなものは感じ取れるが、それが明らかなキャラクターとなっているとは・・・。さらに、全体像から明確な指針を持ってレコーディングや演奏が行われているように思えず、なんだか破れかぶれな印象も見てとれるのである。

 

もちろん、これは、個人的な意見に過ぎないので、飽くまで参考程度にとどめておいてほしいのだが、現時点で、このアルバム『Chopper』が良盤と言い切ることはちょっと難しい。その理由は、曲の印象があまりに緩慢すぎていて、シンセサイザーの音色がバンドの音楽を曇らせ、ロックバンドとしてのアンサンブルの本来の魅力を損ねているという点に尽きる。そして、実は、アナログ/デジタル問わず、シンセサイザーという楽器は、ミドルレンジにおいてバンドサウンドとがっつり重複するため、生半可な気持ちで使ってはならない、非常に扱いが難しい楽器のひとつでもあるのだ。



Rating:

64/100

 

 

Album Featured Track 『Night Vision』