リイシュー・レーベル”Light In The Attic”、及び、ルー・リードの未亡人、ローリー・アンダーソンは、ルー・リードの『Words & Music, May 1965』からリードの未発表音源を発表した。
このアルバムは、ルー・リードが1965年に盟友であるジョン・ケイルとともに制作し、自分宛に郵送したテープから抜粋したものとなっている。そこには、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのいくつかの曲の初期録音が収録される。中には、50年以上にわたって封筒に封印されたままになっていたものまで含まれる。このテープからは既に「I'm Waiting For The Man」と 「Heroin 」の未発表ヴァージョンが公開されているが、本日、「Men Of Good Fortune」をご紹介しよう。
ルー・リードの熱烈なファンは、今回の音源「Men Of Good Fortune」が1973年に発表されたソロ・アルバム『Berlin』の2曲目に収録されていることは既知のことと思われる。しかし、ルー・リードの専門家、ジェイソン・スターンとドン・フレミングがプレスリリースで指摘するように、この初期の音源は『ベルリン』に収録されたものとは別曲であり、1960年代半ば、フォーク・ロックの代表的アーティストにインスピレーションを与えた楽曲群と同じ系譜に当たる。
「Men Of Good Fortune」は、何世紀も前に、イングランドやスコットランドで、人から人へと伝承されるチャイルド・バラッドの特徴を備えている。近年まで、それらの多くは印刷物として記録されて来なかったが、1882年から1898年にかけて出版されたフランシス・ジェームズ・チャイルドの書籍『The English And Scottish Popular Ballads』でようやく日の目を見ることになった。チャイルド・バラッドという音楽ジャンルは、その名の通り、子供向けの民謡のような音楽だろう、1960年代初頭のフォークアーティストにとって大きなインスピレーションの源泉となっていて、錚々たるアーティストーージョーン・バエズ、ボブ・ディラン、ポール・サイモン、フェアポート・コンヴェンションらがこの書籍から多くを引用しているという。
チャイルド・バラッド2番の 「The Elfin Knight」は、他の歌手を経て、サイモン&ガーファンクルの "Scarborough Fair "やボブ・ディランの "Girl From The North Country "に強い影響を与えた。チャイルド・バラード2番をはじめ、多くの曲には、ルー・リードが自らを描く「乙女」「メイド」が登場する。この「Men Of Good Fortune」の歌詞は、チャイルド・バラッドの亜種としても見なす事もできるが、ルー・リードらしい知性に溢れ、ひねりのきいたものとなっている。本や他の曲、伝統的なもの、ポピュラーなものからセリフを拝借しているようには見えない。ルー・リードは、「Men Of Good Fortune」をソロで歌い、演奏している。これは、ルー・リードの音楽、さらに、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの音楽、ひいては「オルタナティヴ」のルーツが、バルトーク・ベーラ(ハンガリー民謡を自分の足を使いながら、アーカイブのように収集し、クラシック音楽として組み替えた)のような民謡に近い音楽にあるかもしれないことを示す、ポピュラー音楽史としてきわめて画期的な音源の発掘である。