皆様、いかがお過ごしでしょう? 早いもので10月になり、今年も残すところ、あと3ヶ月となりました。さて、今回も、今月発売される注目のアルバムを以下に取り上げていきましょう。もちろん、すべての注目作品をご紹介出来るわけではありませんが、以下に、選りすぐりのチョイスを読者の皆様にお届け致します。ぜひ、良盤を探す際の助力となればこの上ない喜びです。
・10月7日発売
Alvveys 『Blue Rev』
カナダのインディーロックバンド、オールウェイズは、2014年のデビュー作「Alvveys」は全米大学チャートで一位を獲得し、鮮烈なデビューを飾った。続く2017年に発売された2ndアルバム「Antisocialities」はジュノー賞の最優秀オルタナティヴ・アルバム部門で受賞、さらにカナダ国内最大の音楽賞、ポラリス音楽賞で最終候補作となった。続く三作目のアルバムで、オールウェイズは、いよいよ世界的なインディーロックバンドとして注目される可能性もある。
3作目のアルバムの先行シングルとして、「Pharmacist」「Easy On Yoru Own?」「Very Online Guy」「Belinda Says」を公開している。モダンな雰囲気を持つポピュラー性とインディーロック性が見事な融合に挑戦する。このアルバムはオールウェイズにとっての飛躍作となりそうな予感もある。
Disq『Desperately Imagining Someplace Quiet』
USオルタナティヴの新星と称される、ウィスコンシン州マディソンのインディーロックバンド、DisqはギタリストのIsaac DeBroux-Slone とベーシストのRaina Bockの友情の延長線上に結成されている。
2020年にデビュー。アルバム『Collector』をSaddle Creekからリリースし、話題を呼んだ。
続く、二作目となる『Desperately Imagining Someplace Quiet』において、ヒップホップとデルタブルースを、中西部のエモ、スコットランドのパワーポップ、彼らにとっての「クラシック・ロック」として機能するオール・アメリカン・インディーに置き換えようと試みている。Beckの最盛期を彷彿とさせるロックサウンドとなっている。先行シングルとして「Cujio Kiddies」「If Only」「(With Respect To)Royal Serfs」「The Hardest Part」が公開されている。
Sorry 『Anywhere But Here』
ロンドンの北西部カムデンを拠点とするロックバンド、Sorryはあまりに多彩なサウンドを擁するため、カテゴライズ不可能のバンドとも称される場合もある。幼少期からの親友、アーシャ・ローレンツ、ルイス・オブライエンの2人によって結成され、現在はドラマーのリンカーン・バレット、マルチ・インストゥルメンタリストのキャンベル・バウム、エレクトロニクス奏者のマルコ・ピニを加えた体制で活動を行う。デビュー・アルバム「925」は高い評価を獲得している。
この2020年のデビュー作に続く2ndアルバム『Anywhere But Here』はDominoから発売される。 There's So Many バンドのアーシャ・ローレンツ、ルイス・オブライエン、そしてブリストルよりポーティスヘッドのメンバー、エイドリアン・アトリーと同じくブリストルのアリ・チャントがプロデュースを手がけている。先行シングルとして「There's So Many People That We Want To Love」「Let The Lights On」「Key To The City」が公開されています。
・10月14日発売
Alaskalaska 『Still Life』
毎回、シングルリリースのたび、個性的なアーティスト写真で楽しませてくれるアートポップデュオ、アラスカラスカ。ヒップホップ、パンク、エレクトロニカ、多彩な音楽文化を持つ魅力的な音楽シーン、イギリスの最新鋭のシーンの一つ、サウスロンドンから台頭したエレクトロポップ・デュオです。
Marathon Artistsから10月にリリースされる 最新作『Still Life』では、その印象に違わず、個性的でユニークで、可愛らしさのあるポップサウンドを追求しています。シンプルなシンセ・ポップを基調としたサウンドで、そこにふんわりとしたボーカルが絶妙な合致を果たしており、北欧フォークトロニカのような実験的な雰囲気も持ち合わせています。すでに新作アルバムの先行シングルとして「TV Dinner」「Still Life」「Growing Up Pains」が公開されています。
Brian Eno 『ForeverAndEverNoMore』
今年の夏、日本の京都で、映像と音楽を劇的に融合したインスタレーション展を開催したアンビエントの始祖、ブライアン・イーノ。この展覧会は好評を博し、会期が延長されたほどでした。
10月にリリースされるアルバム 『ForeverAndEverNoMore』は、近年のブライアン・イーノの作品としては珍しく、ボーカルトラックに挑んだアルバムとなります。また先行シングルとして公開されている「We Let It In」では、イーノの実娘がボーカルに参加しています。このシングルを聴くかぎりでは、アンビエントとポップスを融合した聴き応えのある作品となりそうです。
The 1975 『Being Funny In A Foreign Language』
マンチェスター出身のマシュー・ヒーリー率いるロックバンド、The 1975。来年に単独来日ツアーを発表している。ダンサンブルなリズムを交えた親しみやすいロックバンドで、洋楽慣れしていない方にもお勧めです。米・ピッチフォーク誌でもアーティスト特集が組まれており、今後、イギリスにとどまらず、その影響力を米国のミュージックシーンまで拡大していきそうな気配もある。
日本国内では、すでに今年開催されたサマーソニックでの公演が大好評で、着実にファン層の裾野を広げつつあるように感じられる。最新シングル「All I Need To Hear」を聴くかぎりでは、『Being Funny In A Foreign Language』は一筋縄ではいかない、なかなか手ごわいアルバムとなりそうですよ。
・10月21日発売
Dry Cleaning 『Stumpwork』
4ADが大きな期待を持って送り出すイギリスの気鋭インディーロックバンド、ドライ・クリーニング。ソニック・ユースの最盛期の音楽性を彷彿とさせるエッジの効いたギターリフ、ナチュラルかつクールなボーカルが融合したいかにもこのレーベルらしいアーティストの登場です。すでにアルバム『Stumpwork』の先行シングルとして「Don't Pass Me」「Anna Calls From The Arctic」「Gary Ashby」が公開されています。インディーロック旋風を巻き起こせるかに注目です。
Frankie Cosmos 『Inner World Peace』
ニューヨークのインディーロックバンド、フランキー・コスモスの最新作『Inner World Peace』は、シアトルの名門レーベル、サブ・ポップからリリースされます。このバンドは、1990年代のUSインディーロックの温和なサウンドを引き継ぎ、それをどのようにモダンなロックサウンドとして提示するのか模索している様子が窺えます。また、フランキー・コスモスの音楽性は、Throwing Musesをほのかに彷彿とさせる。
しかし、そのインディーロックのフリーク好みのスタイルは、やはり現代的な質感に彩られている。アルバム『Inner World Peace』のタイトルには、何か奥深い意味が隠されているような気もします。先行シングルとして「One Year Stand」「Aftershock」「F.O.O.F」が公開されています。
Arctic Monkeys 『The Car』
シェフィールドのロックバンド、アークティック・モンキーズの最新作『The Car」はおそらく今年のリリースの中でも多くのファンが待望していたはずです。
このアルバムは、あえて最新鋭のレコーディング技術を駆使するのではなく、1970年のアナログ式の録音技術を取り入れています。ザ・ビートルズやZEPのようにクラシックなブリティッシュ・ロックに回帰したような作品となる可能性もある「The Car』のレコーディングはイギリスの田舎地方の屋敷を借りて行われたという。
すでに、先行シングルとして、「There's Be a Mirrorball」「Bodypaint」が公開されています。前作「Tranquility Base Hotel &Casino』の作風を踏まえつつ、「Only Ones You Know」のブリティッシュバラードの新たな世界を探究している。フロントマンのアレックスターナーが最近よく聴いているというセルジュ・ゲンスブールのような哀愁を漂わせつつ、モータウンのR&Bサウンドの伝統性を受け継いだ、かなり渋いスタジオアルバムとなりそうです。
Loyle Carner『Hugo』
サウスロンドンのラップシーンを牽引するロイル・カーナーは、ラップ、ジャズ、ソウル、様々な音楽性を融合させ、内的な感情をスポークンワードに込め、それをメッセージとしてラップとして昇華するミュージシャン。ロイル・カーナーは、すでに「Yesterday's Gone」「Not Waving,But Drawing」に二作のアルバムをリリースし、着実にスターとしての階段を登りつつある。
ファン待望の三作目のスタジオ・アルバム『Hugo』では、より大きなテーマが掲げられています。これまでカーナー自身が書くのをためらってきた、黒人として英国社会に生きることを、主な主題として取り上げています。新作アルバムの先行シングルとして「Hate」「Nobody Knows」が公開されている。ラップ・アーティストとしての個人と社会をつなぐメッセージがどのような形でこの作品に現れるのかに注目です。
・10月28日発売
Benjamin Clementine 『And I Have Been』
マーキュリー賞にノミネートされ、話題を呼んだシンガーソングライターの最新作。そのクールな佇まいからは、圧倒的なオーラが醸し出されている。
おそらくダークホースが現れなければ、この週はこの作品が最も注目すべきアルバムとなりそうです。このレコードは、パンデミック中に作られ、UKのアーティストの長期にわたる内省的な期間から生まれた作品です。ベンジャミン・クレメンタインは、このアルバムを最後にアーティスト活動を終了させることを発表しています。どのような作品になるのか楽しみにしたいところです。