Review- Subway Daydream 『RIDE』

 Subway Daydream 『RIDE』

 


 

Label: Rainbow Entertainment

Release Date:2023年1月18日

 



Review 

 


Sensaによると、Subway Daydreamは、双子の藤島裕斗(Gt.)、藤島雅斗(Gt.Vo.)と幼馴染のたまみ(Vo.)、そしてKana(Dr.)によって結成された大阪の四人組ロックバンド。


結成直後にリリースした「Twilight」は、自主盤にも関わらずタワーレコード・オンラインのJ-POPシングルウィークリーTOP30にランクインするなど異例のヒットを記録し、更には関⻄の新人アーティストの登⻯門として知られるeo Music Try 20/21において、結成1年目にして1,279組の中から準グランプリに選出された。2021年4月28日にリリースした初のEP「BORN」では、オルタナ/グランジからネオアコ、シューゲイズまで、幅広い音楽性を取り入れながら瑞々しいポップセンスに落とし込み話題を呼んだ。今、勢いに乗る注目の新世代バンドであるとの説明がなされている。

 

『RIDE』は、大阪の新星、Subway Daydreamの記念すべきデビュー・アルバムで、Youtube Musicでも既に大きな注目を受けている。バンドは、デビューアルバムの宣伝を兼ねて渋谷WWW Xでのレコ発ライブの開催を予定している。また地元の大阪でも記念ライブが行われる。

 

オープニング・トラック「Skyline」から、青春味のあるサウンドが全面展開され、バンドは初見のリスナーの心をしっかり捉えてみせている。ボーカルについては、Mass Of Fermenting Dregsを彷彿とさせるものがあるが、MOFDがよりバンドサウンドそのものがヘヴィネスに重点が置かれているのに対して、Subway Daydreamの方は、サニーデイ・サービスの90年代のネオ・アコースティック時代のサウンドに近い青春の雰囲気に充ちたサウンドを押し出しているように思える。そして、ボーカルのメロディに関してはパワー・ポップに近い甘さもあり、メロディーの運びのファンシーさについては、JUDY AND MARRYの全盛期を彷彿とさせる。それに加え、サビでの痛快なシンガロング性についてはパンチ力があり、ロックファンだけでなくパンク・ファンの心をも捉えてみせる。そして、このバンドのキャラクターの核心にあるものは、ツインボーカルから繰り広げられる音楽性の多彩さ、そして、ハイレンジのボーカルと、ハスキーなミドルレンジのツインボーカルなのである。これらの要素は、パンキッシュなサウンドの中にあって、バンドサウンドに「鬼に金棒」ともいうべき力強さをもたらしている。

 

一般的に、デビュー・アルバムは、そのバンドやアーティストが何者であるかを対外的に示すことが要求されている。もちろん、あまり偉そうなことは言えないけれど、その点については大阪のSubway Daydreamはそのハードルを簡単にクリアしているどころか、要求以上のものを提示している。The Bugglesのポピュラー性を骨太のロック・サウンドとして昇華した「Radio Star」で分かるように、溌剌としていて、生彩味に富んだエネルギッシュなサウンドは、多くのJ-Popファンが首を長〜くして待望していたものなのだ。もちろん、サブウェイ・デイドリームは、日本らしい唯一無二の魅力的なポピュラー・サウンドを提示するにとどまらず、シューゲイザー/オルタナティヴロックを、バンド・サウンドの中にセンスよく織り込んでいる。このアルバム全体にある普遍的な心楽しさは、リスナーを楽しみの輪に呼び込む力を兼ね備えているように思える。

 

これらのコアなサウンドの中にあって、力強いアクセントとなっているのが、ノスタルジア溢れる平成時代のJ-Popサウンドの反映である。

 

例えば、七曲目の「ケセランパサラン」では、Puffyのような日本語の語感の面白さの影響を取り入れ、それらをノイジーなギターサウンドで包み込んだ。その他、「Yellow」では、ディストーションギターを全面に打ち出したノイジーなサウンドに挑戦している。これは、大阪のロックバンドが地元を中心とするライブ文化の中で生きた音楽の影響を取り込み、自分たちの音として昇華していることの証立てともなっている。


収録曲のサウンドは、ポピュラー・ミュージックとして傑出しているばかりか、実際のライブを見たいと思わせる迫力と明快なエネルギーに満ちている。何より、サブウェイ・デイドリームのエヴァーグリーンなロック・サウンドは、デビュー作特有の爽やかさがあり、それは他ではなかなか得られないものなのだ。彼らこそ、2020年代という新しい時代の要請に応えて登場したロックバンドである。今後、着実に国内のファンのベースを拡大していくことが予想される。

 

 

 90/100

 

Featured Track 「ケサランパサラン」