ジャック・アントノフ、グラミー賞の授賞式で音楽業界の直面する課題について語る

Jack Antonoff


プロデューサーのジャック・アントノフは第65回グラミー賞の授賞式に出席し、Producer Of The Year, Non-Classicalの栄冠に二年連続で輝きました。この受賞は昨年のテイラー・スウィフトの『Midnight』のプロデューサーとしての仕事が高く評価されたことによると推測されます。


アントノフは受賞後に報道陣の取材に応じ、先日のチケットマスター上院公聴会や、テイラー・スウィフトのErasツアーのチケット販売騒動を受け、現在最前線にあるコンサートチケットの問題について言及しました。アントノフはブルース・スプリングスティーンとも仕事をしたことがあるそうで、彼のショーに「ダイナミック・プライシング」を使用したことで非難を浴びた人物ですが、彼は声明の中で特定の名前を挙げず、人々に「アーティストを冷静に見る」よう求めています。


全体として、信じられないほど現状は厳しい。オンラインで車を買って、家に配達してもらうことができる時代になっているのに、なぜアーティストが未だ望む価格でチケットを買うことができないのでしょう? 

というわけで、私が言いたいことはとてもシンプルなんです。その理由はわかっているはずです。アーティストが原因ではないんです。だから、マイクを持ちながらひとつだけ言いたいのは、みんなアーティストを冷静に見ようってこと。なぜなら、誰もがそれを理解しようとしているからです。誰がそれを不可能にしているかは分かりきっている。


私は、音楽業界全体的に対して非常にシンプルなことを要求してきました。アーティストがダイナミック・プライシングを選択できるようにすることです。マーチャンダイズへの課税をやめて、アーティストが実際に信じる価格でチケットを販売できるようにする。ライブを決して自由市場にしないでください。それは本当に穢らわしいことです。あなたが公平だと思う価格を設定してください。でも、ある人が50ドルなんて何でもない、ある人が50ドルなんて使い切れないくらいとしたら、違うグループが一つの値段で集まれるような状況を作っていることになる。すべてが変動した瞬間、すべてがK型になり、奇妙な自由市場に変わってしまうのです。それは、我々のすべきことではありません。



ジャック・アントノフは、音楽業界における報酬に関する諸般の問題についても次のように語っています。彼の言葉は非常に重みがあり、示唆に富み、ジャンルや国籍を問わず全てのミュージッシャンに共通する提言です。


一文無しのアーティストが何人いると思ってるんだろう? 音楽業界で働いている人で、一文無しになった人を何人知っているかい? だから、この業界にはあちこちに問題があるわけなんだ。

私はツアーで育ったので、実はツアー業界の内情を一番よく知っているのですが、何が間違っているのか、興味深い例です。ショーに出るときは、自分がアーティストになることを決めたという恥ずかしさを背負っていて、みんなに「あなたはラッキーよ」と言われるから喜んでやっているだけなんです。部屋に入れば、その部屋にいる全員が自分以外にまともな給料をもらっている。だから成功しないと生活していけない。プロデューサーもそうだし、作家もそうだし、アーティストもそうだし、みんな同じです。


他の国でも、さまざまな方法で取り組みをやっていますよ。例えばカナダは、政府がアーティストに大きな敬意を払っていて、助成金やその他のものを得ることができます。ただ、今後、文化として、「そこにいるのはラッキーだから、黙っていろ」という旧来の弊害を乗り越えていく必要があります。というのも、あらゆるものがそうであるように、ツアーや作曲やプロデュースや演奏を無条件に期待されるのは、自分がとても幸運だから-それはたしかにそうですが、それ相応の報酬を得て然るべきです。あるいは目の前に果てしない世界が広がっているから、というような考え方なのです。だから、そこに大きな問題があるわけですが、でもみんなの顔に浮かぶ奇妙な微笑みを見ればそれがどういうことかよくわかるでしょう。


私はアーティストであり、プロデューサーであり、ツアー・アーティストであり、ソングライターでもあります。ストリーミング配信の業界がどうなっているかなんて知らない。ブラックボックスの中身は知らない。私たちはみな同じものを扱っているんだ。そもそも私たちは金のことを考えるのが嫌な連中でもある。スタジオに帰れば、またツアーに出ていく必要がある。だからとても大変なんだ。また私たちはとても利用されやすいグループでもある--歴史的に見ても、あまり変わっていないんだけど--お金のために音楽活動を始めたわけじゃない。今夜ここにいる人びとは--ある時点で、無一文になることを覚悟した人たちでもあるんです...。