Jessie Ware 『That! Feels Good!』-Review

Jessie Ware 『That! Feels Good!』

 


Label: EMI

Release: 2023/4/28



Review


このアルバムは、2020年にリリースされたジェシー・ウェア(ワイヤーとも)の4枚目のスタジオアルバム『What's Your Pleasure?"』のリリースから3年後の2023年4月28日にリリースされることが予め決定していた。


前作は、その「ディスコ風」サウンドで広く批評家の賞賛を受けた。Pitchforkはニューアルバムを「2023年の最も期待される34のアルバム」のリストに入れ、Marc Hoganは、2022年7月19日にリリースされたシングル「Free Yourself」をアルバムへのテイスターとしてリリースした後、ウェアは、「その『セックスとダンス』のスイートスポットにうまくとどまった」と述べている。


ウェアは、この10年の初めに、ソウルフルで告白的なラブソングの制作から、きらびやかなパーティー・ミュージックへと焦点を変えて以来、ダンスミュージックの名手となった。


彼女の4枚目のアルバム『What's Your Pleasure? (2020)』は、デュア・リパや彼女のヒーローであるカイリー・ミノーグやロイシン・マーフィーと並んで、初期のパンデミック・ディスコ・リバイバルの作品であり、夜遊びの幸福感と官能性を伝える1枚となっている。その結果、全英チャートで最高位を記録し、BRIT賞で初めてアルバム・オブ・ザ・イヤーにノミネートされ、ハリー・スタイルズの前座としてツアーに参加するなど、彼女のキャリア史上、最大の成功を収めたのだった。


最新作となる『That!Feels Good!』のために、ウェアは同じ類のアルバムを2度作ることを要求されなかったという。しかし彼女は付け加えている。「私はバカじゃない。何がうまくいくかはわかっている」と。問題は、どうすればその道を踏み外すことなく正しいルートを辿れるか。ウェアは、プレジャーのエンディング曲 "Remember Where You Are "にその答えを見いだした。この曲は、夜明けの太陽の光のようなストリングスとクワイアの入った、揺れ動くミッドテンポのアンセムである。


ジェシー・ウェアはプリンス、トーキング・ヘッズ、フェラ・クティからインスピレーションを受け、『プレジャー』の洗練されたエレクトロニック・スタジオの輝きを捨て、ステージ用の新しいダンス・ソングを構想した。彼女はマドンナ、ミノーグ、ペット・ショップ・ボーイズと仕事をしてきたダンスミュージックの王者スチュアート・プライスを共同プロデュースに迎えている。


ジェシー・ウェアはこのアルバムの構想の中で、リスナーに難しく考えずに踊ることを促している。そのコンセプチュアルな概念はマイケル・ジャクソンやプリンスといったディスコサウンドの気風を受けたタイトル曲にわかりやすい形で反映されている。80年代以前のファンクサウンドのコアなグルーブを交えたディスコサウンドは楽しげで、リスナーの心に爽快な気持ちをもたらす。その他にも、ウェアのR&Bサウンドの影響はきわめて幅広い。同じく先行シングルとして公開された「Pearls」では、懐かしのアース・ウィンド・アンド・ファイアーのディスコサウンドを反映し、ユニークなループサウンドを確立している。そして跳ねるような強拍の上に乗せられるジェシー・ウェアの歌声は、近年になく迫力に充ちたものとなっていることに驚く。

 

もちろん、これらのディスコサウンドは必ずしもアナクロリズムに陥っているわけではない。ジェシー・ウェアの音楽性は、昨今のトレンドであるネオ・ソウルと結び付けられ、「Beautiful People」において華やかなサウンドとして昇華されている。アンセミックなフレーズと、それと対象的なそっと語りかけるようなウェアのボーカルは、外交的なサウンドを表向きのイメージの魅力にとどまらず、静かに聴き入らせる説得力を彼女が持ち合わせていることの証立てともなっているのではないか。

 

これらのディープなディスコファンクを中心とするサウンドは、ナイジェリアの伝説的な歌手フェラ・クティに代表されるアフロ・フューチャーリズムの神秘性と結びつき、多彩で新鮮味のあるR&Bサウンドとして提示されている。また、アルバムの終盤に収録されている「Freak Me Now」では、70年代のディスコファンク、MTVの80年代の華やかなサウンドを抽出している。


さらにネオ・ソウルの新境地を開拓した「Lightinig」、及び、アルバム全体にクールダウンの効果をもたらす「These Lips」は、歌手としての進歩を証しづけている。そしてやはり、このクローズ曲でも、ジェシー・ウェアは、アース・ウィンド・アンド・ファイアーやファンカデリックの往年のディスコサウンドやファンクに対するリスペクトを欠かすことはないのである。


80/100