Snooper 『Super Snooper』
Label: Third Man
Release: 2022/7/14
Review
ジャック・ロンドンのレーベルからの注目作をご紹介しよう。SxE(Straight Edge)の音楽性を継承するテネシー、ナッシュビルの期待のハードコアバンド、 Snooperのデビュー作である。snooperは既にサウス・バイ・サウス・ウエストにも出演経験があり、ライブパフォーマンスの魅力については織り込み済みのバンドと言える。
デビュー作にはドラムの4カウントから始まる性急なパンクハードコアという形式は確かに存在するが、オリジナル世代のストレイジ・エッジの思想性はほとんどない。どちらかといえばニューウェイブやポップパンクを主体に置き、キッシュなパンク性を追求し、ライブパフォーマンスを志向するバンドという印象。特徴は、ガーリーなボーカルが性急なビートの上を軽やかに舞う。
オープニング曲「Streching」はニューウェイブとスケーターパンクを融合させつつも、Silver Appleの「I Have Known Love」の打ち込みの要素を取り入れた電子ドラムをイントロに導入している点を見ると、プロトパンクの要素を彼らは兼ね備えている。加えて、ヘンリー・ロリンズ擁するオレンジカウンティのBlack Flag、同じく、Descendents、これらUSパンクのオリジナル世代の1980年代に登場したロサンゼルスのガーリーなロカビリーパンクバンド、Xの影響をわずかにとどめている。Xは、映画「Major League」に楽曲を提供したことで、かなりの人気を博すことに。
Snooperの音楽は、複数のクロスオーバーがなされている。ハードコア、ニューウェイブ、ガレージパンクが鮮烈な印象を放っている。例えば、「Bed Bug」において、ニューウェイブとハードコアをかけ合わせ、新鮮味あふれる音楽性を生み出たかと思えば、「Pod」では、Xのガーリーなロカビリー性を基底に置き、疾走感のあるパンクアンセムに導く。「Fitness」、「Powerball」は、次世代のポストパンクソングとして位置づけられてもおかしくない。かなり楽しめるはずだ。
ガールズパンク/ポップ・パンクとして聴くと、一定の熱狂性を呼び起こしそうな曲も収録されている。主要な曲は、ライブでも多くのファンの支持を獲得しそうな気配もある。例えば、「Xerox」において、Snooperはガーリーなパンクの真骨頂をみせ、ティーネイジャーパンク風の勢いとアンセミックな響きを生み出す。アルバム全体を聴く中で、癒やされる瞬間でもある。
ロックンロール性を引き出した「Fruit Fly」も終盤にかけて、スチームパンク風のニューウェイブへと曲調を鋭く変化させ、勢いだけが魅力のパンクバンドではないことを示す。また、ドラムのスティックの4カウントで始まるSxE(Straight Edge)の系譜にある「Investory」は、Teen Idlesに近いハードコア性を呼び起こす。またニュースクールのノイズコアを部分的に抽出し、少なからずの熱狂性を呼び起こしている。曲の終盤のカオティックなギターソロに関しても、それらのエナジーを引き上げる。セッションにおける熱狂性をレコーディングに持ち込んだ一曲となっている。
「Town Topic」において「ガールズ・ハードコア」とも称すべき真骨頂を見出そうとしている点については賞賛すべきか。リンダ・リンダズのガールズパンクのトレンドを受け継ぐ「Music For Spies」に関してもアンセミックな響きがあり、一定のパンクファンを惹きつけるかもしれない。
特筆すべきは、終盤の「Unable」において、ニューウェイブやガレージ・パンクを取り入れた煌めきとエッジの鋭さを見せる。ここに、ジャック・ホワイトのサードマン・レコードのレーベルカラーの真骨頂が垣間見える。それはパンクに内包されるニューウェイブ/メタリックな要素とも称すべきだろう。これが今後どのような形で完成形を迎えるのか期待させる余地もあり。
76/100