イギリスでは、年間のフェスティバル・シーズンは、グラストンベリーで始まり、レディングでひとまず終了します。2023年のレディング・フェスティバルは、姉妹開催のリーズ・フェスティバルとともに8月25日から27日まで開催されました。今年は雨の予報がでていましたが、それほど天候不順にも見舞われず、フェスは無事終了。当該期間、フェス参加者はキャンプ場のテントに拠点を張り、魅力的なアーティストのライブを体験するという機会に恵まれました。
サマセットにある小さな町の農場で行われるグラストンベリー・フェスティバルが、長閑な場所で行われる音楽の祭典であるとするなら、中世から由緒ある町並みを持つことで知られるレディング・フェスティバルは、堅実なアーティストが多数参加する都市型フェスティバルの雰囲気があります。
レディングには、開催当初から、イギー・ポップ、ニルヴァーナ、ストーン・ローゼズ、プライマル・スクリーム、ブラー、アークティック・モンキーズ、レディオ・ヘッド、ビョーク、オアシス、カサビアン、エミネム、レッチリ、パール・ジャム、メタリカ、アーケイド・ファイア、ピクシーズ、ホワイト・ストライプス、ザ・ストロークス、マイケミ、スマッシング・パンプキンズ、グリーン・デイ、フー・ファイターズ、ケンドリック・ラマー。国内外の伝説的なアーティストが多数出演しています。
2023年度は、The 1975、Foals、Rina Sawayama、Wet Legといった、日本の大型フェスでもおなじみのアーティストから、世界が誇るポップ・アイコン、Billie Eilish、イギリス国内で絶大な人気を誇るシンガーソングライター、Sam Fender、ディスコ・ロックの王者、The Killersまで堅実なラインナップが組まれ、三日間にわたって魅力的なパフォーマンスが行われました。
今回、BBCがライブアクト動画を公開しています。注目のアクトを以下に取り上げていきましょう。
The 1975
The 1975は土曜日にレディングに登場している。
実は、この前のアイルランドのフェスティバルでは、ビールサーバーをステージに設置し、フロントマンはメガネをかけ、長い白衣姿でステージに登場した記憶がある。マティ・ヒーリーは、この日、レザー・ジャケットでワイルドに決め込んでいる。従来よりもライブステージの演出が壮大になり、ひとつの大掛かりな総合エンターテインメントが今回のステージで確立された。
レディングのステージは、アンコールという形ではなく、二部構成のような形で組まれた模様。 バンドは、デビューアルバムの収録曲「Robbers」を中心にセットリストを組んでいる。ライブ・バンドとしては今や世界一ともいえるロック・バンドの抜け感のあるアクトをご堪能あれ。
Setlist:
The City
M.O.N.E.Y.
Chocolate
Sex
Talk!
Heart Out
Settle Down
An Encounter
Robbers
Girls
She Way Out
Menswear
Pressure
It's Not Living (If It's Not With You)
Happiness
I'm in Love With You
Oh Caroline
If You're Too Shy (Let Me Know)
I Always Wanna Die (Sometimes)
About You
The Killers
2008年に同フェスのヘッドライナーを務めているThe Killers。先日、ニューシングルを発表したばかり。最早このお祭りの常連と言える。The 1975と同じく二日目のステージに登場しました。
ディスコ・ロックの王者は、新作から2年遠ざかってはいるものの、今回のステージのオープニングでは、2021年のアルバムの収録曲「My Own Soul's Warning」を筆頭に、ブレイクの契機となった『Sam's Town』の収録曲「When You Were Young」を中心にセットリストを組んでいる。
また、この日のステージでは、光の演出を交え、女性コーラスを背後に華やかなダンス・ロックを披露している。このあたりに、ライブ・バンドとしての経験豊富さと余裕が表れている。アンコールでは、『Wonderful Wonderland』の「The Man」、「Human」を披露し、観客を湧かせた。
Setlist:
My Own Soul's Warning
Enterlude
When You Were Young
Jenny Was a Friend of Mine
Smile Like You Mean It
Shot at the Night
Running Towards a Place
Somebody Told Me
Spaceman
For Reasons Unknown
(fan Ozzy played the drums)
Your Side of Town
(Live debut)
Runaways
Read My Mind
Caution
(with "Rut" Segue intro)
All These Things That I've Done
Encore:
The Man
Human
(Electro)
Mr. Brightside
Sam Fender
ニューキャッスル出身のシンガーソングライター、サム・フェンダーは、FC ニューキャッスルの本拠地で同チームの白黒のストライプのギターでライブを行う予定だったが、過密日程により体調を壊し、ライブをキャンセル。しかし、レディングで無事復帰し、安定感のあるパフォーマンスを披露している。
誰よりも同年代の若者を思いやるシンガーソングライターで、自殺念慮のある若者を勇気づけるための曲を書いたり、イギリスの社会的問題にも歌の中で言及している。フェンダーは、2年前に新作アルバム『Seventeen Going Under』を発表、ポップ・シンガーとして若者から大きな支持を得た。ライブでは以前よりも成熟したパフォーマンスをバンドセットで披露している。声質がポリスのスティングに少し似ており、独特の清涼感のある伸びやかな声質を持つ稀有な存在。
Setlist:
The Kitchen
(First time since 2020)
Will We Talk?
Getting Started
Dead Boys
Mantra
The Borders
Spice
(Extended intro)
Howdon Aldi Death Queue
Get You Down
Spit of You
Alright
That Sound
(First time since 2021)
The Dying Light
Encore:
Saturday
Seventeen Going Under
Hypersonic Missiles
Holly Humberstone
それほどイギリス国外では有名ではないものの、注目しておきたいベッドルームポップ・シンガー。ホリー・ハンバーストンは、ルイス・カパルディのコンサートで人気を博すようになった。
イギリスのフィービー・ブリジャーズといえば、よりわかりやすいかもしれない。乗りのよいインディー・ポップが表向きの印象であるが、よく聞くと、ポップネスの中に繊細でデリケートな情感が漂い、聴き応えがある。ホリー・ハンバーストンは、二日目のステージに登場し、8曲を披露している。また、今回のライブの途中には、アーロ・パークスと共演を果たしている。
Setlist:
The Walls Are Way Too Thin
Overkill
Antichrist
Falling Asleep at the Wheel
Superbloodmoon
Room Service
(with Arlo Parks)
Vanilla
Scarlett
Arlo Parks
イギリス出身で、現在はロサンゼルスを拠点に活動するアーロ・パークス。当初、ネオ・ソウルシーンのニューライザーとして登場したが、次第に甘口のインディーポップ/ベッドルームポップへとシフトチェンジを図っている。昨年、サマーソニックで来日。パークスは、先日、新作アルバム『My Soft Machine』では良質なポピュラーミュージックのニュー・トレンドを確立した。
同日に登場したベッドルーム・ポップの新星、ホリー・ハンバーストンのステージで共演を果たしたパークスは、この日、六曲というシンプルな短めのセットリストを組んでいる。デビュー・アルバムから「Caroline」、「Eugene」。最新作から「Blades」「Weightness」を中心に披露している。ライブでは、やはり単なるインディーポップというよりも、ネオ・ソウルやローファイの影響が取り入れられ、まったりとしたチル・ウェイブにも近い音楽性が披露されている。
Setlist:
Weightless
Blades
Caroline
Eugene
Devotion
Softly
Rina Sawayama
ロンドンのポップ・スター、リナ・サワヤマは、グラストンベリーに続いてレディングの初日に登場。
今回のステージでは、最新作の収録曲を中心に、9曲を披露。グラストンベリーに比べると、比較的コンパクトなセットリストが組まれていることが分かる。アンコールは行われなかった。
『Hold The Girl』のレビューでも現地の複数のメディアが指摘していたが、ポップ・スターは、エヴァネッセンスをはじめとするニュー・メタルに強い触発を受けている可能性があるということだった。レディング・フェスティバルのステージを見ると、その点が確証に近くなるのではないか。マイク・パフォーマンスのアジテーションは、この曲の直前に最高潮に達している。
「Comme Des Garçons」では、現行のポップ・アイコンのステージ演出と視覚芸術としてのダンスを意識しつつも、平成時代の小室ファミリーを中心とするAvexのアーティストのスタイリッシュなステージ演出を継承している。この点にJ-Popファンとしては感慨深いものを覚えざるを得ない。
Setlist:
Hold the Girl
Hurricanes
Dynasty
Imagining
STFU! / Break Stuff
Frankenstein
Comme des garçons (Like the Boys)
XS
This Hell
(with Call and Response game)