AIボーカルの是非を巡る論争  人工知能は音楽の未来をどう変えるのか??



AIが生成するのは、バーチャルな人物やイラスト、映画の脚本、アート作品にとどまらない。その流れは音楽や人工音声にまで及び、プロのミュージシャンにも刺激を与えている。特に、歌声合成の話題はここ数カ月大きなニュースになっている。YouTubeが関与している以上、近い将来、何らかの結論が出るかもしれない。


さらに人工知能が有名歌手の歌声をモデリングすることも、今年大きな話題にのぼった。これは、匿名プロデューサーのGhostwriterが、ドレイクとザ・ウィークエンドのAI音声モデルをフィーチャーした楽曲『Heart On My Sleeve』をアップロードしたのが発端だった。その後、この曲は、アーティストのレコード会社が関知した後、すべての主要プラットフォームから削除された。


リアム・ギャラガーは、イギリスのバンド、ブリーザーが自分の声のモデルを使って作ったオアシスのような曲を聴いて、少し面食らった。彼は、その曲のひとつを典型的なファッションで、"mad as fuck "と表現したが、"I sound mega "だった。さらに、グライムスは、AIが自分のヴォーカルをモデルリングされることに興味を示し、ロイヤリティを折半するのであれば良いと述べた。ホリー・ハーンダン(Tower Records)もAIに対し先手を打っており、彼女自身の声のモデル「ホリー+」を提供し、ドリー・パートンの「ジョリーン」をカバーすることを課している。


そのため、各方面でさまざまな意見が飛び交っている。未来がどうなるのか。そして有名人の声がどこでも簡単にモデル化されるようなフリーフォーオールに終わるのかどうか。それは誰にもわからない。さながらすべてを決定するひとつの大きな審判の時を待っているかのようだが、ユーチューブがその土俵に上がったことで、まさに進化が起ころうとしているのかもしれない。


ビルボードによると、ユーチューブは、ユーザーが有名な歌手のような声を出力できるようにAIを搭載したツールを現在開発中であるという。世界最大のメディア・プラットフォームの1つとして、YouTubeはあらゆるレコード会社に対して、AIについて働きかけを行う可能性もある。開発が成功すれば、音楽産業に影響を及ぼすことも考えられる。


ユーチューブは、AI戦略へのアーティストの参加を歓迎するなど、アーティストとレコード会社の両方に対して、前向きな姿勢を見せているが、ソニーやユニバーサル・ミュージックを含む大手メジャーのいずれも契約には至っておらず、慎重な姿勢を見せている。その一方、新しいプラットフォームは、ナレーションや歌唱のため、AIが作成した人工音声を提供している。しかし前例がないことであるため、収入によるマージンをどう分配するのか、あるいはそのようなライセンス契約が予定されているのかについての言及はほとんど行われていないのが現状だ。


YouTubeとメジャーの契約は、それが実現した場合、他のプラットフォームがAIボーカルをどのように扱うべきかの先行事例になるかもしれない。そして、彼らがどのような契約を結ぼうとも、それを実際にどのように実行に移すことができるかは、かなりの熟考が必要であることは間違いない。もっとも、そのうちロボットやAIが人間が考えていることのすべてをやってのける。いずれにせよAIの人工知能が人間を凌駕する時代はもうすぐそこまで来ているのかもしれない。