Beyoncéの新作アルバム『Cowboy Carter』に収録されなかったロストトラックは何処へ消えたのか??


Beyoncé(ビヨンセ)のニューアルバム『Cowboy Carter(カウボーイ・カーター)』は予告どおり、三部作の二作目として3月29日(金)にリリースされた。米国メディアは週末、今年最大の盛り上がりをみせた。一作目はハウス・ミュージック、二作目はカントリー/フォークがコンセプトとなっている。

 

しかし、聞くところでは、一部のファンは購入した商品にそれほど満足していなかった。というのは、ビヨンセの『カウボーイ・カーター』のフィジカル盤には、複数の重要な楽曲が収録されていなかったのだ。「YA YA」、「SPAGHETTII」、「THE LINDA MARTELL SHOW」、「OH LOUISIANA」、 「FLAMENCO」といった期待された曲がレコード盤には収録されていない。


CD盤には「FLAMENCO」が収録されているが、Rolling Stone誌によれば、当初、限定盤CDには追加曲が収録されるはずだった。


「FLAMENCO」は『カウボーイ・カーター』のデジタル盤に収録されているが、最初から追加曲だったことが判明している。

 

しかし、レコードには「FLAMENCO」は収録されておらず、カントリー歌手、リンダ・マーテル(Linda Martell)のフィーチャリング曲「SPAGHETTII」と「THE LINDA MARTELL SHOW」も収録されていない。これらのロスト・トラックは一体どこへ行ったのか??


今回、収録されるべき曲が最終プレスのトラックリストに入らなかったことについて、BBCは、これらの曲がカウボーイ・カーターのトラックリストに追加されたのが遅かったため、アルバムのリリースの期日に間に合うように、フィジカルフォーマットに追加しなかったと推察している。ヴァイナルにプレスされる前に、アルバムはプレス工場に数ヶ月前に提出する必要がある。


初期のCDプレスでは「MR.ROSE」のタイトルが「MR.SIR」になっていたり、フィジカル盤の背表紙やアートワークが”Cowboy Carter”ではなく、”Beyincé”になっていたりした。Beyincéは、シンガーの先祖代々の姓を指し、祖母の出生証明書では、ビヨンセに変更されている。

 

また、曲のタイトルに”I's”が頻繁に追加されている。これは南部で疎外されているブラック・アメリカンに対するコメントとして機能している。伝統的に黒人だったアイデンティティを取り戻すという意義があるようだ。


また、ビヨンセ自身、フィジカル・リリースのミスに気づいている可能性があるとの指摘もある。彼女のウェブストアは、金曜日のアルバム・リリースに先駆け、『Cowboy Carter』のCDとレコード・バージョンのトラックリストを提供していなかったからである。『カウボーイ・カーター』のフィジカル盤を購入したファンは、アルバムを受け取った際にも、トラックリスト(収録曲)を渡されなかった。ビヨンセは、アルバムのトラックリストを、ジャケットの表や裏に提示するのではなく、アルバムのライナーノーツとクレジットにリンクするQRコードを追加することを選択した。これは、もしかすると、事後的な対応ではないかとも推察できるわけなのだ。


ビヨンセは以前、前作『Renaissance(ルネッサンス)』をリリース後に修正し、障害者を卑下するような表現が使われた歌詞を削除している。しかし、『Cowboy Carter』のリリース前、ビヨンセは、『Cowboy Carter』が”5年前から制作されていた”と主張しており、『ルネッサンス』のセッションより以前と推測される。なぜアルバムがフィジカル・フォーマットで不完全な状態で届いたのか、ファンを困惑させている。ビヨンセは、それぞれ4種類の限定版がリリースされたレコード盤とCD盤が修正されるかどうかについて、まだ正式な声明を出していない。


他方、ポップ・スターが自分のアルバムの圧倒的な数のバリエーションや別バージョンを提供することについては、喧々諤々の議論がなされている。ビリー・エイリッシュは、最近、アルバムの売り上げを伸ばすため、複数のヴァリアント盤をリリースするアーティストを非難し、「とても無駄なこと」と言い、持続可能なアプローチを推奨している。ビヨンセは、売上を最優先しているという指摘もあり、ドリー・パートン(Dolly Rebecca Parton)に「Jolene」の作詞作曲のクレジットを単独で与え、この曲の印税がビヨンセではなくパートンに入るようにしている。収録曲にとどまらず、クレジットの話題についても、さまざまな憶測を呼びそうだ。