©︎Netti Habel |
ポーティスヘッドのベス・ギボンズが、待望のソロ・デビュー・アルバム『Lives Outgrown』を金曜日にリリースする。「Love Changes」は、壮大かつ哀愁を帯びた、ベスの曲に求めるものすべてを詰め込んだようなナンバー。 またインディーフォークを基調とした美しい曲でもある。
彼女は、このシングル曲のなかでストリングスのテクスチャに相対して、「私たちはみんな一緒に迷っている/私たちはお互いを騙している...。私たちは努力するけれど、説明できない/私たちはあるフィーリングを引き受けた/輝く瞬間/そして、ゲームは何だと言った」と歌っている。
ベス・ギボンズの新作アルバムは、最初の発表時に説明されていた通り、大掛かりな音楽や装置や舞台ではなく、ギボンズがミュージシャンとして、あるいは独立系のアーティストとして今、何が出来るかを考えたというものである。『Lives Outgrown』はタイトルにも見える通り、ミュージシャンだけにとどまらず、家庭人としての人生も部分的に反映されているのかもしれない。こういったアウトプットについては、男性よりも女性の方が向いているという気がする。女性は人生の節目で現実を見つけるが、男性は現実という名の幻想の中に生きる生き物なのだ。
当初は、大きな希望を叶えることが人生の醍醐味であると考えていたギボンズであるようだが、年を重ねるにつれ、それらの中にはどうにも出来ない問題や弊害も存在することが分かる時がある。若い時代に抱いていた希望の多くが幻想だったかもしれず、しかし、それは諦観とも言いがたい、納得や安堵に近い感情へと変遷していくものである。なんらかの出来事に打ちひしがれたことのない人々にとっては、あまりに救いのないようなことに思えるかも知れないが、しかし、それは同時に納得出来るポイントを見出したという、明るい意味も含まれている。
人生とは、結局のところ、無数の選択肢のなかで、自分や周囲との関係の中で頷けるポイントを見つけるということである。ギボンズの場合は、自分自身や人生に正直であるということだった。そのことに関してギボンズは言う。「希望のない人生がどんなものかを悟りました。それは、私が感じたことのない悲しみでした。以前は、自分の未来を変える能力があった。でも、自分の体に立ち向かっているとき、その体がやりたくないことをさせることはできなかった」
このシングルには、いかなる人もいつかは体験するであろう不思議な感覚があり、浮き沈みのある人生や音楽的表現を経験したことに対して、ささやかな慈しみの眼差しが注がれている。そして、窓辺の向こうにゆっくり流れていく過去の自らの人生を見つめるような優しい感情に溢れている。それは忙しない人生の流れを止め、ほんの少しだけ時計の針を遅らせる効果がある。
「Love Changes」
今年のベス・ギボンズのツアーは5月27日のパリから始まり、スペイン/プリマヴェーラ・サウンドと日本/フジロックフェスティバル出演を含む。全日程(ヘッドライン公演はビル・ライダー・ジョーンズとの共演)は以下の通り。
Beth Gibbons – 2024 Tour Dates:
May 27 – La Salle Pleyel, Paris - SOLD OUT
May 28 – Theater 11, Zürich
May 30 – Primavera Sound Festival, Barcelona
May 31 – La Bourse Du Travail, Lyon – SOLD OUT
June 2 – Uber Eats Music Hall, Berlin
June 3 – Falkonersalen, Copenhagen
June 5 – TivoliVredenburg (Main Hall), Utrecht - SOLD OUT
June 6 – Cirque Royal, Brussels - SOLD OUT
June 9 – The Barbican Centre, London - SOLD OUT
June 10 – Albert Hall, Manchester
June 11 – Usher Hall, Edinburgh
July 27 – Fuji Rock Festival(フジロックフェスティバル), Niigata(新潟)