New Riser- Ain't
・ポストシューゲイズ、ポストパンクの次世代を担うロンドンの5人組に注目
90年代のギターロック、ポスト・パンク、シューゲイザーの奇妙な側面を大西洋の両岸からかき集めたAin't(エイント)は、ノスタルジーと独創性の境界線を巧みに行き来する。バンドはポスト・ソニック・ユース、または、ポスト・ホースガールのようなグループとして見てもそれほど違和感がない。エド・ランドールのエッジの効いたギター、それと鋭いコントラストを描くジョージ・エラビーの悲哀に充ちた叙情的なボーカルを特徴としている。このサウンドは、Been Stellarが登場した時を思い出させるが、彼らのサウンドはよりベースメントに潜っている。
ロンドンで結成された5人組はまだ謎が多く、ストリーミングでも曲が配信されていない。レーベルの紹介によると、ジョージ・エラビー(ギター/ヴォックス)、エド・ランドール(ギター)、ハンナ・ベイカー・ダーチ(ヴォックス)、チャップマン・ホー(ベース)、ジョー・ロックストーン(ドラムス)で構成されるAin'tの創作意欲は、衝動的で重厚であるという。彼らは2020年代の始めから、活動していたが、最初のリリースにこぎつけるのに数年かかった。
「Oar」-7inch
Ain’tが満を持してドロップするデビュー・シングルの "Oar "は、バンドの今後の青写真を示唆するような痛撃なトラックである。パンデミックの真っ只中に書かれたこの曲は責任者への信頼を失ったことに拠るうずまくフラストレーションを表現している。社会への信頼感を持てなくなった若者がどれほどいるのか。彼らのサウンドとボーカルはそういった取りざたされない無数の若者たちの声の代弁ともなりえる。
ベイカーのヴォーカルは、暗く冷笑的な回想と吐き捨てるようなうねりを往来し、無関心の自己防衛と常に沸き起こる怒りの両方を捉えている。それは他者や社会への不正に関する無関心を貫く人々への公憤のようなものを意味している。
70年代や80年代あるいはそれ以降の2000年以降に至ってもそうだったが、イギリスやロンドンの音楽の醍醐味は、上澄みのポピュラリティだけでは語り尽くすことは出来ない。上澄みの対極にあるーー不気味な一角ーーからカウンター音楽が台頭することが魅力なのである。Ain’tは、インダストリアル・ノイズと、みずみずしいスローポップの夢物語の境界線にある白熱したエナジーをつなぎ合わせて、冷笑的でシニカルな音楽を生み出している。「約束が破れた時、私はオールを安定させるために取り残された」とベイカーは嘆き、バンドにその破片を拾わせる。
Ain’tは、季節の移ろいのように曲を制作するという。静けさと嵐の両方にリスペクトを表しながら、彼らの艶やかな楽曲は、内省的な豊かさと共同体の明瞭さに向かっていく。ため息のような直接的なカタルシスがあり、エインツを生き生きとした無限の力として際立たせている。
「'Oar'は元々、パンデミックの中でジョージが起草したもので、担当者の信念のなさに突き動かされたものです」とバンドは声明で説明している。「バンド加入後、ハンナは歌詞をLlys Heligの伝説から触発され、それを再解釈し、中世ウェールズからのイメージをテーマに取り入れた」
Ain'tのデビュー作「Oar」は”Fear of Missing Out Records”から8月9日に7inchのヴァイナルとしてもリリースされる。
「Oar」