最新アルバム『The Falls of Sioux』は、いつもよりドラマティックなサウンドを探求しているように感じられる。旧来のインディーロックやフォークの音楽性に、オーケストラベルを導入したり、アコースティックの録音を再構成として散りばめたりと、かなり作り込まれたプロダクションになっている。そこにマイク・キンセラによる音のストーリーテリングの要素が加えられた。
続く「Hit and Run」は、OWENの代名詞的な曲であり、ソングライターのフォークソングの涼し気なイメージが流れる滝のようにスムーズな質感をもって展開される。アルバムの序盤の2曲のようにエレクトリック/アコースティックギターの多重録音に加え、ピアノの美麗な旋律が曲に優しげな印象を添えている。また、ネイト・キンセラとのデュオの活動で培われたシンセサウンドは飾りのような形でアレンジに取り入れられている。ギターの旋律やコード進行の巧緻さはもちろんのこと、そこにヴァイオリン/フィドルの上品な対旋律を加えながら、気品のあるフォークミュージックが作り上げられる。それらは複数の演奏を入念に行った後で、緻密に最終的なサウンドを構築する過程が記されているのである。始めから出来上がったものを示するのではなしに、一つずつ着実に音の要素を積み上げていく過程は圧巻である。そこにオルタネイトな旋律やアメリカーナのギターが加わることで、癒やしのあるサウンドが作り上げられる。
『スーの滝』はベテラン・ミュージシャンによる飽くなき音楽の探求心が刻印されているように思える。クローズを飾る「With You Without You」では、Cap N' Jazzの時代から存在した中西部のインディーフォークの要素が、華やかなシンセストリングスとドラムのダイナミックなリズムによって美麗なエンディングを作り上げる。バスドラの連打に合わせて歌われるキンセラの歌はエモーショナルの領域を越えて、何かしら晴れやかな感覚に近づく。アウトロの巧みなアコースティックのギター、そのなかに織り交ぜられる繊細なエレクトリック・ギターやストリングスに支えられるようにして、このアルバムは最後に最もドラマティックな瞬間を迎える。