ピアニストのJoep Beving(ユップ・ベヴィン)とチェリストのMartin Vos(マーテン・ヴォス)は、ニルス・フラームが主催するドイツのレーベルLeiterから7月19日にリリースされる初のコラボレーションアルバム「vision of contentment」の詳細を発表しました。両者ともオランダのコンテンポラリークラシックの象徴的なミュージシャンです。
「vision of contentment」は、Joep Beving(ユップ・ベヴィン)の3作目のアルバム「Henosis」(2019)での共同作業に続く作品で、2人の音楽家が2018年にアムステルダムのライブで共演したことから生まれました。
マーテン・ヴォスもスタジオを構えるベルリンの有名なファンクハウス複合施設にあるLEITERのスタジオでニルス・フラームがミックスした本作には、8曲の新曲が収録されます。バイナル盤のほか、すべてのデジタル・プラットフォームで発売されます。
ユップ・ベヴィンはこれまで他のアーティストとアルバム全体をレコーディングしたことはありませんが、ヴォスは定期的にそれに類する活動を行っており、ジュリアナ・バーウィック、ニコラス・ゴダン(AIR)、アレックス・スモークといったアーティストとクレジットを共有しています。
「ときどき、音楽的なつながりを共有するアーティストに出くわすと、お互いにコラボレーションをしたいと思うようになるものです」とマーテン・ヴォスは説明します。
「異なる創造的アプローチを探求し、彼らのワークフローから学ぶことはとても刺激的であり、私の成長に大きく貢献しています」
他方、ユップ・ベヴィンにとって、それは当然のステップで、コラボレーションは遅きに失したと言っても過言ではありません。
「共同プロジェクトとしてゼロからアルバムを作ることは、マールテンと私が以前からやってみたかったことでした。私の契約(ドイツ・グラモフォン)が終了したとき、私たちは音楽を作り始める機会を得た。僕はいつも、リスナーが一時的に住めるような小さな世界を作ろうとする。マールテンとニルスと一緒に仕事をしたことは、これを達成するのに非常に役立ってくれました。マールテンは音の彫刻家でもあるのです」
時におびただしい総数の作品から、ピアニストが言うところの「避けられないことを受け入れることに安らぎを見出す」という普遍的な賛辞が生まれましたが、本作はそれ以上の概念を表現しています。それは、彼らの友人であり、ベヴィンの場合はマネージャーであったマーク・ブルーネンへの驚くべき個人的トリビュートでもある。
マーテン・ヴォスは、『vision of contentment』の心に響くサウンドを「イマジネーション豊かな探求を促す音の風景」と考えており、デュオは音楽のガイドとしてモートン・フェルドマン、そして「メンター」として坂本龍一とアルヴァ・ノトを挙げてます。
一方、ユップ・ベヴィンは、リスナーにシンプルな愛の感覚を残すつもりだと語り、「調和と理解の探求」を可能にし、「ファシストと恐怖に批判的な意見」も届けたいと付け加えています。確かに、このアルバムは、我々の世界であれ、死後の世界であれ、平穏というアイデアの上に成り立っているようです。「on what must be」の生意気なサウンドで始まり、それに続くイーノとバッド風のミニマリズムは、悲しみ、諦め、美しさとさまざまな感覚をかけあわせています。
ベヴィン曰く、「嵐の翌朝、潮の満ち引きを見極めながら、過ぎ去ったことを受け入れ、新しい日、新たな人生の夜明けを迎える」
そう、とても繊細なブックエンドの間には亡霊のような無調の「Penumbra」、さらにくぐもったノスタルジックな「A night in Reno」、不定形で不穏な「Hades」など、半ダースのトラックが収録されています。
そのほかにも、「The heron」の哀愁を帯びたチェロは、豪華なピアノの旋律にささえられながら、空間の中に偏在する得体の知れないノイズのようなものによってやや明るくなります。「02:07」は、よく生きた人生がより良い場所へと旅立つ音であり、タイトル曲の広々とした静かで壮大な9分間は、不在そのものを祝福しているかのよう。ベヴィンとヴォスが森に落ち着いた頃には、友人のブルーネンは3年間がんと闘っていた。しかしながら、彼の "逝去 "が間近に迫っていたことが、このプロジェクトに暗い影を落としていたとしても、それは悲しみだけが原因ではなかったのです。
「02:07」
「ここでの制作の中心テーマは "ブルー・アワー"、ようするに黄昏時です」とベヴィンは説明します。
彼の言葉には刻限だけではなく、私たちの人生に訪れる夕暮れや黄昏の時もまたその概念の中に含まれています。それはふいに友人の死からもたらされたものでした。ある意味では、目を背けたくなるような出来事が、その後、受け入れや受容に変わっていく道筋が音楽に原動力をもたらしたのです。彼は友人の死を「黄昏」と捉えました。
「黄昏とは、ある状態から別の状態への移行や、そして暗闇を受け入れることについて意味しています。マークは自分の病と差し迫った人生の最期に際して、驚くべき対処法を示していました。彼は、自分の運命の最後をとても安らかに過ごしていました」
それから、ヴォスとベヴィンは、彼が亡くなるまでの数日間、ようやく友人と会うことができた。そして、彼が亡くなったことを知ったときも、スタジオで一緒にいたのです。
その瞬間は、多くのリスナーに深い感銘を与えるであろう「02:07」に収められており、この曲はその知らせが届いた時間にちなんで名付けられましたが、「vision of contentment」の各作品も同様、彼らの人生における彼の存在に照らし出される。実際のところ、かけがえのない友人ブルーネンとの家族のように温かな心の触れ合いに加え、アルバムジャケットには、カナダのアレックス・コマの印象的な絵が描かれています。
「このレコードを象徴するイメージだとすぐにわかりました。白鷺は知恵、内面的な認識、そして精神的な成長の象徴であり、マークが生涯を終えるときの心境を表しています。ボートは私たちを別世界に運んでくれる船を意味している。『ブルー・アワー』は、黄昏、それから暗闇から光への移ろい、そして、その逆を象徴しています。最も幸福であり、最も悲しい時間……。このことを知り、無常を理解し、人生の美しく本質的な部分として受け入れることが、人生を生きる上での満足感につながるのです」
このアルバムは、ヴィニ・ライリーが自身のマネージャーであり、ファクトリー・レコードのオーナーであるアンソニー・ウィルソンに捧げた『ウィルソンへの賛歌』(The Durutti Column's A Paean to Wilson)と同じくらい感動的な作品となっています。
Joep Beving & Martin Vos「vision of contentment」
Tracklist:
1.on what must be
2.Penumbra
3.A night in Reno
4.Hades
5.The heron
6.02:07
7.vision of contentment
8.The boat
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