Best New Tracks - Laura Marling 「No One's Gonna Love You Like I Can 」(Week4)
ー若い母親の視点を通して端的に語られる未知なる「娘」という存在について-
Laura Marling |
もし、ローラ・マーリングがロンドンの自宅スタジオで制作した2020年に発表され高評価を得た『Song For Our Daughter』が、「架空の娘」に向けて曲を書くという観点から比喩的に書かれたものであるとするなら、続くアルバム『Patterns in Repeat』は、2023年に娘が誕生した後に書かれ、マーリングは家族という枠組みの中で繰り広げられるパターンについて鋭い考察を試みる。
この作品は、彼女の人生において啓示的な時期に根ざし、何世代にもわたり、家族という概念を通して定着してきた観念や行動を、女性/母親として深く見つめ直している。
アルバムは、ほぼ全編の自宅スタジオで録音され、ドム・モンクスが共同プロデュース、ストリングスの巨匠のロブ・ムースも参加している。さらに、レコーディング・セッションには、実際の「ローラの娘」がしばしば参加しており、アルバムの比喩的な親しみだけでなく、純粋に状況的な内容を反映している。それは音楽的な動機として「娘」がどこかに存在しているからだろう。
若い母親にとって子供はいつも驚異的な存在であるのか。ときに、親はいつも子供に何かを教えていると思うがあるが、時には、子供から重要な教訓を学ぶこともある。今まで気づかなかったなにかについて。
次作アルバムのセカンド・シングルとして公開された「No One's Gonna Love You Like I Can」は、バッハの平均律クラヴィーアを彷彿とさせるピアノの演奏から、敬虔なボーカルが乗せられて、やがて、ストリングスの美しいハーモニーがローラ・マーリングの音楽的なイメージを高い啓示へと導く。
曲の歌詞についても示唆的な内容に富んでいる。若い母親の視点を通して、「娘」という未知なる存在が、想像だにしない行動を取ることへの戸惑いについて歌われている。
曲の冒頭は、こんなふうに始まる。ーー私が知っているように、誰もあなたを知ることはないばかりと思っていた。その時、あなたは道端のバーで、服を脱いでいたーー。昨年生まれたマーリングの娘について驚きを込め、ちょっとユニークに歌っている。
マーリングは『Patterns In Repeat』をセルフ・プロデュースし、ロンドンの自宅スタジオでレコーディングした。
「No One's Gonna Love You Like I Can 」のスタジオ・ヴァージョンは、マーリングがインスタグラムに投稿したものと同じように、荒々しくもきわめて親密な内容となっている。レコーディング・バージョンには美麗なストリングス・セクションもあるが、同じように、ルーム・サウンドの雰囲気さえある。2分足らずの短い曲だが、切なる想いすら伝わってくる。試聴は以下から。
Laura Marling(ローラ・マーリング)のニューアルバム『Patterns In Repeat』はPartisanから10月25日に発売予定。
「No One's Gonna Love You Like I Can」