Interview: Midori Hirano ベルリンを拠点とするミュージシャン 平野みどり  ブルーダー・ゼルケとのアルバムの制作 ドイツの政治情勢について述べる

 Interview:  Midori Hirano

 

Midori Hirano & Bruder Selke ©Sylvia_Steinhäuser
 

 

互いの異質さや存在感をぶつけ合うのではなく、逆に互いの最大公約数を見出し、そこにフォーカスする- Midori Hirano

 

 

ベルリンを拠点に活動するピアニスト、シンセ奏者、作曲家として世界的に活躍するMidori Hiranoは、2025年に入り、ポツダムの兄弟デュオ、Bruder Selke(ブルーダー・ゼルケ)とのコラボレーションアルバム『Spilit Scale(スピリット・スケール)』をThrill Jockeyから1月末に発表しました。エレクトロニック、チェロ、ピアノを組み合わせたアルバムで、スケールの配置をテーマに制作された。

 

らせん階段のように、GからAのスケールが配置され、旧来のバロック音楽、現代的なエレクトロニックのメチエを組み合わせ、変奏曲、連曲、組曲ともつかない、珍らかな構成を持つモダンクラシカル、エレクトロニック作品に仕上がった。Yoshimi O、灰野敬二、Boredoms、石橋英子をはじめとする、日本のアンダーグランドの象徴的な実験音楽家を輩出するスリル・ジョッキーからのリリースは、ミュージシャンにとって象徴的なレコードの誕生を意味するでしょう。


今年は続いて、ロシア出身でスウェーデンを拠点に活動するミュージシャン、CoH(Ivan Pavlov)とのアルバム『Sudden Fruit』がフランスのレーベル”ici,d'alleurs”から4月に発売予定。エレクトロニックとピアノの融合した、オランダのKettelを彷彿とさせるアルバム。また、アーティストは今年4月に日本でライブを行う予定です。こちらの詳細についてもご確認下さい。

 

今回、平野さんはご旅行中でしたが、『Spilt Sacale』の制作全般について、最近のベルリンの暮らしや政治情勢について教えていただくことが出来ました。お忙しい中、お答えいただき、本当にありがとうございました。今後の活躍にも期待しています。以下よりインタビューをお読みください。

 

 

ーー1月24日にコラボレーションアルバム『Spilit Scale』がThrill Jockeyから発売されました。この作品の大まかな構想についてあらためて教えて下さい。



平野みどり: このアルバムの構想は最初にゼルケ兄弟から提案されたのですが、一曲ごとのキーを西洋音階のピアノでいうところの白鍵にあたるAからGまでに設定して作るというとてもシンプルなものでした。ですので、一曲目がA-Minorで始まって、最後にまたA-Minorで終わる形になっています。マイナーキーにするかメジャーキーにするかまでは決めてなかったのですが、互いの音楽の内省的な傾向が影響したのか、自然にFとG以外は全部マイナーキーになりました。



このアルバムは、全てファイル交換のみで制作したのですが、段取りを明確にする為に、A, C, E, Gは私発信で、それ以外のB, D, F, AAはゼルケ発信で始める事にしました。


アイデアとしてはとてもシンプルだし、新鮮さは特にありませんが、私は自分の作品を作るときはこんなに分かりやすいルールを決めてから始めるという事はあまりなかったです。私に取っては決められたルールの中で、彼らの作る音も尊重しながら、どれだけ自由に表現を広げられるかという点では、とても新鮮な試みでしたね。



ーーゼルケ兄弟との親交は、いつ頃から始まったのでしょうか? 実際に一緒に制作を行ってみていかがでしたか。



平野: 最初にゼルケ兄弟と知り合ったのは、彼らの拠点でもあるポツダムで主催している「Q3Ambientfest」というフェスティバルに呼んでくれたのがきっかけでした。2017年の春で、その年が彼らにとっても第一回目のフェス開催でした。その当時は彼らは”CEEYS”というユニット名で活動していましたが、数年前からブルーダー・ゼルケと名乗るようになっていました。


その後にも何度か同じフェスだけでなく、別の主催イベントにも対バンで何度も呼んでくれるようになって、それを通じて次第に仲良くなっていったという感じです。

 

それから2021年に彼らの”Musikhaus”というリミックスアルバムの為に、一曲リミックスを依頼されて制作したのですが、そのリミックスを気に入ってくれたみたいで、その後に割とすぐコラボレーションをしないかと誘われたのが、このアルバムを作る事になったきっかけですね。

 

最初に調性などのルールは決めたものの、それ以外は自分の直感に従い、自由に音を重ねていったように思います。ゼルケ兄弟の2人は本当に人が良くて平等精神に溢れた人達ですので、お互いに尊重するべきポイントもとても把握しやすく、最後まで気持ち良く作る事が出来ました。




ーー最新作ではピアノ、チェロ、シンセサイザーを中心にモダンクラシカル/アンビエントミュージックが展開されます。作曲から録音に至るまで、どのようなプロセスを経て完成したのでしょうか。



平野: 彼らが住んでいるポツダムから私の住むベルリンまでは電車で1時間弱と近いので、一緒にスタジオに入って録音する事も物理的には可能ではありましたが、3人のスケジュールを合わせるのはなかなか大変ですし、それぞれ自分のペースでゆっくり考えながら制作したいという思いもありましたので、先に話したように、全てファイル交換のみで仕上げました。途中、何ヶ月か中断しながらでしたが、2年ほどかけて丁寧に作りました。

 

録音したファイルは、毎回、4曲ずつをまとめてお互いに送り合って進めましたが、ファイルが往復した回数は2年の間で合計3回ぐらいだったと思います。

 

最終的な仕上げとミックスは私に任せるとゼルケ兄弟が言ってくれたので、最後の調整は私が1人で数ヶ月かけてやりました。最後の段階では曲によって10分以上あるものも多く、ちょっと長すぎるかなと思ったところを私の判断でいくつか切って短くしたり、さらに私が追加でピアノとパッド系のシンセを入れた曲も結構あります。



最終調整作業は、なかなか大変でしたが、結果的には満足のいくものに仕上がったと思っています。私は自分のソロでは結構実験的なアプローチで作っていたり、ピアノがメインの曲でもピアノの音自体を大きく加工して作ることも多いので、こんなに直球なモダンクラシカル的な作品をアルバム単位で作ったのは、私にとっては実は初めてかもしれませんね。




ーー今回のアルバムでは、ピアノ/シンセサイザー奏者が二人いるわけですが、それぞれの演奏パートをどのように割り振ったのか教えていただけますか? また、ゼルケさんと平野さんの演奏者としての性質の違いのようなものはあるのでしょうか?



平野: 3人の中でチェロを演奏するのはセバスチャンだけなので、ここの割り振りは初めからはっきりしていました。ピアノに関してはダニエルと私で特別最初に申し合わせをした訳ではないのですが、ダニエルがピアノを弾いているのは「Scale C」と「E」だけで、それ以外の曲のピアノはほぼ全て私が担当しました。


最初に彼らから送られてきた曲のファイルにあまりピアノが入っていなかったので、あえて私の為に入るスペースを残してくれていたのかなとも思いました。逆に、私も自分発信の4曲の中の「Scale C」と「E」には、ダニエルがもしかしたらピアノを弾くかもしれないと思い、シンセしか使いませんでした。


段取りについては最初に明確にルールを決めたものの、楽器の割り振りについては毎回録音する度にお互いに探り合いをしながら、慎重に選んでいったように思います。最終ミックスの段階で、初めて何か足りないと思ったところを、私がシンセやピアノで一気に追加したような感じですね。



ピアノとパッド系のシンセや「Scale C」のイントロに出てくるようなデジタル感の強い音は主に私で、ダニエルはエレクトロニックパイプで控えめなノイズっぽい音と、時折シンセベースを出したりしています。


あと、「Scale AA」でのシンセのアルペジオもダニエルが演奏しています。アナログ機器とチェロの音がメインのゼルケ兄弟の音と、ピアノ以外ではデジタルシンセを多く使っている私の音をミックスするのはなかなか難しかったですが、その割には意外とうまくまとまったなと思っています。



ーー『Split Scale』は、インプロヴァイゼーション(即興演奏)の性質が強いように感じられました。トリオでの制作において、共通するイメージやコンセプトのようなものはありましたか。そして、そのイメージが通じる瞬間はありましたか?



平野: ゼルケ兄弟も私も最初の録音の際には即興に近いスタイルで演奏したと思いますが、あとはお互いの音を聞きながら録音を重ねていっているのと、後から編集も結構加えているので、厳密に言えば、即興と作曲の中間のようなものです。



それでも、3人ともクラシック音楽のバックグラウンドがあるからなのか、ハーモニー構成の癖が似ている部分もあるかもしれません。ステージで一緒に演奏する時でもほぼ全部即興であるにもかかわらず、横も縦もはまりやすい。即興演奏として、それが面白いかどうかというと、人それぞれの意見があるとは思いますが......。でも、お互いの異質さや存在感をぶつけ合うのではなく、逆に互いの最大公約数を見出し、そこにフォーカスするような控えめな「即興演奏」を、私達はこの作品で繰り広げたのだと思ってますし、そこから生まれる美しさもあると思います。

 

 

Photo:Sylvia Steinhäuser

 



 

ーー最近のベルリンの生活はいかがでしょう? 現在の現地のミュージックシーンがどうなっているのかについてお聞きしたいです。



平野: ベルリンに住んでもう16年が経ちますので、最初に引っ越してきた頃に感じていたような新鮮さは薄れかけていますが、私個人の印象では日本と比べると、風通しの良い人間関係を築きやすい気がします。そして、女性が自信を持って生きやすい場所だとも思えるところは変わらないです。ベルリンというのは、いろいろな人達が移住してきてはまた去っていく都市ですので、長く住んでいる身としては、たまに”部活の先生”みたいな気持ちになる事があります。



音楽シーンは変わらず活発です。地元のアーティストもそうですが、世界各地から頻繁にさまざまなミュージシャンがベルリンにツアーのために訪れますし、毎日のように、いつもどこかで大小様々なライブイベントが開かれています。運営側からすると、客取り合戦みたいになりがちです。それでも、この活発さがベルリンの特色だと思っています。例えば、エクスペリメンタル・ミュージックのような、ニッチなジャンルのイベントでも、日本の数倍規模の集客がある場合が多いです。そこはベルリンの文化助成が支えて育ててきた部分も大きい気がしますね。



とはいえ、2024年の暮れから、ベルリンの文化助成予算が大幅に削減される事になりましたので、少しずつ運営が難しくなるライブハウスやイベントも出てきているようです。当然、この政治的な変化に対する反対運動も大きく、今後どうなっていくのかなとは思っています。色々な意味で、今後、アーティストとして、どう生きていくかが問われてきているように思います。



ーー女性が自信を持って生きやすいということですが、日本や他のヨーロッパの国々と何か異なる文化的な背景や慣例があるのでしょうか?
 
 

平野: 私は、日本以外ではベルリンにしか住んだことがないので、あくまでも個人的な体感に過ぎませんが、ドイツのみならずヨーロッパは全体的に、社会における女性の存在感が大きいように思います。勿論、もっと厳密に分析すれば、北欧、東欧、西欧と南欧では、文化的背景がそれぞれ異なってくるため、一概には定義できませんが、自由と平等、人権の扱い方や平和構築など、いわゆる大義としての西洋の理念みたいなものは欧州全体で共有されているという実感はあります。
 

女性に限らず、男性同士でもおそらくそうだと思うのですが、日本に比べると年齢によって作られるヒエラルキーをあまり感じなくて済むし、何歳になったからと言って、こうであるべきだ、みたいな固定観念も無くはないんですけど、日本よりはその意識がかなり薄いという気がします。
 

また、メルケル元首相が、2005年にドイツで女性として初めての首相に就任し、その後16年も政権を築いてきたことも、ドイツにおける女性の地位向上を目指す気運をさらに高めたと思います。
 
 
それでも、3年ほど前にメルケルさんが引退してからショルツ首相に変わり、この数年の間に国際情勢も大きく変わってしまった。ドイツ政治崩壊の危機と言われてしまうぐらいに状況も変わってしまいましたが……。先に挙げた文化助成予算の削減もその一つの影響でしょう。今月下旬にドイツで総選挙が行われますが、移民排除を掲げた右派政党も台頭してきています。今まで”正義”とされてきた西洋の理念がドイツでも少しづつ揺らいできているように思います。
 

イタリアのメローニ首相もイタリア初の女性首相なのは喜ばしいことですが、相当の保守派で、ドイツの右翼政党AfDの共同党首も女性です。アリス・ヴァイデルという人物なのですが、この間、ヒトラーを擁護するような発言をし、ドイツのメディアがひっくり返るような大騒ぎでした。
 
 
ですので、女性が地位さえ持てば、かならずしも良い結果に繋がるとは私も思っていませんが、ジェンダーバイアスにとらわれず、一人一人の思想や資質が可視化されるような時代になってきているのだと思いますし、それはそれで社会としての一つの進歩に繋がっていると思います。
 
 

CoH&Midori Hirano Photo: Markus Wambsganss



ーー今年4月には、グリッチサウンドを得意とするロシア出身のエレクトロニック・プロデューサー、CoH(Ivan Pavlov)とのアルバムがフランスのレーベル”Ici d’ailleurs”からリリースされます。

 

さらに、同月に日本でのCoHとのライブも決定していますが、新作とライブについて簡単に教えていただければと思います。また、セットリストは決まっていますか。楽しみにしていることはありますか?



平野: CoHのイヴァンとのアルバム「Sudden Fruit」は、ゼルケ兄弟とのアルバムと同じように途中中断しながらも、2022年から2年近くかけて、ファイル交換だけで完成させました。

 

私が仕上げをした「Split Scale」とは違って、次のアルバムでは、私が先にピアノとシンセだけで録音した全曲のファイルを一曲ずつイヴァンに送り、その後の仕上げは全てイヴァンにお任せでした。一曲だけ私の方でピアノを追加録音したものがあるくらいで、他の曲はファイルが往復する事なく、彼が私が最初に送ったピアノの全録音を再構築する形で出来上がっています。


 

ピアノの録音時に、各曲それぞれ、高音域、中音域、低音域と、いくつかのレイヤーに分割して録音したものを送っているので、イヴァンの方で、低音だけベースラインらしく人工的な音に作り変えたり、さらに、そこにビートが加えられたりしながらも、元のメロディラインやハーモニーは、最初の構想がそのまま生かされている場合が多いです。ですので、録音の時点では、BPMなどが明瞭ではなかったピアノの曲が、CoHの手を通して明確なBPMとグルーブが付与されたような感じになり、結果的にはとても上品でかっこいい作品になったと思いますね。

 


4月の日本でのイヴァンとのライブは私達にとって初めての経験となります。今頑張って準備中です。セットリストはライブ用にアレンジし直していますが、基本的にアルバムの曲を再現するような形でやろうと思っています。

 

イヴァンがラップトップ(PC)、MIDIコントローラー、私がピアノを担当するという、シンプルなセットアップですが、シンプルなので、原曲のハーモニー感とリズミックなパートが実際のステージで映えて聴こえると理想的であると考えています。おそらく、2月中には、ツアーの詳細を発表できる予定です。また、京都の公演では、ロームシアターのノースホールでマルチチャンネルシステムを使用してのライブになりますので、とてもスペシャルな体験になりそうです。

 

ちなみに、ゼルケ兄弟とも、そのうち日本でライブが出来ればと考えています。こちらのセットは使用する楽器の数が多くなりそうです。CoHとのセットのように、フットワークを軽くとはいかないかもしれませんが、ロジスティック(輸送)の問題さえクリアできるならいつか実現したいですね。

 

 

 

【アルバム情報】Brueder Selke & Midori Hirano 『Split Scale』:  Thrill Jockeyから1月24日に発売

 




 

Tracklist:

1.Scale A
2.Scale B
3.Scale C
4.Scale D
5.Scale E
6.Scale F
7.Scale G
8.Scale AA 

 


「Scale A」

 

 

 


 

Midori Hirano & CoH 『Sudden Fruit』   マインド・トラベルズ・コレクション、Ici d'Ailleurs レーベル  2025年4月発売予定




陰で熟した果実のように、『Sudden Fruit(突然の果実)』は2人のアーティストのユニークな錬金術を表現している。


日本人ピアニストで作曲家の平野みどりと、CoHとして知られるサウンド・アーキテクトのイヴァン・パブロフ。 この2人のコラボレーションは、アコースティックとデジタルの間に宙吊りにされた作品を生み出し、自然と人工物が融合する繊細な瞬間をとらえ、まるで時間そのものが開花と消滅の間で逡巡しているかのようだ。


京都に生まれ、現在はベルリンを拠点に活動する平野みどりは、アコースティック・ピアノとエレクトロニック・テクスチャーがシームレスに融合した、ミニマルで幽玄な音楽を創作している。 坂本龍一の後期の作品(『Async』、『12』)に倣い、平野はクラシック音楽の伝統的な枠組みを探求、解体、再発明し、ピアノの一音一音を内省的で没入感のある旅へと変える。 彼女はまた、MimiCofという別名義で、よりエレクトロニックでアンビエントなテクノ/IDM志向の作品も制作している。 そのため、ミドリがイヴァン・パブロフと交わるのは、ほぼ必然的なことだった。


現在フランス在住のこのロシア人アーティストは、過去30年にわたるエクスペリメンタル・エレクトロニック・ミュージックの重要人物である。 数学と音響学のバックグラウンドを持つ元科学者のCoHは、外科的な鋭さを持つ自由な精神を持っている。 1990年代後半、前衛的で精密なポスト・テクノで頭角を現した後、グリッチに傾倒し、後に音響やアンビエント・サウンドを音の彫刻に取り入れた。 


ピーター・クリストファーソン(COIL)、コージー・ファンニ・トゥッティ、アブール・モガード(COH Meets Abul Mogard)とのコラボレーションや、ラスター・ノトーン、エディションズ・メゴといった高名なレーベルからのリリースは、アヴァンギャルドなエレクトロニック表現への彼の影響力と、コラボレーションにおける彼の卓越した能力の両方を裏付けている。


『Sudden Fruit』で、CoHと平野みどりは没入感のあるキメラ的な作品を発表した。 1曲目の「Wave to Wave」から、オーガニックとデジタルの微妙なバランス、自然の流動性、そして平野のピアノが体現する詩情と、イワン・パブロフの機械の低周波の重厚さが並置されているのが感じられる。 


アルバム3曲目の "Mirages, Memories "は、平野が奏でる一音一音が、ゆっくりとこの新しい空間に没入するよう誘う。 タイトル曲「Sudden Fruit」のように、アンビエントというよりインテリジェント・ダンス・ミュージック寄りの曲もあり、アルバムが進むにつれて、パブロフの音のテクスチャーは驚くべき物語性を発揮し、作品に思いがけない深みを与えている。


『Sudden Fruit』は、『Mind Travels』コレクションの理念と完璧に合致しており、ジャンルの枠を超え、分類にとらわれない。 調和のとれた共生の中で、平野みどりとCoHは、唯一無二でありながら普遍的なハイブリッド作品を作り上げた。 『Sudden Fruit』は大胆な音の探求であり、その領域に踏み込む勇気を持つ人々に深く共鳴することを約束する未知の領域である。

 

 

 


Midori Hirano:

 

京都出身の音楽家。ピアニスト、作曲家、シンセ奏者、そしてプロデューサーとして世界的に活躍する。現在はベルリンを拠点に活動している。”MimiCof”という別名義で作品を発表することもある。音楽的な蓄積を活かし、ドイツの電子音楽の系譜を踏まえたエレクトロニック、ポストクラシカルの系譜にある静謐なピアノ作品まで広汎な音楽を制作し発表しつづけている。 


平野みどりは、現代のデジタルサウンドをベースにし、モジュラーシンセを中心とする電子音楽、フィールドレコーディングを用いた実験的な作風で知られている。ピアノ作品としては、『Mirrors In Mirrors』(2019)、『Invisible Island』(2020)がある。ハロルド・バッドの音楽にも通じる澄んだ響きを持つ作品集。

 

2006年にデビューアルバム『LushRush』を発表。2008年、セカンドアルバム『klo:yuri』を発表し、TIME、BBC Radio、FACT Magazine(The Vinyl Factory)から称賛を受けた。2000年代後半からベルリンに拠点を移し、ドイツのシーンに関わってきた。ベルリンのレーベル、Sonic Piecesから二作のアルバム『Minor Planet』、『Invisible Island』 を発表している。


平野みどりは、ソロ名義と別名義の作品を発表する中で、音楽という枠組みにとらわれない多角的な活動を行う。ドキュメンタリー音楽や映画音楽のスコアを制作し、著名なアートレジデンスに音楽作品を提供している。


ベルリン国際映画祭、クラクフ映画祭、SXSW映画祭で上映されたダンス・パフォーマンス、ビデオ・インスタレーション、映画音楽を担当した。2024年には、第40回ワルシャワ国際映画祭で初演された長編ドキュメンタリー映画「Tokito」のスコアを手掛けたほか、プレミアリーグのドキュメンタリーのサントラも制作している。Amazonで配信されたフットボールのドイツ代表に密着したドキュメンタリーの音楽も手掛けおり、ドイツ国内では著名な音楽家と言える。

 

さらに、リミックス作品も数多く手掛けている。Rival Consoles(Erased Tapes)、Robert Koch,Foam And Sand、Liarsなどのリミックス制作し、プロデュースの手腕も高い評価を受けている。