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Anna B Savageが2025年の幕開けに『You & i are Earth』をリリースする。ロンドンのシンガーソングライターは本日、アコースティックギターをフィーチャーしたフォークナンバー「Lighthouse」を発表した。10月にアンナ・ミーケをフィーチャーしたシングル「Agnes」に続く作品となる。

 

「私は一人で終わると思っていたけれど、私を抱きしめてくれて、安全で、そしてまだ夜の独立した船のようなものだと感じさせてくれる人を見つけたという優しいラブソング」とミュージシャンは説明する。「プロダクションも曲のように比較的シンプルにしようとした。とにかくいい感じ」


Anna B Savageの『U & I ARE EARTH』は2025年1月24日にCity Slangからリリースされる。

 


「Lighthouse」




 


フリコは、デビューアルバム『Where we've been, Where we go from here』から新曲「Pride Trials」を発表した。繊細でありながら、心に染みるようなインディーフォークソングである。


「"Pride Trials"は、実はFrikoの最初の曲のひとつ」とバンドは声明で説明している。「2019年後半にシカゴのDIYショーで演奏し始め、その頃にレコーディングもした。多くの変容を経て、最終的に私たちが心から愛する場所にたどり着いた。これは僕らにとってとても特別な曲なんだ」


『Where we've been, Where we go from here』のデラックス・エディションはATOから11月22日に発売される。


「Pride Trials」

 


現在、ブルックリンを拠点に活動し、沖縄にルーツを持つロサンゼルス出身のシンガーソングライター、William Alexander(ウィリアム・アレクサンダー)が11月22日にニューアルバム『Solo』をSweet Soul Recordsからリリースします。

 

『ミュージシャンズ・ミュージシャン』として高く評価されるウィリアム・アレクサンダーは、豊かなリズム感覚とロサンゼルスの進歩的なアンダーグラウンドシーンに深く根ざした経験から、これまでにAndre 3000,Connan Mockasin、Laraaji, John Carroll Kirby, Carlos Nino,Mndsgn,Nick Hakimなど、数々の著名なアーティストとのコラボレーションや録音を行ってきた。

 

今週末に発売予定である『Solo』は、そんな彼の広大な芸術的な世界を通して、内省的なベッドルームフォークの真髄を表した作品です。Jessica Prattの時代を超越した感覚、Jose Gonzalesの独特なギタープレイなどを参照しながら、独自のソウルフォークを体現した先行シングル「ANWT」に始まり、「Sunflowers」「Blue Skies」「WDWG」など彼の初期作『New York Songtapes, Chapter Ⅰ: ”The Uncut Tree"」に収録された力強くざらついたソウルサウンドのソウルサウンドの楽曲を柔らかなムードのアコースティックサウンドに移行した楽曲が続く。


2ndシングル「Ghosts」は、サンバ、ボサノヴァ、ローファイなど多様なインスピレーションを独自のソウルフォークに昇華した親密な内省的対話と切ないハーモニーで迫る珠玉の一曲です。「Mediation」「Selfness」ではアンビエント・ミュージック的な要素も加わり、リスナーを安らかな瞑想へと誘う。ラストを飾る「Time」では、繊細で表現豊かなギタープレイとともに自己と向き合うことの重要性を優しく語りかけ、リスナーをさらに内面的な探求へと誘う。その素朴でありながら、洗練された豊かなヴォーカルトーンとナイロン・ギターの流れるようなリズムは、若き日のCaetano Veloso、あるいはErasmo Carlosといった70年代のブラジル・トロピカリアの巨匠たちをありありと彷彿とさせ、リスナーの琴線に深く触れるものがある。

 

 

「Anwt」

 




William Alexander 『Solo』



レーベル:Sweet Soul Records

発売日:2024年11月22日


Tracklist:

1.ANWT

2.In Your Hands

3.Emancipate

4.Sunflowers

5.Cycles

6.Blue Skies

7.WDWG

8.Ghosts

9.Mediation

10.Selfness

11.Time


 

配信リンク:  https://lnk.to/WXXL_Solo



William Alexander Profile:

 

沖縄にルーツを持つSSW,William Alexander(ウィリアム ・アレクサンダー)は、その広大な芸術的世界を通して、内省的なベッドルームフォークの真髄を表現する。初期の作品に見られた力強くざらついたソウルから、柔らかなムードへと移行し、リスナーを内なる探求へと誘う。

 

素朴でありながら洗練された豊かなヴォーカルトーと、ナイロン弦ギターの流れるようなリズは若き日のCaetano Veloso、Erasmo Carlosといった70年代のブラジル・トロピカリアの巨匠たちを彷彿とさせる。

 

彼の楽曲は自己実現や様々な形の愛をテーマに、観察と目に映らぬ神秘的な概念との境界を往来する。現代のファストファッションや自己顕示が主流となる風潮の中で、逃避ではなく、むしろ音楽や自分自身、そして、心の奥深くにひそむ魂の叫びに向き合う勇気ある選択である。

Haley Heyndrickx 『Seed Of a Seed』

 


 

Label: Mama Bird Recordings Co.

Release: 2024年11月1日

 

Review

 

ポートランドのギタリスト、ソングライター、ヘイリー・ハインデリックスは、三作目のアルバムで自らのフォーク/カントリーの形式を完全に確立している。ヘイリー・へインドリックスにとって音楽制作の動機となるのは、内向きの感覚であり、ナビゲーションであり、みずからの内的な声に静かに耳を傾け、そして純粋な音楽として昇華することにある。ニュース、ソーシャルメディア、または絶え間ない自己疑念など、私達を取り巻く喧騒から身を守るためのシェルターでもある。しかし、それらは決して閉鎖的にならず、開放的な自由さに満ちあふれている。

 

アルバムは、いくつかのテーマやイメージに縁取られているという。花(ジェミニ)、空想(フォックスグローブ)、森(レッドウッズ)、友人(ジェリーの歌)という地点を行き来するかのように、へインドリックスの歌とアコースティックを中心とするギターは鬱蒼とした森の中に入り、果てしない幻想的な空間へとナビゲートする。その導き役となるのは、妖精ではない。彼女自身の内的な神様であり、それらの高次元の自己がいわば理想とする領域へと誘う。

 

へインドリックスの音楽はオープニングを飾る「Gemini」から明確である。フィンガーピッキングのなめらかなアコースティックギター、ナイロン弦の柔らかな響き、そして何よりへインドリックスのソフトな歌声が心地良い空気感を生み出す。ツアー生活でもたらされた二重の生活、時間の裂け目から過去のシンガーが現在のシンガーを追いかけようとする。過去の自分との葛藤やズレのような感覚が秀逸なフォーク・ミュージックによって描出される。しかし、御存知の通り、「数年前の誰かは明日の誰かではない」のである。その違いに戸惑いつつ、彼女は自分の過去を突き放そうとする。しかし、その行為はどうやら、歌手にとっては少し恥ずべきことのように感じられるらしい。背後に遠ざかった幻影をどのように見るべきなのだろうか。そういった現在の自己を尊重するためのプロセスやステップが描かれている。秀逸な始まり。

 

フォーク・ミュージックから始まったアルバムはディラン、ガスリー、キャッシュ以前のハンク・ウィリアムズのような古典的なカントリーへと舵取りを果たす。「Foxglove」はトロットのリズムに軽快なアコースティックギターのフィンガーピッキングを乗せ、軽快な風のような感覚を呼び起こす。カントリーの忠実な形式を踏襲したアルペジオを見事であり、歌手の歌うボーカルの主旋律とのカウンターポイントを形成している。古典的なカントリーソングには、時々、ストリングスのレガートが重なり、ロマンチックな雰囲気を帯びる。鬱蒼とした森の中を駆け抜けるかのようである。曲の最後は、神妙なコーラスが入り、ほど良い雰囲気を生み出す。

 

その反面、タイトル曲では、アップストロークのアコースティックギターでしんみりとしたフォーク・バラードを提供している。この曲でもナイロン弦が使用されており、裏拍を強調するリズムカルなギター、そして艷やかな倍音がこの曲の全体的なアトモスフィアを醸成している。美しいビブラートを印象付けるへインドリックスのボーカル、そして、こまやかなフィドルの役割をなすバイオリンの音色が、これらのフォークミュージックの音楽性をはっきりと決定付けている。この曲では、フォーク/カントリーに加え、60、70年代のUSポピュラーの音楽的な知識が良質な音楽性の土台を形作っている。例えば、ジョニ・ミッチェルの『Blue』のような。

 

 

「Mouth Of A Flower」は、古きアメリカへの讃歌、または、現代の音楽として古典的なフォーク/カントリーが、どのような意義を持つのかを探求したような一曲である。古い時代のプランテーション、農場、農夫等、失われたアメリカの文化への幻想的な時空の旅を印象付ける。続く「Spit In The Sink」は、序盤の収録曲の中では、かなり風変わりな一曲である。低音部のリズム的な役割を担うギター、高音部のリード/アルペジオを中心とするアコースティック/エレキギターの演奏をベースにし、インディーロック、アヴァンフォーク、ジャズ、ララバイのような形式が込められている。金管楽器(フレンチホルン)の導入は、ジプシー音楽の要素を付け加え、ヨーロッパ大陸を遍歴するユダヤ人の古典的な流しの楽団の幻影を呼び覚ます。そして、基本的に、歌手は内的な感覚をリリスティックに吐露しているが、その反面、内にこもったようなビブラートを披露する。ヘイリーの声には、派手さはないけれど、見事なボーカルの技巧が披露されている。いわば「大人向けのフォーク/カントリー」といった感じとして楽しめるに違いない。

 

 

ヘイリー・ヘインドリックスのフォーク音楽には、ハンク・ウィリアムズのような古典的なアメリカの民謡よりも更に古い移民としての音楽性が何らかの鏡のように映し出される。とりも直さず、これらはニューヨークから北部に何千キロにもわたって連なるアパラチア山脈に住んでいたイギリスやアイルランドからの移民が山小屋でフォーク・ミュージックを演奏していた。


これらの共同体の中には、実は、黒人の演奏家もいたという噂である。少なくとも、ヘイリーの音楽は、一世紀以上の米国の隠れた歴史を解き明かすかのように、長い文明の足取りをつかもうとする。「Redwoods」では、CSN&Y、サイモン&ガーファンクルといった60、70年代のフォークロックの形式を通じて、その中にそれよりも古い20世紀の詩の形式を取り入れる。これらは民謡特有の歌唱法ともいうべきで、ビブラートの音程をわざと揺らし、音程そのものに不安定な要素をもたらす。アメリカの古い民謡などで聴くことが出来る。しかし、これらは、ケルト民謡やノルウェーのノルマンディ地方などの民謡にもあり、有名な事例では、スイスのヨーデルのような民謡の形にも登場する。いわば「ユーラシア大陸発祥の歌唱法」である。



そういったアメリカの歴史が英国の清教徒の移民や、その船にオランダ人も乗っていたこと。アステカ発祥の南アメリカとの文化、メキシコ等の移民の混交が最初の自由の女神のイメージが作られていったことを、このアルバムは顕著に証明付ける。「Redwoods」は単なる歴史的なアナクロニズムではなく、この国家の音楽的な文化の一部分を巧みに切り取ったものなのである。更に、この曲には、アステカ文明の「太陽の神様への称賛」を読み解ける。しかし、それらの自然崇拝は一体どこへ消えたのだろうか。それよりも権威的な崇拝が21世紀以降のアメリカ国家の全体を支配してきたのは事実であろう。アニミズム(自然信仰)は、一般的な宗教より軽視される場合が多いと思われるが、現代人が学ぶべきは、むしろアニミズムの方かもしれない。これは物質文明が極限に至った時、この言葉の意味がより明らかになることと思われる。


アルバムの後半では、聴きやすいフォークミュージックが提供される。「Ayan's Song」では、ジャズのスケールを低音部に配し、フォークジャズの範疇にある旋法を駆使しながら、親しみやすい音楽を生み出す。この曲でも、小節のセクションの合間にシンコペーションの形で伸びるヘイリーのボーカルは美しく、ほんわかした気分を掻き立てる。この曲には融和の精神が貫かれている。分離ではなく、融和を描く。言うのは簡単だが、実行するのは難しい。しかし、この曲は音楽や芸術が、政治のような形態よりも部分的に先んじていることを証左するものである。

 

ヘイリー・へインドリックスのギターの演奏は、フラメンコギターに系統することもある。「Sorry Fahey」では、二つのアコースティックギターの演奏を組み合わせ、見事なフレットの移動を見せながら和音を巧みに形成していく。ヘイリーのボーカルはイタリアのオペラに近い歌唱法に近づく場合もあり、西欧的な音楽性を反映させているのは事実だろう。 また、へインドリックスは、現代テクノロジー、消費社会の中で、現代人が自然主義からどれほど遠ざかっているかを示す。それは人類が誤った方向から踵を返す最後の機会であることを示唆するのだ。

 

この世のあらゆる病は、自然主義から遠ざかることで発生する。時間に追われること、自分を見失うこと、倫理にかき乱されること。人類はほとんどこういったものに辟易としているのだ。「Jerry's Song」は、現代人が思い出すべきもの、尊重すべきものが示唆されている。この曲は、開けた草原のような場所の空気、あるいは山岳地帯の星空の美しさを思い出させてくれる。

 

アルバムのクローズ「Swoop」も素晴らしい一曲。子供の頃にはよく知っていたが、年を経るにつれて、なぜか少しずつ忘れていくことがある。現代人は何を求めるべきなのか、そして私達が重要としているのは本当に大切なことなのだろうか。改めて再考する時期が来ているのである。

 

 

 

84/100

 


 


 

ロンドンのシンガー・ソングライターは、2ndアルバムの続編となる『You & i are Earth』を発表し、アンナ・ミケとのコラボレーションによる素晴らしいリード・シングル 「Agnes 」を公開した。

「この曲は、アイルランドの民話、セラピーの実践、そしてあるつぶやきにインスパイアされたものです」とサヴェージは説明し、こう続けた。「セラピーでは、瞑想とビジュアライゼーションをした。同時に、セルキーとフェアリーについて読んでいたのだが、このツイートを読んだとき、民間伝承が私自身の治療体験と融合するのを感じた。潜在的な安堵感の後に深い恐怖が襲ってくる瞬間、そして "はぐれたソッド "から解放されるために服を裏返す行為なのだ」

 

この歌は、いやアグネス自身は、私がこのレッスンで感じた魅力と恐怖、喜びと畏敬の念を体現している。いつでもここに来ていいんだよ」という慈悲深さと優しさ、そして「彼女は私を(地面の下に)閉じ込めるんだ...私をここに置いていく」という深い恐ろしさを同時に感じながら、私は多重性を一度に抱え込み、それに耐える方法を学ぼうとしているような気がした。彼女の音楽は大好きだし、彼女のボーカル/歌詞は繊細でありながら幽玄であり、力強くもあり、少し不気味でもある。このワイルドな曲を引き受け、アグネスに命を吹き込んでくれた彼女にとても感謝している。

 

 

「Agnes」

 

サヴェージはまた、『You & i are Earth』は "ある男性とアイルランドへのラブレター "だとも語っている。このアルバムには、クラッシュ・アンサンブルのケイト・エリスとカイミン・ギルモア、ランカムのコーマック・マクディアマダ、そしてミケがヴォーカル、ストリングス、ハルモニウム、ブズーキ、大正琴、クラリネットで参加している。プロデュースはジョン・'スパッド'・マーフィー(ランカム、ブラック・ミディ)。

 

リードシングル「アグネス」の苔むしたリリック・ビデオは、この曲の伝染するような素晴らしさをとらえている。『You & i are Earth』は1/24にCity Slangからリリースされる。

 


Anna B  Savage『You & i are Earth』

Label: City Slang

Release: 2025年1月24日


Tracklist:

1 Talk To Me

2 Lighthouse

3 Donegal

4 Big & Wild

5 Mo Cheol Thú

6 Incertus

7 I Reach For You In My Sleep

8 Agnes

9 You & i are Earth

10 The Rest Of Our Lives

 

Pre-order: https://annabsavage.lnk.to/YaiaEYD

 

©Tatjana Rüegsegger


ロンドンを拠点に活動するシンガーソングライター、Sophie Jamieson(ソフィー・ジェイミーソン)が儚くも美しい、そして力強さに満ち溢れたインディーフォークソング「Camera」を発表した。このナンバーは、彼女のセカンドアルバム『I still want to share』の第2弾シングル。ジェイミーソンとマレナ・ザヴァラの共同監督によるビデオ付き。以下でチェックしてほしい。


「この曲は、失恋したときに書いた。抱かれたくないのにすべてを抱こうとしていたときに書いたの」とジェイミーソンは声明で説明している。落ち着いていて瞑想的なインディーフォークソング。アコースティックギターに加えて、チェロ、ヴァイオリン、ヴィオラが取り入れられ、ドラマティックな印象を強調する。ジェイミーソンは短い物語を紡ぐかのように、この曲を丹念に歌い上げている。繊細なボーカルであるものの、そこには奇妙な力強さが感じられる。

 

「私は、このニューシングルで断片の周りに輪郭を描くことができ、それらをフレームに収まるようにしたかった。私の中の何かが、ぼやけたままにしておけば平穏が得られるとわかっていた。この曲は、私が受け入れることのできる愛よりも、もっとシンプルで、もっと重層的で、もっとつかみどころのない愛を定義しようとしたときの憧れであり、身もだえするような思い」


Sofie Jamiesonによる『I still want to share』は1月17日にベラ・ユニオンからリリースされる。

 

 

「Camera」

©︎Juliette Boulay


フィラデルフィアのソングライター/ギタリスト、グレッグ・メンデス(Greg Mendez)は、10月18日(金)にリリースされるEP『First Time / Alone』に収録される「Alone」をミュージックビデオとともに公開した。この曲は新作とともに発表された先月の「First Time」に続くシングルとなる。先日、シンガーソングライターはデッド・オーシャンズと新しい契約を発表した。

 

グレッグ・メンデスはエリオット・スミス等のサッドコアの系譜にある憂いのあるフォーク・ソングをスラリと書く。もちろん、ギターのストロークにはカントリーの素朴な雰囲気が漂う。今回のシングルでもローファイに触発されたアナログなサウンドが個性的な空気感を放っている。

 

グレッグ・メンデスは、ロメルダとトンバーリンとの2025年2月のツアー日程も発表している。


「Alone」

 

The Weather Station


The Weather Station(トロントを拠点に活動するSSW、タマラ・リンデマンのプロジェクト。メンバーはその都度入れ替わる)が7thアルバム『Humanhood』を発表した。ファーストシングル「Neon Signs」を公開した。MVはリンデマンはジャレッド・ラーブが共同監督している。


「"ネオンサイン "を書いたのは、混乱し、逆さまになり、欲望さえも崩れ去り、解離が、間違ってはいるが、まだ物事をひとつにまとめていた物語からあなたを切り離す瞬間だった。真実でないものが真実であるものよりもエネルギッシュな強さを持っているように見える方法、気候の緊急事態の瞬間に広告で溢れかえっていることの混乱、強制が愛の言葉で包まれている人間関係の混乱。しかし結局のところ、すべて同じ感覚ではないだろうか」


リンダマンはマーカス・パキンと『Humanhood』を共同プロデュースし、2023年秋にカンタベリー・ミュージック・カンパニーでレコーディングした。

 

アルバムの主なバックバンドは、ドラマーのキーラン・アダムス、キーボーディストのベン・ボワイエ、パーカッショニストのフィリップ・メランソン、リードと管楽器のスペシャリストであるカレン・ウン、そしてベーシストのベン・ホワイトリー。本作には、そのほか、サム・アミドン、ジェイムズ・エルキントン、ジョセフ・シャバソンも制作者として名を連ねている。

 

 

「Neonsign」

 

 

 

The Weather Stationの新作アルバム『Humanhood』は2025年1月17日にFat Possumから発売される。

 

 

The Weather Station『Humanhood』

 
Label: Fat Possum
Release: 2025年1月17日



Tracklist:

1. Descent
2. Neon Signs
3. Mirror
4. Window
5. Passage
6. Body Moves
7. Ribbon
8. Fleuve
9. Humanhood
10. Irreversible Damage
11. Lonely
12. Aurora
13. Sewing


Florist
©︎V Haddad

ニューヨークのフォークバンド、Floristがニューシングル「This Was a Gift」をリリースした。下記からチェックしてほしい。


「"This Was A Gift "は、人生の困難な季節を親しい人たちと一緒に過ごすことを歌ったラブソングです。この曲は、失恋や喪失に傷つきやすくなり、最終的な結末を受け入れ、コミュニティに感謝するようになる過程を映し出し、描写した音楽的な押し合いへし合いである。バンドはこの曲をレコーディングする前に、2年間のライブ・ツアーを通してこの曲と共に成長し、その意味の根をさらに深めていった」


「スプレイグはこう付け加えた。「私たちは常に個人的なものを持ち込んで、その中を泳ぎきろうとしながら、もがき、成長していくのです」


「This Was a Gift」

 

©︎Luis Vidal


ロンドンを拠点に活動するプロデューサーでシンガー・ソングライターのLiza Lo(リザ・ロー)が、4thシングル「Gipsy Hill」を発表した。「A Messenger」、「Confiarme」「What I Used To Do」に続く作品。限定7インチも同時に発売された。アーティストサイトとライブ会場で現在販売中。


リザ・ローは、基本的にはアコースティックギターを中心とするポピュラーなフォークソングを制作している。時々、スペイン語の歌詞が登場したり、ネオソウルの要素が登場したりというように、一つの枠組みの中で自由で大らかな表現性を提示している。歌詞については、現代の多くのSSWと同様、個人的な人生や恋愛に関する思いを交えつつ、切ないナンバーを制作している。

 

UKポピュラーの新星、リザ・ローの5年に及ぶサウス・ロンドンでの暮らしにインスパイアされたという「Gipsy Hill」は、故郷のように感じていた場所からのゆっくりとした別離の感覚に焦点を当てている。アコースティック・ギターと優しいストリングス・アレンジが哀愁を漂わせる。


ニューシングル「Gipsy Hill」はアウトロのあとに余韻がある切ないバラードソングだ。オーケストラストリングスに支えられながら段階的に上昇していく旋律とスケールがソングライターの沸き立つようなエモーションを象徴している。同楽曲について、リザは次のように語っている。


「この5年間で、私は真の親友との友情から両親の結婚、そして私自身のロマンチックな恋まで、ここで変化した親密な関係の多くを失ったわ。この曲は、幼い頃の台所から、親友の家のベランダ、そしてこの変化を学ぶために対処した後の私の偏狭なコミュニケーションまでを描写した、深い悲しみに満ちた曲なの。胸が張り裂けそうになるけれど、愛とは人生において本当にすべてであり、だからこそ心に響くのだと思う。親友を突然脳障害によってで失い、これまでとは違う生き方を学ばなければならなくなった人々のための歌、それが『Gipsy Hill』なのよ」

 

10月からはUKのインストア・ツアーに出るというリザ。彼女のBandcampおよびライヴ会場限定で購入可能な7インチも本日リリースとなっているので、気になる人はぜひチェックしてみてほしい。

 


Liza Lo 「Gipsy Hill」- New Single



配信リンク:https://bfan.link/gipsy-hill


 

A. Gipsy Hill 03:54


Liza Lo: vocals


Sean Rogan: acoustic guitar, electric guitar and piano Maarten Cima: electric guitar
Tom Blunt: drums


Freek Mulder: bass guitar


Ben Trigg: cello and string arrangement


Written by Liza Lo and Melle Boddaert



B. What I Used To Do 03:04


Liza Lo: vocals


Sean Rogan: electric guitar and backing vocals


Maarten Cima: electric guitar


Tom Blunt: drums


Freek Mulder: bass guitar


Wouter Vingerhoed: synths and acoustic guitar


Hebe Vrijhof: piano


Written by Liza Lo, Hebe Vrijhof and Wouter Vingerhoed



Produced by Liza Lo and Jon Kelly


What I Used To Do co-production by Wouter Vingerhoed


Recorded at Studio 13 in West London


Mixed by Jon Kelly


Mastered by
Caspar Sutton-Jones at Gearbox Records


Photographed by Luis Vidal

 


【Liza Lo】

 

スペインとオランダで育ち、現在はロンドンを拠点に活動するシンガー・ソングライター、プロデューサー、ミュージシャン。

 

親密で詩的な独自の音楽世界を創り出す彼女は、ドーター、マロ、ビリー・マーティンなどからインスピレーションを受け、生々しいヴォーカルと誠実なソングライティングで聴く者を内省と静寂の世界へと誘う。


最新EP『flourish』は、Spotifyの「New Music Friday UK」、「NL」、「BE」にセレクトされ、「the most beautiful songs in the world」プレイリストでも紹介された。

 

今年5月にGaerbox Recordsと契約。「A Messenger」「Confiarme」「What I Used To Do」「Gipsy Hill」の4曲のデジタルシングルをリリース。現在、西ロンドンの「スタジオ13」で、ジョン・ケリー(ポール・マッカートニー、ケイト・ブッシュ)とバンドと共にアルバムの制作に取り組んでいる。

 

 

「Confiarme」- Live


 

Searows
©Marlowe Ostara


ポートランドを拠点に活動するSearows(シーロウズ)は、11月22日にLast Recordings on EarthからリリースされるニューEP『flush』を発表した。昨年の『End of the World EP』に続くこのEPは、プロデューサーにジョナサン・ピアース(The Beths)を迎えて制作された。最近のシングル「martingale」と新曲「toothache」が収録されている。


アレック・ダッカートのソロプロジェクト、シーロウズは声明の中で、「私は人生の多くの間、そうする必要がない状況でも親切にしたり、融通を利かせたりすることに力を入れすぎてきた。「この曲は、自分の尊厳や人間性を犠牲にしてまで、他人を心地よくさせる必要性を手放す方法を学ぶことを歌っていると思う」と述べている。

 

 

Searows 『flush』 EP


Label: Last Recordings on Earth

Release: 2024年11月22日

 

Tracklist:


1. martingale

2. to be seen

3. toothache

4. calico

5. [there is still time]

 

©Tatjana Rüegsegger


Sophie Jamieson(ソフィー・ジェイミーソン)がニューアルバム『I still want to share』を発表した。ベラ・ユニオンから2025年1月17日にリリースする予定ロンドンを拠点に活動するこのソングライターは、2022年のデビュー作『Choosing』に続く作品をガイ・マッセイと共同プロデュースした。

 

本日、彼女は新曲「I don't know what to save」とそれに伴うビデオを公開した。以下よりチェックしてみよう。


「この曲は、自由を得るためのある種の息抜きだった」とジェイミーソンは声明で説明している。

 

「ある人への執着の重さと、その人にまつわるすべての痛みを抱えていたが、ここにきて、エネルギーが爆発し、希望の光が見えてきた。それは手放すことへの大きな後押しだった。切り離すことの耐え難い痛みは、ある種の不気味で未知の空間に入り込むような感じがしたが、到着してみると、それは完全に生き延びられるだけでなく、純粋で新鮮な空気のようであることがわかった」

 

 

 

「I don't know what to save」



Sophie Jamieson 『I still want to share』


Label: Bella Union

Release: 2025年1月17日

 

Tracklist:


1. Camera

2. Vista

3. I don’t know what to save

4. Baby

5. Welcome

6. Highway

7. I still want to share

8. How do you want to be loved?

9. Your love is a mirror

10. I’d take you

11. Time pulls you over backwards

 

 

 ガイ・マッセイ(スピリチュアライズド、ザ・ディヴァイン・コメディ、カイリー)とソフィー・ジェイミソンの共同プロデュースによるアルバム『I still want to share』は、不安な愛着の押し合いへし合い、メリーゴーラウンドのような性質と、それが家族関係や恋愛関係の中でどのように織りなされ、切り刻まれ、盗まれていくのかを探求している。

 

 このアルバムには、帰属への永遠の憧れ、愛し方と手放し方を学ぶことへの切望、そして的外れの連続がある。どの曲も故郷の可能性に強くしがみついているが、決してそこに到達することはない。

 

 ガイのスタジオとKonk Studiosの間のノース・ロンドンでレコーディングされ、ストリングスのアレンジはジョセフィン・スティーブンソン(Daughter, Ex:Re, Lisa Hannigan)、ドラムはエド・リマン(Hilang Child)が担当した。

 

SIS

オルタナティブ・フォークバンドSIS(シス)が連続デジタルリリース! 第一弾シングル「腐る」は、新章の狼煙を上げる“再生”のアンセム。続いて、9月23日(月)には、渋谷Organbarにてリリース・イベント「Golden Monky」も開催予定。こちらの情報も合わせて下記よりチェックしてみよう。



本日(9月18日)、オルタナティブ・フォークバンドSIS(シス)が新体制のもと、2021年以来3年ぶり、連続デジタルリリースの第一弾シングル「腐る」をリリースする。

 

リリースに合わせ、渋谷オルガンバーにてイエーガーマイスター(Jägermeister)サポートの元、音楽ユニットbuzzy.(バジー)との共同企画イベントも開催。「腐る」は叙情的かつ無垢な心の叫びを、疾走するメロディーに載せた、SIS新章を告げる楽曲。

 

コロナパンデミックを経て“不適切なコミュケーション”を強いられる中での、心の葛藤を鮮明に描き出す。「このボタンひとつで神様にさえなれる」ーー 気鋭のグラフィックアーティスト・Poseidon(水上雄太/@mizukamiyuta)によるアートワークにも象徴的に描かれた“ボタン”は、自己/他者の生命に関わるメタファーで、同楽曲の重要なキーでもある。逡巡し腐っていく“過去”から、明日の希望を見出すために歌う。溢れ出す感情のカタルシスはカオスな現代を生き抜く人々へ捧ぐ、再生の賛歌である。

 

 

【リリース情報】


SIS「腐る」- New Single



Digital | 2024.09.18 Release | SIS-005
Released by SPACE SHOWER MUSIC / LAD Production


配信リンク/ストリーミング: https://ssm.lnk.to/Kusaru


Music by SIS
Lyrics by 沢庵、TxBONE
Produced by 沢庵
Arranged by 沢庵、A-dream、TxBONE
Recorded by YUUKI KANAYA
Mixed by YUUKI KANAYA
Mastered by YUUKI KANAYA



【イベント情報】


SIS & buzzy. presents.
SIS New Single Release party.


2024.09.23 (Mon)


・「Golden Monky」
at Shibuya Organbar @organbar_official



Supported by Jägermeister @jagermeister_japan

START 18:00 / CLOSE 23:30
DOOR ¥2,000 (NoDrink)



Guest DJ


・ZEN-LA-ROCK @zenlarock



DJ


・MINAMIKAWA @minamikawamasayuki
・TATSURO OMURA @tatsuro_omura
・YUIDESUDOMO @yuidesudomo
・sea @__dj__s_e_a__
・NOKS(NYQUILL) @naoki_noks_layback



【Live】
SIS @sis_jp
buzzy. @buzzy._official
 

【Food】
Chillmatic @chillmatic_tokyo



【Photo】
YOUNG HAMA @young__hama




【SIS(シス)】

フォークミュージックを軸にポストロックを横断し、ジャンルレスなサウンドを追求するオルタナティブ・フォークバンド。頭から足先まで全身タトゥーのTxBONE(Vo./A.Gt.)と、大学教員としての一面を持つ沢庵(Vo./A.Gt.)という対照的な2人のフロントマンとTAKAYA(Drs.)により結成。2024年よりUJI(E.Gt.)と匠(Perc./Sampler/Cho.)が加わり5人体制で活動。

 

バンド名の由来となっている「死」と「生」をはじめ、人が生きていく中で向き合う表裏一体の価値観を、憤怒と慈愛入り混じる歌詞とサウンドで表現している。

 

TxBONEは 、ANARCHY / JNKMN / JOHNNYとの謎のコレクティヴ「THE NEVERSURRENDERS」のメンバーとしての顔を持ち、最近ではMcGuffinでのルームツアーでも大きな反響を得た。ANARCHYが参加した「ケレモ Remix」では、ディレクターに岡宗秀吾氏を迎えたMVがYouTubeにて現在 40万回再生以上を更新中。結成当初よりALIと共同企画イベントを開催。味園ユニバースにて韻シストと共演、レゲエアーティストYAADCORE来日イベント出演、ジャックダニエル主催Murda Beatz来日イベント出演など、活動は多岐に渡る。

Allegra Krieger 『Art of the Unseen Infinity Machine』

 

Label: Duble Double Whammy

Release: 2024年9月13日

 

Review

 

Rolling Stone、Pitchforkの両メディアが先週注目していたのが、ニューヨークのシンガーソングライター、アレグラ・クリーガーである。先週のアメリカのインディーロック/フォークの注目作の一。大げさに騒ぐほどのアルバムではないかも知れないが、良質なメロディーや切ない感覚を織り交ぜ、ソングライター/ギタリストは一応のことニューヨークの音楽シーンで存在感を堅持している。 以前のアルバムまでは、分散的な音楽という印象もあり、少し散漫な感じであったが、この最新作『Art of the Unseen Infinity Machine』ではフォーク・ロックやオルタナティヴロックを起点として、秀作を制作している。アルバム全体には、何かしら淡いペーソスのようなものが漂うが、これは制作時、アーティストの住居の一室が燃えたという不幸に見舞われたことのよるものか。そして、ぼんやりとしているが、何かそういった哀感が漂う作品である。


アレグラ・クリーガーのソングライティングは基本的に、レナード・コーエンのような古典的なアメリカのフォークロックをベースに、現代的なオルタナティヴロックのテイストを添えるというもの。しかし、それとて、すでに90年代か00年代にいくつかのロックバンドの音楽性に準じたものなのかもしれない。たとえば、ルー・バーロウのサイドプロジェクトであるSebadohのようなローファイ風の色合いがラフで心地よいロックソングを思い浮かべる人もいるかもしれない。そして、クリーガーは悲しみを元にした歌をシンプルな演奏の中に乗せる。それも歌うといよりも、やるせないような感じでつぶやくという感覚に近い。気負いがなく、それほど上昇志向もない感覚は、現代的なニューヨーカーの気風を何らかの形で反映しているのかもしれない。新自由主義の渦中に生きることや、徹底した競争主義に疲弊し、さらには、Jesus Lizardのヨウが指摘するような後期資本主義の限界を、現代的な人々は肌身で感じ取っているのかも知れない。かつては頂点を目指すことが社会人としての嗜みを意味していたが、最早、この考えには限界があることを示唆している。このフォークロックソング集は、個人的な記録、もしくは個人的な回想とも呼ぶべきもので、実際的にそれは誰かが体験したかもしれない追憶のロマンチシズムに誘う。それはまた内的な魂の痛みを癒やすような響きが込められているのである。


また、現代的なアメリカのフォークロックのシンガーソングライターと同じように、ニューヨークの歌手でありながら、地域性や田舎性が削ぎ落とされている。まるでクリーガーの声は、時代感を失い、錯綜の中に彷徨い、そして、捉え難くなったアメリカという得難い存在をシンプルで親しみやすいフォークソングに乗せるかのようである。「Roosevelt Ave.」は、懐古的に昔の時代を振り返るかのようで、それは歌手の若い忘れ去られた時代や、それよりも古い時代へのロマンが抽象的に体現されているように感じられる。最近、生きている時代よりもさらに古い時代への憧れを示すアメリカのミュージシャンが増加傾向にあるのは、親の世代やその上の世代から子供の頃の米国の話を聞いているからなのかもしれない。そしてまた現代的な人々は、現在の自分の見る国家の姿を驚きと違和感を持って、ぼんやりと眺めているのかもしれない。それは目の前を流れていったかと思うと、すぐさま背後に過ぎ去っていってしまうのである。ロックソングのテイストを押し出した曲もあるが、バラードの性質が色濃い曲もある。

 

「Came」は、現代的なフォークロックバンドの影響を引き継ぎ、Big Thief(ピッグ・シーフ)やエイドリアン・レンカーの系譜にあるニューヨークのフォークソングを体現させている。かつてアメリカのフォーク・ロックは、渋さとマディーな感覚を併せ持ち、友愛的な側面や健全な精神を歌っていたことはCSN&Yなどの代表作を見れば明らかだが、他方、現代的なミュージシャンはそれらをモダンな感覚で縁取り、あまり深い領域まで踏み込まず、表向きの表現でとどめているという印象もある。ヒッピー主義は、かつてのサンフランシスコやUCLAの学生などで盛んだった思想で、ヘルマン・ヘッセの「荒野のおおかみ」をベースに平和主義やコミューンのような共同体を作るというものだった。過去には左翼的であるとか、それ以降のリベラリズムの萌芽のようにも見なされることもあるかもしれないが、それは基本的には時代錯誤とも言える。

 

西海岸のカルチャー「フラワー・ムーブメント」とも称されるこれらの現代的な牧歌性は、「Burning Wings」にも見出すことが出来る。例えば、この感覚が太平洋を隔てたリスナーにも共鳴するものがあるとしたら、それは、現代の競争主義、新自由経済社会、後期資本主義社会に疲弊していることを意味している。主流派とは別の指標や価値観がないものか、多くの現代人はそれらの考えをシェルターに見立て、その場所を安息所とする。謂わば、そうではないふりをしていても、日常的な違和感や何らかのボタンの掛け違いのような感覚は日を追うごとに増えている。そういった現代的な感覚ではなく、牧歌的な空気感や平和主義を折衷したフォークソングは、「I'm So Happy I Can't Face Tomorrow」にわかりやすい形で表れ出ているのではないか。Florist、Big Thiefの系譜にある紛うことなくニューヨークのフォークロックソングであるが、やはりこの曲に滲み出ているのは、現代的な人間として生きる「しがらみ」のようなものを抱えながらも、そこから一歩踏み出したいというような思いである。それらの思想はやはりアコースティックギターをベースにした牧歌的で温和なフォーク・ソングという形に乗り移っている



アルバムの中盤の3曲「Over And Over」、「Into Eternity」、「Interude to Eternity」では、華美なサウンドを避け、徹底して70年代のレオナード・コーエンのような古典的なフォーク・ロック主義に沈潜しながら、アルバムの序盤の切ないような感覚を織り交ぜる。これらは表面的な思想に潜っていくというよりも、その音楽的な感覚をより深い場所へと踏み込もうと試みているように感じられる。それはまたフォーク・ロックの音楽性に基底に含まれる瞑想的なイメージを呼び覚ますような感じなのである。これらの感覚的なフォークロックは、現代的なサウンドプロダクションではなく、アナログのレコーディング寄りのミックスやマスターによって、ビンテージな感覚を呼び覚ますことがある。中盤から中盤にかけて、クリーガーはより内面の世界に一歩ずつ降りていくかのように、内省的なフォーク・ロックソングの世界を作り上げている。これらは稀に、エリオット・スミスのようなサッドコア「How Do You Sleep」に近づく。

 

本作は単なるフォークロックの集積というより、個人的な感覚の流れをエモーショナルなフォークソングで縁取ったかのようである。それは一定して暗鬱な印象が起点となっているが、アルバムの終盤で、アレグラ・クリーガーの曲は少しだけ明るい場所へと抜け出る。謂わば悲しみからの再起や立ち上がる瞬間の過程を縁取るかのように。「Where You Want To Go」では、力強いボーカルと巧みなドラム、ギターに支えられるようにし、はつらつとした瞬間を描き出す。 クローズ「New Mexico」では、古典的なカントリーの文脈に近づく。しかし、やはり、そこには包み込むような温かさと優しさという感覚が内在している。懐古的な音楽というイメージは表向きのもので、むしろ現代的なフォークロックのサウンドといえるのではないか。

 

 

 

76/100

 

 

 



Adrian Lenker ©Alexa Viscius


エイドリアン・レンカーが、最近のアルバム・レコーディング・セッションから「Once A Bunch」を単独シングルとして発表した。

 

この曲は、「Bright Future」のセッションで録音され、当初はアルバムの日本盤CDにのみ収録されていた。今回初めてデジタル・リリースされる。今年後半には、「Once a Bunch」の7インチ・エディションがインディーズ・レコード店を通じてリリースされる予定だ。

 

今年初め、エイドリアン・レンカーは4ADから愛すべきアルバム『ブライト・フューチャー』をリリースした。「特徴的な残忍さと勇敢さ」(ローリング・ストーン誌)と称賛されたブライト・フューチャーは、ファンや批評家の心を掴み、ピッチフォーク、DIY、NME、アンカット、ニューヨーク・タイムズ、MOJOなどから高い評価を得た。

 

最新アルバムのリリースに先立ち、レンカーは「Free Treasure」を発表。Bandcamp限定EPのサプライズ・リリースの後にリリースされ、全収益はパレスチナ児童救済基金に寄付された。彼女は『I Won't Let Go Of Your Hand』が約75,000ドルの寄付金を集めたことも明かしている。

 

 「Once A Bunch」

 

 


 

Matilda Mann


Matilda Mann(マチルダ・マン)は、ロンドンの気鋭のインディーフォークシンガーとして同地のシーンに名乗りをあげた。これまでは心に染みるような哀感のあるフォークミュージックを制作してきた。マチルダ・マンは、自身の恋愛にまつわる感情をもとにセンチメンタルなポップミュージックでリスナーを魅了してきた。誰にでも起こりうる内的な感覚をギターに乗せて歌う。


シンガーソングライターというのは、人間的な成長とともにその音楽性も変化していかざるを得ない。ソングライティングは、ある人物のポートレイトを意味する。充実したときやそうでない時も、明るい時も暗い時も、鮮やかに歌い上げるのが優れたシンガーでもあるのかもしれない。

 

今週、発売された2曲のニューシングルのうち一曲は、これまでのマンの作風とはやや異なる。「Meet Cute」はシンガーソングライターのネオソウルに対する傾倒が伺える。そして「Tell Me That I'm Wrong」では、従来のセンチメンタルで繊細なインディーフォークを披露している。


「Meet Cute」についてマチルダ・マンはこう語っている。 「この曲は、好きな人に何度も何度も会いたいという気持ちを歌っているんだ」

 

「Meet Cute」

 

この曲には、ベン・ハリス監督によるミュージックビデオが付属している。「初めて誰かに会うというのは、アドレナリンが出まくるものなんだ」


「何が起こるかわからない可能性が、頭の中を狂ったように駆け巡る。何度も何度も会いたいと願う。だから、私たちは何度も会えるビデオを作りました!パーティー、駅、そして古典的な映画の "ミート・キュート "のスタイルで彼らに会う」


同時に配信されたもうひとつのニューシングル「Tell Me That I'm Wrong 」について、彼女は付け加えた。

 

「誰かを好きになる最良の方法は、ゆっくり落ち着いていくことだと思う。予期せぬことだけど、とても正しいと感じるとき。時間をかけて、言葉をかけて、やがてすべてがうまくいく。あなたはただそれを始めさせなければならないの」

 

 

「Tell Me That I'm Wrong 」

Weekly Music Feature - Sinai Vesselシナイ・ヴェッセル)

Sinai Vessel



このアルバムは啓示的なオルタナティブロックの響きに満ちている。導きなのか、それとも単なる惑乱なのか。それはおそらくこのアルバムに触れることが出来た幸運なリスナーの判断に委ねられるだろう。


天が開いて、神の前腕が雲から飛び出し、あなたのアバターのボディーに「SONGWRITER」という謎の文字を叩きつけるとする。そのとき、この職についているあなたはなんというだろう?


今まさに、”曲を書くこと”が天職なのか、単なる呪縛なのかが問われている。湖から剣を引き抜き、勝利の凱歌を揚げるか? それとも、皮膚が腫れ物に這わされ、背後の農作物が炎上するのか? 


果たして、曲作りやソングライティングの習慣は、ガーデニングのようにやりがいのあるものなのか? それとも、ビールを2本飲むたび、タバコを1本吸うような、薄汚い習慣なのだろうか? 


曲作りは仕事なのか? 聖なる義務? それとも、世の中流階級以上の荒くれにとって、たまにやりがいを感じさせる趣味なのだろうか? もし私が、言葉とメロディーのハイヤー・パワーによって定められた運命を受け入れるとしたら、一体どうやって医療費を払えば良いのか?


ノースカロライナ州アッシュヴィルのケレイヴ・コーデスによるプロジェクト、シナイ・ヴェッセルの4枚目のアルバムは、教会の地下のサポートグループでの告解のようでもあり、未来の叙事詩のようでもある。その言葉が、Tシャツにデカデカとプリントされたり、特に神経質な介助犬のベストに警告としてプリントされたりするのを想像してみると、なんだか愉快でもある。


チーフ・ソングライターのケイレブ・コーデスは、このアルバムの最初のトラックで "どうでもいいこと "と、 "何らかの理由があって "起こることの両方を歌っている。シナイ・ヴェッセル・プロジェクトには、素晴らしく、見事な、そして滑稽なソングス(滑稽というのが一番難しい)が含まれている。仮にその事実がなければ、この葛藤や矛盾は実体化することはなかった。


しかし、ケレイヴ・コーデスは、Tom WaitsやM. Wardといった米国の象徴的なシンガーソングライターと同じように、連作を書くように運命によって定められているらしい。彼にとってソングライティングとは、書いているのではなく書かざるを得ないものなのだ。「Birthday」の親密で小説的な畏敬の念を考えてみよう。または、「Dollar」の微妙な経済パニックは、市場の暴落という恐怖の下、道路から逸れた車のあざやかな水彩画をエレガントに描きだそうと試みる。「馬は、いつも私の心の中で果実を踏みつける。私の考えでは、10年間どうしようもないものを食べ続け、何度もおかわりをする」というのは、これまで聞いた中で最高の冒頭のセリフのひとつだ。なんてこと、もしかしたら彼は本当にこの技術に召されているのかもしれない!!


しかし、これらの予言的でもある鋭い一節をどんなふうに捉えたらいいのだろう? 長年のコラボレーターであるベネット・リトルジョン(Hovvdy、Claire Rousay)が、芸術的で巧みな共同プロデュースを手がけ、Sinai Vesselをあらゆるプリズムのフレーバーで描き出した。


ウェルチ・スタイルのしなるようなアコースティックな小曲、デス・キャブ・フォー・キューティのベストアルバムのタッチ、解体されたボサノヴァ、ワッフル・ハウスのジュークボックスを思わせるナッシュヴィルのストンパー(ジョディのニック・レヴィーンによる超プロ・ペダル・スティールがフィーチャーされている)、そして、最も驚くべきは、デフトーンズに隣接し、囁くように歌うヘヴィネスが、迷子の鳥のようにあなたの部屋に飛び込んでくるはずだ。


各々のソングライティングのスタイルのチャレンジは、レッキング・クルーのリズム・セクションによって成し遂げられた。リトルジョンのド迫力のベースとアンドリュー・スティーヴンスのドラム(シナイ・ヴェッセルの『Ground Aswim』で見事な演奏を披露した後、ここでは再びドラムを叩いている)が、アルバムのスウィングを着地させ、コーデスのベッドルームでレコーディングされたヴォーカルの親しみを、自信に満ちた広がりのある世界に根付かせる。


シナイ・ヴェッセルは、アトランタの写真家トレント・ウェインと異例のコンビを組んでいる。彼の不気味なフラッシュを多用したアルバムのハイコントラストのアートワークは、彼らの相乗効果から生み出された。シュールな道化師の特権的視点をもたらし、曲の冷徹なリアリズムとぴたりと合致している。そしてコーデスは、後期資本主義の恐ろしい空模様を巧みに描写し、ウェインは、その予兆である広々とした空っぽの高速道路と空っぽの店舗を捉えてみせる。


あなたは、リプレイスメンツの 「Treatment Bound」という曲をご存知だろうか? この曲は彼らの最も酔狂なアルバムのひとつで、リスナーに対する最後の「ファック・ユー」とでも言うべき愉快な曲。コーデスがグレープフルーツ・スプーンでニッチを切り開こうとし、ストリーミングの印税や信託資金の権力に真実を語りかけるかのような、DIY生活者のブラックユーモアに溢れている。その代わり、コーデスは、苦笑いをしながら、それらのリアリズムに首を振り、自分が見ているものが信じられないというように、代わりに「ファック・ミー」と言う。


私たちと友人が一緒に、必死に考え抜かれたノイズを商業生産のプラスチックの箱の底に押し込めることがどれほど馬鹿げているのだろうか。そして、「夕飯を食べるために歌う」という、現代のアメリカの中産階級の失われつつある天職の中で、シナイ・ヴェッセルはあり得ない奇跡を成し遂げてみせる。- Ben Sereten (Keeled Scales)



Sinai Vessel 『I Sing』/ Keeled Scales   -ナッシュヴィルのシンガーソングライターが掲げる小さな聖火-

  

今年は、主要な都市圏から離れたレーベルから良いアルバムが発売されることがある。Sinai Vissel(シナイ・ヴェッセル)の4作目のアルバム『I Sing』はテキサスのKeeled Scalesから本日発売された。

 

何の変哲もないような出来事を歌ったアルバムで、それは日常的な感覚の吐露のようでもあり、また、それらを音楽という形にとどめているに過ぎないのかもしれない。少なくとも、『I Sing』は、家の外の小鳥がさえずるかのように、ナッシュビルのソングライターがギターやドラム、シンセ、ベースという基本的なバンド編成を元にして、淡々と歌い、曲集にまとめたに過ぎない。もちろん、メガヒットはおろか、スマッシュヒットも記録しないかもしれない。マニアックなオルトロックアルバムであることはたしかだ。

 

しかし、それでも、このアルバムには、男性シンガーソングライターとしての魅力が詰め込まれており、ニッチなオルトロックファンの心をくすぐるものがある。シナイ・ヴィッセルの曲には、M.Wardの系譜にある渋さや憂いが内在している。男性シンガーの責務とは、一般的な苦悩を自らの問題と定義付け、説得力のある形で歌うことである。それが彼の得意とするオルタナティブ・ロックの領域の中で繰り広げられる。メインストリームから適度に距離を置いた感覚。彼は、それらのスターシステムを遠巻きに眺めるかのように、淡々と良質なロックソングを演奏している。分けても素晴らしいのは、彼はロックシンガーではなく、一般的な市民と同じように歌を紡いでいる。そして、Keeled Scalesの素朴ではあるが、夢想的な空気感を漂わせる録音の方針に溶け込んでいる。アーバンなオルトロックではなく、対極にあるローカルなオルトロック......。もっといえば、80、90年代のカレッジ・ロックの直系に位置する。R.E.M、The Replacementsの正当な後継者を挙げるとするなら、このシナイ・ヴィッセルしか思い浮かばない。

 

米国的な善良さは、グローバリゼーションに絡め取られ、失われたものとなった。ローカルな感覚、幹線道路のネオン・サイン、もしくは、ハンバーガーショップやアイスクリームショップの幻影......。これらは、今や古びたものと見なされるかもしれないが、アメリカの文化の大きな醍醐味でもあったのである。2010年代以降、そのほとんどが目のくらむような巨大な経済構造にかき消されてしまった。それにつれて、2000年代以降、多くのソングライターが、ローカルな感覚をどこかに置き忘れたてしまったか、捨ててしまったのだった。それと引き換えに、都会性をファッションのように身につけることにしたのだった。それは身を守るために必要だったのかもしれないが、ある意味では別の誰かを演じているに過ぎない。そしてシナイ・ヴィッセルは、巨大な資本構造から逃れることが出来た稀有な音楽家である。このアルバムは、テキサスのHoovdyを彷彿とさせる善良なインディーロックやポップソングという形を取っている。

 

そして、ケレイヴ・コーデスのソングライティングやボーカルには、他では得難いような深みがある。

 

エルヴィス・コステロ、ポール・ウェスターバーグ、ボブ・モールド、Pedro The Lionのデイヴィッド・ハザン、ビル・キャラハン、Wilcoのジェフ・トゥイーディーの系譜にある。つまり、この人々は、どこまでも実直であり、善良で、愛すべきシンガーソングライターなのである。


そして、基本的には、ケレイヴ・コーデスは、フォークやカントリーはもちろん、ブルースに重点を置くシンガーソングライターである。このブルースというジャンルが、大規模な綿畑の農場(プランテーション)の女性労働者や男性の鉄道員が労苦を和らげるために歌ったところから始まったことを考えると、シナイ・ヴィッセルのソングライターとしての性質は、現代的なワークソングの系譜に位置づけられるかもしれない。彼の歌には南部の熟成したバーボンのように、泥臭く、渋く、苦味がある。ある意味、軟派なものとは対極にあるダンディズムと憂いなのだ。


もちろん、現代的で親しみやすいロックソングのスタイルに昇華されていることは言うまでもない。彼のロックソングは、仕事後の心地よい疲労、華美なものとは対極にある善良な精神性により構築される。派手なところはほとんどない。それでも、それは日々、善良な暮らしを送り、善良な労働を繰り返している、同じような純朴な誰かの心に共鳴をもたらすに違いない。そう、彼のソングライティングは日常的な労働や素朴な暮らしの延長線上にあると言えるのだ。

 

アルバムの冒頭「#1 Doesn’t Matter」は、ボサノヴァを咀嚼した甘い感じのインディーロック/フォークソングで始まる。シナイ・ヴィッセルのボーカルは、Wilcoのジェフを思わせ、ノスタルジックな思いに駆られる。親しみやすいメロディー、乗りやすいリズム、シンプルだが心を揺さぶるハーモニーと良質なソングライティングが凝縮されている。ボサノヴァのリズムはほんの飾りのようなもの。しかし、週日の仕事の疲れを癒やすような、週末の最後にぴったりの良質なロックソングだ。この曲には、日々を真面目に生きるがゆえの落胆もある。それでもアコースティックギターの演奏の背後に、癒やしや優しげな表情が垣間見えることがある。曲の最後には、ハモンド・オルガンがコーデスの歌のブルージーなムードを上手い具合に引き立てる。

 

そっけないようで、素朴な感じのオルトロックソングが続く。彼は内面の奥深くを掘り下げるように、タイトル曲「 #2 I Sing」で、内的な憂いや悲しみを元に情感溢れるロックソングを紡いでいる。イントロは、ソフトな印象を持つが、コーデスの感情の高まりと合わせて、ギターそのものも激情性を帯び、フックのあるオルトロックソングに変遷していく。これらはHoovdyの楽曲と同じように、エモーショナルなロックへと繋がる瞬間がある。そして注目すべきなのは、都会性とは異なるローカルな感覚を持つギターロックが序盤の音楽性を決定づけていることだ。

 

「#3 How」は、Wilcoのソングライティングに近く、また、Youth Lagoonのように、南部の夢想的なオルトロック/ポップとしても聴くことができる。シナイ・ヴィッセルは、南部的な空気感、土地の持つ気風やスピリットのようなものを反映させて、砂煙が立ち上るような淡い感覚を作り出す。ヴィッセルはハスキーなボイスを活かし、オルタネイトなギターと乾いたドラムを背景にして、このソングライターにしか作りえない唯一無二のロックソングの世界を構築してゆく。表面的には派手さに乏しいように思えるかもしれない。しかし、本当にすごいロックソングとは、どこかしら素朴な感覚に縁取られているものである。曲の中でソングライターの感情と同期するかのように、ギターがうねり狂うようにして、高められたかと思えば、低くなる。低くなったかと思えば、高められる。最終的に、ヴィッセルは内側に溜め込んだ鬱屈や悲しみを外側に放出するかのように、ノイズを込めたダイナミックなロックソングを作り上げる。

 

「#4 Challenger」では内省的な感覚を包み隠さず吐露し、それらをオルトフォークの形に昇華させている。ビル・キャラハンの系譜に位置し、大きな曲の変遷はないけれども、曲のいたるところに良質なメロディーが散りばめられている。アコースティックギターとシンセサイザーの演奏をシンプルに組み合わせて、温和さと渋さの間を行き来する。やはり一貫して南部的なロマン、そして夢想的な感覚が織り交ぜられ、ワイルドな感覚を作り出すこともある。しかし、この曲に深みを与えているのは、ハスキーなボーカルで、それらが重さと軽さの間を揺らめいている。

 

「#5 Birthday」は、Bonnie Light Horsemanのような夢想的なオルトフォーク/カントリーとして聴くことができるだろうし、American Footballの最初期の系譜にあるエモとしても聴くことができるかもしれない。アメリカーナを内包するオルタナティヴ・フォークを基調にして、最近、安売りされるようになってしまったエモの原義を問いかける。彼は、一貫して、この曲の中で、ジョージア、テネシーといった南部への愛着や親しみを示しながら、幹線道路の砂埃の向こうに、幻想的な感覚や夢想的な思いを浮かび上がらせる。彼の歌は、やはり、ディランのようにそっけないが、ハモンド・オルガンの音色の通奏低音が背後のロマンチズムを引き立てている。 また、Belle And Sebastianの最初期の憂いのあるフォーク・ミュージックに近い感覚もある。

 

 

「Birthday」- Best Track

 

 

 

その後も温和なインディーロックソングが続く。考えようによっては、シナイ・ヴィッセルは失われつつある1990年代前後のカレッジ・ロックの系譜にある良質なメロディーや素朴さをこのアルバムで探し求めているように思える。先行シングルとして公開された「Laughing」は、前の曲で示されたロマンチズムをもとにして、アメリカーナやフォークミュージックの理想的な形を示す。ペダル・スティールの使用は、曲のムードや幻想的な雰囲気を引き立てるための役割を担う。そして曲の背景や構造を活かし、シナイ・ヴィッセルは心温まるような歌を紡いでいく。この曲も、Belle And Sebastianの「Tigersmilk」の時代の作風を巧緻に踏襲している。

 

ポール・ウェラー擁するThe Jamのようなフックのあるアートパンクソング「Country Mile」は、中盤のハイライトとなるかもしれない。ガレージ・ロックやプロト・パンクを下地にし、シナイ・ヴィッセルは、Televisonのようなインテリジェンスを感じさせるロックソングに昇華させている。荒削りなザラザラとしたギター、パンクのソングライティングの簡潔性を受け継いだ上で、コーデスは、Wilcoのように普遍的で良質なメロディーをさりげなく添える。そして素朴ではありながら、ワイルドさとドライブ感を併せ持つ良質なロックソングへと昇華させている。この曲の簡潔さとアグレッシヴな感覚は、シナイ・ヴィッセルのもう一つの武器ともなりえる。

 

 アルバムの終盤には、ウィルコと同じように、バロックポップを現代的なオルトロックソングに置き換えた曲がいくつか見いだせる。「#8 $2 Million」は、メロトロンをシンセサイザーで代用し、Beatles、R.E.M、Wilcoの系譜にあるカレッジ・ロックの醍醐味を復活させる。コーデスは、後期資本主義の中で生きざるを得ない現代人としての悲哀を織り交ぜ、それらを嘆くように歌っている。そして、これこそが多数の現代社会に生きる市井の人々の心に共鳴をもたらすのだ。その後、しなやかで、うるおいのあるフォークロックソング「#9 Dollar」が続く。曲ごとにややボーカルのスタイルを変更し、クレイヴ・コーデスは、ボブ・ディランのようなクールなボーカルを披露している。ローカルな感覚を示したアルバムの序盤とは正反対に、アーバンなフォーク。この曲には、都市のストリートを肩で風を切って歩くようなクールさが反映されている。2024年の「Liike A Rolling Stone」とも呼べるような興味深いナンバーと言えるか。

 

アルバムの序盤では、ウィルコやビル・キャラハンのようなソングライターからの影響が見いだせるが、他方、終盤ではBell and Sebastianの系譜にあるオルトフォークソングが色濃くなってくる。 これらのスコットランドのインディーズバンドの主要なフォークソングは、産業化や経済化が進む時代の中で、人間らしく生きようと試みる人々の矛盾性、そこから引き出される悲しみや憂いが音楽性の特徴となっていた。そして、シナイ・ヴィッセルは、その特徴を受け継いでいる。「#10 Window Blue」、「#11 Best Wetness」では、憂いのあるフォークミュージックの魅力を堪能できる。特に後者の曲に漂うほのかな切なさ、そして、淡いエモーションは、クレイヴ・コーデスのソングライターとしての高い能力を示している。それは M.Wardに匹敵する。 

 


「Best Wetness」- Best Track 

 

 

アルバムの終盤は、 大掛かりな仕掛けを作らず、素っ気無い感じで終わる。しかし、脚色的な音楽が目立つ中、こういった朴訥なアルバムもまた文化の重要な一部分を形成していると思う。そして、様々なタイプの曲を経た後、シナイ・ヴィッセルは、まるで南部の田舎の中に踏み込むかのように、自然味を感じさせるオーガニックなフォーク・ミュージックの世界を完成させる。

 

「Attack」は、ニューヨークのグループ、Floristが行ったように、虫の声のサンプリングを導入し、オルトフォークソングをアンビエントの音楽性と結びつけて、シネマティックな音楽を構築している。さらに、クローズ「Young Brother」では、アコースティックギターとドラムのシンバルのパーカッシヴな響きを活用して、夏の終わりの切ない雰囲気を携えて、このアルバムはエンディングを迎える。アルバムは、短いドキュメンタリー映像を観た後のような爽快な感覚に満ち溢れている。 それは、ハリウッド映画や大手の配給会社とは対極にあるインディペンデントの自主映画さながら。しかし、その素朴さこそ『I Sing』の最大の魅力というわけなのだ。

 

 

 

85/100 

 

 

「Doesn't Matter」 

 

 

 

* Sinal Vessel(シナイ・ヴィッセル)によるニューアルバム『I Sing』はKeeled Scalesから本日発売。ストリーミングや海外盤の購入はこちら

 

©︎Dear Life Records

Lindsay Reamer(リンジー・リーマー)は、ニューアルバム『Natural Science』をディア・ライフから8月16日にリリースすると発表した。この発表に伴い、フィラデルフィアを拠点に活動するシンガーソングライターは「Figs and Peaches」を公開した。


このニュー・シングルについて、リーマーは声明の中で次のように述べてい


「『Figs and Peaches』を書いたのは、ミシシッピ州のナッチェス・トレース沿いのある場所で、外来植物に関するトレイル・サインを読んだ後だった。20世紀初頭に、壊れやすい磁器を出荷する際の梱包材として使われたため、日本の高床植物が初めて北米に持ち込まれたことを知った。今ではテキサス州以東ではどこでも見られるようになった。


また、最近取り壊されたサウス・ジャージー州の石炭発電所であるB.L.イングランド発電所にまつわる言い伝えも参考にした。発電所を囲む温水が、通常なら南へ回遊する魚を引き寄せ、絶好の釣り場となったという噂だ。このことから私は、環境史の中で重要なテーマである「意図せざる結果」について考えるようになった。


個人的なレベルでは、良くも悪くも、自分たちの周りにあるものに影響を与えることができるということは、何か奇妙な心地よさがあると思う。この曲では前者に焦点を当てている。このフレーミングは、僕を絶望的な気分ではなくしてくれる。だからこの曲は、僕自身の小さな人生でもそのことを忘れないようにしよう、受け身にならないようにしようということを歌っているんだと思う。手を伸ばし、自分の実を摘み、自分のものにする。」






『Natural Science』

Label:  Dear Life
Relaeae: 2024年8月16日

Tracklist:


1. Today

2. Spring Song

3. Red Flowers

4. Sugar

5. Lucky

6. Mushroom House

7. Necessary

8. John’s Song

9. Figs and Peaches

10. Heavenly Houseboat Blues

 

Laura Marling

ロンドンのシンガーソングライター、Laura Marling(ローラ・マーリング)は、ニュー・アルバム『Patterns in Repeat』を2024年10月25日にクリサリス/パルチザン・レコードからリリースする。この発表に合わせて、ローラはアルバムのファースト・シングル『Patterns』を公開した。


『Patterns in Repeat』は、ローラがロンドンの自宅スタジオで作曲、レコーディング、プロデュースを行った。2020年に発表され高い評価を得た『Song For Our Daughter』が、架空の娘に向けて、また娘について書くという観点から比喩的に書かれたとすれば、『Patterns in Repeat』は2023年に娘が誕生した後に書かれた。


ローラは家族という星座の中で繰り広げられるパターンについて考察している。この曲は、彼女の人生において非常に具体的で啓示的な時期に根ざしたものであり、何世代にもわたって家族を通して耐えてきた考え方や行動を深く見つめ直したものである。


このアルバムは、ほぼ全編マーリングの自宅スタジオでレコーディングされ、ドム・モンクスが共同プロデュース、ストリングスの巨匠ロブ・ムースも参加している。このレコーディング・セッションには、ローラの娘がしばしば同席しており、アルバムの内容の比喩的な親密さだけでなく、純粋に状況的なものも反映している。


『Patterns in Repeat』は、常に多作なイギリスのミュージシャンによる8枚目のスタジオ・アルバムであり、彼女の15年のキャリアの中で、新作が出るまで最も長い間待たされたことになる。


「Patterns」



Laura Marling 『Pattern In Repeat』


Label: Chrysalis /Partisan 

Release: 2024年10月25日


Tracklist:

1 Child Of Mine 

2 Patterns 4 

3 Your Girl 

4 No One's Gonna Love You Like I Can 

5 The Shadows 

6 Interlude (Time Passages) 

7 Caroline 

8 Looking Back 

9 Lullaby 

10 Patterns In Repeat 

11 Lullaby (Instrumental)

 

Katy J Pearson


グロスターシャー出身のシンガーソングライター、ケイティ・J・ピアソンは、近日発売予定のアルバム『Someday, Now』から新曲「Sky」をリリースした。ブリオンのプロデュースによるこの曲は、リード曲「Those Goodbyes」に続くセカンドシングル。ピアソンらしい70年代のトラッドフォークのアプローチにオルトロックのテイストが添えられている。クランチなギターも心地よく、シンガーソングライターの歌声と上手くマッチしている。試聴は以下から。


「この曲は、私がどれだけ遠くまで来たか、私はここにいる価値がある、と自分自身に言っているような気がするわ」とピアソンは声明で語っている。

 

「私はいつも場所を取るのが恥ずかしかった。今となっては、これが3枚目のレコード! 信じられないようなプロデューサーと、私と一緒にこれを作りたいと言ってくれた選りすぐりの素晴らしいミュージシャンたちと一緒に仕事ができました」


2022年の『Sound of the Morning』に続く『Someday, Now』は、Heavenly Recordings/PIASから9月20日にリリースされる。

 


「Sky」