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リチャード・ドーソン(Richard Dawson)はニューカッスル/アポンタイン出身のフォークミュージシャン。 アートビジュアルの作品も発表しています。2014年のアルバム『Nothing Important』はWeird Worldからリリースされ、批評家から絶賛された。 2017年のアルバム『Peasant』も同様の評価を受け、『The Quietus』誌のアルバム・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。


ドーソンは長年にわたって地元ニューカッスルで多くの人々に愛されてきました。稀に見る激しさと特異なスタイルで歌い、ギターを弾く、歪んだトルバドールである。 まさしく現代に蘇った吟遊詩人と言えるかもしれません。

 

ドーソンのボロボロのアコースティック・ギターは、リチャード・ビショップやキャプテン・ビーフハートを彷彿とさせるような、つまずきから崇高さへと変化する。リチャード・ドーソンは、北東部のエレメンタル・アーケタイプの渦から長い草稿を引き出してきた。 大胆不敵なまでのリサーチとインスピレーションへの意欲で、ドーソンは古代の神話と現代の恐怖に彩られた印象的な音楽と語りのカタログを作り上げました。 


リチャード・ドーソンの多くのレコードには、病、トラウマ、無言の必然性の霧のような感覚が立ち込めており、それはしばしば、ドーソンの手が、持ち主と同じように傷つき、個性的で、不屈の楽器である、長年苦悩してきたギターから音を生み出す大混乱の中で表現されています。


リチャード・ドーソンのニューアルバム『End of the Middle』のタイトルは、実に微妙な矛盾をはらんでいる。中年? 中流階級? ドーソンのキャリアの中間点? レコードの中心? 一般的な中道主義? 二極化? 何かについてバランスの取れた議論をする可能性? あなたと真ん中? イングランドの真ん中? 中途半端な曲作り? 『エンド・オブ・ザ・ミドル』は、家族(同じ家族の何世代か)の営みを覗き見るような奇妙な美しい作品です。


「このアルバムは、小規模で非常に家庭的なものにしたかった」とドーソンは説明し、「そして、歌詞とメロディーが、曲の中で彼ら自身と人々を語れるようにしたかった」と付け加えている。物事を徹底的に削ぎ落とすことで、驚くほど冷静で、奇妙なほどエレガントで美しい音楽が完成した。

 

 

Richard Dawson 『End of the Middle』 -Domino Recording

 

果たして、この世に普遍な存在などあるのでしょうか。これは非常に難しい問題だと思います。多くの人々は何かが変わることを恐れますが、変わらないことは何ひとつもない。外側からは変わっていないように見えますが、その内側は、明らかな変化が生じているのです。こと、音楽に関していうならば、女性シンガーの年齢ととも人生におけるテーマの変化があるのと同様に、男性シンガーもまた年齢とともにテーマ(主題)が変わっていくのは当然のことでしょう。


結局のところ、自分が最も輝かしい時代だった頃と同じ主題を歌いたいという気持ちを持つことは分かるのですが、十年後に同じことを伝えることはむつかしい。なぜなら、十年後のその人物の人格は以前とは内側からも外側からも変わっているからです。その点では、ニューキャッスルのリチャード・ドーソンは、その年齢しかわからないことを音楽でストレートに伝えてくれます。


ドーソンの音楽には、その年齢の人々が知るべき何かが彫刻のように刻まれています。例えば、二十歳のミュージシャンと、四、五十代のミュージシャンでは伝えたい内容が全く異なるはずです。二十歳の人物が五十歳の表情をして音を奏でるのは妥当といえないでしょう。なぜなら、異なる年代に対して、その年代しか伝えられないことを伝えられるかがいちばん重要なのだから。

 

さらに、リチャードは、ニューキャッスルという街の風をリスナーのもとに届けてくれます。音楽というのは、制作者が感じたもの、そして生活の基底から引き出された感慨を伝えるためにある。そして、また、制作者のいる地域の特性を伝える。その中には、優雅なものもあれば、それとは対極的に素朴なものも存在する。どのような地域に住んでいようと、他の国や都市とは異なる特性が存在するはずで、それは同じ内容になりえないのである。そして、伝える人によって音楽の本質は異なる。なぜなら神様は、人間や生物に異なるキャラクターを付与することによって、おのおのの役割を分散させることにしたのです。結局のところ、なぜ音楽を創るのか、それから何を伝えたいか、これを明確にしないかぎり、本質に近づくことなどできないでしょう。

 

聞き手側としては、音楽の制作者の考えやそのひとがいる地域の特性に触れたとき、もしくはその本質に突き当たったとたんに、見ず知らずの人物の音楽が切実な意味を帯びはじめる。ドーソンの歌は、他の地域に住む人には作ることができず、ニューキャッスルの土地柄を的確に反映させている。

 

音楽というのは、離れた地域にあるリアリズムを伝える能力があるのをひしひしと感じることがあります。たとえば、リチャード・ドーソンのギター、そして歌は、吟遊詩人のような響きが込められています。しかし、彼の歌は、特権階級のためのものではありません。労働者階級のためのものでもあり、キャプテンビーフハートが志したブルースとロックの融合のように、胸にずしりとのしかかり、長い余韻を残す。ドーソンの歌はまったく重くなく、ブルースの要素はほとんどなく、それ以前の鉄道夫が歌ったレイルロード・ソングのペーソスに近い。でも、なぜか、それは現代の労働歌のような誠実な響きがあり、現実的な質感を持って私たちの心を捉えることがあります。

 

『End Of The Middle』は、切実なニュアンスを帯びています。アッパーとロウワーという二つの階級に現代社会が完全に分かたれていることを暗示する。そして多くの人は、その社会問題を矮小化したり、責任転嫁したり、もっと酷い場合には、まったく無きものとして無視したりすることもあるわけです。また、これらの二つの階級は、両者を敵視することも稀にあるでしょう。しかし、リチャード・ドーソンは、社会の基底にぽっかりと開いた空白のなかに位置取り、空想と現実がないまぜとなったフォークミュージックを説き聞かせるように優しく奏でます。それは現代社会に対する内向きな風刺のようでもあり、また、リリシズムの観点から見たアートの領域に属する。

 

リチャード・ドーソンのアコースティックギターは、ジム・オルークや彼のプロジェクトの出発であるGastr Del Solに近い。しかし、単なるアヴァンフォークなのかといえばそうとも言いがたい。彼の音楽にはセリエリズムは登場せず、しかも、明確な構成と和音の進行をもとに作られる。しかし、彼の演奏に前衛的な響きを感じるのはなぜなのか。ドーソンの音楽はカウンターに属し、ニューヨークパンクの源流に近く、The Fugsのようなアート志向のフォーク音楽の原点に近い。それは、以降のパティ・スミスのような詩的な感覚と現実感に満ちている。 彼の作品にひとたび触れれば、音楽という媒体が単なる絵空事とは言えないことが何となく理解してもらえるでしょう。

 

ドーソンの音楽は、米国の作家、ジャック・ケルアックの『On The Road』で有名な”ビートニク”の文化のヒッピー思想の系譜にある。ビートニクは西海岸から発生した文化と捉えられがちですが、ニューヨークのマンハッタンにもよく似たムーブメントがありました。例えば、アヴァンフォークの祖であるThe Fugsです。1965年の当時、マンハッタンのイースト/ウェストヴィレッジの路上で雑誌や詩集を販売していたトゥリ、そして、雑誌の編集長を務めていたエド・サンダースが「詩を読むだけでは不十分。曲を作って歌えるようにバンドをやろう」と結成したのが”The Fugs”だったのです。

 

一般的にはThe Velvet Undergroundがパンクの先駆者であるような紹介をされる場合が多いですが、以降のCBGBやノーウェイブの流れを呼び込んだのは、このフォークグループだったはずです。この最初のニューヨークのアヴァンギャルドミュージックの流れは、アリストテレスのギリシャ思想、ダダイズム、ジャズ、ポエトリー、ジョン・ケイジの前衛音楽、チャック・ベリーのR&R、それから賛美歌までを網羅し、どの音楽にも似ておらず、唯一無二のアヴァン・フォークの形態を確立させたのでした。まさしく様々な文化の折衝地であるマンハッタンの音楽。彼等は、現代社会の無気力や鋭い風刺を織り交ぜて、「月曜にはなにもないし、火曜にもないにもない!」と歌った。これはウディ・ガスリーやボブ・ディランのフォークよりも尖っていました。

 

リチャード・ドーソンのフォークミュージックは、フランク・ザッパ、キャプテン・ビーフハート/マジックバンドに象徴される''鬼才''ともいうべき特性によってつむがれ、ちょっと近寄りがたい印象もある。それは聞き手側がアーティストの個性的な雰囲気に物怖じしたり、たじろいだり、腰が引けるからです。でももし、純粋な感覚があれば、心に響く何かがあるはずです。賛美歌、ビートルズの『ラバーソウル』以降のアートロックの要素、パブロックのような渋さ、リバプール発祥のマージービート、それから60年代のフォークミュージック、そして、おそらくニューキャッスルの街角で聞かれるであろうストリートの演奏が混在し、ワイアードな形態が構築される。アルバムには、ほとんどエレクトリックの要素は稀にしか登場せず、音楽自体はアコースティックの素朴な印象に縁取られている。それにもかかわらず電撃的なのです。

 

アコースティックギターのガット弦の硬い響き、奥行きのあるドラムテイクの録音がこのアルバムの美点です。「Bolt」は、さながらシカゴのアヴァン・フォークの巨人であるジム・オルークを彷彿とさせる抽象的なサウンドで始まり、哀愁溢れるドーソンのヴォーカルが音楽的な世界をゆっくりと押し広げていきます。そして、アコースティックギターに合わせ、フランク・ザッパ的なボーカルが乗せられます。さらに、コード進行による弾き語り、それからもう一つの楽曲における対句のような構成を持つボーカルとのユニゾンなどを通して、対比的な音楽の構造を生み出し、そしてほとんど途切れることのないアヴァンフォークの音楽観を構築していく。


そしてそれは、日曜の休日のために歌われる賛美歌、安息日のための歌のような響きが強調されます。しかし、それは教会音楽のようなきらびやかな宗教歌ではなく、日曜の食卓で歌われるような質朴で控えめな歌/労働者のためのささやかな賛美歌です。かつてハンガリーにルーツを持つクラシックの音楽家が、「農民カンタータ」のような音楽を書いたように、一般的な市民のつましい暮らしを賛美するための素朴なフォークソングを、ドーソンはさらりと華麗に歌い上げます。これは、''誰に向けて歌われるのか''という意義を失いつつある現在の音楽に一石を投じる内容です。彼の音楽は、哀愁や暗さに満ちていますが、そこには共感性と癒やしが存在するわけです。

 

冒頭部は、夕暮れの切なさを思わせますが、続く「Gondola」は、意外なほど軽妙な印象を放つ。まるで故郷を飛び出し、ヴェネチアへ小さな旅行に出かけるように、陽気な気分を表現しています。しかし、商業的な音楽のように見え透いた明るさにはならない。それはまた一般的な人間の性質にある多極性、明るさのなかにある暗さ、あるいは、暗さのなかにある明るさ、というような正常な感覚をストレートに吐露しているからでしょう。この曲では、音楽制作者のペシミスティックな心情を鏡のように現実に反映させるかのように、和声進行は単調と長調の間をせわしなく行き来しています。音楽自体は、ちょっと陽気になったかと思えば、それと対象的に、悲しみに溢れる音楽の表情があらわになる。アコースティックギターの演奏はリズミカルで軽快なのに、ドーソンの歌のヴァーズはペシミスティックな感覚がある。これがトラックの背景となるメロトロンのぼんやりした響きと混在し、ビートルズのデモソングのような雰囲気を持ったラフなアートロック/アートポップソングが出来上がっていくのです。

 

 

 「Bullies」は、ロック風の曲をアコースティックで演奏しています。そして、表面的にはビートルズのルーツであるマージービートの系譜をうかがわせる。もしかすると、60年代以前には、リバプール、マンチェ、そういった主要な港町で船乗りが歌う「舟歌」のような音楽が存在しただろうと思われます。この曲は、そういった英国の「労働歌」を彷彿とさせる。最近、英国的な音楽というのが薄れつつある印象ですが、この曲は、海外の人間から見ると、奇妙なほど”英国的”である。それは王室の話題とは無縁な市井の人々のための音楽なのです。


そして、リズムも独特で面白いですが、この曲はなぜか心を奮い立たせる何かが存在します。おそらく、そういった民謡や労働歌のようなものに合わせて、ドーソンは自らの心情を織り交ぜたエモーショナルな歌を紡いでいる。この曲は、中盤以降、ポピュラーソングに接近したかと思えば、ジョン・ゾーンのようなサクソフォンの特殊奏法を通して、前衛音楽と商業音楽の間を変幻自在に行来し、印象を著しく変化させます。そして、曲は一貫して難解になりすぎず、叙情的なアルペジオのアコースティックギターの間奏を織り交ぜ、落ち着いていて聞きやすいフォークソングを展開させていく。

 

基本的には、リチャード・ドーソンのソングライティングは終止形を設けず、一つのフレーズの後、移調などの技法を用いて、曲の持つイメージを変化させ、そのまま息をきらさず、次の曲の進行へと繋げていく。これはどちらかといえば、クラシックの作曲法で、基音と次の転調の導入音を繋げて次の調性に転回していくのです。ドーソンの音楽は、ものすごく独創的であるため、一見すると、ポストモダニズムのように思えますが、必ずしもそうとは言いがたい。全体的に聴きこんでみると、楽節の枠組みを用意した上で、それを順繰りに繋げている。つまり、ガスター・デル・ソルやジム・オルークの音楽が脱構造の印象を持つのとは対象的であり、ドーソンの音楽はどこまでも構造性を重視しています。しかし、こういった一定の決まりがありながらも、自由闊達な気風を感じさせる。変幻自在なギターの演奏が繰り広げられ、一つの枠組みを通して音楽的な奥行きを広げていく。考え方によっては、そこにあると思っていたものがスッと消えてなくなり、ないと思っていたものがふと出現したりします。つまり、音楽的な驚きが満載なのです。

 

ドーソンのヴォーカルの魅力的な側面がひときわ際立つ瞬間もある。「The question」 では、いわゆる''ヘタウマ''のボーカルが登場し、気安く穏和な雰囲気のあるギターの音色と重なり合う。まさしく、ここでは冒頭で述べたように年齢を重ねたがゆえの深さ、包み込むような温かい感情があらわとなる。それがこのアルバムでは最も牧歌的な印象を持つ音楽とまざりあう。


曲の途中では、即興的な演奏が登場し、これが間奏の役割を担う。それが最終的にはサーカスの音楽のようなリズムと重なり合い、音楽的なエンターテインメント性を創り出す。そして、ドーソンはくるくると調性を移調させながら、面白いようにシークエンスを変化させる。すると、聞き手は、その感覚に釣り込まれるように、楽しみに充ちた感覚を享受する。さらに、わざとピッチ(音階)をずらしたファルセットを通じてコメディー的な音楽の要素を強める。これが少しシリアス過ぎる音楽が多い昨今の中で、ほのかな安らぎの要素をもたらすのです。音楽というのはときどき、固定観念から開放させる働きをなすこともあり、また、それが知られざる魅力でもある。サーカスのようなコメディーにもよく似た音楽は、旧来のビートルズやストーンズの直系にある。いや、もしかすると、見方によれば、フランク・ザッパ的であるのかもしれません。

 

「Boxing Day Sale」はタイトルが秀逸で、小説や映画のタイトルのようです。祝日の讃歌なのか。”ボクシング・デー”とは12月26日の休日で、いわゆる主人と召使いの関係を象徴付ける休日であるという。しかし、この曲には、バックストーリーのようなものが込められているような気がします。

 

アルバムの序盤の収録曲のように、哀愁溢れるメロディーと高らかなボーカルが特徴的です。しかし、一貫してドーソンの曲には奇妙な癒やしが感じられる。それは、暗さの向こうにある明るさともいうべきもので、ボーカルの真心にほっと安堵させられる。


この曲が、貧しき人々に捧げられたチャールズ・ディケンズの小説のような慈しみの音楽であっても驚くには当たりません。彼の歌声は純粋な響きがあり、それがゆえ琴線に触れる何かが込められています。ときどき、ほろりとさせるような人情を感じさせます。下町の風情といった感じでしょうか。

 

 

 「Boxing Day Sale」

 

 

 

いつの時代もポピュラーミュージックの醍醐味というのは、歌手や制作者の真心を表し、それが一般的ではないほど共感を誘う。''なぜそんなことを歌ったのか''という曲ほど、共鳴する部分があったりします。本意を明らかにせず、上辺の感情で別の思いを塗りたくるのは最善とはいいづらい。それはつまらないコマーシャル音楽に堕してしまい、聞き手を絶望のどん底に突き落とし、救われるところがほとんどないのです。暗さや悲しみに共鳴する曲がいつの時代から途絶えてしまい、それがいつ、偽りの音楽に塗り替えられたのでしょうか。そして誰がそれらを称賛しているのでしょうか。


「Knot」は、そういった奇妙な風潮に対抗するカウンターに位置づけられる音楽です。ここでは、ビートニクの範疇にある自由な考え、フリースタイルのフォークソングに縁取られている。こういった曲に共感を覚えるのは、どのような明るい人も暗い感情を内に抱えることがあるからなのでしょう。

 

アルバムの音楽を聞き進めていると、リチャード・ドーソンという人物が教会の聖職者のように思えてきます。しかし、彼の音楽やそれにまつわる思いは、一方方向ではなく、円環状の感覚に充ちています。みんなで輪を広げていこうというオープンな感覚で、そして、それは単一の考えを押し付けるものではなく、答えを見つけるための暗示に過ぎません。本作の音楽は、結局、明確な答えを示すためのものではなく、手がかりだけを示した上で、この音楽に接した人々がそれぞれの答えを見出すという趣旨なのです。多くの人々は、なんらかの明確な答えを求めたがり、ときに自分の理想とする人にそれをあてがってもらったりします。それでもたぶん、答えというのは、最終的には、それぞれが違ったものであるのだから、一つの正解は存在しません。それをおのおのが見つけていくべきなのでしょう。

 

『End Of The Middle』の素晴らしさは、世界からミドルが消えかけているという悲観論だけで終わらず、旧態依然とした世界から前に進むという建設的な考えがほのめかされている点にある。このアルバムの出発点はペシミズムにまみれていますが、アルバムの音楽の世界を歩き終わったあと、別の世界に繋がっていることに気づく。そのための道筋が以降の三曲に示唆されている。「Polytunnel」は、賛美歌をフォークミュージックでかたどったもので、何か清らかな感覚に充ちている。このアルバムの中では、最も気品に充ちた一曲かもしれません。

 

「Removals Van」はビートルズを彷彿とさせるフォークミュージックで、とてもさわやか。厳格に言えば、ジョージ・ハリスンやリンゴ・スターが歌いそうなユニークな一曲である。しかし、ドーソンらしい音楽性があり、感情の起伏という形であらわれる。実際的には、明るく軽快な曲調と哀愁のある曲調という対比によって導かれる。サックスかファゴットのアバンギャルドな響きを絡め、軽快さと前衛の間を巧みに揺れ動いている。ジャズなのか、フォークなのか、クラシックなのか、ロックなのか、それともポップスなのか?? いずれとも言えないですが、ここには、基本的には音楽を楽しむという最大の魅力が宿っている。そしてそれはジャンルを超えている。だからこそ聴いていて心地よいのでしょう。

 

クローズ曲だけは作風がかなり異なります。「More Than Real」ではモジュラーシンセが登場し、悠々たる雰囲気でドーソンはバラードソングを歌い上げています。 これまで一貫してギミック的な音楽を避けて、質朴な音楽を提示してきたソングライターの真骨頂のような瞬間を味わえます。まるでこの曲だけは、舞台やオペラの主人公になったかのように、ドーソンは明るく開けた感覚のボーカルを披露しています。聴いていると、同調して、なぜか開放的な気分になり、前向きで明るい気分になれるはずです。また、そこに、失望に打ちひしがれた人の心を癒やす何かがあると思います。

 

ゲストボーカルをあまり起用してきませんでしたが、クローズでは、女性ボーカルのソロが最後の最後で登場します。唐突にギリシア神話の女神が登場したかのような神々しさが充ち広がっていきます。最終的には、男女のデュエットという、真善美の瞬間が立ちあらわれる。次いで、この曲は、シンセサイザーやサックスの前衛的なパッセージに導かれ、エンディングを迎えます。アウトロの音の波形のうねりのフェードアウトは、ワープから去年発売されたロンドンのアーティストのEPのサウンドによく似ています。空の中の泳ぎ方の模倣。実にうまくやったなあという感じですね。

 

 

 

92/100

 

 

 

「Gondola」

 

 

 

■ Richard Dawson(リチャード・ドーソン)のニューアルバム『End of the Middle」は本日(2/14)、Domino Recordsingから発売済み。各種ストリーミングはこちらから。

©Anaïs Ramos


カナダの注目のシンガーソングライター、Helena Deland(ヘレナ・デランド)は、同地のアートポップシーンで存在感を放っている。

 

ヘレナ・デランドは「Altogether Unaccompanied」と銘打たれたシリーズを四作発表しているが、その第5弾として、2曲の新曲「Silver and Red」と「Bigger Pieces」を同時に発表した。

 

特に「Silver and Red」の方は短いエレメントであるが、ローファイなインディーフォークソングで良い雰囲気を醸し出している。さらにもう一曲は、アナログなオルトポップでカナダのシンディー・リーのようなベースメントの音楽性を吸収している。いずれもフォーク・ミュージックがベースにある。

 

「Silver and Red」には、ニック・アーサーが撮影したミュージックビデオも収録されている。2曲とも下記からチェックしてみてください。


「2017年、ファースト・アルバムになると思ってレコーディングを終えたとき、私は雑多な曲の束に直面しました」とデランドは声明で説明した。「私はそれらを期待されたフォーマットにくねくねさせる代わりに、Altogether Unaccompanied, volumes I-IVと呼ばれる一連の短いEPとしてリリースした。このシリーズは、アルバムに収録されなかった曲や、多かれ少なかれ無伴奏で単独で存在しているような曲を共有するための、オープンエンドな場所となっている」

 


「Silver and Red」
 

 

 

「Bigger Pieces」

 

 

 

【Helena Deland】 

 

ヘレナ・デランドはカナダのシンガーソングライター。これまでに5枚のEPをリリースしている。『 Drawing Room』(2016年)、『From the Series of Songs 「Altogether Unaccompanied」 Vol.I, II, III & IV』(2018年)は彼女が作詞・作曲したもの。2020年10月15日に1stフルアルバム『Someone New』をリリース。

 

セカンド・フル・アルバム『おやすみサマーランド』は2023年10月13日にリリースされた。デランドは現在、世界ではルミネール・レコーディングス(ゴリラ VS ベア&ファット・ポッサム・レコードが設立したレーベル)、カナダではチヴィ・チヴィと契約している。キャリア初期からカナダ、アメリカ、ヨーロッパでコンスタントにツアーを行っている


 

ジャスティン・ヴァーノンは昨年、ボン・アイヴァーとしての新作EP『SABLE』を発表したが、今回、同プロジェクトの6年ぶりとなるフルアルバムを発表した。『SABLE, fABLE』は4月11日にJagjaguwarからリリースされる。ヴァーノンはジム=E・スタックと共にこのアルバムをプロデュースし、ほとんどのレコーディングはウィスコンシン州にある彼のエイプリル・ベース・スタジオで行われた。ダニエル・ハイム、ディジョン、フロック・オブ・ダイムスが参加している。



「SABLE」がプロローグだとすれば、「fABLE」は一冊の本であり、「SABLE, fABLE」はアルバムである。夢中になること、そしてそれがこれらの曲にもたらす強烈な明晰さ、集中力、正直さ、祝福には、紛れもない癒しがあるのかもしれない。「Everything Is Peaceful Love "は、恋に落ちる相手に出会って幸福感に打ちひしがれる男の肖像である。しかし、SABLEの影はまだ迫っており、リセットして再出発しようと努力しても、古い感情が戻ってくることがある。


寓話のように、それぞれの曲は教訓を植え付けている。fABLEは、他者や恋人と関わるときに必要とされる無私のリズム、つまり、より良くなるためのペースを見つけるための忍耐強いコミットメント、そして一体感について歌っている。i,i』や『22, A Million』でジャスティン・ヴァーノンの声を守っていた、回避的で濃密な音の層はもうない。SABLE,fABLE』は、真実を剥き出しにしたキャンバスなのだ。

 



BON IVER  『SABLE, FABLE』


Label: jagujaguwar

Release:  2025年4月11日


Tracklist:

 

THINGS BEHIND THINGS BEHIND THINGS

S P E Y S I D E

AWARDS SEASON

Short Story

Everything Is Peaceful Love

Walk Home

Day One (feat. Dijon and Flock of Dimes)

From

I’ll Be There

If Only I Could Wait

(feat. Danielle Haim)

There’s A Rhythmn

Au Revoir

 

 

 


ニューヨークのフォークバンド、Florist(フローリスト)が繊細で哀愁漂うシングル「Gloom Designs」を発表した。 

 

この曲は、前作「Have Heaven」と「This Was a Gift」に続くシングルです。近日発売予定のアルバム『Jellywish』に収録される。『Jellywish』はDouble Double Whammyより4月4日にリリースされます。


フローリストは、インディーフォークをベースとしたサウンドを特徴とし、とくにサンプリングやフィールド録音、シンセのマテリアルを取り入れた実験的なアプローチで知られている。

 

彼らは2022年のセルフアルバムで大きな手応えを掴んだが、続く作品ではさらにアメリカーナやカントリー、フォークの核心に近づきつつある。やさしくも儚いフォークソング。アコースティックギターにエミリー・スプラグのゆったりとしていて、繊細なボーカルが特徴のナンバーとなっている。この新曲について、フローリストのエミリー・スプラグは次のように語っています。

 

 

砂の上のマイルマーカー......。 ジェリーウィッシュのテーゼステートメント......。 生きていくことのマクロな清算.......。 最初は自分自身の人生の物語を内観し、次に死に向かって日常をふるいにかけ続けることの意味、魔法と恐怖、疲れていること、地上の欲望、破壊、恐怖、絶望、感謝、共感、幻想、平凡、願いについて振り返る。

 

人間の悪を目撃する。 私たちの全歴史、次に来るものへの疑問符。 私たちの惑星である地球への愛と、多くの人々が今も地球と互いのために発揮している善意。 考えること。 最終的ではあるが、終わってはいない。



「Gloom Designs」




 


ワクサハッチー(Waxahatchee)が、グラミー賞にノミネートされたアルバム「Tigers Blood」のセッションからの新曲「Mud」を公開した。バンジョーの演奏がフィーチャーされた素晴らしいアメリカーナ。この曲はシングル「Much Ado About Nothing」のリリースに続く。


最新アルバムではミュージシャンの南部のルーツをテーマとし、インディーロックとカントリーの融合に取り組んでいる。 今年、ケイティ・クラッチフィールドは、ANTI-からリリースされた最新作の宣伝を兼ねたツアーを開催する予定だ


ケイティ・クラッチフィールドにとって、昨年はグラミー賞にノミネートされ、ミュージシャンとして印象的な一年となったが、今年以降の活躍も非常に楽しみである。この夏、ロンドンのハマースミス・アポロでのUK最大のヘッドライン・ライヴを含む、ヨーロッパとUKのツアーを開催する。また、バルセロナとポルトで開催されるプリマヴェーラ・サウンド・フェスティバルにも出演予定である。これらの公演に続き、9月には、ウィリー・ネルソン&ファミリー、ボブ・ディラン、シェリル・クロウとともにアウトロー・フェストでアメリカ公演を行う。

 

 


「Mud」

 

 

 

Tour Dates:

2/21 - Inglewood, CA @ Kia Forum *
3/14 - Spicewood, TX @ Willie Nelson’s Luck Ranch #
3/29 - Knoxville, TN @ Big Ears Festival
4/26 - Tallahassee, FL @ Adderley Amphitheater at Cascades Park ^
4/27 - North Charleston, SC @ High Water Festival
4/29 - Miami Beach, FL @ The Fillmore ^
4/30 - St. Augustine, FL @ The St. Augustine Amphitheater ^
5/2 - Birmingham, AL @ Avondale Brewing Company ^
5/3 - New Orleans, LA @ Saenger Theatre ^
5/4 - Houston, TX @ White Oak Music Hall (Lawn) ^
5/6 - San Antonio, TX @ The Espee ^
5/7 - Irving, TX @ The Pavilion at Toyota Music Factory ^
5/9 - Nashville, TN @ The Pinnacle ^
5/10 - Atlanta, GA @ Cadence Bank Amphitheatre at Chastain Park ^
5/11 - Chattanooga, TN @ Soldiers and Sailors Memorial Auditorium ^
5/13 - Wilmington, NC @ Live Oak Bank Pavilion ^
5/14 - Durham, NC @ Durham Performing Arts Center &
5/15 - Charlotte, NC @ The Amp Ballantyne ^
5/16 - Asheville, NC @ Asheville Yards Amphitheater ^
6/1 - Denver, CO @ Outside Festival
6/6 - Barcelona, ES @ Primavera Sound
6/8 - Glasgow, SCT @ Barrowland Ballroom $
6/9 - Manchester, UK @ Albert Hall $
6/10 - Bristol, UK @ SWX $
6/11 - London, UK @ Hammersmith Apollo $
6/13 - Porto, PT @ Primavera Porto
6/20 - Nelsonville, OH @ Nelsonville Music Festival
6/21 - Lafayette. NY @ Beak & Skiff Apple Orchards %
6/22 - Greenfield, MA @ Green River Festival
6/23 - Shelburne, VT @ Shelburne Museum on The Green =
7/29 - Columbia, MD @ Merriweather Post Pavilion ~
7/30 - New York, NY @ Madison Square Garden ~
9/5 - Bangor, ME @ Maine Savings Amphitheatre +
9/6 - Hartford, CT @ Xfinity Theatre +
9/7 - Mansfield, MA @ Xfinity Center +
9/12 - Camden, NJ @ Freedom Mortgage Pavilion +
9/13 - Holmdel, NJ @ PNC Bank Arts Center +
9/19 - East Troy, WI @ Alpine Valley Music Theater +

* w/ Nathaniel Rateliff & The Night Sweats and Iron & Wine

# w/ Lucinda Williams & Special Guests

^ w/ Wilco

& w/ Cameron Winter

% w/ MJ Lenderman & Hurray For The Riff Raff

= w/ Kevin Morby

$ w/ Merce Lemon

~ w/ Lord Huron

+ w/ Willie Nelson & Family, Bob Dylan, Sheryl Crow & Madeline Edwards

 

©Ebru Yildiz

 

2025年に入り、コラボレーションの動きが活発になっている。異なる才能を融合させ、新しい音楽を作ろうという動向が多い。その筆頭格がJulien Baker & TORRES(別名マッケンジー・スコット)ということになるだろうか。年明けからマタドールは忙しない動きを見せているが、今回のアルバムのの発売がついに明らかに。今年はベガース・グループの筆頭格の本領発揮が期待出来る。

 

ジュリアン・ベイカーは、従来、フォークシンガーとして活動しており、他方、トーレスはポップソングやロックを主戦場としている。去年、ベイカーはイベントなどの出演をメインにしていたが、トレスはソロアルバム『What an enormous room』をMergeから発表している。

 

今回のコラボレーションで注目すべき点があるとすれば、両者ともギタリストとしての性質が非常に強い歌手ということだろう。今回のアルバムは純粋なカントリーであると説明されているが、どのようなアルバムになるのか楽しみに発売日を待ちたい。

 

ジュリアン・ベイカーとトレスのデビューアルバム『Send a Prayer My Way』は4月14日にリリースされる。この発表と合わせてニューシングル「Sylvia」が公開された。


すでに両者は、米国のテレビ番組「The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」にも出演し、カントリーソングのライブを披露したほか、ライブで披露された「Sugar In Tank」が先行配信されている。


このアルバムは、2人が2016年に初めて共演して以来、制作が進められてきたもので、2人のうちの1人は、いつかカントリー・アルバムを作ろうと提案していたという。


TORRESはプレスリリースで「Sylvia」についてこのように語っている。

 

北部のシェルターから愛犬シルヴィアを引き取りに行った朝、私は家でコーヒーを入れていて、WFMUをつけたらドリー・パートンの『クラッカー・ジャック』が流れていた。涙が溢れました。

 

まるで宇宙が、彼女は私のものになると教えてくれているような気がしたのです(シルビアは里親になるはずだったのです)。最愛のペットと家を共有する光栄に浴したことのある人なら誰でも、ペットが家族であることを知っているからでしょう。


トーレスは2024年1月、Mergeからニューアルバム『What an enormous room』をリリースした。2024年8月にはFruit Batsと組み、コラボレーションEP『A Decoration』をMergeからリリースした。

 

「Sylvia」

 




Julien Baler&TORRES 『Send a Prayer My Way』


 

Label:  Matador

Release: 2025年4月14日

 

Tracklist:

1. Dirt
02. The Only Marble I've Got Left
03. Sugar in the Tank
04. Bottom of a Bottle
05. Downhill Both Ways
06. No Desert Flower
07. Tape Runs Out
08. Off the Wagon
09. Tuesday
10. Showdown
11. Sylvia
12. Goodbye Baby 


Background:

 
ジュリアン・ベイカー&トレスの『Send A Prayer My Way』は、アウトローの伝統の最たるもので、反抗的で、破壊的で、労働者階級的で、中毒や後悔や誤った決断だけでなく、抑圧的な権力システムとも闘う決意をもって書かれ、歌われている。

 

幸いなことに、これはトレスとベイカーが語ろうと決意した物語の始まりに過ぎない。なぜなら、これは過激な共感やセカンド・チャンス、サード・チャンスについての歌でもあり、ここにはたくさんの葛藤や後悔がある一方で、ユーモアや反抗もあるからだ。



『Send A Prayer My Way』は何年も前から制作されていた。2人の若いミュージシャンが、ここシカゴで愛されているリンカーン・ホールで初めての共演を果たしたとしよう。2016年1月15日、外は底冷えするほど寒く、特に南部の2人組にとってはそうだ。ライヴが終わり、クソみたいなことを言い合っているとき、一人のシンガーがもう一人に言った。「わたしたちはカントリー・アルバムを作るべき」

 

これはカントリー・ミュージックの世界では伝説的な原点であり、余裕のあるエレガントな歌詞と、彼らの音楽を愛する人々と苦悩を分かち合う勇気ですでに賞賛されている2人のアーティストのコラボレーションの始まりでもある。それはまた、最も不朽のカントリー・アルバムのように、歌い手と聴き手の双方を支え、鼓舞し、この世で完全に孤独な人間など一人もいないこと、音楽は安定した伴侶であることを思い出させてくれる作品作りの始まりでもある。



Tour Date:

 
Thursday March 27, Ohio University, Athens OH
March 28 - March 30, Big Ears Festival, Knoxville, TN
April 3 – 5, Mission Creek Festival, Iowa City IA
April 26 - April 27, High Water Music Festival, Charleston, SC
May 15 - May 18, Kilby Block Party, Salt Lake City, UT
June 20 - June 22, Mountain Jam, Highmount, NY
June 20 - Jun 22, Green River Festival, Greenfield, MA
July 4 - July 5, Zootown, Missoula, MT


▪️TORRES 『WHAT AN ENORMOUS ROOM』 -REVIEW -  NYのシンガー/ギタリストによるポピュラーミュージックとスポークンワードの融合 


イギリス/アイルランドのシンガー、アンナ・B・サヴェージの3枚目のアルバム『You & i are Earth』の核心は、根源的な感覚にある。このアルバムは、癒しについて、さらに屈託のない好奇心についての感覚でもあり、もっと簡単に言えば、「ある男性と、アイルランドへのラブレター 」でもある。


絶賛された『A COMMON TURN』、『in|FLUX』に続く『You & i are Earth』は、開放的でありながらフレンドシップを感じさせる。オープニング曲『Talk to Me』は、海の音と目を輝かせるストリングスが私たちをなだめ、優しさの研究であり、私たちの魂を本質的な場所へと導いてくれる。

 

私が緊張するのは、それがとても繊細で微妙なものだからで、注目の経済が私たちに、私たちを連れ去ってくれる大きな光り輝くものを渇望させているのです。


しかし、『You & i are Earth』は、サヴェージの初期の作品から大きく進歩した、変わらぬ穏やかな感覚を持ちながらも、従来とは違った場所に導いてくれる。

 

最初のレコードを書いていたときは、難しいと感じていた。2枚目のアルバムでは、セラピーを受けて自分自身と向き合っていたんだけど、昔の自分がまだ私を少し引き戻していた。


ある場所に異様なほどに心を惹かれたり、もしくは親しみを見出すことはないだろうか。サヴェージは、地理的にも感情的にも、今自分が置かれている場所や環境に起因するものだと語る。そして、このレコードは文字通り、ある特定の場所に根ざしている。ほかでもないアイルランドのことだ。

 

サヴェージとアイルランドとのつながりは、マンチェスターの大学で詩の修士課程を専攻した10年以上前にさかのぼる。ソングライターとしての素地あるいは内郭のようなものを築き上げた場所だという。

 

2020年に(ダブリンで)音楽の修士課程に進んでから、シアン・ノーの歌についてのエッセイを読んだり、カートゥーン・サルーンのものを見たり、アイルランドの神話について読んだりした。

 

それ以来、アンナは多くの時間をアイルランド西海岸で過ごしている、 ツアー(今年はザ・ステイヴスやセント・ヴィンセントのサポートで、以前にはファーザー・ジョン・ミスティやソン・ラックスらとツアーを行った。その合間には、故郷のドニゴール州に戻り、仕事のためにロンドンを訪れ、当地の文化的な事業に携わっている。


例年10月に開催されるロンドン映画祭でプレミア上映されたアレックス・ローサー監督の新作短編映画『Rhoda』の映画音楽を担当し、マイク・リンゼイのスーパーシェイプス(Tunng & LUMPのプロデューサー兼マルチ・インストゥルメンタリストが率いるコラボ・アルバム&スーパー・グループ)の一員としても活躍した。これらの活動が音楽的な奥行きや幅広さをもたらしたのは明らかである。


そういったミュージシャンとしての仕事の傍ら、アンナ・B・サヴェージはもうひとつの故郷とのつながりを見出そうとしていた。その土地にしかない感覚であり、自分にとって欠かさざる神秘性の源泉である。彼女の新しい故郷とデリケートでありながら花開いた関係は、「ドネガル」での海との約束の中に集約されている。そこでは、きらめくパーカッションの中で、彼女は海に「私のことをよろしくお願いします」と頼みこみ、そして「モ・チョル・スー」では、人、場所、希望にたいする子守唄のように変化してゆく。このレコードを形作っている間、彼女が読んでいた本のひとつに、Manchán Magan(マンチャン・マガン)の『32 words for Field』がある。

 

歴史と人間、自然と人間性など、さまざまな要素が交錯する慈愛に満ちた作品の根底には、清算の感覚がある。タイトル曲「You & i are Earth」は、ロンドンの下水道で発見された17世紀のお皿からインスピレーションを得ており、そこには統一された感情が刻まれている。しかし、この曲は壮大でありながら、控えめで優美、ストリングスの渦巻く嵐のようなサウンドに縁取られている。ギターとコーラスが夢のように融合したデリケートな「I Reach for You in My Sleep」、甘く切ない「The Rest of Our Lives」のように、このレコードは何かを隠そうとするのではなく、サヴェージの魅力的でエレガントな歌声にぴったりと寄り添うような繊細さを表現している。


そのプロセスは、アンナ・ミーケをフィーチャーした複雑な作品で、二重性と変容という主題を軸にした「Agnes」で見事に表現されている。この曲は、サヴェージが瞑想を通して経験した不穏な体験を反映したもので、最終的には没入感のある美しい感覚に終わる。


20世紀に入り、人類は宇宙を目指して来たが、同時に多くの人々はなにか重要なことを見落としてきた。自然との調和、もしくは自然を慈しむことなくして、その場所に溶け込むことなどできようはずもない。アンナ・サヴェージは、土地に戻る、もしくは土地に帰るというような現代人の多くが忘れかけた感覚を大切にしている。それはアートワークにも表され、自然と一体になるという重要な主題に見出すことができる。


アイルランド/スライゴ州の森林地で撮影された写真で、サヴェージが木々を見上げ、そのフラクタル(幾何学的な概念)が彼女の目に映し出されている。彼女が瞑想中に感じた何かを映し出し、私たちを一周させ、私たちは本質的に一体で、少なくともそうあろうと努力している、つまり、「あなたと私は地球」という感覚に立ち戻らせる。

 

 

Anna B Savage 『you & i are Earth』


 

米国の思想家であるヘンリー・D・ソローの名著の一つに『ウォールデン 森の生活』というのがあるのをご存知だろうか。都会的な生活や産業の発展により、極度にオートメーション化された現代人の生活を営む若者が森に入り、しばらく生活をし、重要な概念を見出すという内容である。森の小屋での暮らしは簡単ではないものの、機械文明の中では見出しづらい重要な人生のテーマを発見するというのが趣旨である。


この生活の中で、ソローは、時々、小屋に友人を招きつつ、原始的とも言える暮らしを送り、山や湖のような自然と一体化する暮らしを送り、この名著を世に輩出した。この書籍は現在でも、私自身の重要な生活の指針ともなっており、実際的に、デジタルや日々の喧騒に飲み込まれそうになった時、単なる思想以上の重要な意味を持ち始める。そして、ロンドンのシンガーソングライター、アンナ・B・サヴェージの新作もそれに近い趣旨を持つ。 このアルバムは簡潔な30分の作品であるが、現代的な生活のなかで人々が忘れかけた感覚を思い出させてくれる。

 

多くの場合は、人々は、世間的な価値観を重んじるが、 それはつまり空虚を獲得するための道が開けたということである。多くの人々は、虚しさという道標が視界の先に見えるやいなや、幸福と見間違えて歩みを進める。だが、それは蜃気楼にも似ていて、掴んだかと思えば、すぐ通り抜ける。煉獄への道はきわめて魅力的に映るが、本来の意味での幸福に繋がっているとはかぎらない。ソローが、湖にほど近いウォールデンで解き明かしたのは、簡潔に言えば、幸福は自分の内側にしか見つけることができず、それは、基本的には一般化できないということである。


理想的な音楽とは、言語化しきれない本質的な思いを暗示するものである。例えば、私たちの話す個別の言語は、それを表層化するための手助けやヒントの役割を果たす。言い換えれば、水面下にある感覚や言葉を、水面の上に汲み出すということである。しかし、驚くべきことに、日頃の暮らしでは、主たる役割を持つ言語が、音楽の場合は、副次的や役割を果たすのである。


そして、あるとき、優れた音楽家は、ある大切なことに気がつく。言語の不確実性、そして言葉というものがいかに頼りないものだったのか、と……。どのような方向から見ても、言葉は誤ちを引き起こす要因ともなり、それはまた、言語の限界性がどこかに存在するという意味である。なぜなら、言葉は、音楽以上に受け手側の感情により、その解釈が分たれるからだ。音楽は、言語、詩、絵画では表現しえない抽象的な領域、かつてアンドレ・ブルトンが提唱した「シュールレアリスム」のフィールドに属している。アンナ・B・サヴェージは、すべてではないかもしれないが、このアルバムの制作で音楽の本質の端緒を掴んだのではないかと思われる。

 

本作の地球のタイトルの接頭辞(頭文字)が大文字になっていることは、偶然ではない。強調のためである。そして、内在的には、人間は利己的な生き物であると言わざるをえないが、この地球が、そして、自然や生きものたちが、本来は人間と対等であるという重要な提言を行おうというのである。これは、近年、注目を浴びていたナチュラリストなどという浮ついた言葉で解釈するのは不当かも知れない。なぜなら、それは本質的な意味で、自然は特別な存在ではなく、わたしたちと共存しているのだから。このアルバムが示そうとするのは、最も生命的な根源の本質であり、それを詩や音楽の側面から解き明かそうということだ。このアルバムの核心は、基本的には、現代的な文明の中で忘れられがちな人間の本来のすがたを思い出すということにある。この考え方は、アンビエントや環境音楽に近いと思うが、サヴェージの場合、古典/現代的なフォークミュージックという形で、優雅に、そして、ゆるやかに繰り広げられる。アンナ・サヴェージの英語は、すごくわかりやすく、聞き取りやすい。それは、英語の響きを丁寧に発音し、真心を込めて歌おうという歌手の精神の発露でもある、おだやかでありながら優雅なひびきを持つフォーク・ミュージックと並置され、それが絶妙なバランスをたもっている。

 

アイルランドとの関わりは、もしかすると、現世的な意味だけではなく、それよりも遥かに深いルーツのような意味を持つのかもしれない。もっといえば、中世ヨーロッパ以前のアイルランド的な気風を反映しようというのかもしれない。さらに、現代的な価値観から離れ、本質的な生命の魅力を思い出すという副次的な主題については、アルバムの全体的なサウンドに貫流している。例えば、レコーディングのデジタル処理を除いては、ギター、ストリングス、木管楽器というように、実際の演奏の多くは、アコースティック楽器を中心に行われている。これは、アルバムの「自然との一体化」という主題と融和し、アートワークの期待を裏切ることがない。ボーカル、ギター、ストリングのカルテットのような編成で繰り広げられるフォークミュージックは、見方を変えれば、アイスランドの”amiina”のような室内楽グループのサウンドを彷彿とさせる。アンナ・B・サヴェージは、北欧的な感性に、詩学という彼女にしか持ちえない特性を添える。 そして言葉もまた、音楽の向こう側にぼんやりとゆらめき、心地よい響きを放つ。

 

 

アルバムの音楽は、サウンドスケープを巧みに用い、情景的な音楽で始まりを告げる。「Talk To Me」は、ヴァイオリン奏者であるPual Giger(ポール・ガイガー)のような現代音楽のストリングの特殊奏法から始まり、その向こうからフォークミュージックが始まる。アコースティックギターのサウンドホールの芳醇な響きを生かした的確なマスタリング、そして、それと並置されるサヴェージのボーカルが涼し気な音響を作り出し、アルバムの世界観が広がりを増していく。


時々、ハミングのような歌唱を交え、背後のアコースティックギター、ストリング、薄く重ねられるシンセのテクスチャーが折り重なり、重力のあるサウンドが構築される。注目すべきは、アコースティックギターを多重録音し、音の厚みや迫力を重視していることだろう。さらに大きめの音像を持つボーカルと溶け合うようなミキシングが施されている。しかし、全体的には音楽の重厚さが重視されながらも、各々の楽節に関しては、小さなものが丹念に組み上げられている。

 

例えば、ジャクソン・ブラウンの作品には、一曲の構成の中で、スタジオの録音/ライブの録音という、二つの観点から異なる雰囲気を持つレコードに仕上げるという手法が用いられたことがあった。このアルバムもまた、異なる場所で録音されたようで、作品全体に多彩性をもたらす。聞き手は、実際に、収録曲ごとに別の空間に導かれるような錯覚を覚えるかもしれないし、もしくは、曲ごとに別の新しい扉をひとつずつ開くようなワクワク感を覚えるかもしれない。

 

続く「2-Lighthouse」は、エイドリアン・レンカーが『Bright Future』で用いたような録音技法を駆使する。この曲の場合、ローファイな感覚やデモテープの質感が前に押し出され、まるで山小屋のアナログ機器でレコーディングしたかのような印象を覚える。


カモメが海辺を舞う情景、アイルランドの海辺の波がさざめく情景、心を和ませるサウンドスケープが、アンナ・サヴェージの得意とするフォークソングという形で繰り広げられる。ここには、ーー内側(音楽を奏でる制作者の心)、外側(アイルランドの自然)ーーという二つの情景が対比され、内在的なストーリーテリングのような趣旨を持つ。音楽がイメージを徐々に膨らませていく。


制作者の人生の一部を写真のスナップショットや映画のワンカットのように切り取り、表面的な情景を音楽で表現するという、アルバムの制作において重視される作業の他に、もう一つ、制作者自身のルーツを辿るという試みが含まれている。


例えば、アイルランド音楽(古楽)の中世的な源泉に迫るという側面では、同地の実験的なフォークグループ、Lankum(ランカム)が例に挙げられるが、それに類する試みと言えるかも知れない。ここでは、民族的な打楽器を用い、それをダンスミュージックのように散りばめ、フォークミュージックと同化させる。


「3-Donegel」は、シンガーの二つのボーカルを対比させ、ジャズの系譜にあるドラムを背景とし、中世ヨーロッパの舞踏的な音楽、エスニックに近い民謡的な音楽へと傾倒していく。しかし、そういったマニアックな音楽性は、ポピュラーな節回しや親しみやすいフレーズによって帳消しにされ、聴きやすい、ダンサンプルでグルーブ感のあるポピュラーソングに昇華されている。

 

さらに、続く「4-Big & Wild」は、アイルランドのフォークミュージックのイディオムを駆使して、アルバムの序盤の収録曲と同じように、同地の開けた感覚や自然との調和を表現している。他の曲に比べると、繊細な感覚が、アコースティックギターのフィンガーピッキングや、ボーカルの内省的な感覚と合致し、 優美なハーモニーを形成する。そして、楽曲の構成も巧緻で、長調と短調のフレーズを交差させながら、アイルランドの変わりやすい気候であるとか、日によってそのつど印象を変化させる海峡の情景を巧みに表現しようとしている。それは、さながら個人的な日記の代用でもある。明るい感覚を持っていたかと思えば、それとは対照的に、暗鬱とした感覚に変わる。同曲は、短いインタリュード(間奏曲)のようでありながら、アルバムの前半部と中盤部を結びつけ、次なる曲の流れを呼び込むような重要な役割をなしている。

 

「5-Mo Cheoul Thu」から後半部に入る。フォークギターの基本を習得する際にトロットという演奏法がベースになっている。これは、アレグロの速さのアルペジオをフィンガーピッキングのギターによって演奏するというものである。例えば、有名なところでは、Bob Dylan(ボブ・ディラン)の「Don't Think Twice, It's All Right(邦題: クヨクヨするな)」でも聴くことができる。こういった馬の駆け足のようなリズミカルなテンポを持つアコースティック・ギターの演奏では、アルペジオ(分散和音)が水の流れのようになめらかであることが重要視される。そしてもちろん、演奏時にも、次のコードやスケールへ動く際にもスムーズであるに越したことはない。


この点において、巧みなアコースティックギター演奏が披露され、聴き応えのあるフォークソングが組み上げられる。また、実際的な旋律の進行や和音のスケールもまた、聞き手の内的な感覚に訴えかけるように、センチメンタルな叙情性を創り出す。ボーカルに対するギターの分散和音が切ない響きを生み出し、そして、ボーカリストの繊細なニュアンスの変化がギルバート・オサリバンのような淡いペーソスを創り出すこともある。さらに、ボーカルの情感を上手く演出するのが、弦楽器と木管楽器(クラリネットかオーボエ)のレガート、トレモロで、この曲の上品さと切なさを巧みに引き出している。3分後半からは、曲の表情付けと伴奏の役割であった木管楽器が主旋律に変わり、感動的な瞬間を生み出す。この曲ではポリフォニックな構成とモノフォニックな構成が重なり合い、絶妙なフォークソングが生み出されることになった。


 

「Mo Cheoul Thu」

 

 

 

アイルランド民謡、及び、バクパイプのような楽器にまつわる民俗性は、間奏曲「6-Incertus」に明確に発見することができる。ここでは、ドローンという現代音楽の通奏低音の響きを活かし、次の曲の流れを呼び込む。アルバムという形態は、良い曲を集めただけでは不十分で、一連の流れや波のような構成を制作者の創意工夫を駆使して作り出す必要がある。この曲は、前のインタリュードと並び、他の曲を際立たせるための脇役のような役割を果たしている。鳥の声、自然の奥底に見いだせる雄大なアトモスフィアを、サウンドスケープで切り取り、アルバムの中に起伏をもたらしている。これが全体を聴き通したときのささやかな楽しみとなるはず。

 

 

以降、本作は、序盤から一貫して示唆されてきた簡潔性をもとに、冗長さを排した曲を終盤に並置している。しかし、その中で一貫して、アイルランド民謡などに象徴づけられる音楽の清々しい気風が反映されている。そして、制作者に人生の一部分や実際的な生活から汲み出される感覚を濾過し、それらを起伏のあるエンディングに向かって、一つの線をつなげようとしている。


「7- I Reach For You in Sleep」では、ケルト民謡、東欧のポルカなどでお馴染みの三拍子のリズムを活かし、自然味溢れるフォークミュージックに仕上げている。また、導入部のモチーフとサビのリズムの変化等、構成面のおける対比の工夫を駆使し、華やかさのあるポピュラーソングを創り出す。サビの箇所では、朗らかで、開けたような感覚と、カントリーソングの雰囲気が組み合わされて、重要なハイライトが形作られる。サビの最後に入るコーラスも美しい。また、全体的な曲の枠組みの中で、最後にサビに戻ってくる時、ボーカルがクレスタのような音色と重なり合う時、制作者が示そうとしたであろう生命の神秘的な瞬間のきらめきが登場する。そしてそれは、よりアグレッシヴな印象を持つポップソング「8-Agnes」でハイライトを迎える。

 

音楽自体は、表題曲において最も素晴らしい瞬間を迎える。アルバムの冒頭のモチーフが蘇り、ストリングのトレモロが再び登場するのは、文学における登場人物の再登場のような感じで面白さがある。また、背景となる自然の大いなる存在を背後に、サヴェージは心に響く歌をうたう。それは、アイルランドの自然のなかで歌をつむぐような爽快感がある。さらに、その後、連曲のような構成を作り、「The Rest Of Our Lives」に続き、あっけないほど、さっぱりとしたエンディングを迎える。アルバムの最後に収録されている曲には、本作の副次的な主題である、自然に帰る、あるいは、自然と一体化する、という感覚が音楽の基礎を通じて的確に体現されている。作品の中にある主題や伏線のようなものがしっかりと回収されているのも面白い。

 

アウトプットされるものは一瞬であるにしても、表層に出てくる音楽の背景には、制作者の蓄積と経験が浮かび上がる。それこそが本質とも言え、どうあろうと、隠すこともできなければ、ごまかしもきかない。このアルバムの最大の魅力がどのような点に求められるのかといえば、デジタルサウンドのマスタリングで本質を薄めず、それ以前の人の手の工程に制作の時間の大半を割いたことにある。だから、心地よくて、長く聴いていたいと思わせるものがあるのだ。


 

 

86/100

 

 

 『you & i are Earth』



 Anna B Savage(アンナ・B ・サヴェージ)のニューアルバム『you & i are Earth(あなたとわたしは地球)』はCity Slangより本日発売。ストリーミングはこちらから。

 


ロンドンのロック/フォークバンド、Daughterが、ミドルファームスタジオで収録されたライヴパフォーマンスの音源を収録したデジタルEP『Middle Farm Session』をリリースした。EPの収録曲のミュージックビデオが公開されています。下記よりご覧ください。(各種ストリーミングはこちらから)

 

このオリジナルライヴセッションのミニアルバムは、ドーターのメンバー、エレナ・トンラ、イゴール・ヘフェリ、レミ・アギレラのトリオが、『Stereo Mind Game』の収録曲の多くが録音されたイギリスのダートムーア近郊の”ミドルファームスタジオ”に戻り、シングル曲「Be On Your Way」、「Party」、「To Rage」を含む曲を演奏、それを録音した作品となっている。

 

7年ぶりのスタジオ・アルバム『Stereo Mind Game』は、2023年4月に4ADからリリースされた。ラフ・トレード・ショップの「アルバム・オブ・ザ・マンス」に選ばれた。このアルバムの発売を記念したライブセッション「Daughter's only live show to support Stereo Mind Game」は、インディー小売店のイースト・ロンドンの旗艦店で行われた。

 

3枚目のアルバムには、ロンドンのストリングスを中心とするオーケストラグループ「12 Ensemble」が伴奏を務めたシングル「Swim Back」、「Party」、「Be On Your Way」、さらにカルテットの伴奏による温かみのあるサウンドが自慢の「To Rage」が併録されている。


 

Daughterは従来、ダークな感情を載せてインディーフォーク/ロックソングを歌ってきた。他方、『Stereo Mind Game』は楽観的なアルバムと称される。アイヴォア・ノヴェロ賞にノミネートされたサウンドトラック『Music From Before The Storm(ミュージック・フロム・ビフォア・ザ・ストーム)』(2017年)から数年間、ドーターは当初のロンドンの拠点から離れて、アギレラはオレゴン州ポートランドに、ヘフェリはイギリスのブリストルに拠点を移した。

 

しかし、パンデミックによって悪化した物理的な距離にもかかわらず、ドーターは再び出会い、執筆を続けた。『Stereo Mind Game』の12曲には繋がりと断絶が浸透しており、愛する人や自分自身から文字通り、そして比喩的にも”離れることが何を意味するのか”に取り組んでいる。ヘフェリとトンラのプロデュースによる最新作『Stereo Mind Game』は、デヴォン、ブリストル、ロンドン(イギリス)、サンディエゴ(カリフォルニア州)、ポートランド(オレゴン州)、バンクーバー(ワシントン州)など、複数の場所で作曲・レコーディングされた。


 

「Live at Middle Farm Studios」 

 



トロントを拠点に活動するシンガー・ソングライター、タマラ・リンデマンのプロジェクトThe Weather Station(ウェザー・ステーション)は、今週金曜日にファット・ポッサムからニューアルバム『Humanhood』をリリースする。発売日を目前に新曲をチェックしてほしい。

 

今回、彼女は最後のシングル「Mirror」を公開した。フィリップ・レオナールがこの曲のビデオを監督した。


リンデマンは歌う。 「あなたは畑に化学雨を降らせ、自分の痛みを超越するために私の腕を切った。


「この対決は穏やかなものだ。「しかし、人生と自然は巨大なバイオフィードバック装置だ。しかし、人生と自然は巨大なバイオフィードバック装置なのだ。そしてあなたも反応する。それが常に起こっていることなんだ。私が "神は鏡である "と言ったのは、そういう意味なんだ」


リンドマンはこう付け加えた。「幻想や認知的不協和を支える架空の足場のように、曲が歪んだり崩壊したりするようにしたかった。最後には、バンドは文字化けしてバラバラになり、シンセとストリングスのテクスチャーが宙吊りになる。曲の中で私が話していた光かもしれない」


「Mirror」

 

 

The Weather Station、ニューアルバム『Humanhood』を発表 1月17日にリリース

 

©V Haddad 

 

Floristはニューアルバム『Jellywish』を発表した。

 

 ニューヨークのインディー・フォーク・バンドの2022年発表のセルフタイトルに続くセカンドアルバムは、Double Double Whammyから4月4日にリリースされる。 本作には、先にリリースされた「This Was a Gift」に加え、魅惑的なリードシングル「Have Heaven」が収録されており、コハナ・ウィルソンがアニメーションを手がけたビデオと同時に公開されています。 アルバムのアートワーク(V Haddadによる)とトラックリストは下記よりご覧ください。


シンガー/ギタリスト/ソングライターのエミリー・スプラグは、このアルバムについて次のように説明しています。

 

「本当に混沌としていて、混乱していて、多面的なものを優しく表現している。 "私たちの世界にインスパイアされたこのテクニカラーと、私たちの世界から脱出するために使えるファンタジーの要素がある」


「”Have Heaven”について、スプレイグは次のように付け加えた。「私たちは、人生と個人の知覚の間の限界空間を浮遊する観察的な熱の夢の中に入っていく。 私たちの魂が生き、着地するための平和な場所を望むことを通して、喜びと苦しみの中で私たちがつながっていることへの考察がある。” Have Heaven”は、このアルバムの世界が常に明晰であるとは言い難く、むしろ私たちの周りに渦巻く魔法と死の世界の中に溶け込んだ視点であることを立証している。 コーラスは、これらの世界と、私たちが存在しなければならないシステムに縛られながら、互いに生き残ろうとする地上の姿との、よりよい共生を嘆願する聖歌である」



「Have Heaven」




Florist 『Jellywish』

 

Label: Double Double Whammy

Release: 2025年4月4日


 Tracklist


1 Levitate 
2 Have Heaven
3 Jellyfish
4 Started To Glow
5 This Was A Gift
6 All The Same Light
7 Sparkle Song
8 Moon, Sea, Devil
9 Our Hearts In A Room
10 Gloom Designs

最初の掲載時に記事に誤りがございました。訂正とお詫びいたします。


バーモント州のシンガーソングライター/ギタリスト、Lutalo(ルタロ・ジョーンズがニューシングル「I Figured」を公開した。この新曲は最新作のアウトテイクとして発表された。(ストリーミングはこちらから)


昨年、ルタロはオルタナティヴフォークを中心とするデビューアルバム『The Academy』をリリースし、ニルファー・ヤーニャのツアーサポートを務めた。2025年、ルタロは北米とカナダのツアーを予定している。


ルタロ・ジョーンズはアメリカ文学屈指の名作「グレート・ギャツビー」で知られるスコット・フィッツジェラルドの母校の卒業生。デビューアルバム『The Academy』では、セントポール・アカデミーの学生生活を題材に選び、郷愁的なインディーフォークサウンドを確立している。



「Figured」




Tour Dates:

01/14/25 - Toronto, ON @ Monarch 
01/16/25 - Chicago, IL @ Schubas 
01/17/25 - Milwaukee, WI @ Cactus Club 
01/18/25 - Minneapolis, MN @ 7th St Entry 
01/21/25 - Seattle, WA @ Barboza 
01/22/25 - Portland, OR @ Mississippi Studios 
01/24/25 - San Francisco, CA @ Bottom of the Hill 
01/25/25 - Los Angeles, CA @ The Echo 
01/27/25 - Phoenix, AZ @ Valley Bar 
01/30/25 - Houston, TX @ White Oak Upstairs 
01/31/25 - Austin, TX @ Mohawk Indoors 
02/01/25 - Denton, TX @ Rubber Gloves 
02/04/25 - Atlanta, GA @ The Earl
02/06/25 - Carrboro, NC @ Cat’s Cradle (Back Room)
02/07/25 - Washington, DC @ Songbyrd 
02/08/25 - New York, NY @ Elsewhere Zone One
02/14/25 - Burlington, VT @ Radio Bean



Review:



 


フリコは、デビューアルバム『Where we've been, Where we go from here』から新曲「Pride Trials」を発表した。繊細でありながら、心に染みるようなインディーフォークソングである。


「"Pride Trials"は、実はFrikoの最初の曲のひとつ」とバンドは声明で説明している。「2019年後半にシカゴのDIYショーで演奏し始め、その頃にレコーディングもした。多くの変容を経て、最終的に私たちが心から愛する場所にたどり着いた。これは僕らにとってとても特別な曲なんだ」


『Where we've been, Where we go from here』のデラックス・エディションはATOから11月22日に発売される。


「Pride Trials」

 


現在、ブルックリンを拠点に活動し、沖縄にルーツを持つロサンゼルス出身のシンガーソングライター、William Alexander(ウィリアム・アレクサンダー)が11月22日にニューアルバム『Solo』をSweet Soul Recordsからリリースします。

 

『ミュージシャンズ・ミュージシャン』として高く評価されるウィリアム・アレクサンダーは、豊かなリズム感覚とロサンゼルスの進歩的なアンダーグラウンドシーンに深く根ざした経験から、これまでにAndre 3000,Connan Mockasin、Laraaji, John Carroll Kirby, Carlos Nino,Mndsgn,Nick Hakimなど、数々の著名なアーティストとのコラボレーションや録音を行ってきた。

 

今週末に発売予定である『Solo』は、そんな彼の広大な芸術的な世界を通して、内省的なベッドルームフォークの真髄を表した作品です。Jessica Prattの時代を超越した感覚、Jose Gonzalesの独特なギタープレイなどを参照しながら、独自のソウルフォークを体現した先行シングル「ANWT」に始まり、「Sunflowers」「Blue Skies」「WDWG」など彼の初期作『New York Songtapes, Chapter Ⅰ: ”The Uncut Tree"」に収録された力強くざらついたソウルサウンドのソウルサウンドの楽曲を柔らかなムードのアコースティックサウンドに移行した楽曲が続く。


2ndシングル「Ghosts」は、サンバ、ボサノヴァ、ローファイなど多様なインスピレーションを独自のソウルフォークに昇華した親密な内省的対話と切ないハーモニーで迫る珠玉の一曲です。「Mediation」「Selfness」ではアンビエント・ミュージック的な要素も加わり、リスナーを安らかな瞑想へと誘う。ラストを飾る「Time」では、繊細で表現豊かなギタープレイとともに自己と向き合うことの重要性を優しく語りかけ、リスナーをさらに内面的な探求へと誘う。その素朴でありながら、洗練された豊かなヴォーカルトーンとナイロン・ギターの流れるようなリズムは、若き日のCaetano Veloso、あるいはErasmo Carlosといった70年代のブラジル・トロピカリアの巨匠たちをありありと彷彿とさせ、リスナーの琴線に深く触れるものがある。

 

 

「Anwt」

 




William Alexander 『Solo』



レーベル:Sweet Soul Records

発売日:2024年11月22日


Tracklist:

1.ANWT

2.In Your Hands

3.Emancipate

4.Sunflowers

5.Cycles

6.Blue Skies

7.WDWG

8.Ghosts

9.Mediation

10.Selfness

11.Time


 

配信リンク:  https://lnk.to/WXXL_Solo



William Alexander Profile:

 

沖縄にルーツを持つSSW,William Alexander(ウィリアム ・アレクサンダー)は、その広大な芸術的世界を通して、内省的なベッドルームフォークの真髄を表現する。初期の作品に見られた力強くざらついたソウルから、柔らかなムードへと移行し、リスナーを内なる探求へと誘う。

 

素朴でありながら洗練された豊かなヴォーカルトーと、ナイロン弦ギターの流れるようなリズは若き日のCaetano Veloso、Erasmo Carlosといった70年代のブラジル・トロピカリアの巨匠たちを彷彿とさせる。

 

彼の楽曲は自己実現や様々な形の愛をテーマに、観察と目に映らぬ神秘的な概念との境界を往来する。現代のファストファッションや自己顕示が主流となる風潮の中で、逃避ではなく、むしろ音楽や自分自身、そして、心の奥深くにひそむ魂の叫びに向き合う勇気ある選択である。

Haley Heyndrickx 『Seed Of a Seed』

 


 

Label: Mama Bird Recordings Co.

Release: 2024年11月1日

 

Review

 

ポートランドのギタリスト、ソングライター、ヘイリー・ハインデリックスは、三作目のアルバムで自らのフォーク/カントリーの形式を完全に確立している。ヘイリー・へインドリックスにとって音楽制作の動機となるのは、内向きの感覚であり、ナビゲーションであり、みずからの内的な声に静かに耳を傾け、そして純粋な音楽として昇華することにある。ニュース、ソーシャルメディア、または絶え間ない自己疑念など、私達を取り巻く喧騒から身を守るためのシェルターでもある。しかし、それらは決して閉鎖的にならず、開放的な自由さに満ちあふれている。

 

アルバムは、いくつかのテーマやイメージに縁取られているという。花(ジェミニ)、空想(フォックスグローブ)、森(レッドウッズ)、友人(ジェリーの歌)という地点を行き来するかのように、へインドリックスの歌とアコースティックを中心とするギターは鬱蒼とした森の中に入り、果てしない幻想的な空間へとナビゲートする。その導き役となるのは、妖精ではない。彼女自身の内的な神様であり、それらの高次元の自己がいわば理想とする領域へと誘う。

 

へインドリックスの音楽はオープニングを飾る「Gemini」から明確である。フィンガーピッキングのなめらかなアコースティックギター、ナイロン弦の柔らかな響き、そして何よりへインドリックスのソフトな歌声が心地良い空気感を生み出す。ツアー生活でもたらされた二重の生活、時間の裂け目から過去のシンガーが現在のシンガーを追いかけようとする。過去の自分との葛藤やズレのような感覚が秀逸なフォーク・ミュージックによって描出される。しかし、御存知の通り、「数年前の誰かは明日の誰かではない」のである。その違いに戸惑いつつ、彼女は自分の過去を突き放そうとする。しかし、その行為はどうやら、歌手にとっては少し恥ずべきことのように感じられるらしい。背後に遠ざかった幻影をどのように見るべきなのだろうか。そういった現在の自己を尊重するためのプロセスやステップが描かれている。秀逸な始まり。

 

フォーク・ミュージックから始まったアルバムはディラン、ガスリー、キャッシュ以前のハンク・ウィリアムズのような古典的なカントリーへと舵取りを果たす。「Foxglove」はトロットのリズムに軽快なアコースティックギターのフィンガーピッキングを乗せ、軽快な風のような感覚を呼び起こす。カントリーの忠実な形式を踏襲したアルペジオを見事であり、歌手の歌うボーカルの主旋律とのカウンターポイントを形成している。古典的なカントリーソングには、時々、ストリングスのレガートが重なり、ロマンチックな雰囲気を帯びる。鬱蒼とした森の中を駆け抜けるかのようである。曲の最後は、神妙なコーラスが入り、ほど良い雰囲気を生み出す。

 

その反面、タイトル曲では、アップストロークのアコースティックギターでしんみりとしたフォーク・バラードを提供している。この曲でもナイロン弦が使用されており、裏拍を強調するリズムカルなギター、そして艷やかな倍音がこの曲の全体的なアトモスフィアを醸成している。美しいビブラートを印象付けるへインドリックスのボーカル、そして、こまやかなフィドルの役割をなすバイオリンの音色が、これらのフォークミュージックの音楽性をはっきりと決定付けている。この曲では、フォーク/カントリーに加え、60、70年代のUSポピュラーの音楽的な知識が良質な音楽性の土台を形作っている。例えば、ジョニ・ミッチェルの『Blue』のような。

 

 

「Mouth Of A Flower」は、古きアメリカへの讃歌、または、現代の音楽として古典的なフォーク/カントリーが、どのような意義を持つのかを探求したような一曲である。古い時代のプランテーション、農場、農夫等、失われたアメリカの文化への幻想的な時空の旅を印象付ける。続く「Spit In The Sink」は、序盤の収録曲の中では、かなり風変わりな一曲である。低音部のリズム的な役割を担うギター、高音部のリード/アルペジオを中心とするアコースティック/エレキギターの演奏をベースにし、インディーロック、アヴァンフォーク、ジャズ、ララバイのような形式が込められている。金管楽器(フレンチホルン)の導入は、ジプシー音楽の要素を付け加え、ヨーロッパ大陸を遍歴するユダヤ人の古典的な流しの楽団の幻影を呼び覚ます。そして、基本的に、歌手は内的な感覚をリリスティックに吐露しているが、その反面、内にこもったようなビブラートを披露する。ヘイリーの声には、派手さはないけれど、見事なボーカルの技巧が披露されている。いわば「大人向けのフォーク/カントリー」といった感じとして楽しめるに違いない。

 

 

ヘイリー・ヘインドリックスのフォーク音楽には、ハンク・ウィリアムズのような古典的なアメリカの民謡よりも更に古い移民としての音楽性が何らかの鏡のように映し出される。とりも直さず、これらはニューヨークから北部に何千キロにもわたって連なるアパラチア山脈に住んでいたイギリスやアイルランドからの移民が山小屋でフォーク・ミュージックを演奏していた。


これらの共同体の中には、実は、黒人の演奏家もいたという噂である。少なくとも、ヘイリーの音楽は、一世紀以上の米国の隠れた歴史を解き明かすかのように、長い文明の足取りをつかもうとする。「Redwoods」では、CSN&Y、サイモン&ガーファンクルといった60、70年代のフォークロックの形式を通じて、その中にそれよりも古い20世紀の詩の形式を取り入れる。これらは民謡特有の歌唱法ともいうべきで、ビブラートの音程をわざと揺らし、音程そのものに不安定な要素をもたらす。アメリカの古い民謡などで聴くことが出来る。しかし、これらは、ケルト民謡やノルウェーのノルマンディ地方などの民謡にもあり、有名な事例では、スイスのヨーデルのような民謡の形にも登場する。いわば「ユーラシア大陸発祥の歌唱法」である。



そういったアメリカの歴史が英国の清教徒の移民や、その船にオランダ人も乗っていたこと。アステカ発祥の南アメリカとの文化、メキシコ等の移民の混交が最初の自由の女神のイメージが作られていったことを、このアルバムは顕著に証明付ける。「Redwoods」は単なる歴史的なアナクロニズムではなく、この国家の音楽的な文化の一部分を巧みに切り取ったものなのである。更に、この曲には、アステカ文明の「太陽の神様への称賛」を読み解ける。しかし、それらの自然崇拝は一体どこへ消えたのだろうか。それよりも権威的な崇拝が21世紀以降のアメリカ国家の全体を支配してきたのは事実であろう。アニミズム(自然信仰)は、一般的な宗教より軽視される場合が多いと思われるが、現代人が学ぶべきは、むしろアニミズムの方かもしれない。これは物質文明が極限に至った時、この言葉の意味がより明らかになることと思われる。


アルバムの後半では、聴きやすいフォークミュージックが提供される。「Ayan's Song」では、ジャズのスケールを低音部に配し、フォークジャズの範疇にある旋法を駆使しながら、親しみやすい音楽を生み出す。この曲でも、小節のセクションの合間にシンコペーションの形で伸びるヘイリーのボーカルは美しく、ほんわかした気分を掻き立てる。この曲には融和の精神が貫かれている。分離ではなく、融和を描く。言うのは簡単だが、実行するのは難しい。しかし、この曲は音楽や芸術が、政治のような形態よりも部分的に先んじていることを証左するものである。

 

ヘイリー・へインドリックスのギターの演奏は、フラメンコギターに系統することもある。「Sorry Fahey」では、二つのアコースティックギターの演奏を組み合わせ、見事なフレットの移動を見せながら和音を巧みに形成していく。ヘイリーのボーカルはイタリアのオペラに近い歌唱法に近づく場合もあり、西欧的な音楽性を反映させているのは事実だろう。 また、へインドリックスは、現代テクノロジー、消費社会の中で、現代人が自然主義からどれほど遠ざかっているかを示す。それは人類が誤った方向から踵を返す最後の機会であることを示唆するのだ。

 

この世のあらゆる病は、自然主義から遠ざかることで発生する。時間に追われること、自分を見失うこと、倫理にかき乱されること。人類はほとんどこういったものに辟易としているのだ。「Jerry's Song」は、現代人が思い出すべきもの、尊重すべきものが示唆されている。この曲は、開けた草原のような場所の空気、あるいは山岳地帯の星空の美しさを思い出させてくれる。

 

アルバムのクローズ「Swoop」も素晴らしい一曲。子供の頃にはよく知っていたが、年を経るにつれて、なぜか少しずつ忘れていくことがある。現代人は何を求めるべきなのか、そして私達が重要としているのは本当に大切なことなのだろうか。改めて再考する時期が来ているのである。

 

 

 

84/100

 


 


 

ロンドンのシンガー・ソングライターは、2ndアルバムの続編となる『You & i are Earth』を発表し、アンナ・ミケとのコラボレーションによる素晴らしいリード・シングル 「Agnes 」を公開した。

「この曲は、アイルランドの民話、セラピーの実践、そしてあるつぶやきにインスパイアされたものです」とサヴェージは説明し、こう続けた。「セラピーでは、瞑想とビジュアライゼーションをした。同時に、セルキーとフェアリーについて読んでいたのだが、このツイートを読んだとき、民間伝承が私自身の治療体験と融合するのを感じた。潜在的な安堵感の後に深い恐怖が襲ってくる瞬間、そして "はぐれたソッド "から解放されるために服を裏返す行為なのだ」

 

この歌は、いやアグネス自身は、私がこのレッスンで感じた魅力と恐怖、喜びと畏敬の念を体現している。いつでもここに来ていいんだよ」という慈悲深さと優しさ、そして「彼女は私を(地面の下に)閉じ込めるんだ...私をここに置いていく」という深い恐ろしさを同時に感じながら、私は多重性を一度に抱え込み、それに耐える方法を学ぼうとしているような気がした。彼女の音楽は大好きだし、彼女のボーカル/歌詞は繊細でありながら幽玄であり、力強くもあり、少し不気味でもある。このワイルドな曲を引き受け、アグネスに命を吹き込んでくれた彼女にとても感謝している。

 

 

「Agnes」

 

サヴェージはまた、『You & i are Earth』は "ある男性とアイルランドへのラブレター "だとも語っている。このアルバムには、クラッシュ・アンサンブルのケイト・エリスとカイミン・ギルモア、ランカムのコーマック・マクディアマダ、そしてミケがヴォーカル、ストリングス、ハルモニウム、ブズーキ、大正琴、クラリネットで参加している。プロデュースはジョン・'スパッド'・マーフィー(ランカム、ブラック・ミディ)。

 

リードシングル「アグネス」の苔むしたリリック・ビデオは、この曲の伝染するような素晴らしさをとらえている。『You & i are Earth』は1/24にCity Slangからリリースされる。

 

 



Anna B Savageが2025年の幕開けに『You & i are Earth』をリリースする。ロンドンのシンガーソングライターは本日、アコースティックギターをフィーチャーしたフォークナンバー「Lighthouse」を発表した。10月にアンナ・ミーケをフィーチャーしたシングル「Agnes」に続く作品となる。

 

「私は一人で終わると思っていたけれど、私を抱きしめてくれて、安全で、そしてまだ夜の独立した船のようなものだと感じさせてくれる人を見つけたという優しいラブソング」とミュージシャンは説明する。「プロダクションも曲のように比較的シンプルにしようとした。とにかくいい感じ」


Anna B Savageの『U & I ARE EARTH』は2025年1月24日にCity Slangからリリースされる。

 


「Lighthouse」

 

 

Anna B  Savage『You & i are Earth』

Label: City Slang

Release: 2025年1月24日


Tracklist:

1 Talk To Me

2 Lighthouse

3 Donegal

4 Big & Wild

5 Mo Cheol Thú

6 Incertus

7 I Reach For You In My Sleep

8 Agnes

9 You & i are Earth

10 The Rest Of Our Lives

 

Pre-order: https://annabsavage.lnk.to/YaiaEYD

 

©Tatjana Rüegsegger


ロンドンを拠点に活動するシンガーソングライター、Sophie Jamieson(ソフィー・ジェイミーソン)が儚くも美しい、そして力強さに満ち溢れたインディーフォークソング「Camera」を発表した。このナンバーは、彼女のセカンドアルバム『I still want to share』の第2弾シングル。ジェイミーソンとマレナ・ザヴァラの共同監督によるビデオ付き。以下でチェックしてほしい。


「この曲は、失恋したときに書いた。抱かれたくないのにすべてを抱こうとしていたときに書いたの」とジェイミーソンは声明で説明している。落ち着いていて瞑想的なインディーフォークソング。アコースティックギターに加えて、チェロ、ヴァイオリン、ヴィオラが取り入れられ、ドラマティックな印象を強調する。ジェイミーソンは短い物語を紡ぐかのように、この曲を丹念に歌い上げている。繊細なボーカルであるものの、そこには奇妙な力強さが感じられる。

 

「私は、このニューシングルで断片の周りに輪郭を描くことができ、それらをフレームに収まるようにしたかった。私の中の何かが、ぼやけたままにしておけば平穏が得られるとわかっていた。この曲は、私が受け入れることのできる愛よりも、もっとシンプルで、もっと重層的で、もっとつかみどころのない愛を定義しようとしたときの憧れであり、身もだえするような思い」


Sofie Jamiesonによる『I still want to share』は1月17日にベラ・ユニオンからリリースされる。

 

 

「Camera」

©︎Juliette Boulay


フィラデルフィアのソングライター/ギタリスト、グレッグ・メンデス(Greg Mendez)は、10月18日(金)にリリースされるEP『First Time / Alone』に収録される「Alone」をミュージックビデオとともに公開した。この曲は新作とともに発表された先月の「First Time」に続くシングルとなる。先日、シンガーソングライターはデッド・オーシャンズと新しい契約を発表した。

 

グレッグ・メンデスはエリオット・スミス等のサッドコアの系譜にある憂いのあるフォーク・ソングをスラリと書く。もちろん、ギターのストロークにはカントリーの素朴な雰囲気が漂う。今回のシングルでもローファイに触発されたアナログなサウンドが個性的な空気感を放っている。

 

グレッグ・メンデスは、ロメルダとトンバーリンとの2025年2月のツアー日程も発表している。


「Alone」

 

The Weather Station


The Weather Station(トロントを拠点に活動するSSW、タマラ・リンデマンのプロジェクト。メンバーはその都度入れ替わる)が7thアルバム『Humanhood』を発表した。ファーストシングル「Neon Signs」を公開した。MVはリンデマンはジャレッド・ラーブが共同監督している。


「"ネオンサイン "を書いたのは、混乱し、逆さまになり、欲望さえも崩れ去り、解離が、間違ってはいるが、まだ物事をひとつにまとめていた物語からあなたを切り離す瞬間だった。真実でないものが真実であるものよりもエネルギッシュな強さを持っているように見える方法、気候の緊急事態の瞬間に広告で溢れかえっていることの混乱、強制が愛の言葉で包まれている人間関係の混乱。しかし結局のところ、すべて同じ感覚ではないだろうか」


リンダマンはマーカス・パキンと『Humanhood』を共同プロデュースし、2023年秋にカンタベリー・ミュージック・カンパニーでレコーディングした。

 

アルバムの主なバックバンドは、ドラマーのキーラン・アダムス、キーボーディストのベン・ボワイエ、パーカッショニストのフィリップ・メランソン、リードと管楽器のスペシャリストであるカレン・ウン、そしてベーシストのベン・ホワイトリー。本作には、そのほか、サム・アミドン、ジェイムズ・エルキントン、ジョセフ・シャバソンも制作者として名を連ねている。

 

 

「Neonsign」

 

 

 

The Weather Stationの新作アルバム『Humanhood』は2025年1月17日にFat Possumから発売される。

 

 

The Weather Station『Humanhood』

 
Label: Fat Possum
Release: 2025年1月17日



Tracklist:

1. Descent
2. Neon Signs
3. Mirror
4. Window
5. Passage
6. Body Moves
7. Ribbon
8. Fleuve
9. Humanhood
10. Irreversible Damage
11. Lonely
12. Aurora
13. Sewing


Florist
©︎V Haddad

ニューヨークのフォークバンド、Floristがニューシングル「This Was a Gift」をリリースした。下記からチェックしてほしい。


「"This Was A Gift "は、人生の困難な季節を親しい人たちと一緒に過ごすことを歌ったラブソングです。この曲は、失恋や喪失に傷つきやすくなり、最終的な結末を受け入れ、コミュニティに感謝するようになる過程を映し出し、描写した音楽的な押し合いへし合いである。バンドはこの曲をレコーディングする前に、2年間のライブ・ツアーを通してこの曲と共に成長し、その意味の根をさらに深めていった」


「スプレイグはこう付け加えた。「私たちは常に個人的なものを持ち込んで、その中を泳ぎきろうとしながら、もがき、成長していくのです」


「This Was a Gift」

 

©︎Luis Vidal


ロンドンを拠点に活動するプロデューサーでシンガー・ソングライターのLiza Lo(リザ・ロー)が、4thシングル「Gipsy Hill」を発表した。「A Messenger」、「Confiarme」「What I Used To Do」に続く作品。限定7インチも同時に発売された。アーティストサイトとライブ会場で現在販売中。


リザ・ローは、基本的にはアコースティックギターを中心とするポピュラーなフォークソングを制作している。時々、スペイン語の歌詞が登場したり、ネオソウルの要素が登場したりというように、一つの枠組みの中で自由で大らかな表現性を提示している。歌詞については、現代の多くのSSWと同様、個人的な人生や恋愛に関する思いを交えつつ、切ないナンバーを制作している。

 

UKポピュラーの新星、リザ・ローの5年に及ぶサウス・ロンドンでの暮らしにインスパイアされたという「Gipsy Hill」は、故郷のように感じていた場所からのゆっくりとした別離の感覚に焦点を当てている。アコースティック・ギターと優しいストリングス・アレンジが哀愁を漂わせる。


ニューシングル「Gipsy Hill」はアウトロのあとに余韻がある切ないバラードソングだ。オーケストラストリングスに支えられながら段階的に上昇していく旋律とスケールがソングライターの沸き立つようなエモーションを象徴している。同楽曲について、リザは次のように語っている。


「この5年間で、私は真の親友との友情から両親の結婚、そして私自身のロマンチックな恋まで、ここで変化した親密な関係の多くを失ったわ。この曲は、幼い頃の台所から、親友の家のベランダ、そしてこの変化を学ぶために対処した後の私の偏狭なコミュニケーションまでを描写した、深い悲しみに満ちた曲なの。胸が張り裂けそうになるけれど、愛とは人生において本当にすべてであり、だからこそ心に響くのだと思う。親友を突然脳障害によってで失い、これまでとは違う生き方を学ばなければならなくなった人々のための歌、それが『Gipsy Hill』なのよ」

 

10月からはUKのインストア・ツアーに出るというリザ。彼女のBandcampおよびライヴ会場限定で購入可能な7インチも本日リリースとなっているので、気になる人はぜひチェックしてみてほしい。

 


Liza Lo 「Gipsy Hill」- New Single



配信リンク:https://bfan.link/gipsy-hill


 

A. Gipsy Hill 03:54


Liza Lo: vocals


Sean Rogan: acoustic guitar, electric guitar and piano Maarten Cima: electric guitar
Tom Blunt: drums


Freek Mulder: bass guitar


Ben Trigg: cello and string arrangement


Written by Liza Lo and Melle Boddaert



B. What I Used To Do 03:04


Liza Lo: vocals


Sean Rogan: electric guitar and backing vocals


Maarten Cima: electric guitar


Tom Blunt: drums


Freek Mulder: bass guitar


Wouter Vingerhoed: synths and acoustic guitar


Hebe Vrijhof: piano


Written by Liza Lo, Hebe Vrijhof and Wouter Vingerhoed



Produced by Liza Lo and Jon Kelly


What I Used To Do co-production by Wouter Vingerhoed


Recorded at Studio 13 in West London


Mixed by Jon Kelly


Mastered by
Caspar Sutton-Jones at Gearbox Records


Photographed by Luis Vidal

 


【Liza Lo】

 

スペインとオランダで育ち、現在はロンドンを拠点に活動するシンガー・ソングライター、プロデューサー、ミュージシャン。

 

親密で詩的な独自の音楽世界を創り出す彼女は、ドーター、マロ、ビリー・マーティンなどからインスピレーションを受け、生々しいヴォーカルと誠実なソングライティングで聴く者を内省と静寂の世界へと誘う。


最新EP『flourish』は、Spotifyの「New Music Friday UK」、「NL」、「BE」にセレクトされ、「the most beautiful songs in the world」プレイリストでも紹介された。

 

今年5月にGaerbox Recordsと契約。「A Messenger」「Confiarme」「What I Used To Do」「Gipsy Hill」の4曲のデジタルシングルをリリース。現在、西ロンドンの「スタジオ13」で、ジョン・ケリー(ポール・マッカートニー、ケイト・ブッシュ)とバンドと共にアルバムの制作に取り組んでいる。

 

 

「Confiarme」- Live