この曲はバンドがプロデュースし、最新アルバム『Below the Waste』のレコーディング中にアイルランドでジョン'スパッド'マーフィーがミックスした。この曲には、シンガー/ギタリストのロッティ・ペンドルベリーが監督・編集したビデオが付属している。
「アイルランドでジョン'スパッド'マーフィーと一緒に『Below The Waste』のゴシップ・レコーディングを始めたんだ。ダブリンで録音したものを、ロンドンでルビーと一緒に作り直したんだ。エレクトロニックなポテンシャルに寄り添い、サウンド的にまったく違うことをしたかったんだ。リリックでは、自然のイメージを、伝聞や破壊的な行動を熟考するメタファーとして使っている」
今年、ゴート・ガールは新作アルバム『Below The Waste』をラフ・トレードから6月にリリースした。
バンドが曲を組み直したということは、レコーディングの趣向に、ライブセッションのリアルな質感を付け加えたことを示唆している。それは卓越性や完璧主義ではなく、程よく気の抜けた感じの音楽に縁取られている。アルバムでは、Guided By Voices、Throwing Musesといった90年代ごろのオルトロックのテーマ、アート・ポップやシューゲイズ風のギターの音色が顕著に表れている。
アルバムのオープナー「I'll Be Fine」では、心地よくセンチメンタルなアンサンブルがライヴセッションのような形で繰り広げられる。複数のギターの録音を組み合わせて、エモな響きを生み出し、ストレリングスのアレンジを添えて叙情的な響きを生み出す。音楽性は抑えめであり、派手さとは無縁であるが、良質なオルトロックソングだ。さらに、このバンドがコクトー・ツインズの音楽性を受け継いでいることは、続く「What You Made」を聴くと明らかである。彼らはJAPANやカルチャー・クラブのようなニューロマンティックの要素を受け継いでいる。それはノスタルジアをもたらすと同時に、意外にもフレッシュな印象を及ぼすこともある。
アワー・ガールは、比較的、現実的なテーマを探っているが、アルバムの音楽はそれとは対象的に夢想的な雰囲気に縁取られている。ギターロックによって色彩的なタペストリーを描き、それを透かして、理想的な概念に手をのばすような不思議な感覚でもある。「What Do You Love」は淡々とした曲にも思えるが、ダイナミクスの変化が瞬間的に現れることもある。ダイナミックスの変化はボーカルとギターのコントラストによって生じる。Wednesday、Ratboysといったオルトロックの気鋭の音楽性に準ずるかのように、絶妙なアンサンブルを発生させることがわる。そして、それは、まったりとした音楽性とは対象的なギターのクランチな響きに求められる。彼らの優しげな感覚を縁取った「The Good Kind」は、むしろこのバンドがロックにとどまらず、Future Islandsのようなオルトポップバンドのような潜在的な魅力を持つことを表す。
ギターロックとしても聴かせどころが用意されている。「Something About Me Being A Woman」は、現代的な若者としてのセクシャリティを暗示しているが、幽玄なギターのデザインのような音色によって抽象的な感覚が少しずつ広がりをましていく。ゆったりしたテンポの曲であるけれど、ドリームポップ風のアプローチは、音楽の懐深さと味わい深さを併せ持っている。特に、バンドアンサンブルを通じて最も感情性が顕著になる3分以降の曲展開に注目したいところ。中盤から終盤にかけては、BPMを意図的に落とした曲が続いている。続く「Relief」、「Unlike」は、現代的な気忙しいポップソングの渦中にあり、安らぎと癒やしを感じさせる。微細な音を敷き詰めるのではなく、休符に空間や空白を作りながら、夢想的な音楽世界を生み出す。
The Horrorsはニューアルバム『Nightlife』のセカンドシングル「Trial By Fire」をリリースした。ゴシック、ポストパンク、インダストリアル、ダンスロックが結びついたアンセミックなナンバーだ。
バンドはプレスリリースで、このニューシングルについて次のように語っている。「Trial By Fire」は『Night Life』の攻撃的な曲のひとつで、僕らの2つのインダストリアルEPと新作の間のギャップを埋める内容なんだ。リースはサウスエンドで孤独にデモを作り始めた。この曲は、人生につきまとう呪いについて歌っています。ホラーズにとっては、毎日がハロウィンなんだ」
『Nightlife』はバンドにとって8年ぶりの新作となり、ラインナップを変更した。ホラーズの最後のアルバムは2017年の『V』だが、2021年には『Lout』と『Against the Blade』のEPをリリースしている。バンドにはまだヴォーカルのファリス・バドワンとベーシストのリース・ウェブが在籍している。これら結成時のメンバーに、キーボードのアメリア・キッドとドラムのジョーダン・クック(バンドTelegram)が新たに加わった。オリジナル・メンバーのジョシュア・ヘイワードもアルバムでギターを弾いている。オリジナル・メンバーのキーボーディスト、トム・ファース(2021年にバンドを脱退)とドラマーのジョー・スパージョンは不在だ。
オルトロックとしてのヘヴィーさを強調した前作に比べると、落ち着いた音楽性が際立ち、安定感のあるアルバムとなっている。そしてどうやら、ハイファイなサウンドのみに焦点が絞られるわけではなく、「Thinking of You」ではスラッカーロックに近いローファイに近いスタイルを選んでいる。しかし、サビの部分では他曲と同じように清涼感に溢れるボーカルが登場する。
「Dream of Falling」は、アメリカのスタンダードなポピュラー音楽を基にして、普遍的なサウンドを探求し、心地よいドラムのミュートが、ギター/ボーカルのマイルドな感覚を引き立てる。「Salt In Wound」は、オルタナティヴ・ロックとして聴かせるものがあり、それは明るさと暗さの間を揺れ動くようなボーカルの旋律進行に反映されている。これらが、従来のベッドルームポップのスタイルと的確に結び付けられている。未知の音楽への挑戦は、この後も部分的に登場する。
シカゴのFrikoは、デビューアルバム『Where we've been, Where we go from here』のデラックス・エディションを発表した。ATOから11月22日にリリースされ、スタジオ・アウトテイクのデモ曲、ライヴ音源、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの「When You Sleep」のカヴァー、新曲「If I Am」を含む11曲のボーナス・トラックが収録されている。試聴は以下から。
「If I Am」は、この拡大版に収録されている他の新曲とともに、2019年まで遡ることができる」とフリコは説明した。「シカゴのDIYや小さなクラブでのライヴで最初に演奏した曲のいくつかだ。レコードのために曲を書いた後、置き去りにされたようなものだったけれど、バンドとして最初に書いた曲の一部だったから、日の目を見ることができてとても嬉しく思っています」
Friko 『Where we’ve been, Where we go from here (Expanded Edition) 』
Label: ATO
Release: 2024年11月22日
Tracklist:
1. Where We’ve Been
2. Crimson to Chrome
3. Crashing Through
4. For Ella
5. Chemical
6. Statues
7. Until I’m With You Again
8. Get Numb To It!
9. Cardinal
10. I Could
11. If I Am
12. Love You Lightly
13. Pride Trials
14. Sliip Away
15. Where We’ve Been (Live In Chicago at Metro 3/1/24)
シカゴのインディー・ロックの系譜に欠かせない存在であるフリコは、歌を集団のカタルシスへと変える。ロラパルーザ、フジロック、ロイエル・オーティスとのアメリカ・ツアーなど、世界中のステージでエネルギッシュなライブを披露してきたフリコは、「Where we've been, Where we go from here」のエクスパンデッド・エディションのリリースを準備している。この新バージョンは、未発表トラック、デモ、ライブ録音、カヴァーを通して、バンドの音楽的DNAにある音の複雑さと原始的なロックをさらに探求している。
Ezra Furman(エズラ・ファーマン)は、ベラ・ユニオンが誇る良質なシンガーの一人である。今回、ファーマンは、アレックス・ウォルトンとのニューシングル「Tie Me to the Train Tracks 」、そして、そのB面曲である「Beat Me Up 」を同時に発表した。両曲の試聴は以下から。
エズラ・ファーマンはプレスリリースで次のように語っている。
「この曲は、ボストンのロックスベリーにある彼女の古い家で、慢性的に病んでいたある日の午後、神経症的な情熱の爆発で作ってみたんだ。愛の鎖が僕らを死に物狂いで掴んでいて、すべてが溢れ出てきたような気がしていた。そしてB面('Beat Me Up')もある。私が作り上げたこのミニチュアのマゾヒスティックな断片から、彼女は素晴らしい全曲を作り上げた。彼女がどうやってそれをやっているのかわからないが、彼女と一緒にやれることを幸運に思っている」
『Standing Too Close To The Elephant In The Room』は、バンドにとってエキサイティングな新章を象徴している。このアルバムは、シーフォーム・ウォールズのミュージシャンとしての進化を示すだけでなく、アーティストとしての評判を確固たるものにし、リスナーを実験的な影響と楽器編成のテクニカラーの霧を通して彼らの音楽を体験させる。ディオン・カー、ジョシュ・エワーズ、ホスエ・ヴァーガスを中心とするバンドは、芸術的な自律性へのコミットメントを示し、セルフ・プロデューサーとしての役割を担い、現代社会とそれが内包するあらゆる矛盾に疑問を投げかけながら、その壮大なサウンドスケープを堪能できるアルバムを作り上げた。
アルバムの最後にも印象深い曲が収録されている。「Ex Ray」は、バンドアンサンブルの未知の可能性を示唆している。現代的なオルトロックバンドはどうしても「録音」が先行してしまい、アンサンブルの楽しさを追求することが少なくなりつつある。しかし、コラボレーションやバンドの楽しみを挙げるとするなら、こういったいつまでも続けていられるような心地良いライブセッションにある。それを踏まえ、彼らはBeach Houseのサウンドをお手本にしつつ、バンドとして何が出来るのかを探っている。そして、この曲にこそ、アートそのものが現実を超える瞬間が示唆されている。特に、それは現実的な概念からかけ離れたものであればあるほど、重要な価値を持ちうる。少なくとも、シーフォーム・ウォールズは、彼らが抱える問題を見事に乗り越えている。つまり彼らは現実に打ち勝ち、「Get Over It」してみせたとも言える。それは前述した通りで、彼らの純粋な楽しさを追求する姿勢が、現実的な側面を乗り越えるモチベーションとなったのだろう。
85/100
「Rapids」
■ Seafoam Wallsのニューアルバム『Standing Too Close To The Elephant In The Room』は本日発売。ストリーミング等はこちらから。