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シンガポールのオルトロックバンド、Subsocic Eye(サブソニック・アイ)は、6月11日にTopshelfからリリースされる5枚目のアルバム『Singapore Dreaming』を発表した。 

 

サブソニック・アイは、シューゲイズのテイストを漂わせるトレンドのオルタナティヴロックソングが主要な特徴である。

 

ファースト・シングルは「Aku Cemas」と題されたドリーミーでドライヴ感のあるインディーロックソングだ。ヴォーカルのヌール・ワヒダはこの曲について次のように語っている。


この曲についてボーカルのヌル・ワヒダは次のように語っている。 

 

じっとしていられなかったけど、そうしなければならないような気分だった。 1日に20件の求人に応募しては、またノートパソコンで映画を見ていました。 やっと好きなことをする時間ができた。 本を読んだり、編み物をしたり、手芸をしたり、サイクリングをしたり。

 

 雇われていたときのように、自由な時間に好きなことをするのが楽しみだった。 しかし、この破滅感と役立たず感がすべてを曇らせてしまった。 無職であることへの不安が強すぎて、好きなことをする意欲がわかなかった。 私は自由になりたかったのではなく、好きなことがしたかっただけなんだ。

 

 

「Aku Cemas」

 

 

 

Subsonic Eye 『Singapore Dreaming』


Label: Topshelf

Release: 2025年6月11日

 

Tracklist

 

1.Aku Cemas

2.Why Am I Here

3.Sweet

4.My iPhone Screen

5.Overgrown

6.Lost

7.Being Productive

8.Situations

9.Brace

10.Blue Mountains

 

 

Pre-save:https://www.topshelfrecords.com/286

【Best New Track】 August Royals  「Skintight Crazy」 元RCA所属アーティストよるインディペンデントな歩み


 

アルトポップ/アルトロックアーティスト、August Royals(オーガスト・ロイヤルズ)はルックス、スター性、音楽性、どれをとっても素晴らしい。次世代のUSポップシーンを担うべき存在だ。

 

「Skintight Crazy」と名付けられたこのニューシングルは、プロデューサーのジョン・クラス(ミディアム・ビルド、ミシガンダー)とのコラボレーションにより制作。この曲は、恋愛の余韻を表現している。恋愛のハイライト・リールを認識しつつも、それがハイライト・リールに過ぎないことを自覚する曲。悲観的なロマンチストにとっては、常に「もしかしたら」がある。



オーガスト・ロイヤルズはブロックハンプトンのケヴィン・アブストラクト、ライアン・ビーティ、ドミニク・ファイクといったアーティストとも共演している。これからの活躍が楽しみだ。

  

V Magazine、Rollacoaster、Lyrical Lemonadeなどから大きな賞賛を浴びたオーガスト・ロイヤルは、2021年に急速にその名を馳せ始めた。オーガストは、Pigeons & Planes誌の 「Best New Artists 」に選ばれ、「芸術性とアクセシビリティの難しいバランスを図る稀有な才能」と称賛された。その後、RCAレコードと契約し、デビューシングル「Blue Football」をリリースした。



2022年、オーガスト・ロイヤルはデビューEP『Inhaler』をリリース。9曲入りで、彼自身の経験と葛藤を多数のジャンルに反映させた作品だった。

 

その後、アメリカ国内の屈指の大手レーベル、RCAとの契約を終えたオーガストは、活動を一時休止し、"アーティストとして自分がどうありたいか"を模索することに時間を費やした。テキサスの象徴的なボーイズバンド、Brockhampton(ブロックハンプトン)のケヴィン・アブストラクト、さらにライアン・ビーティ、ドミニク・ファイクといった著名なアーティストと仕事をした後、オーガストはアーティストとしての自分のセンスと自己発見を見直す準備を整えていた。


しばらく、オフラインとスタジオで静かに過ごした1年後、オーガスト・ロイヤルは劇的な進化を遂げている。自称「これまでで最高、そして最も本格的」な楽曲を携え、2025年に再登場を果たす。

 

インディペンデントで発表されたデビューシングル「American Spirit」は、新しいリスナーにとってポップな親しみやすさを保ちつつも、ユニークなヴォーカル・パフォーマンスを誇っている。

 

今作「Skintight Crazy」は、今日の愛が明日の混乱と傷になりうるという彼の考えを表現したアップビートな曲。この2枚目のインディペンデント・リリースで、オーガスト・ロイヤルはついに、世界中のリスナーにその名を轟かせる準備に入る。



「Skintight Crazy」

 

 

Alt-pop/alt-rock artists August Royals have the looks, star power, and musicality to match. He is the next generation of the US pop/rock scene.


Garnering praise from V Magazine, Rollacoaster, Lyrical Lemonade, and more, August Royals quickly started making a name for himself in 2021. August was selected as part of Pigeons & Planes’ highly coveted “Best New Artists,” he was heralded as “the rare kind of talent who’s positioned to strike the difficult balance between artistry and accessibility.” 

 

August signed with RCA Records for the release of his debut single “Blue Football” gaining nods and critical acclaim. 



In 2022 August Royals released his debut EP, Inhaler, a nine-track, multi-genre reflection of his own experiences and struggles. Departing from RCA, August decided to pause and spend time developing who he wanted to be as an artist. After working alongside artists such as Kevin Abstract of Brockhampton, Ryan Beatty, and Dominic Fike, August was ready to reevaluate his own taste and self-discovery as an artist.



 After a year quietly spent offline and in the studio, August Royals has returned, coming into 2025 with a handful of songs that are his self-proclaimed “best to date and most authentic” with his first single “American Spirit” boasting a unique vocal performance that still maintains pop accessibility for new listeners. 

 

Now coming in strong with a carefully finessed fresh take on pop, is “Skintight Crazy”, an upbeat track that captures his take on how the love of today can be the confusion and hurt of tomorrow. With this second independent release, it seems like August Royals is finally ready to reach new heights.



今年のコーチェラ・フェスティバルに出演したWispがニューシングル「Get back to me」をInterscopeからリリースした。

 

昨年、ウィスプはタヌキチャンの新作EP『Circles』にも参加している。次世代のロックアーティストのニューシングルは、彼女の新しい中世的ファンタジーと深い夢の世界を広げている。 生々しい感情と精密に操作されたニューメタルが混ざり合った、ほとんど聖なる曲だ。 


"Get back to me "は、リードシングル "Sword "に続く新曲。残酷なまでに絶妙で、氷のように繊細に、壮大な割合で吹き荒れる内的な大渦を描写している。

 

ウィスプは、すでにコーチェラで1週末プレイしており、ボナルー、キルビー・ブロック・パーティー、そしてシステム・オブ・ア・ダウンの大規模なスタジアム・ツアーに参加し、SOAD、コーン、デフトーンズ、アヴェンジド・セヴンフォールドらとステージを共にする予定だ。


このシングルについてウィスプは、「『Get Back To Me』は、自分を犠牲にしてでも混沌を求める欲を表している。 この曲は、自分にとって良くないと分かっている場所に留まり、絶望、無謀さ、そして淫らな気持ちを描いている」と語っている。



「Get Back To Me」




【Wisp】


ウィスプは、WhirrやSlowdive(2024年に夢の共演を果たした)にインスパイアされ、ロックの可能性を広げようとする個性的で洗練されたサウンドを作り上げた。

 

 Pigeons & Planesは、「ウィスプがGen-Zのエーテルフィックスになるのは時間の問題だ」と的確に予測し、Notionは、「彼女はシューゲイザーを復活させる」と宣言した。  


ウィスプは、Apple MusicのNew Music Dailyの世界的な表紙を飾り、全てのプラットフォームで数億ストリーミングを達成し、NYLON、Pigeons & Planes、Spotify Lorem Artist To Watch、Amazon Breakthrough Artists、Consequence Artist of the Monthの注目すべきアーティストに選出された。

 

また、ニューヨーク・タイムズ紙とLAタイムズ紙で特集され、Alt Pressの最新冬号の表紙を飾ったほか、Rolling Stone、Stereogum、PAPER、Brooklyn Veganなど、ウェブ上でも多数取り上げられている。


デビュー・シングル "Your Face "はビルボード・ホット・ハード・ロック・ソングスで10位を記録。 「Your face」は現在、Spotifyだけで1億1000万回以上のストリーミングを記録し、クロスプラットフォームでの総ストリーム数は2億5000万回を超えている。


2024年5月、彼女はロサンゼルスでデビュー・ライヴを行い、自作のグッズを身につけた熱狂的なファンで2回ソールドアウトした。 

 

そのわずか3ヵ月後には、ロラパルーザ、レビテーション、キャンプ・フログ・ノウ、コロナ・キャピタルで初のメジャー・フェスティバルに出演した。 彼女は、3つの異なる大陸でソールドアウトしたショーのヘッドライナーを務めたこともある: 北米、ヨーロッパ、アジア。


ウィスプは、これまでの経験に謙虚になりながらも、次のステップに進む決意を固めた。 ウィスプのサガは、彼女のデビュー作に向けて続いていく。

 


先日、来日公演を行ったFontaines D.C.は、日本でバックストリートでトロフィーを掲げていた。『Romance』は象徴的な作品となった。MUSIC TRIBUNEのアルバム・オブ・ザ・イヤーを獲得している。

 

現在、シアトルでの2025年北米ツアーのキックオフを数日後に控え、3曲の新曲を収録した名高い2024年のアルバム『Romance』のデラックス・エディションをリリースした。


「Before You I Just Forget」、既発シングル「It's Amazing to Be Young」、「Starburster」とデヴィッド・リンチの "In Heaven (Lady in the Radiator Song) "のマッシュアップだ。


新曲 "Before You I Just Forget "は話し言葉のようなリフレインと、ストリングス・パートとコーラス・ギターのアルペジオで彩られたメロディックな間奏のバランスをとることによって、これを実現している。


「Before You I Just Forget」について、バンドのコナー・カーリーは、この曲は "本当にぶっ飛んだサウンド、聴くたびに明らかになる新しいディテールでヘヴィーに変化するようなサウンド "というビジョンから始まったと語っている。 最終的な形では、この曲は "変容し、変化する"。 最後に、彼は "グリアン・チャッテンによる素晴らしいストリングスパート"を称賛した。

 

 

 

 

 

NYCのインディーロック・バンド、Frankie Cosmosが6作目のアルバム『Different Talking』の知らせを引っ提げて復帰を果たした。今作はサブ・ポップから6月27日に発売予定。またレーベルの説明によると、現時点のバンドのベストアルバムであるという。

 

断片的な記憶、思い出の場所、再解釈された感情が、明晰でハミングするような全体像に集約されている。年齢と時の流れをテーマにした骨太で世俗的なインディー・ロックでありながら、鋭く今を感じさせる。

 

フランキー・コスモスの現在のメンバーは、グレタ・クライン、アレックス・ベイリー、ケイティ・ヴォン・シュライヒャー、ヒューゴ・スタンレー。

 

クラインは唯一不変の存在だが、スタンリー、ベイリー、フォン・シュライヒャーは重要なコラボレーターだ。「グレタ・クライン」と「フランキー・コスモス」という名前を使い分けるのは正しくないだろう。クラインが主要なソングライターであることに変わりはなく、『ディファレント・トーキング』の楽曲はバンド全体がアレンジしているが、このアルバムは外部のスタジオ・プロデューサーを起用せず、ユニットがセルフ・トラッキングした初のアルバムである。

 

 

リード・シングル 「Vanity 」は、プロダクションとソングライティングに対する完璧主義者のアプローチを例証している。

 

 フォン・シュライヒャーはこの曲を「クソみたいなポップ・アンセム」と表現しているが、ポップ・アンセムにここまで細部にこだわった曲があるだろうか?

 

「Vanity」は余裕と忙しさを同時に感じさせる曲で、初期のフランキー・コスモスのテープを思い起こさせるようなミニマルな好奇心のパッセージの間に、セカンドアルバム『Strokes』のコーラスが花を咲かせている。

 

「ある晩、トンプキンス・スクエア・パークからサンセット・パークまで(約6.5マイル)歩きながら、宇宙に直接語りかけ、宇宙から配慮してもらえるよう嘆願しながら書き始めた」とクラインは言う。「大人と子供、政府と被統治者、惑星と草の葉の間の押し引きを包括しているように感じる」

 

ディファレント・トーキングのレコーディング中に編集され、フランキー・コスモスのメンバーであるグレタとアレックスが撮影した映像を使用した「Vanity」の公式ビデオをご覧ください。


「Vanity」


 

 

Frankie Cosmos  『Different Talking』


Label: SUB POP

Release: 2025年6月27日

 
Tracklist

1. Pressed Flower
2. One of Each
3. Against the Grain
4. Bitch Heart
5. Porcelain
6. One! Grey! Hair!
7. Vanity
8. Not Long
9. Margareta
10. Your Take On
11. High Five Handshake
12. You Become
13. Joyride
14. Tomorrow
15. Wonderland
16. Life Back
17. Pothole


韓国のインディー・ロックバンド、Say Sue Meが、4月30日にDamnablyからリリースするEP『Time Is Not Yours』を発表した。 このニュースと共に、Silica Gelのキム・ハンジュとのコラボ曲「Vacation」が公開された。 以下よりチェックしてほしい。


「現代人はすべてを考えすぎ、常に急いで生きている。 でも、ちょっと立ち止まって、ただ息をする時なんだ。韓国のパワーポップバンド、シリカゲルのヴォーカリスト、キム・ハンジュが「Vacation」に声を貸してくれた」

 

「私たちは2022年に日本で開催されたフェスで初めてつながり、そこで彼は私たちとのコラボレーションの希望を表明した。 彼の言葉が印象に残り、「Vacation」をレコーディングすることになったとき、彼の声が完璧にフィットすると確信した。 彼の貢献のおかげで、この曲はより豊かで生き生きとしたエネルギーを帯び、トラックに全く新しい色を加えることができた」

 

「Vacation」

 


Say Sue Me 『Time Is Not Yours』 EP


Label: Damnably

Release: 2025年4月30日

 

Tracklist:


1. Time Is Not Yours

2. Vacation [feat. Kim Hanjoo]

3. In This Mess

4. Mexico

5. Bone Pink

 


フロリダの四人組エモ/インディーロックバンド、Home Is Whereはニューアルバム『Hunting Season』を発表した。クジラのアートワークが印象的な2023年のアルバム『The Whaler』に続く作品。


4人組はリードシングル「migration patterns」も同時に発表した。この曲では、エモ/パンク、アメリカーナ、ブルース、インディーロックを融合させ、痛快な響きを生み出している。ギター/ボーカルは、トゥインクル・エモだが、ブルース・ハープが入ったり、スティールギターが入ったりというように、楽しい雰囲気が満載だ。曲のアウトロにかけてのシンガロングも最高。

 

ヴォーカルのブレア・マクドナルドはこう語っている。「これは平凡な運命との闘いについて歌っている。死ぬまで働くんだ」


ボー・マクドナルドは新しい時代の『偉大なるアメリカの歌』を書きたかったという。彼女のバンド、Home Is Whereによる3rdアルバム『Hunting Season』には13曲が収録されており、そのひとつひとつが、自動車事故で噴煙と炎に飲まれたエルヴィスのモノマネ芸人の死にゆく思いを詳細に歌っている。このアルバムではブラックユーモアと風刺が滲んでいる。

 

はっきりさせておきたいのは、これらの曲はすべて同じ瀕死のエルヴィスの物まね芸人の視点から歌われているのではなく、13人の異なるエルヴィスの物まね芸人が、13台の車の玉突き事故で死んでいくということだ。

 

不運な数のエルヴィスの真似をした者たちが、それぞれ別々の車の中で燃え尽きながらも、残骸の中で、そして死の中で一緒になりながら、最後の命の屑を掴んでいる。これ以上にアメリカ的なものがあるだろうか?

 

 

 「migration patterns」



 

『Hunting Season』は、マクドナルドの言葉を借りれば 「本物のサザン・ロック」だ。フロリダの沼地出身のHome Is Whereは、この国が住民に放ち続けている最悪の大惨事を知らないわけではない。

 

このアルバムは、しばしばメイソン・ディクソン線の南側に最も集中する、アメリカの混乱に対する彼らの愛憎関係を見事に包み込んでいる。

 

このアルバムのクローズ「Drive-By Mooning 」でマクドナルドはこう歌っている。「愛してる、でも、時々、私は今までで最悪の人間になるかもしれない」 火は燃え続け、煙は壊された車の山から立ち上り、13人のエルヴィーズの顔が割れた窓ガラスに映る。これぞアメリカの不条理。


Home Is Where 『Hunting Season』


Label: Wax Bodega

Release:  2025年5月23日

 

Tracklist:


1.reptile house
2.migration patterns
3.artificial grass
4.black metal mormon
5.stand-up special
6.bike week
7.everyone won the lotto
8.shenandoah
9.milk & diesel
10.mechanical bull
11.the wolf man
12.roll tide
13.drive-by mooning

 

Pre-save: https://go.mhe.fm/hiw_migrationpatterns

 


 
Stereolabが15年ぶりのニューアルバム『Instant Holograms on Metal Film』を発表した。同時に、ファーストシングル「Aerial Troubles」のミュージックビデオを公開した。Instant Holograms on Metal Film』は5月23日にDuophonic UHF Disks/Warpから共同でリリースされる。先行シングル「Aerial Troubles」のビデオはローラン・アスキナジーが監督しました。
 
 
 
Stereolabの最後のスタジオアルバムは2010年の『Not Music』だった。無期限の活動休止にもかかわらず、バンドはその後も旧作を再発し、2019年からはツアーも開催している。バンドは創設メンバーのレティシア・サディエとティム・ゲインが率いており、アンディ・ラムジー、ジョセフ・ワトソン、グザヴィエ・ムニョス・ギメラも参加。インスタント・ホログラム・オン・メタル・フィルムには、クーパー・クレイン、ロブ・フライ、ベン・ラマー・ゲイ、リック・エルズワース、ホルガー・ザップ、マリー・メレ、モリー・リードも参加している。
 

 
『Instant Holograms on Metal Film』は、一部のファンに郵送された「Aerial Troubles」7インチ(B面は同曲のインストゥルメンタル・ヴァージョン)で予告された。Stereolabの単語検索をフィーチャーした謎めいたポスターも主要都市に掲示された。
 


「Aerial Troubles」



Stereolab 『Instant Holograms on Metal Film』


Label: Duophonic UHF Disks/Warp

Release:2025年5月23日

 

Tracklist:

1. Mystical Plosives

2. Aerial Troubles

3. Melodie Is a Wound

4. Immortal Hands

5. Vermona F Transistor

6. Le Coeur et la Force

7. Electrified Teenybop!

8. Transmuted Matter

9. Esemplastic Creeping Eruption

10.. If You Remember I Forgot How to Dream Pt. 1

11. Flashes From Everywhere

12. Colour Television

13. If You Remember I Forgot How to Dream Pt. 2

 

©︎Steve Gullick


ザック・ボウカー(ヴォーカル/ギター)、ユアン・バートン(ベース)、ドラマーのジョエル・スミス、エディ(マスコット)からなるイギリス/クルー(Crewe)の4人組”UNIVERSITY”に注目しよう。デビューアルバム『McCartney, It'll Be OK』を2025年6月20日にTransgressiveよりリリースすることを発表した。本日、彼らはニューシングル「Curwen」(試聴はこちら)も発表した。


 
プロデューサーのKwes Darko(Sampa The Great、Denzel Curryの作品をプロデュース)とロンドンにあるDamon AlbarnのStudio 13でレコーディングされた『McCartney, It'll Be OK』は、UNIVERSITYの2023年のデビューEP『Title Track』の非常にエキサイティングな始まりをさらに発展させたもので、フックはより明るくメロディアスに、ブレイクダウンはよりヘヴィに、歌詞はより洗練されている。

 

バンドは『McCartney, It'll Be OK』を完全ライヴでレコーディングし、これまでの彼らの作品を特徴づけてきた、すべてが今にも崩れ落ちそうなスリリングで狂おしいエネルギーを保持している。


 
このアルバムについて、ジョエル・スミスはこう語っている。

 

「より感情的にバラエティに富んだ作品にするために、意識的に曲を書いたんだ。より幅広い感情を内包している。僕らのバンドをもっと軽やかに見ることができるようになった。EPのサウンドを色づけてくれた。

 

僕らはエモや過激な音楽に影響を受けているから、何か対照的なものがないと、物事は惨めなものにしかならないと気づいたんだ。光を感じてこそ、暗闇を正しく感じることができるように。すべてのジャンプを感じたい...。『ホワイト・アルバム』みたいにね・・・」

 
インスタントコーヒーが燃えかすのようにブラックになり、呟くような隠れ家、古ぼけたベッドルーム、貧血のような通りを通り抜け、あなたを圧倒的な世界へと導く。


「Curwen」




UNIVERSITY 『McCartney, It'll Be OK』

 


Label: 2025年6月20日

Release: Transgressive

 

Tracklisti:


1.Massive Twenty One Pilots Tattoo
2.Curwen
3.Gorilla Panic
4.Hustler’s Metamorphosis
5.GTA Online
6.Diamond Song
7.History Of Iron Maiden Pt. 1
8.History Of Iron Maiden Pt. 0.5

 

©Bader Conrad

6月6日、シカゴのLifeguard(ライフガード)がデビューアルバム「Ripped and Torn」をマタドール・レコードからリリースする。 ライフガードは古典的なインディーロック・バンドと言えるが、今後なにかやってくれそうな気配がある。

 

アッシャー・ケース(ベース、バリトン・ギター、ヴォーカル)、アイザック・ローウェンスタイン(ドラムス、シンセ)、カイ・スレイター(ギター、ヴォーカル)の若さ溢れる3人組は、高校生の頃から一緒に音楽を作ってきた。 パンク、ダブ、パワーポップ、実験的なサウンドからインスピレーションを受け、それらを爆発的な不協和音にまとめ上げる。 


本日、ブリスターなDビートを駆使したファースト・シングル "It Will Get Worse" を聴いてみよう。 バンドはまた、6月にスタートする英国、EU、米国のツアー日程も発表した。 


プロデューサーにランディ・ランドール(No Age)を迎え、昨年シカゴでレコーディングされたこのアルバムは、ハウスパーティーやぎゅうぎゅうに詰め込まれた部屋の感覚とエネルギーを呼び起こすような、閉所恐怖症的なスクラップ感を捉えている。

 

バンドのロックソングは新しさとは無縁である。それは彼等のWipersのカバーなどを見れば明らか。リードシングル「It Will Get Worse」はパンクをベースにし、サーフロック、ガレージロックを織り交ぜ、60年代、そして70年代の懐かしきUSロックの音楽を再訪している。 彼等の音楽にはSonicsのようなガレージロックの最初期の音楽性を捉えることも不可能ではない。



「It Will Get Worse」




Lifeguard  『Ripped and Torn』




Label: Matador

Release: 2025/6/6 


Tracklist

1. A Tightwire

2. It Will Get Worse

3. Me and My Flashes

4. Under Your Reach

5. How to Say Deisar

6. (I Wanna) Break Out

7. Like You’ll Lose

8. Music for 3 Drums

9. France And

10. Charlie’s Vox

11. Ripped + Torn

12. T.



ニューヨークのインディーズの真髄がセカンドアルバムの知らせを引っ提げてカムバックを果たした。ウィル・アンダーソンが率いるニューヨークを拠点とするバンド、Hotline TNTが、3rdアルバム『Raspberry Moon』を発表し、リード・シングル「Julia's War」を公開した。 


2023年に "絶妙"(ビルボードの評)なブレイクを果たした『Cartwheel』に続く『Raspberry Moon』は、これまでで最も広範で説得力のあるHotline TNTの新作であり、フル・バンドで制作された初のアルバムでもある。 このアルバムには、若さゆえの切なさと大人の成長、そしてチャーミングで時に笑える、世代を超えた偉大なステートメントが詰まっている。 


Pitchfork(8.4/10ベスト・ニュー・ミュージック)、Stereogum(2023年トップ10アルバム-"巨大なフックが詰まった、リベッティングで落ち着きのないシューゲイザー")など、幅広い批評家から絶賛されたブレイクスルー・アルバム「Cartwheel」のリリースに続き、ニューヨークのHotline TNTがベスト・アルバム「Raspberry Moon」を携えて帰ってきた。 このアルバムは、多くの人が「ニュー・アメリカン・シューゲイザーの次の段階」と呼ぶものだ。 


Hotline TNTは、WednesdayやSnail Mailとの全米ツアーを含む絶え間ないツアーを行い、果てしないラインナップの入れ替わりに耐えながら、いくつかのDIYシーンの要となっている。 Cartwheel」は、フロントマンのウィル・アンダーソン(以前はカルト・インディー・グループ、ウィードのメンバーだった)が大部分を手がけたが、「Raspberry Moon」はフル・バンドで制作された。 ティーンエイジ・ファンクラブ、ダイナソー・ジュニア、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのファン向け。

 

 

「Julia's War」

 

 

Hotline TNT  「Raspberry Moon」

Label: Third Man
Release: 2025/6/20


Tracklist:
 

1.Was I Wrong?

2.Transition Lens

3.The Scene

4.Julia's War 03:03

5.Letter To Heaven

6.Break Right

7.If Time Flies

8.Candle

9.Dance The Night Away

10.Lawnmower

11.Where U Been?

  Momma 『Welcome to My Blue Sky』

 


 

Label: Polyvinyle/ Lucky Number

Release: 2025年4月4日

 

Listen/ Stream

 

Review

 

Mommaは今をときめくインディーロックバンドであるが、同時に個性的なキャラクターを擁する。ワインガルテンとフリードマンのセカンドトップのバンドとして、ベース/プロデューサーのアーロン・コバヤシ・リッチを擁するセルフプロデュースのバンドとしての二つの表情を併せ持つ。コバヤシ・リッチはMommaだけにとどまらず、他のバンドのプロデューサーとしても引っ張りだこである。現在のオルタナティヴロックやパンクを象徴する秀逸なエンジニアである。

 

2022年に発表されたファーストアルバム『Household Name」は好評を得た。Pitchfork、NME、NYLONといったメディアから大きな賞賛を受け、アメリカ国内での気鋭のロックバンドとしての不動の地位を獲得した。その後、四人組はコーチェラ・フェスティバルなどを中心とする、ツアー生活に明け暮れた。その暮らしの中で、人間的にも、バンドとしても成長を遂げてきた。ファーストアルバムでは、ロックスターに憧れるMommaの姿をとらえることができたが、今や彼等は理想的なバンドに近づいている。ベテランのロックバンド、Weezer、Death Cab For CutieとのライブツアーはMommaの音楽に対する意識をプロフェッショナルに変化させたのだった。

 

本拠地のブルックリンのスタジオGとロサンゼルスのワサッチスタジオの二箇所で制作された『Welcome To My Blue Sky』はMommaにとってシンボリックな作品となりそうだ。目を惹くアルバムタイトル『Welcome To Blue Sky』はツアー中に彼等が見たガソリンスタンドの看板に因んでいる。アルバムの収録曲の多くはアコースティックギターで書かれ、ソングライティングは寝室で始まったが、その後、コバヤシ・リッチのところへ音源が持ち込まれ、楽曲に磨きがかけられた。先行シングルとして公開された「I Want You(Fever)」、「Ohio All The Time」、「Rodeo」などのハイライトを聴けば、バンドの音楽性が大きく洗練されたことを痛感するはずだ。

 

ファーストアルバムではベッドルームポップに触発されつつも、グランジやオルトロックを受け継ぐバンドとしての性質が強かった。続いて、セカンドアルバムでは、タイトルからも分かる通り、エモへの傾倒が強くなっている。「I Want You(Fever)」はBreedersを彷彿とさせるサイケ性があるが、オルトロックとしての轟音性を活かしつつも、それほどマニアックにはならず、バンガーの要素が維持されている。これらはアコースティックギターで曲が書かれたというのが大きく、メロディーの良さやファンに歌ってもらうための''キャッチーなボーカル''が首座を占めているのである。仮にテープ・ディレイのような複雑なサウンド加工があろうとも、それほどマニアックにならず、一定のポピュラー性(歌いやすさ)が担保されている。その理由はマニアックなサウンド処理が部分的に示されるに留まること、そして、バンドの役割が明確であること。この二点がバンガー的なロックソングを生み出すための布石となった。ボーカルがメインであり、ギターやシンセ、ドラムなどの演奏はあくまで「補佐的な役割」に留められている。

 

これはワインガルテンとフリードマンが自由奔放な音楽性や表現力を発揮する懐深さを他のメンバーが許容しているから。それが全体的なバンドの自由で溌剌としたイメージを強調付ける。たぶんこれは、ファーストアルバムにはそれほどなかった要素である。がっつりと作り込んでいた前作よりロックソングのクオリティーは上がっているが、同時にバンドをやり始めた頃の自由な熱狂性を発揮することを、バンド全体、コバヤシ・リッチのプロデュースは許容している。 そしてこれがロックソングとしての開けた感覚と自由なイメージを強調するのである。

 

セカンドアルバム『Welcome To My Blue Sky』において、バンドはポピュラーソングとロックソングの中間に重点を置いている。おそらく、Mommaはもっとマニアックで個性的な曲を書くことも出来ると思うが、オルタネイトな要素を極力削ぎ落とし、ロックソングの核心を示そうとする。そして、これは彼らが必ずしもオルタネイトな領域にとどまらず、上記のバンドのようなメインストリームに位置する商業的なロックバンドを志していることの証ともなりえるのである。

 

バンドというのは結局、どの方向を向いているのか、それらの意思疎通がメンバー内で共有出来ているかという点が大切かと思う。彼等が実際にそういったことを話し合ったかどうかは定かではないものの、多忙なツアースケジュールの中で、なんとなく感じ取っていったのかもしれない。その中には、ツアー中に起きた''不貞''が打ち明けられる場合があり、「Rodeo」で聴くことが出来る。音楽からは、メンバー一人ひとりが器楽的な役割を理解していて、そして彼等が持つ個性をどんなふうに発揮すれば理想的な音楽に近づくのか、そういった試行錯誤の形跡が捉えられる。


一般的には、試行錯誤の形跡というのは複雑なサウンドや構成、そして脚色的なミックスなどに現れることが多いが、Mommaの場合は、それらのプラスアルファの要素ではなくて、マイナスーー引き算、簡略化ーーの要素が強調されている。これが最終的に軽妙なサウンドを生み出し、音楽にさほど詳しくないリスナーを取り込むパワーを持つようになる、というわけである。Mommaの音楽は、ミュージシャンズ・ミュージシャンのためにあるわけではなく、それほど音楽に詳しくない、一般的なロックファンが渇望するパッションやエナジーを提供するのである。

 

 

これが本作のタイトルにあるように、Mommaの掲げる独自の世界「ブルースカイ」への招待状となる。その中には先にも述べたように、90年代以降のオルタナティヴロック、エモ、シンセポップなどの音楽が引きも切らず登場するが、全般的に、その音楽のディレクションの意図は明確である。


わかりやすさ、つかみやすさ、ビートやグルーヴの乗りやすさ、この三点であり、かなり体感的なものである。それは以降の複雑なポストロックやポストパンクに対するカウンターの位置取りであり、頭でっかちなロック・バンドとは異なり、ロックそのものの楽しさ、雄大さ、そして、心を躍らせる感じ、さらには、センチメンタルなエモーションがめくるめくさまに展開される。音楽的な方向性が明瞭であるからこそ、幅広く多彩なアプローチが生きてくる、という実例を示す。これらは、数しれないライブツアーの生活からしか汲み出し得なかったロックソングの核心でもあるのだ。

 

 

 

上記の先行シングルのようなバンガーの性質を持つロックソングと鋭いコントラストを描くのが、内省的なエモの領域に属するセンチメンタルなロックソングの数々である。そして、これらがロックアルバムとして聴いた上で、作品全体の奥行きや深さを作り上げている。「How To Breath」、「Bottle Blonde」では、それぞれ異なる音楽性がフィーチャーされ、前者ではThird Eye Blindのような、2000年代以降のオルタナティヴロック、後者では、シンセ・ポップをベースにしたベッドルームポップのキャラクターを強調している。 そしてどちらの曲に関しても、ボーカルのメロディーの良さやドリームポップに近い夢想的な感覚を発露させている。これらに多忙なツアー生活の中の現実性とは対極に位置する幻想性を読み解くことも不可能ではない。

 

 

また、ライブツアーにまつわる音楽性は従来とはカラーの異なる音楽性と結びつけられる場合がある。例えば、「Ohio All The Time」は、Placeboを彷彿とさせる音楽性に縁取られている。ソングライティングの側面で大きく成長を遂げたのが、本作のクローズに収録されている、子供時代の記憶を振り返りながら、自分の姿が今とはどれほど変わったかを探る「My Old Street」である。他の曲と同じく、歌える音楽性を意識しつつ、スケールの大きなロックソングを書きあげている。これらはMommaがいよいよアリーナクラスのロックバンドへのチケットを手にしつつあることを印象付ける。

 

 

85/100

 

 

Best Track-「How To Breath」

 


 

フィラデルフィアを拠点に活動するインディーロックバンド、The Indestructible Water Bear(ザ・インデストラクティブル・ウォーター・ベア)のデビューアルバム『Everything Is OK』から「Missing You」のミュージックビデオを公開した。


アルヴェイズ、ホップ・アロング、ザ・サンデーズ、クランベリーズのファンのために、ザ・インデストラクティブル・ウォーター・ベアーは、インディー・ロック、90'sにインスパイアされたオルタナティヴ、ジャングリーなドリームポップにエモを加えた独自のブレンドを創り上げている。 


The Indestructible Water Bearは、フィラデルフィアを拠点に活動するエモ・エッジの効いたオリジナル・インディー・ロック・バンド。 アルヴェイズ、ホップ・アロング、ザ・サンデーズ、クランベリーズといったバンドと比較される90年代のアルト・ロック・サウンドを持つ。


エモーショナルな歌詞とダイナミックな楽器編成で知られる彼らは、リスナーの心に深く響く曲を作る。 彼らの音楽は内省と激しさのバランスを保ち、心に響くメロディーとドライヴするリズムを織り交ぜ、ユニークで忘れがたいサウンドを生み出している。


彼らのデビューアルバム『Everything Is OK』は、「愛の複雑さと力強さ、そして愛が私たちを癒したり傷つけたりするような方法で、私たちの感情の風景をどのように定義づけることができるかを探求する」7曲からなる音楽作品だ。 


このアルバムは、インディー・ロック、90年代にインスパイアされたオルタナティヴ、そしてドリーミーなジャングルがミックスされ、パワフルな歌声が魅力的だ。 さらにファーマーは
「このアルバムの曲は、子育て、友情、ロマンチックな愛、そして自分自身を愛することに伴う感情の激しさと複雑さを映し出すような、ダイナミクスに富んだものにしたかった」と打ち明ける。 


「私たちの願いは、すべてのリスナーが、喜び、憧れ、安心感、恐れ、喜び、痛みといった、他者と深くつながることから生まれるテーマに共感してくれることです。 すべての曲に共通するのは、浮き沈みを受け入れるということ。人生において、自分の気持ちに大きな解決策や解決策はないことが多いからだ。 むしろ、これらの曲で私たちは物事のあり方を探求し、最終的にはそれを受け入れたい」


「Missing You」





The Indestructible Water Bear is a Philadelphia-based original indie rock band with an emo edge, fronted by a powerhouse female vocalist whose voice captivates and commands. They have a ‘90s alt rock sound that has been compared to bands like Alvvays, Hop Along, The Sundays, and The Cranberries.

Known for their emotive lyrics and dynamic instrumentation, they craft songs that resonate deeply with listeners. Their music balances introspection with intensity, weaving heartfelt melodies with driving rhythms that create a unique and unforgettable sound.

Their debut album Everything Is OK is a seven song musical envelopment that "explores the complexities and power of love and how it can define our emotional landscape in ways that both heal and hurt us," shares frontwoman Gail Farmer. The album is a riveting mix of indie rock, 90's inspired alternative and dreamy jangle, with a powerful delivery. 
 
Farmer further confides, "We wanted the songs on this album to be rich with dynamics, mirroring the intensity and complexity of feelings that come with parenthood, friendship, romantic love and loving oneself. Our hope is that every listener will be able to connect with the themes of joy, longing, security, fear, pleasure and pain that stem from allowing yourself to connect deeply with others. 
 
 
A common thread across all the songs is accepting these ups and downs, because in life, there often are no great resolutions or solutions to how we feel. Rather, with these songs we explore, and ultimately accept, the way things are."


 girlpuppy 『Sweetness』

 

Label: Captured Tracks

Release:2025年3月28日

 

Review

 

キャプチャード・トラックスと新契約を結んで発表されたベッカ・ハーヴェイによる新作アルバム『Sweetness』はインディーロックの純粋な魅力に溢れている。ガールパピーは記憶に間違いがなければ、従来はインディーポップ寄りのソングライティングを特色としていたシンガーであったが、今回のアルバムではロック的なアプローチを選んでいる。むしろオルタネイトな要素を削ぎ落として、聴きやすいロックソングとは何かという点を追求した作品となっている。バンガー的な曲も幾つか収録されているが、失恋という全体的なテーマからも分かる通り、エモーショナルで切ない雰囲気を帯びたアンニュイなロックソングが特徴のアルバムである。このアルバムでは傷ついた心を癒やすような活力に満ち溢れたロックソングを楽しめるはず。

 

アルバムはシンセの壮大なインスト曲「Intro」で始まり、ソングライターとしての成長を印象付ける「I Just Do」が続く。心地よい8ビートにインディーロックのラフなバッキング・ギター、そしてベッカ・ハーヴェイの内省的なボーカルが徐々にドライブ感を帯び、サビの箇所で轟音性を増す。そしてそれはセンチメンタルな雰囲気がありながらも、若い年代のシンガーらしい純粋な感覚を表現していて、聴いていて何か爽快感やカタルシスをもたらす瞬間がある。このアルバムでは痛快な轟音のインディーロックが強い印象をはなつ。レーベルの契約と合わせて発表された「Champ」はベタであることを恐れず、ロックソングの本来の輝きを放つ。シューゲイズの響きとグランジの重さがこの曲のロック的な魅力を強調している。使い古されたと思えるようなロックの手法もベッカ・ハーヴェイの手にかかると、新鮮な音楽に生まれ変わる。「Champ」はギターソロが力強い印象を放ち、雄大なイメージを呼び覚ます瞬間がある。

 

従来のインディーポップ風の曲も収録されている。「In My Eyes」はドリーム・ポップ風の曲であるが、ハーヴェイのボーカルはこの曲に切ないエバーグリーンな感覚を添えている。過去の数年間を振り返るようなポップソングで憂いや悲しみをアンニュイなポップソングとして昇華している。その後、このアルバムの音楽はやや夢想的になっていき、同レーベルのデュオ、Widowspeakにも似たセンチメンタルなインディーロックソングへと傾倒していく。そしてセンチメンタルであることを恐れないという点にソングライターとしての力強さが宿っている。「Windows」、「Since April」はそれほどオルタナティヴロックファンにも詳しくないリスナーにも琴線に触れるものがあるに違いない。それはソングライターとして感覚的なもの、一般的には見えにくいエモーションを歌で表現することにガールパピーは長けているからである。

 

本作の音楽はゆっくりと歩きだしかと思うと、徐々に走りが軽快になっていき、クライマックスでそれらが軽妙な感覚に変わる瞬間がある。それらは過去の傷ついた心を癒やすような優しさに満ちている。人間としての成長が断片的に描かれ、それらがスナップショットのように音楽に収められている。シンガーとしてはそれらの過去を振り返りつつも、別れを爽やかに告げるという瞬間が織り交ぜられている。それはまた過去に浸らず、次の未来へとあるき出したということだろう。終盤の収録曲に聞かせる部分が多い。「Beaches」はアメリカーナやカントリー/フォークをポップの側面から解釈し、聴きやすく、つかみやすい曲である。特にシンパシーを超えたエンパシーという感覚が体現されるのが「I Was Her Too」だ。サッカー・マミー、MOMMAといったトレンドのロックシンガーの音楽をわずかに彷彿とさせる。その一方で、エモに近い雰囲気が立ち込め、それらがドラムやシンセストリングスの演奏により、ドラマティックな空気感を帯びる。そして、なかなか表しがたい内在的な感情性をロックソングに体現させている。この曲はガールパピーの象徴的な一曲が生み出されたと見ても違和感がないように思える。

 

ガールパピーは、TilTokなどのカルチャーの波に乗り、それらをベッドルームポップの系譜にある軽快なロックソングに落とし込んでいる。しかし、その中には個性的な雰囲気が漂い、それが『Sweetness』の潜在的な魅力となっている。それほど肩ひじを張らず気楽に楽しめると思いますが、一方でポストパンクからの影響も読み解ける。例えば、「For You Two」は象徴的な一曲で、ドライブ感というパンクの要素が聴きやすく甘いポップセンスと融合している。これらはパワーポップとまではいかないものの、 それに似た甘く切ない雰囲気に満ちている。言葉で具象化することの難しい感覚を表すのがロックソングの醍醐味であるとすれば、『Sweetness』はその一端を味わえる。そして実際なんらかのカタルシスをもたらすはず。クローズ「I Think Did」はアコースティックギターをメインにした開放的なフォークポップ。ロックソングの音楽性が瞬間的なものであるがゆえか、アルバムを聴いた後に切ない余韻を残す。

 

 

 

 

80/100 

 

 

Best Track-「For You Two」

 

 

ザ・ニュー・ポルノグラファーズがニューシングル「Ballad of the Last Payphone」をリリースした。 (楽曲のストリーミングはこちら)インディーロックをベースにした渋いトラックだが、コーラスワークや開放的な雰囲気を持つホーンセクションが異彩を放ち、この音楽を魅惑的にしている。

 

このシングルは、バンドが先月A.C.ニューマンのレーベル、Substackからリリースした限定7インチのA面で、レコードのみのB面「Ego Death for Beginners」も収録されている。 試聴は以下から。


この曲は、レイモンド・カーヴァーの "Fat "という物語にインスパイアされたもので、時代遅れのものに対する憧れが体現されている。A.C.ニューマンはこの曲について次のように述べている。

 

「ある人物がニューヨークで最後の公衆電話を訪れるというストーリーになっている。 語り手は、なぜその公衆電話に魅了されるのかわからない。 それでも、少なくとも私には明らかなんだ」

 


「Ballad of the Last Payphone」

Perfume Genius 『Glory』 

 



Label: Matador

Release: 2025年3月28日

 

Listen/Stream 


 

Review


2025年のマタドールのリリースはいずれも素通りできないが、パフューム・ジーニアスの『グローリー』もその象徴となろう。従来はエキセントリックなイメージを持つアーティスト像を印象付けてきたパフューム・ジーニアスだったが、「Ugly Season」とはまったく異なるSSWの意外な一面を把捉できる。全盛期のエルトン・ジョンを彷彿とさせる渋いバラード曲が収録されている。これもシンガーソングライターの歩みの過程を示唆している。このアルバムを聴いたファンは従来のパフューム・ジーニアスのイメージが覆されたことにお気づきになられるだろう。

 

ロサンゼルスのシンガーソングライター、マイク・ハドレアスのプロジェクト、パーフューム・ジーニアスは、このアルバムがミュージシャンの孤独という側面から生み出されたことを明らかにしている。


「何も起こっていないときでさえ、私は圧倒され目を覚まします。私は一日の残りを規制しようとする過ごしかた、たとえばそれは家で一人で自分の考えで行うのが好きです。しかし、なぜ? それらはほとんど悪いです。それらはまた、何十年も本当に変わっていません。私はこれらの孤立したループの1つに閉じ込められたまま「It's a Mirror」を書きました。何か違う、そしておそらく美しいものがそこにあるのを見ましたが、冒険する方法がよくわからなかった。ドアを閉めておく練習がもっとたくさんあります」 


しかしながら、逆説的であるが、本来孤独なランナーであるはずの音楽家、作家や画家と同じように、もしも彼らが作り上げた作品が何らかの有機的な意味合いを持つとすれば、それは誰かがそれを聴いたり、目にしたり、そしてコンサートでファンとの交歓ともいうべき瞬間があるということだろうか。その瞬間、作品は伝達の意味を持つ。これはストリーミングの再生数やアルバムの売り上げなどよりもはるかに作り手にとって一番充実した有意義な瞬間である。




本作の音楽性に話を集約すれば、ソングライティングという入り口を通して、あるいはレコーディングにおけるアルドゥス・ハーディングをはじめとするミュージシャンとの共演を通して一人の持つ世界が共有される空間、そしてコミュニケーションを広めるまたとない機会になった。これは本来は個人的な音楽が共同体やコミュニティ、古くはサロンのような小さな交遊のための社会性ら結束力を持つようになる瞬間である。

 

 

アルバムの音楽はロックやフォークバラードを融合させた形で繰り広げられる。オープニングを飾る「It' Mirror」はその象徴でもある。そしてソロシンガーという孤高のランナーを支えるのが今回のバンド形式の録音である。ギタリストのメグ・ダフィー、グレッグ・ウルマン、ドラマーのティム・カー、ベースのパット・ケリーはパフューム・ジーニアスの良質なソングライティングに重厚さという利点を付け加えた。もちろん、ブレイク・ミルズのプロデュースも動きのあるアグレッシブな要素をもたらした。全般的にはインディーロックとも解釈できる同曲は、聴きやすい音楽性の中にあるマイク・ハドレアスの繊細なボーカルを巧緻に際立たせている。そして音楽そのものは静けさと激しさの間を行き来しながらサビの部分で一瞬スパークする瞬間を迎える。だが、激しさはミラージュのように遠ざかり永続しない。独特な雰囲気を持つロックソングが緩やかな起伏を描きながら、ほどよく心地よい音楽性が作りあげられる。


ハドレアスはエキセントリックなイメージを押し出すことが多かったが、今回のアルバムに関しては、ポピュラーミュージックの普遍的な側面を探求しているように感じられる。「No Front Teeth」のような曲は、パフューム・ジーニアスのインディーフォークソングのセンスが光る。奥行きのあるサウンド・ディレクションはもとより、70年代のカルフォルニアのバーバンクを吸収し、それらを現代的な作風に置き換えている。タンバリンのパーカションがシンセサイザーのストリングスと合致し、マイク・ハドレアスの甘い歌声と上手く溶け合っている。特に、NZのアルドゥス・ハーディングの参加も同様だが、ボーカル録音に特に力が注がれている。それらが重厚なバーバンクサウンドを思わせるバンドアンサンブルの中で精彩味を持つ瞬間がある。

 

 

パフューム・ジーニアスは従来、内面にある恐れや不安という感覚をロックやポップソングとしてアウトプットする傾向があったが、今回はそういった印象はほとんどない。例外として、「Clean Heart」は前作アルバムのエキセントリックなイメージを実験的なポピュラーソングと結びつけているが、アルバムの終盤に収録されている「Capezio」などを聴くと分かる通り、それは別のセンチメンタルな姿に変貌している。実験的なポップスはネオソウルの系譜にある音楽性と結びつき、今までにはなかった新鮮な音楽に生まれ変わっている。これは作曲家として一歩先に進んだことの証と言えるだろうか。しかし、先にも述べたように、マイク・ハドレアスは、この数年のアメリカの音楽の流れを賢しく捉え、それらを自分のフィールドに呼び入れる。それは70年代のバーバンクサウンドやエルトン・ジョンの時代の古き良きポップソングのスタイルである。これらは例えば懐かしさを呼び起こしこそすれ、先鋭的な気風に縁取られている。そしてソングライターとして持ちうる主題を駆使して、メロディアスなバラードソング、そして才気煥発なロックソングを書き上げている。分けても「Me & Angel」は素晴らしいバラードソングで、ポール・サイモン、エルトンの60、70年代の楽曲を彷彿とさせるものがある。


「Lust For Tomorrow」はまさしくバーバンクサウンドの直系に当たり、 カルフォルニアのフォークロックのシンボライズとも言える。スティールギターのような雄大で幻想的な響きを背景に、太陽と青空、民謡的で牧歌的な音楽が掛け合わされ、見事な楽曲が誕生している。それらのバーバンクサウンドは60年代のビートルズ/ローリングストーンズのようなサウンドと結びつく場合もある。次の「Full on」は彼の持つ幻想的な雰囲気とフラワームーブメントの雰囲気と合致し、サイケデリアとフォーク・ミュージックという西海岸の思想的なテーマを引き継いでいる。それらの概念的なものが見事なインディーフォークサウンドに落とし込まれている。これらの曲は、Big Starのアレックス・チルトンのような米国の最初のインディーズミュージシャンの曲をふと思い起こさせることがある。さらにアルバムの最後でも注目曲が収録されている。

 

7thアルバム『Glory」ではバラードソングという側面に力が込められているのを個人的には感じた。それは昨今失われかけていたメロディーの重要性が西海岸のサウンドと結びついて、うっとりさせるような幻想的なポピュラーソングが生み出されたと言えよう。「Dion」はいわゆるオルタネイトなポップスを中心に制作してきたパフューム・ジーニアスが王道であることを厭わなかった瞬間だ。王道であるということ、それがアルバムタイトルの「栄光」というテーマと巧みに結びつけられている。栄光にたどり着くためには、王道を避けることは出来ない。ただ、アルバムの最終盤では、アーティストらしく実験的なポピュラーーーエクスペリメンタルポップの音楽性がより顕わになる。こういった古典性と新奇性のバランス感覚を上手く身につければミュージシャンとしてさらなる飛躍が期待できる。

 

 

 

84/100

 


「Full On」

ベイエリアのSPDELLLINGがもたらす新しいロックソングのカタチ、R&Bとハードロック/メタルの融合



ベイエリアのエクスペリメンタル・ポップの名手クリスティア・カブラルが名乗るSPELLLINGは、先見の明を持つアーティストとして頭角を現し、ジャンルの境界を押し広げ、豊かな構想に満ちたアルバムと魅惑的なライブ・パフォーマンスで聴衆を魅了している。  


SPELLLINGは、2017年に絶賛されたデビューアルバム『Pantheon of Me』をリリースし、広く知られるようになった。 このアルバムでは、ソングライター、プロデューサー、マルチ・インストゥルメンタリストとしての彼女の天才的な才能があらわとなった。 2019年、カブラルはSacred Bonesと契約し、待望の2ndアルバム『Mazy Fly』をリリースし、彼女の芸術的ヴィジョンをさらに高め、音のパレットを広げた。 


2021年、彼女は画期的なプロジェクト『The Turning Wheel』をリリースし、31人のコラボレート・ミュージシャンによるアンサンブルをフィーチャーしたアルバムをオーケストレーション、セルフ・プロデュースし、アーティストとしてのキャリアを決定づける。このアルバムは満場一致の賞賛を受け、2021年のザ・ニードル・ドロップスの年間アルバム第1位を獲得。  SPELLLINGと彼女のバンド「The Mystery School」は、カブラルの特異なステージプレゼンス、バンドの素晴らしい音楽性、観客との精神的な交感による刺激的なライブパフォーマンスを広く知らしめることになった。


本日、待望の4thアルバム『Portrait of My Heart』が発売される。パーソナルな意味を持つ『Portrait of My Heart』は、SPELLLINGの親密さとの関係を探求、エネルギッシュなアレンジとエモーショナルな生々しさを唯一無二の歌声と融合させ、画期的なかソングライターとしての地位を確固たるものにするラブソングを届けている。 


SPELLLINGが進化を続け、新たな音楽的領域を開拓するにつれ、彼女は生涯一度のアーティストとしての地位を確固たるものにする。リスナーを別世界へと誘う美しいサウンドスケープを創り出す能力と、超越的なライブ・パフォーマンスにより、彼女の熱狂的なファンは後を絶たない。 リリースを重ねるたびに、SPELLLINGは私たちを彼女の世界への魅惑的な旅へと誘い、リスナーの心に忘れがたい足跡を残している。 


クリスティア・カブラルがSPELLLINGとしてリリースした4枚目のアルバムで、ベイエリアのアーティストは、高評価を得ている彼女のアヴァン・ポップ・プロジェクトを鏡のように変化させた。 カブラルが『Portrait of My Heart』で綴った歌詞は、愛、親密さ、不安、疎外感に取り組んでいる。従来の作品の多くに見られた寓話的なアプローチから、人間の心情を指し示すリアリスティックな内容に変化しています。 このアルバムのテーマに対する率直さはアレンジにも反映され、SPELLLINGのアルバムの中で最も鋭く直接的な作品となっている。 


初期のダーク・ミニマリズムから、2021年の『The Turning Wheel』の豪華なオーケストレーションが施されたプログレ・ポップ、それから新しい創造的精神の活力的な表現にいたるまで、カブラルはSPELLLINGが彼女が必要とするものなら何にでもなれることを幾度も証明してきた。推進力のあるドラム・グルーヴと "I don't belong here "のアンセミックなコーラスが印象的なタイトル・トラックは、このアルバムがエモーショナルな直球勝負に転じたことを強烈に体現しています。 メインのメロディが生まれた後、カブラルはこの曲をパフォーマーとしての不安を処理するツールとして使い、タイトでロック志向の構成を選びました。 この変化は、ワイアット・オーヴァーソン(ギター)、パトリック・シェリー(ドラムス)、ジュリオ・ザビエル・チェット(ベース)のコア・バンドによる、エネルギーと即時性を持つ幅広いシフトを反映させ、さらに彼らのコラボレーションがSPELLLINGサウンドの新たな輪郭を明らかにしている。 


クリスティア・カブラルは現在でも単独で作曲やデモを行なっているが、『Portrait of My Heart』の曲をバンドメンバーに披露することで、最終的に生き生きとした有機的な形を発見した。それは彼女の音楽の共有をもとに、一般的なロックソングを制作するという今作のコンセプトに表れ出た。 『The Turning Wheel』のミキシング・エンジニアを務めたドリュー・ヴァンデンバーグ、SZAのコラボレーターとして知られるロブ・バイゼル、イヴ・トゥモアの作品を手掛けたサイムンという3人のプロデューサーとの共同作業に象徴されるように。


主要なゲストの参加は、音楽性をより一層洗練させた。 チャズ・ベア(Toro y Moi)は「Mount Analogue」でSPELLLING名義で初のデュエットを披露、ターンスタイルのギタリスト、パット・マクローリーは「Alibi」のためにカブラルが書いたオリジナルのピアノ・デモを、レコードに収録されているクランチーでリフが効いたバージョンに変え、ズールのブラクストン・マーセラスは「Drain」にドロドロした重厚さを与えた。 各パートはアルバムにシームレスに組み込まれているにとどまらず、アルバムの世界の不可欠な一部のようになった。


多数の貢献者がいたことは事実ですが、結局、『Portrait of My Heart』はカブラル以外の誰のものでもありません。 「アウトサイダーとしての感情、過剰なまでの警戒心、親密な関係に無鉄砲に身を投じても、すぐに冷めてしまう性格など、これまでSPELLLINGとしては決して書きえなかった自分自身の内面について、大胆不敵に解き明そうとした」とカブランは説明している。

 

 

SPELLLING 『Portrait of My Heart』- Sacred Bones


 

 『Portrait Of My Heart』はジャズアルバムのタイトルのようですが、実際は、クリスティア・カブラルのハードロックやメタル、グランジ、プログレッシヴロックなど多彩な音楽趣味を反映させた痛快な作品です。ギター、ベース、ドラムという基本的なバンド編成で彼女は制作に臨んでいますが、レコーディングのボーカルにはアーティスト自身のロックやメタルへの熱狂が内在し、それがロックを始めた頃の十代半ばのミュージシャンのようなパッションを放っている。

 

上手いか下手かは関係なく、本作はシンガーのロックに対する熱狂に溢れ、それがバンド形式による録音、三者のプロデューサーの協力によって完成した。カブラルの熱意はバンド全体に浸透し、他のミュージシャンの心を少年のように変えてしまった。録音としてはカラオケのように聞こえる部分もあるものの、まさしくロックファンが待望する熱狂的な感覚やアーティストのロックスターへの憧れ、そういった感覚が合わさり、聞き応え十分の作品が作り出された。

 

SPELLLINGはシューゲイズのポスト世代のアーティストとして特集されることがあったのですが、最後に収録されている『Sometimes』のカバーを除き、シューゲイズの性質は希薄です。 もっとも、この音楽が全般的には英国のハードロックやエレクトロの派生ジャンルとして始まり、スコットランドのネオアコースティックやアートポップ、ドリームポップやゴシックロックと結びついて台頭したことを度外視すれば……。しかしながら、アーティストのマライア、ホイットニー・ヒューストンのようなR&Bやソウルの系譜に属するきらびやかなポップソングがバンドの多趣味なメタル/ハードロックの要素と結びつき、かなり斬新なサウンドが生み出されています。


また、その中には、ソングライターのグランジに対する愛情が漂うことにお気づきになられるかも知れません、Soundgardenのクリス・コーネルの「Black Hole Sun」を想起させる懐かしく渋いタイプのロックバラードも収録されている。音楽そのものはアンダーグランドの領域に近づく場合もあり、ノイズコアやグランドコアのようなマニアックな要素も織り交ぜられています。しかし、全般的には、ポピュラー/ロックミュージックのディレクションの印象が色濃い。四作目のアルバム『Portrait of My Heart』で、SPELLINGはロックソングの音楽に限界がないことを示し、そして未知なる魅力が残されていることを明らかにします。

 

 

アルバムはポスト世代のグランジに加えて、シューゲイズ/ドリーム・ポップのようなソングライティングと合致したタイトル曲「Portrait of My Heart」で始まります。曲はさほど真新しさはありませんが、宇宙的なサウンド処理がギターロックとボーカルの中に入ると、SF的な雰囲気を持つ近未来のプログレ風のポピュラーソングに昇華されます。また、例えば、ヒップホップで見受けられるドラムのフィルター処理や従来の作品で培ってきたストリングスのアレンジメントを交えて、ミニマルな構成でありながらアグレッシヴで躍動感を持つ素晴らしいロックソングを制作しています。


そして、カブラルは、ソウルミュージックからの影響を反映させつつ、叙情的なボーカルメロディーの流れを形作り、ロックともソウルともつかない独特なトラックを完成させている。オルタネイトなロックソングとしてはマンネリ化しつつある作曲性を彼女持ち前のモダンなソウルやヒップホップからの影響を元にし、新鮮味に溢れる音楽に組み替えている。これは異質なほど音楽の引き出しが多いことを伺わせるとともに、彼女の隠れたレコードコレクターとしての性格をあらわにします。それが最終的に、80年代の質感を持つハードロック/メタル風のポップソングにアウトプットされる。

 

SPELLLINGは、''ジャンル''という言葉が売り手側やプロモーション側の概念ということを思い出させてくれる。それと同時に、アーティストはジャンルを道標に音楽を作るべきではないということを示唆します。


二曲目「Keep It Alive」は、詳しい年代は不明ですが、80年代のMTV時代のポピュラーソングやロックソングを踏襲し、オーケストラのアレンジを通して普遍的な音楽とは何かを探ります。 歌手としての多彩なキャラクターも大きな魅力と言えるでしょう。この曲のイントロでは10代のロックシンガーのような純粋な感覚があったかと思えば、曲の途中からは大人なソウルシンガーの歌唱に変貌していく。曲のセクションごとにボーカリストとしてのキャラクターを変え、曲自体の雰囲気を変化させるというのはシンガーとしての才質に恵まれたといえるでしょう。


カブラルはカメレオンのようにボーカリストとしての性質を変化させ、少なからず驚きを与える。歌手としての音域の広さというのも、音楽全体にバリエーションをもたらしています。さらに音楽的にも注目すべき箇所が多い。例えば、明るい曲調と暗い曲調を揺れ動きながら、内面の感覚を見事にアウトプットしている。SPELLLINGの書くロックソングは遊園地のアトラクションのように飽きさせず、次から次に移ろい代わり、後の展開をほとんど読ませない。そして、聴くごとに意外な感覚に打たれ、音楽に熱中させる要因を形づくる。これはまさに、アーティスト自身がロックソングに夢中になっているからこそ成しうることなのでしょう。そしてさらに、その情熱は、聞き手をシンガーの持つフィールドに呼び入れる奇妙なカリスマ性へと変化していく。

 

序盤では「Alibi」がバンガーの性質が色濃い。アリーナ級のロックソングを現代的なアーティストはどのように処理すべきなのか。そのヒントがこの曲には隠されている気がします。 リズムギターの刻みとなるバッキングに対して、ポップセンスを重視したスタジアム級の一曲を書き上げています。


イントロの後の、Aメロ、Bメロでは、快活で明るいイメージとは対象的にナイーブな感覚を持つ音楽性と対比させ、秀逸なソングライティングの手腕を示しています。この曲ではソロシンガーとしての影響もあってか、バンドアンサンブルの入りのズレがありますが、間のとり方が合わない部分もあえてレコーディングに残されている。音を過剰に修正したりするのではなくて、各楽器のフィルの入り方のズレのような瞬間をあえて録音に残し、ライヴサウンドのような音楽の現実性を重視している。こういった欠点は微笑ましいどころか、音に対する興味を惹きつけることがある。音楽としても面白さが満載です。プログレのスペーシーなシンセが曲の雰囲気を盛り上げる。

 

「Waterfall」は、ホイットニー・ヒューストンの系譜にある古き良きポピュラーソングに傾倒している。簡素なギターロックソングとしても存分に楽しめますが、特にボーカルの音域の広さが凄まじく、コーラスの箇所では3オクターブ程度の音域を披露します。そして、少し古典的に思えるロックソングも、Indigo De Souzaのようなコーラスワーク、それから圧倒的な歌唱力を部分的に披露することで、曲全体に適度なアクセントを付与している。ストレートなロックソングを中心にこのアルバムの音楽は繰り広げられますが、他方、ソウルやポピュラーシンガーとしての資質が傑出しています。ボーカルを一気呵成にレコーディングしている感じなので、これが曲の流れを妨げず、スムーズにしている。つまり、録音が不自然にならない理由なのでしょう。また、曲自体がそれほど傑出していないにもかかわらず、聞きいらせる何かが存在するのです。

 

そんな中、MVにちなんで言うと、カブラルのR&Bシンガーとしての才覚がきらりと光る瞬間がある。SPELLLINGはハスキーで渋いアルトの音域の歌声と、それとは対象的な華やかなソプラノの音域の歌声を同時に歌いこなす天賦の才に恵まれています。


「Destiny Arrives」は、おそらくタイトルが示す通り、デスティニーズ・チャイルドのようなダンサンブルなR&B音楽を踏襲し、それらを現代的なトラックに仕上げています。この曲はバンガー的なロックソング、あるいはバラード調のソウルとしてたのしめるでしょう。ピアノ、ホーン、シンセのアルペジオなどを織り交ぜながら、曲の後半の感動的な瞬間を丹念に作り上げてゆく。もはや使い古されたと思われる作曲の形も活用の仕方を変えると、まったく新しい音楽に生まれ変わる場合がある。そんな事例をカブラン、そしてバンドのメンバーやプロデューサーは示唆しているわけです。


「Ammunition」は、しっとりとしたソウル風のバラードで聞き入らせるものがある。全体的なレコーディングは完璧とは言えないかもしれませんが、音楽的な構成はきわめて優れています。ここでは部分的な転調を交えながら、曲を明るくしたり暗くしたりという色彩的なパレットが敷き詰められている。そして最終的には、アウトロにかけて、この曲は直情的な感覚のメタルやロックソングへと移ろい変わっていく。つまり、この曲にはメタルとソウルという意外な組み合わせを捉えることができます。

 

 

 「Destiny Arrives」

 

 

 

 アルバムの中盤でも聞かせる曲が多い。バンドアンサンブルはR&Bの境界を越え、ファンク・グループとしての性質が強める瞬間がある。例えば、トロイモアとのロマンティックなデュエットが繰り広げられる「Mount Analogue」ではベースがブルースや古典的なファンクのスケールを演奏してスモーキーな音楽を形成している。これらのオーティス・レディングのような古典的なR&Bのスタイルは、SPELLLINGのボーカルが入るや否や、表向きの音楽のキャラクターが驚くほど豹変する。時代に埋もれてしまった女性コーラスグループのような音楽なのか、ないしはモダンソウルの質感を帯び、聞き手を古いとも新しいともいえない独特なフィールドに招き入れる。バックバンドの期待に応えるかのように、カブラルはしっとりした大人の雰囲気のある歌を披露している。さらに、マライア、マドンナ、ヒューストンのような80年代の普遍的なポピュラーを現代に蘇らせています。

 

そういった中で、グランジのニュアンスが登場する場合もある。「Drain」はタイトルはNirvanaのようですが、実際はSoundgardenを彷彿とさせる。ギターのリフもサウンドガーデンに忠実な内容となっています。そして、この曲はクリス・コーネルの哀愁ある雰囲気に満たされていて、バックバンドも見事にそれらのグランジサウンドに貢献しています。これは、カブラルという2020年代の歌手によって新しくアップデートされたポスト・グランジの代名詞のようなトラックと言えるかもしれません。


プロデュースのサウンド処理も前衛的なニュアンスがまれに登場します。音楽の土台はサウンドガーデンの「Black Hole Sun」ですが、曲の後半では、Yves Tumorのようなモダンでアヴァンなエクスペリメンタルポップ/ハイパーポップに変化していく。この曲ではグランジにひそむポップネスという魅力が強調されています。そして、実際的に聴きこませるための説得力が存在する。

 

「Satisfaction」はストーンズ/ディーヴォのタイトルのようですが、実際はヘヴィメタルのテイストが満載です。ギターの大きめの音像を強調し、グラインドコアのようなヘヴィネスを印象付けるが、それほどテンポは過剰なほど早くならない。実際的にはストーナーロックのようにずしりと重く、KYUSSのようなワイルドなロックサウンドを彷彿とさせる。たとえ、それがコスプレに過ぎぬとしても、歌手は直情的なメタルのフレーズの中で圧巻の熱量を示すことに成功している。曲の後半ではメタルのギターリフを起点に、BPMをガンガン早めて、最終的にはグラインド・コアのような響きに変わる。ナパーム・デスのようなスラッシーなディストーションギターが炸裂する。

 

感情的には暗いものから明るいものまで多面的な心情を交えながら、 アルバムは核心となる部分に近づいていく。「Love Ray Eyes」は現代的なロックソングとして見ると、古典的な領域に属しているため、新しい物好きにとっては古いように思えるかもしれません。しかし、不思議と聴きのがせない部分がある。ギターのミュートのバッキングにせよ、シンプルなリズムを刻むドラムにせよ、ボーカリストとの意思疎通がしっかりと取れている気がします。そしてバンドアンサンブルとしてはインスタントであるにしても、穏和な空気感が漂っているのが微笑ましい。ストレートであることを恐れない。この点に、『Portrait of My Heart』の面白さが感じられるかもしれません。また、それは同時に、クリスティア・カブラルの声明代わりでもあるのでしょう。


「Sometimes」はご存知の通り、My Bloody Valentineのカバーソング。シンセやギターの演奏自体が原曲に忠実でありながら、別の曲に生まれ変わっているのが素晴らしい。それはカブラルのポップシンガーとしての才覚が珠玉の名曲を生まれ変わらせたのか。もしくは、シンガーの類い稀な情熱が曲を変容させたのだろうか。いずれにしても、このアルバムを評する際にいちばん大切なのは、アーティストが音楽を心から楽しんでいて、それが受け手にしっかり伝わってくるということでしょう。ロックするというのは何なのかといえば、聞き手の心を揺さぶるほど狂乱しまくること。それが伝播した時に名曲が出てくる。多くのミュージシャンには音楽を心から楽しむということを忘れないでもらいたいですね。

 

 

 

 

86/100

 

 

 

「Alibi」

 

 

 

・SPELLLINGのニューアルバム『Portrait of My Heart』はSacred Bonesから発売中です。アルバムのストリーミングはこちら


*初掲載時にアーティスト名に誤りがございました。正しくはSPELLLINGです。訂正とお詫び申し上げます。


シカゴの伝説的なポストロックグループ、Tortoiseが2016年以来の新曲「Oganesson」を発表した。

 

軽快なパーカッション・タッチと7/4拍子のレイヤー・グルーヴが特徴の「Oganesson」は、好奇心旺盛な雰囲気がある。 アトモスフェリックなシンセが浮かんでは消え、ジェフ・パーカーのギター・ワークが曲のメロディーを導いている。 

 

詳細は明かされていないが、"Oganesson "はインターナショナル・アンセムとノンサッチ・レコードから "間もなく "リリースされるバンドのニューアルバムに収録される予定だ。

 

この新曲は、今週末にテネシー州ノックスヴィルで開催されるビッグ・イヤーズ・フェスティバルの出演を控えたトータスから届いた。 今週木曜夜のセットで「Oganesson」とその他の新曲を初披露する予定で、シカゴの伝説的なアンサンブル、トータスにとって新時代の幕開けを告げる。 

 

今のところ、Big Earsはトータスにとって唯一の2025年コンサートだが、ニューアルバムの制作が進行中であるため、今後もツアーに出る可能性が高い。

 

 

 「Oganesson」




▪️ポストロックの名盤特集はこちらをお読み下さい。

 


Black Country, New Road(ブラック・カントリー・ニュー・ロード)が、近日リリース予定のアルバム『Forever Howlong』からニューシングル「For the Cold Country」をドロップした。ホーンがフィーチャーされたクワイアと変拍子のロック、カントリーを結びつけた美麗な楽曲となっている。バンドとしては従来最もセイルティック民謡に近づいた瞬間を捉えることが出来る。

 

「For the Cold Country」は、ピアニスト兼アコーディオン奏者のメイ・カーショウがリード・ヴォーカルを務めるアルバム初の楽曲だ。完璧にコントロールされたこの曲は、このアルバムで最も轟く瞬間のひとつへと発展していく。下記をチェックしよう。


Black Country, New Road『Forever Howlong』は4月4日にNinja Tuneからリリースされる。


「For The Cold Country」


スーパーチャンクがニューシングル「Bruised Lung」をリリースした。「Misfits & Mistakes: Singles, B-sides & Strays 2007-2023』のリリース以来、2曲目の新曲となる「Bruised Lung」は、ロザリ・ミドルマンのギターソロがもたらす別世界のようなエネルギーに満ちた、筋肉質な名曲。(楽曲のストリーミングはこちら)


バンドはインディーロックの王道、教科書のようなサウンドを提示する。その中にはスーパーチャンクらしいホロリとさせるような穏和さと温かな雰囲気が漂っている。メロディーラインに関しては名曲「Driveway To Driveway』を彷彿とさせることに旧来のファンは気がつくかも知れない。


バンドのフロントマンのマック・マコーガンは「Bruised Lung」について次のように説明している。


「混乱して眠れず、その理由を説明できないことを歌った曲。 二日酔いのようだが、飲酒によるものではない。 (外見は普通だが)ロザリがスタジオに入り、ウージーなシュレッドと素晴らしいハーモニーを加えてくれた」



「Bruised Lung」



Superchunk Tour Date:

Sep 09 Washington, DC – Black Cat

Sep 10 Philadelphia, PA – Ardmore Music Hall

Sep 11 New York, NY – Bowery Ballroom

Sep 12 Boston, MA – The Crystal Ballroom

Sep 13 Portsmouth, NH – 3S Artspace

Sep 14 Woodstock, NY – Bearsville Theater

Sep 16 Pittsburgh, PA – Thunderbird Cafe & Music Hall

Sep 17 Cleveland, OH – Grog Shop

Sep 18 Kalamazoo, MI – Bell’s Eccentric Cafe

Oct 09 Pioneertown, CA – Pappy & Harriet’s

Oct 10 Las Vegas, NV – Best Friends Fest

Oct 13 Denver, CO – The Gothic Theatre

Oct 14 Salt Lake City, UT – Urban Lounge

Oct 15 Boise, ID – Shrine Social Club Ballroom

Oct 17 Seattle, WA – Tractor Tavern

Oct 18 Portland, OR – Mississippi Studios

Oct 19 Portland, OR – Mississippi Studios

Oct 21 San Francisco, CA  – The Independent

Oct 23 Los Angeles, CA  – Teragram Ballroom