ラベル Pops の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Pops の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示


グラミー賞シンガー、Miley Cyrus(マイリー・サイラス)が、コロムビア・レコードから5月30日にリリースされる次のアルバム『Something Beatutiful(サムシング・ビューティフル)』の発売日をついに明らかにした。


タイトルと発売日と共に、サイラスはアルバムのカバーアートも公開した。 このポートレートは、有名なファッションフォトグラファー、グレン・ルックフォードによって撮影されたもので、サイラスは1997年のティエリー・ミュグレーのアーカイブを身に着けている。 


『サムシング・ビューティフル』は、サイラスの9枚目のスタジオ・アルバムとなり、2023年の『エンドレス・サマー・バケーション』に続いて2年ぶりとなる作品となる。 サイラスとショーン・エヴェレットがエグゼクティブ・プロデューサーを務めるこの新作には13曲が収録され、プレスリリースによると「ヴィジュアル・アルバム」となっている。



その "大胆な美学 "に関する更なる詳細は、サイラスが『サムシング・ビューティフル』からの追加楽曲やビジュアルをまだ共有していないため、不明のままだ。 知っているのは、サイラスのプロジェクトでの主なコラボレーターはプロデューサーのエヴェレット(『エンドレス・サマー・バケーション』も手がけた)であり、アルバムのために彼女が最も影響を受けたのは、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』と2018年のニコラス・ケイジの映画『マンディ』である。 

 

▪次世代のポップスター、Cooper Phillip  「Last One」でポップ・ミュージックとカルチャーの境界を打ち破る 

 


ロサンゼルスを拠点とする、クラシック音楽のレッスンを受けたミュージシャンであるCooper Phillip(クーパー・フィリップ)は、NYの摩天楼のような歌声と堂々としたハッスル&アティテュードを持ち、ポップ・ミュージックとカルチャーの境界を打ち破る大胆で鈍感な存在である。 


このアーティストの突出した個性は、彼女の高い声域と本能的な音楽的直感にマッチしている。 そのため、彼女は独自に話題を呼ぶ存在として頭角を現し、何百万ものストリーミングを記録、WONDERLAND.、American Songwriter、Earmilk、Hollywood Lifeなどから高い評価を得ている。 


現在、クーパーは2024年の一連のシングルと、今後発表される多くの曲によって、かつてないほど世界的な舞台で彼女の声を増幅させようとしている。


「私は静かな変容の時を過ごしましたが、私は今、アーティストとしての本当の自分を知っています」と彼女は叫ぶ。 「私は正直な音楽の作り、重要なことについて話している」


子供の頃、彼女は地方都市サラトフを故郷としていた。 母親がクラシック・バイオリニストとしてツアーに出ていたため、クーパーは叔母と祖母に見守られて育った。 それでも、音楽に対する母親の情熱を自然に吸収していった。 


クーパーは、早くからピアノとハープを習い、合唱団で声を磨いた。 チャイコフスキーやプッチーニの不朽の名曲と、マライア・キャリー、ホイットニー・ヒューストンに代表されるR&B界のスーパースターのアクロバティックな歌唱に、彼女はまるで世界を二分するかのように没頭した。 


天才肌の彼女は、名門モスクワ国立クラシック・アカデミーに入学し、ピアノ、音楽理論、ハープ、ジャズ、ブルース、声楽、バレエを学び、修士号取得を目指した。 

 

以降、友人に誘われてニューヨークに渡り、19歳の若さでビッグアップル(ニューヨーク)のシーンに身を投じることになった。 生き延びるため、地元のクラブから結婚式まで、歌えるところならどこでも歌った。  「サバイバル・モードで、ただハッスルし、学び、もがいていました」彼女は振り返る。 


自分の技術に真摯に打ち込むことで未来を切り開くかのように、彼女はロサンゼルスでレコーディングする機会を得て、それから一度も西海岸を離れることはなかった。 シングルを1枚ずつ進化させ、インスタグラムで30万人以上のオーディエンスを獲得。 「Party By Myself」のSpotifyの全再生数は160万回を超え、続く 「Not Perfect」は56万1000回のストリーミングを記録した。 

 

”WONDERLAND”は彼女にスポットライトを当て、「Head Over Heels」を "力強いトランペットときらびやかなシンセサイザーのフィール・グッド・パーティー "と称賛した。

 

”アメリカン・ソングライター”は、"リスナーをまるで別世界のような場所と時間に誘う "と約束した。 2022年の「Masterpiece」は、Digital High、Celeb Mix、The Fox Magazineから賞賛を浴び、"彼女の強烈なドライブ感、高鳴るボーカル、情熱的なソングライティングで、フィリップは彼女自身をジャンルのトップに押し上げている "と絶賛された。 


現在、彼女は "Last One "をリリースしている。 この曲は、完全に生きること、一秒一秒を大切にすること、愛と気遣いをもって人生を受け入れることを思い出させてくれる。 

 

私たちはしばしば、気が散ることにとらわれたり、ネガティブな感情にとらわれたり、自分のためにならないことにエネルギーを費やしたりしてしまう。 しかし、大局的に見れば、毎日が、創造し、愛し、成長し、周囲に喜びをもたらす機会なのだ」


クーパー・フィリップはまた、70カ国以上で5万人以上の歌手を指導してきた発声指導メソッド、バイオフォニックスの創始者でもある。


クーパーの音楽の根底にあるのは、高揚感と紛れもないメッセージだ。


"私はただ、この世界をより幸せにするためのアイデアをたくさん持っている自由な魂よ "と彼女は言い残す。 「私の音楽を聴いて、自己観察とパワーを持ち帰ってほしい。 自分の直感とハートに耳を傾けてほしい。 信じること、創造すること、幸せになること、そして自分で決断すること。 強くなることは可能だと教えてあげたい」


クーパーのコメント。

 

時間は最も貴重な贈り物でありながら、私たちが思っている以上に早く過ぎていく。 この "Last One "は、完全に生きること、一秒一秒を大切にすること、愛と気遣いをもって人生を受け入れることを思い出させてくれる。 

 

私たちはしばしば、気が散ることに巻き込まれ、否定的な感情を抱いたり、自分のためにならないことにエネルギーを費やしてしまう。 しかし、大局的に見れば、毎日が創造し、愛し、成長し、周りの人々に喜びをもたらす機会なのだ。


クーパー・フィリップのエンパワーメント・アンセムはSpotifyやYouTubeで大流行し、現在までに1500万回以上のストリーミングを記録している。 彼女の音楽は、WONDERLAND、American Songwriter、Hollywood Lifeなどで賞賛されている。 

 

ニューシングルは、西海岸と東海岸の都会的なイメージが彼女の持つ音楽的なセンスと融合し、 スタイリッシュでバンガー的なポップソングに仕上がっている。ポスト・ガガ的な存在として今後の活躍に注目したい。

 

 

 「Last One」

 

 

 

A classically trained Los Angeles-based musician with a skyscraping voice and unapologetic hustle and attitude, Cooper Phillip asserts herself as a bold, blunt, and boundary-breaking force for pop music and culture. The artist’s outsized personality matches her towering vocal range and instinctual musical intuition. As such, she’s independently emerged as a buzzing presence on her own terms, tallying millions of streams and earning acclaim from the likes of WONDERLAND., American Songwriter, Earmilk, and Hollywood Life, to name a few.

Now, Cooper amplifies her voice on the global stage like never before with a series of 2024 singles and much more to come.

“I went through some quiet time of transformation, but I know who I truly am as an artist now,” she exclaims. “I’m making honest music and talking about things that matter.”

As a kid, she called the provincial city of Saratov home. With mom on tour as a classical violinist, Cooper grew up under the watch of her aunt and grandmother. Nevertheless, she naturally absorbed her mother’s passion for music. Early on, she picked up piano and harp in addition to honing her voice in choir. As if split between worlds, she immersed herself in the timeless compositions of Tchaikovsky and Puccini as well as the vocal acrobatics of R&B superstars a la Mariah Carey and Whitney Houston. A prodigy in her own right, she gained admission into the prestigious Moscow State Classical Academy, studying piano, music theory, harp, jazz, blues, voice, and ballet and working towards a Master’s Degree. Invited to New York City by some friends, she wound up cutting her teeth in the Big Apple scene at barely 19-years-old. In order to survive, shesang anywhere she could—from local clubs to weddings.  “I was in survival mode, just hustling, learning, and struggling,” she recalls.

As if manifesting the future through a diligent commitment to her craft, she accepted an opportunity to record in Los Angeles and never left. Sheevolved one single at a time and gained palpable traction, building an audience of over 300K on Instagram. “Party By Myself” accumulated north of 1.6 million Spotify streams followed by “Not Perfect” with 561K Spotify streams. WONDERLAND spotlighted her and hailed “Head Over Heels” as “a feel-good party with empowering trumpets and glittering synths.” American Songwriter promised, “It entices the listener into an almost otherworldly place and time.” 2022’s “Masterpiece” attracted praise from Digital High, Celeb Mix, and The Fox Magazine who proclaimed, “With her intense drive, soaring vocals, and passionate songwriting, Phillip is elevating herself to the top of her genre.”

Now she has released "Last One", a song about how precious time is. She shares, "The song is a reminder to live fully, to cherish every second, and to embrace life with love and care. Too often, we get caught up in distractions, holding onto negativity or expending energy on things that don’t serve us. But in the grand scheme, every day is an opportunity—to create, to love, to grow, and to bring joy to those around us."

Cooper Phillip is also founder and creator of Biophonics, a vocal teaching method that has taught over 50,000 singers in over 70 countries.

In the end, Cooper transmits an uplifting and undeniable message at the heart of her music.

“I’m just a free soul with lots of ideas on how to make this world a happier place,” she leaves off. “When you listen to me, I hope you take away self-observation and power. I want you to know you can listen to your gut and your heart. Believe, create, be happy, and make your own decisions. I want to show you it’s possible to be strong.”

 

Her new single ”Last One" combines West Coast and East Coast urban imagery with her musical sensibilities to create a stylish banger of a pop song. It is sure to attract attention as a post-Gaga release.

 

 Circuit Des Yeux 『Halo On The Inside』

Label: Matador

Release: 2025年3月14日


Listen/Stream

 

 

Review         潮流を変えるモーダルなアートポップ

 

マタドールに移籍して発表された『Halo On The Inside』。シカゴのミュージシャン、ヘイリー・フォアの最新作で、シンガーとしてのひとつの変容の瞬間が刻印されている。しかし、このアルバムの主題の芽生えは、2021年のアルバム『Sculping The Exsodus』に見出すことが出来た。オーケストラストリングスとの融合を基底にしたシアトリカルなアートポップ。その本領はまだ数年前には発揮されず、ぼんやりとした印象に留まっていたが、今作ではより明瞭な感覚をもって聴覚を捉える。

 

ギリシャ神話をモチーフにして、半身半獣の怪物、悪魔的なイメージを持つヤギ、それらの神話的なモチーフは、地下室のスタジオでの午後9時から午前5時という真夜中の雰囲気と密接に結びつけられることになった。録音現場のひんやりとした静けさ、それは制作者の内面にある感覚と符合し、アルバムのサウンドの全体を作り上げる。独特な緊張感と強固なキャラクターを持つ異形としての実験的なアートポップ。これらの全9曲は、トリップ・ホップとハイパーポップ、グリッチポップ、それらの先鋭的な音楽性を内包させた孤絶したアルバムの一つである。

 

アルバムにはダンサンブルなポップが裾野のように打ち広がっている。結局、それをどのような形でアウトプットするのか、アーティストは相当な数の試行錯誤を重ねただろうと推測されるが、デモーニッシュなイメージ(悪魔的な印象)と小形式のオペレッタのような歌唱が全般のエレクトロニックの要素と合致し、その上にロックやメタルといった音楽が取り巻き、薄く、もしくは分厚い層を形成している。

 

これがアルバムを聴いたとき、複数の層がぼんやり揺らめくように聞こえる要因なのかもしれない。なおかつ、それらのサウンドとしての機能をはっきりと浮かび上がらせたのは、フリーフォームの即興、絵画、オーディオ・ビジュアルといったヘイリー・フォアが親しんでいるというリベラルアーツの全般、そして、内的な探検を通して得られたもう一人の自己の"分身"である。これらは、例えば、カフカの『変身』のようなシュールレアリズムの範疇にある内的な恐怖としてポップサウンドの向こうがわに渦巻いているというわけである。 そのアンビバレントな(抽象的な)音の層に目を凝らし、耳を静かに傾けたとき、一つの核心のようなものに辿り着く。これはもしかすると、音楽を通したフランツ・カフカ的な探検を意味するのではないか、と。

 

本作は、EDMをベースにしたダークを超越したエレクトロポップ「Megaloner」で幕を開ける。そして同じく、Underworldのエレクトロをベースにした「Canopy Of Eden』といった曲を聞くと、音楽そのものが旧約聖書の黙示録の要素を持って繰り広げられる。聞き手はそれらを宗教としての符牒ではなく、アーティスティックな表現下にあるポップソングという側面で捉えることになろう。


しかし、その中では、ブリューゲルのバベルの塔や洪水から救済するためのノアの方舟といった西洋絵画などのモチーフに度々登場する絵画的な表現性によって音楽という名の媒体が展開されていく。これらのポップソングとしての構造の背景には、明らかに中世の西洋的な概念が揺らめく。それが的確なソングライティング、そして中性的な印象を放つアルトやバリトンの音域に属するヘイリー・フォアのボーカルによって、強固な音楽空間が綿密に構築される。音楽としては、ロックらしい情熱を持つ瞬間があり、二曲目「Canopy Of Eden』ではユーロビートやレイヴのようなアシッド・ハウスに近い音像の広い奥行きのあるサウンドが熱狂的に繰り広げられる。決して安易に箱庭の音楽を作ろうとせず、ライブでの熱狂を意図したサウンドが楽しめる。

 

対象的に、「Skelton Key」では、イントロや導入部の箇所においてアルバムの冒頭にある悪魔的なイメージ、旧約聖書の終末的な余韻を残しつつ、神話に登場するようなエンジェリックな印象を持つ曲へと変化させる。曲の始まりでは、ゆったりしたテンポ、清涼感のあるアンビエント風のサウンドと結びつき、緊張感に満ちた音楽が繰り広げられるが、中盤からは、暗黒の雲間から光が差し込むような神秘的なイメージを持つストリングスとピアノの美麗な旋律進行が顔をのぞかせる。すると、当初の印象が一変し、それと相反する祝福的な音楽性が登場する。それらを間奏の楔として、その後再び、ノイズの要素を用いたハイパーポップが後半で登場する。これらの盛り上がりがどのように聞こえるのか、実際の音源で確かめてみてください。

 

収録曲そのものが続編のように繋がる。続く「Anthem Of Me」では再びノイジーなロックやメタル風のサウンドが驚きをもたらす。内的な探検をもとにした内的な自己の発見を端的に表そうという試みなのだろうか。それは、メタル的な興趣を持つギターの代わりとなるシンセのジェネレーター、そしてそれとまったく相反するオペレッタ風のシアトリカルなボーカルというように、これこそ新時代のロック・オペラなのではないかと思わせる何かが込められている。

 

しかし、これは、例えば、クイーンやザ・フーのような大衆的なロック・オペラではない。 現代的なステージ演出とインスタレーションを仮想的に表現した音楽の新しいオペラやミュージカルの形式なのである。それはアルバムの全体的なテーマである恐怖というプロセス、そしてその時間を前に巻き戻して、おそれのない境地まで辿り着こうとする表現者としての歩みが暗示されているのである。


そして実際的に、アーティストは仮想的な舞台の演出の中にある恐ろしい内的な感覚という形而下の世界の情景をダンテの『神曲』の地獄編のように通り抜け、別の境地を探ろうとする。それはまるで中世のイタリアの作家が長い迷路に迷い込んだときや、地獄の門を船でくぐり抜ける情景をサウンドスケープとして脳裏にぼんやり蘇らせることがある。また、この曲では聴取下にある音楽という単一の音楽の意義を塗り替える趣旨が込められているように思えてならない。

 

 

アルバムの音楽にはセイント・ヴィンセントやガガのようなメインストリームにある歌手の音楽とも相通じる感覚も含まれていると思うが、稀に異彩を放つ瞬間がある。「Cosmic Joke」では明らかにPortisheadの影響下にあるトリップホップの要素が体現されている。 『Dummy』の時代のサウンドだが、それらはやはりオペレッタの歌唱やピアノの実験的なサウンドワークによって別の境地に達している。この曲こそ、無響室のひんやりとした感覚、真夜中から明け方の時間、そういった制作現場のアングラな雰囲気がリアルに乗り移っている。アルバムを象徴するような一曲といえるかもしれない。全体的なミックスやマスタリングのアトモスフェリックな音響効果の中で、ひんやりした印象を持つダークなボーカル、サウンド・コラージュのように響きわたる低音部を担うピアノ、それらが組み合わされ、アルバムの中で最も情感あふれる一曲として聞き入らせる。一度聴いただけではわからない、奥深さを持った素晴らしい楽曲である。

 

 

イギリスの象徴的な作曲家/プロデューサー、ジェイムス・ブレイクの系譜に位置付けられる「Cathexis」ではハモンド・オルガンを彷彿とさせるシンセサイザーの伴奏を用い、恐怖とは異なる哀愁や悲哀の瞬間を体現させようとしている。これらはセンチメンタルな響きを持つギターライン、そしてボーカルとハーモニーの層を作りながら、アルバムの最も奇跡的な瞬間ーー淡麗な美しさーーを形作ることがある。さらに注目すべきは、このアルバムの音楽のほとんどは、縦の構造を持つ和声によって音楽が書かれたのではなく、横の構造を持つモーダルの音楽によって紡がれ、従来にはなかった偶発的なハーモニクスが形成されるということである。

 

こういった音楽を聴いていると、和声法だけで音楽を作るのには限界があり、マイルス・デイヴィスのようなモーダル(Modal)の要素がどこかで必要になってくることが分かる。デイヴィスの音楽には、和音という概念が稀にしか出てこないこともあるが、これは複数の音階の横の動きにより、自由度の高い音楽構造を構築していくのである。和声は、全体的な構成の中で限定的な働きしかなさず、和声にこだわるほど自由な音楽性が薄れたりする。その反面、ポリフォニーの音楽(複数の声部の重なり)の方が遥かに作曲の自由度が高くなる。それはなぜかと言えば、音楽の構造を限定させず、次の意外な展開を呼び入れることが可能になるからである。

 

 

一曲目や二曲目を除けば、アートポップやハイパーポップというように、ポップソングの枠組みを取り払うための前衛的な試みが中心となっている。しかし、最も着目すべきは、『Halo On The Inside』は単なる録音作品以上の意味が込められているということである。例えば、ライブ会場でどのように響くのか、もしくはファンを楽しませるための音楽として書かれた曲も発見出来る。

 

「Truth」では、例えば、アヴァロン・エマーソンにも引けを取らないようなDJらしい気質を反映させた刺激的なダンス・ポップに挑戦している。この曲には、ヘイリー・フォアという人物の音楽フリークとしての姿を捉えられる。それは、制作者としての研究者気質のアーティストとは対照的に''音楽を心から楽しもう''という姿勢を映し出す。アルバムは全体的にアーバンな印象で縁取られている。これは中西部の文化を背景とし、現代のミュージシャンとして何が出来るかという未知なる挑戦でもある。同時にアーティストとしての矜持を体現しているのだろう。

 

「Organ Bed」はダンサンブルなビートを生かしたアップテンポな楽曲であるがオーネット・コールマンやアリス・コルトレーンのフリージャズの範疇にある前衛的なサックスフォンを登場させている。 これらはジャズに託けて言うと、フリー・ポップ(ポップソングの解放)のような意味が込められている。

 

 

創作活動の全般における困惑や戸惑いのような感覚は、シンガーソングライターを悪魔的な風貌に変化させた。けれども、実際のサウンドが示す通り、音楽的な収穫や手応えは非常に大きかったように思える。それは音楽的な蓄積、及び、それにまつわる幅広い知識は、プロデューサーの協力により音楽作品として結実した部分もあるかもしれないが、同時にアーティストが自らの志す音楽をじっくり煮詰めていったことに拠るところが大きいのかも知れない。本作の最後でも期待を裏切らない。

 

「It Takes My Pain Away」は、90年代のモグワイの音響派としてのポストロックをインスト曲として更新している。あるいはエイフェックス・ツインの初期のアンビエントの音楽的なアプローチに共鳴する内容である。こういった曲は、90年代や00年代では男性ミュージシャンの仕事と相場は決まっていたが、時代を経て性別に限定されなくなった。前作に比べると劇的かつ飛躍的な進化を遂げた。これは肯定的に見ると、音楽的な変容というプロセスがどこかで必要だったのだろう。サーキット・デ・ユーの従来の最高傑作の一つが誕生したといえるだろう。

 

 

 

 

86/100

 

 

 



 

 「Skelton Key」-Best Track

 

ムンバイを拠点に活動するシンガーソングライター、Kairvina(カイリヴィナ)の新曲「Eternal」のミュージックビデオとシングルをリリースした。女性的な感覚を見事に表現した美しいポップソングとなっている。下記よりミュージックビデオをご覧ください。

 

見事なソウルむき出しのポップ・バラードは、混乱、混沌、そして古き良き自己卑下というレンズを通して人生を見つめたものだ。このアーティストは、ポップ、アダルト・コンテンポラリー、ソウル、フォーク、そしてインド古典音楽までも融合させ、聴く者を夢中にさせる、とプレスリリースでは説明されている。

 

インドで生まれ育ったオルタナティヴ・シンガー・ソングライター。彼女の音楽への情熱は幼い頃に見いだされ、夜な夜な中学時代の恋愛、驚くほど破滅的な失恋、陰鬱な魂探しのアンセムなどを歌い、曲を書いていた。その創造的なエネルギーが彼女を独学でギターを学び、そのアングスティ・スピリットを分かち合うようになるのは時間の問題だった。



一念発起して、カイリヴィナは18歳でロサンゼルスに移り住んだ。自分のアートに没頭し、バンドを結成して数え切れないほどのライブをこなし、自分が望むストーリーを会話形式で語る方法を開発した。

 

ジェフ・バックリー、フィービー・ブリジャーズ、エリオット・スミスの音楽にインスパイアされた彼女は、生々しくドリーミーなヴォーカルをソフトなソウルとロックに溶け込ませ、ストーリーテリングと詩への明確な情熱を込めた独自の音楽アプローチを生み出した。彼女の歌詞は内省的でデリケートな傾向があり、しばしばユーモアを交えて人間の不完全さを表現する。

 

「Eternal」は、2025年最初のシングルであり、この後も多くのシングルがリリースされる予定である。現在ムンバイ在住のカイリヴィーナは、さらなる粘り強さと楽観主義で自分のサウンドを追求し続けている。

 

 

 「Eternal」

 

 

Kairvina, a singer/songwriter based in India/Mumbai, has released a music video and single for her new song “Eternal”. It is a beautiful pop song that beautifully expresses a sense of femininity.

 

The stunning soul-baring pop ballad is a look at life through the lens of confusion, chaos, and good ol'self deprecation. The artist blends pop, adult contemporary, soul, folk and even Indian classical music for an enthralling listen.

 

 Kairvina is an alternative singer/songwriter born and raised in India. Her passion for music found her at a very young age, with evenings spent singing and writing songs about middle school relationships, surprisingly devastating heartbreaks, and brooding soul-searching anthems. It was only a matter of time before that creative energy led her to self-learn guitar and share that angsty spirit.



Taking a leap of faith, Kairvina moved to Los Angeles at the age of 18. Immersing herself in her art, she formed a band, played countless gigs, and developed a conversational way of telling the stories she wants. Inspired by Jeff Buckley, Phoebe Bridgers, and Elliott Smith, she has created her own approach to music- raw and dreamy vocals melting into soft soul and rock, with a clear passion for storytelling and poetry. Her lyrics tend to be introspective and delicate, often with an added pinch of humour, giving a stage to human imperfections.



Her new song "Eternal" is a look at life through the lens of confusion, chaos, and good ol'self deprecation. Her first single of 2025, with many more to follow, she is on a journey of carving the musical world she's been restlessly envisioning.



Currently residing in Mumbai, Kairvina continues to pursue her sound with even more tenacity and supposed optimism.

 


高い評価を得ているソングライター、Emily Haber(エミリー・ヘイバー)がニューシングル「Nostalgia(ノスタルジア)」をリリースした。

 

「''Nostalgia''は、私が憧れつつも決して手に入れることのできなかった子供時代へのオマージュであり、切ない夢と成長の傷心を混ぜ合わせたものです」と彼女は語っている。

 

この曲は、グラミー賞を受賞したDaniel Dávila(カニエ・ウェスト、タイ・ダラー・サイン、ティンバランド)がプロデュースした同名のEP『Nostalgia』からの最初のリードシングルである。

 

エミリーのソングライティング・キャリアとコラボレーションは、アンディ・グラマー、ジョイ・オラドクン、グリフィン、アビー・アンダーソン、ミキ・ラツーラ、デヴォン・ガブリエラなど、幅広いアーティストに及んでいる。また、CNN、The Sex Lives of College Girls、The L Word、The Hills、Batwoman、Teen Momなど、テレビや映画でも活躍している。



叙情的なリリックと深遠なストーリーテリングで知られるエミリー・ヘイバーの歩みは、回復力、創造性、そして音楽への生涯の愛に満ちたものだ。生まれつき両耳に重度の難聴を持つ彼女は、4歳から補聴器をつけていた。その恩返しとして、このニューシングル「Nostalgia」の収益の一部を、聴こえの贈り物を与え、人々と周囲の世界をつなぐスターキー聴覚財団に寄付する。 

 

 

「Nostaalgia」

 

Acclaimed songwriter Emily Haber has released a new single, “Nostalgia. This song shows the importance of brevity in popular music.

 

She shares, "The single, “Nostalgia,” is my tribute to the childhood I longed for but never truly had, blending wistful dreams with the heartbreak of growing up." The song is the first off of her upcoming EP of the same name produced by Grammy-winning Daniel Dávila (Kanye West, Ty Dolla $ign, Timbaland). 

 

Emily's songwriting career and collaborations span a wide range of artists, including Andy Grammer, Joy Oladokun, Gryffin, Abby Anderson, Miki Ratsula, Devon Gabriella, and more. Her work has also resonated across television and film, with placements on CNN, The Sex Lives of College Girls, The L Word, The Hills, Batwoman, and Teen Mom...

 

Known for her evocative lyricism and profound storytelling, Emily’s journey is one of resilience, creativity, and a lifelong love for music. 

 

Born with severe hearing loss in both ears, she wore hearing aids from the age of four. Giving back, the artist will donate a portion of the proceeds of the new single to The Starkey Hearing Foundation, which gives the gift of hearing and connecting people with the world around them.  

 


【Emily Haber(エミリー・ヘイバー)】

 

 
エミリー・ヘイバーは、受賞歴のあるファミリー・バンドで育った幼少期から、ロサンゼルスで人気のソングライターになるまで、音楽漬けの人生を送ってきた。エモーショナルなリリックと深みのあるストーリーテリングで知られるエミリーの歩みは、回復力、創造性、そして音楽への生涯の愛に満ちたものだ。



家族のためにキャリアを中断していた2人の音楽家の両親のもとに生まれたエミリーは、新たな章の幕開けとなった。


彼女が6歳のとき、両親は"Laughing Pizza"という子供向けバンドを結成し、エミリーを前面に押し出した。ソニー/エピック・レコードと契約したラフィング・ピザは、PBSキッズや全米のステージで演奏し、10年間全米をツアーした。


7歳から17歳まで、エミリーはツアーに明け暮れ、生涯の思い出を作り、将来の音楽活動の基礎を築いた。



2015年、ステージ4の卵巣がんで母親を亡くしたが、この喪失は彼女の人生と芸術に大きな影響を与えた。この喪失は、彼女の人生と芸術に大きな影響を与えた。10年間、家族だけで活動してきた経験を持つエミリーは、この喪失をきっかけに、勝利と傷心の両方によって形作られたソロの音楽の旅を始めた。


若い頃にプロとして働いていたエミリーは、ユニークな問題に直面していた。生まれつき両耳に重度の難聴を持つ彼女は、4歳のときから補聴器をつけていた。10年間、エミリーは直感と筋肉の記憶に頼って演奏してきた。


補聴器はしばしば演奏中に故障し、彼女はほぼ無音でライブをこなさなければならなかった。13歳のときに補聴器技術が進歩するまで、エミリーは本当に自分の声を聞くことができなかった。エミリーはついに、音楽に対する独自の感覚と、多くの人が音を理解する現実とを結びつけることができた。



19歳のとき、エミリーは自分の道を切り開こうと決意してナッシュビルに移った。彼女はラフィング・ピザでの経歴を秘密にし、一からキャリアを築いていった。

 

彼女はベルモント大学に短期間通った後、この街の活気あるソングライティング・コミュニティに飛び込んだ。エミリーは、象徴的なブルーバード・カフェで働き、たゆまぬ共同作業で技術を磨き、音楽に没頭した。


グラミー賞を受賞したソングライター、リズ・ローズとのEddie's Atticでの偶然の出会いは、極めて重要なものだった。リズはエミリーを自宅に招いて作曲をさせ、ナッシュビルの結束の固いソングライティング・サークルを紹介し、夢を追いかけるよう励ました。


2017年10月、エミリーはPrescription Songsと契約し、多作なプロの作曲家としてのキャリアをスタートさせた。


彼女のコラボレーションは、アンディ・グラマー、ジョイ・オラドクン、アンナ・クレンデニング、グリフィン、アビー・アンダーソン、カロベエ、ミキ・ラツーラ、デヴォン・ガブリエラ、エリカ・ジェインなど、幅広いアーティストに及んでいる。また、CNN、The Sex Lives of College Girls、The L Word、The Hills、Batwoman、Teen Momなど、テレビや映画でも活躍している。

 

2023年3月、エミリーは、USCのソングライティング・クラスのパネル・スピーチを依頼されたときに、共同プロデューサーのダニエル・ダヴィラと出会った。そして一緒に彼女のEP『Nostalgia』を制作した。

 

エミリーは初めて、自分にしか語れない物語があると感じ、この作品集にはストーリーテラーとしての彼女のユニークな声が反映されている。EP『Nostalgia』は、エミリーの成長と芸術的ヴィジョンの証である。本作のタイトル・トラックは、彼女が憧れながらも決して手に入れることのできなかった子供時代へのオマージュであり、切ない夢と成長期の傷心をブレンドしている。


 


Emily Haber has spent her life immersed in music, from her earliest days growing up in an award-winning family band to becoming a sought-after songwriter in Los Angeles. Known for her evocative lyricism and profound storytelling, Emily’s journey is one of resilience, creativity, and a lifelong love for music.



Born to two musical parents who had paused their careers to focus on their family, Emily’s arrival marked the beginning of a new chapter. When she was six, her parents started a children’s band called "Laughing Pizza", bringing Emily front and center. Signed to Sony/Epic Records, Laughing Pizza toured the United States for ten years, performing on PBS Kids and on stages nationwide. From age 7 to 17, Emily lived on the road, creating lifelong memories and building the foundation for her future in music.



In 2015, she lost her mother to stage 4 ovarian cancer—a loss that profoundly influenced her life and art. With a decade of experience working solely with her family, Emily’s loss began her solo music journey, shaped by both triumph and heartbreak. 



Working professionally in her younger years, Emily faced unique challenges. Born with severe hearing loss in both ears, she wore hearing aids from the age of four. For a decade, Emily performed by relying on instinct and muscle memory. 

 

Her hearing aids frequently failed mid-performance, leaving her to navigate live shows in near silence. It wasn’t until advancements in hearing aid technology at 13 that Emily truly heard her own voice, and by 17, she experienced intricate layers of music for the first time thanks to the Starkey Foundation.

 

Emily finally was able to combine her unique feel for music with the reality of how most people understand sound - giving her a 6th sense that is palpable when listening to her recordings. 



At 19, Emily moved to Nashville, determined to carve her own path. She kept her history with Laughing Pizza private, building her career from the ground up. She briefly attended Belmont University before diving headfirst into the city’s vibrant songwriting community. 

 

Emily worked at the iconic Bluebird Cafe and co-wrote tirelessly, honing her craft and immersing herself in music. A chance meeting with Grammy-winning songwriter Liz Rose at Eddie’s Attic proved pivotal. Liz invited Emily to her house to write, introduced her to Nashville’s tight-knit songwriting circle, and encouraged her to pursue her dreams.



In October 2017, Emily signed with Prescription Songs, marking the start of a prolific professional songwriting career. Her collaborations span a wide range of artists, including Andy Grammer, Joy Oladokun, Anna Clendening, Gryffin, Abby Anderson, carobae, Miki Ratsula, Devon Gabriella, and Erika Jayne. Her work has also resonated across television and film, with placements on CNN, The Sex Lives of College Girls, The L Word, The Hills, Batwoman, and Teen Mom.



In March 2023, Emily met her co-producer, Daniel Dávila, when they were both asked to speak on a panel for a songwriting class at USC. Together, they created her upcoming EP, Nostalgia. For the first time, Emily felt there were stories only she could tell, and this collection reflects her unique voice as a storyteller. Nostalgia is a testament to Emily's growth and artistic vision. The title track is a tribute to the childhood she longed for but never truly had, blending wistful dreams with the heartbreak of growing up.

 



 

 今週紹介するのはカリフォルニア州サンタアナで育ち、現在はロサンゼルスに住むシンガーソングライターのミヤ・フォリックです。シンガーは2015年の『Strange Darling』と2017年の『Give It To Me EP』という2枚のEPで初めて称賛を集めた。フォリックの2018年テリブル・レコーズ/インタースコープから発売されたデビューアルバム『Premonitions』は、NPR、GQ、Pitchfork、The FADERなど多くの批評家から称賛を浴びたほか、NPRのタイニー・デスク・コンサートに出演し、ヘッドライン・ライヴを完売させ、以降、ミヤは世界中のフェスティバルに出演した。


 『Erotica Veronica(エロティカ・ヴェロニカ)』のアルバム・ジャケットは、ミヤ・フォリックがアンジェルス国有林の高いところにある泥の穴の縁に腰を下ろし、大地と原始の中間に化石化した熱病の夢のように手足を悠々と広げている姿をとらえている。 それは適切な肖像画とも言えるでしょう。ミヤは本能に突き動かされ、その複雑さに行き詰まるのではなく、成長の泥沼に引き込まれていく。 この図太い精神が、彼女に最新フル・アルバム『Erotica Veronica』(近日発売、Nettwerk Music Group)をセルフ・プロデュースさせたのだった。キャッチーな歌詞のセンス、鋭敏な音楽的職人技、そして彼女の特徴である跳躍するようなアクロバティックな歌声が飽和状態となっている。


 『エロチカ・ヴェロニカ』の前身であるデビュー作『Premonitions』と2ndアルバム『Roach』は、いずれも青春狂想曲として各メディアから高評価を得ている。 『エロティカ・ヴェロニカ』についても同じようなことを言いたくなる。結局のところ、この新しいアルバムは、快楽主義と恐怖の青春の淵で揺れ動きながら、性の探求に真っ向から突っ走る女性の姿を示している。 しかし、若者の野生の自由とは異なり、これらの放浪の精神は、生きた経験によってのみ得られる特別な知恵と深みに下支えされている。おそらく、『Premonitions』の魔女のような謎解きと、ローチが持っている苛烈なまでの正直さが、彼女を官能の世界へ深く飛び込む準備をさせたのでしょう。



 ミツキ、フェイ・ウェブスター、ジャパニーズ・ハウスとツアーし、長編映画『Cora Bora』の音楽を担当したこの数年の集大成であるこのアルバムは、ミヤのプライベートな世界への回帰である。 ハチミツのように甘くて、そして心の痛みのよう苦々しい、それぞれの薬効を交互に聴かせてくれる。 ミヤのパワーは、好奇心の輪郭の下に湧き上がり、このシンガーソングライターを大胆であると同時に心に染みる深遠な存在にしている。 『エロチカ・ベロニカ』は、彼女のサイコセクシュアル、サイコセンシュアルの傑作であり、自己実現と統合の万華鏡のような肖像画である。


このアルバムは、残酷で燃え尽きそうな多忙なツアーの後、1ヵ月半の間に書き上げられました。 ストレートなインディ・ロックのレコードを作ろうと決意したミヤは、アルバムの大半をギターで書き上げた。


 共同プロデューサー兼ドラマーとしてサム・KS(ユース・ラグーン、エンジェル・オルセン)を迎え、ギターにはメグ・ダフィー(ハンド・ハビッツ、パフューム・ジーニアス)、ウェイロン・レクター(ドミニク・ファイク、チャーリ・XCX)、グレッグ・ウールマン(パフューム・ジーニアス、SML)、ベースにはパット・ケリー(パフューム・ジーニアス、リーヴァイ・ターナー)といった、頻繁にコラボレートしているミュージシャンを起用した。 


 これらのミュージシャンの個人的なスタイルとスキルに寄り添いながら、フォリックはリアルなライブ・サウンドを捉えることを意図してスタジオに入った。 透明感のある音像は、このアルバムのテーマである猫のゆりかごにふさわしい。 リリックでは、相反する気分や感情が交差し、まるでミヤが自分自身の内側の迷路を通って活力を取り戻す道をたどっているかのようだ。


 タイトル曲『エロチカ』は、ミヤが息を弾ませながらロマンチックに歌っている。 "白昼の街角で女の子といちゃつきたいんだ/太陽に焼かれた彼女のひび割れた唇が見えるようだ。僕にちょっと寄り添っているように"。 この曲は、うららかな春の光に照らされたシダのように展開し、きらめくピアノの旋律が私たちを幻想へと誘う。 


しかし、多幸感あふれる春の空気の下で、私たちはこのレコードにつきまとうジレンマの匂いを嗅ぎ取らざるをえない。この告白の受け手には相手がいる。この曲とアルバムは、自分の欲望が文化が許す狭いチャンネルよりも複雑な場合、どうするのが正しいのだろうか、と問いかけているようだ。 


このアルバムのテーマは、自分自身と社会を巧みに結びつけている。最近のアメリカ国内のクイアに対するファシスト的な弾圧、そしてその迫害に関する痛みや慟哭を聞いたとしてもそれは偶然ではない。「このアルバムは、ヘテロ規範的な人間関係の構造の中で、あるいはそういった社会の中で、クィアであることについて歌っている」とミヤは説明する。 「私たちはお互いに、自由に探求し、自分自身の正しい道を見つけるための十分な余地を与えていないと思う」


 

Miya Folick 『Erotica Veronica』- Nettwerk Music Group 






 ミヤ・フォリックは、このアルバムにおいて、自身の精神的な危機を赤裸々に歌っており、それは奇異なことに、現代アメリカのファシズムに対するアンチテーゼの代用のような強烈な風刺やメッセージともなっている。アルバムの五曲目に収録されている「Fist」という曲を聞くと、見過ごせない歌詞が登場する。これは個人の実存が脅かされた時に発せられる内的な慟哭のような叫び、そして聞くだけで胸が痛くなるような叫びだ。これらは内在的に現代アメリカの社会問題を暗示させ、私達の心を捉えて離さない。時期的には新政権の時代に書かれた曲とは限らないのに、結果的には、偶然にも、現代アメリカの社会情勢と重なってしまったのである。
 
 
 現在、Deerhoofなど米国の有志のミュージシャンが、これらのマイノリティに対する、ある意味では圧政とも呼ぶべき悪法や動向に関して声を上げている。そして、ロサンゼルスのフォリックのアルバムも同様に、表側には噴出しないアメリカの内在的な問題が繊細に織り込まれている。しかし、それが例えば、クラシックなタイプのロックソングと融合したとき、このシンガーのダイナミックな実像が浮かび上がってくる。結局、そういった音楽には圧倒されるものがあるというか、何かしら頭を下げざるえない。つまり、深い敬意を表するしかなくなるのだ。
 
 
 本作が意義深いと思う理由は、ミヤ・フォリックの他に参加したスタジオ・ミュージシャンのほとんどがメインストリームのバックミュージシャンとして活躍する人々であるということ。このアルバムは、確かにソロ作ではあるのだけれど、複数の秀逸なスタジオ・ミュージシャンがいなくては完成されなかったものではないかと思う。特に、 メグ・フィーのギターは圧巻の瞬間を生み出し、全般的なポピュラー・ソングにロックの側面から強い影響を及ぼす。
 
 
 序盤は、旧来から培ってきたインディーポップのセンスが生かされ、聴きやすく軽やかなナンバーが並んでいる。アルバムの冒頭を飾る「Erotica」白昼の街角で女の子といちゃつきたいんだ/太陽に焼かれた彼女のひび割れた唇が見えるようだ。僕にちょっと寄り添っているように"。 この曲は、うららかな春の光に照らされたシダのように展開し、きらめくピアノの旋律が私たちを幻想へと誘う。 映画のサウンドトラックのような神秘的なイントロに続いて、軽快なインディーポップソングが続いていく。全体的なイメージとは正反対に軽快な滑り出しである。
 
 
 続く「La Da Da」も同様に爽やかな雰囲気を持つフォーク・ソングとなっている。心に染みるような切ない歌声をベースとしたメロの部分とは対象的に曲のタイトルを軽やかに歌う時、ロック的な性質が強調され、珠玉のポップソングが生み出される。それらの旋律をなぞるピアノもまたそれらの楽しい気分やイメージを上手く増長させる。まるでこの曲は草原のような開けた場所で歌うシンガーソングライターの姿を音楽として幻想的に体現させたかのようである。
 
 
 この数年、ミヤ・フォリックは旧譜においてインディーポップやオルトポップの作曲に磨きをかけてきたが、それらが見事に花開いた瞬間が先行シングルとして公開された「Alaska」である。「あなたを失うかもしれない "というセリフは二重表現になっています。カバー・アートのために日本語に訳したとき、「I am able to 」という動詞と、「It is possible [to lose you]」という動詞を使いましたとミヤ・フォリックは説明する。「この曲は、自分との関係が自分にとってどれだけ大切なものなのかについて。そして自分との関係をどれだけ大切にしているのか、折り合いをつけるための曲でもある。私の人生でこの人を失ったら悲しいけれど、私自身を失ったら同じように悲しい」 曲のベースとなるシンセのピアノの演奏とフォリックのボーカルは、人間関係を失うことへのおそれを歌っている。ギター、ドラム、シンセを中心とした曲は、2分40秒ごろから軽快な雰囲気に変化して、未来に向けて歩みだすような明るさがある。
 
 
 「Felicity」は打ち込みのサウンドとポピュラーソングが結びつき、良曲に昇華されている。LAのインディーポップソングの系譜をこの曲に見出すことが出来るはずである。この曲は、(多くの曲とは異なり)もともとアコースティック・ギターで書かれた曲ではなかった。その代わりにジャレッド・ソロモン(レミ・ウルフ、ドラ・ジャー、ローラ・ヤング)と共同でこの曲を書き、シンセと木管楽器を重ねた。ジル・ライアンのフルートは、ミヤのボーカルの軽快さの下で陽気に揺れ、祝福の感覚を与える。 「この曲は、あまり知られていないフェリシティという言葉の定義を指し示している。"自分の考えに適切な表現を見つけること"であり、ミヤは、"このアルバムの礎石である”と定義づける。 フェリシティが示唆するように、適切な表現は、私たちを愛する人たち、そして私たち自身とのより親密なつながりをもたらしてくれる。 


 「Fist」はセンチメンタルな雰囲気を持ち、胸を打つような素晴らしいポップソングとなっている。アルバムのハイライト曲の一つとなりそう。アコースティックの弾き語りで始まり、そして抑揚をつけながら、劇的なロックソングへと移行していく。この曲の冒頭では、切ない感覚を織り交ぜながら続く展開へと繋げていく。日常的な暮らしをテーマにしながら、ミヤ・フォリックは自分自身の存在する理由のようなものを探る。その中には自虐的を越え、かなりシリアスな表現も垣間見ることが出来るが、この時、感動的な瞬間が訪れる。曲の後半ではディストーションギターが轟音性を増すが、それらの轟音は途絶え、曲の最初のメロがアウトロで帰ってきて感動的な余韻を残す。まるで数年のアーティストの人生をかたどったかのようである。
 
 
 
 
「Fist」 
 
 
 
 
 
 
 「This Time Around」はタイムマシーンのように過去へ舞い戻る曲だという。 アコースティックギターをベースにしたポップソングで、気持ちを揺り動かす何かがある。この曲は、ミヤがタイムトラベルして、遠い昔の恋愛に耽溺していた自分の姿に戻るところから始まる。 ダルセットなボーカルが、諦念と虚弱さを描いた衝撃的な歌詞と厳しいコントラストを描いている。 この曲は過去の自分への子守唄のように感じられる。 ''携帯で読んだ手紙には、あなたをイかせるために、なぜ私が首を絞められなければならなかったのか教えてくれた''と歌うように、現在のミヤが、パズルのピースをするように、自分の苦しみを現在のジグソーパズルにどうはめ込むかを考えているのが聞こえてくる。このトラックにおいて過去の自分との折り合いをつける。アルバムの中で最も異色とも言えるのが続く「Prism Of Light」。80,90年代のニューウェイブやシンセポップの系譜を踏襲しているが、サビがアンセミックな響きを醸し出す。


 「ライブ録音を意識して作られた」という本作であるが、その影響が色濃く出た瞬間もある。「Hate Me」はグランジ的な主題であるが、実際の曲は暗さと明るさという対極の感情が表現されている。明確に言及するのは難しいものの、インディーロックという制作前の着想が上手く昇華された楽曲である。そこには、過去の戸惑いや苦悩、逡巡といった感情に別れを告げるような感覚が漂い、聞き手にカタルシスのような心地良い爽快感をもたらす。それはロックソングとして少数派であるがゆえ、強固な説得力を持つ。特に、ここでもバンドの盤石な演奏と同時にギタリストのメグ・ダフィが活躍し、絶妙なコード進行でボーカルの旋律の輪郭づけをしている。そして、曲自体は、なだらかな曲線を描くようにして上昇していき、高音域のボーカルが最後になって登場する。そして、この瞬間、何か上空を覆っていた雲間から光が差し込むような神々しさが立ちあらわれる。最後のヴァーズまで高い音域のボーカルを温存し、対極的なフレーズを作り出す。実際的に、バンガーを意識した見事なポップソングとして楽しめるはず。

 

 

真を穿った作曲性(ソングライティング)とも言うべきか、ミヤ・フォリックの音楽は非常にリアリティがあるような気がする。しかし、アルバムの休憩ともいうべき箇所があり、これが良い味を出している。アーティストの真面目な性格とは異なるフレンドリーな表情を見出すことも出来る。「Hypergiant」はヨットロックやチルアウト風の曲で、まさしく西海岸の音楽シーンに呼応した内容となっている。細野晴臣の「Honemoon」のような歌謡と洋楽の融合の雰囲気を感じることも出来る。シリアルな作風の中にあるオアシスのような存在である。しかし、その蜃気楼のような幻影は、まるで夏の陽炎のように遠ざかり、再びリアリティのある楽曲が立ち上がる。

 

 

しっとりしたバラードのように始まる「Love Wants Me Dead」も素晴らしい曲であり、アルバムの最後に深い余韻を残す。静かな立ち上がりから、徐々に胸を打つ感動的な音へと変化していくが、これらの一曲の中で何か内側に芽吹いた茎のようなものがすくすくと成長し、そしてこの曲は大輪の花を咲かせる。もしくはさなぎであった歌手が蝶になり大空に羽ばたいていく瞬間を見事に録音として把捉している。それはまた、失望や絶望のような感情から汲み出されるほんの束の間の人生の鮮やかな息吹の奔流のようでもある。そしてそのパワフルなエネルギーを感じ取った時、ポピュラーソングの本物の魅力が表側にあらわれる。この曲は、序盤のハイライト曲「Fist」と同じように、ダイナミックな変遷をたどり、そして劇的な瞬間を曲の最後で迎える。再三再四、言及しているが、このアルバムを傑作に近い内容にした理由は、ソングライターが何を制作したいのか明確にしていたこと、そして、それを手助けする秀逸なバックミュージシャンがいたからである。表向きの功績としてはミヤ・フォリックのものであるが、おそらく歌手はこのアルバムに参加した多くのミュージシャンに感謝しているに違いない。そしてその瞬間、まったくこの曲の意味が反転し、愛に溢れたものに変わるということなのである。

 
 
 本作の最後は、まるでその余韻に浸るかのように静かな印象を持つインディーフォーク・ソングで締めくくっている。最後の曲だけはデモソングのような音質を強調しているが、ボーカルは非常に美しい。そして、その美麗なボーカルの質感を上手く引き出すために、木管楽器が活躍する。アルバムの冒頭でほのめかされたシネマティックなサウンドにクローズで回帰するという円環構造である。これらの11曲は殆どむらがなく、そして続けて聞かせる集中性を保っている。そして大切なのは、音楽を制作する個人だけではなく、正確に言えば録音に携わった人々の思いが凝縮されていることである。一方ならぬ思い入れが入り込んでいるため、胸を打つ。聴いたかぎりでは、作品の構成が完璧であり、録音の水準も極めて高い。そして何より、人の手で何かひとつずつ丹念に音楽を作り上げているような気がして素晴らしいと思った。今年上半期の最高のポピュラーアルバム。個人的にも何度も聞き返したいと思っています。
 
 
 
 
 
96/100
 
 
 
 
「Love Wants Me Dead」
 
 
 
 
*Miya Folickのニューアルバム『Erotica Veronica」はNettwerk Music Groupから本日発売。 アルバムのストリーミングはこちらから。
 
 





Sam Fender 『People Watching』


Label: Polydor

Release: 2025年2月21日

 


Review

 

才能というものの正体が何なのか、本作を聴くとよりよく理解できる。『Seventeen Going Under』で大きな成功を掴んだ後、サム・フェンダーは地元ニューカッスルのセント・ジェームス・パークで公演を行う予定だったが、精神的な披露を理由にキャンセル。しばらくシンガーはお休みを取っていた模様であるが、ライブも再開し、徐々に本来の調子を取り戻しつつある。

 

前作ではメンタルヘルスなどの危機にある若者に対する応援ソングを中心に発表し、イギリス国内で不動の人気を獲得したサム・フェンダー。二作目のアルバムも良盤と言っても良いのではないか。スティングのような音域の広いボーカルは前作から引き継がれ、そしてそれらがドン・ヘンリーのような軽快なAORと巧みに合致している。こういった音楽を倦厭する人は少ないのではないか。ソングライターというのは、毎回のように何らかのテーマを探さねばならないので非常に大変であるが、どうやら傑出した歌手のもとには主題が向こうからあらわれるらしい。テーマというのは探すのではなく、すでに日常のどこかに偏在するものである。今回、サム・フェンダーは家族の問題、分けても彼にとって代理母のような存在をテーマにしている。

 

「タイトル曲『People Watching』は、僕にとって代理母のような存在で、昨年11月に亡くなった人のことを歌っています。私はその最期、彼女の側にいて、彼女の隣の椅子で眠っていたんだ。この曲は、その場所と家への往復で、私の頭の中をよぎっていたことを歌っている。彼女は僕にステージに上がる自信を与えてくれた人だし、いつも『なんで受賞スピーチで名前を出さないんだ』って言われていた。でも今は、曲(とアルバム)全体が彼女につながっている。彼女が今どこにいようと、『そろそろ坊や』と言って見守ってくれていることを願っている」

 

身近な人の死というのはかなり重い主題のように思えるが、生と同じく誰もが通らざるをえない扉である。ここでフェンダーは愛する人の彼岸への旅立ちを悲嘆で包むのではなく、温かい慈しみの心で送り出そうとしている。死とは今生から見た悲しみであるが、もちろん、そのなかに肯定の意味も見出すことが出来る。そこには現世的な概念からの魂の開放という前向きな考えも込められている。そして、それらの考えがアルバムのオープナーからほの見える気がしてならない。おそらく、タイトル曲を聴けば、本作が十分にポピュラーとして応力を持ち、多くの人々にとって普遍的な内容であることが理解していただけるだろう。それは死というレンズを通して生きる人が何をするべきなのかが暗示されている。軽やかに前進し、走り出すような感覚を持ったライトなロックソングは、彼が暗闇から立ち上がり、そして明るい方へ向かってゆっくりと歩き出す様子を捉えている。つまり、それが何らかの明るい感覚に縁取られている理由なのだろう。彼のポップ/ロックソングからは、走馬灯のように愛する人との記憶が立ち上ってくる。それがつまり、音楽として説得力を持ち、何らかの意義深さがある要因でもある。

 

 

特にサム・フェンダーのボーカルは、中音域から高音域に切り替わる時に、最も感動的な瞬間が訪れる。これはライブではすでにおなじみと言えるが、そういったボーカリストとしての素晴らしさを続く「Nostalgia's Lie」で確認することが出来る。ビリー・ジョエルを彷彿とさせるクラシカルなバラードソングは、サム・フェンダーの手にかかると、モダンなポピュラーへと変容する。それらがアコースティック/エレクトリックのギターの多重録音という、スコットランドのネオ・アコースティックなどでの象徴的なギターロックの要素と結び付けられる。サビの部分では、郷愁的な感覚が生み出され、やはりそこには温和な感覚がにじみ出ているのである。

 

前回のアルバムでは''懐古主義''と書いた覚えがあるが、それはフェンダーの楽曲に80年代から90年代のポピュラーの影響が感じられたからである。そして、二作目では2020年代にふさわしいポピュラーソングを書いたという印象を抱く。ただ、それもやはり オアシスのようなブリットポップの象徴的な音楽、そしてヴァーヴのようなポスト・ブリット・ポップの世代からの色濃い影響をうかがわせる。「Chin Up」はオアシスのヒット曲「Woderwall」を彷彿とさせるギターワークが光る。一方でボーカルの方はヴァーヴのリチャード・アシュクロフトのソングスタイルを彷彿とさせる。これらの組み合わせに、彼の音楽的な背景の一端を確認することも出来る。そして、何らかの影響こそ受けているが、それらをフェンダーらしいソングライティングや歌唱に昇華している。つまり、彼の歌は、やはり2020年代の象徴とも言えるのだ。2ndアルバムでは少し風変わりな音楽も含まれている。アコースティックギターの演奏をフィーチャーし、起伏に富んだ音楽を擁する「Wild Long Lie」はシンガーソングライターの新しい方向性を象徴づける楽曲といえるかもしれない。ゆったりしたテンポに戯れるように歌うフェンダーだが、この曲は途中シンセサイザーのアレンジを通して、ダイナミックな変遷を描く。

 

「Arm's Length」はオープニングと同様に、80年代のAORやニューウェイブのサウンドを活用し、シンプルなコード進行のロックソングに昇華している。近年、複雑化しすぎた音楽をより省略したり簡素化する一派が出てきている。昨年のファビアーナ・パラディーノのようにゆったりとしたスケールの進行やシンプルな曲作りは、POLICEのヒットソングのソングライティングのスタイルと組み合わされ、2020年代のUKロックのベースになったという気がしている。これはスティングだけではなく、The Alan Person's Project、Tears For Fearsのヒットソングの系譜に属している。これはもちろん類似性を指摘したいというのではなく、ヒットソングには必ずステレオタイプが存在し、過去の事例を活かすことが大切だということである。もちろん、それを現代の歌手としてどのように表現するのかが、2020年代に生きる人々の課題なのである。そして何かに似すぎることを恐れずに、自分なりの表現をつきつめていくのが最善であろう。

 

 

前作を聴いたかぎりでは、フェンダーの音楽が何年か経つと形骸化するのではないかという不安要素もあった。しかし、このアルバムではそういった心配は無用である。彼は、依然として80年代のディスコやダンスミュージック、華やかなMTV時代のポピュラー音楽に背を支えられ、軽妙で味のある2020年代の音楽を作り上げている。よく個性とは何かと言われることもあるが、それは端的に言えば、他者とは相異なる性質を示すことである。そして、それが意外なものであればあるほど、多くの人に受け入れられる可能性がある。音楽にちなんで言えば、他の一般的な人々とは異なる音楽的な背景がその人物の個性をはっきりと浮かび上がらせる。


例えば、一般的な音楽と相容れない性質を示すことを恐れていると、だんだんと音楽は無個性になり、均一化せざるを得ない。そして、一般的な要素を肯定しながらも、何かしら特異点を設けることが重要になってくる。それは音楽を演奏したり歌う人にとっては、その人が育った土地、環境、人生そのものを意味する。その点では、サム・フェンダーは本当の意味での他者が持たないスペシャリティを示しつつ、それをマイルドな方法で提示することに長けている。そしてそれこそが、ポピュラーミュージックでの大きな成功を掴むための秘訣でもあると思う。「Crumbing Empire」は、今多くの人が求めているタイプのポピュラーソングだと思う。それは聞きやすく、そして口ずさみやすいという商業音楽の基礎をしっかりと踏まえたものである。

 

『People Watching』は文句のつけようのない完成度だと思う。これらの楽曲の中では、苛烈なライブツアーの中で掴んだ手応え、大多数のオーディエンスとの共鳴する瞬間など、実際の体験者しかわからない感覚を踏まえて、的確なポピュラー/ロックソングとして昇華させているのが素晴らしい。

 

中盤ではビートルズのアートロックからの影響を感じさせる「Rein Me In」など、前作にはなかった実験的な音楽の方向性が選ばれている曲もあり、今後の制作にも期待したい。また、本作の中で最も力強くパワフルな「TV Dinner」は、フェンダーの新しいアンセム曲が誕生したと言えるかも知れない。この曲は、アリーナのスタジアムのライブパフォーマンスのために書かれた曲ではないかという推測も出来る。少なくともライブで素晴らしい効果を発揮しそうなトラックだ。


きわめつけは、クローズを飾る「Remember My Name」となるだろう。シンガーとしての圧倒的なスケールの大きさを感じさせるし、彼はこの曲で内側に秘めるタレントを惜しみなく発揮している。これまでで最もドラマティックなバラードソングである。ホーンセクションとサム・フェンダーのボーカル融合は新たな「ウォール・オブ・サウンド」が台頭したことを印象付ける。

 


 

95/100

 

 

 Best Track 「Remember My Name」



ニューキャッスル出身のシンガーソングライターSam Fender(サム・フェンダー)は、リリース予定のピープル・ウォッチング』から4曲目のシングル、最後の曲として「Remember My Name」を発表した。発売日を前にチェックしてもらいたい。


"リメンバー・マイ・ネーム "は、亡き祖父母に捧げたラブソングだ。祖父母はいつも私たち家族をとても誇りに思ってくれていたから、祖父母に敬意を表し、認知症を患っていた祖母の世話をしていた祖父の視点から曲を書いたんだ。 このビデオは僕にとって本当に特別なもので、関係者の皆さんに感謝したい。


I, Daniel Blake』のスター、デイヴ・ジョンズがビデオの主役を演じ、愛、交友関係、そして最終的な喪失の押しつぶされそうな必然性を描いている。

 

 このビデオには、イングランド北東部出身のイージントン・コリアリー・バンドも出演しており、トラック自体にもフィーチャーされている。 デイヴ・ジョンズは、俳優のフィリッパ・ブリッグスとリードを分かち合っている。 ビデオの監督はヘクター・ドックリルが務めた。


ポリドール・レコードは、サム・フェンダーの代理として、認知症ケアに音楽を不可欠なものにするために、音楽が認知症患者にもたらす人生を変える効果に基づき、アトリー財団に寄付を行った。


サム・フェンダーのニューアルバム「People Watching』は2025年2月21日にポリドール・レコードよりリリースされる。

 

 

「Remember My Name」

◆静謐なピアノ・ミュージックをヒップホップ的手法で拡張させた新感覚のサウンドスケープ
 現代アンビエント・シーンで注目を集めるザ・ヴァーノン・スプリング最新作


現代アンビエント・シーンの注目株であるUKのThe Vernon Spring(ザ・ヴァーノン・スプリング)のニューアルバム『Under a Familiar Sun』が5/9リリース決定。(配信の予約はこちらから)


本日アルバムからの先行シングルとして、作家のMax Porterのポエトリーリーディングをフィーチャーした「The Breadline (feat. Max Porter)」と、その姉妹曲「Requiem For Reem」が配信開始されました。(ストリーミング配信はこちら)


ノース・ロンドン出身で、ブライトン在住のアーティスト/作曲家/ピアニスト/プロデューサーのザ・ヴァーノン・スプリング)ことサム・ベステ。大きな飛躍を遂げる可能性に満ちた待望のニュー・アルバム『Under a Familiar Sun』がついにリリース。2025年のアンビエント・シーンで大きな注目を集める可能性があります。


2008年に弱冠17歳にして故エイミー・ワインハウスのワールド・ツアーのピアニストに抜擢され、彼女との仕事はその後、MF DOOM、ケンドリック・ラマーのプロデューサーSounwave、Beth Orton、Joy Crookes、Kano、Gabriels、マシュー・ハーバートとのコラボレーションへの道を拓きました。




20代半ばにオルタナ・ソウル・トリオ・ヘジラ(ヘジラ)を結成し、自主レーベル・リマ・リモを創設。ジャズのバックグラウンドと現代的なエレクトロニック・プロダクションを融合させ、ジャズでもポスト・クラシカルでもない幽玄で繊細なピアノ・ミュージックを確立し、2021年のデビューアルバム『A Plane Over Woods』はロングセラーを記録。その後、LPのみでリリースしたマーヴィン・ゲイの名作『What's Going On』を独自に解釈したアルバム『What's Going On』も高い評価を獲得しました。


最新作『見慣れた太陽の下で』、『彼の芸術的進化の幅の広さと深みを物語る作品です。作曲とプロセスに基づく長い実験期間を経て生まれたもので、これまでの即興的なプロダクションから、より複雑なアプローチへの転換を果たしました。


プロデューサーのIko Nicheとともにアルバム制作を進めるなかで、ヒップホップの影響や、サンプリングを活用した手法を取り入れながら、The Vernon Springならではのピアノ・コンポジションを全編にわたって貫き、前人未到のサウンドスケープを描き出しています。


ベステのスタジオで制作・ミックスされたこのアルバムには、「The Breadline」の詩でアルバム全体のコンセプトにインスピレーションを与えた作家のマックス・ポーター、直感的なアレンジが没入感のあるレイヤーと深みを加えたチェリストのケイト・エリス、NYブルックリンの拠点に活動するヴォーカリスト、プロデューサー、作家、天体物理学博士のadenなどが参加し、それぞれ魅惑的な表現で作品に命を吹き込んでいます。


現在、パートナーと3人の息子とともにブライトで暮らすベステは、本作を「家庭内の親密な探求」であると同時に、「この不確かな時代における責任についてのより広い瞑想」として作り上げました。親密なテーマと普遍的なテーマの間を揺れ動き、交差する現実が音楽そのものをはるかに超える共鳴する音空間を構築します。


個人的な献身と道徳的な意識を融合させながら、新たなサウンドの可能性を追求するアーティストの姿を示し、知覚がきらめく新たな光のなかで反響する深遠な作品となっています。


このアルバムは核家族へのラブレターだ。私はその愛がより広い世界とどのように関係しているのかを問うている。芸術は政治主義を切り開くために政治的である必要はない。これは希望に満ちたレコードなんだ。


ヴァーノン・スプリングの音楽は近年、静かで美しい音楽を求めるリスナーの耳を魅了してしつづけています。その芸術的ヴィジョンを抽出し、拡張させた本作は、このプロジェクトが新たな革新の段階へと転換点となるもの、優雅でありながら勇敢なアプローチに驚嘆する意欲作となっています。


アートワークはBon Iverの『22, A Million』『i,i』を手がけるヴィジュアル・アーティストEric Timothy Carlsonが担当。収録曲のヴィジュアライザーは同じくボン・イヴェールの『i,i』をカールソンとともに手がけたヴィジュアル・アーティスト、アーロン・アンダーソンとエリック・ティモシー・カールソンによるもの。



【新作アルバム情報】

 

 

アーティスト:The Vernon Spring(ザ・ヴァーノン・スプリング)

タイトル:アンダー・ア・ファミリア・サン(Under a Familiar Sun)

品番: CD: PDIP-6612 / LP: PDIP-6613LP

価格:CD:2,500円(税抜)/LP:2,750円(税込)

LP: 5,000円(税抜) / 5,500円(税込)

発売日:2025年5月9日(金)

バーコード:CD: 4532813536125 / LP: 4532813536132

フォーマット:国内盤CD / LP / デジタル

ジャンル:ポスト・クラシカル・ジャズ / アンビエント


レーベル:p*dis

販売元・発売元:株式会社インパートメント


パッケージ仕様:ブラックヴァイナル+グロススポット加工ジャケット+プリントインナースリーヴ+帯トラックリスト


トラックリスト:

 1. Norton

2. The Breadline (feat. Max Porter)

3. Mustafa (feat. Iko Niche)

4. Other Tongues

5. Under a Familiar Sun

6. Fume

7. In The Middle

8. Fitz

9. Esrever Ni Rehtaf (feat. aden)

10. Counted Strings (feat. aden)

11. Requiem For Reem

12. Known


<プロフィール>

UKノース・ロンドン生まれブライトン在住のアーティスト/作曲家/ピアニスト/プロデューサー、サム・ベステスによるソロ・プロジェクト。弱冠17歳でエイミー・ワインハウスのワールド・ツアーのピアニストに抜擢され、キャリアをスタート。豊富なマルチ・インストゥルメンタリストでもある。


2021年にリリースしたソロ・デビュー・アルバム『A Plane Over Woods』がロングセラー。同年、発売から50周年を迎えたマーヴィン・ゲゲイの代表作『What's Going On』に対するレスポンスとなる作品『What's Going On』をリリース。同アルバム収録の名曲群を独自の解釈でカヴァーしたこの作品は各所で大絶賛された。


Lucy Dacus(ルーシー・ダカス)が3月28日にGeffenからニューアルバム『Forever Is a Feeling』をリリースする。3作目のシングル「Best Guess」のミュージックビデオが公開された。ビデオは1990年代のカルバン・クラインの広告を引用し、ナオミ・マクファーソン、カーラ・デルヴィーニュ、トワ・バード、ERファイトマスターらが出演している。PVは以下より。


プレスリリースによると、「Best Guess」はルーシー・デイカスによるユニークなラブソングで、クィアな優しさのアンセムである。


「Forever Is A Feeling』は、2021年にマタドールからリリースされたアルバム『Home Video』に続く作品。2023年には、ジュリアン・ベイカーとフィービー・ブリジャーズとともにダカスをフィーチャーしたスーパーグループ、boygeniusの一員としても同アルバムをリリースしている。


ブリジャーズ、ベイカー、ブレイク・ミルズ、バーティーズ・ストレンジ、ホージャー、マディソン・カニンガム、コリン・パストーレ、ジェイク・フィンチ、メリーナ・ドゥテルテらが新作に参加している。


ダカスは2022年秋から2024年夏にかけてアルバムのほとんどの曲を書いた。「感情で頭を蹴られた」と彼女は以前のプレスリリースで語っている。「恋に落ち、恋に落ち...。物事を創造するためには、物事を破壊しなければならない。そして、私は本当に美しい人生を壊してしまった」


アルバムのタイトルについて、デイカスはこう付け加えた。でも、私たちは瞬間に永遠を感じていると思う。永遠の中でどれだけの時間を過ごしたかはわからないけど、訪れたことはある。"


「Ankles」のビデオはパリで撮影され、女優のハヴァナ・ローズ・リューがダカスと一緒に出演し、有名な絵画から抜け出した人物を演じている。アルバムのカバー・アートワークは、ビジュアル・アーティストのウィル・セント・ジョンによるダカスの別の絵である。


この新しいツアーのために、ダカスはPLUS1と提携し、チケット1枚につき1ドルが "PLUS1 LA Fires Fundを通じて、壊滅的なLAの山火事の影響を受けた個人、家族、コミュニティへの重要な救済と長期的な復興支援に寄付される。

 


「Best Guess」





 

Sparks(ロンとラッセルのメイル兄弟)がニューアルバム『MAD!』を発表し、そのファーストシングル 「Do Things My Own Way」をリリースした。


『MAD!』はTransgressiveから今年後半にリリース予定。発売日は未定で、トラックリストとジャケットのアートワークも未定。ニューシングル、バンドの今後のツアー日程をご覧下さい。


スパークスはプレスリリースの中で、ニューシングルについて「1972年以来の我々のマントラを2025年に増幅させた」とシンプルに語っている。


バンドのラストアルバムは2023年の『The Girl Is Crying In Her Latte』で、アイランド・レコードから47年ぶりのアルバムとなった。バンドは1974年の名作『Kimono My House』を含む数枚のアルバムを1970年代に同レーベルからリリースしている。アルバムのタイトル曲「The Girl Is Crying In Her Latte」のMVは、オスカー女優ケイト・ブランシェットが主演している。


2021年には、エドガー・ライトがスパークス・ブラザーズのドキュメンタリーを監督。2021年、彼らはレオス・カラックス監督とミュージカル映画『Annette』を共同執筆し、すべての音楽も担当した。2022年、再発シリーズを発表。

 

 「Do Things My Own Way」



 

Sparks Tour Date:


6月8日(日) - 京都、JP @ ロームシアター 

6月10日(火) - 大阪、JP @ Zepp Namba 

6月12日(木)-6月13日(金) - 東京、JP @ EXシアター 

6月18日(水) - 6月19日(木)イギリス、ロンドン @イベンティム・アポロ

6月21日(土)イギリス、ロンドン @イベンティム・アポロ

6月21日 - 22日 6月22日(火) 英国、マンチェスター @ O2アポロ 

6月24日(火) - イギリス、グラスゴー @ ロイヤル・コンサートホール 

6月26日(木) - オランダ、ハールレム @ PHIL Haarlem 

6月28日(土) - ブリュッセル、ベネズエラ @ Cirque Royal 

6月30日(月)- パリ、フランス @ ラ・ラ・コンサートホール 

6月30日(月) - パリ、フランス @ La Salle Pleyel 

7月1日(火)- ケルン、デトロイト @ Gloria-Theater 

7月3日(木) - デンマーク、コペンハーゲン @ The Koncerthuset 

7月4 日(金) - ストックホルム、SE @ Grona Lund Tivoli 

7月6日(日) - ベルリン、DE @ Uber Eats 

7月8日(火) - イタリア、ミラノ @ Teatro degli Arcimboldi



*スパークスの来日公演の詳細につきましてはクリエイティブマンの公式サイトをご確認ください。

■リザ・ローのデビュー・アルバムが発売。ジョン・ケリーがプロデュースした話題作。南欧の気風をロンドンのポピュラーシーンにもたらす


Liza Lo
Photo: Kayla Raquel Middleton

 

本日(1月31日)、ロンドンを拠点とするプロデューサーでシンガーソングライターのLiza Lo(リザ・ロー)の待望のデビューアルバム『Familiar(ファミリア)』がリリースを迎えた。

 

これまでに6曲のデジタル・シングルを発表してきた彼女だが、今回のアルバムはおなじみのプロデューサー、ジョン・ケリー(ケイト・ブッシュ/ポール・マッカートニーの作品のプロデュースを手掛けている)と彼女のバンドと共にデーモン・アルバーンの”スタジオ13”にて制作された注目作。


アルバムでリザは、脳梗塞で亡くなった友人のこと、ヨーロッパにある故郷を離れること、そして現代の複雑な人間関係などのあらゆることに触れている。不気味で親密なギター、レトロでポップなシンセサイザーとベース、クリスタルのようなピアノが、儚さと自己の強さの両方を表現している。


本作についてリザ・ローは、次のように語っている。

 

「ファミリア』というタイトルは、私が聴いて育ったレコードに立ち返るという要素、音楽を親しみやすく感じさせるレコーディングの方法、そして、私の師匠であるこのアルバムの共同プロデューサーでもあるジョン(・ケリー)が得意とするもので、私の創作プロセスを近づける方法を反映している。


また、この言葉は私が語る、家族の親密さ、私の人生におけるロマンチックな愛の物語、そして、生きていく上で避けられない喪失感や、それにどう対処するかということとも結びたいと思った。友人を失ったり、自分自身や他人と連絡が取れなくなったり、恋に落ちることの素晴らしさなど、私たちが人生で繰り返し遭遇する感情よ。


そしてこの度、アルバム収録曲の「Anything Like Love」を公開します。同曲はリザが「友情、ロマンチックな愛、身近な愛のためのラヴ・ソング」と表現するソフトで優しい曲だ。「家族の集まりや誕生日に歌うのが好きなの。私のママ、親友たち、弟、そして私の家族への歌よ」とのこと。

 


「Anything Like Love」



【アルバム情報】

 

アーティスト名:Liza Lo(リザ・ロー)

タイトル名:Familiar(ファミリア)

品番:GB1598CD (CD) / GB1598 (LP)

発売日:発売中!

レーベル:Gearbox Records


<トラックリスト>

(CD)

1. Gipsy Hill

2. Morning Call

3. Darling

4. Catch The Door

5. A Messenger

6. As I Listen

7. Open Eyes

8. Anything Like Love

9. What I Used To Do

10. Confiarme

11. Show Me


(LP)

Side-A


1. Gipsy Hill

2. Morning Call

3. Darling

4. Catch The Door

5. A Messenger

6. As I Listen

Side-B


1. Open Eyes

2. Anything Like Love

3. What I Used To Do

4. Confiarme

5. Show Me



アルバム『Familiar』配信中! 

https://bfan.link/the-ruin

 

Credits:

Liza Lo - Vocals, Acoustic Guitar, Piano, Backing Vocals, Synthesisers Sean Rogan - Piano, Backing Vocals, Acoustic & Baritone Guitar Maarten Cima - Electric, Rubber Bridge & Baritone Guitar

Tom Blunt - Drums

Freek Mulder - Bass

Ben Trigg - Cello & String Arrangements (Gipsy Hill, Open Eyes & A Messenger) Emre Ramazanoglu - Percussion (Catch The Door & Anything Like Love)

Chris Hyson - Synthesisers & Programming (Confiarme)

Wouter Vingerhoed - Prophet (What I Used To Do)


Recorded at Studio 13 and Tileyard Studios in London

Produced by Jon Kelly and Liza Lo

Additional and co-production by Wouter Vingerhoed (What I Used To Do), Topi Killipen

(Morning Call), Sean Rogan (Confiarme) and Chris Hyson (Confiarme)

Written by Liza Lo together with Topi Killipen (Morning Call), Emilio Maestre Rico (Darling),

Peter Nyitrai (Open Eyes), Melle Boddaert (Gipsy Hill), Hebe Vrijhof (What I Used To Do) &

Wouter Vingerhoed (What I Used To Do)

Mixed by Jon Kelly

Mastered by Caspar Sutton-Jones & Darrel Sheinman

Engineered by Giacomo Vianello and Ishaan Nimkar at Studio 13 and Ned Roberts at Tileyard Studios Released by Gearbox Records


Liza Lo:

 

スペインとオランダで育ち、現在はロンドンを拠点に活動するシンガー・ソングライター/プロデューサー/ミュージシャン。優しくも力強い歌声で愛、喪失、成長の物語を紡ぐことを特徴とし、ビッグ・シーフ、キャロル・キング、ドーターやローラ・マーリングなどからインスピレーションを受けながら、独自の親密で詩的な音楽世界を創り出している。

 

EP『Flourish』はSpotifyの 「New Music Friday UK/NL/BE 」に選出され、「The Most Beautiful Songs in the World 」プレイリストでも紹介された。2024年5月、Gearbox Recordsと契約。自身のUKヘッドライン・ツアー、ステフ・ストリングスやVraellのオープニングをUK各地で務めたほか、ハリソン・ストームとのEU/UKツアーもソールドアウトさせた。

 

2025年1月31日、ジョン・ケリー(ポール・マッカートニー、ケイト・ブッシュ)とバンドと共に制作したアルバム『ファミリア』をリリースした。


SASAMIのニューアルバム『Blood On The Silver Screen』が3月7日にDominoからリリースされる。

 

アルバムからの最新シングル「「In Love With A Memory」はダンス・ポップ調の楽曲で、後半には歌手のトレードマークのギターも入る。ロスタムとの共同プロデュースで、Clairoのヴォーカルが収録されている。「In Love With A Memory」はササミの幼い頃の母親との思い出が曲として機能する。愛情というイメージがそのまま母親のメタファーとなっているようだ。

 

ロスタムと私は共に作曲を学んだので、彼は私のクラシカルな面をもっと引き出したかったのです。『In Love With A Memory』は、『Blood On the Silver Screen』に収録されることになった、私が書いた最初の曲なのです。


私は日本や韓国の 「ノラバン」と呼ばれる個室のカラオケルームに母と一緒に通って育ちました。母がよく歌うナンバーのほとんどは、古い日本や韓国の民謡で、ホラー映画やデヴィッド・リンチの映画の中にいるような気分にさせてくれました。

 

ジュリー・クルーズのようなセッティングで、シングルで、ジャズ・ラウンジのスポットライトを浴び、煙草の煙が澱んだように漂っている。ロスタムと私が一緒にオーケストレーションしたプロダクションによって完璧に反映されたと思う。クレアは私にとって長年の遠距離の友人で、夢のコラボレーターである。この曲は、幽霊との映画のようなデュエットをイメージしています。

 


「In Love With A Memory」



米国のシンガーソングライター、Hannah Cohen(ハンナ・コーエン)は、ニューアルバム『Earthstar Mountain』の制作を発表した。ベラ・ユニオンとコングラッツ・レコードと共同で3月28日に発売予定です。本作はニューヨークの保養地で山岳地帯のキャッツキルでレコーディングされました。

 

ハンナ・コーエンはサンフランシスコを拠点に活動し、シンガー/モデルとして知られ、ジャズに深い造詣を持っている。ノラ・ジョーンズ作品にも参加したトム・バートレットが「10年に一度の逸材」と称賛。60,70年代のUSポップスに根ざした普遍的なソングライティングが魅力である。

 

2019年の『Welcome Home』に続く作品は、コーエンのパートナーであるサム・エヴィアン(Sam Evian)がプロデュース、スフィアン・スティーヴンス、クレイロ、ショーン・マリンズ、オリヴァー・ヒル、リアム・カザールが参加。今回、リード・シングル「Earthstar」が先行公開された。


私にとって『Earthstar』は、繋がりの複雑さ、愛のリスクと脆弱性について歌っています。「この曲は、究極的には、私たちが誰かを完全に知ることは決してないという考えに取り組んでいる。


写真家のCJ・ハーヴェイと私は、4シーズンにわたってキャッツキル山脈へのラブレターを撮影することにした。キャッツキル山脈の森の奥深くにあるお気に入りの水泳場、小川、滝、シダの渓谷で、1年以上かけてじっくりと感動的なポートレートを撮影した。Earthstarのミュージックビデオは、すべて16ミリフィルムで撮影されました。

 

 

「Earthstar」

 

 


Hannah Cohen 『Earthstar Mountain』

Label: Bella Union 

Release: 2025年3月28日

 

Tracklist:

 

1. Dusty

2. Draggin’

3. Mountain

4. Earthstar

5. Rag

6. Una Spiaggia

7. Summer Sweat

8. Shoe

9. Baby You’re Lying

10. Dog Years


 

©Scarlett Carlos Clarke


レベッカ・ルーシー・テイラーによる音楽プロジェクト、Self Esteem(セルフ・エスティーム)が復活した。このポップシンガーの待望のサード・アルバムは「A Complicated Woman」と題され、ポリドール・レコードから4月25日にリリースされることが発表された。


2021年にブレイクした「Prioritise Pleasure」の続編となるこの新作は、現代の女性らしさを多面的に探求した、高揚感溢れる作品となる。


RLTはクワイアの参加について、「人々のコミュニティ 」と表現し、「つながりを聴き、感じてほしい」と語っている。アルバムの高揚感あふれるリードシングル「Focus Is Power」のビデオではグループが地元のコミュニティホールで熱のこもったパフォーマンスを披露している。


パンデミック(世界的大流行)の最中に両親と暮らしていたレベッカが書いたフレーズを中心に構成されたこの新曲は、マントラのようなものであり、アルバム全体のミッション・ステートメントでもある。「あのね、私次第じゃなかったけど、今ならそうなれる/でも今、年を追うごとにはっきり見えてきた/私はここにいる価値がある」

 


「Focus Is Power」


 

 

Self Esteem 『 A Complicated Woman』

 


Label: Polydor

Release: 2025年4月25日


Tracklist:

1.⁠ ⁠I Do And I Don’t Care 

2.⁠ ⁠Focus Is Power

3.⁠ ⁠Mother 

4.⁠ ⁠The Curse

5.⁠ ⁠Logic, Bitch! (ft. Sue Tompkins)

6.⁠ ⁠Cheers To Me

7.⁠ ⁠If Not Now, It’s Soon

8.⁠ ⁠In Plain Sight (ft. Moonchild Sanelly)

9.⁠ ⁠Lies (ft. Nadine Shah)

10.⁠ ⁠69

11.⁠ ⁠What Now

12.⁠ ⁠The Deep Blue Okay


弱冠22歳の気鋭のオーストラリア人SSW、ポップシーンで注目を浴びるgrentperez(グレンペレス)が新作アルバムの詳細を明らかにした。『Backflips In a Restautant』は、インパートメントから国内盤/輸入盤が3月28日に発売。Benny Singsベニー・シングス)をフィーチャーした「Fuzzy Things」を含む、3作の先行シングルのMVが公開されています。下記よりご覧下さい。


Spotify、Apple Musicで話題のシンガーソングライター、グレンペレスが遂にフルアルバムをリリース。60〜70年代のポップス、ディスコ/ソウルをZ世代の感性で表現した多幸感サウンド。


2021年のシングル”Cherry Wine”の大ヒット、2023年のEP『When We Were Younger』の高評価により、2024年のオーストラリアの音楽アワード”APRA”での受賞、先行シングルではベニー・シングスが参加した”Fuzzy Feeling”が注目され、NewJeansのハニによる”Clementine”のカバーが話題になるなど、瞬く間に人気者となった”グレンペレス”に注目したい。

 

幼い頃から影響を受けてきた60〜70年代のサウンドとフィリピンにルーツのある彼らしい独特の感性が融合したポップソングは、現代の幅広いリスナーの人気を獲得しそうだ。ノスタルジックな要素がありながらも、ヒップホップ/ソウルを取り入れた新しいサウンドへ進化している。4年の間で大きな成長を見せた彼がこのタイミングで発表するフルアルバムが遂に完成した。

 

 

「Fuzzy Things  (Feat. Benny Sings)」

 

 

 

「Dandelion」

 

 

 

「2DK」

 

 

 

 

grentperez 『Backflips in a Restaurant』- New Album


 

 
アーティスト : grentperez (グレンペレス)
タイトル : Backflips in a Restaurant (バックフリップス・イン・ア・レストラン)
レーベル : Inpartmiant inc.
発売日 : 2025年3月28日

<国内盤CD>
品番 : IPM-8147
価格 : 2,970円(税込)/2,700円(税抜)
バーコード : 4532813731476

<輸入盤LP>
品番 : FF0085VS
卸値 : 3,890円(税抜)
バーコード : 5056167180708

 

 

grentperez(グレンペレス): 

 

22歳のオーストラリア人シンガーソングライター。YouTubeでギターをかき鳴らしながらカバー曲やオリジナル曲を歌うことで最初のファンを獲得。正式な音楽教育を受けていないものの直感的な才能でボサノバのリズムやジャジーなコード進行やクラシックな作曲技法を習得し、現代のR&Bやベッドルームポップと融合させて独自のスタイルを築いている。

 

2021年にリリースしたデビューシングル”Cherry Wine”で国際的なセンセーションを巻き起こし母国オーストラリア、カナダ、シンガポールのSpotifyバイラルチャートで1位を獲得。その後アーティストとして大きく成長した後にストリーミングプラットフォームで4億5500万回以上再生を記録し多大陸にわたるツアーも経験。

 

Triple J、NPR Music、MTV、KCRW、DIY、Wonderland、The Line of Best Fit、A Book Ofなどの有力メディアからも支持されています。さらに、2023年のARIA賞で「ブレイクスルーアーティスト・オブ・ザ・イヤー」にノミネー トされ、2024年のAPRA賞では「エマージングソングライター・オブ・ザ・イヤー」を受賞。今まさに大き な飛躍を迎えようとしています。

ニューヨークのシンガーソングライター、Daneshevskaya(ダネシェフスカヤ)は昨年11月に「Scrooge」を発表し、2023年のデビュー作「Long Is The Tunnel」以来となる新曲を発表した。 今日、ベッカーマンは「Kermit & Gyro」と銘打たれたエレガントでエレガントな曲で戻ってきた。

 

穏やかなオーラとは裏腹に、"Kermit & Gyro "は「別れの絶望の中で書いた」とアンナ・ベッカーマンは言う。 

 

混乱と熱望から書いた。 その関係が自分に何をもたらしてくれたか、その関係がまだ自分の一部であり続けることができるかという考えにしがみつくということ。 でも同時に、完全に解き放たれ、漂流しているような気分にもなる。


「カーミット&ジャイロ』はいつものように音楽は見事なほど穏やかで美しく、ベッカーマンがすべてを把握しているかのよう。 プロデュース、アレンジ、ミキシング、ギター、ベースにArtur Szerejko、ヴァイオリンにFinnegan Shanahan、ピアノにMadeline Leshnerが参加している。

 


「Kermit & Gyro」

 

The Golden Dregs


ロンドンを拠点とする6人組、The Golden Dregs(ザ・ゴールデン・ドレッグス)が、4枚目のスタジオアルバム『Godspeed』とニューシングル「The Company Of Strangers」を発表した。本作は4月25日に発売される。ゴールデン・ドレッグスは渋さのあるポップソングを書くことで定評があり、4ADから発表された前作『On Grace & The Dignity』はその好例である。


"カンパニー・オブ・ストレンジャーズ "とは、人が人生の最良の年月、最良の健康、最良の思考、冬の間の日照時間のすべてを投資するビジネス帝国のことだ。会社は君のことなど気にかけていない。それこそがゴッドスピード・ザ・カンパニーの本意なんだ」とベン・ウッズは言う。


ゴールデン・ドレッグスは、もともとマルチ・インストゥルメンタリストのベン・ウッズによるソロ・プロジェクトとして始まっている。今後発売予定であるアルバム『Godspeed』では、各メンバーの個人的な貢献がレコードの重要な部分を占めるアンサンブルへと完全に進化した。このアルバムは、ベン・ウッズのインディペンデントレーベル、”ジョイ・オブ・ライフ・インターナショナル”からのリリースで、エンド・オブ・ザ・ロード・レコーズと共同で設立された。

 

 

「The Company Of Strangers」




The Golden Dregs 『Godspeed』

Label: Joy Of Life International

Release: 2025年4月25日


Tracklist: 

 

1.Big Ideas
2.Linoleum
3.The Company of Strangers
4.Imagining France
5.Weight of It All
6.Erasure
7.In The Headlights He
8.Heron
9.Perfume
10.If You'd Seen Him
11.The Wave
12.Godspeed

Sophie Jamieson

 

Sophie Jamieson(ソフィー・ジェイミソン)のニューアルバムに添えられている写真には、動きの感覚がある。風雨に揉まれ、他の人々によって翻弄され、固い場所に着地することはない。レコードの内ジャケットには、二重露光の写真に写った彼女が写されている。これは単なる写真かもしれないけれど、彼女のアルバムのより深い部分のメタファーでもある。不安感や根付かない感覚をとらえようとしているのかもしれない。どこかに憧れながらも、完全には辿り着けないというような。


ベラ・ユニオンからリリースされる彼女の2枚目のアルバム『I still want to share』は、愛すること、失うことの循環的な性質、人間関係から逃れられない不安、他人の中に居場所を見つけようと試みては失敗を繰り返す帰属などへの永遠の憧れについて、深く個人的な考察を提示している。


ソフィーのデビューアルバム『Choosing』が、自分自身全体から逃げることで膨らむ自己破壊的な衝動を探求しているとしたら、私はやはり、それに全力で向き合いながら、一曲一曲を通して強さを分かち合いたい。


スピリチュアライズドやマニック・ストリート・プリーチャーズなどの作品で知られ、ザ・ビートルズのバック・カタログのリマスターでも知られるグラミー賞受賞のGuy Massey(ガイ・マッセイ)がノース・ロンドンでプロデュースしたこのコラボレーションは、より探求的で、チョージングよりも遊び心があり、より豊かなパレットで細部まで表現されている。


ソフィー・ジェイミーソンのソングライティングとヴォーカルが持つ生々しい感情の全てに、新たなキャラクターが加わった。玩具のようにきらめくオムニコード、陰鬱なハルモニウムとサブベースのレイヤー、そしてジョセフィン・スティーヴンソン(Daughter)の提供による豊かなストリングス・アレンジが、レコードの鼓動の中心を通して憧れの感情のつながりを紡ぎ出す。


「私たちは、とてもとても私らしいと感じられるものを作ったけれど、たくさんの異なるサウンドの風味もあるの」とソフィーは説明する。


「温かみのある秋の色もたくさんあるし、キラキラした暗い星空もある。このような形で表現する必要があったとは……。自分でも知らなかったことを表現するため、すべてがひとつになったわ」


アルバムは静寂の中で幕を開け、陰鬱な「Camera」は最初の1分ほどで穏やかに焦点が定まり、ギターが盛り上がり、ドラムビートがシャッフルされる。リード・シングルの「I don't know what to save(何を救えばいいのかわからない)」は、より軽快に感じられる。「この曲は、自由を求めて走り出した曲なの」とソフィーは説明する。


「ある人への執着と、その人にまつわるすべての痛みの重みを抱えていた。それは手放すことへの大きな後押しだった」


ソフィーは 「愛」という言葉の巨大さを取り上げ、そのミステリアスなヴェールを剥がしていく。愛することはしばしば支配や欲求のように感じられること、愛されることは自分自身と向き合わなければならないときには耐え難いことであること。シンプルで純粋な、不安のない愛は、分かち合い、寛大さ、ゆとりのように見える。 


「このアルバムを支えているのは、シンプルに愛というより、むしろ''愛着''という考え方だと思う」と彼女は説明する。「臨床的でロマンチックでない性質、醜い性質、そして人間的な性質」


タイトル・トラックは、陰鬱なアレンジの中に子供の欲望が透けて見える。 「争う必要のない絆の魔法/耳には耳を、目には目を/これが私のものであることが幸運なのだと思う/それでも時々分かち合いたい」


ソフトで、純粋で、シンプルな愛がそこにあるという抑えきれない希望が、このレコードを引っ張り、すべてが崩壊する危険性が常にあるにもかかわらず、私たちを再び愛へと引き戻す力となっている。


私たちが自分自身に何を求め、愛する人たちに何を求めるかという点で、完璧さや確かな答えを求める無益な欲望を浄化するものとして本作を分かち合いたい。全体を通して問いかけられるのは、根源的なレベルで痛みを伴うもので、答えについては風に流されるだけである。結局、エンディング・トラックで歌われるように、「時はあなたを後ろへ引っ張り、あなたの年齢の下へ深く潜り込ませる」それでもなお、私たちは愛を求め、それを分かち合いたい。-Bella Union



 Sophie Jamieson 『I still want to share』- Bella Union


 

”ソングライター”というのは、日々の人間的な成長に合わせて、音楽的なテーマを変え、その時々に相応しい歌い方を見つける人々のことを言う。

 

それを見て、「あの人は変わった」という。しかしながら、こういったアーティスティックな表現者に類する人々は、器用であるから、そうするのではなく、むしろ自身のうちに少しだけ不器用な部分が残されているから、そうするのである。わからないことがあるから歌う。未知や謎が目の前に立ちはだかるから曲を制作する必要がある。すべてがわかるからではなく、わからないことを解き明かすために音楽がひとつの媒体となり、動脈ともなりえる。そういった姿勢やスタンスは、間違いなく、良質な音楽を制作するためのヒントとなり、また大きな糧ともなりえる。

 

まさしく、ロンドンを拠点に活動するソフィー・ジェイミーソンは、昨年末のローラ・マーリングと同様に、人間的な成長をシンプルに織り交ぜ、美しいポピュラー、フォーク・ソング集を書き上げることに成功した。音楽的になにかが大きく変わったわけではない。しかし、内的な成長が表面的な音楽を変化させたのである。

 

2022年の『Choosing』において、ソフィー・ジェイミーソンは解き明かし難い主題を据え、内的な痛みを織り交ぜた。自己破壊の苦しいどん底、そしてそこから見えるかすかな希望の光への旅を描いたどこまでも純粋なパーソナル・ドキュメントを作り上げた。しかし、もし、続編にアーティスト自身が語るような優しいまなざし、慈しみが音楽の最果てにほの見えるとあらば、それはアーティストが掲げる愛着の精神がリスナーのもとに届いたということになるだろう。


ソフィー・ジェイミーソンは、今回のアルバムにおいて、歌手としてシャロン・ヴァン・エッテンのポスト的な立場を選んだ。インディーロックから影響を受けたクランチなギター、オペラ風の歌唱法等、シャロン・ヴァン・エッテンのテイストが全編に満ち渡っているが、単なるフォロワーにとどまらないことは、最新作『I Still Want To Share』を聴くと、明らかでないだろうか。そして、ジェイミーソンの音楽性が全般的なフォークソングをベースにしているとはいえ、アメリカの民謡とは明らかに異なることは本作を聞けば明らかとなる。最近、私自身もわかってきたのは、ウェールズ、アイルランド、スコットランドといった地方、いわゆる古イングランドの地域には、なにかしら深い音楽的な魅力がその土地の底に眠っている。ソフィー・ジェイミーソンは、それを探りあてるべく、ギターを中心とした音楽に多彩な歌唱法を披露する。

 

アルバムは、「1-Camera」の優しげなギターの弾き語りで始まり、心地よいリズムとアルペジオという枠組みが形づくられるが、一方、歌手のボーカルはその枠組から離れ、雄大な印象を持つ。スタジオの中の音楽というよりも、アルバムのアートワークとリンクするような感じで、小さな空間を飛び出し、羽ばたいていく。そして、ミドルボイスを中心に、ファルセットを含めたハミングがギターと調和するように、しだいに大きな音楽的な空間をゆっくりと作り上げていく。それをより華やかにするのが、今作の編曲において重要な役割を果たす弦楽器の重奏である。前作におけるオーケストラ音楽へのアプローチはより、今作において洗練され、磨きがかけられた。これはビートルズの音楽をよく知るガイ・マッセイ氏の大きな功績でもある。

 

ソフィー・ジェイミーソンのアルバムは、ギミック的な演出により、人を驚かせたりすることはない。バーバンクサウンドと同じように、まず曲があり、編曲が続き、最終的にマスターがある、という音楽の基本的な段階を踏まえながら、丹念に録音作品が作り上げられていった形跡がある。それはデジタルサウンド主流の時代にあって、むしろ手作りのサウンドのような印象を覚えることもある。


「2-Vista」も同じように、エレクトリック・ギターのアルペジオの艶やかさなサウンドに、ミステリアスな印象を持つジェイミーソンのボーカルが続いている。ジャズのスケールを踏まえたギターに、ボーカル、コーラス、クレスタといった要素がミルフィールのように折り重なり、イントロで感じられた神秘性がより深い領域へと差し掛かる。冒頭から音楽的な世界が見事に作り上げられ、さながら奥深い森のむこうを探索するような神秘的な情景が描かれる。前作よりも遥かに音楽的なイディオムに磨きがかけられたことがよく分かる。

 

 

「3-i don't know what to save」は、大まかには3つの構成を持つポピュラーソングだ。歌手の歌の実力がいかんなく示され、伸びやかで美しいビブラートが際立っている。ここでは何を救ったら良いのかわからないと歌手は嘆く。けれども、もし、この歌声と温和なサウンド、そして美しいオーケストラ・ストリングスに聞き惚れる人々がいれば、それはそのまま、誰かを救ったという意味に変わる。その人の他にはない個性や能力が、人々に勇気や元気、そして希望を与えた瞬間でもある。静かなイントロから中盤、そして終盤にかけた曲のアイディアの種が芽吹き、さらに、大きな美しい花を咲かせるように、美しい音楽の成長の過程を味わうことが出来る。アルバムの序盤のハイライトのひとつで、本作は、この曲でひとまず大きな要所を迎える。

 

 

「 i don't know what to save」

 

 

対象的に、静かな弾き語りのポピュラーソング「4-Baby」から、 このアルバムの愛着というテーマがより深い領域へと達する。親しみやすいポピュラーソングのメロディーに、ときどき内的な心情のゆらめきを表現するかのように、長調と短調の分散和音を交互に配置させながら、琴線に触れるような切ない叙情的な旋律進行を生み出していく。そして、その内的な波のゆらめきは、むしろそのありかを探せば探すほど、奥深い霧に覆われるかのように見えづらくなり、その正体が掴みがたくなる。さらに、もうひとつ注目すべきは、ジェイミーソンのボーカル/コーラスのコントラストが、まるで内的な会話のようでもあり、そして、もうひとつの自分の得難い姿に戸惑うかのようでもある。しかし、二つに分離したシンガーはいくつかの悩ましき変遷をたどりながら、なにかひとつの終着点にむけてひとつに重なりあうような感覚がある。

 

「5-Welcome」は同じようなタイプに位置付けられる。これまたシャロン・ヴァン・エッテンのソングライティングに近く、外側には現れ出ない内的な感情の揺らめきをミステリアスなテイストを持つポピュラーソングに昇華させている。しかし、ガイ・マッセイによるミックス/マスターの性質が色濃く立ち現れ、クレスタ、もしくは、オムニコードのようなシンセの対旋律的な配置、部分的な逆再生による音の印象の変化を駆使して、音の印象に劇的な変化を及ぼしている。そして、この曲はギター(トレモロ)のダイナミックスを段階的に引き上げていき、全体的になだらかな丘のような起伏を設け、曲の後半部に強固な印象を持つハイライトをつくりだす。

 

こういったサウンドは、ヴァン・エッテンにとどまらず、ベス・ギボンズの復帰作と同じように、暗鬱さと明るさの間を揺らめく抽象的なポピュラーソングの領域に属している。そして、表向きには現れないが、ウェールズ、スコットランド、アイルランド地方のフォーク・ソングや民謡の原始的な音楽がこれらのポピュラーソングの背後に揺らめいているという気がする。結局、これこそが、アメリカとイギリスのフォークを別け隔てるなにかである。それが原初的な古イングランドのカントリーの雰囲気と混ざりあい、「6-Highway」に繋がる。アルバムの序盤から一貫して示唆されるエレクトリックギターのクリーントーン(おそらく、Rolandのようなアンプ)から作り出されるサウンドは、一般的なポピュラーソングのギミック的な演出とは程遠く、素朴な落ち着きがあり、普遍的な響きが込められている。アコースティックギターではなく、エレクトリックによるいつまでも聞いていられるようなソフトなアルペジオが、ソフィー・ジェイミーソンのボーカルと混ざり合っていることはいうまでもない。これらのサウンドは、プロデュースの意向とも相まってか、ジャズに近いニュアンスを併せ持つこともある。

 

前の曲では、旋律やダイナミックスともに要所を迎え、その後、アウトロで静けさに帰る。もはや、この段階に来て、このアルバムが即効的な意味を求めて制作されたものではないことは明らか。そして一貫して、ギミック的なサウンド、エポックメイキングなサウンドを避けて、素朴なフォークソングをもとに、聴けば聴くほど深みが出てきそうな曲を収めている。 これらは、70年代のフォークやポピュラーのように、レコード生産が単なる消費のためのものではなかった時代の幻影をなんとなく脳裏に蘇らせる。文化的な役割を持つ音楽を制作しようという心意気については、一定数の本当の音楽ファンの心にも何かしら響くものがあるかもしれない。もちろん、すでに前半部から中盤にかけて示唆されてきたことだが、ジェイミーソンの音楽は、名誉心やインフルエンサー的な欲望とは程遠い。それがゆえ、なにかしばらく忘れ去られていた音楽そのものの安心感であったり、素朴さの一端を思い出すことも出来るかもしれない。

 

ソフィー・ジェイミーソンは、このアルバムで愛着というテーマを中心に、自分の人生から滲み出てくる感覚を音楽によって表現しようと試みている。それがシャロン・ヴァン・エッテン、ギボンズの系譜にある音楽のスタイルを受け継いでいるにせよ、単なる模倣的な音楽にならない要因である。人生は、その人のものでしかありえず、他の誰のものではない。もちろん、他の誰かになることは出来ないし、他の誰かになってもらうことも不可能である。ある意味では、前作から探求してきたテーマ(音楽的なものにせよ、人生的なものにせよ)は、続くタイトル曲で、一つの分岐点や重要なポイントを迎えようとしている。彼女は、明るい感覚を世界に向けて共有しようとしている。それは少なくとも、妬みや顰み、羨みといったこの世に蔓延る閉鎖的な感覚ではない。その音楽が開けていて、本当の意味における自由があるからこそ、なにか心に響くものがあるというか、その音楽が耳に残ったり、心地よさを覚えるのだろう。もちろん、それはたぶん、歌手としての人生に大きな自負を持っているからなのかもしれない。

 

アルバムの終盤でも心地よいフォーク/ポピュラーが続いている。「8-How do you want to be loved」では、シャロン・ヴァン・エッテンのタイプの楽曲で、繊細さと勇壮さを併せ持つ。オムニコードの使用は、この曲にちょっとした親しみやすさとユーモアを添えている。また、ヴェルヴェットアンダーグラウンドの「Sunday Morning」でも使用されるクレスタ(グリッサンド)の響きがこの曲に可愛らしさと古典的な風味を添えている。さらに、プロデュースの側面でも、キラリと光るものがあり、音形をモーフィングさせ、独特な波形を作り出しているのに注目したい。 特にアルバムの終盤でも素晴らしい曲があるので、ぜひ聞き逃さないでいただきたい。

 

「9- Your love is a mirror」では、一貫したスタイル、サイレンスからダイナミックなエンディングが暗示され、ボーカル/コーラス、クリーントーンのギターに美しい室内楽風の弦楽器の合奏が加わっている。特に、チェロ/バイオリン(ヴィオラ)がハーモニクスを形成する瞬間は息を飲むような美しさがあるし、鼻声のミドルボイスとコーラスワークには心を震わせるようななにかが込められている。まるでウィリアム・フォークナーのように、内的な感覚の流れは一連なりの川の導きのように繋がっていき、そして、本格派のポピュラー歌手としての崇高な領域へと到達する。


続いて収録されている「10- I'd Take You」は、落ち着いたリゾート気分に充ちた一曲で心を和ませる。ボサノヴァ、ブラジル音楽、ハワイアン、そういった音楽を巧みに吸収している。日曜の午後のティータイムのひとときを優雅に、そして安らかにしてくれることはほとんど間違いない。最後の曲はどのようになっているのか、それは実際にアルバムを聞いて確認していただきたい。

 

ソフィー・ジェイミーソンのアルバムを聞いて安らぎを覚えたのは、音楽を単なる消費のためとしてみなさず、敬愛すべきもの、美しきもの、慈しむべきものという考えを持った人々も存在することが確認出来たからである。大きなヒットは望めないかもしれないが、少なくとも、純粋な音楽ファンであれば、こういったアルバムを素通りするのは惜しいことではないだろうか。

 

 

 

86/100

 

 


 

Best Track 「Your love is a mirror」