現代アンビエント・シーンの注目株であるUKのThe Vernon Spring(ザ・ヴァーノン・スプリング)のニューアルバム『Under a Familiar Sun』が5/9リリース決定。(配信の予約はこちらから)
本日アルバムからの先行シングルとして、作家のMax Porterのポエトリーリーディングをフィーチャーした「The Breadline (feat. Max Porter)」と、その姉妹曲「Requiem For Reem」が配信開始されました。(ストリーミング配信はこちら)
ノース・ロンドン出身で、ブライトン在住のアーティスト/作曲家/ピアニスト/プロデューサーのザ・ヴァーノン・スプリング)ことサム・ベステ。大きな飛躍を遂げる可能性に満ちた待望のニュー・アルバム『Under a Familiar Sun』がついにリリース。2025年のアンビエント・シーンで大きな注目を集める可能性があります。
2021年にリリースしたソロ・デビュー・アルバム『A Plane Over Woods』がロングセラー。同年、発売から50周年を迎えたマーヴィン・ゲゲイの代表作『What's Going On』に対するレスポンスとなる作品『What's Going On』をリリース。同アルバム収録の名曲群を独自の解釈でカヴァーしたこの作品は各所で大絶賛された。
Lucy Dacus(ルーシー・ダカス)が3月28日にGeffenからニューアルバム『Forever Is a Feeling』をリリースする。3作目のシングル「Best Guess」のミュージックビデオが公開された。ビデオは1990年代のカルバン・クラインの広告を引用し、ナオミ・マクファーソン、カーラ・デルヴィーニュ、トワ・バード、ERファイトマスターらが出演している。PVは以下より。
「Forever Is A Feeling』は、2021年にマタドールからリリースされたアルバム『Home Video』に続く作品。2023年には、ジュリアン・ベイカーとフィービー・ブリジャーズとともにダカスをフィーチャーしたスーパーグループ、boygeniusの一員としても同アルバムをリリースしている。
バンドのラストアルバムは2023年の『The Girl Is Crying In Her Latte』で、アイランド・レコードから47年ぶりのアルバムとなった。バンドは1974年の名作『Kimono My House』を含む数枚のアルバムを1970年代に同レーベルからリリースしている。アルバムのタイトル曲「The Girl Is Crying In Her Latte」のMVは、オスカー女優ケイト・ブランシェットが主演している。
EP『Flourish』はSpotifyの 「New Music Friday UK/NL/BE 」に選出され、「The Most Beautiful Songs in the World 」プレイリストでも紹介された。2024年5月、Gearbox Recordsと契約。自身のUKヘッドライン・ツアー、ステフ・ストリングスやVraellのオープニングをUK各地で務めたほか、ハリソン・ストームとのEU/UKツアーもソールドアウトさせた。
SASAMIのニューアルバム『Blood On The Silver Screen』が3月7日にDominoからリリースされる。
アルバムからの最新シングル「「In Love With A Memory」はダンス・ポップ調の楽曲で、後半には歌手のトレードマークのギターも入る。ロスタムとの共同プロデュースで、Clairoのヴォーカルが収録されている。「In Love With A Memory」はササミの幼い頃の母親との思い出が曲として機能する。愛情というイメージがそのまま母親のメタファーとなっているようだ。
ロスタムと私は共に作曲を学んだので、彼は私のクラシカルな面をもっと引き出したかったのです。『In Love With A Memory』は、『Blood On the Silver Screen』に収録されることになった、私が書いた最初の曲なのです。
弱冠22歳の気鋭のオーストラリア人SSW、ポップシーンで注目を浴びるgrentperez(グレンペレス)が新作アルバムの詳細を明らかにした。『Backflips In a Restautant』は、インパートメントから国内盤/輸入盤が3月28日に発売。Benny Sings(ベニー・シングス)をフィーチャーした「Fuzzy Things」を含む、3作の先行シングルのMVが公開されています。下記よりご覧下さい。
2021年のシングル”Cherry Wine”の大ヒット、2023年のEP『When We Were Younger』の高評価により、2024年のオーストラリアの音楽アワード”APRA”での受賞、先行シングルではベニー・シングスが参加した”Fuzzy Feeling”が注目され、NewJeansのハニによる”Clementine”のカバーが話題になるなど、瞬く間に人気者となった”グレンペレス”に注目したい。
Triple J、NPR Music、MTV、KCRW、DIY、Wonderland、The Line of Best Fit、A Book Ofなどの有力メディアからも支持されています。さらに、2023年のARIA賞で「ブレイクスルーアーティスト・オブ・ザ・イヤー」にノミネー トされ、2024年のAPRA賞では「エマージングソングライター・オブ・ザ・イヤー」を受賞。今まさに大き な飛躍を迎えようとしています。
ニューヨークのシンガーソングライター、Daneshevskaya(ダネシェフスカヤ)は昨年11月に「Scrooge」を発表し、2023年のデビュー作「Long Is The Tunnel」以来となる新曲を発表した。 今日、ベッカーマンは「Kermit & Gyro」と銘打たれたエレガントでエレガントな曲で戻ってきた。
ロンドンを拠点とする6人組、The Golden Dregs(ザ・ゴールデン・ドレッグス)が、4枚目のスタジオアルバム『Godspeed』とニューシングル「The Company Of Strangers」を発表した。本作は4月25日に発売される。ゴールデン・ドレッグスは渋さのあるポップソングを書くことで定評があり、4ADから発表された前作『On Grace & The Dignity』はその好例である。
1.Big Ideas 2.Linoleum 3.The Company of Strangers 4.Imagining France 5.Weight of It All 6.Erasure 7.In The Headlights He 8.Heron 9.Perfume 10.If You'd Seen Him 11.The Wave 12.Godspeed
Sophie Jamieson(ソフィー・ジェイミソン)のニューアルバムに添えられている写真には、動きの感覚がある。風雨に揉まれ、他の人々によって翻弄され、固い場所に着地することはない。レコードの内ジャケットには、二重露光の写真に写った彼女が写されている。これは単なる写真かもしれないけれど、彼女のアルバムのより深い部分のメタファーでもある。不安感や根付かない感覚をとらえようとしているのかもしれない。どこかに憧れながらも、完全には辿り着けないというような。
ベラ・ユニオンからリリースされる彼女の2枚目のアルバム『I still want to share』は、愛すること、失うことの循環的な性質、人間関係から逃れられない不安、他人の中に居場所を見つけようと試みては失敗を繰り返す帰属などへの永遠の憧れについて、深く個人的な考察を提示している。
アルバムは静寂の中で幕を開け、陰鬱な「Camera」は最初の1分ほどで穏やかに焦点が定まり、ギターが盛り上がり、ドラムビートがシャッフルされる。リード・シングルの「I don't know what to save(何を救えばいいのかわからない)」は、より軽快に感じられる。「この曲は、自由を求めて走り出した曲なの」とソフィーは説明する。
私たちが自分自身に何を求め、愛する人たちに何を求めるかという点で、完璧さや確かな答えを求める無益な欲望を浄化するものとして本作を分かち合いたい。全体を通して問いかけられるのは、根源的なレベルで痛みを伴うもので、答えについては風に流されるだけである。結局、エンディング・トラックで歌われるように、「時はあなたを後ろへ引っ張り、あなたの年齢の下へ深く潜り込ませる」それでもなお、私たちは愛を求め、それを分かち合いたい。-Bella Union
Sophie Jamieson 『I still want to share』- Bella Union
ソフィー・ジェイミーソンは、今回のアルバムにおいて、歌手としてシャロン・ヴァン・エッテンのポスト的な立場を選んだ。インディーロックから影響を受けたクランチなギター、オペラ風の歌唱法等、シャロン・ヴァン・エッテンのテイストが全編に満ち渡っているが、単なるフォロワーにとどまらないことは、最新作『I Still Want To Share』を聴くと、明らかでないだろうか。そして、ジェイミーソンの音楽性が全般的なフォークソングをベースにしているとはいえ、アメリカの民謡とは明らかに異なることは本作を聞けば明らかとなる。最近、私自身もわかってきたのは、ウェールズ、アイルランド、スコットランドといった地方、いわゆる古イングランドの地域には、なにかしら深い音楽的な魅力がその土地の底に眠っている。ソフィー・ジェイミーソンは、それを探りあてるべく、ギターを中心とした音楽に多彩な歌唱法を披露する。
「3-i don't know what to save」は、大まかには3つの構成を持つポピュラーソングだ。歌手の歌の実力がいかんなく示され、伸びやかで美しいビブラートが際立っている。ここでは何を救ったら良いのかわからないと歌手は嘆く。けれども、もし、この歌声と温和なサウンド、そして美しいオーケストラ・ストリングスに聞き惚れる人々がいれば、それはそのまま、誰かを救ったという意味に変わる。その人の他にはない個性や能力が、人々に勇気や元気、そして希望を与えた瞬間でもある。静かなイントロから中盤、そして終盤にかけた曲のアイディアの種が芽吹き、さらに、大きな美しい花を咲かせるように、美しい音楽の成長の過程を味わうことが出来る。アルバムの序盤のハイライトのひとつで、本作は、この曲でひとまず大きな要所を迎える。
アルバムの終盤でも心地よいフォーク/ポピュラーが続いている。「8-How do you want to be loved」では、シャロン・ヴァン・エッテンのタイプの楽曲で、繊細さと勇壮さを併せ持つ。オムニコードの使用は、この曲にちょっとした親しみやすさとユーモアを添えている。また、ヴェルヴェットアンダーグラウンドの「Sunday Morning」でも使用されるクレスタ(グリッサンド)の響きがこの曲に可愛らしさと古典的な風味を添えている。さらに、プロデュースの側面でも、キラリと光るものがあり、音形をモーフィングさせ、独特な波形を作り出しているのに注目したい。 特にアルバムの終盤でも素晴らしい曲があるので、ぜひ聞き逃さないでいただきたい。
「9- Your love is a mirror」では、一貫したスタイル、サイレンスからダイナミックなエンディングが暗示され、ボーカル/コーラス、クリーントーンのギターに美しい室内楽風の弦楽器の合奏が加わっている。特に、チェロ/バイオリン(ヴィオラ)がハーモニクスを形成する瞬間は息を飲むような美しさがあるし、鼻声のミドルボイスとコーラスワークには心を震わせるようななにかが込められている。まるでウィリアム・フォークナーのように、内的な感覚の流れは一連なりの川の導きのように繋がっていき、そして、本格派のポピュラー歌手としての崇高な領域へと到達する。
続いて収録されている「10- I'd Take You」は、落ち着いたリゾート気分に充ちた一曲で心を和ませる。ボサノヴァ、ブラジル音楽、ハワイアン、そういった音楽を巧みに吸収している。日曜の午後のティータイムのひとときを優雅に、そして安らかにしてくれることはほとんど間違いない。最後の曲はどのようになっているのか、それは実際にアルバムを聞いて確認していただきたい。
マイク・ハドレアスは、アルバムのリードシングルとして、私たちの期待を裏切らない一方で、アリゾナの夏の暑さで枯れてしまいそうな、息をのむほどウージーなポップ作品「It's A Mirror」を提供している。彼の歌声が数マイル上空に昇るのに十分なスペースがあり、音楽が小刻みに流れ落ちる。彼の曲の中でも最も親しみやすい曲のひとつであるが、感情的な弱さという生の核を保っている。 ハドレアスは、「何もないときでも、私は圧倒されて目覚めるんだ」と言う。
その日の残りの時間は、家で一人で考え事をしている方が好きなんだ。でもどうして?ほとんど悪いことばかりだ。それも何十年も変わっていない。このような孤立したループにはまり込んでいるときに書いたのが、『It's a Mirror』だった。ドアを閉めたままにしておく練習をもっとたくさんしたんだ。
彼はまた、「It's a Mirror」のビデオも公開している。ビデオは、Too Brightのハイライト曲 「Queen」のビデオでハドレアスと初めて仕事をしたコラボレーター、コディ・クリッチローが監督した。
「It's a Mirror」
Perfume Genius 『Glory』
Label: Matdor
Release: 2025年3月28日
Tracklist:
1.It's a Mirror 2.No Front Teeth 3.Clean Heart 4.Me & Angel 5.Left For Tomorrow 6.Full On 7.Capezio 8.Dion 9.In a Row 10.Hanging Out 11.Glory
1. Gipsy Hill 2. Morning Call 3. Darling 4. Catch The Door 5. A Messenger 6. As I Listen 7. Open Eyes 8. Anything Like Love 9. What I Used To Do 10. Confiarme 11. Show Me
(LP)
Side-A 1. Gipsy Hill 2. Morning Call 3. Darling 4. Catch The Door 5. A Messenger 6. As I Listen Side-B 1. Open Eyes 2. Anything Like Love 3. What I Used To Do 4. Confiarme 5. Show Me
Ben Trigg - Cello & String Arrangements (Gipsy Hill, Open Eyes & A Messenger)
Emre Ramazanoglu - Percussion (Catch The Door & Anything Like Love)
Chris Hyson - Synthesisers & Programming (Confiarme)
Wouter Vingerhoed - Prophet (What I Used To Do)
Recorded at ”Studio 13” and ”Tileyard Studios” in London
Produced by Jon Kelly and Liza Lo
Additional and co-production by Wouter Vingerhoed (What I Used To Do), Topi Killipen (Morning Call), Sean Rogan (Confiarme) and Chris Hyson (Confiarme)
Written by Liza Lo together with Topi Killipen (Morning Call), Emilio Maestre Rico (Darling),
Peter Nyitrai (Open Eyes), Melle Boddaert (Gipsy Hill), Hebe Vrijhof (What I Used To Do) & Wouter Vingerhoed (What I Used To Do)
Mixed by Jon Kelly
Mastered by Caspar Sutton-Jones & Darrel Sheinman
Engineered by Giacomo Vianello and Ishaan Nimkar at ''Studio 13'' and ''Ned Roberts'' at Tileyard Studios Released by Gearbox Records
ホリデーソングの陽気な雰囲気にはよくあることだが、このクリスマス・アルバムにはほろ苦さが漂っている。ウォーリアムはデヴィッド・バーマンの最後の曲のひとつ「Snow Is Falling In Manhattanーマンハッタンに雪が降る」を歌っているが、この曲は、ディーンが "ホリデー・クラシックになる運命にある "と信じている。その歌詞は、バーマンの悲劇的な死を予感させる。"歌は時の中に小さな部屋を作り/歌のデザインの中に宿り/ホストが残した亡霊がいる"
このコレクションは、通常のクリスマスの定番曲は避けているが、クラシックなインディー・ヘイズのファンは、「Peace on Earth / Little Drummer Boy」(ビング・クロスビーとデヴィッド・ボウイが1977年にTVでデュエットするために作られた曲)に新しいお気に入りを見つけるだろう。「私たちが一番好きなのはマレーネ・ディートリッヒのドイツ語版で、それが出発点だった」とウォーリアムは言う。この曲は3人が一緒に歌う。ウォーリアムのテナー、ソニック・ブームのバリトン、そしてフィリップスの落ち着いたコントラルトを聴くことができる。
ジョン・レノンとは異なり、ルー・リードは明確にはクリスマス・アルバムというのを制作したことがない。しかし、よく調べてみると、『New York』というアルバムで、ベトナムからの帰還兵へ捧げた「X'mas In February(季節外れのクリスマス)」という深い興趣のある曲を歌っていた。ルー・リードは、その人物像を見ても、それとなくわかることであるが、一般的に見ると、少し回りくどいというべきか、直接的な表現を避けて、暗喩的な歌を歌うことで知られている。
ディーン&ブリッタ、ソニック・ブルームのクリスマス・アルバムは、直接的な反戦のテーマこそ含まれていないが、内的な平和のメタファーを歌うことで、リードのクリスマスソングに準ずる見事な作品を完成させている。同様に、ジョン・レノンの「War Is Over」のようなスタンダードな選曲から、17世紀のイングランド民謡「Greensleeves」、あるいは、18世紀のオーストリアの教会のクリスマス・キャロル「Silent Night (きよしこの夜)」を中心として、クリスマスソングの名曲をいくつか取り上げている。三人とも、インディーズ・ミュージック界の名物的な存在で、そして、音楽の知識がきわめて広汎である。このアルバムでは、驚くべきことに、ロックからクラシック、フォーク/カントリー、オールディーズ(ドゥワップ)までを網羅している。
アルバムは、デヴィッド・バーマンのカバー「The Snow Is Falling In Manhattan」で始まるが、ディーンが空惚けるように歌う様子は、ルー・リードの名曲「Walk On Wild Side」にもなぞらえても違和感がない。Galaxie 500の時代から培われたインディーロックのざらついた音質、そして、斜に構えたような歌い方、ソニック・ブームのプロデュース的なシンセサイザー、Wilcoのような幻想的なソングライティング、これらが組み合わされ、見事なカバーソングが誕生している。あらためてわかることだが、良い曲を制作するのに多くの高価な機材は必要ではないらしい。
ソニックブーム、ブリッタの両者にとっては、実際的な制作を行っていることからもわかる通り、映画音楽というのが、重要なファクターとなっているらしい。ジェイムス・ボンドの『007』シリーズでお馴染みのニーナ・ヴァン・バラントの曲「Do You Know How Christmas Trees Are Grown?」では、映画音楽に忠実なカバーを披露している。特に、この曲ではブリッタがメイン・ヴォーカルを歌い、The Andrews Sisters(アンドリューズ・シスターズ)のような美麗な雰囲気を生み出す。曲の途中からはデュエットへと移行していき、映像的な音楽という側面で、現代的なポピュラーの編曲が加わる。プロデュースのセンスは秀逸としか言いようがなく、ソニック・ブームは、シンセサイザーで出力するストリングスで叙情的な側面を強調させる。
ロジャー・ミラーのカバーソング「Old Toy Train」では、ディーンがルー・リードのオルタナティヴフォークやバーバンクサウンドの影響下にある牧歌的な雰囲気を持つフォークソングを披露している。Velvet Undergroundのデビューアルバムの「Sunday Morning」、『Loaded』の「Sweet Jane」の延長線上にあるUSオルタナティヴの源流に迫る一曲である。どうやら、彼らがアーティスト写真でサングラスを掛けているのにはそれなりの理由があるようだ。
ビング・クロスビーのカバー「You're All I Want For Christmas」は、最初期のザ・ビートルズのソングライティングに影響を及ぼしたと言われるガールズ・グループ、The Ronettes(ロネッツ)の伝説的な名曲「Be My Baby」を彷彿とさせるバスドラムのダイナミックなイントロから始まり、果てなきドゥワップ(R&Bではコーラス・グループと呼ぶ)の懐かしき世界へと踏み入れていく。この曲では、ブリッタが夢見るかのようなドリーミーな歌声を披露し、AIのボーカルや自動音声では再現しえない人間味あふれる情感豊かなポピュラーソングを提供している。
「Christmas Can't Be Far Away」は、エディー・アーノルドのカバーで、この曲もまたモノクロ映画の時代のサウンドトラックを聴くようなノスタルジアに溢れている。前曲と同様に、彼らは、戦争で荒廃する世界に光があること、そして、善意がどこかに存在するということ、また、信頼を寄せること、こういった人間の原初的な課題を端的に歌いこんでいる。分離する世界を一つに結びつけるという、音楽の重要なテーマが取り入れられていることは言うまでもない。
「If We Make It Thought December」は、おそらくマール・ハガードが歌った曲で、クリスマスベルとフォーク・ミュージックが組み合わされたカバーソングである。ただ、この曲はブリッタがメインボーカルを取り、バンジョーのアレンジによる楽しげな雰囲気を付け加え、原曲にはない魅力を再発掘している。カバーアルバムでありながら、トリオの音楽的な核心を形成するメッセージ性は強まり、最後の二曲でディーン&ブリッタ、ソニック・ブームの言わんとすることがようやく明らかになる。
ビング・グロスビーとデヴィッド・ボウイの1977年のデュエット曲「Peach On Earth/ Little Drummer Boy」では、ドゥワップの歌唱法を用い、Velvet Undergroundから、Galaxie 500、ヨ・ラ・テンゴのオルタナティヴのムードを吸収した雰囲気たっぷりのロックソングへと昇華している。コーラスワーク、そしてアコースティックギターの演奏を中心に、オーケストラのスネアを使用し、ボレロのようなマーチングのリズムを取り入れ、見事なアレンジを披露している。
カバーの選曲が絶妙であり、また、オリジナル曲の魅力を尊重しながら、どのように再構成するのかという端緒が片々に見いだせるという点で、『A Peace Of Us』は多くのミュージシャンにとって、「カバーの教科書」のようなアルバムとなるだろう。本作のクローズには、ジョン・レノン/オノ・ヨーコの名曲「Happy X'mas(War Is Over)」が選ばれている。こういった名曲のカバーを聴くたび、ヒヤヒヤするものがある。(原曲も持つイメージが損なわれませんようにと祈りながら聴くのである)しかし、これが意外にマッチしているのに驚きを覚える。 分けても、サビにおける三者の絶妙なコーラスは、繰り返されるたび、別の音域に移り変わり、飽きさせることがほとんどない。そして、ジョン・レノンの全盛期のソングライティングに見受けられる瞑想的な音楽性は、このトリオの場合は、幸福感を強調した瞑想性へと変化している。
このカバーを聴くと、ジョン・レノンは、特別なミュージシャンではなく、むしろ一般的なファンや子供が気安く口ずさめるようにと、「Happy X'mas(War Is Over)」を制作したことが理解出来るのではないか。音楽は特別な人のためのものでもなければ、特権階級のためのものでもないことを考えれば、当然のことだろう。果たして戦争のない時代はやって来るのだろうか??
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「Snow」
■ Dean & Britta - Sonic Boom 『Peace Of Us』は本日、Carparkから発売。ストリーミングはこちら。
ニューヨークのシンガー、Daneshevskaya(ダネシェフスカヤ)が新曲「Scrooge」を発表した。アンナ・ベッカーマンのプロジェクトによる新曲は、昨年の『Long Is the Tunnel』以来となる。(楽曲のストリーミングはこちら)
ザ・ブリーダーズ(元ピクシーズ)のKim Deal(キム・ディール)が、ソロデビューアルバム『Nobody Loves You More』を今週末に4ADよりリリースする。今回、彼女はそのアルバムからのシングル、タイトル曲「Nobody Loves You More」のミュージックビデオを公開した。。
新しいアルバムの2曲、「Are You Mine?」と 「Wish I Was」は、もともと2011年に書かれレコーディングされ、7インチに収録されていたが、『Nobody Loves You More』のために再レコーディングされた。アルバムの最終レコーディング・セッションは2022年11月、シカゴのエレクトリカル・オーディオ・スタジオで故スティーヴ・アルビニと行なわれた。
アナト・モシュコフスキはイスラエル/テルアビブ在住のミュージシャン。6歳からピアノ、11歳からクラリネットを始め、後にヴォーカリストとなる。近年は、ヨニ・レヒテル、ウジ・ナヴォン、ヌリット・ヒルシュらと歌い、「ヘーゼルナッツ 」と共に世界ツアーを行っている。2017年にデビューEP『Happy as a Dog』をリリース。セカンドEP『Loud & Clear』は2019年リリースしている。
彼女のディスコグラフィーには、二作のEPとフランスのシングルの三部作が含まれている。その中には、Yoni Rechterの有名な曲「The Prettiest Girl In Kindergarten」の人気のある魅惑的な新バージョンがある。
モシュコフスキーの有名作としては2021年の「La Petite Fille la Plus Jolie du Monde(世界で一番かわいい女の子」がある。この曲はシンガーソングライターのコンポジションを理解する上で不可欠である。フランスのメディアによると、この曲はイスラエル音楽の有名曲であるらしく、回顧展と合わせて公開された。すべては、音楽家ノエミー・ダハンがアナト・モシュコフスキーとシュージンのために翻訳した、イスラエル音楽で最も有名な曲のひとつから始まった。
オープナー「Jamie」は、アコースティックギターの多重録音で始まり、シンプルかつ美しい調和を作り上げた後、60年代の古典的なバロックポップの影響下にある温和な音楽性を展開させている。一見して、簡素な旋律やスケールを描くように聴こえるが、複数の楽器のアンサンブルを通じて、ビートルズに近い美麗なポップスが作り上げられる。基本的な音楽性にオルタネイトな影響を与えているのが、彼女がよく聴くという”Mild High Club”のようなネオサイケロックバンドからのフィードバックである。これはメインストリームの音楽に、ノスタルジアとディレッタンティズムを添える。歌唱法についても囁くような語りのニュアンスからスキャット、明確なボーカルに至るまで、幅広い形式が繰り広げられる。何より、バロックポップ/チェンバーポップの規則的なビートに乗せられる穏やかな旋律進行は、うっとりさせるものがある。
アナト・モシュコフスキーの音楽は、ビートルズやセルジュ・ゲンスブールといった60年代、70年代の音楽のフィードバックをありありと感じさせる。「If We Fail」ではボサ・ノヴァのリズムをシンセとドラムでユニゾンで刻みながら心地よいビートを作り上げ、そしてラテン音楽とジャズの融合をポピュラーの文脈と結びつける。それほど音の要素は多くはないものの、核心を捉えたグルーヴがモシュコフスキーの温かい印象を持つボサ風のボーカルと上手く合致している。
続く「On a Tout Fait」はアコースティックギターの繊細なアルペジオの弾き語りで、聴きやすいバラード曲を提供している。具体的にイスラエルでどういった曲が流行っているのかは不明ではあるものの、フォーク・ソングをベースにしたこの曲では、ファンタジックなイメージを基にして、現代的なフォークソングを組み上げ、コーラスワークを通じて、音楽的な奥行きを表現している。終盤では、アートポップの要素が強まり、そしてフレンチ・ポップの要素と結び付けられる。「Obscure Clarte」では、エレクトロニックピアノの演奏とストリングスをかけあわせ、オルタナティヴの側面を強調している。セルジュ・ゲンスブールの系譜にある一曲である。