ラベル Post Hardcore の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Post Hardcore の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

 

©Jake Mulka


デトロイトの次世代のハードコアユニット、The Armed(ザ・アームド)はEP『EVERLASTING GLAZE』を発表した。本作は10月18日にSargent Houseからリリースされる。


EPにはIDLES、Water From Your Eyes、Model/Actrizがリミックスを手掛けたリード・シングル「Sport of Form」が収録されている。「NEW.Christianity」の新しいビデオは以下をチェック。

 

バンドのダン・グリーンは声明の中で説明している。


「”NEW!Christianity”は当初、”PERFECT SAVIORS”のファースト・シングルとして構想されていたが、1枚のフルアルバムに収録するには素材が多すぎることが明らかになったため、この曲はSide Cのフィナーレを飾るにふさわしい、ONLY LOVE / ULTRAPOP / PERFECT SAVIORSの3部作のエピローグにふさわしい、総括的な楽曲となった」

 

「その名前に関して言えば、特定の実際の宗教についてというよりも、そのアバターを渇望する文化について。非道徳的なものの道徳化。完璧な救世主 "という概念のよりあからさまな否定」

 

 

 「NEW.Christianity」

 


 

ARMED 【EVERLASTING GAZE EP】

 

Trackllist:


1. Puzzler

2. NEW! Christianity

3. Martyr Song

4. Sport of Form (Water From Your Eyes Remix)

5. Sport of Form (Model/Actriz Remix)

6. Sport of Form (IDLES Remix)

 

Karate
©Daniel Bergeron


2022年、ボストンのハードコア・バンド、Karateが17年ぶりに再結成した。本日、彼らは2004年の『Pockets』以来となるアルバムを発表した。アルバム名は『Make It Fit』で、Numero Groupから10月18日にリリースされる。Numero GroupはTouch & Goの後継レーベルと言える。最初の発表では、2曲の新曲「Defendants」と「Silence, Sound」が公開された。


トリオは今年1月、長年のコラボレーターであるアンディ・ホンとナッシュビルで新作LPを制作した。ホンはアルバムのミックスも担当し、ジェフ・ファリーナが自宅スタジオとシカゴのエクスペリメンタル・サウンド・スタジオでギターとヴォーカルを担当した。


「Defendants」

 

 

 「Silence, Sound」

 

 

 

 

Karate 『Make It Fit』

Label: Numero Group

Release: 2024年10月18日


Tracklist:


1. Defendants

2. Bleach The Scene

3. Cannibals

4. Liminal

5. Rattle the Pipes

6. Fall to Grace

7. Around The Dial

8. People Ain’t Folk

9. Three Dollar Bill

10. Silence, Sound

Envy
Envy

東京の伝説的なポストハードコアグループ、envyが新作アルバム『Eunoia』をTemporary Residence/Pelagicから『Eunoia』にリリースする。メンバーチェンジを経て6年、そして4年ぶりのフルアルバム。この発表に合わせてファーストシングル「Beyond the Raindrops」が公開された。

 

従来のような音響系のポストロックを基調にしているが、この曲では以前のようなシャウトはない。2011年を期に、静謐な印象を持つポストハードコアにシフトチェンジした。バンドは前作EPで少し寄り道をしたものの、音楽的なコンセプトは現在もなお健在と言えるだろう。


バンド結成30年の節目を越えて、envyが9枚目のスタジオ・アルバム『Eunoia』を携えて帰ってくる。深淵な感情の深みと、ますます多彩になる(そして無尽蔵とも思える)アイデアの源泉を凝縮させた『Eunoia』は、envyの信じがたい長いキャリアの中で最も効率的にインパクトを及ぼすアルバム。


2018年に大きなメンバー変更があり、envyの存続が危ぶまれたが、その代わりに大きな成長を促し、この新ラインナップでの2ndアルバムでバンドを再活性化させた。結成メンバーで主要なソングライターを務める河合信賢は次のように説明する。


「アルバム制作のコンセプトは、自分たちの無力さに正直に向き合うことでした。わずかな希望を探して、日々の生活から得た感情を日記のように記録していく。曲の説明を抜きにしても、テツの歌詞は本当に素晴らしく、作品に深みを与えている。メンバーの顔ぶれが変わってから6年が経ちましたが、良い信頼関係が作品に色濃く反映されています」 


envyは、日本のハードコアシーンにとどまらず、文字通り音楽のサブジャンル全体に強い影響を及ぼしたアンダーグラウンドな存在である。彼らの創造的で文化的な影響力は否定できない。そのレガシーは結成最初期に固められた。


『All The Footprints You've Ever Left and the Fear Expecting Ahead』、『Dead Sinking Story』、『Insomniac doze』、『Reciation』といったバンドのランドマークであり、象徴的な日本のポストハードコアの傑作を経て、30年以上経った今でも新境地を開拓し続けている。この事実は、envyがユニークで並外れたパワーを持つ証でもある。『Eunoia』はそのパワーと影響力が今なお健在であることを示す。

 

 

「Beyond the Raindrops」




Envy 『Eunoia』- New Album


 

Label:  Temporary Residence/Pelagic

Release: 2024年10月11日 


Tracklist:


1. Piecemeal
2. Imagination and Creation
3. The Night and the Void
4. Beyond the Raindrops
5. Whiteout
6. Lingering Light
7. Lingering Echoes
8. January's Dusk


Pre-order:


https://orcd.co/envy-eunoia


日本盤のご予約:


https://ultravybe.lnk.to/eunoia



スクリーモの元祖、ニュージャージーの伝説的なバンドーーThursdayが帰ってきた。彼らは2011年以来となる新曲を発表した。彼らのメタリックな楽曲とスクリーモは、現在のシーンの渦中で個性的な輝きを放つ。今後の活動にも注目したい。

 

この曲は、ポストハードコア・バンドの前作『No Devolución』のリリースから13年ぶりにリリース。彼らは、ニューヨーク州オルバニーのコンサートのライブでこの曲をデビューさせた。


待望のニューシングルをインスタグラムで発表したサースデイは、次のような声明を発表している。


ーー今夜、13年ぶりの曲をリリースします。そして、25年ぶりにレコード会社を通さずにリリースするDIYの曲でもある。小さな白いバンに乗って、地下室やVFWホール、屋根裏部屋、キッチン、裏庭で演奏するために出発してから25年が経過した。

 

 "サマー・ツアー'99"の時代のことをふと思い出す。この25年間、高速道路での故障、救急搬送、法律との衝突がたくさんあったんだよ。スタジオで笑っていた時間、バックステージで肩を寄せ合っていた時間、雨の中で機材を積み込んでいた時間。そして、25年間にわたる法廷闘争と公の場での暴挙...。しかし、私たちは今、自由なんだ。自分たちで間違いを犯す自由がある。

 

このバンドを、持ち回りのメンバーの集団にするか、小さな家内工業にするか、出版社にするか、レコードレーベルにするか、何年経っても一緒に楽しんでいる睦まじい友人のグループにするのか、私たちが夢見るものに変える自由がある。だから、今夜は『Full Collapse』をリリースしていた頃(23年前の今週)、あるいは、再び『Full Collapse』をリリースした頃に演奏していたように、小さなインディペンデントな会場でステージに立つつもりでいるんだ。ーー

 

 

「Application For Release From The Dream」

 Pissed Jeans 『Half Divorced』 

 

Label: Sub Pop

Release: 2024/03/04


Purchase/Stream



アメリカでは、たまに忘れた頃に魅力的なパンク・クルーが登場する。Pissed Jeansはペンシルバニアのハードコアバンドで、結成から20年のキャリアを誇る。今までこのバンドの存在を知らなかったが、実際の音源に触れれば、少なくとも、その活動期間は空虚なものではなかったと理解出来る。

 

パンクには、グループの音楽に内包されるアティテュードや、社会情勢に対してずばり物申すことが不可欠な要素なのだ。もし、それが的を射たものであればあるほど、実際にアウトプットされる音楽にも説得力が籠もるだろうし、より多くのファンを獲得することも出来る。つまり、パンクは、音楽そのものが尖っていれば良いというものでもない。少なくともルーザーから資産家の全方位にむけ、タブー視されていることや、一般的には言いにくいことを、ハードなサウンドに乗せてMCのように痛快にまくしたてる必要がある。かつてはそういったご意見番は、NOFXやGreen Dayといったパンクバンドが担っていたが、そろそろ次の世代が出てこないと、彼らもいよいよ「若い連中は何をやっているのか?」と嘆かわしく思いはじめることだろう。

 

例えば、政治的な揶揄、社会情勢や人生の成功者にたいして「ノー」を突きつけることは、彼らの実際の人生から生じている。バンドが直面した人生の辛酸や皮肉などを中心に、辛辣なハードコアパンク、カオティックハードコアとして昇華される。そこには、世間のいう幸福から遠ざかったことにより、赤裸々なパンクを制作することに躊躇がなくなった見る事もできる。人間誰しも、守るものがあったり、優遇される立場に置かれていると、人生の本質を見失い、そして、表現そのものに遠慮が出てくる。社会的な地位があればなおさら。みずからの発言や表現性により、誰がどんな表情をするのかをあらかじめ予期し、彼らのご機嫌取りしようとばかりに、お体裁の良い言葉や、彼らの気に入るであろう見目好い言葉を矢継ぎ早に投げかけるのだ。

 

そういった虚偽を覆うために奇妙な肩書があり、仰々しい名の元に構成された団体や機構、グループがある。だが、それらは実際、何の役にも立たず、誰も幸福にしない。そもそも、こういった虚偽の元に構成された奇妙な構造を持つ社会が少数の幸福者の下に無数の不幸者を生み出してきた。

 

どのような国家の議会でも聞かれるような言葉。その言葉は確かに配慮に富み、耳障りが良いかもしれないが、その実、そういった嘘くさい言葉は、何も現状を変えることもなければ、大多数の人々を癒やしたり、ましてや救うことなどありえない。なぜなら、それらは成功者、あるいは資本家を喜ばすことしかできず、一般大衆を喜ばすことなど到底なしえないからである。

 

Pissed Jeansが、そもそも他の一般的な人々よりも不真面目であり、真っ当な人生を歩んで来なかった、などと誰が明言出来るだろうのか。少なくとも、彼らのハードコアパンクは不器用なまでに直情的で、フェイクや嘘偽りのないものであるということは事実である。オープニングを飾る「Killing All The Wrong People」は、タイトルはデッド・ケネディーズのように不穏であり、過激であるが、その実、彼らが真面目に生きてきたのにも関わらず、相応の対価や報酬(それは何も金銭的なものだけではない)が得られなかったことへの憤怒である。その無惨な感覚を元にした怒りの矛先は、明らかに現在の歪んだ資本構造を生み出した資本家、暴利を貪る市場を牛耳る者ども、また、そういった社会構造を生み出した私欲にまみれた悪党どもに向けられる。それはパンクの餞であり、彼らなりのウィットに富んだブラック・ジョークなのだ。

 

実際の音楽はカオティック・ハードコアの屈強なスタイルを選んでいるが、これらの曲の中でたえず強調される不協和音は、四人が感じ取る現代社会の悲鳴であり、その中にまみれている不幸者の言葉にならぬ激しい呻きである。これらが長い経験から発生する激烈なカオティック・ハードコアという形で組み上げられていき、PJのサウンドを作り上げていくのだ。その中には、カルフォルニア・パンクの始祖であるBlack Flagのヘンリー・ロリンズのような慟哭もある。

 

バンドのパンクサウンドバリエーションがあり、単調なものに陥ることはほとんどない。オープニングのカオティックハードコアで盛大にぶちかました後、2曲目「Anti-Sapio」ではメロディック・パンクへと舵を取る。彼らのサウンドの下地にあるのは、複数のメディアが指摘しているように、ワシントン、ボストン、あるいは、ニューヨークの80年代から90年代にかけてのオールドスクール・ハードコアである。彼らのサウンドは、バッド・ブレインズ、バッド・レリジョン、あるいは、ニューヨークのゴリラ・ビスケッツのような象徴的なバンドの系譜に位置する。シンガロング性の高いフレーズを設けるのは、ポップ・パンクに傾倒しているがゆえ。それは以後のドロップキック・マーフィーズやフロッギン・モリーのようなパブ・ロックをメロディックパンクやケルト音楽から再解釈したサウンドを咀嚼しているからなのだろう。Pissed Jeansのサウンドには風圧があり、そして、それが怒涛の嵐のように過ぎ去っていく。

 

3曲目「Helicopter Parent」では、Sub Popのグランジ・サウンドの原点に迫る。『Bleach』時代のヘヴィネス、それ以後のAlice In Chainsのような暗鬱で鈍重なサウンドを織り込んでいるが、それはハードロックやヘヴィメタルというより、QOTSAのようなストーナーサウンドに近い形で展開される。しかし、彼らはグランジやストーナーロックをなぞらえるだけではなく、Spoonのようなロックンロール性にも焦点を当てているため、他人のサウンドの後追いとなることはほとんどない。クールなものとは対極にある野暮ったいスタイル、無骨な重戦車のような迫力を持つコルヴェットのボーカルにより、唯一無二のパンクサウンドへと引き上げられていく。挑発的で扇動的だが、背後のサウンドはブギーに近く、ロックのグルーブに焦点が置かれている。


アルバム発売直前にリリースされた「Cling to a Poison Dream」では、敗残者のどこかに消し去られた呻きを元に、痛撃なメロディック・ハードコアを構築する。アルバムの中では、間違いなくハイライトであり、現代のパンクを塗り替えるような扇動力がある。彼らは自分たち、そして背後にいる無数のルーザーの声を聞き取り、イントロの痛快なタム回しから、ドライブ感のあるハードコアパンクへと昇華している。乾いた爽快感があるコルヴェットのボーカルがバンド全体をリードしていく。リードするというよりも、それは強烈なエナジーを元に周囲を振り回すかのよう。しかし、それは人生の苦味からもたらされた覚悟を表している。バンドアンサンブルから醸し出されるのは、Motorheadのレミー・キルミスターのような無骨なボーカルだ。メタリックな質感を持ち、それがオーバードライブなロックンロールという形で現れる。曲は表向きにはメロディック・パンクの印象が強いが、同時に「Ace Of Spades」のようなアウトサイダー的な70年代のハードロック、メタルの影響も感じられる。アウトロでの挑発的な唸りはギャングスタラップの象徴的なアーティストにも近い覇気のような感慨が込められている。 

 

 

 「Cling to a Poison Dream」

 

 

 

ペンシルバニアのバンドではありながら、西海岸の80年代のパンクに依拠したサウンドも収録されている。そして、それは最終的にワールドワイドなパンクとしてアウトプットされる。これらは彼らのパンクの解釈が東海岸だけのものではないという意識から来るものなのだろう。「Sixty-Two Thousand Dollars in Debt」は、最初期のミスフィッツ、「Black Coffee」の時代、つまりヨーロッパでライブを行っていた時代のブラック・フラッグのサウンドをゴリラ・ビスケッツのハードコアサウンドで包み込む。ボーカルのフレーズはクラッシュのジョー・ストラマーからの影響を感じさせ、ダンディズムを元にしたクールな節回しもある。その中に、現代社会の資本主義の歪みや腐敗した政治への揶揄を織り交ぜる。しかし、それは必ずしもリリックとしてアウトプットされるとはかぎらず、ギターの不協和音という形で現れることもある。バッキングギターの刻みをベースにしたバンドサウンドは親しみやすいものであるが、これらの間隙に突如出現する不協和音を元にしたギターラインが不穏な脅威を生み出し、フックとスパイスを付与している。特に、ギターの多重録音は、PJの代名詞的なサウンドに重厚さをもたらす。

 

その後もブラック・フラッグ的なアナーキストとしてのサウンドが「Everywhere Is Bad」で展開される。相変わらず、不協和音を元にした分厚いハードコアパンクが展開されるが、ここには扇動的で挑発的なバンドのイメージの裏側にあるやるせなさや悲しみが織り交ぜられている。さらに彼らはパンクそのもののルーツを辿るかのように、「Junktime」において、デトロイトやNYのプロト・パンクや、プッシー・ガロア、ジーザス・リザード、ニック・ケイヴ擁するバースデイ・パーティのような、前衛的なノイズパンクへ突き進む。アルバムの序盤で彼らはオーバーグラウンドのパンクに目を向けているが、中盤では、地中深くを掘り進めるように、アンダーグランドの最下部へ降りていく。しかし、その最深部は見えず、目の眩むような深度を持つ。それを理解した上で、彼らはナンセンスなノイズ・ロックを追求しつづける。彼らのアナーキストとしての姿が垣間見え、上澄みの世間の虚偽や不毛な資本主義の産業形態を最下部から呆れたように見つめている。これは確かにルーザーのパンクではあるが、その立ち位置にいながら、まったくそのことに気がづいていない、ほとんどの人々に勇気を与え、彼らの心を鼓舞させるのだ。

 

バンドと彼らが相対する世界との不調和は、世間の人々の無数の心にある苛立ちやフラストレーションを意味しており、それがいよいよ次のトラック「Alive With Hate」で最高潮に達する。挑発的なノイズのイントロに続くボーカルは、腹の底というより、地中深くから怨念のように絞り出され、その後、Paint It Blackを彷彿とさせる無骨なハードコアパンクへと移行する。これらのハードコアパンクは、世間の綺麗事とは対極にある忖度が1つもない生の声を代弁している。

 

地の底を這うようなギターライン、それに合わさるワイアードなノイズ、扇動的なギター、ドラム、ハードコアに重点を置くボーカルが、目くるめく様に繰り広げられる。世の中のたわけきった人々を、彼らはニュースクール・ハードコアの文化に象徴される回し蹴りのダンス、外側に向けて放たれる強烈なエナジーにより蹴散らし、ヘイトをやめようなどと言い、その実、ヘイトを増大させる人々に、「目を覚ませ!」とばかりに凄まじい撃鉄を食らわす。怒涛の嵐の後には何も残らない。Panteraのダイムバック・バレルが墓場から蘇ったかのようだ。

 

アルバムの終盤では、比較的キャッチーな曲が収録されている、しかし、そのキャッチーさは必ずしも上澄みのパンクバンドのものとは一線を画している。


「Seabelt Alarm Silencer」では、80年代のストレート・エッジの性急なビートを元にし、メロディック・ハードコアを展開する。この曲は、Negative ApproachやNegative FXのようなボストン周辺のハードコアのような無骨さとミリタリー・パンクの要素を思わせる。続く「(Stolen) Catalytiic Converter」では、Gorilla Biscuitsのようなニューヨークのハードコアサウンドに立ち返る。ただその中にも現代的な音楽性も伺える。パルス状のシンセは、カナダ/トロントのFucked Upのエレクトロ・ハードコアの系譜にあるが、Pissed Jeansは、それを聞きやすいものにしようとか、親しみやすいものにしようなどという考えはない。ストレートなハードコアサウンドを突き抜けていくのは、耳障りなノイズ、そして、90年代や00年代のミクスチャーロックをベースにしたアジテーションである。


「Monsters」はアルバムの中で最もスリリングなポイントとなる。ボーカルはBad Religionのメロディック・ハードコアをスタイルに属するが、他方、全体的なサウンドとしてはUKのオリジナルパンクやハードコアの系譜にある。どこまでも無骨でゴツゴツとした感じ、一切、忖度やご機嫌取りをしないという生真面目でナーバスな点では、Discharge、Chaos UK、The Exploitedといったカラフルなスパイキーヘア、そして鋲のついたレザー・ジャケットの時代のUKハードコアの影響下にある。もちろん、疾走感のある性急なビートがそれらの屋台骨を形作り、現代的なハードコアがどうあるべきなのかを示している。これらは、Convergeやヨーロッパのハードコアバンドほど過激ではないが、王道にあるハードコアサウンドは、牙をそぎ落とされたファッションパンクばかり目立つ現代のシーンの渦中にあって鮮やかな印象を放つ。彼らはまだパンクが死んでいないことを証し立てる。


アルバムでは、引き出しの多いパンクのスタイルが重厚なサウンドによって展開される。表向きには、ぶっきらぼうな印象もあるが、最後の曲だけは、そのかぎりではない。「Moving On」では、Social Distortionを思わせる渋いメロディック・パンクをベースにし、コルヴェットの唸るようなヴォイスがその上を高らかに舞う。無骨なボーカルであるため、メロディー性は相殺されてしまっているが、サビのシンガロングの部分に彼らの最も親しみやすい部分が現れる。


この曲には、ソーシャル・ディストーションと同じように、カントリーとフォークの影響もわずかに見えるが、まだ残念ながら完全な形で表側には出てきていない。これがもし、ジョー・ストラマーのように、スカやカントリー、フォーク等、パンクの外側にあるジャンルを思い切り盛り込み、それが最も洗練され研ぎ澄まされた時、理想的なサウンドが出来上がるかも知れない。クラフトワークの『Autobahn』を思わせるアルバムジャケットはおしゃれで、部屋に飾っておきたいという欲求を覚えさせる。エミール・シュルトのセンスを上手く受け継いでいる。

 



85/100

 

 

 

Best Track 「Alive With Hate」



『Half Divorced』はSUB POPから3月1日に発売。アルバムからは前作「Sixty-Two Thousand Dollars in Debt」「Moving On」「Cling to a Poisoned Dream」先行シングルとして公開済み。  

 

ペンシルバニアのハードコアバンド、One Step Closer(ワン・ステップ・クローザー)は、2ndアルバム『All You Embrace』を発表した。

 

2021年の『This Place You Know』と昨年の『Songs for the Willow EP』に続くアルバムは、5月17日にRun for Coverからリリースされる。ニューシングル「Leap Years」は記事最下部よりご視聴下さい。


ボーカルのライアン・サヴィツキーは声明の中で、次のように述べています。「”One Step Closer”を完全な状態で披露したかったんだ。バンドの全てのパートを、そこに存在させたかった。100%自分たちらしく、できる限り自分たちのバンドに忠実でありたかった」



One Step Closer 『All You Embrace』


Label: Run For Cover

Release: 2024/05/17

Tracklist:


1. Color You

2. Leap Years

3. Blur My Memory

4. The Gate

5. Your Hazel Tree

6. Orange Leaf

7. Esruc

8. Slow To Let Go

9. Topanga

10. Giant’s Despair



「Leap Years」

 

©︎Dasha Belikov

ニューヨークを拠点とする5人組ハードコアバンド、Dog Dateが新作アルバム『Zinger』を発表した。2021年のデビュー作『Child's Play』に続くこの作品は、4月12日にPop Wig Recordsからリリースされる。リード・シングル「Nuff Said」とアルバムのジャケット、トラックリストは以下をチェック。


「このアルバムについて、ヴォーカル/ギターのディラン・ケネディはプレスリリースでこう語っている。「二人のドラマーが一緒に演奏することは、僕らにとってとても重要なことだった。


この曲のやや狂暴な性質は、内なる不安について書くのに適している。このアルバムの最後の曲までには、最初の頃のパニックや怒りを乗り越えているといいんだけどね」





Dog Date 『Zinger』


Tracklist:

1. Nirvana
2. Nuff Said
3. Spine Transfer
4. F Bomb
5. Duplo
6. Cruel World Reversal
7. Theory Orb
8. Slug
9. Xipe
10. Twin Star
11. I Love That Story



 


ニューヨークのノイズコアバンド、Couch Slutが、4月19日にBrutal Pandaからリリースされる4枚目のアルバム『You Could Do It Tonight』を発表した。このアルバムはユニフォームのベン・グリーンバーグと共にレコーディングされ、同じニューヨークのバンド、インペリアル・トライアンファントとピルロンのメンバーも参加している。


ファースト・シングルは「Ode to Jimbo」で、バンドの特徴であるドロドロとした醜い不協和音を聴かせるが、その不潔さの中に実はラブソングがある...。つまりバーへのラブソングだ。ボーカルのミーガン・オシュトロシッツは、グリーンポイントのバー、ジンボ・スリムのことを指して、「"Ode to Jimbo "は、私たちが初めて作ったラブソング」という。この曲は以下から。


Couch Slutは4月20日のRoadburn Festでヨーロッパ・デビューを果たし、ニュー・アルバムを発売日にフル・パフォーマンスする。現在のところ、他に予定されているのは、5月26日にミネアポリスで開催されるCaterwaul Festのアフターパーティーでのヘッドライナーのみである。





Couch Slut  『You Could Do It Tonight』


Tracklist

Couch Slut Lewis

Ode To Jimbo

Wilkinson’s Sword

The Donkey

Presidential Welcome

Energy Crystals For Healing

Downhill Racer

Laughing and Crying

The Weaversville Home For Boys

 Pissed Jeans Announce New Album "Half Divorced" via Sub Pop


ペンシルバニア発のハードコアバンド、Pissed Jeansは、2017年の『Why Love Now』以来となる新作アルバムの制作を発表した。『Half Divorced』は3月1日にSub Popからリリースされ、本日、フィラデルフィアのバンドはニューシングル「Moving On」がリードシングルとして公開された。

 

『Half Divorced』は、バンドとドン・ゴドウィンがプロデュース/ミックス、メリーランド州タコマ・パークのTonal Parkでマイク・ペティロがエンジニアを務めた。マスタリングは共同プロデューサーのArthur Rizkが担当した。


「『ハーフ・ディヴォースド』には、こんな現実は嫌という攻撃性がある」とフロントマンのマット・コルヴェットは声明で説明している。

 

「あなたがたは私にこれらのことに注意を払うことを望んでいるようだが、私はそんなことはどうでもいいと言いたい。僕はもう別のところに目を向けている」

 

「私たちは2年ごとに新譜を出すようなバンドではない」とコルヴェットは言った。「Pissed Jeansは、僕らにとって本当にアート・プロジェクトのようなもので、それがとても楽しいんだ」


「Moving On」


 
 
・「Sixty-Two Thousand Dollars in Debt」


Sub Popが送り出すパンクの新星、Pissed Jeansは、ニューアルバムのリリースに向け、着々と準備を整えている。


昨日公開されたニューシングル「Sixty-Two Thousand Dollars in Debt」は彼らの近日発売のアルバム『Half Divorced』からのハイライトで、負債比率が縮小する興奮を歌っている。武骨なギターリフをベースにして、メロディックパンクを基調とした展開へと繋がる瞬間は痛快さがある。

 

先月、バンドはアルバムのリリースを、ジョー・スタクン(「The Bar Is Low」、「Bathroom Laughter」、「Romanticize Me」)による強烈なリード・シングルのオフィシャルビデオと同時に発表した。The Fader、Stereogumによってプッシュされた。

 

Pissed Jeansの『Half Divorced』は、2017年の『Why Love Now』に続くアルバムで、現代生活の平凡な不快感について焦点を絞っている。

 

マット・コルヴェット(ヴォーカル)、ブラッドリー・フライ(ギター)、ランディ・フート(ベース)、ショーン・マクギネス(ドラムス)によるPissed Jeansの悪名高い辛辣なユーモアのセンスは、現代の大人の生活がもたらす喜びを切り口に、これまでになく鋭さを増している。


『Half Divorced』は、Pissed JeansのメンバーとDon Godwinがプロデュースとミックスを担当。メリーランド州タコマ・パークのTonal ParkでMike Petilloがエンジニアを、Arthur Rizk(『Why Love Now』の共同プロデューサー兼ミキサー)がマスタリングを担当した。

 

 

「Sixty-Two Thousand Dollars in Debt」




 ・「Cling to a Poisoned Dream」

 

©Ebru Yildiz

6枚目のアルバムHalf Divorced』のリリースに先駆け、Pissed Jeansがもう1曲シングル「Cling to a Poisoned Dream」を公開した。Bad Religionを彷彿とさせる疾走感のあるパンクロックソング。考えられるかぎり最もクールなメロディックハードコアでゲス野郎共を縦横無尽に蹴散らす。

 

Pissed Jeansは、マット・コルベット(ヴォーカル)、ブラッドリー・フライ(ギター)、ランディ・フート(ベース)、ショーン・マクギネス(ドラムス)。ユーモアのセンスはかつてないほど鋭く、現代の大人の生活がもたらす喜びのいくつかを彼らのデニムのように痛快に切り裂く。


『Half Divorced』は、MOJO(★★★★)やUNCUT(8/10)から賞賛を得た。UNCUTのレビューでは次のように評されている。

 

「デビューから20年近く経った今でも、この連中は、ポストパンク、ハードパンクの猛烈なハイブリッドで、ゲス野郎どもを蹴散らす。「アンチ・サピオ」や「毒の夢にしがみついて」といったトラック・タイトルは、彼らの現状に対する見方が残酷なまでに現実的であることを示唆している。それはいつものように、曲調とダークなユーモアで味付けされている。マット・コルヴェットは人間嫌いの力を持っている」


「ボストンからローマまで、現代の主要都市のネガティブな面を列挙している(「Everywhere Is Bad」)。「エブリウェア・イズ・バッド」であれ、「ヘリコプター・ペアレント」であれ、ボブ・モールドのようなキメの激しさを取り入れた「Moving On」であれ、80年代のハードコアパンクがかなり支配的だ。キリング・ジョーク風の大曲「Junktime」では、特にそうかもしれない」


『God Is In the TV』誌は、「喉をかき鳴らすような強迫観念と紛れもない軽快さが勝利のコンビネーションを呼び込む」と評している。『Record Collector』誌は、「最高の作品だ」と付け加えている。

 


 

アルバムのレビューは下記よりお読みください:


REVIEW - PISSED JEANS 『HALF DIVORCED』 
 
 
 
 Pissed Jeans 『Half Divorced』


Label: SUB POP
Release: 2024/03/01


Tracklist:
 

1. Killing All the Wrong People
2. Anti-Sapio
3. Helicopter Parent
4. Cling to a Poisoned Dream
5. Sixty-Two Thousand Dollars in Debt
6. Everywhere Is Bad
7. Junktime
8. Alive With Hate
9. Seatbelt Alarm Silencer
10. (Stolen) Catalytic Converter
11. Monsters
12. Moving On


Pre-order:

 


2022年初め、トロントのハードコアバンド、Fucked Upは、24時間で作曲と録音を行った伝説的なフルレングス『One Day』をMerge Recordsからリリースした。続いて『One Day』のセッションの別テイクから3曲を収録した『Show Friends』(7Inch)をリリースしたばかり。タイトル・トラックと 「Spot The Difference」に続く3曲目のシングル「What The Sun Shaw」がついに公開となった。

 

バンドはリーズの公演を皮切りとするヨーロッパ・ツアーの日程を発表した。フロントマンのダミアン・アブラハムは「一般的なカナダのバンドにとって、英国での活躍は何より最重視される」とKerrang!誌のインタビューで述べた。そして、もうひとつは、アブラハムの父祖がイギリスにルーツを持つというのもある。今回のライブ・ツアーでは、ロンドン、リーズ、ボーンマスの3つの都市においてバンドが現地のファンに対外的なアピールを行う格好の機会となる。


Fucked Upは、最近では、パンクとエレクトロとの融合を試み、新しいチャレンジに事欠かない。7 inchの最後のトラックについても同様で、ポスト・ハードコアをサイケデリックに彩っている。

 

ポスト・ハードコアに関する音楽性は以前と同様でありながら、オルタナティヴ・ロック的なギターラインが異彩を放つ。テクニカルなギターラインは、複雑なドラムと合わさり、トゥインクルエモ/エモコアに近い雰囲気を帯びる。その音楽性を決定づけるのが、ダミアン・アブラハムの人間離れした唸り声である。トロントのFucked Upが提示するアンビバレントで新鮮なハードコアは、このジャンルにとどまらず、オルタナ・ファンの期待に添えるものとなっている。



「What The Sun Shaw」



TOUR DATES:

11/10 – Leeds, UK @ Temple of Boom

11/11 – London, UK @ The Underworld (Pitchfork Music Festival) ^

11/12 – Bournemouth, UK @ The Bear Cave

11/13 – Lille, France @ L’Aeronef (Club Room)

11/14 – Paris, France @ Petit Bain

11/15 – Reims, France @ La Cartonnerie

11/17 – Benidorm, Spain @ Primavera Weekender

11/18 – Malaga, Spain @ Paris 15

11/19 – Barcelona, Spain @ La Nau

11/20 – Toulouse, France @ Connexion Live

11/21 – Milan, Italy @ Legend

11/22 – Wiesbaden, Germany @ Kesselhaus

11/23 – Cologne, Germany @ MTC

 Paint It Black 『Famine』

 

 

Label: Revelation

Release: 2023/11/3


Review


フィラデルフィアのハードコア・アウトフィット、Paint It Blackは、Kid Dynamite/Lifetimeのメンバーとして知られるDanが所属しているという。意外にも長いキャリアを持つバンドらしいが、今作では、USハードコアの王道を行くパンク性により、パンクキッズをノックアウトする。

 

Kid Dynamite,Lifetime、Dag Nasty周辺を彷彿とさせる硬派なボーカルスタイルやハードコアの方向性には、Discordを中心とするDCのハードコアやストレイト・エッジのオールドスクール性が漂うが、一方、グルーブ感を生かしたニュースクールのリズムと鋭いエッジを擁するギターやドラム、無骨なボーカルスタイルが特徴である。さらに、Paint It Blackの音楽性にはニューメタルやメタルコア等の影響も滲んでいる。アルバムの蓋を開けば、怒涛のノイジーさとアジテーションの応酬に塗れること必至だが、他方、Converge以後のニュースクール・ハードコアのスタイルの中には、奇妙な説得力や深みがノイジーさの向こう側に浮かび上がってくる瞬間がある。つまり、プレスリリースで説明されているとおり、「ハードコア・パンクの最も強力なリリースは、弱さ、正直さ、信憑性の空間から生まれるものであることを証明するもの」なのである。

 

そのことはオープニング「Famine」において示されている。フックやエッジの聴いたギターラインと屈強なリズムとバンドのフロントマンの咆哮にも近いスクリーモの影響を絡めた痛撃なハードコアサウンドは、バンドがこれまでどのような考えを持ち、活動を行ってきたのかを示している。ノイジーなサウンドの中核を担うのは、オールドスクールのDCハードコア、そしてFiddleheadに近いモダニズムである。他方、ヨーロッパのニュースクール・ハードコア/ポスト・ハードコアの独特な哀愁も漂う。それは、イタリア/フォルリの伝説、La Quiete、フランスのDaitro、スウェーデンのSuis La Luneのポストハードコアバンドと比べても何ら遜色がないことがわかる。

 

さらに、彼らはパンクバンドとしてのNOFXのようにメッセージ性もさりげなく取り入れている。前回の米大統領選に公平性に関する疑惑を歌った「Dominion」では、大型の戦車が走り回り、すべての草木をなぎ倒していくかのような怒涛の疾走感とパワフルさをサウンドに搭載し、理想的なハードコアパンクとは何かをみずからのアティテュードで示す。ミリタリーの性質があるのは瞭然で、このあたりは80年代のボストン・ハードコアや、以後のニューヨークのAgnostic Frontを思わせるものがある。

 

特に、エッジの効いたベースラインについては、バンドの最大の長所と言える。「Safe」ではオーバードライブを搭載した屈強なベースラインでパンクキッズを完全にノックアウトしにかかる。メタルコアやラップにも近いボーカルラインが加わることで、エクストリームなサウンドが生み出される。さらに、そのモダンなハードコアサウンドの中に、Dropkick Murphysのような古典的なパンクのギターソロを中盤で披露することにより、曲そのものに変化を与えている。ライブを意識した痛撃なサウンドはもちろん、パンクファンの心を鼓舞するためのものであるが、一方、その中にもDag Nasty/Lifetimeのようにじっくりと聴かせるなにかが備わっていることがよくわかる。

 

もちろん、疾走感や無骨さだけが、Paint It Blackの魅力なのではない。「Explotation In Period」では、イギリスのNew WaveやニューヨークのNo Waveを系譜にあるアヴァンギャルド音楽をポスト・ハードコアという形に落とし込んでいるのが美点である。これらの前衛性は、彼らがパンク・スピリットとは何かという原義的なものを探し続けた来た結果が示されていると言える。そして、実際、アルバムの全体的な音響性の中に面白い印象の変化をもたらしている。

 

ハードコアパンク・サウンドの中にある多彩さというのは、本作の最大の強みとなっている。 「Serf City, USA」では、Kid Dynamiteを思わせるメロディック・ハードコアのアプローチを選んでいる。ストップ・アンド・ゴーを多用したパンクサウンドはアンサンブルの深い理解に基づいており、Paint It Blackのバンドとしての経験豊富さやソングライティングにおける引き出しの多さを伺わせる。ダブル・ボーカルに関しても苛烈で痛撃な印象を及ぼし、もちろんハードコア・パンクファンの新たなアンセムと言って良く、拳を突き上げてシンガロングするよりほかない。

 

Paint It Blackは、このアルバムを通じて、パンクロックそのものの最大の魅力である簡潔性や衝動性に重点を置いている。それはその後も続いている。


「The Unreasonable Silence」では、レボリューション・サマーの時代のOne Last Wish、Fugaziの系譜にあるアヴァンギャルドなロックへの展開していく。さらに、Minor Threat、Teen Idlesを思わせる「Namesake」では、ストレイト・エッジを、近年のConvergeのように、ポストハードコアの側面から再解釈しようとしている。表向きにはきわめてノイジーなのに、内側に不思議にも奇妙な静寂が感じられるのは、La Quieteと同様である。クローズ曲「City Of Dead」では、王者の威風堂々たる雰囲気すら漂う。最後の曲では、暗示的に政治不安や暗黒時代の何かが歌われているのだろうか。そこまではわからないことだとしても、アルバムの全般を通じて、フィラデルフィアのPaint It Blackは現代のハードコアパンクの未来がどうあるべきなのか、その模範を断片的に示そうとしている。

 

 

86/100

 


 


今月初め、Fucked Upはニュー・シングル 「Show Friends」を発表した。この曲は、彼らの最新フル・アルバム『One Day』のセッション中にレコーディングされた追加曲で構成された7″に収録されている3曲の新曲のうちの1曲である。その7″は現在出荷中で、本日バンドはその中からもう1曲、"Spot The Difference "をデジタル配信した。


「"Spot The Difference "は、漸進的な変化と妥協について歌っている。抑制の効かない適応の結果と、承認を求めることの自己暗示のカタログだ」



 

カナダのハードコアクルー、Fucked Upは1枚のアルバム以上の価値を生み出した記念碑的な 『One Day』(レビュー)のセッションから3曲を収録した7inchを今月31日にリリースする。


この3曲は、ザ・バッグスやウィアードスから影響を受けた "ショウ・フレンズ "から、FUの特徴であるギター・タペストリーとサイケデリック・グルーヴの "スポット・ザ・ディファレンス "と "ホワット・ザ・サン・ソウ "に至るまで、デリリアスかつスピーディーなパンクの間を駆け抜けている。FU RECORDSからリリースされる予定。


今回、リードシングル「Show Friends」が公開された。ダミアン・アブラハムは声明でこう語っている。


このビジネスは非常に条件付きの愛情に満ちたもので、愛に値するためにはあらゆる種類の評価基準やベンチマークが必要なんだ。この歌詞は、バンド活動で落ち込んでいた時期を振り返って、自分が精神的にこの職業に向いていないことを悟ったものなんだ。自分の人生の拠り所としてきたものが、自分を蝕み始めたらどうなるだろう?不安、疲労、側頭形成不全、過去の過ちや過ちの洪水など。歌詞はOne Dayのセッションで書いたのだが、頭の中で考えていたようにはまとまらなかった。ジョナと私は歌詞を見直し、しっくりくるまで地下室で書き直した。


リリックビデオは下記より。


 



ペンシルバニア/フィラデルフィアを拠点に活動する四人組のハードコア・クルー、Paint It Blackは、新作EP『Famine』(12 Inch)のリリースを発表した。この新作はRevelationより11月3日にドロップされる。

 

2002年の結成以来、Paint It Blackは新作を発表する毎にハードコア・パンクのルールを塗り替えて来た。 


『Famine』は、能う限り最もインパクトのあるステートメントを作ることを目標に掲げてきたフィラデルフィアのハードコアクルーにとり、何年にもわたる構想、計画、準備の産物である。
 
 
『Famine』を構成する全8曲を通し、Paint It Blackは最も強力なハードコア・パンクのリリースとは何であるかを示唆する。それはまた、ハードコアという表向きの印象とは相異なる脆弱さ、正直さから生まれる音楽であることを証立てている。

 

 

 Fiddlehead 『Death Is Nothing To Us』

 


 

Label:  Run For Cover

Release: 2023/8/18



Review


今週、新宿ACBでライブを行ったボストンの五人組のポスト・ハードコアバンド、Fiddleheadの最新作をご紹介します。


現在、アメリカのパンクシーンでは、依然としてエモーショナル・ハードコア・バンドが強烈な印象を放っている。一例では、Narrow Head、Militarie Gun,Home Is Where、Drug Church、Origami Angelを始め、数多くのバンドが各地で活躍している。もちろん、フィドルヘッドも、そのアメリカのパンクシーンの筆頭格に挙げられる。

 

プレスリリースによると、Discord  Recordsに端を発するレヴォリューション・サマーに触発されているとの話。実際聴いてみると、シンプルなベースライン、硬質なギターラインの掛け合いは、イアン・マッケイ擁する、FUGAZIの1990年代のポスト・ハードコアを彷彿とさせる。(ドロップ D?)チューニングのギターのヘヴィネスは、Jimmy Eat Worldの最初期、Fall Out Boy、Strike Anywhere周辺のエモーショナル・ハードコアバンドのアプローチに近い。



『Death Is Nothing To Us』はそのほとんどが2分弱、長くとも3分の曲で占められている。バンドの演奏力は傑出しており、メンバー間の連携の取れたアンサンブルが繰り広げられる。音楽性は、メインストリームでもなく、アンダーグランドでもなく、その中間にあるエモコアサウンドに属する。


オープニング「The Deathlife」は、爽やかで存在感のあるメロディック・パンクサウンドが全開である。一見、勢いのみで突っ走っているようにも聞こえるかもしれないが、念入りにスタジオで作り込まれたハードコア・サウンドは、少なくとも一度聴いて飽きるような代物ではないと思う。パンチ力、力強さ、フック、アンセミックな展開を一分弱の中に無理やり凝縮したようなサウンドが魅力的だ。ドラムのタム回しは、強いインパクトとドライブ感をもたらしている。


 

「Sleephead」は、カッティング・ギターの後、静と動を織り交ぜたエモーショナル・ハードコアが展開される。ヘヴィーなギターラインと対象的に、パット・フリンのボーカルがエモさを醸し出す。Perspective,a Lovely Hand To Holdの「Mosh Town USA」を思わせる内省的な面と激情的な面がせめぎ合っている。これらのエモコア・サウンドをアンサンブルとしてリードしているのがドラムで、タイトなスネアとタムの迫力あるヒットが激烈なインパクトをもたらしている。



「Loserman」はシンプルかつストレートなメロディック・パンクで、パット・フリンのシンガロングを重視したボーカルは淡いエモーションを漂わせる。Fall Out Boyを思わせるオーバーグラウンドのエモサウンドとしても楽しめる。後半ではフリンの咆哮が熱っぽい雰囲気を生み出している。

 

「True Hardcore (Ⅲ)」は、Helmet、Mission Of Burmaに象徴される実験的なポスト・ハードコアの性質が強い。イントロのギターのハーモニクス、オーバー・ドライブ/ファズを掛けたベースラインの後、パンチ力の強いメロディック・ハードコアが展開。パット・フリンのボーカルは、ライブのオーディエンスを熱狂させる感染力を持っている。安定感があり、他のパートを圧倒するパワフルなドラムは、曲にドライブ感を付与している。さらに、曲の後半では、やはりシャウトを交えつつ、エモーショナル・ハードコアのマニアックな領域を探ろうとしている。


 

続く「Welcome To The Situation」も同様に、上記のポスト・ハードコアバンドに触発されたと思われるアクの強いサウンドを展開させる。それとは対象的にフリンのボーカルは、エモーショナル性を漂わせている。ここでは、FUGAZIのイアン・マッケイのようなノイジーな面とは別の内省的な感情がボーカルに乗り移っている。これらの激情性と内省的なサウンドの対象性は、Jimmy Eat Worldが最初期において試していたこともあってか、ほんの少しだけ古びているような印象もなくはない。それでも、フィドルヘッドの音楽には、洗練された趣があり、一定の聴き応えがある。途中のボーカルのシャウトに関しては、Midwest Emoの原初的なサウンドを思い起こさせる。

 

 「Sullenboy」はポスト・ハードコアの最初期の時代に立ち返っている。前半部の曲に比べると単調にも思えるが、曲の終盤にて面目躍如となる。熱量を詰め込んだハードコアはスクリーモに近い性質へと変化し、一定の熱狂性をバンド・サウンドの中に留めることに成功している。アウトロのシャウトのコーラスに関しては、レヴォリューション・サマーの時代の狂乱を刻印している。

 

これらのパワフルなハードコア・サウンドの渦中にあって、静謐な印象を残す曲も収録されている。中盤のハイライトとなる「Give It Time(Ⅱ)」は、フィドルヘッドのポスト・ロックに近い一面が表れ出ている。たとえば、Mineral(Christie Front Drive)に象徴されるクリーントーンのギターのアルペジオを中心とした曲は、癒やしの瞬間ともなりえる。現行のポスト・エモの音楽性に属する、聴きやすさとマニアックさを兼ね備えた一曲として楽しむことができるはず。


 

その後、「Queen of Limerrick」ではシンプルなポスト・ハードコアに回帰している。アルバムの前半と同じく、FUGAZIとエモーショナル・ハードコアを直結させたアグレッシヴなサウンドが目眩く様に展開される。

 

「The Woes」もHot Water Musicをはじめとするメロディック・ハードコアの熱狂性が蘇る。サビに関しては、ライブでシンガロングやモッシュピットを誘発することは間違いない。もちろん卓越した演奏力があるからこそ、こういった安定感のある楽曲としてパッケージすることができるのだろう。



「Fiddlehead」は、テクニカルなベースラインを取り巻くようにして、Helmet、Mission Of Burmaを彷彿とさせるポスト・ハードコアが展開される。しかし、ここには、ノイジーなハードコアとは別の虚脱という側面が示され、バンドのソングライティングにおける引き出しの多さが伺える。その後、フィドルヘッドらしいアンセミックなハードコアへと変遷を辿る。終盤でのシンガロングは、彼らの最もメロディックかつエモーショナルな性質が現れ出た瞬間となる。



本作は全体的に抜群の安定感があり、メロディック・ハードコアの良盤として楽しめる。実際のライブでは、バンドの熱狂性がより身近に伝わることだろう。音源としての評価は抜きにしたとしても、ポストハードコア/メロディック・ハードコアに目がないリスナーは、必ずチェックしておくべし。

 


80/100 



ワシントンDCのレーベル、Discord  Records関連のガイドは、以前に特集としてご紹介しております。詳しくは、DISCHORD RECORDS TOP 10 ALBUM DISCHORD 名盤ガイドをご参照下さい。





もし、ACBのライブを見たよ!と言う方いらっしゃいましたら、下記コメント欄よりご意見やご感想をお寄せください。

©Alexis Gross
 

TurnstileとBADBADNOTGOODが、EP『New Heart Designs』のために手を組んだ。(ストリーミングはこちらから)

 

このEPには、ターンスタイルが2021年にリリースしたアルバム『GLOW ON』に収録されていた三曲「Mystery」、「Alien Love Call」、「Underwater Boi」が収録されています。アレックス・ヘネリーとブレンダン・イェーツが監督したミュージックビデオは以下からご覧下さい。


 


デトロイト、ハードコアバンド、the armedは、Julien Baker(ジュリアン・ベイカー: ソロ・フォークシンガー、ボーイ・ジーニアスとしても活動中)のヴォーカルとイギー・ポップのビデオをフィーチャーした「Everything Glitter」を発表した。本日リリースされたセカンド・シングルは、ゲスト・スターを起用せず、アームドのコア・ラインナップをフィーチャーしている。

 

ニューアルバム『Perfect Saviors』は8月25日に発売予定だ。先行シングルとして、「Sport of Formをリリースしている。


 

©Aaron Jones

デトロイトのハードコアバンド、The Armed(ザ・アームド)が次のアルバムのニュースを携えて戻ってきた。『Perfect Saviors』は8月25日にSargent Houseからリリースされる。

 

2021年の『ULTRAPOP』に続くこのアルバムは、ジュリアン・ベイカーのヴォーカルをフィーチャーしたシングル「Sport of Form」を筆頭に、イギー・ポップが神に扮したビデオが収録されている。ザ・アームドのトニー・ウォルスキーは、ベン・チショルムとトロイ・ヴァン・ルーウェンと共にこの新作をプロデュースし、アラン・モルダーがミキシングを担当した。

 

『Perfect Saviors』について、アームドは声明でこう語っている。


「あまりにも多くの情報が私たちを愚かにし、混乱させている。つながる方法が多すぎて、不注意にも孤立してしまった。期待されすぎて、誰もが有名人にならざるを得なくなった。予測可能な原始的な危険は、より新しい社会的な危険に道を譲った。その結果、混乱と恐怖に満ちた、しかし究極的には美しい世界が生まれた。私たちは、このレコードがまさにそのすべてでもあることを願っている。Perfect Saviors』は、21世紀最大の偉大なロック・アルバムを作ろうとする、まったく皮肉を感じさせない真摯な取り組みなのだ」

 

 「Sport of Form」

 

 

「Sport of Form」について、トニー・ウォルスキーは次のように語っている。


「スポーツには2つのタイプがある。バスケットボール、フットボール、サッカーのような計量のスポーツには、ポイント制があり、勝利への二元的な道筋がある。形のスポーツとは、ダイビングやフィギュアスケート、ボディビルのようなもので、進化する基準と主観性の層、そしてある種の重要な要素を持つものである」


「私たちを取り囲む世界は複雑で、私たちの生活はまさに、物差しよりも形のスポーツに近い。しかし、多くの人々はそれを正反対のものとして捉えている。この曲の歌詞は、実際にプレーしているわけでもないゲームに勝ちたいという人間の欲求について歌っている。音的には、美と醜さ、厳しさと優しさ、猥雑さと優美さの間の絶え間ないむち打ちによって、その認知的不協和音の反映となっている」



Armed 『Perfect Saviors』



Label: Sargent House

Release: 2023/8/25 


Tracklist:


1. Sport of Measure


2. FKA World


3. Clone


4. Modern Vanity


5. Everything’s Glitter


6. Burned Mind


7. Sport of Form

8.Patient Mind


9. Vatican Under Construction


10. Liar 2
11. In Heaven


12. Public Grieving

Fucked Up
 

先月、カナダ/トロントの伝説的なポスト・ハードコアバンド、Fucked Upは、一日で録音されたアルバム『One Day』(MT Review)に続く最初のシングル「Cops」を発表しました。このシングルでは、オタワのエレクトロデュオ、The Hulluci Nationとの理想的なコラボレーションが実現しました。

 

昨日、続いて、彼らは第二弾コラボレーション「John Wayne Was a Nazi」を発表しています。そもそもこのコラボレーションは、Fucked Upのボーカリスト、Damian Abraham(ダミアン・アブラハム)がEhren "Bear Witness" Thomasと以前から親交があり、そのうち何かしようと話し合っていた結果、実現したコラボレーションです。前回のシングルでは、エレクトロとパンクの劇的な融合を見ることが出来ましたが、2ndシングルについても同様のアプローチが取られています。


こちらも今週のHot  New  Singleとして読者の皆様にご紹介致します。

 


©Deanie Chen

 

ボストンのポストハードコアバンド、、2021年の『Between the Richness』に続く作品を発表しました。(フィドルヘッド)はニュー・アルバム『Death Is Nothing to Us』を発表しました。新作は8月18日にRun for Coverから発売されます。

 

この発表を記念し、ボストンのポストハードコア・グループはリードシングル「Sullenboy」を公開しました。アルバムのジャケット、トラックリストとともに、下記をチェックしてみて下さい。


ボーカルのPatrick Flynn(パトリック・フィン)は声明の中で次のように説明しています。

 

「私も含め、悲しみや鬱をロマンチックに捉えて欲しくはないな。でも私は、喪失が人生の中でこの悲しみの感覚を永続させる方法について書きたかった。アルバムでは、これまで取り上げられなかった悲しみの段階、憂鬱な態度が持つ粘着性の感覚を柔らかく表現しているんだ」

 

「もう少しアグレッシブなサウンドにしたいと思っていた」ギタリストのアレックス・ヘナリーは付け加えた。

 

「そういうものがバンドの根拠になっているんだ。多分、みんなはこのLPで僕らがよりクリーンになることを期待したと思うけど、僕はこれを最初の2つの本当のミックスだと思ってる」

 

「Sullenboy」



Fiddlehead 『Death Is Nothing to Us』


Label: Run For Cover

Release: 2023/8/18


Tracklist:

 
1. The Deathlife


2. Sleepyhead


3. Loserman


4. True Hardcore (II) [feat. Justice Tripp]


5. Welcome to the Situation


6. Sullenboy


7. Give It Time (II)


8. Queen of Limerick


9. The Woes


10. Fiddleheads


11. Fifteen to Infinity


12. Going to Die