弱冠22歳の気鋭のオーストラリア人SSW、ポップシーンで注目を浴びるgrentperez(グレンペレス)が新作アルバムの詳細を明らかにした。『Backflips In a Restautant』は、インパートメントから国内盤/輸入盤が3月28日に発売。Benny Singsベニー・シングス)をフィーチャーした「Fuzzy Things」を含む、3作の先行シングルのMVが公開されています。下記よりご覧下さい。


Spotify、Apple Musicで話題のシンガーソングライター、グレンペレスが遂にフルアルバムをリリース。60〜70年代のポップス、ディスコ/ソウルをZ世代の感性で表現した多幸感サウンド。


2021年のシングル”Cherry Wine”の大ヒット、2023年のEP『When We Were Younger』の高評価により、2024年のオーストラリアの音楽アワード”APRA”での受賞、先行シングルではベニー・シングスが参加した”Fuzzy Feeling”が注目され、NewJeansのハニによる”Clementine”のカバーが話題になるなど、瞬く間に人気者となった”グレンペレス”に注目したい。

 

幼い頃から影響を受けてきた60〜70年代のサウンドとフィリピンにルーツのある彼らしい独特の感性が融合したポップソングは、現代の幅広いリスナーの人気を獲得しそうだ。ノスタルジックな要素がありながらも、ヒップホップ/ソウルを取り入れた新しいサウンドへ進化している。4年の間で大きな成長を見せた彼がこのタイミングで発表するフルアルバムが遂に完成した。

 

 

「Fuzzy Things  (Feat. Benny Sings)」

 

 

 

「Dandelion」

 

 

 

「2DK」

 

 

 

 

grentperez 『Backflips in a Restaurant』- New Album


 

 
アーティスト : grentperez (グレンペレス)
タイトル : Backflips in a Restaurant (バックフリップス・イン・ア・レストラン)
レーベル : Inpartmiant inc.
発売日 : 2025年3月28日

<国内盤CD>
品番 : IPM-8147
価格 : 2,970円(税込)/2,700円(税抜)
バーコード : 4532813731476

<輸入盤LP>
品番 : FF0085VS
卸値 : 3,890円(税抜)
バーコード : 5056167180708

 

 

grentperez(グレンペレス): 

 

22歳のオーストラリア人シンガーソングライター。YouTubeでギターをかき鳴らしながらカバー曲やオリジナル曲を歌うことで最初のファンを獲得。正式な音楽教育を受けていないものの直感的な才能でボサノバのリズムやジャジーなコード進行やクラシックな作曲技法を習得し、現代のR&Bやベッドルームポップと融合させて独自のスタイルを築いている。

 

2021年にリリースしたデビューシングル”Cherry Wine”で国際的なセンセーションを巻き起こし母国オーストラリア、カナダ、シンガポールのSpotifyバイラルチャートで1位を獲得。その後アーティストとして大きく成長した後にストリーミングプラットフォームで4億5500万回以上再生を記録し多大陸にわたるツアーも経験。

 

Triple J、NPR Music、MTV、KCRW、DIY、Wonderland、The Line of Best Fit、A Book Ofなどの有力メディアからも支持されています。さらに、2023年のARIA賞で「ブレイクスルーアーティスト・オブ・ザ・イヤー」にノミネー トされ、2024年のAPRA賞では「エマージングソングライター・オブ・ザ・イヤー」を受賞。今まさに大き な飛躍を迎えようとしています。

ニューヨークのシンガーソングライター、Daneshevskaya(ダネシェフスカヤ)は昨年11月に「Scrooge」を発表し、2023年のデビュー作「Long Is The Tunnel」以来となる新曲を発表した。 今日、ベッカーマンは「Kermit & Gyro」と銘打たれたエレガントでエレガントな曲で戻ってきた。

 

穏やかなオーラとは裏腹に、"Kermit & Gyro "は「別れの絶望の中で書いた」とアンナ・ベッカーマンは言う。 

 

混乱と熱望から書いた。 その関係が自分に何をもたらしてくれたか、その関係がまだ自分の一部であり続けることができるかという考えにしがみつくということ。 でも同時に、完全に解き放たれ、漂流しているような気分にもなる。


「カーミット&ジャイロ』はいつものように音楽は見事なほど穏やかで美しく、ベッカーマンがすべてを把握しているかのよう。 プロデュース、アレンジ、ミキシング、ギター、ベースにArtur Szerejko、ヴァイオリンにFinnegan Shanahan、ピアノにMadeline Leshnerが参加している。

 


「Kermit & Gyro」

 


アメリカ系カナダ人のメタル・トリオ、SUMAC、フィラデルフィアを拠点に活動する詩人/作曲家のMoor Motherがコラボレーションアルバムの詳細を明らかにした。この作品は4月25日にThrill Jockeyからリリースされ、オープニングトラックであるインダストリアルで閉所恐怖症的な「Scene 1」が現在公開されている。

 

本作は、エンジニア/ミキサーのスコット・エヴァンスと共にスタジオ・リトグラフでレコーディングされた。SUMACは2024年に最新アルバム『The Healer』をリリース。ムーア・マザーの最新アルバム『The Great Bailout』も昨年リリースされた。

 

『The Film』は、SUMACのメタル、ジャズ、ノイズのテクスチャーの探求、そして、Moor Motherのヒップホップに実験性を加えるという両アーティストの作品の特徴を取り入れ、音楽的パターンの変化や表現力に共通点を見出したアルバムだ。このアルバムは、それぞれの分野における伝統的なアプローチを音楽的に否定するものであり、革新的で力強いアルバムである。


このフィルムなる名称は、本作がアルバム、一連なりの物語、物語として構想され、提供されているという事実を如実に物語ろうとしている。

 

Moor Motherはこの作品について次のように述べている。 

 

このアイデアは、既成概念にとらわれない瞬間を創り出すこと。これは芸術作品です。アルバムや曲のコレクションではなく、フィルムとして作品を考える。すべてを消費という箱に押し込めようとする業界では、この作業はほとんど不可能だ。

 

アートワークが完成するまでは、その全貌を理解することも得ることもできない。この仕事は発展途上であり、クリエイティブ・プロセスの中でより多くのエージェンシーを要求している。この作品には明確なテーマがある。 テーマは、土地、移住、気候、人権と自由、戦争と平和、逃げ出すという考えなど、普遍的なものです。

 

 

「Scene 1」



SUMAC/Moor Mother 『The Film』


Label: Thrill Jockey

Release: 2025年4月25日


Tracklist:

1.Scene 1

2.Scene 2: The Run

3.Hard Truth

4.Scene 3

5.Scene4

6Camera

7.The Truth Is Out There

8.Scene 5: Breathing Fire

スウェーデンのエレクトロニック・デュオ、Lust For Youthは、デンマークのCroatian Amorとのコラボレーションアルバム『All Worlds』を発表した。本作は、Sacred Bonesから3月7日に発売予定。

 

2023年6月、Lust For YouthとCroatian Amorは、Vivid Live Festivalの期間中、シドニーの象徴的なオペラハウス(シドニー)でステージを共にした。この出会いが彼らのクリエイティブなパートナーシップを再燃させ、コラボレーション・ニュー・アルバム『All Worlds』の礎を築いた。

人類の未知へのメッセージとして宇宙に送られたゴールデン・レコードからインスピレーションを得た『All Worlds』は、繋がりと理解への憧れを映し出している。各トラックは、感情、文化、記憶の断片をとらえ、人間の経験を万華鏡のように映し出す。



アルバムのタイトルは、バラバラの場所、感情、物語から断片を集めるというアイデアを反映している。どの曲もユニークな「世界」を披露し、探求と内省という包括的なテーマに貢献している。これらの 「世界 」は、私たちが抱えている内なる風景を表し、私たちのアイデンティティを形成している。タイトルはまた、あたかもこれらの世界が宇宙空間を漂い、発見され理解されるのを待っているかのような、つながりへのジェスチャーでもある。最終的に、『All Worlds』は帰属と意味の探求を体現している。

 


「Dummy Feat. Purient」



Lust For Youth・Croatian Amor 『All Worlds』

 

Label: Sacred Bones

Release:2025年3月7日

 

Tracklist: 

 

1. Friendzone
2. Passerine
3. Dummy
4. Akkadian
5. Lights In The Center
6. Kokiri
7. Nowhere
8. Fleece
9. Velella Velella Wind Sailors
10. Still Here


ナイン・インチ・ネイルズが3年ぶりにツアーを開催することを公表した。先週、NINのアリーナ・ツアーが計画されているという知らせがリークされた。その後、バンドは、ツアーが計画中であることを確認したものの、カリフォルニアの山火事のため発表を延期していた。「Peel It Black』ツアーでは、トレント・レズナーとアティカス・ロスは夏の間、ヨーロッパと北米のアリーナを回る予定である。現時点ではアジアツアーは日程には含まれていないが、続報に期待したい。


ナイン・インチ・ネイルズのライブを観たことがない人は、この機会を絶対に利用すべきだ。トレント・レズナーとアティカス・ロスは最近、映画音楽の仕事で多忙を極めている。稀にステージに戻ってくることがあるが、彼らは大掛かりなプロダクションを作り上げ、それを確実にものにする。


今度のツアーには、アメリカのフェスティバルへの参加は発表されていないが、ヨーロッパのフェスティバルへの参加も含まれている。日程は以下の通り。



◾️Nine Inch Nails Peel It Back Tour 2025


Tour Date:


6/15 – Dublin, Ireland @ 3Arena

6/17 – Manchester, UK @ Co-op Live

6/18 – London, UK @ The O2

6/20 – Cologne, Germany @ Lanxess Arena

6/21 – Dessel, Belgium @ Graspop Metal Meeting

6/24 – Milan, Italy @ Parco della Musica Novegro

6/26 – Zurich, Switzerland @ Hallenstadion

6/27 – Vienna, Austria @ Wiener Stadthalle

6/29 – Amsterdam, Netherlands @ Ziggo Dome

7/01 – Berlin, Germany @ Uber Arena

7/03 – Gdynia, Poland @ Open’er

7/07 – Paris, France @ Accor Arena

7/10 – Madrid, Spain @ Mad Cool

7/12 – Oeiras, Portugal @ NOS Alive

8/06 – Oakland, CA @ Oakland Arena

8/08 – Portland, OR @ Moda Center

8/10 – Vancouver, BC @ Rogers Arena

8/12 – Seattle, WA @ Climate Pledge Arena

8/14 – West Valley City, UT @ Maverik Center

8/15 – Denver, CO @ Ball Arena

8/17 – Saint Paul, MN @ Xcel Energy Center

8/19 – Chicago, IL @ United Center

8/22 – Detroit, MI @ Little Caesars Arena

8/23 – Toronto, ON @ Scotiabank Arena

8/26 – Baltimore, MD @ CFG Bank Arena

8/27 – Philadelphia, PA @ Wells Fargo Center

8/29 – Boston, MA @ TD Garden

8/31 – Cleveland, OH @ Rocket Mortgage FieldHouse

9/02 – Brooklyn, NY @ Barclays Center

9/05 – Raleigh, NC @ Lenovo Center

9/06 – Nashville, TN @ Bridgestone Arena

9/09 – Duluth, GA @ Gas South Arena

9/10 – Tampa, FL @ Amalie Arena

9/12 – Houston, TX @ Toyota Center

9/13 – Fort Worth, TX @ Dickies Arena

9/16 – Phoenix, AZ @ Footprint Center

9/18 – Los Angeles, CA @ Kia Forum


Franz Ferdinand 『The Human Fear』

Label: Domino

Release: 2025年1月10日


Review


スコットランドのフランツ・フェルディナンドは、2000年代からイギリスのロックシーンを牽引してきたリーダー的な存在であり、アークティック・モンキーズとデビューの時期が被っている。その両バンドが同レーベル、Dominoに所属しているというのは、なにかの奇縁としか言いようがない。フランツ・フェルディナンドは、ダンスロックという2000年代初頭のムーブメントを牽引したが、この最新アルバムでも、たとえ若干のメンバーチェンジがあったにせよ、彼らのアプローチには大きな変更はない。しかし、アレックス・カプラノスをはじめとするバンドメンバーの胸中には、アルバムのタイトルにあるように、恐怖という感情があったという。制作に関して、ビックネームのバンドにも、おそれという感情が湧き出るというのは驚きであるが、ある意味ではそれを乗り越えるためのアルバムではないかと思われる。

 

アルバムはドラムのカウント代わりに、アレックス・カプラノスの掛け声とともに始まり、ライブセッションのような感じで始まる。オープナーを飾る「Audacious」からフランツ節が炸裂し、軽快なディスコロック風のナンバーが繰り広げられる。まるで長年のモヤモヤした感覚を振り払うかのようなシンプルで親しみやすいロックソングによって新旧のロックファンの心を掴む。しかし、以前と大きく変わらないように見えるが、実際はサビにおいてスタジアムアンセムへと移行し、長らくライブ・バンドとしてのキャリアを歩んできたバンドとしての迫力を見せる。変拍子の展開を交えているが、シンプルでフックのある曲作りでシンガロングを誘発する。また、ロックソングの安心感やメロディアスという側面も今回のアルバムでは強調されている。「Everydaydremaer」ではやはりダンサンブルなロックソングの側面を押し出しているが、リバティーンズの最新作と同様に、バラード的な叙情性がボーカルから湧き上がり、それらがベースラインと絶妙に重なり合っている。また、バンドサウンドの側面でも工夫が凝らされ、メロトロン風のシンセとベースがボーカルの合間に入り、良い空気感を創り出している。

 

「The Doctor」は明らかに80年代のシンセ・ポップやポピュラー・ソングに根ざしていて、懐古的な雰囲気を漂わす。しかし、バンドサウンドとしては、モダンなロックサウンドを意識しており、タイトな楽曲に仕上がっている。特に続く「Hooked」はフランツ・フェルディナンドの復活を告げるハイライトである。サブベースの強いエレクトロサウンドをディスコのビートと組み合わせて軽快なロックソングに仕上げている。この曲には、アルバムのテーマである恐怖を打ち破るような力があり、聴いているだけで活力がみなぎってくるような効果がある。デビューアルバムの頃から培われたジプシー音楽のスケールを生かしたロックソングもある。「Built Up」において哀愁のある旋律性を活かし、アンセミックな楽曲性を強調する。同じく、「Night Or Day」ではハードロック風の楽曲のスタイルを選んでいるが、やはり南欧の哀愁のあるサウンドがシンプルな構成の中で個性的を雰囲気を醸成している。相変わらずカブラノスのボーカルはクールさとシニカルな印象を持つが、やはり彼らの音楽は不動のものという気がする。簡単に模倣出来るようでいて、そうではない唯一無二のサウンドが貫流している。

 

このアルバムは押しも押されぬフランツらしい作品として十分に楽しめるような内容となっている。しかし、新たに ポピュラー・ソングやワールド・ミュージックの要素が以前よりも色濃くなったという点を言及しておきたい、それは実際にアルバムを楽しむ上で、一度聴いただけでは掴み難い、渋さや奥深さという魅力にも成りえる可能性がある。例えば、前者は、「Tell Me What I Should Stay」では、Wham!を彷彿とさせる年代を問わず楽しめるポップソングとして、スコットランドのケルト民謡のリズムが登場する「Cats」では、電子音楽とは異なる民族音楽を要素がダンスミュージックの色合いを強調させ、心楽しいサウンドが立ち現れている。

 

また、アルバムの終盤でもワールド・ミュージックの要素が一つのキーポイントとなりそうだ。「Black Eyelashes」では奇妙なサーカスのようなサウンドが登場する。そしてそれらをフランツ・フェルディナンドはパブロックのような渋いロックサウンドと結びつける。ボーカルやバンドアンサンブルから立ち上る哀愁やペーソスのような感覚がこの曲を個性的にしている。最近、2000年代に登場したバンドは、ガレージロックを忘れつつあるが、フランツに関してはそうではなかった。「Bar Lonely」では、ガレージロックの風味をどこかに残しつつ、彼らの得意とするダンスロックのようなサウンドを織り交ぜ、それらを最終的ポピュラー的なフィルターに通している。ここにはやはり、ライブ・バンドとして名を馳せてきたバンドの真骨頂のようなものを見出すことも出来るかもしれない。意外とかっこいいと思ったのがクローズに収録されている「The Birds」である。70年代のThe Byrdsのサウンドを彷彿とさせるコアなハードロックソングは懐かしさとともに普遍性を感じとることが出来る。さまざまな角度から楽しめるロックアルバム。フランツは今なお良質なバンドであることを証明付けている。




76/100


 

 

Best Track 「The Hooked」

 

©Silken Weinber

 

Scowl(スカウル)はサンタ・クルスのパンク/ハードコアバンドで、2025年以降の活躍が非常に楽しみな五人組である。最初期は、デスメタル/グランドコアやニュースクールのハードコアを特徴としていたが、徐々にポップ・パンクに近いキャッチーなサウンドへ変化し始めている。

 

今回、Scowlはセカンドアルバム『Are We All Angels』を発表した。本作は、Dead Oceansからの4月4日に発売される。彼らの最新作『Psychic Dance Routine EP』を手掛けたウィル・イップ(Turnstile、Title Fight、Mannequin Pussyなど)がプロデュースした『Are We All Angels』は、毒舌で拮抗的なバンドが、自分たちのアグレッシヴさをより拡大させた作品だ。

 

アルバムのミックスはリッチ・コスティ(フィオナ・アップル、マイ・ケミカル・ロマンス、ヴァンパイア・ウィークエンドなど)が担当。 このアルバムは、疎外感、悲嘆、そしてコントロールの喪失が特徴的で、その多くは、過去数年間バンドを受け入れ、彼らを避雷針のような存在にしたコミュニティであるハードコア・シーンにおける彼らの新たな居場所と格闘している。


ニューシングル「Not Hell, Not Heaven」には、ショーン・スタウトが監督を務め、924ギルマン・ストリートで撮影されたビデオが収録されている。

 

ファースト・シングルの 「Not Hell, Not Heaven」は、外部の人間が彼らに投げかける物語を真っ向から否定している。「被害者意識を持ち、被害者でありながら、被害者であることを認めたくないということです」ヴォーカル/フロント・ウーマンのキャット・モスはこう説明する。「自分には自分の力があるという事実に優しさを見出そうとしている。私は自分の現実の中で生きている。自分の現実の中で生きているんだから、どんなことにも対処しなきゃいけない」」

 

 

 「Not Hell, Not Heaven」

 



Scowl 『Are We All Angels』

Label: Dead Oceans

Release: 2025年4月4日

 

Tracklist:


1. Special

2. B.A.B.E.

3. Fantasy

4. Not Hell, Not Heaven

5. Tonight (I’m Afraid)

6. Fleshed Out

7. Let You Down

8. Cellophane

9. Suffer the Fool (How High Are You?)

10. Haunted

11. Are We All Angels

 


ロンドンのロック/フォークバンド、Daughterが、ミドルファームスタジオで収録されたライヴパフォーマンスの音源を収録したデジタルEP『Middle Farm Session』をリリースした。EPの収録曲のミュージックビデオが公開されています。下記よりご覧ください。(各種ストリーミングはこちらから)

 

このオリジナルライヴセッションのミニアルバムは、ドーターのメンバー、エレナ・トンラ、イゴール・ヘフェリ、レミ・アギレラのトリオが、『Stereo Mind Game』の収録曲の多くが録音されたイギリスのダートムーア近郊の”ミドルファームスタジオ”に戻り、シングル曲「Be On Your Way」、「Party」、「To Rage」を含む曲を演奏、それを録音した作品となっている。

 

7年ぶりのスタジオ・アルバム『Stereo Mind Game』は、2023年4月に4ADからリリースされた。ラフ・トレード・ショップの「アルバム・オブ・ザ・マンス」に選ばれた。このアルバムの発売を記念したライブセッション「Daughter's only live show to support Stereo Mind Game」は、インディー小売店のイースト・ロンドンの旗艦店で行われた。

 

3枚目のアルバムには、ロンドンのストリングスを中心とするオーケストラグループ「12 Ensemble」が伴奏を務めたシングル「Swim Back」、「Party」、「Be On Your Way」、さらにカルテットの伴奏による温かみのあるサウンドが自慢の「To Rage」が併録されている。


 

Daughterは従来、ダークな感情を載せてインディーフォーク/ロックソングを歌ってきた。他方、『Stereo Mind Game』は楽観的なアルバムと称される。アイヴォア・ノヴェロ賞にノミネートされたサウンドトラック『Music From Before The Storm(ミュージック・フロム・ビフォア・ザ・ストーム)』(2017年)から数年間、ドーターは当初のロンドンの拠点から離れて、アギレラはオレゴン州ポートランドに、ヘフェリはイギリスのブリストルに拠点を移した。

 

しかし、パンデミックによって悪化した物理的な距離にもかかわらず、ドーターは再び出会い、執筆を続けた。『Stereo Mind Game』の12曲には繋がりと断絶が浸透しており、愛する人や自分自身から文字通り、そして比喩的にも”離れることが何を意味するのか”に取り組んでいる。ヘフェリとトンラのプロデュースによる最新作『Stereo Mind Game』は、デヴォン、ブリストル、ロンドン(イギリス)、サンディエゴ(カリフォルニア州)、ポートランド(オレゴン州)、バンクーバー(ワシントン州)など、複数の場所で作曲・レコーディングされた。


 

「Live at Middle Farm Studios」 

 

The Golden Dregs


ロンドンを拠点とする6人組、The Golden Dregs(ザ・ゴールデン・ドレッグス)が、4枚目のスタジオアルバム『Godspeed』とニューシングル「The Company Of Strangers」を発表した。本作は4月25日に発売される。ゴールデン・ドレッグスは渋さのあるポップソングを書くことで定評があり、4ADから発表された前作『On Grace & The Dignity』はその好例である。


"カンパニー・オブ・ストレンジャーズ "とは、人が人生の最良の年月、最良の健康、最良の思考、冬の間の日照時間のすべてを投資するビジネス帝国のことだ。会社は君のことなど気にかけていない。それこそがゴッドスピード・ザ・カンパニーの本意なんだ」とベン・ウッズは言う。


ゴールデン・ドレッグスは、もともとマルチ・インストゥルメンタリストのベン・ウッズによるソロ・プロジェクトとして始まっている。今後発売予定であるアルバム『Godspeed』では、各メンバーの個人的な貢献がレコードの重要な部分を占めるアンサンブルへと完全に進化した。このアルバムは、ベン・ウッズのインディペンデントレーベル、”ジョイ・オブ・ライフ・インターナショナル”からのリリースで、エンド・オブ・ザ・ロード・レコーズと共同で設立された。

 

 

「The Company Of Strangers」




The Golden Dregs 『Godspeed』

Label: Joy Of Life International

Release: 2025年4月25日


Tracklist: 

 

1.Big Ideas
2.Linoleum
3.The Company of Strangers
4.Imagining France
5.Weight of It All
6.Erasure
7.In The Headlights He
8.Heron
9.Perfume
10.If You'd Seen Him
11.The Wave
12.Godspeed



メリーランド州ボルチモア出身のJPEGMAFIAは、ニューシングル「Protest The Cross」をリリースした。


これは、『I LAY DOWN MY LIFE FOR YOU』のDIRECTORS CUTがどのようなサウンドになるかの最初の試みになるようだ。

 

ペギーは自身のインスタグラムで、"2025年に期待してほしい。何が起こるかわからないよ"とコメント。 「PROTECT THE CROSS」はハードなトラックで、彼の前作と似たようなサウンド。


過去のPeggyの曲と比べると、少しおとなしいと感じるかもしれない。 しかし、それでも素晴らしいサウンド。 リリックでは、アメリカの有権者へのジャブがあるだけでなく、ドレイクやフレディ・ギブスへのジャブもある。 エミネムや白人のアンダーグラウンド・ラッパーも登場する。なんとなく、アーティストの理想的なラップ像というものがこの新曲から浮かび上がってくる。


JPEGMAFIAは、昨年の『I LAY DOWN MY LIFE FOR YOU』で『Scaring The Hoes』のリリース後のモチベーションを持続させたが、今年も12曲の新曲を収録したアルバムのデラックス・エディションでキャンペーンを継続する予定。そのうちのいくつかは、オリジナル・トラックリストにアルバム・セッションの曲を挿入したものであり、いくつかは2枚目のディスクにコンパイルされた新曲。ペギーはツイートで、このプロジェクトは来週リリースされる予定と述べている。


「I LAY DOWN MY LIFE FOR YOU (DIRECTOR'S CUT)」のトラックリストは未公開であるが、リードシングル 「PROTECT THE CROSS」が公開された。ペギーは従来のように挑発的なフレーズを連発する。

 

「Fuck your writittеns, you bombin' like Charlie Hebdo」や 「White bitches ain't vote for Kamala, they lied/ So I'm lying when I'm trying to get that in that box」といったフレーズ。

 

 

「PROTECT THE CROSS」

 

 

この曲は、アメリカ国旗を大きくあしらったカバーアートと、ペギーとローガン・フィールズが監督したミュージックビデオとセットになっている。 元軍人で、アルバム『Veteran』でブレイクしたペギーは、この曲を "軍隊以来最もアメリカ的なもの "と呼ぶ。さらにペギーは、ツイートで、愛国的なイメージは、ドナルド・トランプを支持するものと解釈されるべきではないと述べた。「敏感な人たちがたわごとを言い始める前に、私はトランプを支持していないし、これまでも、そしてこれからも支持するつもりはない。 彼らはただ怒って、でっち上げを始めるだけなのだから(笑)" 彼はまた、"PROTECT THE CROSS "の歌詞の解釈ガイドも投稿している。 自分に対する誤解のほとんどは、何よりも"育った環境の違い "に基づいているかも知れない。




さらに、JPEGMAFIAはピッチフォーク系のメディアに対してソーシャルでこう発言している。「誰かピッチフォーク、GQ、アンナ・ウィンター、コンデ・ナスト・メディアに私の報道をやめるように言ってくれませんか? 私はあなたのプロモーションを望んでいませんし、必要としません。私のことを話すのをやめ、サイトから私のアートをすべて削除してほしい。2025年には絶対に誰もピッチフォークを必要としません。あなたの厄介なヒップスターの口から私の名前を出してください」


過去、ペギーはピッチフォークのシカゴフェスティバルで2回演奏しています。2019年、そして最近では2023年に出演している。


彼のアルバムは全般的にピッチフォークから肯定的な評価を受けているものの、2024年のアルバム「I LAY DOWN MY LIFE FOR YOU」で6.9点を獲得している。



  Lambrini Girls 『Who Let The Dogs Out』

 

Label: City Slang

Release: 2025年1月10日


Listen/Download


Review


ブライトンのノイズパンクデュオ、ランブリーニ・ガールズのデビュー・アルバム『Whor Let The Dog Out』は年明け早々、痛撃だったと言える。デビュー・アルバムらしからぬ完成度、あるいはデビューアルバムらしい初期衝動を収めこんだ正真正銘のハードコア・パンクアルバムとなっている。ランブリーニ・ガールズこと、フィービー(ボーカル)、リリー(ベース)は、Banksyという謎めいたドラマーとレコーディングに挑んでいる。ランブリーニ・ガールズはライオット・ガールパンクの先駆者的な存在、Bikini Kllを聴いて大きな触発を受けたという。そして、彼女たちもまた次世代のライオット・ガールのアティテュードを受け継いでいるのは間違いない。

 

プレスリリースでは、すでに家父長制度や女性に対する性的搾取など、現代の社会が抱える病理のようなものに対し唾を吐きかける。吐きかけるというのは、実際的に、ランブリーニ・ガールズのボーカル(実際にはスポークンワードとスクリームによる咆哮)にはっきりと乗り移り、すさまじい嵐のようなハードコアサウンドが疾駆する。実際的には、ランブリーニガールズのパンクは、現在のポスト・パンクの影響がないとも言いがたいが、Gorlilla Biscuits、Agnostic Frontといったニューヨークのストレート・エッジがベースにありそうだ。ゴリゴリというべきか、無骨なパンクサウンドは、ベースとギターの唸るようなハイボルテージにより、地獄の底から業火が吹き上がるようなサウンドがオープナー「Bad Apples」から炸裂する。ランブリーニ・ガールズは実際的なサウンドにとどまらず、ウィットに富んだ表現を兼ね備えている。さらにタブーをタブとも思わない。続く「Company’s Culture」において悪しき企業文化(どのような国家にも存在する)をチクリとやり、オフィスで性的な視線を向ける男性社員をシニカルに描写し、アメリカンコミック的な雰囲気でやり込める。実際的に、バンドの二人はステージでセクハラを受けたこともあるというが、これらもまた人生から引き出された個性的なサウンドである。そしてヴォーカルのフレーズごとに抑揚を変化させ、怒りを巧みに表現する。



ランブリーニ・ガールズは、ウィットとユーモアも忘れていない。「Big Dick Energy」は、下卑た笑いを湧き起こすが、実際的に風刺的なシニカルさは乾いたような笑いを巻き起こす。しかしながら、両者は、パンクという枠組みの中で、空想や絵空事を描こうというのではない。実際的な恐怖や腐敗、退廃等を相手取り、それらに痛快な一撃をお見舞いする。それらはオールドスクール・ハードコアの領域に属した荒削りなパンクソングーーBad Brains、Gorlilla Biscuitsーーといった原初的なハードコアパンクのイディオムの中で繰り広げられる。そのサウンドは、Black Flagのようなカルフォルニアパンクの元祖から、ストレイトエッジの原点に迫る場合もあり、このジャンルの祖であるTeen Idlesのような衝動に任せたパンクソングが組み上がる。Bad Religionのように政治的でないがゆえ、むしろ直情的なパンクとも言える。しかし、曲の途中では、スポークンワードというよりも、ステートメントのように変わるのも面白い。フィービーはヴォーカルの性格を曲の途上でたえず変化させ、別人のように変わることもある。

 

 

パンクソングという側面から見ると、Bikini Killの系譜にある「No Homo」もかなり楽しめるはずだ。カルフォルニアパンクの文脈を受け継いだ上で、同じ海岸沿いという都市の性質を活かし、それを見事にブライトン一色に染め上げる。この曲では、彼女たちはパンクというよりも、それ以前のロックンロール性に照準を絞り、タイトなロックソングに昇華している。ギターのプレイに関しては、グレッグ・ギンの系譜にあり、スリーコード中心であるが、ザラザラとした音作り、分厚い音像を徹底的に突き出し、ライブサウンドに相応しいサウンドを創り出す。ライブアクトとして国内で旋風を巻き起こしているランブリーニガールズの象徴的なトラックと言える。中盤でも、モチベーションを保持しながら、バランスの取れたサウンドで勢いを維持している。特に、「You're Not From Around Here」はロックソングとして聴いてもかっこいいし、ライブでも映えるようなナンバーであると思う。ローファイの側面を強調した分厚いギターで始まり、ハイハットの裏拍の強調により、この曲は見事なほどまでにドライブ感を増す。さらに、それらのサウンドにフィービーのボーカルは引けを取らない迫力で聴覚を捉える。

 

全般的にはオールドスクールハードコアをベースにしたサウンドであるが、「Filthy Rich Nepo Boy」は、どちらかといえば、メタルをクロスオーバーさせたニュースクールハードコアに属する。基本的には、オールドスクールとニュースクールの相違点は、縦ノリか横ノリかという違い、もしくは観客のダンスという点でモッシュ的な動きか、腕を振り回しながら踊るという違いでしかないが、ここではカオティックハードコアの系譜を踏まえ、これらの二つの乗りを同期させ、曲の構成ごとに異なるビート感覚を組み上げる。これらはむしろ、ストップ&ゴー(ブレイクを挟んで早いテンポに変わる)が満載だったストレイトエッジのサウンドの次世代の象徴とも成りうる。表面上はストレートで直情的なようでいて、入念にサウンドが作り込まれているのに驚き。さらに不協和音を生かしたギターはグレッグ・ギンに匹敵するかっこよさ。

 

ランブリーニ・ガールズにとって「ノイズ」というのは、この世に蔓延る仕来り、倫理観、常識といった道徳とは正反対にある概念に対する違和感である。それらが内側に蓄積され、そしてそれらが長いあいだ堆積を経たのち、怒りによってメラメラと燃えあがると、表面上にハードコア・パンクという形で現出することになる。ノイズ、軋轢、退廃、アナーキズムといったパンクの原初的なイデアを濾過し、現代的な感覚に置き替えたともいえるだろう。アルバムの終盤にも興味をひかれる曲が満載となっている。「Special Different」ではランブリーニ・ガールズが他の並み居るバンドとは一線を画すことを示し、最初期のデイヴ・ムスティンのようなスラッシーでメタリックなサウンドが炸裂。この瞬間、多くの現代のパンクバンドが見失いかけていた”重力”をランブリーニ・ガールズは手中に収めることになった。これらのヘヴィネスは、アルバムの終盤でも維持され、そしてやはり十分な勢いを保ったまま突き進んでいく。「Love」はニューメタルの代名詞的なトラックで、今後のランブリーニの布石となりそうだ。デュオは、ニューメタルの止まりかけた時計の針を一秒だけすすめ、去り際に痛烈なポストメタルソングをリスナーにお見舞いする。最後はエレクトロポップな感じでサラッと終わるのも◎。

 

 

 

85/100

 


Best Track 「You're Not From Around Here」

Interview:  Kenji Kihara  アンビエント制作について語る  地域コミュニティへの還元を重視する姿勢

Kenji Kihara アーティスト様からのご提供
 

Kenji Kihara(木原 健児)は、日本のエレクトロニックプロデューサー。現在、伊豆を拠点に活動しています。アンビエント、環境音楽、BGMの制作を得意とし、ソロ名義での電子音楽を中心に発表しています。『Hayama Ambient』、『Izu Ambient』、『Soothe & Sleep』を始めとする代表作を擁する。

 

また、ソロ活動の傍ら、宮内遊里との共同プロジェクト、”BGM LAB.”に取り組んでいます。このプロジェクトでは、よりBGMに重点を置いたサウンドを追求。その他、CM音楽や館内BGMなど、他の媒体に向けて音楽を制作している。

 

今回、アンビエント制作全般について、『Izu Ambient』を始めとするシリーズ、さらにフィールドレコーディングに関して、貴重なご意見を伺うことが出来ました。 制作者は地域のコミュニティへの還元を重視し、従来のミュージシャンとは異なる概念を活動を通じて提示する。ミュージシャンが社会的にどのような存在であるべきか、彼は模範的な姿勢を示そうとしています。


 

ーーまずはじめに、アンビエントというジャンルに興味を持ったきっかけについて、お聞かせください。



キハラ・ケンジ:  きっかけは定かではないのですが、しいて言うのであれば、「Mother2」の「eight melodies」という曲が私の中のアンビエント作品として今もベースになっている気がします。(正確にはアンビエントではないと思いますが......)あとは、Aphex Twinの『Ambient Works』にはとても影響を受けました。「アンビエント」という名前を意識したきっかけだったかもしれません。


ーー「Mother」シリーズ(編注1)は、高木正勝さんも影響を受けたそうなんですが、電子音楽を制作するためのヒントのようなものが何かあるのでしょうか。


キハラ・ケンジ:  今でも「Mother」の音楽は聴くのですが、なんでこんなにも魅力的なのかよく考えます。まだ、私の中では答えが出ていないですね。



ーー木原さんの作品の中には「Hayama Ambient」というシリーズがありますね。葉山は、三浦半島の風光明媚な美しい町ですが、この土地とのつながりについて教えていただければと思います。



キハラ・ケンジ:  結婚を機に葉山に住みはじめました。現在は伊豆に居を移しましたが、今でも時々訪れています。思い出も多くとても好きな町です。そこでフィールド・レコーディングをするのがライフワークのような形になりました。



ーー全般的な作風を見た上で、木原さんのアンビエントはヒーリング・ミュージックに近い音楽性を感じますが、こういった作風に至った経緯について教えていただけますか。



キハラ・ケンジ:  アンビエント以外のジャンル全てにおいてですが、「穏やかで、心地よく、風通しの良い音楽」をコンセプトに楽曲を制作しています。心地よくいられる音楽を作っていたら、ヒーリングミュージックに近づいていったかもしれません。


ーー「ハヤマ・アンビエント」と合わせて「Soothe & Sleep」というシリーズにも取り組まれています。この作品のコンセプトや指針はどういった点にありますか。


キハラ・ケンジ:  タイトルの通り、眠る時や心を落ち着かせる時のために使う音楽を目的に制作しています。例えば、Bandcampでは、30分ほどかけて、音をゆっくりと変化させる作りになっています。心の移り変わりを感じたり、ときには、睡眠導入の一助になればと思っています。



ーー楽曲の最初のインスピレーションはどこからやってきますか。制作がどのように始まり、完成に近づいていくのか、ぜひお聞きしたいです。



キハラ・ケンジ:  自然やその時の天気だったり、身の回りの環境からインスピレーションを得ます。その時々ですが、フィールドレコーディングの音や、そのときに爪弾いたキーボードだったりギターの音などを起点とすることが多いですね。


制作に向かう時の自分の中の状態や周りの環境にあわせて、たとえば、心をゆっくり落ち着けたい時は「SOOTHE & SLEEP」シリーズのような曲、晴れて気持ちの良い時、その逆に曇りが続いて憂鬱な気分を変えたい時は、異なるアプローチから始まります。そんな形でスケッチした曲が大量にあって、ふとした時に曲が完成します。


ーーフィールド・レコーディングを行うときの楽しみについてはどうですか?


キハラ・ケンジ:  音の風景を切り取っているという感覚でしょうか。その時々、その場所に実際にあったものや事柄に思いを馳せることができるといいますか………。人それぞれ、思い思いに聴くこともできますし、「記憶」に直結している感覚。そういうのがとても面白いですね。



ーー木原さんは、これまでに、ご自身のプロジェクトの作曲のほか、CM制作や館内BGMも手掛けていらっしゃいます。映像音楽や環境音楽を制作する上でどのような点を重視していますか?



キハラ・ケンジ:  なるべく、こういう風に聴いて欲しい。といったような自分の想いは入れないよう心掛けています。



ーーほかにも、宮内優里さんとのプロジェクト「Music Lab」の活動に取り組んでいらっしゃいます。このプロジェクトを始めた理由は何でしょう?



キハラ・ケンジ:  ”BGM LAB.”は、BGM(背景音楽)のための音楽研究室として2016年から活動しています。


日常のBGMが、いわゆる普段聴いているような「聴くため」の音楽ではなく、例えば、お香を焚き、その場の空間が少し変わるような、道具としての音楽をつくれたらということで始まりました。日常をより日常として充実させる手助けが出来る道具として、”BGM LAB.”はそんな音楽を目指しています。



ーー直近では「Izu Ambient(イズ・アンビエント)」もリリースされました。この曲には、波の音、鳥の声のフィールド・レコーディングが入っていて、かなり癒されました。この作品について、くわしく教えていただけますか。日本の名所シリーズは今後も続けていく感じでしょうか?



キハラ・ケンジ:  フィールド・レコーディングは、特別ではない日々の営みの音を切り取る、そんな感覚が好きで日々の記録としておこなっています。(ちょっとした趣味みたいなものです)
  

私は、海や山といった自然に近い場所に住んでいるのですが、その自然やそこで暮らす生き物などの営みに日々インスピレーションを受けて楽曲制作することが多いです。そこから受けたものを、どうにかしてその「場所」にお返しできないか、音楽を通じて何かできないか......。ということを考えていました。


いわゆる”地産地消”(編注2)といったようなものを、自分の作った音楽で表現できたらと......。そのため、シリーズの売上はすべて、伊豆でスモールビジネスを営むお店や場所などで使用しています。そして、その場所で「イズ・アンビエント」を制作することによって循環が生まれたら良いなと思っています。



今後も同じような感覚で、訪れた先でのフィールド・レコーディングを通した作品を制作する予定です。



編注1 :「Mother」: 1989年に任天堂から発売された日本のゲーム。コピーライターの糸井重里さんがゲームデザインを手がけた。オリジナル・バージョンの音楽を担当したのは、鈴木慶一さん。「Mother 2」は1994年に発売された。音楽は''たなかひろかず''さんが手掛けた。たなかさんは、その他にも、アーケード版「ドンキーコング」、「マリオブラザーズ」の音楽を手掛けている。


編注2:   地産地消:  地域生産・地域消費の略語で、地域で生産された様々な生産物や資源をその地域で消費すること。



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