TV on the Radioのリード・シンガー、Tunde Adebempe(ツンデ・アデビンペ)がソロ・デビューアルバムの詳細を明らかにした。

 

『Thee Black Boltz』は4月18日にSub Popよりリリースされる。 このアルバムには既発シングル「Magnetic」が収録されており、新曲「Drop」も本日リリースされる。 ジャケットアートワークとトラックリストは下にスクロールしてください。


アデビンペは、ウィルダー・ゾビーと共同でThee Black Boltzをプロデュースし、彼はエグゼクティヴ・プロデューサーも務めている。 

 

「漠然としたコンセプトのスケッチを持っているだけで、ジャリールやカイプが5つの素晴らしいアイディアを持っていることは分かっている。 しかし、『Thee Black Boltz』では、そのような足場がなかった。 それは恐ろしくもあり、爽快でもあった」


このアルバムの制作は「この大海原の真ん中に、自分自身のための岩や足場を作るための方法だった」と彼は付け加え、タイトルを説明した。 

 

深い悲しみや憂鬱、絶望の中で(時にはその結果として)閃くインスピレーションやモチベーション、希望の火花。 嵐の雲に蓄積された電子がぶつかり合って稲妻を放ち、一瞬でも出口を照らすようなものだ。 ...また、これはクールなメタルバンドの名前にふさわしく、ほとんどの人が私のことをとてもクールなメタルバンドのようだと言うだろう。 

 

 「Drop」

 

 

 

Tunde Adebempe(ツンデ・アデビンペ) 『Thee Black Boltz』

Label: Sub Pop

Release: 2025年4月18日

 

Tracklist:


1. Thee Black Boltz

2. Magnetic

3. Ate The Moon

4. Pinstack

5. Drop

6. ILY

7. The Most

8. God Knows

9. Blue

10. Somebody New

11. Streetlight Nuevo

 


ティモシー・シャラメはボブ・ディランの伝記映画「A Complete Unknown」に出演し、アカデミー賞(オスカー賞)にノミネートされるなど話題をさらっている。2024年4月にニューヨークでボブ・ディランの新作映画を撮影しているというがあったが、それがようやく日の目を見る形となった。しかし、ティモシー・シャラメが優れているのは''俳優としての演技力''だけではないようです。今回、彼のそのブルージーな歌声もかなり素晴らしいことが明らかとなった。


シャラメが米国のNBCテレビの長寿番組『サタデー・ナイト・ライブ』の司会と音楽ゲストの二役をこなすという情報が流れたさい、『A Complete Unknown』、そのサウンドトラック・アルバムに収録されているおなじみのボブ・ディランの名曲を何曲か披露することは明らかだった。 そして、テレビ出演は、新作映画をプロモートすると同時に、彼に主演男優賞のトロフィーを与えるかどうかの権限を持つアカデミー賞投票者にアピールするためのものだった。 


番組冒頭のモノローグで、ティモシー・シャラメは次のように言った。 「私が演じるボブ・ディランの曲を知らないかもしれない。でも、個人的に大好きな曲なんだ」

 

当初、今回の米国のテレビ出演では、「Blowin' in the Wind」や「Like a Rolling Stone」のような一般的な曲ではなく、「I Was Young When I Left Home」や 「Song to Woody」のような映画からの深いカットが聴ける可能性が高いものと思われたが、シャラメは、サプライズを計画していた。筋金入りのディラン・ファンしか知らないようなカットを3曲ほどステージで披露している。 RSによると、うちの2つは、ディランがライブで歌ったことがないほど無名な曲だという。 

 

ティモシー・シャラメがサタデーナイトライブで演奏した3曲のパフォーマンスは以下よりご覧ください。



SASAMIのニューアルバム『Blood On The Silver Screen』が3月7日にDominoからリリースされる。

 

アルバムからの最新シングル「「In Love With A Memory」はダンス・ポップ調の楽曲で、後半には歌手のトレードマークのギターも入る。ロスタムとの共同プロデュースで、Clairoのヴォーカルが収録されている。「In Love With A Memory」はササミの幼い頃の母親との思い出が曲として機能する。愛情というイメージがそのまま母親のメタファーとなっているようだ。

 

ロスタムと私は共に作曲を学んだので、彼は私のクラシカルな面をもっと引き出したかったのです。『In Love With A Memory』は、『Blood On the Silver Screen』に収録されることになった、私が書いた最初の曲なのです。


私は日本や韓国の 「ノラバン」と呼ばれる個室のカラオケルームに母と一緒に通って育ちました。母がよく歌うナンバーのほとんどは、古い日本や韓国の民謡で、ホラー映画やデヴィッド・リンチの映画の中にいるような気分にさせてくれました。

 

ジュリー・クルーズのようなセッティングで、シングルで、ジャズ・ラウンジのスポットライトを浴び、煙草の煙が澱んだように漂っている。ロスタムと私が一緒にオーケストレーションしたプロダクションによって完璧に反映されたと思う。クレアは私にとって長年の遠距離の友人で、夢のコラボレーターである。この曲は、幽霊との映画のようなデュエットをイメージしています。

 


「In Love With A Memory」



 


ロサンゼルスのバンド、Dutch Interior(ダッチ・インテリア)がニューアルバムを発表した。 ファット・ポッサムからの記念すべき1stアルバム『Moneyball』は3月21日にリリースされる。

 

 バンドのコナー・リーブスがプロデュースし、フィル・エク(モデスト・マウス、フリート・フォクシーズ)がミックスした。 太陽の光を浴びたリード・シングル「Fourth Street」には、自ら監督したビデオが収録されている。 以下からチェックしてほしい。


「Fourth Street'は、休暇を利用して両親を訪ねたときに思いついた曲だ」とシンガー兼ギタリストのノア・カーツは声明で説明している。 「この曲は、愛する人と遠く離れて暮らすことで生まれる感情や個人的な逸話をとりとめもなく回想するところから始まり、やがて自分自身の足元を見つけることを歌ったコーラスへと発展していく。 インストゥルメンタル・ソングとしては、シンプルな3コードのアメリカーナ・ロック・ソングを意識して書かれた。


「私たちは、消えてしまった、そして決して戻ってこない何かを求めて、絶望の中で自分自身を振り返っていることに気がついた」と、バンドはビデオについて付け加えた。「視聴者の目を通して、記憶の偏りの中で必死にしがみつきながら、子供時代の無邪気さが朽ちていくのを見るのは簡単だ」



Dutch Interior  『Moneyball』



Label: Fat Possum

Release: 2025年3月21日


Tracklist:


1. Moneyball

2. Canada

3. Sandcastle Molds

4. Wood Knot

5. Science Fiction

6. Sweet Time

7. Life (So Crazy)

8. Fourth Street

9. Horse

10. Christ on the Mast

11. Beekeeping

 

Pre-save: https://dutchinterior.ffm.to/fourthstreet.OYD

 


サウス・ロンドン出身で、アトランタを拠点に活動し、オルトソウル、ジャズ、その他のミッドナイトなサウンドに内省的なリリックのセンスを加えた才能の持ち主、プーマ・ブルーがニューシングル「tapestry」をリリース。

 

プーマ・ブルーは前作アルバム『Holy Waters』のリリース後、来日公演を行ったことは周知の通りです。ライブでは録音と同様に、バンドセットで出演している。ファンによると、ステージの評判も良く、アンサンブルの巧みさは目を瞠るものがあり、聴き応えがあったという。

 

2023年のアルバム『Holt Waters』以降も彼の旅は続き、暗鬱であるが没入感のある深いサウンドスケープは、トリッキーやポーティスヘッドを彷彿とさせる。ブティック・レーベル、ブルー・フラワーズからリリースされたニューシングル「tapestry」は、アコースティックギターを基にしたオルタナティヴフォークで、以前としてダークな曲調であるが、そこには癒やしがある。徹底して内側を凝視し、そこから組み上げられた感覚を巧みにアウトプットさせている。


ヴォーカルの内省的な感情に根ざした「tapestry」は、彼の作品の幅広い流れに寄り添いながらも、独立した特異な感触を持つ。プーマ・ブルーはこの曲について以下のように説明しています。


「私たちはモノを失います。 それは、私たちの現実の布を荒廃させることがある。 この曲は、私に多くのことを教えてくれた、もっと一緒にいたいと思っていた、失った人に向けて書いた。 私は、日記に書くように『タペストリー』を記録しただけだった。本来、それを誰かと共有するつもりはなてく、ただ個人的な表現に過ぎませんでした。 しかし、友人たちからのちょっとした後押しがあって、私は再びここにやってきて、私のささやきを風に捧げることにした」

 

プーマ・ブルーはこう付け加えた。 「ビデオはファウンド・フッテージ・テープのような感じにしたかったんだ。暗い森の中を彷徨い、見知った人物や幽霊、現実や想像の世界と交差する。 隠されたイースターエッグのような瞬間がある」

 

 

「tapestry」

 


 

ロンドンのシンガーソングライター、Dana Gavanski(ダナ・ガヴァンスキー)は、クレイロやケイト・ボリンジャーがバロックポップやチェンバーポップを米国の現代的なポピュラーソングに盛り込むより数年前に、このジャンルを自身の作曲の中に取り入れていた。セルビア系という個性的なルーツを持つ歌手であるが、それらのコスモポリタンの性質は2022年のアルバム『When It Comes」の収録曲「Bend Away And Fall」にはっきりとした形で表れ出ていた。

 

昨年、ダナ・ガヴァンスキーは2024年のアルバム『LATE SLAP』に続き、ピアノをミューズにした『Again Again EP』を3月14日にFull Time Hobbyからリリースする。バロックポップをベースにしたソングライティングのセンスは抜群で、従来はギターで曲を書いていたが、前作からはピアノを中心にソングライティングを行うようになった。


今年4月に3枚目のスタジオ・アルバム『LATE SLAP』を発表して以来、ガヴァンスキーは多忙を極めている。

 

イギリスでのヘッドラインツアー、(テキサスのフォークシンガー、ワクサハッチーとPlainsというユニット名で活動していた)ジェス・ウィリアムソンのサポートツアー、アドリア海での海水浴、銀細工の仕事をこなす傍ら、新曲にも取り組んでいる。「何かの終わりと、別のプロジェクトや探求の始まりの間には、絶妙なバランスがあることがある。人生に落ち着く時間を与えたい」


スタジオに戻ったガヴァンスキーはアップライトピアノで曲を書いた。この楽器への愛が再燃したことについて、ガヴァンスキーは語っている。「ピアノを弾いていると、大きな子供のような気分になるの。自分の手が上下に動くのが好き。コードを打つたびに、鷲が舞い上がるみたいにね」


EPのリードシングル「Business of the Attitude」では、彼女は子供っぽいというより大人っぽく、ボウイ風のコーラスやシンセを駆使したアート・ポップだった『LATE SLAP』とはサウンド的にかけ離れている。

 

物悲しい曲調ではあるが、ガヴァンスキーにとってこの曲は、「物事を解決しようとすること、あるいは物事を消し去ろうとすることのむなしさを歌っている部分もある」という内容だという。


セカンド・シングル「Living Home Again」は、変容と明るさを歌ったもので、「自分という人間と折り合いをつけることの冗談であり、生きていることの本質的な遊び心でもある」と彼女は語っている。物事を深刻に考えすぎず、人生の不確実性を受け入れることを歌っている。


新曲の制作中、ガヴァンスキーは自分の直感に従っていることに気づいた。「最初は意識的な決断ではなかった」と彼女は言う。

 

彼女はシド・ケンプ(ウルリカ・スペイセク、クラック・クラウド、HAHAサウンズ・コレクティブ)のスキルを借りて、より「完璧さにこだわることなく、その場にいるようなライブ感」を表現することに成功した。


「その頃、私はもっとピアノ・バラードの曲を聴いていて、声と1つの楽器だけというソングライティングの基本に立ち返っていたと思う」とソングライターは言う。イギリスというよりも、ヨーロピアンな雰囲気を持つシンガーソングライターの新作EP『Again Again』に注目したい。




 

 

Dana Gavanski 『Again Again』 EP



Label: Full Time Hobby

Release: 2025年3月24日


Tracklist:

1.Business of the Attitude 

2.Bolted Heart

3.Hang in for Us Both

4.Leaving Home Again 02:48

5.My Oh 

Mogwai 『The Bad Fire』 

 

Label: Rock Action

Release: 2025年1月24日

 

Review  モグワイの復活の狼煙

 

この数年間、スコットランドのモグワイは、2020年のEP『Take Side』を除いては、その仕事の多くがリミックスや映像作品のサウンドトラックに限定されていた。見方によっては、バンドではなくスタジオミュージシャンに近い形で活動を行っていた。(ライブパフォーマンスを除いては)『The Bad Fire』は、四人組にとって久しぶりの復帰作となる。以前はポストロックの代表的な存在として活躍したばかりではない。モグワイは音響派の称号を得て、オリジナリティの高いサウンドを構築してきた。

 

『The Bad Fire』は、”労働者階級の地獄”という意味であるらしい。これらは従来のモグワイの作品よりも社会的な意味があり、世相を反映した内容となっている。モグワイのサウンドは、シューゲイズのような轟音サウンド、そして反復構造を用いたミニマリズム、それから70年代のハードロックの血脈を受け継ぎ、それらを新しい世代のロックへと組み替えることにあった。ミニマリズムをベースにしたロックは、現代の多くのバンドの一つのテーマともいえるが、モグワイのサウンドは単なる反復ではなく、渦巻くようなグルーブ感と恍惚とした音の雰囲気にあり、アンビエントのように、その音像をどこまで拡張していけるのかという実験でもあった。それらは彼らの代表的な90年代のカタログで聴くことができる。そして、この最新作に関して言えば、モグワイのサウンドはレディオヘッドの2000年代始めの作品と同様に、イギリスの二つの時代の音楽を組み合わせ、新しいハイブリッドの音楽を生み出すことにあった。エレクトロニックとハードロック。これらは、彼らがイギリスのミュージック・シーンに台頭した90年代より以前のおよそ二十年の音楽シーンを俯瞰して解釈したものであったというわけなのだ。

 

 

おそらくモグワイは、何らかの作品をもう少し早くリリースすることも出来たかもしれないが、じっくりと時間をかけてバンドサウンドを熟成させ、一流プロデューサー、ジョン・コングルトンとともに制作に取り組んだ。このことは、アルバム全体のイメージ、そしてタイトルにも只ならぬ迫力をもたらし、様々な観点から音楽を聴くことを可能にしている。そして、モグワイの代名詞的な音響派/ポストロックのサウンドとともに、復活の狼煙を上げることになったのだ。彼らのサウンドは、決して時代に先行しているわけではない、いや、新しさや新奇性という側面では、同レーベルに所属する彼らの弟分であるbdrmm、もしくは、Squidの方がはるかに上手だろう。しかしながら、新しい作品をリリースせずにはいられないなにかがあったにちがいない。

 

モグワイの新作アルバムは奇妙な作品である。上記で述べたような、以前の世界、そして以後の世界を繋ぐようなロックミュージックが展開され、それは新しいとも古いともつかない奇異な印象を与える。また、彼らのロックソングは、90/00年代のエレクトロニックに寄りかかっているようでいて、2020年代の雰囲気を持ち合わせている。むしろ、『The Bad Fire』は、時間の感覚が薄れ、聞き手が所在する時代の感覚を希薄にするような魅力が随所に散りばめられている。モグワイの王道のマーチングのような勇壮なリズムが現代的なコングルトンのデジタルサウンドの中に見つかったかと思えば、それは必ずしも90年代のループサウンドやミニマリズムのように持続せず、夢想的、幻想的な雰囲気に留まることなく、痛烈なリアリズムが出現する。

 

例えば、オープニングトラック「God Gets You Back」では、従来のモグワイの幻想的なサウンドの向こうから、なにかリアリティのあるバンドセッションが浮かび上がってくる。二つの世界を組み込んだメタフィクションの音楽は、明らかに従来のモグワイのものではない。そして、モグワイはインストゥルメンタル中心の音楽性で知られているが、この曲は珍しくボーカル付きである。浮遊感のあるボーカルトラックはキュアーの最盛期、ブリットポップの最盛期の90年代前半に聞き手を誘う。しかし、一貫して恍惚としたサウンドは維持されている。お馴染みの巧緻なミニマリズムを基調にしたサウンドの向こうに浮遊感のある夢想的なボーカルが登場する。これらは、単なる轟音性や映像的な質感を持ち合わせていた、かつてのモグワイのサウンドとは明らかに一線を画していることに、勘の鋭いリスナーはお気づきになられるに違いない。


そういった中で、2曲目「Hi Chaos」は、対象的にポストロックや音響派の象徴的なサウンドとなっている。しかし、最初から音像を闇雲に拡大するのではなく、バンドセクションや録音スタジオの空気感やテンションを重視しているという点においては、従来のモグワイのサウンドとは異なる。しかし、イントロから中盤までは、対比的なロックソングーーディストーションとクリーントーンーーという彼らの独自のサウンドスタイルは維持されている。これがドラマや映画のサウンドトラックとは異なる''バンドの録音作品''という性質が色濃く立ち上ってくる。中盤以降は、そのなかで、70年代のUKハードロックサウンドをベースにした白熱したバンドセッションが展開される。アルバムの冒頭から、このアルバムが必ずしもプロデュース的な作品に属さず、バンドサウンドのリアリズムを濃縮させたものであるということがはっきりと伝わってくる。さらにループサウンドを用いながら、バンドの音楽の熱量を少しずつ引き上げていき、最終的には4分以降は、GY!BEを彷彿とさせる、うねるような轟音のロックミュージックが展開される。


「What Kind Of Mix This Is」は、ポストロックの原初的なサウンドに回帰している。例えば、オーストラリアのDirty Three、米国のRed Stars Theory、Mineralなどに代表されるエモ/スロウコアのニュアンスを含んだアルペジオがイントロに配され、叙情的なサウンドが広がりを増していく。その中で、レディオヘッドの系譜にあるエレクトロニックを吸収したロックは、モグワイの手にかかると、ゆったりとしていながらも勇壮なイメージを持つ楽曲へと変化していく。そして、やはり、彼らの特徴的なリズムがベースとなり、それらを反復的に続けながら、徐々にバンドサウンドとして白熱する瞬間を探求していこうとする。つまり、バンドセッションを辛抱強く続けながら、心地よい沸点を迎える瞬間を探しあてていくのである。しかし、すでにこのバンドのファンはご存知の通り、モグワイのサウンドの一番の迫力は、内的に静かに燃え上がるような激しさにある。これらは、以降、むしろ単なるポストロックやスロウコアというよりも、プログレッシヴロックに近い曲調へと変遷を辿る。YES、Pink FloydのようなUKミュージックの元祖に近くなる。


アルバムは、少しマニアックに傾きかけるが、どうやらモグワイの新作に見いだせるのは、ニッチさだけではない。彼らは『 The Bad Fire』においてロックソングの核心のようなものを提示することもある。例えば、続く「Fanzine Made of Flesh」ではシンプルな8ビートをもとにダフト・パンク的なロックを展開させる。ボーカルトラックにはボコーダー/オートチューンをかけ、近未来的なサウンドを突き出す。また、そこにはAIテクノロジー優勢の時代の感覚が反映されている。かと思えば、続く「Pale Vegan Hip Pain」においては、フロイドの『Dark Side Of The Moon』の作風を下地にしたペーソスのある静かで瞑想的なギターロックソングで聞き手を魅了する。しかし、その中で、オムニコードのようなチープでレトロなシンセが最初期のモグワイの感覚をありありと蘇らせる。さらに続く、「If You Find This World Bad,You Should See Some of The Others」は、静謐なロックソングから轟音へと移行していく。いかにもモグワイらしい一曲となっている。


モグワイとしての新機軸を示したのが、続く「18 Volcanoes」である。背景となるシューゲイズ的なフィードバックの轟音を活かしているが、ボーカルそのものはポピュラーに根ざしており、コントラストを活かしたロックソングを組み上げている。ここには、モグワイのMBV的な性質が出現する瞬間を捉えられる。終盤の三曲は、いずれも実験的なロックバンドとして、未知なるサウンドの追求を意味する。ただ、それはモグワイとしての唯一無二の境地に辿りついたかはまだわからない。「Hammer Room」では、The Smileを彷彿とさせるエレクトロニックたダンスミュージックを反映させたロックソング、「Lion Rumpus」では、ハードロックとエレクトロニックの融合、そして、クローズ「Fact Boy」では、クレスタを用いて、オーケストラ楽器がロックバンドのアンサンブルの中でどのように響くのかを探求している。アウトロでは、近年のドラマなどの映像作品へのサウンドトラックの提供という貴重な経験を活かし、映像的なエンディングを構築する。この点においては、Explosions In The Skyとの共通点も発見できるかもしれない。

 

 

 

 


78/100



 

 

「What Kind Of Mix This Is」


イギリス/アイルランドのシンガー、アンナ・B・サヴェージの3枚目のアルバム『You & i are Earth』の核心は、根源的な感覚にある。このアルバムは、癒しについて、さらに屈託のない好奇心についての感覚でもあり、もっと簡単に言えば、「ある男性と、アイルランドへのラブレター 」でもある。


絶賛された『A COMMON TURN』、『in|FLUX』に続く『You & i are Earth』は、開放的でありながらフレンドシップを感じさせる。オープニング曲『Talk to Me』は、海の音と目を輝かせるストリングスが私たちをなだめ、優しさの研究であり、私たちの魂を本質的な場所へと導いてくれる。

 

私が緊張するのは、それがとても繊細で微妙なものだからで、注目の経済が私たちに、私たちを連れ去ってくれる大きな光り輝くものを渇望させているのです。


しかし、『You & i are Earth』は、サヴェージの初期の作品から大きく進歩した、変わらぬ穏やかな感覚を持ちながらも、従来とは違った場所に導いてくれる。

 

最初のレコードを書いていたときは、難しいと感じていた。2枚目のアルバムでは、セラピーを受けて自分自身と向き合っていたんだけど、昔の自分がまだ私を少し引き戻していた。


ある場所に異様なほどに心を惹かれたり、もしくは親しみを見出すことはないだろうか。サヴェージは、地理的にも感情的にも、今自分が置かれている場所や環境に起因するものだと語る。そして、このレコードは文字通り、ある特定の場所に根ざしている。ほかでもないアイルランドのことだ。

 

サヴェージとアイルランドとのつながりは、マンチェスターの大学で詩の修士課程を専攻した10年以上前にさかのぼる。ソングライターとしての素地あるいは内郭のようなものを築き上げた場所だという。

 

2020年に(ダブリンで)音楽の修士課程に進んでから、シアン・ノーの歌についてのエッセイを読んだり、カートゥーン・サルーンのものを見たり、アイルランドの神話について読んだりした。

 

それ以来、アンナは多くの時間をアイルランド西海岸で過ごしている、 ツアー(今年はザ・ステイヴスやセント・ヴィンセントのサポートで、以前にはファーザー・ジョン・ミスティやソン・ラックスらとツアーを行った。その合間には、故郷のドニゴール州に戻り、仕事のためにロンドンを訪れ、当地の文化的な事業に携わっている。


例年10月に開催されるロンドン映画祭でプレミア上映されたアレックス・ローサー監督の新作短編映画『Rhoda』の映画音楽を担当し、マイク・リンゼイのスーパーシェイプス(Tunng & LUMPのプロデューサー兼マルチ・インストゥルメンタリストが率いるコラボ・アルバム&スーパー・グループ)の一員としても活躍した。これらの活動が音楽的な奥行きや幅広さをもたらしたのは明らかである。


そういったミュージシャンとしての仕事の傍ら、アンナ・B・サヴェージはもうひとつの故郷とのつながりを見出そうとしていた。その土地にしかない感覚であり、自分にとって欠かさざる神秘性の源泉である。彼女の新しい故郷とデリケートでありながら花開いた関係は、「ドネガル」での海との約束の中に集約されている。そこでは、きらめくパーカッションの中で、彼女は海に「私のことをよろしくお願いします」と頼みこみ、そして「モ・チョル・スー」では、人、場所、希望にたいする子守唄のように変化してゆく。このレコードを形作っている間、彼女が読んでいた本のひとつに、Manchán Magan(マンチャン・マガン)の『32 words for Field』がある。

 

歴史と人間、自然と人間性など、さまざまな要素が交錯する慈愛に満ちた作品の根底には、清算の感覚がある。タイトル曲「You & i are Earth」は、ロンドンの下水道で発見された17世紀のお皿からインスピレーションを得ており、そこには統一された感情が刻まれている。しかし、この曲は壮大でありながら、控えめで優美、ストリングスの渦巻く嵐のようなサウンドに縁取られている。ギターとコーラスが夢のように融合したデリケートな「I Reach for You in My Sleep」、甘く切ない「The Rest of Our Lives」のように、このレコードは何かを隠そうとするのではなく、サヴェージの魅力的でエレガントな歌声にぴったりと寄り添うような繊細さを表現している。


そのプロセスは、アンナ・ミーケをフィーチャーした複雑な作品で、二重性と変容という主題を軸にした「Agnes」で見事に表現されている。この曲は、サヴェージが瞑想を通して経験した不穏な体験を反映したもので、最終的には没入感のある美しい感覚に終わる。


20世紀に入り、人類は宇宙を目指して来たが、同時に多くの人々はなにか重要なことを見落としてきた。自然との調和、もしくは自然を慈しむことなくして、その場所に溶け込むことなどできようはずもない。アンナ・サヴェージは、土地に戻る、もしくは土地に帰るというような現代人の多くが忘れかけた感覚を大切にしている。それはアートワークにも表され、自然と一体になるという重要な主題に見出すことができる。


アイルランド/スライゴ州の森林地で撮影された写真で、サヴェージが木々を見上げ、そのフラクタル(幾何学的な概念)が彼女の目に映し出されている。彼女が瞑想中に感じた何かを映し出し、私たちを一周させ、私たちは本質的に一体で、少なくともそうあろうと努力している、つまり、「あなたと私は地球」という感覚に立ち戻らせる。

 

 

Anna B Savage 『you & i are Earth』


 

米国の思想家であるヘンリー・D・ソローの名著の一つに『ウォールデン 森の生活』というのがあるのをご存知だろうか。都会的な生活や産業の発展により、極度にオートメーション化された現代人の生活を営む若者が森に入り、しばらく生活をし、重要な概念を見出すという内容である。森の小屋での暮らしは簡単ではないものの、機械文明の中では見出しづらい重要な人生のテーマを発見するというのが趣旨である。


この生活の中で、ソローは、時々、小屋に友人を招きつつ、原始的とも言える暮らしを送り、山や湖のような自然と一体化する暮らしを送り、この名著を世に輩出した。この書籍は現在でも、私自身の重要な生活の指針ともなっており、実際的に、デジタルや日々の喧騒に飲み込まれそうになった時、単なる思想以上の重要な意味を持ち始める。そして、ロンドンのシンガーソングライター、アンナ・B・サヴェージの新作もそれに近い趣旨を持つ。 このアルバムは簡潔な30分の作品であるが、現代的な生活のなかで人々が忘れかけた感覚を思い出させてくれる。

 

多くの場合は、人々は、世間的な価値観を重んじるが、 それはつまり空虚を獲得するための道が開けたということである。多くの人々は、虚しさという道標が視界の先に見えるやいなや、幸福と見間違えて歩みを進める。だが、それは蜃気楼にも似ていて、掴んだかと思えば、すぐ通り抜ける。煉獄への道はきわめて魅力的に映るが、本来の意味での幸福に繋がっているとはかぎらない。ソローが、湖にほど近いウォールデンで解き明かしたのは、簡潔に言えば、幸福は自分の内側にしか見つけることができず、それは、基本的には一般化できないということである。


理想的な音楽とは、言語化しきれない本質的な思いを暗示するものである。例えば、私たちの話す個別の言語は、それを表層化するための手助けやヒントの役割を果たす。言い換えれば、水面下にある感覚や言葉を、水面の上に汲み出すということである。しかし、驚くべきことに、日頃の暮らしでは、主たる役割を持つ言語が、音楽の場合は、副次的や役割を果たすのである。


そして、あるとき、優れた音楽家は、ある大切なことに気がつく。言語の不確実性、そして言葉というものがいかに頼りないものだったのか、と……。どのような方向から見ても、言葉は誤ちを引き起こす要因ともなり、それはまた、言語の限界性がどこかに存在するという意味である。なぜなら、言葉は、音楽以上に受け手側の感情により、その解釈が分たれるからだ。音楽は、言語、詩、絵画では表現しえない抽象的な領域、かつてアンドレ・ブルトンが提唱した「シュールレアリスム」のフィールドに属している。アンナ・B・サヴェージは、すべてではないかもしれないが、このアルバムの制作で音楽の本質の端緒を掴んだのではないかと思われる。

 

本作の地球のタイトルの接頭辞(頭文字)が大文字になっていることは、偶然ではない。強調のためである。そして、内在的には、人間は利己的な生き物であると言わざるをえないが、この地球が、そして、自然や生きものたちが、本来は人間と対等であるという重要な提言を行おうというのである。これは、近年、注目を浴びていたナチュラリストなどという浮ついた言葉で解釈するのは不当かも知れない。なぜなら、それは本質的な意味で、自然は特別な存在ではなく、わたしたちと共存しているのだから。このアルバムが示そうとするのは、最も生命的な根源の本質であり、それを詩や音楽の側面から解き明かそうということだ。このアルバムの核心は、基本的には、現代的な文明の中で忘れられがちな人間の本来のすがたを思い出すということにある。この考え方は、アンビエントや環境音楽に近いと思うが、サヴェージの場合、古典/現代的なフォークミュージックという形で、優雅に、そして、ゆるやかに繰り広げられる。アンナ・サヴェージの英語は、すごくわかりやすく、聞き取りやすい。それは、英語の響きを丁寧に発音し、真心を込めて歌おうという歌手の精神の発露でもある、おだやかでありながら優雅なひびきを持つフォーク・ミュージックと並置され、それが絶妙なバランスをたもっている。

 

アイルランドとの関わりは、もしかすると、現世的な意味だけではなく、それよりも遥かに深いルーツのような意味を持つのかもしれない。もっといえば、中世ヨーロッパ以前のアイルランド的な気風を反映しようというのかもしれない。さらに、現代的な価値観から離れ、本質的な生命の魅力を思い出すという副次的な主題については、アルバムの全体的なサウンドに貫流している。例えば、レコーディングのデジタル処理を除いては、ギター、ストリングス、木管楽器というように、実際の演奏の多くは、アコースティック楽器を中心に行われている。これは、アルバムの「自然との一体化」という主題と融和し、アートワークの期待を裏切ることがない。ボーカル、ギター、ストリングのカルテットのような編成で繰り広げられるフォークミュージックは、見方を変えれば、アイスランドの”amiina”のような室内楽グループのサウンドを彷彿とさせる。アンナ・B・サヴェージは、北欧的な感性に、詩学という彼女にしか持ちえない特性を添える。 そして言葉もまた、音楽の向こう側にぼんやりとゆらめき、心地よい響きを放つ。

 

 

アルバムの音楽は、サウンドスケープを巧みに用い、情景的な音楽で始まりを告げる。「Talk To Me」は、ヴァイオリン奏者であるPual Giger(ポール・ガイガー)のような現代音楽のストリングの特殊奏法から始まり、その向こうからフォークミュージックが始まる。アコースティックギターのサウンドホールの芳醇な響きを生かした的確なマスタリング、そして、それと並置されるサヴェージのボーカルが涼し気な音響を作り出し、アルバムの世界観が広がりを増していく。


時々、ハミングのような歌唱を交え、背後のアコースティックギター、ストリング、薄く重ねられるシンセのテクスチャーが折り重なり、重力のあるサウンドが構築される。注目すべきは、アコースティックギターを多重録音し、音の厚みや迫力を重視していることだろう。さらに大きめの音像を持つボーカルと溶け合うようなミキシングが施されている。しかし、全体的には音楽の重厚さが重視されながらも、各々の楽節に関しては、小さなものが丹念に組み上げられている。

 

例えば、ジャクソン・ブラウンの作品には、一曲の構成の中で、スタジオの録音/ライブの録音という、二つの観点から異なる雰囲気を持つレコードに仕上げるという手法が用いられたことがあった。このアルバムもまた、異なる場所で録音されたようで、作品全体に多彩性をもたらす。聞き手は、実際に、収録曲ごとに別の空間に導かれるような錯覚を覚えるかもしれないし、もしくは、曲ごとに別の新しい扉をひとつずつ開くようなワクワク感を覚えるかもしれない。

 

続く「2-Lighthouse」は、エイドリアン・レンカーが『Bright Future』で用いたような録音技法を駆使する。この曲の場合、ローファイな感覚やデモテープの質感が前に押し出され、まるで山小屋のアナログ機器でレコーディングしたかのような印象を覚える。


カモメが海辺を舞う情景、アイルランドの海辺の波がさざめく情景、心を和ませるサウンドスケープが、アンナ・サヴェージの得意とするフォークソングという形で繰り広げられる。ここには、ーー内側(音楽を奏でる制作者の心)、外側(アイルランドの自然)ーーという二つの情景が対比され、内在的なストーリーテリングのような趣旨を持つ。音楽がイメージを徐々に膨らませていく。


制作者の人生の一部を写真のスナップショットや映画のワンカットのように切り取り、表面的な情景を音楽で表現するという、アルバムの制作において重視される作業の他に、もう一つ、制作者自身のルーツを辿るという試みが含まれている。


例えば、アイルランド音楽(古楽)の中世的な源泉に迫るという側面では、同地の実験的なフォークグループ、Lankum(ランカム)が例に挙げられるが、それに類する試みと言えるかも知れない。ここでは、民族的な打楽器を用い、それをダンスミュージックのように散りばめ、フォークミュージックと同化させる。


「3-Donegel」は、シンガーの二つのボーカルを対比させ、ジャズの系譜にあるドラムを背景とし、中世ヨーロッパの舞踏的な音楽、エスニックに近い民謡的な音楽へと傾倒していく。しかし、そういったマニアックな音楽性は、ポピュラーな節回しや親しみやすいフレーズによって帳消しにされ、聴きやすい、ダンサンプルでグルーブ感のあるポピュラーソングに昇華されている。

 

さらに、続く「4-Big & Wild」は、アイルランドのフォークミュージックのイディオムを駆使して、アルバムの序盤の収録曲と同じように、同地の開けた感覚や自然との調和を表現している。他の曲に比べると、繊細な感覚が、アコースティックギターのフィンガーピッキングや、ボーカルの内省的な感覚と合致し、 優美なハーモニーを形成する。そして、楽曲の構成も巧緻で、長調と短調のフレーズを交差させながら、アイルランドの変わりやすい気候であるとか、日によってそのつど印象を変化させる海峡の情景を巧みに表現しようとしている。それは、さながら個人的な日記の代用でもある。明るい感覚を持っていたかと思えば、それとは対照的に、暗鬱とした感覚に変わる。同曲は、短いインタリュード(間奏曲)のようでありながら、アルバムの前半部と中盤部を結びつけ、次なる曲の流れを呼び込むような重要な役割をなしている。

 

「5-Mo Cheoul Thu」から後半部に入る。フォークギターの基本を習得する際にトロットという演奏法がベースになっている。これは、アレグロの速さのアルペジオをフィンガーピッキングのギターによって演奏するというものである。例えば、有名なところでは、Bob Dylan(ボブ・ディラン)の「Don't Think Twice, It's All Right(邦題: クヨクヨするな)」でも聴くことができる。こういった馬の駆け足のようなリズミカルなテンポを持つアコースティック・ギターの演奏では、アルペジオ(分散和音)が水の流れのようになめらかであることが重要視される。そしてもちろん、演奏時にも、次のコードやスケールへ動く際にもスムーズであるに越したことはない。


この点において、巧みなアコースティックギター演奏が披露され、聴き応えのあるフォークソングが組み上げられる。また、実際的な旋律の進行や和音のスケールもまた、聞き手の内的な感覚に訴えかけるように、センチメンタルな叙情性を創り出す。ボーカルに対するギターの分散和音が切ない響きを生み出し、そして、ボーカリストの繊細なニュアンスの変化がギルバート・オサリバンのような淡いペーソスを創り出すこともある。さらに、ボーカルの情感を上手く演出するのが、弦楽器と木管楽器(クラリネットかオーボエ)のレガート、トレモロで、この曲の上品さと切なさを巧みに引き出している。3分後半からは、曲の表情付けと伴奏の役割であった木管楽器が主旋律に変わり、感動的な瞬間を生み出す。この曲ではポリフォニックな構成とモノフォニックな構成が重なり合い、絶妙なフォークソングが生み出されることになった。


 

「Mo Cheoul Thu」

 

 

 

アイルランド民謡、及び、バクパイプのような楽器にまつわる民俗性は、間奏曲「6-Incertus」に明確に発見することができる。ここでは、ドローンという現代音楽の通奏低音の響きを活かし、次の曲の流れを呼び込む。アルバムという形態は、良い曲を集めただけでは不十分で、一連の流れや波のような構成を制作者の創意工夫を駆使して作り出す必要がある。この曲は、前のインタリュードと並び、他の曲を際立たせるための脇役のような役割を果たしている。鳥の声、自然の奥底に見いだせる雄大なアトモスフィアを、サウンドスケープで切り取り、アルバムの中に起伏をもたらしている。これが全体を聴き通したときのささやかな楽しみとなるはず。

 

 

以降、本作は、序盤から一貫して示唆されてきた簡潔性をもとに、冗長さを排した曲を終盤に並置している。しかし、その中で一貫して、アイルランド民謡などに象徴づけられる音楽の清々しい気風が反映されている。そして、制作者に人生の一部分や実際的な生活から汲み出される感覚を濾過し、それらを起伏のあるエンディングに向かって、一つの線をつなげようとしている。


「7- I Reach For You in Sleep」では、ケルト民謡、東欧のポルカなどでお馴染みの三拍子のリズムを活かし、自然味溢れるフォークミュージックに仕上げている。また、導入部のモチーフとサビのリズムの変化等、構成面のおける対比の工夫を駆使し、華やかさのあるポピュラーソングを創り出す。サビの箇所では、朗らかで、開けたような感覚と、カントリーソングの雰囲気が組み合わされて、重要なハイライトが形作られる。サビの最後に入るコーラスも美しい。また、全体的な曲の枠組みの中で、最後にサビに戻ってくる時、ボーカルがクレスタのような音色と重なり合う時、制作者が示そうとしたであろう生命の神秘的な瞬間のきらめきが登場する。そしてそれは、よりアグレッシヴな印象を持つポップソング「8-Agnes」でハイライトを迎える。

 

音楽自体は、表題曲において最も素晴らしい瞬間を迎える。アルバムの冒頭のモチーフが蘇り、ストリングのトレモロが再び登場するのは、文学における登場人物の再登場のような感じで面白さがある。また、背景となる自然の大いなる存在を背後に、サヴェージは心に響く歌をうたう。それは、アイルランドの自然のなかで歌をつむぐような爽快感がある。さらに、その後、連曲のような構成を作り、「The Rest Of Our Lives」に続き、あっけないほど、さっぱりとしたエンディングを迎える。アルバムの最後に収録されている曲には、本作の副次的な主題である、自然に帰る、あるいは、自然と一体化する、という感覚が音楽の基礎を通じて的確に体現されている。作品の中にある主題や伏線のようなものがしっかりと回収されているのも面白い。

 

アウトプットされるものは一瞬であるにしても、表層に出てくる音楽の背景には、制作者の蓄積と経験が浮かび上がる。それこそが本質とも言え、どうあろうと、隠すこともできなければ、ごまかしもきかない。このアルバムの最大の魅力がどのような点に求められるのかといえば、デジタルサウンドのマスタリングで本質を薄めず、それ以前の人の手の工程に制作の時間の大半を割いたことにある。だから、心地よくて、長く聴いていたいと思わせるものがあるのだ。


 

 

86/100

 

 

 『you & i are Earth』



 Anna B Savage(アンナ・B ・サヴェージ)のニューアルバム『you & i are Earth(あなたとわたしは地球)』はCity Slangより本日発売。ストリーミングはこちらから。

米国のシンガーソングライター、Hannah Cohen(ハンナ・コーエン)は、ニューアルバム『Earthstar Mountain』の制作を発表した。ベラ・ユニオンとコングラッツ・レコードと共同で3月28日に発売予定です。本作はニューヨークの保養地で山岳地帯のキャッツキルでレコーディングされました。

 

ハンナ・コーエンはサンフランシスコを拠点に活動し、シンガー/モデルとして知られ、ジャズに深い造詣を持っている。ノラ・ジョーンズ作品にも参加したトム・バートレットが「10年に一度の逸材」と称賛。60,70年代のUSポップスに根ざした普遍的なソングライティングが魅力である。

 

2019年の『Welcome Home』に続く作品は、コーエンのパートナーであるサム・エヴィアン(Sam Evian)がプロデュース、スフィアン・スティーヴンス、クレイロ、ショーン・マリンズ、オリヴァー・ヒル、リアム・カザールが参加。今回、リード・シングル「Earthstar」が先行公開された。


私にとって『Earthstar』は、繋がりの複雑さ、愛のリスクと脆弱性について歌っています。「この曲は、究極的には、私たちが誰かを完全に知ることは決してないという考えに取り組んでいる。


写真家のCJ・ハーヴェイと私は、4シーズンにわたってキャッツキル山脈へのラブレターを撮影することにした。キャッツキル山脈の森の奥深くにあるお気に入りの水泳場、小川、滝、シダの渓谷で、1年以上かけてじっくりと感動的なポートレートを撮影した。Earthstarのミュージックビデオは、すべて16ミリフィルムで撮影されました。

 

 

「Earthstar」

 

 


Hannah Cohen 『Earthstar Mountain』

Label: Bella Union 

Release: 2025年3月28日

 

Tracklist:

 

1. Dusty

2. Draggin’

3. Mountain

4. Earthstar

5. Rag

6. Una Spiaggia

7. Summer Sweat

8. Shoe

9. Baby You’re Lying

10. Dog Years


©Dana Trippe


Circuit De Yeux(サーキット・デ・ユー)は、ニューアルバム『Halo On The Inside』を発表した。2021年の『-io』に続く作品は、3月14日にマタドール・レコードからリリースされる。
 
 
シカゴを拠点に活動するヘイリー・フォアは、本日、タイトルトラック、堂々としたリードシングル「Megaloner」を公開した。エクスペリメンタル・ポップ、ハイパー・ポップの範疇にある楽曲であるが、ゴシック的、あるいはドゥーム的な雰囲気を持つ楽曲で、これまでのCDYの音楽的な方向性とは一線を画している。つまり、レーベルの説明するアーティストの変身を的確に体現していると言える。ポスト・ビョーク、ポスト・セント・ヴィンセント、ポスト・チェルシー・ウルフ、あるいは、それ以外の全く未知なる存在、サーキット・デ・ユー自身である。
 
 
「Megaloner」は、ある行為の後、その結果の内側に存在する空間のための賛歌であり、アーティストによると、「代価は支払われ、希望は私たちの通貨となる。私は、持久力、信仰、主体性、そして、自分自身の運命に向かう唯一無二の信じがたい道について歌っている」という。
 

『Halo on the Inside』は、プロデューサーのアンドリュー・ブロダーとミネアポリスで録音された。「この音楽を作るプロセスで、私は恐怖を感じる前の時代に自分自身を巻き戻すことができた。そして、恐怖がない中で、セックス、愛、メロディーの親密なビートを見つけたんだ」
 
 
 
 「Megaloner」
 


 


Circuit De Yeux 『Halo on the Inside』

 
Label: Matador
Release: 2025年3月14日

 
Tracklist:
 
1. Megaloner
2. Canopy of Eden
3. Skeleton Key
4. Anthem of Me
5. Cosmic Joke
6. Cathexis
7. Truth
8. Organ Bed
9. It Takes My Pain Away



3月14日にリリースされる『Halo On The Inside』は、変身の産物であると説明されている。たしかに、マナティのことについて書いていたポップシンガーの面影を見ることは不可能だ。狂想曲的で、快楽主義的で、ダンスフロアに隣接し、異教徒にやさしく、ホーンをあしらったサウンドと感情の壁という蝶と野獣のごとき作品。『ヘイロー・オン・ジ・インサイド』は、CdY(Circui De Yeux)が新しく生まれ変わり、組み替えられ、スリリングで異質なものとなっている。
 

 

シカゴを拠点に活動するミュージシャン、作曲家、マルチ・アーティストであるフォアの作品は、簡単にカテゴライズすることが不可能だ。絶賛されたアルバム、フリーフォームの即興演奏、絵画、オーディオビジュアル・インスタレーション、大規模なアンサンブルの作曲など、活動は多岐にわたる。無響室(エコーのない部屋)で演奏したり、50人の児童合唱団のために作曲したり、(スタント・コーディネーターの監視下で)屋上から飛び降りたりしたこともある。

 
『Halo』のプランを実現させるためには、フォアの典型的なやり方を何度も変える必要があった。彼女は夜に仕事をした。夜9時から朝5時まで地下のスタジオにこもり、心、声、手を解放していた。しかし、このような夜更かしを、重苦しく孤立したものと理解すべきではない。奔放な探求のための静かな空間だった。ペダルやシンセサイザーを自在に操り、「ソフトウェアの誤動作やフィードバックを通して遊びやメロディーを見つける」ことに要点があった。

 
このような”墓場シフト”の作曲セッションは、ミュージシャンにとって少なからず啓示となった。「私の心の奥深くにある、とても驚くべき小さな声を見つけた」とフォアは言う。彼女はそれをスタジオの孤独な静寂の中で発見した。外の街はフォアにとって十分に静寂に包まれ、自分の内的なリズムが互いに同期し、自分の内なるシンフォニーを聴くことを可能にした。彼女はさらに8ヵ月もの間、このコンセプトをもとに制作を続け、孤独と自分自身との関係を再活性化させながら『ヘイロー・オン・ジ・インサイド』を作り上げた。そして彼女は外に目を向けた。
 
 
ギリシャへの旅行がきっかけで、フォアは神話に登場する半ヤギ半人のフルート奏者、パンのキャラクターに興味を持った。彼の変身、メロディー、豊穣、そして最終的な終焉の物語は、アルバムの歓喜に満ちた、明るく燃える瞬間のムードボードとなった。それは「Anthem Of Me」で聴くことができる。SF的なパッド、ディストーション、キック・ドラムがピアノ・ドロップに溶け込みながら、フォアのサイレンのような声が催眠的に呼びかける。「これは私のアンセム。あなたを揺さぶる」
 
 
プロデューサーにアンドリュー・ブロダー(ボン・アイヴァー、ムーア・マザー、ラムチョップ)を迎え、ミネアポリスでレコードを完成させた。
 
 
アルバムの目玉である『Cathexis』では、2人のクリエイティブな相性が存分に発揮されている。ヘイリーの無限とも思える歌声が、ブロダーのカタルシス溢れるギター・コーダと絡み合い、おそらくこのアルバムで最も昇華された瞬間を提供している。


 『Halo』の中心となるのはフォアのボーカルだ。穏やかなメロディックなフック、動物的な鳴き声、元素的な慟哭など、4オクターブの幅を持つこの楽器は、パワフルで一見超自然的な楽器である。
 
この曲では、ジャンルやスタイルの間を大胆不敵に揺れ動くマキシマリズムのコンポジションで、フォアはその全音域を駆使している。「この音楽を作る過程で、私は恐怖を感じる前の時代に自分自身を巻き戻すことができた。「そして恐怖がない中で、セックス、愛、メロディーの親密なビートを見つけたのです」。

 
『Halo On The Inside』は、変身には衝撃が伴うが、平穏と美もあると教えてくれる。隠遁と転位の瞬間が、再生と不吉な美しさをもたらす。- Matador
 
 
 
Circuit De Yeuxは、スロウコアの伝説的な存在、Lowのメンバーとして知られるアラン・スパーホークとのツアーを今年開催予定。

 
 
Circuit De Yeux Tour Date:


1月24日(金) UT州ソルトレイクシティ、アーバン・ラウンジ
1月25日(土)コロラド州デンバー、ブルーバード・シアター
2月12日(月)オーストラリア、シドニー、TBA SOLO Show
2月13日(火)オーストラリア、シドニー、オックスフォード・アート・ファクトリー w/ アラン・スパーホークと
カム
2月14日(水)オーストラリア、ブリスベン、Crobar w/ Alan Sparhawk and Come
2月15日(木)オーストラリア、メルボルン、ノースコート・ソーシャル・クラブ w/ Alan Sparhawk and Come
1月22日(水)カリフォルニア州サンディエゴ、The Casbah
1月24日(金)カリフォルニア州ソルトレイクシティ、アーバン・ラウンジ
1月25日(土)コロラド州デンバー、ブルーバード・シアター
2月13日(木)オーストラリア、シドニー、オックスフォード・アート・ファクトリー #1
2月14日(金)オーストラリア、ブリスベン、Crobar w/ Alan Sparhawk and Come #
2月15日(土)メルボルン、ノースコート・ソーシャル・クラブ #
2月21日(金)チューリッヒ、ボーゲンF
2月22日(土)アンティゲル・フェスティバル、ジュネーブCH
2月24日(月)、アンペール、ミュンヘンDE
2月25日(火)、ベルリン、リド
2月27日(木)パリ、プチ・バン(フランス
2月28日(金)、アントワープ、トリックス・クラブ(BE
3月2日(日)オランダ、ナイメーヘンDoornroosje
3月3日(月)、アムステルダム、Paradiso - Tolhuistuin
3月5日(水)イギリス、ブライトン、チョーク
3月6日(木)イギリス、ブリストル、ランタン・ホール
3月7日(金)イギリス、マンチェスター、バンド・オン・ザ・ウォール
3月8日(土)イギリス、グラスゴー、ルーム2
3月26日(水)インディアナ州ブルーミントン、ザ・ビショップ
3月29日(土)ジョージア州アトランタ、ザ・アール
3月31日(月)ノースカロライナ州カーボロ、キャッツ・クレイドルBack Room
4月3日(木)マサチューセッツ州ボストン、シンクレア
4月4日(金)コネチカット州ハムデン、スペース・ボールルーム
4月7日(月)オンタリオ州トロント、ホースシュー・タバーン
4月8日(火)ミシガン州デトロイト、ラヴィング・タッチ

 # w/ アラン・スパーホーク、カム

 

©Scarlett Carlos Clarke


レベッカ・ルーシー・テイラーによる音楽プロジェクト、Self Esteem(セルフ・エスティーム)が復活した。このポップシンガーの待望のサード・アルバムは「A Complicated Woman」と題され、ポリドール・レコードから4月25日にリリースされることが発表された。


2021年にブレイクした「Prioritise Pleasure」の続編となるこの新作は、現代の女性らしさを多面的に探求した、高揚感溢れる作品となる。


RLTはクワイアの参加について、「人々のコミュニティ 」と表現し、「つながりを聴き、感じてほしい」と語っている。アルバムの高揚感あふれるリードシングル「Focus Is Power」のビデオではグループが地元のコミュニティホールで熱のこもったパフォーマンスを披露している。


パンデミック(世界的大流行)の最中に両親と暮らしていたレベッカが書いたフレーズを中心に構成されたこの新曲は、マントラのようなものであり、アルバム全体のミッション・ステートメントでもある。「あのね、私次第じゃなかったけど、今ならそうなれる/でも今、年を追うごとにはっきり見えてきた/私はここにいる価値がある」

 


「Focus Is Power」


 

 

Self Esteem 『 A Complicated Woman』

 


Label: Polydor

Release: 2025年4月25日


Tracklist:

1.⁠ ⁠I Do And I Don’t Care 

2.⁠ ⁠Focus Is Power

3.⁠ ⁠Mother 

4.⁠ ⁠The Curse

5.⁠ ⁠Logic, Bitch! (ft. Sue Tompkins)

6.⁠ ⁠Cheers To Me

7.⁠ ⁠If Not Now, It’s Soon

8.⁠ ⁠In Plain Sight (ft. Moonchild Sanelly)

9.⁠ ⁠Lies (ft. Nadine Shah)

10.⁠ ⁠69

11.⁠ ⁠What Now

12.⁠ ⁠The Deep Blue Okay


オスカー賞ノミネート(2025)は、1月23日(木)午前8時30分(現地時間)より発表された。2025年は非常に競争の激しい年であり、ノミネーション予想も例年以上に難しいものとなった。


ゴールデングローブ賞で最優秀作品賞を受賞し、複数部門での受賞が期待される『The Brutalist(原題)』や『Emilia Pérez(原題)』、また、『コンクラーベ』、『ウィキッド』、『アノーラ』も強力なキャンペーンを展開し、批評家から好評を得ている。


ニコール・キッドマン(『ベイビーガール』)やアンジェリーナ・ジョリー(『マリア』)といったA級女優が競い合う女優賞レースは数ヶ月注目の的だった。しかし、『I'm Still Here』のフェルナンダ・トーレスが、投票開始直後の勢い(そしてグローブ賞の受賞)で、このレースに食い込んだ。


主演男優賞では、エイドリアン・ブロディ(『ブルータリスト』)とティモシー・シャラメ(『A Complete Unknown』)が有力な前哨戦となっているが、それ以外のグループはまだ形成されていない。


今年のゴールデングローブ賞では『ブルータリスト』とエミリア・ペレスが大賞を受賞した。しかし、それは物事の大枠では全く意味をなさないかもしれない。特に『ウィキッド』は大ヒットを記録し、作品賞ノミネートも確実視されている。主演のシンシア・エリヴォやアリアナ・グランデはもちろん、ジョン・M・チュウ監督も評価されるのかに注目したいところ。デミ・ムーアは、『The Substance(原題)』で高く評価されたことにより、現在強力なキャリア復活を遂げているが、この映画が主演女優賞以外の部門で評価されるかどうかは誰にもわからない。


ロサンゼルスを襲った大火災のため、アカデミーは1月17日に予定していたノミネート発表を1月23日に延期。アカデミーは2月に予定されていた毎年恒例のノミニーズ・ランチョンもキャンセル。2025年のオスカー賞授賞式は、コナン・オブライエンの司会で3月2日に開催される予定。





BEST PICTURE


Anora

The Brutalist

A Complete Unknown

Conclave

Dune: Part Two

Emilia Pérez

I’m Still Here

Nickel Boys

The Substance

Wicked


BEST DIRECTOR


Sean Baker, Anora

Brady Corbet, The Brutalist

Coralie Fargeat, The Substance

Jacques Audiard, Emilia Perez 

James Mangold, A Complete Unknown


BEST ACTRESS


Cynthia Erivo, Wicked

Karla Sofía Gascón, Emilia Pérez

Mikey Madison, Anora

Demi Moore, The Substance

Fernanda Torres, I’m Still Here


BEST ACTOR


Adrien Brody, The Brutalist

Timothée Chalamet, A Complete Unknown

Colman Domingo, Sing Sing

Ralph Fiennes, Conclave

Sebastian Stan, The Apprentice


BEST SUPPORTING ACTOR


Yura Borisov, Anora

Kieran Culkin, A Real Pain

Edward Norton, A Complete Unknown

Guy Pearce, The Brutalist

Jeremy Strong, The Apprentice


BEST SUPPORTING ACTRESS


Monica Barbaro, A Complete Unknown

Ariana Grande, Wicked

Felicity Jones, The Brutalist

Isabella Rossellini, Conclave

Zoe Saldaña, Emilia Pérez


BEST ADAPTED SCREENPLAY


Jay Cocks and Jay Mangold, A Complete Unknown

Peter Straughan, Conclave

Jacques Audiard, Emilia Pérez

RaMell Ross and Joslyn Barnes, Nickel Boys

Clint Bentley and Greg Kwedar, Sing Sing


BEST ORIGINAL SCREENPLAY


Sean Baker, Anora

Brady Corbet and Mona Fastvold, The Brutalist

Jesse Eisenberg, A Real Pain

Moritz Binder, Tim Fehlbaum, and Alex David, September 5

Coralie Fargeat, The Substance


BEST COSTUME DESIGN


A Complete Unknown

Conclave

Dune: Part Two

Gladiator II

Nosferatu

Wicked


BEST HAIR AND MAKEUP


A Different Man

Emilia Pérez

Nosferatu

The Substance

Wicked


BEST ORIGINAL SCORE


Daniel Blumberg, The Brutalist

Volker Bertelmann, Conclave

John Powell and Stephen Schwartz, Wicked

Clément Ducol and Camille, Emilia Pérez

Kris Bowers, The Wild Robot


BEST LIVE ACTION SHORT


“A Lien”

“Anuja”

“I’m Not a Robot”

“The Last Ranger”

“The Man Who Could Not Remain Silent”


BEST ANIMATED SHORT


“Beautiful Men”

“In the Shadow of the Cypress”

“Magic Candies”

“Wander to Wonder”

“Yuck!”


BEST ORIGINAL SONG


“El Mal,” Emilia Pérez

“The Journey,” The Six Triple Eight

“Like a Bird,” Sing Sing

“Mi Camino,” Emilia Pérez

“Never Too Late,” Elton John: Never Too Late


BEST DOCUMENTARY FEATURE


Black Box Diaries

No Other Land

Porcelain Wars

Soundtrack to a Coup d’Etat

Sugarcane


BEST DOCUMENTARY SHORT


“Death by Numbers”

“I Am Ready, Warden”

“Incident”

“Instruments of a Beating Heart”

“The Only Girl in the Orchestra”


BEST INTERNATIONAL FEATURE


I’m Still Here, Brazil

The Girl with the Needle, Denmark

Emilia Pérez, France

The Seed of the Sacred Fig, Germany

Flow, Latvia


BEST ANIMATED FEATURE


Flow

Inside Out 2

Memoir of a Snail

Wallace & Gromit: Vengeance Most Fowl

The Wild Robot


BEST PRODUCTION DESIGN


The Brutalist

Conclave

Dune: Part Two

Nosferatu

Wicked


BEST EDITING


Sean Baker, Anora

Dávid Jancsó, The Brutalist

Nick Emerson, Conclave

Juliette Welfling, Emilia Pérez

Myron Kerstein, Wicked


BEST SOUND


A Complete Unknown

Dune: Part Two

Emilia Pérez

Wicked

The Wild Robot


BEST VISUAL EFFECTS


Alien: Romulus

Better Man

Dune: Part Two

Kingdom of the Planet of the Apes

Wicked


BEST CINEMATOGRAPHY


Lol Crawley, The Brutalist

Greig Fraser, Dune: Part Two

Paul Guilhaume, Emilia Pérez

Edward Lachman, Maria

Jarin Blaschke, Nosferatu