当初、今回の米国のテレビ出演では、「Blowin' in the Wind」や「Like a Rolling Stone」のような一般的な曲ではなく、「I Was Young When I Left Home」や 「Song to Woody」のような映画からの深いカットが聴ける可能性が高いものと思われたが、シャラメは、サプライズを計画していた。筋金入りのディラン・ファンしか知らないようなカットを3曲ほどステージで披露している。 RSによると、うちの2つは、ディランがライブで歌ったことがないほど無名な曲だという。
ティモシー・シャラメがサタデーナイトライブで演奏した3曲のパフォーマンスは以下よりご覧ください。
SASAMIのニューアルバム『Blood On The Silver Screen』が3月7日にDominoからリリースされる。
アルバムからの最新シングル「「In Love With A Memory」はダンス・ポップ調の楽曲で、後半には歌手のトレードマークのギターも入る。ロスタムとの共同プロデュースで、Clairoのヴォーカルが収録されている。「In Love With A Memory」はササミの幼い頃の母親との思い出が曲として機能する。愛情というイメージがそのまま母親のメタファーとなっているようだ。
ロスタムと私は共に作曲を学んだので、彼は私のクラシカルな面をもっと引き出したかったのです。『In Love With A Memory』は、『Blood On the Silver Screen』に収録されることになった、私が書いた最初の曲なのです。
ロンドンのシンガーソングライター、Dana Gavanski(ダナ・ガヴァンスキー)は、クレイロやケイト・ボリンジャーがバロックポップやチェンバーポップを米国の現代的なポピュラーソングに盛り込むより数年前に、このジャンルを自身の作曲の中に取り入れていた。セルビア系という個性的なルーツを持つ歌手であるが、それらのコスモポリタンの性質は2022年のアルバム『When It Comes」の収録曲「Bend Away And Fall」にはっきりとした形で表れ出ていた。
昨年、ダナ・ガヴァンスキーは2024年のアルバム『LATE SLAP』に続き、ピアノをミューズにした『Again Again EP』を3月14日にFull Time Hobbyからリリースする。バロックポップをベースにしたソングライティングのセンスは抜群で、従来はギターで曲を書いていたが、前作からはピアノを中心にソングライティングを行うようになった。
この数年間、スコットランドのモグワイは、2020年のEP『Take Side』を除いては、その仕事の多くがリミックスや映像作品のサウンドトラックに限定されていた。見方によっては、バンドではなくスタジオミュージシャンに近い形で活動を行っていた。(ライブパフォーマンスを除いては)『The Bad Fire』は、四人組にとって久しぶりの復帰作となる。以前はポストロックの代表的な存在として活躍したばかりではない。モグワイは音響派の称号を得て、オリジナリティの高いサウンドを構築してきた。
『The Bad Fire』は、”労働者階級の地獄”という意味であるらしい。これらは従来のモグワイの作品よりも社会的な意味があり、世相を反映した内容となっている。モグワイのサウンドは、シューゲイズのような轟音サウンド、そして反復構造を用いたミニマリズム、それから70年代のハードロックの血脈を受け継ぎ、それらを新しい世代のロックへと組み替えることにあった。ミニマリズムをベースにしたロックは、現代の多くのバンドの一つのテーマともいえるが、モグワイのサウンドは単なる反復ではなく、渦巻くようなグルーブ感と恍惚とした音の雰囲気にあり、アンビエントのように、その音像をどこまで拡張していけるのかという実験でもあった。それらは彼らの代表的な90年代のカタログで聴くことができる。そして、この最新作に関して言えば、モグワイのサウンドはレディオヘッドの2000年代始めの作品と同様に、イギリスの二つの時代の音楽を組み合わせ、新しいハイブリッドの音楽を生み出すことにあった。エレクトロニックとハードロック。これらは、彼らがイギリスのミュージック・シーンに台頭した90年代より以前のおよそ二十年の音楽シーンを俯瞰して解釈したものであったというわけなのだ。
モグワイの新作アルバムは奇妙な作品である。上記で述べたような、以前の世界、そして以後の世界を繋ぐようなロックミュージックが展開され、それは新しいとも古いともつかない奇異な印象を与える。また、彼らのロックソングは、90/00年代のエレクトロニックに寄りかかっているようでいて、2020年代の雰囲気を持ち合わせている。むしろ、『The Bad Fire』は、時間の感覚が薄れ、聞き手が所在する時代の感覚を希薄にするような魅力が随所に散りばめられている。モグワイの王道のマーチングのような勇壮なリズムが現代的なコングルトンのデジタルサウンドの中に見つかったかと思えば、それは必ずしも90年代のループサウンドやミニマリズムのように持続せず、夢想的、幻想的な雰囲気に留まることなく、痛烈なリアリズムが出現する。
例えば、オープニングトラック「God Gets You Back」では、従来のモグワイの幻想的なサウンドの向こうから、なにかリアリティのあるバンドセッションが浮かび上がってくる。二つの世界を組み込んだメタフィクションの音楽は、明らかに従来のモグワイのものではない。そして、モグワイはインストゥルメンタル中心の音楽性で知られているが、この曲は珍しくボーカル付きである。浮遊感のあるボーカルトラックはキュアーの最盛期、ブリットポップの最盛期の90年代前半に聞き手を誘う。しかし、一貫して恍惚としたサウンドは維持されている。お馴染みの巧緻なミニマリズムを基調にしたサウンドの向こうに浮遊感のある夢想的なボーカルが登場する。これらは、単なる轟音性や映像的な質感を持ち合わせていた、かつてのモグワイのサウンドとは明らかに一線を画していることに、勘の鋭いリスナーはお気づきになられるに違いない。
「What Kind Of Mix This Is」は、ポストロックの原初的なサウンドに回帰している。例えば、オーストラリアのDirty Three、米国のRed Stars Theory、Mineralなどに代表されるエモ/スロウコアのニュアンスを含んだアルペジオがイントロに配され、叙情的なサウンドが広がりを増していく。その中で、レディオヘッドの系譜にあるエレクトロニックを吸収したロックは、モグワイの手にかかると、ゆったりとしていながらも勇壮なイメージを持つ楽曲へと変化していく。そして、やはり、彼らの特徴的なリズムがベースとなり、それらを反復的に続けながら、徐々にバンドサウンドとして白熱する瞬間を探求していこうとする。つまり、バンドセッションを辛抱強く続けながら、心地よい沸点を迎える瞬間を探しあてていくのである。しかし、すでにこのバンドのファンはご存知の通り、モグワイのサウンドの一番の迫力は、内的に静かに燃え上がるような激しさにある。これらは、以降、むしろ単なるポストロックやスロウコアというよりも、プログレッシヴロックに近い曲調へと変遷を辿る。YES、Pink FloydのようなUKミュージックの元祖に近くなる。
アルバムは、少しマニアックに傾きかけるが、どうやらモグワイの新作に見いだせるのは、ニッチさだけではない。彼らは『 The Bad Fire』においてロックソングの核心のようなものを提示することもある。例えば、続く「Fanzine Made of Flesh」ではシンプルな8ビートをもとにダフト・パンク的なロックを展開させる。ボーカルトラックにはボコーダー/オートチューンをかけ、近未来的なサウンドを突き出す。また、そこにはAIテクノロジー優勢の時代の感覚が反映されている。かと思えば、続く「Pale Vegan Hip Pain」においては、フロイドの『Dark Side Of The Moon』の作風を下地にしたペーソスのある静かで瞑想的なギターロックソングで聞き手を魅了する。しかし、その中で、オムニコードのようなチープでレトロなシンセが最初期のモグワイの感覚をありありと蘇らせる。さらに続く、「If You Find This World Bad,You Should See Some of The Others」は、静謐なロックソングから轟音へと移行していく。いかにもモグワイらしい一曲となっている。
モグワイとしての新機軸を示したのが、続く「18 Volcanoes」である。背景となるシューゲイズ的なフィードバックの轟音を活かしているが、ボーカルそのものはポピュラーに根ざしており、コントラストを活かしたロックソングを組み上げている。ここには、モグワイのMBV的な性質が出現する瞬間を捉えられる。終盤の三曲は、いずれも実験的なロックバンドとして、未知なるサウンドの追求を意味する。ただ、それはモグワイとしての唯一無二の境地に辿りついたかはまだわからない。「Hammer Room」では、The Smileを彷彿とさせるエレクトロニックたダンスミュージックを反映させたロックソング、「Lion Rumpus」では、ハードロックとエレクトロニックの融合、そして、クローズ「Fact Boy」では、クレスタを用いて、オーケストラ楽器がロックバンドのアンサンブルの中でどのように響くのかを探求している。アウトロでは、近年のドラマなどの映像作品へのサウンドトラックの提供という貴重な経験を活かし、映像的なエンディングを構築する。この点においては、Explosions In The Skyとの共通点も発見できるかもしれない。
78/100
「What Kind Of Mix This Is」
イギリス/アイルランドのシンガー、アンナ・B・サヴェージの3枚目のアルバム『You & i are Earth』の核心は、根源的な感覚にある。このアルバムは、癒しについて、さらに屈託のない好奇心についての感覚でもあり、もっと簡単に言えば、「ある男性と、アイルランドへのラブレター 」でもある。
絶賛された『A COMMON TURN』、『in|FLUX』に続く『You & i are Earth』は、開放的でありながらフレンドシップを感じさせる。オープニング曲『Talk to Me』は、海の音と目を輝かせるストリングスが私たちをなだめ、優しさの研究であり、私たちの魂を本質的な場所へと導いてくれる。
そういったミュージシャンとしての仕事の傍ら、アンナ・B・サヴェージはもうひとつの故郷とのつながりを見出そうとしていた。その土地にしかない感覚であり、自分にとって欠かさざる神秘性の源泉である。彼女の新しい故郷とデリケートでありながら花開いた関係は、「ドネガル」での海との約束の中に集約されている。そこでは、きらめくパーカッションの中で、彼女は海に「私のことをよろしくお願いします」と頼みこみ、そして「モ・チョル・スー」では、人、場所、希望にたいする子守唄のように変化してゆく。このレコードを形作っている間、彼女が読んでいた本のひとつに、Manchán Magan(マンチャン・マガン)の『32 words for Field』がある。
歴史と人間、自然と人間性など、さまざまな要素が交錯する慈愛に満ちた作品の根底には、清算の感覚がある。タイトル曲「You & i are Earth」は、ロンドンの下水道で発見された17世紀のお皿からインスピレーションを得ており、そこには統一された感情が刻まれている。しかし、この曲は壮大でありながら、控えめで優美、ストリングスの渦巻く嵐のようなサウンドに縁取られている。ギターとコーラスが夢のように融合したデリケートな「I Reach for You in My Sleep」、甘く切ない「The Rest of Our Lives」のように、このレコードは何かを隠そうとするのではなく、サヴェージの魅力的でエレガントな歌声にぴったりと寄り添うような繊細さを表現している。
アルバムの音楽は、サウンドスケープを巧みに用い、情景的な音楽で始まりを告げる。「Talk To Me」は、ヴァイオリン奏者であるPual Giger(ポール・ガイガー)のような現代音楽のストリングの特殊奏法から始まり、その向こうからフォークミュージックが始まる。アコースティックギターのサウンドホールの芳醇な響きを生かした的確なマスタリング、そして、それと並置されるサヴェージのボーカルが涼し気な音響を作り出し、アルバムの世界観が広がりを増していく。
「7- I Reach For You in Sleep」では、ケルト民謡、東欧のポルカなどでお馴染みの三拍子のリズムを活かし、自然味溢れるフォークミュージックに仕上げている。また、導入部のモチーフとサビのリズムの変化等、構成面のおける対比の工夫を駆使し、華やかさのあるポピュラーソングを創り出す。サビの箇所では、朗らかで、開けたような感覚と、カントリーソングの雰囲気が組み合わされて、重要なハイライトが形作られる。サビの最後に入るコーラスも美しい。また、全体的な曲の枠組みの中で、最後にサビに戻ってくる時、ボーカルがクレスタのような音色と重なり合う時、制作者が示そうとしたであろう生命の神秘的な瞬間のきらめきが登場する。そしてそれは、よりアグレッシヴな印象を持つポップソング「8-Agnes」でハイライトを迎える。
音楽自体は、表題曲において最も素晴らしい瞬間を迎える。アルバムの冒頭のモチーフが蘇り、ストリングのトレモロが再び登場するのは、文学における登場人物の再登場のような感じで面白さがある。また、背景となる自然の大いなる存在を背後に、サヴェージは心に響く歌をうたう。それは、アイルランドの自然のなかで歌をつむぐような爽快感がある。さらに、その後、連曲のような構成を作り、「The Rest Of Our Lives」に続き、あっけないほど、さっぱりとしたエンディングを迎える。アルバムの最後に収録されている曲には、本作の副次的な主題である、自然に帰る、あるいは、自然と一体化する、という感覚が音楽の基礎を通じて的確に体現されている。作品の中にある主題や伏線のようなものがしっかりと回収されているのも面白い。
『Halo on the Inside』は、プロデューサーのアンドリュー・ブロダーとミネアポリスで録音された。「この音楽を作るプロセスで、私は恐怖を感じる前の時代に自分自身を巻き戻すことができた。そして、恐怖がない中で、セックス、愛、メロディーの親密なビートを見つけたんだ」
「Megaloner」
Circuit De Yeux 『Halo on the Inside』
Label: Matador
Release: 2025年3月14日
Tracklist:
1. Megaloner
2. Canopy of Eden
3. Skeleton Key
4. Anthem of Me
5. Cosmic Joke
6. Cathexis
7. Truth
8. Organ Bed
9. It Takes My Pain Away
3月14日にリリースされる『Halo On The Inside』は、変身の産物であると説明されている。たしかに、マナティのことについて書いていたポップシンガーの面影を見ることは不可能だ。狂想曲的で、快楽主義的で、ダンスフロアに隣接し、異教徒にやさしく、ホーンをあしらったサウンドと感情の壁という蝶と野獣のごとき作品。『ヘイロー・オン・ジ・インサイド』は、CdY(Circui De Yeux)が新しく生まれ変わり、組み替えられ、スリリングで異質なものとなっている。
ギリシャへの旅行がきっかけで、フォアは神話に登場する半ヤギ半人のフルート奏者、パンのキャラクターに興味を持った。彼の変身、メロディー、豊穣、そして最終的な終焉の物語は、アルバムの歓喜に満ちた、明るく燃える瞬間のムードボードとなった。それは「Anthem Of Me」で聴くことができる。SF的なパッド、ディストーション、キック・ドラムがピアノ・ドロップに溶け込みながら、フォアのサイレンのような声が催眠的に呼びかける。「これは私のアンセム。あなたを揺さぶる」